特開2021-32263(P2021-32263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2021-32263ハブユニット軸受及びその製造方法、揺動かしめ装置、車両及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-32263(P2021-32263A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】ハブユニット軸受及びその製造方法、揺動かしめ装置、車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/063 20060101AFI20210201BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20210201BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20210201BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20210201BHJP
   B21J 9/02 20060101ALI20210201BHJP
   B21K 1/05 20060101ALI20210201BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
   F16C35/063
   B60B35/02 L
   F16C19/38
   F16C33/64
   B21J9/02 A
   B21K1/05
   B21D39/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-149759(P2019-149759)
(22)【出願日】2019年8月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
(72)【発明者】
【氏名】劉 尊慈
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
4E087
【Fターム(参考)】
3J117AA01
3J117BA10
3J117DA01
3J117DB08
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA72
3J701BA53
3J701BA55
3J701BA64
3J701FA44
3J701GA02
4E087AA10
4E087BA20
4E087CA42
4E087DB01
4E087DB23
4E087HA42
4E087HA82
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑えられるハブユニット軸受の製造方法を実現する。
【解決手段】嵌合軸部29に第2ハブ素子であるハブ輪22を外嵌した状態で、嵌合軸部29の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長する円筒部の軸方向一方側の端面に、第1ハブ素子に相当する軸部材23の中心軸(基準軸C)に対して傾斜した自転軸Lを中心とする回転を自在に支持された押型35に備えられた、自転軸Lに対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状の加工面部36の円周方向一部を押し付けつつ、該押型35を基準軸Cを中心に回転させることにより、前記円筒部を軸方向に押し潰してかしめ部33を形成し、該かしめ部33により被抑え面59を抑え付けることにより、ハブ輪22と軸部材23とを結合固定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、を備え、
前記ハブは、少なくとも第1ハブ素子と第2ハブ素子とを結合固定してなり、
前記第1ハブ素子は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの一方の内輪軌道を有する基部と、該基部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長した嵌合軸部とを備え、
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に外嵌されており、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの他方の内輪軌道を有し、かつ、軸方向一方側の側面に、径方向外側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に傾斜した被抑え面を有する、
ハブユニット軸受の製造方法であって、
前記嵌合軸部に前記第2ハブ素子を外嵌した状態で、前記嵌合軸部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長する円筒部の軸方向一方側の端面に、前記第1ハブ素子の中心軸に対して傾斜した自転軸を中心とする回転を自在に支持された押型に備えられた、前記自転軸に対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状の加工面部の円周方向一部を押し付けつつ、該押型を前記第1ハブ素子の中心軸を中心に回転させることにより、前記円筒部を軸方向に押し潰してかしめ部を形成し、該かしめ部により前記被抑え面を抑え付けることにより、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を備える、
ハブユニット軸受の製造方法。
【請求項2】
前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程において、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸とを含む仮想平面内で、前記円筒部と前記加工面部との当接部が、前記第1ハブ素子の中心軸に対して直交する直線上に存在する、
請求項1に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項3】
前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程において、前記加工面部を含む仮想円すい面の頂点が、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸との交点に存在する、
請求項1又は2に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項4】
前記第1ハブ素子の中心軸に対する前記自転軸の傾斜角度と前記かしめ部の軸方向他方側の側面の形状との関係を調べる試験を行い、該試験の結果に基づいて、前記かしめ部の軸方向他方側の側面を前記被抑え面に沿う形状とすることができる前記傾斜角度を求め、該求めた傾斜角度を採用して、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を行う、
請求項1〜3のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項5】
前記押型の外周面のうち、前記加工面部の径方向内側に隣接する部分に存在する段差面部により、前記円筒部の肉が前記加工面部に沿って径方向内方へ流動することを抑えながら、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を行う、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項6】
前記第2ハブ素子は、前記他方の内輪軌道よりも軸方向一方側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジをさらに有する、
