【解決手段】建屋側に取り付けられた被捕捉部材10と、引戸3の一部を切り欠いた部分に取り付けられ、所定の位置で被捕捉部材10を捕捉して引戸3を強制的に移動させるとともに、引戸3の移動を緩衝する捕捉引込機構20とを備えた開閉体緩衝装置であって、捕捉引込機構20は、引戸3を移動させる付勢手段と、引戸3の移動を緩衝する緩衝手段と、付勢手段の付勢力および緩衝手段の緩衝力がそれぞれ伝達され、付勢手段が付勢する方向および緩衝手段が緩衝する方向と略平行に移動するスライド部材とを備えている。
前記付勢手段および前記緩衝手段が上下に配置され、前記付勢手段と前記緩衝手段との間に前記スライド部材が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉体緩衝装置。
前記捕捉引込機構には、一端部が前記スライド部材と連結され、他端部が前記被捕捉部材を捕捉する捕捉ブロックと連結され、回動軸を中心に回動するリンクアームが設けられ、前記スライド部材が移動することによって、前記リンクアームを介して前記捕捉ブロックが前記被捕捉部材を捕捉するように動作させたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の開閉体緩衝装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置(被捕捉部材10、捕捉引込機構20)について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る開閉体緩衝装置を備えた引戸装置1を正面から見た図である。また、
図2(A)は、
図1のA部の拡大斜視図、(B)は(A)の引戸を閉じた状態を示す拡大斜視図である。
【0015】
なお、以下の説明で使用する「左側」「右側」「前側」「奥側」「上側」「下側」とは、
図2に示すように、引戸装置1を正面から見た方向(利用者側から見た方向)をいうものとする。また、「開閉方向」とは、引戸が移動する左右方向をいうものとする。
【0016】
引戸装置1は、
図1に示すように、建屋の開口2の上部に配置された上レール4と、この上レール4の下側に配置される引戸3とで構成されている。なお、
図1では、引戸3を1枚で構成しているが、2枚或いはそれ以上の枚数の引戸3を前後方向に並設するような一般的な引き違いの引戸装置であってもよい。
【0017】
上レール4は、左右方向に連続して延在しており、この上レール4に沿って引戸3が開閉方向(左右方向)に自由に移動するようになっている。この上レール4には、左右方向の所定の位置に被捕捉部材10が取り付けられている。また、引戸3の上側には、被捕捉部材10を捕捉して引き込む捕捉引込機構20が取り付けられている。開閉体緩衝装置は、これらの被捕捉部材10および捕捉引込機構20によって構成されている。
【0018】
引戸3の左側の角部には、
図2(A)、(B)に示すように、捕捉引込機構20の大きさに合わせた切り欠きが形成されており、この切り欠き部分に捕捉引込機構20が嵌め込まれるようにして取り付けられている。また、被捕捉部材10は上レール4の左側端部に配置されている。
【0019】
この開閉体緩衝装置は、引戸3を強い力で閉じようとしたときに、捕捉引込機構20が被捕捉部材10を捕捉して、緩やかに引戸3を閉じた状態に移動させる機能を有している。また、完全に閉じた位置まで引戸3を強制的に移動させるので、引戸3が半開きの状態のまま放置されるのを防止する機能も有している。なお、これらの機能・動作についての詳細は後述する。
【0020】
また、
図1に示すように。捕捉引込機構20を引戸の右側の角部にも取り付け、上レール4の右側端部にも被捕捉部材(図示せず)を設けることで、閉じる場合とは逆に、引戸3を完全に開いた状態まで強制的に移動させるようにすることもできる。
【0021】
図3は、被捕捉部材10を斜め下側から見た斜視図であり、
図4は、
図3の分解斜視図である。また、
図5は、被捕捉部材10を前側から見た正面図であって、(A)は通常状態、(B)(C)は本体部がそれぞれ回動した状態を示すものである。
【0022】
被捕捉部材10は、
図3および
図4に示すように、上レール4に下側から取り付けられるベース部11と、このベース部11の下側に位置する本体部12とで構成されている。
【0023】
ベース部11は、
図4に示すように、上下方向に延びる下側突起11aが設けられている。この下側突起11aには、下側から上側に向けて固定ネジ13、13が挿入されて、上レール4に固定される。また、下側突起11aには、前後方向に貫通する貫通穴15aが設けられている。
