特開2021-31810(P2021-31810A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-31810(P2021-31810A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/14 20120101AFI20210201BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20210201BHJP
【FI】
   D04H3/14
   D04H3/007
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-155940(P2019-155940)
(22)【出願日】2019年8月28日
(11)【特許番号】特許第6729921号(P6729921)
(45)【特許公報発行日】2020年7月29日
(71)【出願人】
【識別番号】598110219
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 信一郎
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB07
4L047CB01
(57)【要約】
【課題】
環境負荷が低い原料で構成されているのに加えて、表面に印刷が施される製品に好適に使用できるスパンボンド不織布を提供すること。
【解決手段】
植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなるスパンボンド不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記植物由来ポリエチレン樹脂は、前記植物由来ポリエチレン樹脂、前記石油由来ポリプロピレン樹脂及び前記相溶化剤との合計100質量%に対し、5質量%乃至98質量%であり、
前記石油由来ポリプロピレン樹脂は、1質量%乃至95質量%であり、
前記相溶化剤は、1質量%乃至30質量%である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記相溶化剤の、メルトフローレート(230℃/2.16kg)は、2g/10分乃至2600g/10分である、請求項1又は請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
【請求項6】
前記植物由来ポリオレフィン樹脂は、前記植物由来ポリオレフィン樹脂及び前記石油由来ポリオレフィン樹脂との合計100質量%に対し、5質量%乃至99質量%であり、
前記石油由来ポリオレフィン樹脂は、1質量%乃至95質量%である、請求項5に記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、請求項5又は請求項6に記載のスパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド不織布に関する。詳しくは、植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含むことにより、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布と比較すると伸びを抑制できることを特徴とするスパンボンド不織布に関する。
さらに、本発明は、芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなることで、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布と比較すると伸びを抑制できることを特徴とするスパンボンド不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スパンボンド不織布は、実質的に無端連続長繊維糸が堆積されてなるものであるため、ステープルファイバーのごとき短繊維が堆積されてなる、いわゆる短繊維不織布に比べて、強度の面で優れている。特にポリプロピレン(PP)長繊維糸のみから形成されたスパンボンド不織布は、強度の面で非常に優れており、高強力が必要とされる用途分野での適用が盛んである。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレン長繊維糸のみから形成されたスパンボンド不織布は、用途によっては高強力のみではなく、風合いや、柔らかさ等の他の特性が要求されることがあった。
【0004】
そこで、同じポリオレフィンである、例えば、ポリエチレン(PE)等をポリプロピレンに混合することが考えられる。ポリエチレンは、ポリプロピレンに比べて強度が低く、また毛羽立ちが大きいといった課題があるが、ポリプロピレンに比べて優れた柔軟性を有すポリマーである。しかし、ポリプロピレンとポリエチレンは、同じポリオレフィン系材料に分類される材料でありながら非相溶な材料であり,相分離を誘起せずに混合及び複合化することは技術的に困難であることが知られている。
【0005】
一方で、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンが包含される石油系合成繊維及び石油系プラスチック樹脂は難分解性であるため、ゴミ処理問題等、循環型社会を実践する上で大きな障害となっており、焼却時に発生する二酸化炭素は地球温暖化の原因となっている。加えて、原料が石油由来であるため化石資源の枯渇の問題が懸念されている。そのような状況の中、樹脂フィルムや不織布等においても、その代替、使用量低減が求められている。
【0006】