請求項1〜5のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項7】
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に、締め代を有することなく外嵌されている、
請求項1〜6のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項8】
前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子との間に、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子との相対回転を防止する回り止め係合部が存在している、
請求項1〜7のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項9】
前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記基部の軸方向一方側の端面に備えられた第1フェイススプラインと、前記第2ハブ素子の軸方向他方側の端面に備えられた第2フェイススプラインとが噛み合うことにより構成されている、
請求項8に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項10】
前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記かしめ部に形成された係合スリットと、前記第2ハブ素子に備えられた係合凸部とが係合することにより構成されている、
請求項8に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項11】
前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記嵌合軸部の軸方向一方側の端部から径方向外方に突出する係合凸部と、前記第2ハブ素子に備えられた係合凹部とが係合することにより構成されている、
請求項8に記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項12】
前記第1ハブ素子は、前記一方の内輪軌道よりも軸方向他方側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジをさらに有する、
請求項1〜5のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法。
【請求項13】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、を備え、
前記ハブは、少なくとも第1ハブ素子と第2ハブ素子とを結合固定してなり、
前記第1ハブ素子は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの一方の内輪軌道を有する基部と、該基部の軸方向一方側の側面から軸方向一方側に向けて伸長した嵌合軸部とを備え、
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に外嵌されており、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの他方の内輪軌道を有し、かつ、軸方向一方側の側面に、径方向外側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に傾斜した被抑え面を有しており、
前記嵌合軸部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長する円筒部を軸方向に押し潰してかしめ部を形成し、該かしめ部により前記被抑え面を抑え付けることにより、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定している、
ハブユニット軸受を製造するために用いられる揺動かしめ装置であって、
前記第1ハブ素子の中心軸と同軸に配置される基準軸と、
前記基準軸に対して傾斜した自転軸を中心とする回転を自在に支持され、前記基準軸を中心とする回転が可能であり、かつ、前記自転軸に対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状であって、円周方向一部を前記円筒部の軸方向一方側の端面に押し付けるための加工面部を有する押型と、を備える、
揺動かしめ装置。
【請求項14】
前記基準軸と前記自転軸とを含む仮想平面内で、前記円筒部と前記加工面部との当接部が、前記基準軸に対して直交する直線上に存在する、
請求項13に記載の揺動かしめ装置。
【請求項15】
前記加工面部を含む仮想円すい面の頂点が、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸との交点に存在する、
請求項13又は14に記載の揺動かしめ装置。
【請求項16】
前記押型は、外周面のうち、前記加工面部の径方向内側に隣接する部分に、段差面部をさらに有する、
請求項13〜15のうちのいずれかに記載の揺動かしめ装置。
【請求項17】
前記加工面部が、旋削加工面である、
請求項13〜16のうちのいずれかに記載の揺動かしめ装置。
【請求項18】
ハブユニット軸受を備えた車両の製造方法であって、
請求項1〜12のうちのいずれかに記載のハブユニット軸受の製造方法により、前記ハブユニット軸受を製造する、
車両の製造方法。
【請求項19】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、列ごとに複数個ずつ配置された転動体と、を備え、
前記ハブは、少なくとも第1ハブ素子と第2ハブ素子とを結合固定してなり、
前記第1ハブ素子は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの一方の内輪軌道を有する基部と、該基部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長した嵌合軸部とを備え、
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に外嵌されており、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの他方の内輪軌道を有し、かつ、軸方向一方側の側面に被抑え面を有しており、
前記第1ハブ素子は、前記嵌合軸部の軸方向一方側に隣接する、円環状の軸方向一方側端部をさらに備え、該軸方向一方側端部は、径方向外方に張り出し、かつ、前記被抑え面を抑え付けたかしめ部と、該かしめ部の内径側に位置し、かつ、径方向内方に張り出した内向鍔部とを有する、
ハブユニット軸受。
【請求項20】
前記かしめ部及び前記内向鍔部のそれぞれの軸方向一方側の端部を含む、前記第1ハブ素子が備える前記軸方向一方側端部の軸方向一方側の端面は、前記第1ハブ素子の中心軸に対して直交する平坦面である、
請求項19に記載のハブユニット軸受。
【請求項21】
ハブユニット軸受を備えた車両であって、
前記ハブユニット軸受が、請求項19又は20に記載のハブユニット軸受である、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の車輪を懸架装置に対して回転可能に支持するためのハブユニット軸受及びその製造方法、該製造方法を実施するために用いる揺動かしめ装置、並びに、車両及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受において、内輪部材であるハブは、通常、第1ハブ素子と、該第1ハブ素子に外嵌した第2ハブ素子とを含む、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。また、ハブを構成する部品の点数を減らすために、第1ハブ素子と第2ハブ素子とを、ボルトやナットなどの別部品を用いることなく、かしめ部により結合する構造が普及している。
【0003】
