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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-32187(P2021-32187A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】高周波焼き入れ装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20210201BHJP
   C21D 1/10 20060101ALI20210201BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20210201BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20210201BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20210201BHJP
   C21D 1/70 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
   F01D25/00 X
   C21D1/10 R
   C21D9/00 N
   C21D1/10 U
   H05B6/06 351
   H05B6/06 393
   F01D5/28
   C21D1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-155199(P2019-155199)
(22)【出願日】2019年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】浅井 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】志々目 佳子
(72)【発明者】
【氏名】石沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健
(72)【発明者】
【氏名】永井 百合香
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝巳
【テーマコード(参考)】
3G202
3K059
4K042
【Fターム(参考)】
3G202BA10
3G202BB04
3K059AA09
3K059AB26
3K059AD04
3K059AD13
3K059CD03
4K042AA25
4K042BA02
4K042BA03
4K042BA10
4K042DA01
4K042DB01
4K042DF02
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より容易かつ適正に温度管理をすることが可能な高周波焼き入れ装置を提供する。
【解決手段】高周波焼き入れ装置100は、タービン翼1を挟み込むU字部、一対が配置された直線部、及びU字部と直線部とを接続する接続部を有する誘導加熱コイル3と、誘導加熱コイル3付近の温度を非接触で検出する温度検出部6と、タービン翼1と誘導加熱コイル3とを翼高さ方向に相対移動させる移動機構4と、誘導加熱コイル3に高周波電流を供給する電流供給部8と、温度検出部6の検出値に基づいて検出値が予め定めた温度を超えないように電流供給部8による前記高周波電流の大きさを制御する電流制御部を有する制御装置90と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼の前縁を挟み込むU字部、前記タービン翼を挟んで一対が配置された直線部、及び、前記タービン翼の背側及び腹側でそれぞれ前記U字部と前記直線部とを接続する接続部を有する誘導加熱コイルと、
前記タービン翼の前縁における該誘導加熱コイル付近の温度を非接触で検出する温度検出部と、
前記タービン翼と前記誘導加熱コイルとを、前記タービン翼の翼高さ方向に相対移動させる移動機構と、
前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給する電流供給部と、
前記温度検出部の検出値に基づいて該検出値が予め定めた温度を超えないように、前記電流供給部による前記高周波電流の大きさを制御する電流制御部を有する制御装置と、
を備える
高周波焼き入れ装置。
【請求項2】
前記温度検出部は、前記前縁における前記タービン翼の背側であって、前記U字部と前記直線部とによって囲まれた部分の温度を検出する請求項1に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項3】
前記タービン翼は前記翼高さ方向の一方側から他方側に向かうに従って該翼高さ方向を中心として周方向に捻れており、