【0024】
本体部12は、内部が中空形状に形成されており、その上側が開口している。本体部12は、この内部に下側突起11aが入り込むようにして組み付けられる。また、本体部12には、前後方向に貫通する回動軸穴15bが形成されており、この回動軸穴15bの位置に貫通穴15aを合わせて回動軸(図示せず)を挿入することによって取り付けられる。
【0025】
また、本体部12の下側には、2つの固定ネジ13および高さ調整ネジ14(詳細は後述する)の位置に合わせて工具挿入穴16が設けられている。被捕捉部材10は、この工具挿入穴16から工具を下側から挿入して、固定ネジ13および高さ調整ネジ14を回転させることができるようになっている。
【0026】
本体部12の右側には、被捕捉爪17が設けられている。この被捕捉爪17の右側には、略垂直に起立し、捕捉引込機構20の捕捉ブロック40と当接する当接面19が形成されている。また、被捕捉爪17の左側には、下側から上側に向けて凹んだ形状の捕捉用空間S3が形成されている。この捕捉用空間S3には、捕捉ブロック40と係合する際に捕捉ブロック40が入り込むようになっている(詳細は後述する)。
【0027】
また、被捕捉爪17には、
図3〜
図5(特に
図5(A))に示すように、下側から左斜め上側に向かって延びる弾性爪18が形成されている。この弾性爪18は、右側に力が作用したときに弾性で撓むようになっている。
【0028】
ベース部11と本体部12との間には、
図4に示すように、高さ調整ネジ14が設けられている。この高さ調整ネジ14は、下側突起11aの下側に位置する突部11bに斜めの座部が当たることによって、本体部12の被捕捉爪17の高さ位置を調整できるようにするものである。より詳細には、
図5(A)、(B)に示すように、高さ調整ネジ14を回転させることで、本体部12が、ベース部11に対して回動軸穴15bを中心にR1方向へ回動するようになる。一方、
図5(C)に示すように、高さ調整ネジ14を逆に回転させることで、R2方向にも回動するようになり、被捕捉爪17の高さ位置を自由に変更することができる。
【0029】
図6は、捕捉引込機構20を斜め上側から見た斜視図、
図7は、
図6の分解斜視図である。また、
図8は、捕捉引込機構の捕捉前の状態を示す斜視図であり、
図9は、
図8の状態から、補足後まで動作させた状態を示すものであり、
図6に対応するものである。さらに、
図10は、
図8を別角度から見た斜視図である。また、
図11は、捕捉引込機構20の捕捉前の状態を正面から見た概要図であり、
図12は、捕捉引込機構20の捕捉後の状態を正面から見た概要図である。
【0030】
なお、
図8〜
図12では、説明を容易にするために、後側カバー31または前側カバー37をスケルトン化して内部が見えるようにして記載してある。
【0031】
捕捉引込機構20は、
図6〜
図10に示すように、全体的に直方体形状に形成されており、前後方向の厚みが引戸3の厚みよりも小さくなるように形成されている。また、捕捉引込機構20の左側端部の戸先側パネル100は、引戸3の切り欠きに組み付けられた状態で(
図1、
図2参照)、引戸3の戸先部3aから表出している。
【0032】
この捕捉引込機構20は、
図7に示すように、前後方向の両側を覆う後側カバー31および前側カバー37を備えている。また、これらの後側カバー31および前側カバー37に挟まれた内部には、捕捉ブロック40と、この捕捉ブロック40を移動させるリンクアーム50と、このリンクアーム50の下部を左右方向に移動させるバネ用ブロック部材60およびダンパー80と、これらのバネ用ブロック部材60およびダンパー80の力をリンクアーム50に伝達するスライド部材70とが組み付けられる。
【0033】
後側カバー31および前側カバー37は、
図7に示すように、金属製の板を加工してそれぞれ製作されている。これらのカバー31、37には、前後の対応する同位置に、ガイド穴32、回動中心穴33、第1スライド長穴34、第2スライド長穴35、内側突条部36がそれぞれ設けられている。
【0034】
ガイド穴32は、下側から右斜め上側に延びる第1スライド長穴32aと、この第1スライド長穴32aの上端から右方向に水平に延びる第2スライド長穴32bとが連続する態様で形成されている。
【0035】