図15は、第1ハブ素子と第2ハブ素子とをかしめ部により結合してなるハブの1例を示す要部断面図である。ハブ100は、嵌合軸部102を有する第1ハブ素子101と、筒状の第2ハブ素子103とを備える。第1ハブ素子101は、嵌合軸部102の軸方向一方側端部から軸方向一方側に伸長した円筒部104を径方向外方に塑性変形させることで形成したかしめ部105をさらに有する。そして、該かしめ部105により、第2ハブ素子103の軸方向一方側の側面を抑え付けることで、第1ハブ素子101と第2ハブ素子103とを結合している。
【0004】
また、上述のようなかしめ部105を形成するための装置として、図16に示すような押型107を備えた揺動かしめ装置106が知られている(例えば、特開2001−162338号公報(特許文献1)、特開2007−153247号公報(特許文献2)参照)。押型107は、基準軸Cに対して角度αだけ傾斜した自転軸Lを有し、かつ、下端部に、断面円弧形の凹部を自転軸Lを中心に円環状に形成してなる加工面部108を有する。
【0005】
かしめ部105を形成する際には、ハブ100の中心軸を基準軸Cに一致させた状態で、押型107の加工面部108を、第2ハブ素子103の円筒部104に押し付けつつ、押型107をハブ100の中心軸Cを中心に回転させることにより、円筒部104をかしめ部105に加工する。すなわち、押型107の加工面部108から円筒部104の円周方向一部に、上下方向に関して下方に向き、かつ、径方向に関して外方に向いた加工力を加える。また、この加工力を加える位置を、ハブ100の中心軸Cを中心とする押型107の回転に伴って、円筒部104の円周方向に関して連続的に変化させる。これにより、円筒部104を径方向外方に塑性変形させることで、かしめ部105を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−162338号公報
【特許文献1】特開2007−153247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような揺動かしめ装置106は、ハブユニット軸受の製造コストを低減する面からは、改良の余地がある。すなわち、図示の揺動かしめ装置106では、押型107の加工面部108は、断面円弧形の凹部を自転軸Lを中心に円環状に形成することにより構成されており、形状が複雑である。このため、加工面部108の加工コストが高くなって、押型107が高価になりやすい。したがって、その分、ハブユニット軸受の製造コストが高くなりやすい。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑み、製造コストを抑えられるハブユニット軸受の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造対象となるハブユニット軸受は、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、列ごとに複数個ずつ配置された転動体とを備える。
前記ハブは、少なくとも第1ハブ素子と第2ハブ素子とを結合固定してなる。
前記第1ハブ素子は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの一方の内輪軌道を有する基部と、該基部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長した嵌合軸部とを備える。
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に外嵌されており、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの他方の内輪軌道を有し、かつ、軸方向一方側の側面に、径方向外側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に傾斜した被抑え面を有する。
【0010】
本発明のハブユニット軸受の製造方法は、前記嵌合軸部に前記第2ハブ素子を外嵌した状態で、前記嵌合軸部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長する円筒部の軸方向一方側の端面に、前記第1ハブ素子の中心軸に対して傾斜した自転軸を中心とする回転を自在に支持された押型に備えられた、前記自転軸に対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状の加工面部の円周方向一部を押し付けつつ、該押型を前記第1ハブ素子の中心軸を中心に回転させることにより、前記円筒部を軸方向に押し潰してかしめ部を形成し、該かしめ部により前記被抑え面を抑え付けることにより、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を備える。
【0011】
本発明の一態様では、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程において、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸とを含む仮想平面内で、前記円筒部と前記加工面部との当接部が、前記第1ハブ素子の中心軸に対して直交する直線上に存在する。
【0012】
本発明の一態様では、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程において、前記加工面部を含む仮想円すい面の頂点が、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸との交点に存在する。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1ハブ素子の中心軸に対する前記自転軸の傾斜角度と前記かしめ部の軸方向他方側の側面の形状との関係を調べる試験を行い、該試験の結果に基づいて、前記かしめ部の軸方向他方側の側面を前記被抑え面に沿う形状とすることができる前記傾斜角度を求め、該求めた傾斜角度を採用して、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を行う。
【0014】
本発明の一態様では、前記押型の外周面のうち、前記加工面部の径方向内側に隣接する部分に存在する段差面部により、前記円筒部の肉が前記加工面部に沿って径方向内方へ流動することを抑えながら、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子とを結合固定する工程を行う。
【0015】
本発明の一態様では、前記第2ハブ素子は、前記他方の内輪軌道よりも軸方向一方側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジをさらに有する。
【0016】
本発明の一態様では、前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に、締め代を有することなく外嵌されている。
【0017】
本発明の一態様では、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子との間に、前記第1ハブ素子と前記第2ハブ素子との相対回転を防止する回り止め係合部が存在している。
【0018】
本発明の一態様では、前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記基部の軸方向一方側の端面に備えられた第1フェイススプラインと、前記第2ハブ素子の軸方向他方側の端面に備えられた第2フェイススプラインとが噛み合うことにより構成されている。
【0019】
本発明の一態様では、前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記かしめ部に形成された係合スリットと、前記第2ハブ素子に備えられた係合凸部とが係合することにより構成されている。
【0020】