該タービン翼と前記誘導加熱コイルとが前記翼高さ方向に相対移動するに従って該タービン翼を前記翼高さ方向に延びる回転軸回りに回転させることで、前記前縁と前記誘導加熱コイルとの相対距離を維持する回転機構をさらに備える請求項1又は2に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項4】
前記温度検出部は、光ファイバ式放射温度計である請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項5】
前記温度検出部とは別に設けられ、前記前縁における前記温度検出部が温度を検出する範囲よりも広い範囲の温度分布を検出するアラーム用温度検出部をさらに備え、
前記電流制御部は、前記アラーム用温度検出部の検出した前記温度分布に、予め定めたアラーム閾値よりも高い値が含まれる場合にアラームを発するように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項6】
前記タービン翼は、少なくとも前記前縁に黒色塗料で形成された黒色塗膜を有し、
前記温度検出部は、該黒色塗膜の表面の温度を検出するように構成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項7】
前記直線部は、前記タービン翼の表面に沿って前記U字部と平行に延びている請求項1から6のいずれか一項に記載の高周波焼き入れ装置。
【請求項8】
前記U字部は、前記タービン翼の翼弦方向における前記前縁から1/3の距離だけ該タービン翼を挟み込むように構成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の高周波焼き入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波焼き入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、高圧側から低圧側にかけて複数の動翼段が設けられたロータと、ロータを外周側から覆うとともに内周面に複数の静翼段が設けられたステータと、を備えている。上流側から導かれた高温高圧の蒸気は、静翼段によって案内された後、動翼段に衝突することでロータに回転駆動力を与える。ロータの回転エネルギーは軸端から取り出され、発電機等の外部機器の駆動に利用される。
【0003】
ここで、下流側の低圧段になるほど蒸気の温度は低下することから、当該低圧段では蒸気が凝縮して液滴が発生する可能性が高い。このような液滴がタービン翼に高速で衝突すると、当該タービン翼の表面にエロージョンを生じる虞がある。エロージョンの発生を回避するために、例えば下記特許文献1に記載されているように、タービン翼の表面に焼き入れによる硬化処理を施す技術が知られている。特許文献1に係る方法では、タービン翼の表面にレーザー光を照射することで焼き入れ処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−226539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の方法では、レーザー照射による加熱温度の管理が難しいため、場所によって最高加熱温度のばらつきを生じることがある。特に、加熱温度が高すぎると、タービン翼の基材が変性することで靭性が低下してしまう虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より容易かつ適正に温度管理をすることが可能な高周波焼き入れ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る高周波焼き入れ装置は、タービン翼の前縁を挟み込むU字部、前記タービン翼を挟んで一対が配置された直線部、及び、前記タービン翼の背側及び腹側でそれぞれ前記U字部と前記直線部とを接続する接続部を有する誘導加熱コイルと、前記タービン翼の前縁における該誘導加熱コイル付近の温度を非接触で検出する温度検出部と、前記タービン翼と前記誘導加熱コイルとを、前記タービン翼の翼高さ方向に相対移動させる移動機構と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給する電流供給部と、前記温度検出部の検出値に基づいて該検出値が予め定めた温度を超えないように、前記電流供給部による前記高周波電流の大きさを制御する電流制御部を有する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より容易かつ適正に温度管理をすることが可能な高周波焼き入れ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る高周波焼き入れ装置の施工対象物であるタービン翼の構成を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る高周波焼き入れ装置の構成を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る誘導加熱コイルの構成を示す図である。