そこで、樹脂フィルムの分野において、環境への負荷を低減するために、樹脂フィルムの原料の一部を、石油由来の樹脂から、植物由来成分とする樹脂(植物由来の樹脂)に置き換えることが報告されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1においては、植物由来の樹脂は、従来の石油由来の樹脂と化学構造的には変わりがなく、同等の物性を有することが期待されているが、実際には植物由来の樹脂を含む樹脂フィルム、例えば植物由来ポリエチレン系樹脂を含むシーラントフィルムは、石油由来のポリエチレン系樹脂のみからなるシーラントフィルムとは異なる性質を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018−052120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、不織布の分野においても環境への負荷を低減するために、不織布の原料の一部を、石油由来の樹脂から、植物由来の樹脂に置き換えることが求められていた。
さらに、ポリプロピレン樹脂に植物由来ポリエチレン樹脂が相溶された長繊維からなるスパンボンド不織布の性質は、上記のシーラントフィルムの例を参酌すれば、容易に予測できるものではなく、該スパンボンド不織布は、環境負荷が低い新たな素材としてその開発が求められていた。
さらに特に、植物由来の樹脂を用いながらも工業的に表面に印刷を施す製品として好適に使用されるスパンボンド不織布、具体的には、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布に比べて伸び率の小さいスパンボンド不織布の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、斯かる事情を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、高いバイオマス度の環境への貢献度の高いスパンボンド不織布を提供すること、さらに、植物由来の樹脂を用いながらも工業的に表面に印刷を施す製品として好適に使用されるスパンボンド不織布、すなわち、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布に比べて伸び率の小さいスパンボンド不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合した繊度0.5乃至10のデニールのスパンボンド不織布が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合となることを見出した。
さらに、芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなる繊度0.5乃至10デニールのスパンボンド不織布が石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合となることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、以下の態様からなる。
(1)植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
(2)前記植物由来ポリエチレン樹脂は、前記植物由来ポリエチレン樹脂、前記石油由来ポリプロピレン樹脂及び前記相溶化剤との合計100質量%に対し、5質量%乃至98質量%であり、
前記石油由来ポリプロピレン樹脂は、1質量%乃至95質量%であり、
前記相溶化剤は、1質量%乃至30質量%である、(1)に記載のスパンボンド不織布。
(3)前記相溶化剤の、メルトフローレート(230℃/2.16kg)は、2g/10分乃至2600g/10分である、(1)又は(2)に記載のスパンボンド不織布。
(4)前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、(1)乃至(3)のうちいずれか一に記載のスパンボンド不織
布。
(5)芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
(6)前記植物由来ポリオレフィン樹脂は、前記植物由来ポリオレフィン樹脂及び前記石油由来ポリオレフィン樹脂との合計100質量%に対し、5質量%乃至99質量%であり、
前記石油由来ポリオレフィン樹脂は、1質量%乃至95質量%である、(5)に記載のスパンボンド不織布。
(7)前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、(5)又は(6)に記載のスパンボンド不織布。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスパンボンド不織布は、植物由来の樹脂を高い配合率で含む、すなわち、高いバイオマス度を有するものである。したがって、カーボンニュートラルの観点から、大気中のCO2量の増加を抑制し、且つ、石油資源利用の節約にも貢献する。
【0014】
なお、カーボンニュートラルとは、植物を燃やしても、その際に排出されるCO2量は、植物が生育時に吸収したCO2量と等しいため、大気中のCO2量の増減には影響を与えないことを指す。したがって、植物由来の原料を多く含むほど、CO2量の増加を抑制することができる。
【0015】
また、本発明のスパンボンド不織布は、その伸び率が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合を達成することができ、不織布製品、例えば表面に印刷が施される製品に好適に使用できる。
【0016】
さらに、本発明のスパンボンド不織布は、従来、ポリプロピレンに比べてより柔軟性を有すポリマーであることが知られているポリエチレンをポリプロピレンと混合させることによって、不織布の伸び率が小さくなるという全く異質な正反対の効果を発現させるものである。
【0017】
さらに本発明の、芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなる、スパンボンド不織布においても、その流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合を達成することができ、不織布製品、例えば表面に印刷が施される製品に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石