本発明の一態様では、前記回り止め係合部は、前記第1ハブ素子の前記嵌合軸部の軸方向一方側の端部から径方向外方に突出する係合凸部と、前記第2ハブ素子に備えられた係合凹部とが係合することにより構成されている。
【0021】
本発明の一態様では、前記第1ハブ素子は、前記一方の内輪軌道よりも軸方向他方側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジをさらに有する。
【0022】
本発明の揺動かしめ装置は、前記第1ハブ素子の中心軸と同軸に配置される基準軸と、前記基準軸に対して傾斜した自転軸を中心とする回転を自在に支持され、前記基準軸を中心とする回転が可能であり、かつ、前記自転軸に対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状であって、円周方向一部を前記円筒部の軸方向一方側の端面に押し付けるための加工面部を有する押型とを備える。
【0023】
本発明の揺動かしめ装置の一態様では、前記基準軸と前記自転軸とを含む仮想平面内で、前記円筒部と前記加工面部との当接部が、前記基準軸に対して直交する直線上に存在する。
【0024】
本発明の揺動かしめ装置の一態様では、前記加工面部を含む仮想円すい面の頂点が、前記第1ハブ素子の中心軸と前記自転軸との交点に存在する。
【0025】
本発明の揺動かしめ装置の一態様では、前記押型は、外周面のうち、前記加工面部の径方向内側に隣接する部分に、段差面部をさらに有する。
【0026】
本発明の揺動かしめ装置の一態様では、前記加工面部が、旋削加工面である。
【0027】
本発明の製造対象となる車両は、ハブユニット軸受を備える。
本発明の車両の製造方法は、本発明のハブユニット軸受の製造方法により、前記ハブユニット軸受を製造する。
【0028】
本発明のハブユニット軸受は、内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に、列ごとに複数個ずつ配置された転動体とを備える。
前記ハブは、少なくとも第1ハブ素子と第2ハブ素子とを結合固定してなる。
前記第1ハブ素子は、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの一方の内輪軌道を有する基部と、該基部の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に向けて伸長した嵌合軸部とを備える。
前記第2ハブ素子は、前記嵌合軸部に外嵌されており、外周面に、前記複列の内輪軌道のうちの他方の内輪軌道を有し、かつ、軸方向一方側の側面に被抑え面を有する。
前記第1ハブ素子は、前記嵌合軸部の軸方向一方側に隣接する、円環状の軸方向一方側端部をさらに備え、該軸方向一方側端部は、径方向外方に張り出し、かつ、前記被抑え面を抑え付けたかしめ部と、該かしめ部の内径側に位置し、かつ、径方向内方に張り出した内向鍔部とを有する。
【0029】
本発明のハブユニット軸受の一態様では、前記かしめ部及び前記内向鍔部のそれぞれの軸方向一方側の端部を含む、前記第1ハブ素子が備える前記軸方向一方側端部の軸方向一方側の端面は、前記第1ハブ素子の中心軸に対して直交する平坦面である。
【0030】
本発明の車両は、ハブユニット軸受を備える。
特に、本発明の車両では、前記ハブユニット軸受が、本発明のハブユニット軸受である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、押型の低コストで造れるため、ハブユニット軸受の製造コストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施の形態の第1例のハブユニット軸受を車両に組み付けた状態で示す断面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例のハブ輪の半部切断斜視図である。
図3図3は、実施の形態の第1例に関して、かしめ部を形成するための加工開始時の状態を示す断面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例に関して、かしめ部を形成するための加工終了時の状態を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例に関して、揺動かしめ装置にセットされた試験用組立体を示す断面図である。
図6図6(A)〜図6(D)は、上半部が、試験片に対する押型の接触部Sを示す部分平面図であり、下半部が、試験片の塑性加工領域V及びかしめ部の形状を示す部分断面図である。
図7図7は、実施の形態の第2例の製造対象となるハブユニット軸受の断面図である。
図8図8(A)は、実施の形態の第2例に関して、かしめ部を形成するための加工開始時の状態を示す断面図であり、図8(B)は、該かしめ部を形成するための加工終了時の状態を示す断面図である。
図9図9は、実施の形態の第3例の製造対象となるハブユニット軸受の断面図である。
図10図10は、実施の形態の第3例に関して、かしめ部を形成するための加工を行う直前の状態を示す、ハブユニット軸受の部分断面図である。
図11図11は、実施の形態の第4例の製造対象となるハブユニット軸受の断面図である。
図12図12は、実施の形態の第4例に関して、かしめ部を形成するための加工終了時の状態を示す断面図である。
図13図13は、実施の形態の第5例に関して、かしめ部を形成するための加工終了時の状態を示す断面図である。
図14図14は、図13のA部拡大図である。
図15図15は、ハブユニット軸受の従来構造の1例を示す、要部断面図である。
図16図16は、従来方法によりかしめ部を形成する状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図6を用いて説明する。
【0034】
(ハブユニット軸受1の構成)
図1は、本例の製造対象となるハブユニット軸受1を示している。ハブユニット軸受1は、従動輪用であり、外輪2と、ハブ3と、複数個の転動体4a、4bとを備える。
【0035】
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向外側となる、図1の左側であり、軸方向内側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向中央側となる、図1の右側である。また、本例では、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側が、軸方向一方側に相当し、軸方向内側が、軸方向他方側に相当する。
【0036】
外輪2は、中炭素鋼などの硬質金属製で、複列の外輪軌道5a、5bと、静止フランジ6とを備える。複列の外輪軌道5a、5bは、外輪2の軸方向中間部内周面に形成されており、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうほど直径が大きくなる方向に傾斜した円すい凹面である。静止フランジ6は、外輪2の軸方向中間部から径方向外方に突出しており、円周方向複数箇所にねじ孔である支持孔7を有する。
【0037】
外輪2は、車両の懸架装置を構成するナックル8の通孔9を挿通したボルト10を、静止フランジ6の支持孔7に軸方向内側から螺合して締め付けることで、ナックル8に支持固定されている。
【0038】
ハブ3は、外輪2の径方向内側に、外輪2と同軸に配置されており、複列の内輪軌道11a、11bと、回転フランジ12と、パイロット部13とを備える。複列の内輪軌道11a、11bは、ハブ3の外周面のうち、複列の外輪軌道5a、5bに対向する部分に形成されており、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうほど直径が大きくなる方向に傾斜した円すい凸面である。回転フランジ12は、外輪2よりも軸方向外側に位置するハブ3の軸方向外側部から径方向外方に突出しており、円周方向複数箇所に取付孔14を有する。パイロット部13は、ハブ3の軸方向外側部のうち、回転フランジ12の径方向内側に隣接する部分から軸方向外側に延びる円筒状の部位である。
