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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-31820(P2021-31820A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】作業用プロテクター
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20210201BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20210201BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20210201BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20210201BHJP
   A41D 31/28 20190101ALI20210201BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20210201BHJP
【FI】
   A41D13/015
   A41D13/00 102
   A41D31/00 502W
   A41D31/02 B
   A41D31/28
   A41D31/00 502A
   A41D31/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-157052(P2019-157052)
(22)【出願日】2019年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】500487413
【氏名又は名称】有限会社ポルテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】竹北 孝文
(72)【発明者】
【氏名】竹北 昌成
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA02
3B011AA05
3B011AA09
3B011AB01
3B011AC04
3B011AC08
(57)【要約】
【課題】確実に体を防護しながら十分な柔軟性があるズボン型のプロテクターに適した作業用のプロテクターを提供する。
【解決手段】
複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板が採用されており、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定されている。防護プレートの各々が円形の金属板よりなる場合、その曲げ変形時の撓み力は、中心部を基点として、半径方向360度のどの角度方向においても等しい。
したがって、複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板を採用し、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定した作業用プロテクターは、作業者を確実にカバーすることができ、上下、左右、斜めの各方向に全く均等な撓み強度での曲げ変形が可能となる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板を採用し、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定したことを特徴とする作業用プロテクター。
【請求項2】
表裏カバー間には、少なくとも2枚の干渉防止生地が介装され、複数枚の金属板は、それら2枚の干渉防止生地を介して間接的に重ね合わせることにより、金属板同士が直接干渉しない状態で配置されていることを特徴とする請求項1記載の作業用プロテクター。
【請求項3】
複数枚の金属板の表裏カバーに対する固定手段として、各金属板各々の中心部をカシメ付けて固定するカシメ構造が採用されていることを特徴とする請求項1又は2記載の作業用プロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作業用プロテクターの構成に関し、より詳しくは、ウオータージェット等の作業機を用いた作業に適した作業用プロテクターの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高圧水をノズルの先端から噴出させて、その噴流で対象物体の切断や、斫り、洗浄などの作業を行うウオータージェット式の作業機(以下、同作業機を単にウオータージェットと言い、同作業機を用いた作業をウオータージェット作業と言う)は、天候の影響を受けず、削岩機のような振動も少なく、粉塵も出ず、騒音も小さい、などの利点から、コンクリート構造物の切断や、斫り、洗浄などの作業に使用されている(いわゆる、ウオータージェット工法)。
【0003】
ところが、このようなウオータージェット作業では、作業中に作業者側に噴流が反射し、またコンクリートの破片が跳ね返るなどの危険がある。
【0004】