回動中心穴33は第2スライド長穴32bの下側に設けられ、詳細は後述する回動軸90が挿通される。第1スライド長穴34および第2スライド長穴35は、回動中心穴33の下側にそれぞれ設けられ、左右方向に水平に延在している。さらに、内側突条部36は、第2スライド長穴35の下側に位置し、捕捉引込機構20の内部に向けて板金を打ち出すようにして突出させている。
【0036】
また、前側カバー37には、
図6〜
図10に示すように、右側端部を後側に向けて折り曲げた右端面部37aと、この右端面部37aの上端を右側に向けて折り曲げた取付部37bとが設けられている。この取付部37bには上側から固定ネジ(図示せず)が挿入され、引戸3の上面に固定される。
さらに、前側カバー37には、左側端部を後側に向けて折り曲げた左端面部37cと、この左端面部37cの下端をさらに下側に延ばした取付部37dとが設けられている(
図13参照)。この取付部37dには左側から固定ネジ(図示せず)が挿入され、戸先側パネル100と共に引戸3の戸先部3aに固定される。
【0037】
捕捉ブロック40は、樹脂材料で一体成型されたものであり、被捕捉部材10を捕捉(係合)するためのものである。この捕捉ブロック40の形状は、
図7および
図11、
図12(特に、
図12参照)に示すように、その右側に当接部45が形成され、左側には捕捉爪46が形成されており、これらの当接部45および捕捉爪46の下側が左右方向で連結された略U字形状になっている。また、この連結されている部分には、その左側に第1ガイドピン挿通穴41が形成され、右側に第2ガイドピン挿通穴42がそれぞれ前後方向に貫通する態様で設けられている。
【0038】
当接部45は、第2ガイドピン挿通穴42の上側部分に位置し、その左側の部分に略垂直に起立する当接面45aが形成されている。
捕捉爪46は、第1ガイドピン挿通穴41から上斜め右側に向けて延びている。また、捕捉爪46には、その上端から右斜め下側に向けて斜めに延びる弾性爪46aが設けられている。この弾性爪46aは、力が作用したときに、弾性によって撓むようになっている。また、捕捉爪46についても、弾性用空間S2を設けることである程度の弾性を持たせている。これは、開閉体緩衝装置の動作途中で被捕捉部材10の当接面19が当接部45に当たる前に誤って捕捉爪46に当たってしまった場合でも(
図15(B)参照)、捕捉爪46が下側に撓んで逃げるようにするためである。また、引戸3を引き込む際に誤動作で被捕捉部材10が捕捉できなかった場合でも、引戸3を閉じる方向に移動させることで、この捕捉爪46が下側に撓んで正規の捕捉位置で捕捉されるようにするためである。
【0039】
また、当接部45および捕捉爪46の間には、略U字形状に凹んだ捕捉用空間S1が形成されている。この捕捉用空間S1には、詳細は後述するが、被捕捉部材10を捕捉引込機構20が捕捉するときに、被捕捉部材10の被捕捉爪17が入り込んで捕捉(係合)されるようになる。
【0040】
第1ガイドピン43は、ガイド穴32および第1ガイドピン挿通穴41に挿通され、ガイド穴32に沿って移動可能に組み付けられる。また、第2ガイドピン44は、ガイド穴32および第2ガイドピン挿通穴42に挿通され、ガイド穴32に沿って移動可能に組み付けられる。さらに、第2ガイドピン44は、リンクアーム50の第2ガイドピン用長穴51にも挿通される態様で組み付けられている。
【0041】
リンクアーム50は、
図7〜
図12に示すように、前側および後側の2枚を一対にして構成されている。このリンクアーム50には、
図7に示すように、長尺に形成されたその上側に第2ガイドピン用長穴51が設けられており、下側にスライド部材用長穴53が設けられている。また、この2つの長穴51、53の間には、回動中心穴52が設けられている。
【0042】
回動中心穴52には、カバー31、37の回動中心穴33と共に回動軸90が挿通され、
リンクアーム50は、回動軸90を中心に回動可能に取り付けられている。また、スライド部材用長穴53には、スライド部材70の突起部73(詳細は後述する)が組み付けられている。
【0043】
バネ用ブロック部材60は、
図7に示すように。略直方体形状に形成されている。また、バネ用ブロック部材60の内部は、
図11、
図12に示すように、その内部が中空形状に
形成されており、その内部に付勢バネ61が取り付けられている。詳細には、バネ用ブロック部材60の左側端部は閉じられており、付勢バネ61の左側端部を受けるようになっている。一方、バネ用ブロック部材60の右側端部には開口63が形成されており、この開口63から付勢バネ61が挿入される。なお、付勢バネ61の右側端部は、前側カバー37の右端面部37aによって受けられており、付勢バネ61がバネ用ブロック部材60を常に左側へ付勢するようになっている。