【0039】
また、図示の例では、ディスクやドラムなどの制動用回転体15を回転フランジ12に結合固定するために、制動用回転体15をパイロット部13の軸方向内側部に外嵌した状態で、スタッド16の基端寄り部分に備えられたセレーション部を、取付孔14に圧入し、かつ、スタッド16の中間部を、制動用回転体15の通孔17に圧入している。さらに、車輪を構成するホイール18を回転フランジ12に固定するために、ホイール18をパイロット部13の軸方向外側部に外嵌した状態で、スタッド16の先端部に備えられた雄ねじ部を、ホイール18の通孔19に挿通した状態で、該雄ねじ部にナット20を螺合して締め付けている。
【0040】
転動体4a、4bは、それぞれが軸受鋼などの硬質金属製あるいはセラミックス製で、複列の外輪軌道5a、5bと複列の内輪軌道11a、11bとの間に、列ごとに複数個ずつ配置されている。また、転動体4a、4bは、列ごとに、保持器21a、21bにより転動自在に保持されている。なお、本例では、転動体4a、4bのそれぞれは、円すいころである。
【0041】
本例では、ハブ3は、それぞれが中炭素鋼などの硬質金属製である、第1ハブ素子に相当する軸部材23と、第2ハブ素子に相当するハブ輪22とを組み合わせてなる。
【0042】
ハブ輪22は、筒状に構成されており、軸方向内側部外周面に複列の内輪軌道11a、11bのうちの軸方向外側の内輪軌道11aを有し、軸方向外側部に回転フランジ12及びパイロット部13を有する。すなわち、第2ハブ素子に相当するハブ輪22は、他方の内輪軌道に相当する軸方向外側の内輪軌道11aよりも軸方向一方側である軸方向外側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジ12を有する。また、ハブ輪22は、該ハブ輪22の軸方向中間部及び内側部の径方向中心部を軸方向に貫通する中心孔24を備える。中心孔24の内周面は、軸方向に関して内径が変化しない円筒面である。また、ハブ輪22は、軸方向外側面のうち、パイロット部13よりも径方向内側に位置する部分である、パイロット部13の内周面と中心孔24の内周面とを接続する部分に、径方向外側に向かうほど軸方向外側に向かう方向に傾斜した傾斜面部25を有する。傾斜面部25は、図示の例では、直線状の母線を有する円すい凹面であるが、略円弧形の母線を有する凹曲面であっても良い。さらに、ハブ輪22は、軸方向内側の端面26に、円周方向に関する凹凸部である第2フェイススプライン27を有する。
【0043】
軸部材23は、外周面に複列の内輪軌道11a、11bのうちの軸方向内側の内輪軌道11bを有する筒状の基部28と、該基部28の径方向内側部から軸方向外方に延びる円筒状の嵌合軸部29とを有する。嵌合軸部29は、ハブ輪22の中心孔24の内径よりもわずかに小さい外径を有する。また、軸部材23は、基部28の軸方向外側の端面である、基部28の外周面と嵌合軸部29の外周面とを接続する段差面30に、円周方向に関する凹凸部である第1フェイススプライン31を有する。第1フェイススプライン31は、第2フェイススプライン27に対し、円周方向のがたつきなく噛み合うことが可能である。
【0044】
ハブ輪22と軸部材23とは、ハブ輪22の中心孔24に軸部材23の嵌合軸部29を挿入することにより、ハブ輪22を嵌合軸部29に径方向のがたつきなく外嵌し、かつ、第1フェイススプライン31と第2フェイススプライン27とを噛み合わせることにより、ハブ輪22と軸部材23との相対回転を防止した状態で結合固定されている。具体的には、この状態で、嵌合軸部29の軸方向外側端部から軸方向外方に伸長した円筒部32(図3参照)を軸方向に押し潰すことで形成したかしめ部33により、ハブ輪22の傾斜面部25の径方向内側部(傾斜面部25のうち、中心孔24の軸方向外側開口の周囲部分)である被抑え面59を抑え付けることで、ハブ輪22と軸部材23とが結合固定されている。換言すれば、軸部材23は、嵌合軸部29の軸方向外側に隣接する円環状の軸方向外側端部に、径方向外方に張り出したかしめ部33をさらに備える。そして、かしめ部33により、ハブ輪22の被抑え面59を抑え付けることで、ハブ輪22と軸部材23とが結合固定されている。すなわち、ハブ輪22は、軸部材23の段差面30とかしめ部33との間で軸方向に挟持された状態で、軸部材23に結合固定されている。また、このようにハブ輪22と軸部材23とが結合固定された状態で、転動体4a、4bに適正な予圧が付与されている。また、本例では、被抑え面59に当接する、かしめ部33の軸方向内側面である抑え面42は、被抑え面59に沿った形状を有する。また、図示の例では、軸部材23は、軸方向外側端部における、かしめ部33の内径側に、径方向内方に張り出した内向鍔部41をさらに備える。かしめ部33及び内向鍔部41のそれぞれの軸方向外側端部を含む、軸部材23の円環状の軸方向外側端部の軸方向外端面は、軸部材23の中心軸に対して直交する平坦面61である。
【0045】
上述のような本例のハブユニット軸受1では、嵌合軸部29は、ハブ輪22の中心孔24の内径よりもわずかに小さい外径を有する。このため、ハブ輪22は、嵌合軸部29に締め代を有することなく外嵌されている。換言すれば、嵌合軸部29は、中心孔24に圧入されておらず、嵌合軸部29の外周面と中心孔24の内周面とが締め代を有することなく嵌合している。このため、嵌合軸部29を中心孔24に挿入することに伴って、複列の内輪軌道11a、11bが拡径方向に変形(膨張)することはない。また、かしめ部33は、複列の内輪軌道11a、11bからの距離が大きく離れた、ハブ輪22の軸方向外側面の径方向内側部に位置する被抑え面59を抑え付けている。このため、かしめ部33の形成に伴って、複列の内輪軌道11a、11bが拡径方向に変形することを十分に抑えられる。したがって、本例のハブユニット軸受1では、転動体4a、4bに適正な予圧を付与しやすい。
【0046】
また、本例のハブユニット軸受1では、ハブ輪22の第2フェイススプライン27と軸部材23の第1フェイススプライン31とを噛み合わせているため、ハブ輪22と軸部材23とが相対回転(クリープ)することを防止できる。
【0047】
(揺動かしめ装置34の構成)
次に、かしめ部33を形成して、ハブ輪22と軸部材23とを結合固定するための揺動かしめ装置34について、図3を参照しつつ説明する。揺動かしめ装置34は、上下方向の基準軸Cと、基準軸Cを中心とする回転(公転)を可能に支持された押型35とを備える。
【0048】
押型35は、かしめ部33を形成するための工具であり、基準軸Cに対して角度α(0<α<90°)だけ傾斜した自転軸Lを有し、該自転軸Lを中心とする回転(自転)を自在に支持されている。すなわち、押型35は、基準軸Cを中心とする回転(公転)を可能に支持されているとともに、自転軸Lを中心とする回転(自転)を自在に支持されている。なお、押型35を支持する部分の構造については、従来から知られた揺動かしめ装置の構造を含む、各種の構造を採用することができる。押型35は、下側部に、自転軸Lに対して傾斜した直線状の母線を有する凸曲面状(自転軸Lを中心とする円すい凸面状)の加工面部36を有する。なお、加工面部36を形成するための加工方法は、特に問わない。例えば、加工面部36は、鍛造加工により形成された鍛造加工面や、旋削加工により形成された旋削加工面とすることができる。本例では、自転軸Lに対する加工面部36の母線の傾斜角度βは、(90°−α)である。すなわち、本例では、基準軸Cと自転軸Lとを含む仮想平面内で、加工面部36のうち、下端に位置する部分(図3及び図4のX部分)は、基準軸Cに対して直交する直線上に存在している。また、本例では、加工面部36を含む仮想円すい面の頂点は、基準軸Cと自転軸Lとの交点Pに存在している。
【0049】
(ハブユニット軸受1の製造方法)
次に、ハブユニット軸受1を製造する際に、揺動かしめ装置34を用いてかしめ部33を形成する方法について説明する。