油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布を対象とする。
さらに、本発明は、芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度0.5乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布を対象とする。
更に詳細に本発明を説明する。
【0019】
本発明のスパンボンド不織布に用いられる植物由来ポリエチレン樹脂(以下、植物由来ポリエチレン樹脂をBPEと記載する場合がある)は、植物由来エチレンから製造される。
【0020】
本発明において、「植物由来」とは、植物を原料として得られるアルコールから製造される、植物原料に由来する炭素を含むことを意味する。
【0021】
本発明において、植物由来ポリエチレン樹脂は、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンの単独重合体、あるいは、該植物由来エチレンと他の少量のコモノマーとの共重合体である。
【0022】
具体的には、バイオエタノールから誘導されたエチレンを重合して得られる高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.940g/cm以上)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度0.925以上0.940g/cm未満)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.925g/cm未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.910乃至0.925g/cm、エチレンとα−オレフィンとの共重合体)、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0023】
本発明で用いる植物由来ポリエチレン樹脂は、上記の各種ポリエチレンを使用することができるが、密度0.915g/cm乃至0.965g/cmの範囲にあるポリエチレンを好適に使用することができる。
【0024】
上記LLDPEのコモノマーとなるα−オレフィンとしては、炭素原子数3乃至20のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−ノネン、4−メチルペンテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのα−オレフィンは、バイオエタノールから誘導された植物由来α−オレフィンであっても、非植物由来、すなわち石油由来のα−オレフィンであってもよい。石油由来α−オレフィンとしては多種多様なものが入手可能であるため、これらを用いて製造することにより、ポリエチレン系樹脂の物性等を容易に調整することができる。植物由来α−オレフィンを用いることにより、最終製品のバイオマス度をより一層高めることができる。
【0025】
植物由来エチレン及び植物由来α−オレフィンの製造方法としては、慣用の方法にしたがって、サトウキビ、トウモロコシ、サツマイモ、ビート、キャッサバ(マニオク)さとう大根等の植物から得られる糖液や澱粉を、酵母等の微生物により発酵させてバイオエタノールを製造し、これを触媒存在下で加熱し、分子内脱水反応等により植物由来エチレン及び植物由来α−オレフィン(1−ブテン、1−ヘキセン等)を得ることができる。次いで、得られた植物由来エチレン及び植物由来α−オレフィンを用いて、石油由来ポリエチ
レン樹脂の製造と同様にして、植物由来ポリエチレン樹脂を製造することができる。
【0026】
植物由来エチレン、植物由来α−オレフィン及び植物由来ポリエチレン樹脂の製造方法については、例えば特表2011−506628号公報等に詳細に記載されている。
本発明において使用される植物エチレンの原料としては、サトウキビ、トウモロコシ、サツマイモが好ましく、サトウキビが特に好ましい。
本発明において使用される植物由来ポリエチレン樹脂としては、ブラスケム(Braskem S.A.)社製のグリーンPE等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる植物由来ポリエチレン樹脂は、後述する石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤と植物由来ポリエチレン樹脂の合計100質量%に対し、5質量%乃至98質量%含まれることが好ましく、10質量%乃至75質量%含まれることがより好ましく、20質量%乃至50質量%含まれることがさらに好ましい。
【0028】
本発明に用いられる植物由来ポリエチレン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
【0029】
本発明のスパンボンド不織布に用いられる石油由来ポリプロピレン樹脂は、石油由来プロピレンから製造される。
【0030】
本発明において、「石油由来」とは、植物原料に由来する炭素を含まず、従来どおり、石油から得られるナフサを熱分解して得られる成分を主成分とすることを意味する。
本発明で使用される石油由来ポリプロピレン樹脂は、不織布として一般的に用いられる任意のポリプロピレン樹脂である。
【0031】
石油由来ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれを使用することも可能であり、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明に用いられる石油由来ポリプロピレン樹脂は、後述する相溶化剤、植物由来ポリエチレン樹脂及び石油由来ポリプロピレン樹脂の合計100質量%に対し、1質量%乃至95質量%含まれることが好ましく、15質量%乃至80質量%含まれることがより好ましく、30質量%乃至70質量%含まれることがさらに好ましい。