【0044】
バネ用ブロック部材60の前後方向における両側面には、
図7に示すように、左右方向に水平に延びるスライド突部62が設けられている。このスライド突部62は、
図6および
図8〜
図10に示すように、後側カバー31および前側カバー37の第1スライド長穴34にそれぞれ挿入され、バネ用ブロック部材60が第1スライド長穴34に沿って左右方向に水平に移動するように案内されている。
【0045】
また、バネ用ブロック部材60の前後方向における両側面には、山形溝64が形成されている。
【0046】
スライド部材70は、
図7に示すように、左右の両端をそれぞれ逆方向に折り曲げた略Z形状の板状部材である。より詳細には、スライド部材70には、左側端部を上側に折り曲げた左側受け部71が形成されており、この左側受け部71には、
図8〜
図12に示すように、バネ用ブロック部材60の左側が受けられている。また、スライド部材70の右側端部は下側に折り曲げられた右側受け部74が形成されており、ダンパー80のダンパーアーム81が受けられている。
【0047】
また、スライド部材70には、
図7に示すように、前後方向にそれぞれ突出するスライド突部72がそれぞれ設けられている。このスライド突部72は、カバー31、37の第2スライド穴35に挿入され、スライド部材70が第2スライド長穴35に沿って左右方向に水平に移動するように案内されている。
【0048】
さらに、スライド部材70の前後方向の両側には、
図7に示すように、上側に向けて折り曲げられた山形部75がそれぞれ形成されている。また、山形部75のそれぞれには、前後方向外側に向けて突出する突起部73がそれぞれ設けられている。この突起部73は、
図8〜
図10に示すように、リンクアーム50のスライド部材用長穴53に組み付けられている。また、山形部75は、バネ用ブロック部材60の山形溝64に嵌まり込み、バネ用ブロック部材60とスライド部材70の前後、左右の位置が規制されている。
【0049】
ダンパー80は、
図11、
図12に示すように、その内部にバネを備えた油圧式のダンパーであり、ダンパーアーム81を押し込む力が作用したときに、この力を緩衝するようになっている。このダンパー80の左側端部は前側カバー37の左端面部37cによって受けられている。また、ダンパー80の前後方向における側部は、カバー31、37の内側突条部36によって位置が規制されるようになっている。
【0050】
このように、ダンパー80の緩衝力は、スライド部材70の突起部73を介してリンクアーム50に伝達される。同様に付勢バネ61の付勢力も、スライド部材70を介してリンクアーム50に伝達されている。
【0051】
上述したバネ用ブロック部材60(または付勢バネ61)は、水平方向(左右方向、開閉方向)に移動することで、付勢バネ61の付勢する方向を水平方向に向けている。また、ダンパー80のダンパーアーム81の伸縮を水平方向に向けることで。ダンパー80が緩衝する方向を水平方向に向けている。さらに、バネ用ブロック部材60とダンパー80との間に配置されたスライド部材70は、付勢バネ61の付勢する方向およびダンパー80が緩衝する方向と略平行になるように水平方向に移動するようにしている。このようにそれぞれの方向が略平行になるように構成することで、従来技術のようにバネ用ブロック部材60およびダンパー80を上下方向に回動させながら動作させる必要がなくなる。そのため、回動動作に必要なスペースを設ける必要がなくなり、これらのバネ用ブロック部材60、スライド部材70、およびダンパー80を最小のスペースでコンパクトに配置することができる。
なお、上述した「略平行」という文言は、これらをコンパクトに配置するために必要な程度に平行であるという意味であり、厳密に平行であることを意味するものではない。
【0052】
図13は、
図10の分解斜視図であって、前側カバー37と戸先側パネル100部分のみを示したものである。また、
図14は、戸先側パネル100を正面から見た図であって、(A)〜(C)は、前後調整部材120を前後方向に調整した状態を示すものである。
【0053】
戸先側パネル100は、前側カバー37の左端面部37cに取り付けられ、左端面部37cと戸先側パネル100との間には、偏心ネジ110および前後調整部材120とが組み付けられる。また、戸先側パネル100には、工具を挿入して偏心ネジ110を回転させるための工具挿入穴101が設けられている。