【0050】
かしめ部33の形成作業は、かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1を組み立てた状態で行う。このため、予め、かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1を組み立てておく。
【0051】
かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1は、適宜の手順で組み立てることができるが、例えば、次のような手順で組み立てることができる。まず、ハブ輪22のうち、軸方向外側の内輪軌道11aの周囲に、軸方向外側列の転動体4aを、軸方向外側の保持器21aにより保持した状態で配置し、さらに、ハブ輪22の周囲に、外輪2を配置する。次に、かしめ部33を形成する前の軸部材23のうち、軸方向内側の内輪軌道11bの周囲に、軸方向内側列の転動体4bを、軸方向内側の保持器21bにより保持した状態で配置する。そして、該軸部材23の嵌合軸部29を、ハブ輪22の中心孔24に挿入し、第1フェイススプライン31と第2フェイススプライン27とを噛み合わせることで、かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1を組み立てる。
【0052】
揺動かしめ装置34を用いてかしめ部33を形成する際には、まず、図3に示すように、かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1の軸方向外側部を上方に向けるとともに、ハブ3の中心軸(第1ハブ素子に相当する軸部材23の中心軸、第2ハブ素子に相当するハブ輪22の中心軸)を基準軸Cに一致させた状態で、軸部材23を、図示しないホルダにより支持する。なお、揺動かしめ装置34の角度αは、完成後のかしめ部33の抑え面42が被抑え面59に沿った形状となるよう、後述する方法により予め調整しておく。
【0053】
次に、この状態で、円筒部32をかしめ部33に加工する作業を開始する。すなわち、図3図4に示すように、押型35を下方に移動させるか、又は、ハブユニット軸受1を上方に移動させることにより、押型35の加工面部36の円周方向一部で、下端に位置する部分(X部分)を、軸部材23の円筒部32の軸方向外側の端面に押し付けつつ、押型35を基準軸Cを中心に回転させることにより、円筒部32をかしめ部33に加工する。すなわち、本例では、基準軸Cと自転軸Lとを含む仮想平面内で、加工面部36と円筒部32との当接部を、基準軸Cに直交する直線上に存在させることにより、加工面部36から円筒部32の円周方向一部に、上下方向に関して下方に向いた加工力を加える。また、この加工力を加える位置を、基準軸Cを中心とする押型35の回転に伴って、円筒部32の円周方向に関して連続的に変化させる。これにより、円筒部32を軸方向に押し潰すことで、かしめ部33及び内向鍔部41を形成する。なお、本例では、基準軸Cと自転軸Lとを含む仮想平面内で、加工面部36と円筒部32との当接部を、基準軸Cに直交する直線上に存在させるため、かしめ部33及び内向鍔部41のそれぞれの軸方向外側端部を含む、軸部材23の円環状の軸方向外側端部の軸方向外端面は、軸部材23の中心軸に対して直交する平坦面61となる。
【0054】
このようにしてかしめ部33及び内向鍔部41を形成する際に、押型35は、加工面部36と円筒部32との接触部に作用する摩擦力に基づいて、自転軸Lを中心に回転する。すなわち、円筒部32に対する加工面部36の接触は、転がり接触となる。特に、本例では、加工面部36を含む仮想円すい面の頂点が、基準軸Cと自転軸Lとの交点Pに存在している。このため、円筒部32をかしめ部33及び内向鍔部41に加工する際に、加工面部36と円筒部32(かしめ部33及び内向鍔部41)との接触部で差動滑りが生じることを防止できる。具体的には、該接触部のいずれの径方向位置においても、円周方向の滑りが生じることを防止できる。このため、加工面部36と円筒部32(かしめ部33及び内向鍔部41)との接触部における摩耗や発熱を十分に抑えられる。
【0055】
以上のような本例のハブユニット軸受1の製造方法では、揺動かしめ装置34を構成する押型35の加工面部36が、単純な形状である円すい凸面状に形成されている。このため、加工面部36の加工コストを抑えられ、押型35を安価に製造することができる。したがって、その分、ハブユニット軸受1の製造コストを抑えられる。
【0056】
さらに、加工面部36が円すい凸面状であるため、かしめ部の径寸法が異なる複数の名番のハブユニット軸受を製造する際にも、共通の押型35を用いて、該かしめ部を形成することができる。このため、製造対象となるハブユニット軸受の名番が変わるたびに、揺動かしめ装置34の押型35を取り換えるといった面倒な作業を省略できる。したがって、これらの面からも、ハブユニット軸受1の製造コストを抑えられる。
【0057】
(角度αの調整方法)
次に、図5及び図6に基づいて、かしめ部33の抑え面42の形状を被抑え面59に沿った形状にすることができる、揺動かしめ装置34の角度α(及びβ=90°−α)の調整方法について説明する。
【0058】
まず、角度α(及びβ)が異なる複数の押型35を用意する。そして、用意した押型35ごとに、該押型35を含む揺動かしめ装置34を用いて、かしめ部33z(図6(A)〜図6(D)参照)を形成する試験を行う。該試験は、例えば、図5に示すような試験用組立体37を用いて行うことができる。
【0059】
試験用組立体37は、揺動かしめ装置34に対して、押型35の下方にセットされており、支持台38と、支持筒部材39と、試験片40とを備える。支持台38は、基準軸Cを中心とする径方向の移動を阻止されている。支持筒部材39は、基準軸Cと同軸に配置され、かつ、支持台38の上面に支持固定されている。試験片40は、円筒状に構成され、支持筒部材39に径方向のがたつきなく内嵌支持されることにより、基準軸Cと同軸に配置されるとともに、下端面が支持台38の上面により支持され、かつ、上端部が支持筒部材39の内径側から上方に突出している。このような試験片40の材質、並びに、該試験片40の上端部の形状及び大きさは、かしめ部33を形成する前のハブユニット軸受1の円筒部32と同じである。
【0060】
角度α(及びβ)が異なる複数の押型35ごとに、該押型35を含む揺動かしめ装置34を用いて、試験用組立体37を構成する試験片40の上端部をかしめ部33zに加工する試験を行うと、例えば図6(A)〜図6(D)に示すような試験結果が得られる。該試験結果に示されるように、かしめ部33zは、角度α(及びβ)によって異なった形状になる。この理由は、角度α(及びβ)によって、試験片40に対する加工面部36の接触部(斜格子を付した範囲S)の面積(円周方向幅)が変化し、これに伴って、試験片40の塑性変形領域(斜格子を付した範囲V)の体積(軸方向深さ)が変わるためであり、具体的には、角度αが大きくなるほど、接触部Sの面積(円周方向幅)が小さくなり、これに伴って、塑性変形領域Vの体積(軸方向深さ)が小さくなるためである。特に、かしめ部33zの抑え面42zはいずれも、径方向外側に向かうほど軸方向一方側(図6(A)〜図6(D)の上側)に向かう方向に傾斜した傾斜面(略円弧形の母線を有する凸曲面や、略直線状の母線を有するテーパ面)となるが、その具体的な形状は、角度α(及びβ)によって異なった形状となる。
【0061】
そこで、上述のような試験結果に基づいて、かしめ部33zの抑え面42zが、ハブ輪22の被抑え面59に沿った形状となる角度α(及びβ)を求める。つまり、上述のような試験結果のうち、かしめ部33zの抑え面42zが、ハブ輪22の被抑え面59に沿った形状となる角度α(及びβ)を選択する。そして、このように選択した角度αを採用して、ハブユニット軸受1を製造する際のかしめ部33の形成を行う。
【0062】