【0033】
本発明に用いられる石油由来ポリプロピレン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
【0034】
本発明のスパンボンド不織布に用いられる相溶化剤としては、メルトフローレート(230℃/2.16kg)(以下、メルトフローレートをMFRと記載する場合がある)が、2g/10分乃至2600g/10分である相溶化剤が使用することができ、植物由来ポリエチレン樹脂及び石油由来ポリプロピレン樹脂を互いに溶解させる相溶化剤であればよい。
このような相溶化剤の化合物としては、例えば、低密度ポリエチレン−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン−エチレンアクリレート共重合体−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体−g−ポリメタクリル酸メチル、エチレン−エチレンアクリレート−無水マレイン酸共重合体−g−ポリメタクリル酸メチルのグラフトコポリマー、エチ
レンビニルアルコール、ポリスチレン−b−ポリエチレンブチレン−b−ポリオレフィン結晶、末端変性ポリスチレン−b−ポリエチレンブチレン−b−ポリオレフィン結晶、ポリオレフィン結晶−b−ポリエチレンブチレン−b−ポリオレフィン結晶のトリブロックコポリマー、ポリカプロラクタン、ポリプロピレン/スチレン系エラストマー化合物、無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられ、さらに、相容させるベースポリマー、本発明においてはポリエチレン及びポリプロピレンと同一ポリマーのセグメントを有するグラフト、ブロックポリマー等も採用できる。
このような相溶化剤の市販品としては、例えば、モディパー(登録商標)A1100、同A1401、同A3400、同A4100、同4300、同4400、同5300、同5400、同6600、同CL130D、同CL430−G、同SV10B、同SV10A、同S101、同SV30B、同S501、同MS10B(以上、日油株式会社製)、ボンドファースト(登録商標)2C、同E、同2B、同7B、同7L、同7M、同VC40(以上、住友化学株式会社製)、ボンダイン(登録商標)LX4110、同HX8210、同TX8030、同HX8290、同5500、同AX8390(以上、東京材料株式会社)、レクスパール(商標)ET220X、同ET230X、同ET530H、同ET720X、同EB050S、同EB240H、同EB330H、同EB140F、同EB230X、同EB440H、同A1100、同A3100、同A1150、同A4200、同A6200、同A4250(以上、日本ポリエチレン株式会社)、レゼダ(登録商標)GS−1015、同GP−310S、同GP−301、アルフオン(登録商標)UG−4010、同UG−4035、同UG−4040、同UG−4070、同UM−9001、同UM−9030、同UM−9040(以上、東亜合成株式会社)、エポクロス(登録商標)、RPS−1005(以上、日本触媒株式会社)、デュラネート(商標)24A−100、同22A−75P、同TPA−100、同TKA−100、同P301−75E、同21S−75E、同MFA−75B、同MHG−80B、同E402−80B、同E405−70B、同TSE−100、同AE700−100、同TSA−100、同TSS−100、同A201H、同TUL−100、同TLA−100、同D101、同D201、同A201H、同50M−HDI、同MF−K60B、同SBB−70P、同SBN−70D、同MF−B60B、同17B−60P、同TPA−B80E、同E402−B80B、同SBF−70E(以上、旭化成株式会社)、ダイナロン(登録商標)6200P、同6201B、同8600P、同8300P、同8903P、同9901P(以上、JSR株式会社)、エルモーデュ(商標)S400、同S600、同S901(以上、出光興産株式会社)、ビスタマックス(Vistamaxx(商標))3000、同3020FL、同3588FL、同3980FL、同6000、同6102、同6102FL、同6202、同6202FL、同6502、7020BF、同8380、同8780、同8880(以上、エクソンモービル(Exxon Mobil)株式会社)、フォーティファイ(FORTIFY(商標))C0570、同C0570D、同C1055D、同C1070、同C1070D、同C1085、同C11075DF、同C13060、同C13060D、同C30070D、同C3080、同C5070、同C5070D(以上、サウジ基礎産業公社(SABIC))等を採用することができる。
また相溶化剤はこれらに限定されることはなく、「プラスチック相溶化剤 開発・評価・リサイクル」(シーエムシー出版)に記載の相溶化剤なども好適に用いることができる。さらに、これら相溶化剤は、一種を単独で又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明に用いられる相溶化剤は、植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤の合計100質量%に対し、1質量%乃至30質量%含まれることが好ましく、3質量%乃至20質量%含まれることがより好ましく、5質量%乃至10質量%含まれることがさらに好ましい。
【0036】
本発明において、「溶融物」とは、植物由来ポリエチレン樹脂及び石油由来ポリプロピレン樹脂が溶けて混ざったものであればよく、その程度は問わない。例えば、石油由来ポ
リプロピレン樹脂が部分的に溶けているものでも、完全に溶解しているものでもよい。
【0037】