図4】本開示の実施形態に係る制御装置のハードウェア構成図である。
図5】本開示の実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図6】本開示の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係るタービン翼1、及び高周波焼き入れ装置100について、図1から図6を参照して説明する。
【0011】
(タービン翼の構成)
タービン翼1は、一例として蒸気タービンの低圧段動翼として用いられる。図1に示すように、タービン翼1は、翼本体11と、翼根12と、を有している。翼本体11は、翼高さ方向Dhに延びるとともに、当該翼高さ方向Dhから見て翼型の断面形状を有している。具体的には、翼本体11の断面は、後縁ETから前縁ELにかけて延びる紡錘形状をなしている。また、前縁ELと後縁ETの間を接続する両面のうち、一方側の面(腹面Sp)は曲面状に凹んでいる。他方側の面(背面Sn)は曲面状に膨らんでいる。なお、翼本体11の表面には、黒色塗膜Lbが形成されている。黒色塗膜Lbは、黒色の塗料で形成された薄膜である。
【0012】
さらに、翼本体11は、翼高さ方向Dhにおける一方側から他方側に向かうに従って、3次元的に捻れている。具体的には、翼本体11は、先端11T側から翼根12側に向かうに従って、翼高さ方向Dhを中心として周方向に捻れている。したがって、前縁ELから後縁ETを結ぶ直線(翼弦線)の延びる方向は、先端11T側から翼根12側に向かうに従って変化する。翼根12は、翼本体11をロータのディスク(不図示)に形成された翼溝に取り付けるために、鋸刃状の断面形状を有するセレーション12Sが設けられている。
【0013】
(高周波焼き入れ装置の構成)
高周波焼き入れ装置100は、上記のタービン翼1に対して焼き入れを施すことで硬化処理を行う。図2に示すように、高周波焼き入れ装置100は、架台2と、誘導加熱コイル3と、移動機構4と、回転機構5と、温度検出部6と、アラーム用温度検出部7と、電流供給部8と、制御装置90と、を有している。
【0014】
架台2は、タービン翼1を支持するための板状の架台本体21と、この架台本体21の両端側にそれぞれ設けられた固定部材22と、を有する。タービン翼1は、架台2の載置面2S上で、翼高さ方向Dhの両側から固定部材22によって移動不能な状態で固定される。架台2に固定されている時、タービン翼1は背面Snを上側に向けた状態とされる。
【0015】
(誘導加熱コイルの構成)
誘導加熱コイル3は、架台2上に固定されたタービン翼1の前縁ELに対して、電流供給部8から供給された高周波電流による加熱処理を施すことで焼き入れを行う。図3に示すように、この誘導加熱コイル3は、U字部31と、直線部32と、接続部33と、を有している。U字部31は、前縁EL側の端縁を厚さ方向の両側から挟み込む。U字部31は、背面Sn側から前縁ELを経て腹面Sp側に向かうようにU字状に湾曲している。なお、U字部31は、前縁ELから後縁ETに向かって翼弦長さの1/3の分だけ延びていることが望ましい。
【0016】
直線部32は、タービン翼1の両側に一対設けられ、U字部31に対して翼高さ方向Dhに間隔をあけて平行に延びている。なお、ここで言う「平行」とは、実質的な平行を指すものであり、設計上の公差や製造上の誤差は許容される。接続部33は、U字部31の後縁ET側の端部と、直線部32の後縁ET側の端部とを翼高さ方向Dhに接続している。また、背面Sn側の接続部33の中途位置には、鉄芯Cが設けられている。鉄芯Cは、誘導加熱コイル3が発生させる磁界の磁束密度を高めるために設けられている。誘導加熱コイル3は、タービン翼1の表面に当接していてもよいし、わずかに隙間をあけて配置されていてもよい。
【0017】
(移動機構の構成)
図2に示すように、移動機構4は、上記の誘導加熱コイル3を支持するとともに、翼高さ方向Dhに移動させる。具体的には移動機構4は、翼高さ方向Dhに延びるレール41と、このレール41に沿って移動可能な第一移動部42、及び第一移動部42に支持されている第二移動部43と、を有している。第一移動部42は、レール41から上方に向かって延びている。第一移動部42の翼高さ方向Dhにおける一方側の面には第二移動部43が設けられている。第二移動部43は第一移動部42に沿って上下方向に移動可能とされている。この第二移動部43には、上述の誘導加熱コイル3が支持されている。誘導加熱コイル3は、第二移動部43からタービン翼1に向かって延びている。第一移動部42動かすことによって、タービン翼1に対して誘導加熱コイル3が翼高さ方向Dhに相対移動する。さらに、第二移動部43を動かすことによって、タービン翼1に対して誘導加熱コイル3が上下方向に相対移動する。なお、詳しくは後述するが、移動機構4は制御装置90によってその動作が制御される。