このようにすれば、ハブ輪22の被抑え面59の径方向内側部に対するかしめ部33の接触面積を十分に確保できるとともに、ハブ輪22の被抑え面59の径方向内側部に対するかしめ部33の接触面圧が過度に大きくなることを防止できる。このため、ハブ輪22と軸部材23との結合強度、及び、かしめ部33の耐久性を高めることができる。
【0063】
なお、本例では、押型35の加工面部36が円すい凸面状であり、かつ、基準軸Cと自転軸Lとを含む仮想平面内で、加工面部36と円筒部32との当接部を、基準軸Cに直交する直線上に存在させているため、円筒部32をかしめ部33に加工する際に、加工面部36によって円筒部32を軸方向に押し潰す過程で、押し潰された肉の一部が加工面部36に沿って径方向内方へ流動する傾向となる。この傾向は、角度αが大きくなるほど(換言すれば、接触部Sの形状が長方形に近づくほど、さらに換言すれば、外径側と内径側との変形量の差が小さくなるほど)大きくなる。そして、図6(A)〜図6(D)にも示されているように、角度αが所定値以上(図示の例では15°以上)になると、完成後のかしめ部33(33z)の内径側に、径方向内方に張り出した内向鍔部41(41z)が形成される。図1及び図4は、このような内向鍔部41が形成された例を示している。内向鍔部41は、かしめ部33の形状を維持するための補強リブとして機能させることができる。ただし、内向鍔部41は、必要に応じて、切削加工などにより除去しても良い。
【0064】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図7及び図8を用いて説明する。
【0065】
本例の製造対象となるハブユニット軸受1aでは、ハブ輪22aの軸方向内側の端面26aと、軸部材23aの段差面30aとは、それぞれが軸方向に直交する平坦面であり、互いに平面接触している。すなわち、本例では、端面26aと段差面30aとをフェイススプライン係合させることで、ハブ輪22aと軸部材23aとの相対回転を防止するといった構成を採用していない。
【0066】
本例では、軸部材23aのうち、嵌合軸部29よりも軸方向外側に位置する軸方向外側の端部(かしめ部33a及び内向鍔部41aを含む)は、円周方向複数箇所に、径方向両側及び軸方向外側に開口する、係合スリット(切り欠き)43を有する。また、ハブ輪22aは、傾斜面部25aの径方向内側部のうち、係合スリット43と整合する円周方向複数箇所に、係合凸部44を有する。そして、かしめ部33aの係合スリット43と、傾斜面部25aの係合凸部44とを円周方向のがたつきなく係合させることにより、ハブ輪22aと軸部材23aとが相対回転することを防止している。
【0067】
本例のハブユニット軸受1aの製造方法では、かしめ部33aを形成する前のハブユニット軸受1aを組み立てる前に、ハブ輪22aを構成する傾斜面部25aの径方向内側部の円周方向複数箇所に係合凸部44を形成し、かつ、軸部材23aを構成する円筒部32aの円周方向複数箇所に軸方向に伸長する軸方向スリット45(図8(a)参照)を形成しておく。そして、かしめ部33aを形成する前のハブユニット軸受1aを組み立てる。この際に、ハブ輪22aの係合凸部44と、軸部材23aの軸方向スリット45との、円周方向に関する位相を一致させておく。そして、この状態で、図8(A)→図8(B)に示すように、揺動かしめ装置34を用いて、円筒部32aを軸方向に押し潰す。これにより、かしめ部33a及び内向鍔部41aを形成するとともに、軸方向スリット45を係合スリット43とし、該係合スリット43と係合凸部44とを係合させて、ハブ輪22aと軸部材23aとを結合固定する。
【0068】
本例では、円周方向複数箇所に軸方向スリット45を有する円筒部32aを軸方向に押し潰すことにより、かしめ部33a及び内向鍔部41aを形成している。このため、かしめ部33a及び内向鍔部41aを形成する際に、円筒部32aに大きな円周方向応力が加わることを防止できて、かしめ部33a及び内向鍔部41aに割れなどの損傷が生じることを、より確実に防止できる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0069】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図9及び図10を用いて説明する。
【0070】
本例の製造対象となるハブユニット軸受1bでは、ハブ輪22bの軸方向内側の端面26aと、軸部材23bの段差面30aとは、それぞれが軸方向に直交する平坦面であり、互いに平面接触している。すなわち、本例では、端面26aと段差面30aとをフェイススプライン係合させることで、ハブ輪22aと軸部材23aとの相対回転を防止するといった構成を採用していない。
【0071】
本例では、ハブ輪22bに備えられた複数個の係合凹部46と、軸部材23bに備えられた複数個の係合凸部47とを、円周方向のがたつきなく係合させることにより、ハブ輪22bと軸部材23bとが相対回転することを防止している。係合凹部46は、ハブ輪22bの円周方向複数箇所に、傾斜面部25bの径方向内側部と中心孔24aの軸方向外側端部の内周面とに開口するように形成されている。係合凸部47は、軸部材23bの嵌合軸部29の軸方向外側端部の円周方向複数箇所に、径方向外方に突出するように形成されている。なお、係合凸部47は、後述するように、かしめ部33bを形成する以前の軸部材23bを構成する円筒部32bの外周面に、肉寄せ加工を施すことにより形成される。したがって、円筒部32bを軸方向に押し潰すことで形成されたかしめ部33bの軸方向内側面のうち、円周方向に関する位相が係合凸部47と一致し、かつ、該係合凸部47よりも径方向外側に位置する部分には、軸方向内側及び径方向外側に開口する凹溝48が径方向に形成されている。
【0072】
本例のハブユニット軸受1aの製造方法では、かしめ部33bを形成する前のハブユニット軸受1bを組み立てる前に、ハブ輪22bの円周方向複数箇所に係合凹部46を形成しておく。そして、かしめ部33aを形成する前のハブユニット軸受1aを組み立てる。そして、この際に、ハブ輪22bの中心孔24aに軸部材23bの嵌合軸部29を挿入した後、又は、該中心孔24aに該嵌合軸部29を挿入するのと同時に、軸部材23bの円筒部32bの径方向外側部のうち、円周方向に関する位置が係合凹部46と一致する複数箇所を、図示しない工具を用いて、軸方向内側に向け押圧して塑性変形させる肉寄せ加工を行う。これにより、図10に示すように、該複数箇所のそれぞれに、凹溝48zを形成するとともに、該凹溝48zの形成に伴って生じた余肉により係合凸部47を形成して、該係合凸部47を係合凹部46に円周方向のがたつきなく係合させる。その後、揺動かしめ装置34(図3及び図4参照)を用いて、円筒部32bをかしめ部33bに加工すると同時に、凹溝48zの軸方向外側部を凹溝48として、ハブ輪22bと軸部材23bとを結合固定する。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0073】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、図11及び図12を用いて説明する。
【0074】
本例の製造対象となるハブユニット軸受1cでは、ハブ3aは、第1ハブ素子に相当するハブ輪49と、第2ハブ素子に相当する内輪50とを組み合わせてなる。
【0075】
なお、本例では、ハブユニット軸受1cに関して、軸方向内側が軸方向一方側に相当し、軸方向外側が軸方向他方側に相当する。
【0076】
ハブ輪49は、基部に相当する軸方向中間部の外周面に複列の内輪軌道11a、11bのうちの軸方向外側の内輪軌道11aを有し、かつ、軸方向外側部に回転フランジ12及びパイロット部13を有する。すなわち、第1ハブ素子に相当するハブ輪49は、一方の内輪軌道に相当する軸方向外側の内輪軌道11aよりも軸方向他方側である軸方向外側に位置する部分から径方向外方に突出した回転フランジ12を有する。また、ハブ輪49は、軸方向外側の内輪軌道11aよりも軸方向内側に位置する軸方向内側部に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さい嵌合軸部51を有する。なお、本発明を実施する場合、軸方向外側の内輪軌道は、ハブ輪の軸方向中間部に外嵌した別体の内輪の外周面に形成することもできる。この場合には、ハブ輪及び別体の内輪が、第1ハブ素子に相当する。