一般的な不織布の製法としては例えば、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、レジンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、トウ開繊式不織布、エアレイド不織布等の種々の製法があるが、本発明ではスパンボンド不織布を対象とする。スパンボンド不織布は、生産性や機械的強度に優れ、また、長繊維からなるため短繊維不織布に比べて毛羽立ちしにくい特徴を有する。
【0038】
本発明のスパンボンド不織布は、原料である樹脂を溶融し、得られた溶融物を紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクターで牽引し延伸して、ネット上に捕集して長繊維からなるウェブを形成させた後、該長繊維をシート状に結合させることで製造される。
【0039】
本発明のスパンボンド不織布の長繊維の繊度は0.5乃至10デニールである。
「繊度」とは、繊維の繊維径(太さ)や断面積に対応するパラメータであり、所定の長さあたりの重量で表される。ここでは、一本の繊維について9000mあたりのグラム数[デニール]を「繊度」として用いる。そのため、スパンボンド不織布は、「繊度」が小さくなるほど繊維径が細くなる。
なお、スパンボンド不織布での繊維径にばらつきがあることから、繊維の「繊度」の平均値をパラメータとして採用している。そのため、繊維の「繊度」の平均値のことを単に「繊度」と呼ぶ。
【0040】
本発明のスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して、90%乃至20%の割合であり、好ましくは40%乃至20%の割合であり、より好ましくは25%乃至20%の割合である。また、本発明のスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合であり、好ましくは50%乃至30%の割合であり、より好ましくは40%乃至30%の割合である。
ここで、スパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)とは、スパンボンド不織布を生産する際のウェブの機械方向(搬送方向)と平行の方向を意味する。また、スパンボンド不織布の幅方向(CD方向)とは、スパンボンド不織布を生産する際のウェブの機械方向(搬送方向)と直交する方向を意味する。
伸び率の測定方法は、ISO9073−3を基に作成されたJIS L1913(2010年版)に準拠する方法(標準時の引張強さ及び伸び率)によって測定される。具体的には、試料から採取した幅50mm、長さ250mmの試験片を150mmのつかみ間隔で引張試験機に初荷重で取り付け、200mmの引張速度で試験片が破断するまで流れ方向(MD方向)又は幅方向(CD方向)に荷重を加える。最大荷重時の伸びを1mmまで測定し、この伸びから流れ方向(MD方向)及び幅方向(CD方向)の伸び率を求める。引張試験機に試験片を取り付けるときの初荷重は、試験片を手でたるみが生じない程度に引っ張った状態とする。
【0041】
本発明のスパンボンド不織布は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布と比較するとその伸び率が小さいので、例えば表面に印刷が施される不織布を素材とする製品に好適に使用される。
印刷方法は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等があるが、本発明のスパンボンド不織布は、いずれの方法で印刷するのも適している。
【0042】
本発明は、さらに、芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリオレフィン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリオレフィン樹脂からなるスパンボンド不織布(上記の植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布と判別しやすくするため、以下、芯鞘構造を有するスパンボンド不織布とも称する)も発明の対象となる。
【0043】
本発明の芯鞘構造を有するスパンボンド不織布に用いられる植物由来ポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリエチレン樹脂又は植物由来ポリプロピレン樹脂(以下、植物由来ポリプロピレン樹脂をBPPと記載する場合がある)である。
【0044】
植物由来ポリエチレン樹脂は、上記の段落[0020]乃至[0027]に記載された植物由来ポリエチレン樹脂と同様の植物由来ポリエチレン樹脂を使用できる。
【0045】
植物由来ポリプロピレン樹脂は、従来公知の石油由来のエチレンからプロピレンを合成する方法と同様の方法で、植物由来エチレンから合成されるプロピレンを重合されることによって得られる。
さらに、ヤシ殻等の空果房(EFB:Empty Fruit Bunches)を熱分解することで発生するガスを用いたメタノールからのオレフィン製造(MTO:Methanol−to−Olefins)及びプロピレン製造(MTP:Methanol−to−Propylene)から得られるプロピレンを重合させることでも植物由来ポリプロピレン樹脂は得られる。
加えて、ソルゴー等の非可食植物を主体とするバイオマス原料から、発酵によりイソプロパノールを製造、それを脱水することで得られるプロピレンを重合させることでも植物由来ポリプロピレン樹脂は得られる。
【0046】
本発明に用いられる植物由来ポリオレフィン樹脂は、後述する石油由来ポリオレフィン樹脂と植物由来ポリオレフィン樹脂の合計100質量%に対し、5質量%乃至99質量%含まれることが好ましく、10質量%乃至75質量%含まれることがより好ましく、20質量%乃至50質量%含まれることがさらに好ましい。
【0047】
植物由来ポリオレフィン樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