【0018】
(回転機構の構成)
ここで、上述のようにタービン翼1は翼高さ方向Dhの一方側から他方側に向かうに従って3次元的に捻れている。したがって、移動機構4のみでは、誘導加熱コイル3とタービン翼1との相対位置を維持できない可能性がある。そこで、本実施形態に係る高周波焼き入れ装置100には、上記の架台2を回転させる回転機構5が設けられている。回転機構5は、翼高さ方向Dhに延びる回転軸Ax回りに架台2を回転させることが可能である。回転機構5は後述する制御装置90によってその動作が制御される。
【0019】
(温度検出部)
次いで、温度検出部6について説明する。温度検出部6は、タービン翼1の誘導加熱コイル3付近の温度を検出する。より詳細には図3に示すように、温度検出部6が温度を検出する位置(検出点P)は、背面SnにおけるU字部31、直線部32、及び接続部33によって囲まれた領域内にある。つまり、温度検出部6は背面Sn上における局所的な温度を検出する。温度検出部6としては、当該検出点Pの温度を非接触で検出することが可能な光ファイバ式放射温度計が好適に用いられる。また、この温度検出部6は、上述の移動機構4(第二移動部43)に対して支持部61を介して支持固定されている。したがって、移動機構4を動かすことによって誘導加熱コイル3とともに温度検出部6がタービン翼1に対して相対移動する。温度検出部6によって検出された温度の値(検出値)は、制御装置90に電気信号として送信される。
【0020】
(アラーム用温度検出部の構成)
アラーム用温度検出部7は、上記の温度検出部6とは別に設けられた他の検出装置である。アラーム用温度検出部7は、温度検出部6が温度を検出する範囲よりも広い範囲の温度分布を検出する。この範囲内には上記の検出点Pが含まれている。アラーム用温度検出部7としても、光ファイバ式放射温度計が好適に用いられる。アラーム用温度検出部7が検出した温度の値(アラーム用検出値)は、制御装置90に電気信号として送信される。
【0021】
(制御装置の構成)
図4に示すように、制御装置90は、CPU91(Central Processing Unit)、ROM92(Read Only Memory)、RAM93(Random Access Memory)、HDD94(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール95(I/O:Input/Output)を備えるコンピュータである。信号受信モジュール95は、温度検出部6、及びアラーム用温度検出部7からの電気信号(各検出値)を受信する。信号受信モジュール95は、例えばチャージアンプ等を介して増幅された信号を受信してもよい。
【0022】
図5に示すように、制御装置90のCPU91は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部81、記憶部82、判定部83、移動制御部84、電流制御部85を有する。制御部81は制御装置90に備わる他の機能部を制御する。記憶部82は、上述の温度検出部6、及びアラーム用温度検出部7の各検出値に対する閾値(上限値)を記憶している。さらに、記憶部82は、タービン翼1の翼高さ方向における位置座標と、当該タービン翼1の捻れ角度との関係を示すテーブルを記憶している。判定部83は、上記各検出値が閾値を越えているか否かを判定する。電流制御部85は、判定部83の判定結果に基づいて、電流供給部8から誘導加熱コイル3に供給される高周波電流の大きさを制御する。
【0023】
(制御装置の動作)
次に、図6を参照して制御装置90による処理の一例について説明する。同図に示すように、この処理は、運転判定ステップS1と、焼き入れステップS2と、温度検出ステップS31と、アラーム用温度検出ステップS32と、第一判定ステップS41と、第二判定ステップS42と、電流調節ステップS51と、アラームステップS52と、を含む。
【0024】
運転判定ステップS1は、高周波焼き入れ装置100が温度検出部6、及びアラーム用温度検出部7による監視のもとで運転されている状態にあるか否かを判定する。運転状態にないと判定された場合は処理を終了する(ステップS1:No)。一方で、運転状態にあると判定された場合(ステップS1:Yes)、後続の焼き入れステップS2が実行される。
【0025】