そこで、このような事故から作業者の体を保護するために、従来、左右に長い帯状の複数枚の金属板を上方から下方に一部を重ね合わせながら鎧形に連接し、その表裏両面側を撥水性があり、強度が高い繊維製のカバーで覆ったエプロン型の作業用プロテクターが提案されている。
【0005】
そして、この作業用プロテクターの場合、上記のように複数枚の金属板を上方から下方に一部重ね合わせながら鎧形に連接するに際しては、全体の形態を固定的に保持し、当該複数枚の帯状の金属板のそれぞれを係止して、それらの配置位置を固定的に維持するポリエステル繊維よりなる芯地を用い、該芯地に対して複数枚の帯状の金属板の各々を同金属板各々の両端に形成したハト目部(又はカシメ部)を介して固定することによって一体化し、その上で、それらを撥水加工された繊維生地よりなる表カバーと撥水加工された繊維生地、アラミド繊維からなる繊維シート、導電性ポリエステル繊維等よりなる裏カバーとの間に綴じ込んで構成されている(特許文献1の構成を参照)。
【0006】
また、実際の作業では、この作業用プロテクター(エプロン)と共に、顔面保護マスク付きのヘルメットやサロペット、レガース、アームカバー、ガンカバーなどのプロテクターを組み合わせて装着し、作業性を確保しながら、より効果的な防護機能が図られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−185409号公報(図1図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記作業用プロテクターの場合、プロテクター本体部を構成する複数枚の帯状の金属板のそれぞれは薄板構造であって、一応可撓性があるものの、何れも左右両端間に亘って長く延びる1枚ものの金属板であり、しかも上下方向に相当な幅があり、上下両端側部分で相互に所定幅重なっている。そして、それらの左右方向両端が同状態で伸縮性がなく強度が高いポリエステル繊維からなる芯地に対して、ハト目付けまたはカシメ付けにより固定一体化され、さらに、その前後を封筒状に縫い合わされた表カバー部および裏カバー部で封止して一体に構成されている。
【0009】
しかも、表カバー部は、撥水性が高く、強度も高いが、伸縮性がないポリエステル等の高密度織物により、また裏カバー部は、同じく撥水性があり、強度も高いが、伸縮性がないポリエステル等の高密度織物に加え、さらに、伸縮性がないが強靭なアラミド繊維シート、導電性ポリエステル繊維を組み合わせた3層構造のシート部材により形成されている。
【0010】
したがって、プロテクター本体部および表カバー部、裏カバー部共に防護強度の高い構成になり、作業用プロテクターとして一応十分な強度のものとなる。
【0011】
しかし、上記構成の場合、プロテクター部を構成する複数枚の金属板が、何れも左右両端間に亘って長く延びる1枚ものの金属板であり、しかも薄板構造であって、可撓性の高いものとなっている。そして、その左右両端が芯地に対してハト目付け(又はカシメ付け)されているだけである。
【0012】
したがって、各金属板は、その両端側では安定した状態で芯地に固定され、上下方向の重なりも常時適正に維持されるが、肝心な中央部側では作業者の体の曲げ伸ばし動作に応じた相対的な傾斜変形(単なる相互のスライドではなく、角度を持った変形)が生じやすく、重なり状態が安定しない。もちろん、上記各金属板は、撥水加工された繊維生地よりなる表カバーと撥水加工された繊維生地、アラミド繊維からなる繊維シート、導電性ポリエステル繊維よりなる裏カバーとの間に全体として封筒構造に綴じ込まれてはいるが、各々については必ずしも十分な固定機能は発揮されていない。したがって、どうしても作業者の動作に応じた相対的な傾斜変形、位置ずれが生じやすい。
【0013】
また、上記の構成の場合、そのように相対的な傾斜変形、位置ずれを可能にしておかないと、上下方向の体の曲げ動作に対する柔軟性に欠け、プロテクター全体として可撓性に欠けるものとなる。
【0014】
また、上記構成の場合、そのような上下方向の相対的な傾斜変形、位置ずれを生じる部分で金属板同士が擦れ合って、静電気や不快な異音を発生する。
【0015】
すなわち、上記構成の場合、左右方向には平行に隣接する複数枚の帯状の金属板の安定した円弧状の曲げ変形となるが、上下垂直方向および左右各斜め対角線方向には上下方向に連接する複数枚の帯状の金属板同士が相互に離間し、傾斜角を持って変形する変形状態となるので、撓み剛性が高く、スムーズな変形とはならない。その結果、装着時の装着感が悪く、作業性に欠けるものとなる。また、位置ずれに伴う静電気や異音も発生しやすい。
【0016】
そのため、同構成を、エプロン型のプロテクターだけでなく、たとえばズボン型のプロテクター(サロペット)や腕カバー型のプロテクター、それらが一体になった防護服型のプロテクターなどに適用しようとしても適用することができない。
【0017】