【0048】
本発明の芯鞘構造を有するスパンボンド不織布に用いられる石油由来ポリオレフィン樹脂は、石油来由来ポリエチレン樹脂又は石油由来ポリプロピレン樹脂である。
【0049】
石油由来ポリエチレン樹脂は、植物原料に由来する炭素を含まず、従来どおり、石油から得られるナフサを熱分解して得られるエチレンの単独重合体、あるいは、石油由来エチレンと他の少量のコモノマーとの共重合体である。
【0050】
具体的には、石油由来エチレンを重合して得られる高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.940g/cm以上)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度0.925以上0.940g/cm未満)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.925g/cm未満)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.910乃至0.925g/cm、エチレンとα−オレフィンとの共重合体)、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0051】
本発明で用いる石油由来ポリエチレン樹脂は、上記の各種ポリエチレンを使用することが
できるが、密度0.915g/cm乃至0.965g/cmの範囲にあるポリエチレンを好適に使用することができる。
【0052】
上記LLDPEのコモノマーとなるα−オレフィンとしては、炭素原子数3乃至20のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−ノネン、4−メチルペンテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのα−オレフィンは、バイオエタノールから誘導された植物由来α−オレフィンであっても、非植物由来、すなわち石油由来のα−オレフィンであってもよい。石油由来α−オレフィンとしては多種多様なものが入手可能であるため、これらを用いて製造することにより、ポリエチレン系樹脂の物性等を容易に調整することができる。
【0053】
本発明に用いられる石油由来ポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリオレフィン樹脂及び石油由来ポリオレフィン樹脂の合計100質量%に対し、1質量%乃至95質量%含まれることが好ましく、15質量%乃至80質量%含まれることがより好ましく、30質量%乃至65質量%含まれることがさらに好ましい。
【0054】
本発明に用いられる石油由来ポリオレフィン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加物あるいは他の重合体を必要に応じて添加してもよい。
【0055】
本発明の芯鞘構造を有するスパンボンド不織布の長繊維の繊度は0.5乃至10デニールである。
【0056】
本発明の芯鞘構造を有するスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して、90%乃至20%の割合であり、好ましくは70%乃至20%の割合であり、より好ましくは50%乃至20%の割合である。また、本発明の芯鞘構造を有するスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合であり、好ましくは70%乃至30%の割合であり、より好ましくは50%乃至30%の割合である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1乃至実施例29]
植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤をドライブレンド後、二軸混練機を用いて温度200℃、回転数500rpmの条件で混練し、溶融物を得た。その後、溶融物を紡糸口金から吐出させて、長繊維を紡出した。その後、紡出された長繊維を冷却用エアによって冷却したうえで、延伸用エアによって張力を加えて所定の繊度(表1に示す繊度)とし、そのままコンベアベルト上に捕集して、堆積させた。そして、堆積された長繊維に対してエンボスロールで熱および圧力を印加し、一部を溶融させて繊維を絡合させた。このようにして実施例1乃至実施例29のスパンボンド不織布を得た。各実施例の植物由来ポリエチレン樹脂及び石油由来ポリプロピレン樹脂の割合並びに相溶化剤の種類及び割合は表1に示す。
【0059】
[実施例30乃至実施例37]
植物由来ポリオレフィン樹脂を芯又は鞘成分とし、石油由来ポリオレフィン樹脂を鞘又
は芯又は鞘成分として用い、それぞれ別々の押出機で溶融し、前記の鞘成分と前記の芯成分との質量比が表2に記載の質量比になるように計量し、紡糸口金から吐出させて、芯鞘型複合長繊維を紡出した。その後、紡出された長繊維を冷却用エアによって冷却したうえで、延伸用エアによって張力を加えて所定の繊度(表2に示す繊度)とし、そのままコンベアベルト上に捕集して、堆積させた。そして、堆積された長繊維に対してエンボスロールで熱および圧力を印加し、一部を溶融させて繊維を絡合させた。このようにして実施例30乃至実施例37のスパンボンド不織布を得た。
【0060】
[比較例1]
実施例1乃至実施例29において、植物由来ポリエチレン樹脂及び相溶化剤を加えず、すなわち石油由来ポリプロピレンの配合量を100質量%に変えたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0061】
[比較例2]
植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂をドライブレンド後、二軸混練機を用いて温度200℃、回転数500rpmの条件で混練し、溶融物を得た。その後、溶融物を紡糸口金から吐出させて、長繊維を紡出した。その後、紡出された長繊維を冷却用エアによって冷却したが、長繊維相互が融着してしまい、目的のスパンボンド不織布が得られなかった。