焼き入れステップS2は、誘導加熱コイル3に対して、電流制御部85から供給された高周波電流による焼き入れを行う。この時、移動制御部84は、記憶部82に格納された上述のテーブルを参照しながら、移動機構4、及び回転機構5の動作を制御する。つまり、移動機構4が、前縁ELに沿って翼高さ方向Dhに誘導加熱コイル3を移動させるとともに、この前縁ELの捻れ角度に基づいて、回転機構5が架台2を回転させる。この焼き入れステップS2を一回実行することにより、焼き入れが所定の時間、又は所定の移動距離だけ実行される。当該所定の時間が経過した後、又は所定の移動距離だけ焼き入れが完了した後で、温度検出ステップS31、及びアラーム用温度検出ステップS32を並行して実行する。
【0026】
温度検出ステップS31は、タービン翼1の背面Sn上に設定された上述の検出点Pにおける温度を温度検出部6によって検出する。温度検出ステップS31の後で、第一判定ステップS41を実行する。第一判定ステップS41は、温度検出ステップS31で得られた検出値が予め定めた値を超えているか否かを判定する。
【0027】
第一判定ステップS41で検出値が予め定めた値を超えていると判定された場合(ステップS41:Yes)、後続の電流調節ステップS51を実行する。電流調節ステップS51では、制御部81が電流制御部85に対して、電流の大きさを小さくするように指令を出す。これにより、誘導加熱コイル3による加熱温度が低下する。この電流調節ステップS51の後に、再び上述の焼き入れステップS2に戻る。これにより、再び所定の時間、又は所定の距離だけ焼き入れが施される。
【0028】
一方で、第一判定ステップS41で検出値が予め定めた値を超えていないと判定された場合(ステップS41:No)、電流調節ステップS51を経ることなく、再び上述の焼き入れステップS2に戻る。これにより、再び所定の時間、又は所定の距離だけ焼き入れが施される。このサイクルが前縁ELの全域にわたって繰り返される。
【0029】
アラーム用温度検出ステップS32は、タービン翼1の背面Sn上に設定された上述の検出点Pを含む比較的に広い範囲における温度分布をアラーム用温度検出部7によって検出する。アラーム用温度検出ステップS32の後で、第二判定ステップS42を実行する。第二判定ステップS42は、アラーム用温度検出ステップS32で得られた検出範囲の中に温度が予め定めた値(アラーム閾値)を超えている部分があるか否かを判定する。
【0030】
第二判定ステップS42で、検出範囲の中に予め定めた値を超えている部分が含まれていると判定された場合(ステップS42:Yes)、後続のアラームステップS52を実行する。アラームステップS52では、音や光等によって管理者に、温度が上昇傾向にある旨を報知・警告する。なお、アラームステップS52で、電流制御部85による電流供給を遮断する構成を採ることも可能である。このアラームステップS52の後に、再び上述の焼き入れステップS2に戻る。これにより、再び所定の時間、又は所定の距離だけ焼き入れが施される。
【0031】
一方で、第二判定ステップS42で、検出範囲の中に予め定めた値を超えている部分が含まれていないと判定された場合(ステップS42:No)、アラームステップS52を経ることなく、再び上述の焼き入れステップS2に戻る。これにより、再び所定の時間、又は所定の距離だけ焼き入れが施される。このサイクルが前縁ELの全域にわたって繰り返される。
【0032】
(作用効果)
【0033】
上記構成によれば、誘導加熱コイル3のU字部31によってタービン翼1の前縁ELを挟み込んだ状態で、タービン翼1に焼き入れ処理が施される。これにより、例えば局所的に焼き入れ処理を施す工程を繰り返す場合に比べて、より均一に仕上げることができる。
さらに、温度検出部6は、誘導加熱コイル3付近の温度を非接触で検出するように構成されている。これにより、例えば接触式の装置で温度を検出する場合に比べて、当該温度検出部6自体による検出値への影響を小さく抑えることができる。つまり、検出精度を高めることができる。
また、制御装置90は、温度検出部6による検出値に基づいて、誘導加熱コイル3に供給される高周波電流の大きさを制御する。したがって、誘導加熱コイル3による加熱温度が過度に高くなる可能性を低減することができる。
【0034】
上記構成によれば、温度検出部6は、前縁ELにおけるタービン翼1の背側(背面Sn側)であって、U字部31と直線部32とによって囲まれた部分(検出点P)の温度を検出する。これにより、誘導加熱コイル3による加熱温度が最も高くなる部分の温度を検出値として得ることができる。制御装置90は、この検出値が予め定めた値を超えないように、誘導加熱コイル3への電流供給量を制御する。したがって、誘導加熱コイル3による加熱温度が高くなりすぎてしまう可能性をさらに低減することができる。
【0035】
上記構成によれば、タービン翼1が3次元的に捻れている形状を有する場合に、回転機構5によってタービン翼1を翼高さ方向Dhに延びる回転軸Ax回りに回転させることができる。これにより、誘導加熱コイル3自体を移動させることなく、当該誘導加熱コイル3と前縁ELとの相対距離を維持することができる。したがって、より高い精度で加熱温度を管理することができる。