本願発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板を採用し、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うように表裏カバー間に配置固定することによって、作業者を確実にカバーしながら、しかも、上下、左右、斜めの各方向に全く均等な撓み強度のソフトな曲げ変形を可能とした作業用プロテクターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、上述の問題を解決するために、次のような有効な課題解決手段を備えて構成されている。
【0019】
(1)請求項1の発明の作業用プロテクターの課題解決手段
この発明の作業用プロテクターの課題解決手段は、複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板を採用し、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定したことを特徴としている。
【0020】
この発明の課題解決手段の構成では、複数枚の防護プレートの各々に円形(略円形で足りる)の金属板が採用されており、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定されている。
【0021】
防護プレートの各々が円形の金属板よりなる場合、その曲げ変形時の撓み力は、中心部を基点として、半径方向360度のどの角度方向においても、等しいものとなる。
【0022】
したがって、複数枚の防護プレートの各々に円形の金属板を採用し、それら円形の金属板各々の周縁部が相互に隙間なく重なり合うようにして、表裏カバー間に配置固定することによって構成した作業用プロテクターは、作業者を確実にカバーすることができるのはもちろん、上下、左右、斜めの各方向に全く均等な撓み強度での曲げ変形が可能となる。その結果、非常に装着感、作業性の良い作業用プロテクターを構成することができる。
【0023】
この場合、防護プレートである円形の金属板各々の直径(大きさ)や厚さ、撓み度合い(弾性)を所望に調整することにより、すでに述べたエプロン型の作業用プロテクターだけでなく、たとえばズボン型の作業用プロテクターや腕カバー型の作業用プロテクター、それらが一体になった防護服型の作業用プロテクターなどの各種プロテクター素材として構成することができる。また、耐切創機能を持った防護用プロテクター部材にも適用することができる。
【0024】
(2)請求項2の発明の作業用プロテクターの課題解決手段
この発明の作業用プロテクターの課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、表裏カバー間には、少なくとも2枚の干渉防止生地が介装され、複数枚の金属板は、それら2枚の干渉防止生地を介して間接的に重ね合わせることにより、金属板同士が直接干渉しない状態で配置されていることを特徴としている。
【0025】
このような構成の場合、相互に隙間なく重ねられた状態においても、各層の金属板が相互に接触することなく、干渉防止生地を挟んだ間接的な接触となるので、撓み時の拘束力がなく、摺動性も良好となる。したがって、スムーズで静粛な曲げ変形が実現される。
【0026】
その結果、上記防護プレート自体が円形となっていて変形方向の制約がないことと合わせて、プロテクター本体全体としても、非常に可撓性の高い柔軟なものとなる。また、静電気や異音の発生も解消される。
【0027】
(3)請求項3の発明の作業用プロテクターの課題解決手段
この発明の作業用プロテクターの課題解決手段は、上記請求項1又は2に係る発明の課題解決手段の構成において、複数枚の金属板の表裏カバーに対する固定手段として、各金属板各々の中心部をカシメ付けて固定するカシメ構造が採用されていることを特徴としている。
【0028】
このような構成によると、表裏カバー間に所定の位置関係で配置固定される複数枚の円形の金属板の各々を、それぞれその中心軸部分で確実に表裏カバーに対して確実に位置決め固定することができる。
【0029】
したがって、複数枚の円形の金属板の各々は、その何れにあっても全く位置ずれ等を生じることなく、常に正確な重ね合わせ位置に固定されることになる。そのため、どのような方向の曲げ変形が生じた場合にも、決して相互の間に隙間が生じるようなことがなく、極めて安全である。また、より静電気や異音の発生が生じにくくなる。
【発明の効果】
【0030】
以上の結果、この出願の発明によると、柔軟性に優れ、プロテクター全体として自由な変形が可能な作業用プロテクターを提供することができる。しかも、変形時の異音も発生せず、非常に静粛性が高い。また、静電気も発生しにくい。
【0031】
その結果、装着時の装着感が良好で、作業性に優れたものとなり、従来のようなエプロン型のプロテクターだけでなく、たとえばズボン型のプロテクターや腕カバー型のプロテクター、それらが一体になった防護服型のプロテクターなどにも、任意に適用することができるようになる。また、耐切創機能を持った防護用プロテクター部材にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏量外装カバーを設けた状態における構成を示す表面図(上面側から見た図)である。
図2】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバーを設けた状態における構成を示す裏面図(裏面側から見た図)である。