【0054】
偏心ネジ110には、工具挿入穴101から表出する十字溝111が形成されている。また、偏心ネジ110には、
図14に示すように、十字溝111と反対側の面に、突起112が設けられている。この突起112は、偏心ネジ110の中心からずれた位置にあり、右側に向けて突出する態様で形成されている。
【0055】
前後調整部材120は、
図13に示すように、天井部121と、この天井部121から下側に向けて延在する偏心ネジ受け部122が設けられている。また偏心ネジ受け部122には、左側の端面から右側へ凹んだ長穴溝123が形成されている。この長穴溝123には、偏心ネジ110の突起112が挿入されている。この偏心ネジ受け部122は、
図7に示すように、戸先側パネル100の裏側(右側)のコ字状の溝内に嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0056】
天井部121の前後方向の長さは、引戸3の前後方向の厚み寸法よりも長く形成されており、その両端部121aが上レール4によって前後方向の位置が規制される。
図14(A)の状態(通常状態)から偏心ネジ110を左右に90度回転させることで、
図14(B)または
図14(C)に示すように、前後調整部材120に対して、引戸3(または捕捉引込機構20)を前側A1または後側A2にずらすことができる。これにより、被捕捉部材10と捕捉引込機構20との前後方向の位置がずれている場合であっても、このずれを調整して中心が一致した状態で捕捉・解除の動作を行わせることができる。
また、引戸3の前後方向の位置も調整できるので、例えば、引戸3と戸袋とが擦れるようなずれを容易に調整することができる。
【0057】
次に、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置の動作・作用について、
図15および
図16を用いて説明する。
図15および
図16は、開閉体緩衝装置の動作を示す正面図であって、
図15(A)は動作前の状態、
図15(B)は
図15(A)の状態から引戸を左側に移動させた動作直前の状態、
図16(A)は
図15(B)の状態から引戸を左側に移動させた動作途中の状態、
図16(B)は
図16(A)の状態からさらに引戸を左側に移動させた動作完了時の状態を示している。
【0058】
図15(A)に示すように、被捕捉部材10が捕捉引込機構20よりも左側に位置する状態では、開閉体緩衝装置は動作していない。すなわち、利用者が引戸3を開閉している途中の状態であり、通常の引戸と同様に自由に左右へ移動させることができる。
【0059】
この状態では、捕捉引込機構20内のダンパー80は、ダンパーアーム81が伸びており、でスライド部材70の右側受け部74が右側に位置している。また、バネ用ブロック部材60は、スライド部材70の左側受け部71によって右側に押されており、その内部に位置する付勢バネ61を圧縮させている。さらに、スライド部材70の突起部73は、回動軸90よりも右下側にあり、リンクアーム50の上部にある第2ガイドピン44を回動軸90よりも左側に位置させている。
【0060】
また、この第2ガイドピン44は、ガイド穴32の左右方向穴32b内にあり、捕捉ブロック40の第1ガイドピン43は、上下方向穴32aの下側に位置する。この状態では、第1ガイドピン43が左右方向に移動する力(付勢バネ61の付勢力またはダンパー80の伸縮力)をロックしており、捕捉ブロック40は、左下側に傾いた姿勢で保持されるようになる。
【0061】
図15(A)の状態から、利用者が引戸3を左側(閉じる方向)へ移動させると、
図15(B)に示すように、被捕捉部材10の被捕捉爪17が捕捉ブロック40の捕捉爪46の上側を通過して、被捕捉部材10の当接面19と、捕捉引込機構20の捕捉ブロック40の当接面45aとが当接する。
【0062】
図15(B)の状態から、利用者が引戸3をさらに左側に移動させると、
図16(A)に示すように、捕捉ブロック40の当接部45が右側へと押し出され、捕捉ブロック40が第2ガイドピン44を中心にして右回転する。このとき、当接ブロックの捕捉爪46は、被捕捉部材10の捕捉用空間S3(
図3〜
図5参照)内に入り込む。これにより、被捕捉部材10の被捕捉爪17は、捕捉ブロック40の捕捉爪46および当接部45に挟まれる態様で捕捉用空間S1内で捕捉される。
【0063】