【0036】
上記構成によれば、温度検出部6が光ファイバ式放射温度計であることから、誘導加熱コイル3が発生する誘導電流の影響を受けにくい。これにより、温度検出部6による温度検出をさらに高い精度で実現することができる。
【0037】
上記構成によれば、温度検出部6に加えて、アラーム用温度検出部7が設けられている。アラーム用温度検出部7は、温度検出部6よりも広い範囲の温度分布を検出する。制御装置90は、この温度分布に、アラーム閾値よりも高い値が含まれる場合にアラームを発する。つまり、上記の構成では、誘導加熱コイル3による加熱温度が一部でも高くなり過ぎた場合に、それ以上の加熱を行わないように管理者に警告を発することができる。これにより、より均一かつ高精度に焼き入れ処理をタービン翼に施すことができる。
【0038】
上記構成によれば、タービン翼1の表面に黒色塗膜Lbが形成されている。温度検出部6はこの黒色塗膜Lbの表面の温度を検出する。これにより、例えばタービン翼1の表面に金属材料が露出している場合に比べて、当該表面からの熱の放射率のばらつきが抑えられる。これにより、さらに高い精度で温度を検出することができる。
【0039】
上記構成によれば、タービン翼1の表面に、直線部32とU字部31とによって囲まれた領域が形成される。これにより、当該囲まれた領域内では温度が高い状態が維持される。これにより、効率的かつ均一に焼き入れ処理を施すことができる。
【0040】
ここで、タービン翼1では、翼弦方向(前縁ELと後縁ETを結ぶ方向)における前縁ELから1/3の部分で、特にエロージョンが発生する可能性が高い。上記構成によれば、このような部分に対して積極的に焼き入れ処理を施すことができる。これにより、さらに高い耐久性を有するタービン翼1を得ることができる。
【0041】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、移動機構4によって誘導加熱コイル3及び温度検出部6を翼高さ方向Dhに移動させる構成について説明した。しかしながら、移動機構4によって架台2を翼高さ方向Dhに移動させる構成を採ることも可能である。この場合、装置の構成を簡素化することができる。
【0042】
<付記>
各実施形態に記載の高周波焼き入れ装置は、例えば以下のように把握される。
【0043】
(1)第1の態様に係る高周波焼き入れ装置100は、タービン翼1の前縁ELを挟み込むU字部31、前記タービン翼1を挟んで一対が配置された直線部32、及び、前記タービン翼1の背側及び腹側でそれぞれ前記U字部31と前記直線部32とを接続する接続部33を有する誘導加熱コイル3と、前記タービン翼1の前縁ELにおける該誘導加熱コイル3付近の温度を非接触で検出する温度検出部6と、前記タービン翼1と前記誘導加熱コイル3とを、前記タービン翼1の翼高さ方向Dhに相対移動させる移動機構4と、前記誘導加熱コイル3に高周波電流を供給する電流供給部8と、前記温度検出部6の検出値に基づいて該検出値が予め定めた温度を超えないように、前記電流供給部8による前記高周波電流の大きさを制御する電流制御部85を有する制御装置90と、を備える。
【0044】
上記構成によれば、誘導加熱コイル3のU字部31によってタービン翼1の前縁を挟み込んだ状態で、タービン翼1に焼き入れ処理が施される。これにより、例えば局所的な焼き入れ処理を繰り返す場合に比べて、より均一に仕上げることができる。
さらに、温度検出部6は、誘導加熱コイル3付近の温度を非接触で検出するように構成されている。これにより、例えば接触式の装置で温度を検出する場合に比べて、当該温度検出部6自体による検出値への影響を小さく抑えることができる。つまり、検出精度を高めることができる。
また、制御装置90は、温度検出部6による検出値に基づいて、誘導加熱コイル3に供給される高周波電流の大きさを制御する。したがって、誘導加熱コイル3による加熱温度が過度に高くなる可能性を低減することができる。
【0045】
(2)第2の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記温度検出部6は、前記前縁ELにおける前記タービン翼1の背側であって、前記U字部31と前記直線部32とによって囲まれた部分の温度を検出する。
【0046】
上記構成によれば、誘導加熱コイル3による加熱温度が最も高くなる部分の温度を検出値として得ることができる。制御装置90は、この検出値が予め定めた値を超えないように、誘導加熱コイル3への電流供給量を制御する。したがって、誘導加熱コイル3による加熱温度が高くなりすぎてしまう可能性をさらに低減することができる。
【0047】