図3】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバーを設けた状態における構成を示す要部の拡大断面図である。
図4】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバーを取り除いた状態における構成を示す表面図である。
図5】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバーを取り除いた状態における構成を示す裏面図である。
図6】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバーを取り除いた状態における構成を示す要部の拡大断面図である。
図7】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバー、および表カバーを取り除いた状態における第1〜第3の各円形防護プロテクター相互の上下方向の重なり状態を示す表面図(上面側から見た図)である。
図8】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバー、および表カバーを取り除いた状態における構成(第2の干渉防止用生地上における第3の防護プロテクターの配置状態)を示す表面図(上面側から見た図)である。
図9】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバー、表カバー、および第2の干渉防止用生地を取り除いた状態における構成(第1の干渉防止用生地上における第2の防護プロテクターの配置状態)を示す表面図(上面側から見た図)である。
図10】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターのプロテクター本体部分の表裏外装カバー、表カバー、第2の干渉防止用生地、および第1の干渉防止用生地を取り除いた状態における構成(裏カバー1上における第1の防護プロテクターの配置状態)を示す表面図(上面側から見た図)である。
図11】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターをウオータージェット作業用のサロペットとして構成した場合のプロテクター本体部分の構成を示す表面図(上面側から見た図)である。
図12】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターをウオータージェット作業用のサロペットとして構成した場合のプロテクター本体部分の構成を示す裏面図(裏面側から見た図)である。
図13】この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターをウオータージェット作業用のサロペットとして構成した場合のプロテクター本体部分の要部の構成を示す表面図(上面側から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、添付の図面を参照して、この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターの全体および要部の構成、並びに作用効果について詳細に説明する。
【0034】
すでに述べたように、この出願の発明は、作業者を確実にカバーしながら、しかも、十分な柔軟性があり、エプロン型のプロテクターはもちろん、サロペット等ズボン型のプロテクターや腕カバー型のプロテクター、それらが一体になった防護服型のプロテクターなどの変形度が高いものにも有効に適用することができるウオータージェット作業等に適した作業用のプロテクターを提供することを目的として構成されており、この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターの場合にも、同様の目的を有して構成されている。
【0035】
したがって、この実施の形態に係る作業用プロテクターは、エプロン型のプロテクターはもちろん、サロペット等ズボン型のプロテクターや腕カバー型のプロテクター、それらが一体になった防護服型のプロテクターなどに有効に適用することができるように構成されているが、以下の説明では、一例として、サロペット型(ズボン型の一例)の作業用プロテクター(インナープレート)に適用するようにした場合で説明する。
【0036】
先ず、図1図10は、この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターの基本となるプロテクター本体の全体および各部の構成を、また図11図13は、同構成のプロテクター本体を用いて作製したサロペット型の作業用プロテクター本体の構成を示している。
【0037】
<基本となる作業用プロテクター本体の構成>