【0077】
内輪50は、筒状に構成されており、外周面に、複列の内輪軌道11a、11bのうちの軸方向内側の内輪軌道11bを有する。また、内輪50は、該内輪50の径方向中心部を軸方向に貫通する中心孔52を有する。また、内輪50は、軸方向内側面の径方向内側部に、被抑え面53を有する。被抑え面53は、径方向外側に向かうほど軸方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面である。被抑え面53は、図示の例では、直線状の母線を有する円すい凹面であるが、曲率半径が大きい円弧状の母線を有する凸曲面であっても良い。
【0078】
内輪50は、軸方向外側の端面を、嵌合軸部51の外周面の軸方向外側端部に存在する段差面54に突き当てた状態で、嵌合軸部51に圧入により外嵌される。この状態で、嵌合軸部51の軸方向内側端部から軸方向内方に伸長する円筒部55を、径方向外方に塑性変形させることで形成されたかしめ部56(かしめ部56の軸方向外側面である抑え面60)により、内輪50の被抑え面53が抑え付けられている。そして、この状態で、転動体4a、4bに適正な予圧が付与されている。
【0079】
本例の場合も、ハブユニット軸受1cを製造する際には、揺動かしめ装置34を用いてかしめ部56を形成する。かしめ部56の形成作業は、かしめ部56を形成する前のハブユニット軸受1cを組み立てた状態で行う。このため、予め、かしめ部56を形成する前のハブユニット軸受1cを組み立てておく。
【0080】
かしめ部56を形成する前のハブユニット軸受1cは、適宜の手順で組み立てることができるが、例えば、次のような手順で組み立てることができる。まず、かしめ部56を形成する前のハブ輪49のうち、軸方向外側の内輪軌道11aの周囲に、軸方向外側列の転動体4aを、軸方向外側の保持器21aにより保持した状態で配置し、さらに、該ハブ輪49の軸方向中間部の周囲に、外輪2を配置する。次に、内輪50のうち、軸方向内側の内輪軌道11bの周囲に、軸方向内側列の転動体4bを、軸方向内側の保持器21bにより保持した状態で配置する。そして、内輪50の中心孔52に、かしめ部56を形成する前のハブ輪49の嵌合軸部51を挿入することにより、内輪50を嵌合軸部51に外嵌し、内輪50の軸方向外側端面を段差面54に当接させる。
【0081】
揺動かしめ装置34を用いてかしめ部33を形成する際には、まず、図12に示すように、かしめ部56を形成する前のハブユニット軸受1cの軸方向外側部を下方に向けるとともに、ハブ3aの中心軸を基準軸Cに一致させた状態で、ハブ輪49を、図示しないホルダにより支持する。
【0082】
次に、この状態で、実施の形態の第1例の場合と同様、押型35の加工面部36の円周方向一部で、下端に位置する部分を、ハブ輪49の円筒部55に押し付けつつ、押型35を基準軸Cを中心に回転させることにより、円筒部55をかしめ部56に加工する。なお、本例の場合も、押型35の加工面部36が円すい凸面状であるため、円筒部55をかしめ部56に加工する際に、加工面部36によって円筒部32を軸方向に押し潰す過程で、押し潰された肉の一部が加工面部36に沿って径方向内方へ流動する。この結果、完成後のかしめ部56の内径側に、径方向内方に張り出した内向鍔部57が形成される。さらに、本例の場合も、かしめ部56及び内向鍔部57のそれぞれの軸方向内側端部を含む、ハブ輪49の円環状の軸方向内側端部の軸方向内端面は、ハブ輪49の中心軸に対して直交する平坦面62となる。
【0083】
以上のような本例のハブユニット軸受1cの製造方法の場合も、揺動かしめ装置34を構成する押型35の加工面部36が、単純な形状である円すい凸面状に形成されている。このため、加工面部36の加工コストを抑えられ、押型35を安価に製造することができる。したがって、その分、ハブユニット軸受1cの製造コストを抑えられる。
【0084】
また、本例の場合も、実施の形態の第1例の場合と同様、かしめ部56の完成形状を考慮して、揺動かしめ装置34の角度αを調整することにより、内輪50(被抑え面53)に対するかしめ部56の接触面積を十分に確保するとともに、内輪50(被抑え面53)に対するかしめ部33の接触面圧が過度に大きくなることを防止できる。このため、ハブ輪49と内輪50との結合強度、及び、かしめ部56の耐久性を高めることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第1例と同様である。
【0085】
[実施の形態の第5例]
本発明の実施の形態の第5例について、図13及び図14を用いて説明する。
【0086】
本例では、揺動かしめ装置34aを構成する押型35aは、加工面部36の径方向内側に隣接する部分に、自転軸Lを中心とする径方向外方を向いた段差面部58を有する。
【0087】
本例では、揺動かしめ装置34aを用いてかしめ部56を形成する際に、加工面部36によって円筒部32(図12参照)を軸方向に押し潰す過程で、押し潰された肉の一部が加工面部36に沿って径方向内方へ流動することを、段差面部58によって抑えられる。このため、完成後のかしめ部56の内径側に、図14に仮想線(二点鎖線)で示すような、径方向内方に張り出した内向鍔部57が形成されない。
その他の構成及び作用効果は、実施の形態の第4例と同様である。
【0088】
なお、本発明は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
また、本発明は、従動輪用のハブユニット軸受に限らず、駆動輪用のハブユニット軸受を製造対象とすることもできる。
また、本発明は、転動体として円すいころを使用したハブユニット軸受に限らず、転動体として玉を使用したハブユニット軸受を製造対象とすることもできる。
また、本発明は、揺動かしめ装置を用いて円筒部をかしめ部に加工する際に、基準軸と自転軸とを含む仮想平面内で、加工面部と円筒部との当接部を、基準軸を中心とする径方向外側に向かうほど軸方向一方側に向かう方向に傾斜した直線上に存在させることもできる。
【符号の説明】
【0089】
1、1a、1b、1c、1d ハブユニット軸受
2 外輪
3、3a ハブ
4a、4b 転動体
5a、5b 外輪軌道
6 静止フランジ
7 支持孔
8 ナックル
9 通孔
10 ボルト
11a、11b 内輪軌道
12 回転フランジ
13 パイロット部
14 取付孔
15 制動用回転体
16 スタッド
17 通孔
18 ホイール
19 通孔
20 ナット
21a、21b 保持器
22、22a、22b ハブ輪
23、23a、23b 軸部材
24、24a 中心孔
25、25a、25b 傾斜面部
26、26a 端面
27 第2フェイススプライン
28 基部
29 嵌合軸部
30、30a 段差面
31 第1フェイススプライン
32、32a、32b 円筒部
33、33a、33b かしめ部
34、34a 揺動かしめ装置
35、35a 押型
36 加工面部
37 試験用組立体
38 支持台
39 支持筒部材
40 試験片
41、41a 内向鍔部
42 抑え面
43 係合スリット
44 係合凸部
45 軸方向スリット
46 係合凹部
47 係合凸部
48、48z 凹溝
49 ハブ輪
50 内輪
51 嵌合軸部
52 中心孔
53 被抑え面
54 段差面
55 円筒部
56 かしめ部
57 内向鍔部
58 段差面部
59 被抑え面
60 抑え面
61 平坦面
62 平坦面
100 ハブ
101 第1ハブ素子
102 嵌合軸部
103 第2ハブ素子
104 円筒部
105 かしめ部
106 揺動かしめ装置
107 押型
108 加工面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16