(3)第3の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記タービン翼1は前記翼高さ方向Dhの一方側から他方側に向かうに従って該翼高さ方向Dhを中心として周方向に捻れており、該タービン翼1と前記誘導加熱コイル3とが前記翼高さ方向Dhに相対移動するに従って該タービン翼1を前記翼高さ方向Dhに延びる回転軸Ax回りに回転させることで、前記前縁ELと前記誘導加熱コイル3との相対距離を維持する回転機構5をさらに備える。
【0048】
上記構成によれば、タービン翼1が3次元的に捻れている形状を有する場合に、回転機構5によってタービン翼1を翼高さ方向Dhに延びる回転軸Ax回りに回転させることができる。これにより、誘導加熱コイル3自体を移動させることなく、当該誘導加熱コイル3と前縁ELとの相対距離を維持することができる。したがって、より高い精度で加熱温度を管理することができる。
【0049】
(4)第4の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記温度検出部6は、光ファイバ式放射温度計である。
【0050】
上記構成によれば、温度検出部6が光ファイバ式放射温度計であることから、誘導加熱コイル3が発生する誘導電流の影響を受けにくい。これにより、温度検出部6による温度検出をさらに高い精度で実現することができる。
【0051】
(5)第5の態様に係る高周波焼き入れ装置100は、前記温度検出部6とは別に設けられ、前記前縁ELにおける前記温度検出部6が温度を検出する範囲よりも広い範囲の温度分布を検出するアラーム用温度検出部7をさらに備え、前記電流制御部85は、前記アラーム用温度検出部7の検出した前記温度分布に、予め定めたアラーム閾値よりも高い値が含まれる場合にアラームを発するように構成されている。
【0052】
上記構成によれば、温度検出部6に加えて、アラーム用温度検出部7が設けられている。アラーム用温度検出部7は、温度検出部6よりも広い範囲の温度分布を検出する。制御装置90は、この温度分布に、アラーム閾値よりも高い値が含まれる場合にアラームを発する。つまり、上記の構成では、誘導加熱コイル3による加熱温度が一部でも高くなり過ぎた場合に、それ以上の加熱を行わないように管理者に警告を発することができる。これにより、より均一かつ高精度に焼き入れ処理をタービン翼に施すことができる。
【0053】
(6)第6の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記タービン翼1は、少なくとも前記前縁ELに黒色塗料で形成された黒色塗膜Lbを有し、前記温度検出部6は、該黒色塗膜の表面の温度を検出するように構成されている。
【0054】
上記構成によれば、タービン翼の表面に黒色塗膜Lbが形成されている。温度検出部6はこの黒色塗膜Lbの表面の温度を検出する。これにより、例えばタービン翼1の表面に金属材料が露出している場合に比べて、当該表面からの熱の放射率のばらつきが抑えられる。これにより、さらに高い精度で温度を検出することができる。
【0055】
(7)第7の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記直線部32は、前記タービン翼1の表面に沿って前記U字部31と平行に延びている。
【0056】
上記構成によれば、タービン翼1の表面に、直線部32とU字部31とによって囲まれた領域が形成される。これにより、当該囲まれた領域内では温度が高い状態が維持される。これにより、効率的かつ均一に焼き入れ処理を施すことができる。
【0057】
(8)第8の態様に係る高周波焼き入れ装置100では、前記U字部31は、前記タービン翼1の翼弦方向における前記前縁ELから1/3の距離だけ該タービン翼1を挟み込むように構成されている。
【0058】
タービン翼1では、翼弦方向における前縁ELから1/3の部分で、特にエロージョンが発生する可能性が高い。上記構成によれば、このような部分に対して積極的に焼き入れ処理を施すことができる。これにより、さらに高い耐久性を有するタービン翼1を得ることができる。
【符号の説明】
【0059】
100 高周波焼き入れ装置
1 タービン翼
11 翼本体
11T 先端
12 翼根
12S セレーション
2 架台
21 架台本体
22 固定部材
3 誘導加熱コイル
31 U字部
32 直線部
33 接続部
4 移動機構
41 レール
42 第一移動部
43 第二移動部
5 回転機構
6 温度検出部
61 支持部
7 アラーム用温度検出部
8 電流供給部
90 制御装置
81 制御部
82 記憶部
83 判定部
84 移動制御部
85 電流制御部
91 CPU
92 ROM
93 RAM
94 HDD
95 I/O
Ax 回転軸
C 鉄芯
Dh 翼高さ方向
EL 前縁
ET 後縁
Lb 黒色塗膜
P 検出点
Sn 背面
Sp 腹面
図1
図2
図3
図4
図5
図6