【0062】
(伸び率評価)
伸び率の測定方法は、ISO9073−3を基に作成されたJIS L1913(2010年版)に準拠する方法(標準時の引張強さ及び伸び率)によって測定された。上記した実施例1乃至実施例37及び比較例1のスパンボンド不織布から幅50mm、長さ250mmの試験片を採取した。試験片を150mmのつかみ間隔で引張試験機に初荷重で取り付け、200mmの引張速度で試験片が破断するまで流れ方向(MD方向)又は幅方向(CD方向)方向に荷重を加えた。最大荷重時の伸びを1mmまで測定し、この伸びから流れ方向(MD方向)及び幅方向(CD方向)の伸び率を求めた。引張試験機に試験片を取り付けるときの初荷重は、試験片を手でたるみが生じない程度に引っ張った状態とした。比較例1の石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)及び幅方向(CD方向)の伸び率を100%とした場合の実施例1乃至実施例37のスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)及び幅方向(CD方向)の伸び率を表1及び表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び表2に示すように、実施例1乃至実施例37に示す本発明のスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布(比較例1)の流れ方向(MD方向)の伸び率を100%とした場合、90%乃至20%を示し、幅方向(CD方向)の伸び率は、80%乃至30%を示すことが確認された。
本発明のスパンボンド不織布は、環境負荷が低い原料で構成されているのに加えて、表面に印刷が施される製品に非常に好適に用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2020年2月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来ポリエチレン樹脂、石油由来ポリプロピレン樹脂及び相溶化剤を含む溶融物の長繊維からなるウェブをシート状に結合してなるスパンボンド不織布であって、
前記長繊維は、繊度乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して48%乃至20%の割合である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記植物由来ポリエチレン樹脂は、前記植物由来ポリエチレン樹脂、前記石油由来ポリプロピレン樹脂及び前記相溶化剤との合計100質量%に対し、5質量%乃至98質量%であり、
前記石油由来ポリプロピレン樹脂は、1質量%乃至95質量%であり、
前記相溶化剤は、1質量%乃至30質量%である、請求項1又は請求項2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記相溶化剤の、メルトフローレート(230℃/2.16kg)は、2g/10分乃至2600g/10分である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、請求項1乃至請求項のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項6】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して53%乃至30%の割合である、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項7】
芯鞘構造を成す長繊維からなるウェブをシート状に結合してなり、該芯鞘構造の芯部又は鞘部の一方が植物由来ポリエチレン樹脂又は植物由来ポリプロピレン樹脂からなり、また他方が石油由来ポリエチレン樹脂又は石油由来ポリプロピレン樹脂からなるスパンボンド不織布であって、
芯部が植物由来ポリエチレン樹脂である場合、鞘部が石油由来ポリプロピレン樹脂であり、芯部が植物由来ポリプロピレン樹脂である場合、鞘部が石油由来ポリエチレン樹脂であって、
前記長繊維は、繊度乃至10デニールであり、そしてJIS L1913(2010年版)に準拠する方法で測定される前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して90%乃至20%の割合である、スパンボンド不織布。
【請求項8】
前記不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の流れ方向(MD方向)の伸び率と比較して44%乃至20%の割合である、請求項7に記載のスパンボンド不織布。
【請求項9】
前記植物由来ポリオレフィン樹脂は、前記植物由来ポリオレフィン樹脂及び前記石油由来ポリオレフィン樹脂との合計100質量%に対し、5質量%乃至99質量%であり、
前記石油由来ポリオレフィン樹脂は、1質量%乃至95質量%である、請求項7又は請求項8に記載のスパンボンド不織布。
【請求項10】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率は、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して80%乃至30%の割合である、請求項7乃至請求項9のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。
【請求項11】
前記不織布の幅方向(CD方向)の伸び率が、石油由来ポリプロピレン樹脂単独の長繊維から作られたスパンボンド不織布の幅方向(CD方向)の伸び率と比較して50%乃至30%の割合である、請求項7乃至請求項10のうちいずれか一項に記載のスパンボンド不織布。