この出願の発明の実施の形態に係る作業用プロテクターは、そのプロテクター本体10部分が、たとえば図1図3に示すように、下部側から上部側に順次重ね合わされた裏側外装カバー8、裏カバー1、第1の防護プレート5a,5a・・、第1の干渉防止用生地3、第2の防護プレート5b,5b・・、第2の干渉防止用生地4,4・・、表カバー2、表側外装カバー9、第1の防護プレート5a,5a・・を裏カバー1,第1の干渉防止用生地3,第2の干渉防止用生地4,表カバー2に固定する第1のカシメ部材6a,6a・・、第2の防護プレート5b,5b・・を裏カバー1,第1の干渉防止用生地3,第2の干渉防止用生地4,表カバー2に固定する第2のカシメ部材6b,6b・・、第3の防護プレート5c,5c・・を裏カバー1,第1の干渉防止用生地3,第2の干渉防止用生地4,表カバー2に固定する第3のカシメ部材6c,6c・・とからなっている。
【0038】
上記第1〜第3の各カシメ部材6a,6a・・〜6c、6c・・は、それぞれ裏カバー7側および表カバー8側の表裏両面で締結力アップ用のワッシャ―構造のパッキン(或る程度弾性のある樹脂製のもの)7,7・・を用い、同パッキン7,7・・を介して、上記対応する第1〜第3の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・,裏カバー1,第1の干渉防止用生地3,第2の干渉防止用生地4,表カバー2それぞれを相互に重合状態で一体に締結一体化することによって、第1〜第3の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・をその中心軸位置においてしっかりと固定している。
【0039】
上記裏側外装カバー8および表側外装カバー9は、それぞれ強度の高い例えばポリエステル繊維生地によって形成されている。同生地には、必要に応じて防水加工が施される。
【0040】
上記裏カバー1および表カバー2も、それぞれ強度の高い、所定の厚さの、例えばポリエステル繊維生地によって形成されている。
【0041】
上記第1の干渉防止用生地3,第2の干渉防止用生地4にも、それぞれポリエステル繊維生地が採用されるが、同生地の場合には、上記外装カバー8,9や表裏カバー1,2の場合に比べて薄く、かつ摺動制の高い生地が選ばれている。
【0042】
上記第1〜第3の複数枚の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・は、例えば直径6cm程度(実施例寸法)の金属製の円形薄板(好ましくは正円形薄板)が採用されており、その中心軸部分には、上記第1〜第3のカシメ部材6a、6a・・〜6c、6c・・のカシメ軸が貫挿される貫挿孔が設けられている(符号省略)。金属製の円形薄板としては、たとえばSUS304製の円形金属薄板などの成形性が高く、軽量で、しかも可撓性、復元性がある薄板が適しているが、その他にも、例えばFRPなどの強化プラスティックプレートで、可撓性、復元性のあるものを採用することができる。
【0043】
そして、上記上下に重合する各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・相互の重なり幅は、言うまでもなく着用時において変形する体の部位(この実施の形態の場合は足部である)の最大変形量を考慮し、同変形が生じた場合にも、必要な重なり幅を確保することができる重なり幅に設定されている。
【0044】
この場合、上記第1の防護プレート5a,5a・・は、上記裏カバー1の上面側に図10のように配置され、図6に示すように、上記裏カバー1と上記第1の干渉防止用生地3との間に位置して、上記第1のカシメ部材6a,6a・・により固定されている。また、上記第2の防護プレート5b,5b・・は、上記第1の干渉防止用生地3の上面側に図9のように配置され、図6に示すように、同第1の干渉防止用生地3と上記第2の干渉防止用生地3との間に位置して、第2のカシメ部材6b,6b・・により固定されている。さらに、上記第3の防護プレート5c,5c・・は、上記第2の干渉防止用生地3の上面側に図8のように配置され、図6に示すように、表カバー2と第2の干渉防止用生地4との間に位置して、第3のカシメ部材6c,6c・・により固定されている。このようにして第1〜第3の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・が重合一体化された裏カバー1、第1,第2の干渉防止用生地3,4、表カバー2の積層体10A部分(図4図7参照)が、実質的に本願発明のプロテクター部分を構成している。
【0045】
この場合、上記第1〜第3のカシメ部材6a,6a・・〜6c,6c・・としては、片側カシメ部材又は両側カシメ部材の何れを採用してもかまわないが、この実施の形態では、一例としてカシメ作業の容易な片側カシメ部材を採用して構成している。また、図3および図6の断面図では、カシメ付け後のカシメ部材の構造を簡略化して、一体構造の形で示している。
なお、さらに上記カシメ部材6a〜6cに代えて、リベット部材を同様のカシメ手段として使用することも可能である。
【0046】
この実施の形態の場合、上記円形の第1〜第3の複数枚の防護プレート(第1〜第3の上下3組の複数枚の防護プレート)5a,5a・・〜5c,5c・・は、図7に示されるように、それぞれ縦方向―横方向(X―Y方向)および左右斜め各方向に、それぞれ所定の間隔を保って千鳥状に配置されており、各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・の上下左右両方向および左右斜めの各方向(対角線方向)に各々隣り合う防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・同士の外周縁部が、図示のように、上下左右および斜め各方向に所定の幅ずつ均等に重なり合って、プロテクター面の全体が隙間なくカバーされるようになっている。