また、捕捉される際には、被捕捉部材10の弾性爪18と捕捉ブロック40の弾性爪46aとが突き当たるようになる。このとき、それぞれの弾性爪18,46aが弾性によってそれぞれ撓むことで、突き当たるときの音(干渉音、動作音)をより小さく抑えるようにしている。
【0064】
また、第1ガイドピン43は、上下方向穴32aに沿って上側に移動するとともに、左右方向穴32bへと入り込み、第1ガイドピン43が左右方向に移動する力に対するロックが解除される。
【0065】
この状態では、
図16(B)に示すように、付勢バネ61の付勢力によってスライド部材70が左側方向へと押し出され、リンクアーム50が回動軸90を中心に時計回りに回動し、捕捉ブロック40が捕捉姿勢を維持したまま右側へと移動する。また、付勢バネ61の付勢力は、ダンパーアーム81を押し込む方向に作用するので、捕捉ブロック40が右側に移動する力を緩衝し、緩やかに移動するように機能する。
【0066】
すなわち、
図16(A)の状態から
図16(B)に移動する際には、付勢バネ61の付勢力で被捕捉部材10を引き込むことで、引戸3を完全に閉じた位置まで移動させる。また、引戸3を強い力で閉じたときには、ダンパー80がその力を緩衝して、引戸3を緩やかに閉じるようになる。
【0067】
一方、
図16(B)の状態から利用者が引戸3を開く場合には、上述した逆の動作をすることによって捕捉が解除され、
図15(A)の状態まで戻ることになる。
【0068】
本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置によれば、捕捉引込機構20は、引戸3を移動させる付勢バネ61と、引戸3の移動を緩衝するダンパー80と、付勢バネ61の付勢力およびダンパー80の緩衝力がそれぞれ伝達され、付勢バネ61が付勢する方向およびダンパー80が緩衝する方向と略平行に移動するスライド部材70とを備えているので、これらを構成するためのスペースをより小さくすることができる。そのため、捕捉引込機構の全体の大きさをよりコンパクトにすることができる。
【0069】
また、スライド部材70の移動する方向が、引戸3の開閉方向であるので、上下に移動スペースを設ける必要がなくなり、捕捉引込機構20の上下方向の長さを短く構成することができる。
【0070】
さらに、付勢バネ61およびダンパー80が上下に配置され、付勢バネ61とダンパー80との間にスライド部材70が配置されているので、上下方向にさらにコンパクトに構成することができるようになる。
【0071】
また、捕捉引込機構20には、一端部がスライド部材70と連結され、他端部が被捕捉部材10を捕捉する捕捉ブロック40と連結され、回動軸90を中心に回動するリンクアーム50が設けられ、スライド部材70が移動することによって、リンクアーム50を介して捕捉ブロック40が被捕捉部材10を捕捉するように動作させているので、リンク機構を用いてよりコンパクトな構造で捕捉ブロック40を動作させることができる。特に、リンク機構を利用することで、てこの原理により、付勢バネ61やダンパー80のストロークを短く構成しても、捕捉ブロック40の移動長さを大きくすることができる。そのため、付勢バネ61やダンパー80の長さを短くすることができ、よりコンパクトな構造で捕捉ブロック40を動作させることができる。
【0072】
また、被捕捉部材10および捕捉ブロック40には、捕捉時に当接する弾性爪18、46aがそれぞれ設けられているので、捕捉時に発生する音(干渉音、動作音、当接音)を小さく抑えることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0074】
例えば、本実施の形態では、引戸3の左側の角部に切り欠きを形成して捕捉引込機構20を取り付けているが、角部以外であっても構成することができる。すなわち、切欠きおよびそれに取り付けられる捕捉引込機構20を引戸3の中央寄りに配置したとしても、上述した被捕捉部材10の左右方向の位置をそれに合わせて中央寄りにずらすことで、問題なく開閉体緩衝装置の機能を奏することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、バネ用ブロック部材60(付勢バネ61)が付勢する方向、ダンパー80が緩衝する方向、およびスライド部材70の移動方向を水平方向(左右方向、開閉方向)に向けているが、これに限定されない。例えば、これらの方向が上下方向に向けられて配置されていてもよい。すなわち、これらの方向が平行になるように配置されていれば、これらの構成部材をコンパクトに構成することができるので、捕捉引込機構20をより小さく構成することができる。