【0047】
今、図7の千鳥配置状態において、各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・相互の寸法関係(図面上の実寸)を示すと、以下のようになる。
【0048】
すなわち、図7の配置では、各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・が、図面上で上下方向に8列、左右方向に11列の関係で千鳥状に配置されており、全部で44個の防護プレートが使用されている。
【0049】
そして、上下方向の8列は、上方から下方に6枚、5枚、6枚、5枚、6枚、5枚、6枚、5枚の組み合わせとなっており、6枚のものの左右2枚の(左右に隣り合う)防護プレート軸の中間に5枚のものの防護プレート軸が位置する関係となっている。
【0050】
他方、左右方向の11列は、左側から右側に各々4枚の組み合わせとなっており、左側のものの上下2枚の(上下に隣り合う)防護プレート軸の中間に右側のものの防護プレート軸が位置する関係となっている。
【0051】
そして、図7中における各防護プレートの直径φは24mm、半径rは12mm、上下方向8列の左右各防護プレート軸間の寸法は17mm、左右方向11列の上下各防護プレート軸間の寸法は28mmであり、上下左右各列の列を異にして隣り合う斜め方向(対角線方向)の防護プレート軸相互間の寸法は16mmとなっている。
【0052】
このような寸法関係で、上記44個の各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・が図7のように千鳥配置されている場合には、上記44個の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・相互の重なり幅をそれぞれ6mm確保することができ、図7の状態から明らかなように、自由でスムーズな変形を可能としながら、十分に有効な防護用のプレート面を形成することができる。もちろん、以上の寸法は、あくまでも図7の図面上の寸法であり、それら各部の実際の寸法は、上記防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・の実施例上の寸法(直径6cm)に合わせて同じ比率で拡大されることは言うまでもない。
【0053】
この場合、上記44個の各防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・の図7に示す重合状態は、上述した図10(5a=16枚)、図9(5b=16枚)、図8(5c=12枚)の防護プレートのレイアウトの組み合わせで実現されるが、その上下関係、レイアウト関係は相対的であり、必ずしも図示の組み合わせ例に限定されるものではない。
【0054】
これらの結果、上記円形の金属薄板よりなる第1〜第3の複数枚の防護プレート(第1〜第3の上下3組の防護プレート)5a,5a・・〜5c,5c・・は、それぞれ裏カバー1、第1の干渉防止用生地3、第2の干渉防止用生地4、表カバー2の間に位置して、それぞれ直接接触することなく、強くて、摺動性の高い、第1、第2の干渉防止用生地3,4を介して、袋状に縫い込んだ場合のような拘束力を受けることなく、自由に保持されることになる。
【0055】
したがって、それぞれが円形であり、360度、何れの方向にも変形が自由である円形防護プレート独自の作用に加えて、より柔軟性に優れ、プロテクター全体として、より変形が自由な作業用プロテクターを実現することができる。
【0056】
その結果、装着時の装着感が良好で、作業性に優れたものとなり、従来のようなエプロン型のプロテクターはもちろん、サロペット等のズボン型のプロテクターや腕カバー型のプロテクター、それらが一体になった防護服型のプロテクターなどにも、容易に適用することができるようになる。円筒形状に巻いた使用状態でも自由に変形するので、足部に巻くサロペット等のズボン型のプロテクターとして特に有効なものになる。
【0057】
しかも、上記円形の金属薄板よりなる第1〜第3の複数枚の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・は、それぞれ裏カバー1、第1の干渉防止用生地3、第2の干渉防止用生地4、表カバー2の間に保持され、それらの各々を貫通して、それらの各々を締結一体化する第1〜第3のカシメ部材6a,6a・・〜6c,6c・・のカシメ軸により、中心軸部分を確実に固定して保持されている。
【0058】
したがって、上記円形の金属薄板よりなる第1〜第3の複数枚の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・の各々は、常に正確な位置に確実に保持された状態となり、プロテクター本体10(10A)部分にどのような変形が生じても、位置ずれすることなく、確実なプロテクター機能を発揮する。その結果、非常に安全性が高くなる。
【0059】
このため、この発明の実施の形態に係る作業用プロテクターは、上述のようなウオータージェット作業用のプロテクターだけでなく、耐切創性のある警護用のプロテクターとしても、非常に安全性の高いものに構成することができる。
【0060】
たとえば複数枚の防護シート間に熱接着シートを介して複数枚の防護プレートを重合状態で収納するポケット部を作り、そこに円形の防護プレートを収納して同様の作業用プロテクターを形成することも考えられる。そのようにした場合にも、十分に有効な柔軟性を実現することができる。したがって、それはそれで有用な作業用プロテクターとして使用することができる。
【0061】
しかし、繊維生地である防護シート間を熱接着した防護プレート収納部は耐久性に劣り、また、一定の伸縮性があるために、どうしても或る程度の位置ずれが生じやすい。しかし、以上の構成の作業用プロテクターの場合には、それらの弱点を確実に解消することができる。
【0062】
また、上記のように、円形の金属薄板よりなる第1〜第3の複数枚の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・の各々が、それぞれ裏カバー1、第1の干渉防止用生地3、第2の干渉防止用生地4、表カバー2の間に保持され、それら各々の中心軸部分を貫通して、それらの各々を締結一体化する第1〜第3のカシメ部材6a,6a・・〜6c,6c・・のカシメ軸により、同中心軸部分を確実に固定して保持されている場合、円形の金属薄板(5a,5a・・〜5c,5c・・)同士が平面方向に相対的にスライドすることがなく、また上下に重なるものが直接接触することが無いので、より変形の自由度、スムーズさが向上するだけでなく、従来のような摩擦による静電気発生の恐れもなく(従って、導電性繊維を使用する必要もない)、金属板同士の干渉、摩擦による異音の発生も生じない。したがって、変形時にも、殆ど音がしない非常に静粛性の高いものとなる。
【0063】
図1図5に示す作業用プロテクター本体を用いてサロペット本体を構成した場合>
次に、図11図13は、上記図1図5に示す作業用プロテクター本体10を用いて構成したサロペット本体(サロペット用インナープロテクター本体)11の構成を示している。
【0064】
この図11(表面図)および図12(裏面図)に示すサロペット本体11は、上記図1図5に示す作業用プロテクター本体10をサロペット形状に裁断して構成されており、その全体の構成および内部構造は、上記図1図10のものと全く同一である。
【0065】
ただし、サロペット本体11外周縁部の円弧形状部11Aや斜め形状部11Bでは、外周縁に縫製スペースを確保する必要上、どうしても完全円形の防護プレート5a〜5cを採用し得ないケースが生じる。
【0066】
そこで、そのような場合には、上記円形の防護プレート5a〜5cの一部を切り欠き、円弧形状部11Aや斜め形状部11Bに対応した形状とすることにより対応する。
【0067】
このような構成にした場合にも、基本的には、当該非円形の防護プレート(一部)5a〜5cの中心軸部分を同様のカシメ部材6a〜6cで固定することにより、可能な限り同様の自由な変形を可能とする。したがって、このような構成にしても、上記基本構成の作業用プロテクターと、全く変わらない、柔軟性、しなやかさを実現することができる。
【0068】
ただ、このような非円形構造の防護プレートを採用した場合、カシメ用の中心軸部分は、常に円形薄板の中心軸部分に確保することができるとは限らないので、例えば図13に示すように、同中心軸部分を少しずらせたり、特に切り欠き部が大きい場合には、隣接する円形薄板との重なり合いを考慮した上で、当該形状において可能な限り360°方向に均等に曲げやすい当該形状における金属薄板の中心軸部分でカシメ付けるようにする。
【0069】
<変形例>
すでに述べたように、この発明の実施の形態では、上記第1〜第3の防護プレート5a,5a・・〜5c,5c・・が重合一体化された裏カバー1、第1,第2の干渉防止用生地3,4、表カバー2の積層体10A部分(図4図7)が、実質的に本願発明のプロテクター部分を構成している。
【0070】
したがって、以上の構成における裏側および表側各外装カバー7,8部分は、必ずしも必須の部材ではなく、用途によっては省略することもできる。
【0071】
また、上記円形の防護プレート5a〜5cの円形形状は、できれば正円形状が好ましいが、必ずしも厳格な意味での正円形状に限られるものではなく、当該形状において可能な限り360°方向に均等に曲げやすい略円形形状のものであれば十分である。
【符号の説明】
【0072】
1は、裏カバー
2は、表カバー
3は、第1の干渉防止用生地
4は、第2の干渉防止用生地
5aは、第1の防護プレート
5bは、第2の防護プレート
5cは、第3の防護プレート
6aは、第1のカシメ部材
6bは、第2のカシメ部材
6cは、第3のカシメ部材
7は、パッキン
8は、裏側外装カバー
9は、表側外装カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13