【実施例】
【0024】
以下、本発明を具体化した静電容量型歪みセンサの実施例について、比較例と比較しつつ説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0025】
[比較例]
図1及び
図2に示す比較例の静電容量型歪みセンサは、誘電エラストマー層3と、誘電エラストマー層3の両面に配置された電極層4と、各電極層4の外側を覆う最外層である保護層5と含む積層体であるセンサ本体2と、各電極層4に接続されて外部へ延びるリード7と、からなる。
【0026】
誘電エラストマー層3は、誘電体としてのアクリル系エラストマー(スリーエムジャパン社の商品名「VHB4905」)からなる長さ60mm×幅16mm×厚さ0.5mmの膜である。
【0027】
各電極層4は、液体金属である共晶ガリウム−インジウムからなる長さ45mm×幅12mm×厚さ0.5mmの流動性膜である。両電極層4は、互いに長さ方向に5mmずれており、平面視で長さ40mm×幅12mmの誘電エラストマー層3の中央作用領域Aを挟んでいる。
【0028】
なお、電極層4の周囲には、誘電エラストマー層3との寸法差を埋めて段が付かないようにするための、エラストマー製の外埋め層6が設けられている。このエラストマーとして、誘電エラストマー層3と同じアクリル系エラストマー素材を使用した。
【0029】
各保護層5は、エラストマー製の60mm×16mm×0.5mm厚の膜である。このエラストマーとして、誘電エラストマー層3と同じアクリル系エラストマー素材を使用した。
【0030】
各リード7は、銅等の金属箔であり、その内端部は誘電エラストマー層3と電極層4との間に挟まれている。
【0031】
[実施例1]
図3及び
図4に示す実施例1の静電容量型歪みセンサ1は、比較例と同一のセンサ本体2及びリード7と、センサ本体2の両方の最外層に接合されたオーセチック構造体8とからなる。よって、センサ本体2及びリード7については、上記説明を援用する。
【0032】
オーセチック構造体8は、エラストマー製の板状体に切り込みを入れて、互いに角部で連結された複数の四角形の面状要素9からなるものである。本実施例では、シリコーン系エラストマー(ダウコーニング社の商品名「Sylgard184」を混合比10:1で使用)製の長さ60mm×幅16mm×厚さ1mmの板状体の、中央作用領域Aに対応する幅40mmの領域に切り込みを入れて、4行×10列の40個の面状要素9を形成してなるオーセチック構造体8を作製した。その後、オーセチック構造体8の全面を、保護層5の全面に、シリコーン系接着フィルム(太陽金網社の商品名「ポリシル」)によって接着した。
【0033】
[比較例と実施例1のゲージファクター測定]
まず、
図2に示すように、比較例の静電容量型歪みセンサ2について、中央作用領域Aを含まないように、長さ方向両端部の長さ10mmの部分をチャック20で挟み、長さ方向に0〜50%の伸長歪みを往復して与えた(
図2は35%伸長状態)。センサ本体2は、長さ方向(L)に伸長すると、その直交方向である幅方向(W)及び厚さ方向(T)に収縮した。リード7に静電容量測定器を接続して測定した、伸長歪みに対する静電容量の変化(ゲージファクター)は0.87であった。
【0034】
次に、
図4に示すように、実施例1の静電容量型歪みセンサ1について、中央作用領域Aを含まないように、長さ方向両端部の長さ10mmの部分をチャック20で挟み、長さ方向に0〜50%の伸長歪みを往復して与えた(
図4は35%伸長状態)。オーセチック構造体8は、長さ方向(L)に伸長すると、幅方向(W)にも伸長した。センサ本体2は、長さ方向(L)に伸長すると、幅方向(W)への収縮がオーセチック構造体8により抑制され、もっぱら厚さ方向(T)に収縮した。リード7に静電容量測定器を接続して測定した、伸長歪みに対する静電容量の変化(ゲージファクター)は1.61であった。すなわち、比較例に対して、センサの感度が約2倍高いことを示した。また、高い再現性および低いヒステリシスを維持することも確認した。
【0035】
[実施例2]
図5に示す実施例2の静電容量型歪みセンサ1は、オーセチック構造体を変更した点においてのみ、実施例1と相違するものである。よって、センサ本体2及びリード7については、上記説明を援用する。
【0036】
本実施例におけるオーセチック構造体8bは、軟質ポリプロピレン樹脂製で、ジグザグにかつ相対傾動可能に連結された複数の幅方向の線分状要素10と、該線分状要素10どうしの連結点に相対傾動可能に連結された複数の長さ方向の線分状要素11とで、網状に構成されたものである。本実施例では、外力が加わらない自然状態において、長さ40mm×幅16mmの領域に収まるオーセチック構造体8bを作製した。その後、オーセチック構造体8bの全面を、保護層5のうち中央作用領域Aに対応する中央領域に、ウレタン系弾性接着剤によって接着した。
【0037】
本実施例の静電容量型歪みセンサ1に、
図5(a)から(b)への変化で示すように、長さ方向に伸長歪みを与えると、センサ本体2は、長さ方向(L)に伸長し、幅方向(W)への収縮がオーセチック構造体8bにより抑制され、もっぱら厚さ方向(T)に収縮する。よって、実施例1と同様にゲージファクターが高くなる。
【0038】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【0039】
(1)オーセチック構造体は、その全面ではなく一部をセンサ本体の最外層に接合するように変更することができる。センサ本体に発生する局部的な内部応力が低減されることで、この内部応力による構造体の変形を低減することができる。実施例2のオーセチック構造体8bを例にとって、図示し説明する。
・
図6(a)は、オーセチック構造体8bの四隅部(楕円太線で示す領域)を保護層5に接合した例である。
・
図6(b)は、オーセチック構造体8の外周縁部の全部(2本の矩形太線の間の領域)を保護層5に接合した例である。外周縁部の一部とすることもできる。
・
図6(c)は、オーセチック構造体8の接合箇所が、伸長方向と略平行する領域(楕円太線で示す領域)である。伸長方向と略直交する領域とすることもできる。
【0040】
(2)実施例及び変更例では、センサ本体の最外層にオーセチック構造体を接合したが、誘電エラストマー層、電極層及びセンサ本体の最外層のうちのいずれか一層又は二層以上をオーセチック構造体として形成してもよい。二層以上としては、誘電エラストマー層及びその両面の電極層がオーセチック構造体である態様、両側の最外層がオーセチック構造体である態様等を例示できる。電極層は、例えば導電性エラストマーにてオーセチック構造体とすることができる。
【0041】
(3)オーセチック構造体として、上に挙げたもののほか、
図7に示す2つの別例を例示する。
図7(a)のオーセチック構造体8cは、面状要素型の別例であり、互いに角部で連結された複数の三角形の面状要素からなるものである。
図7(b)のオーセチック構造体8dは、線分状要素型の別例であり、4つの線分状要素が矢じり形状に連結された1単位が、互いに連結されたものである。
【0042】
(4)面状要素型のオーセチック構造体(
図3、
図7(a)等)の場合、面状要素に穴を打ち抜き形成することにより、オーセチック構造体の柔軟性を高くして、センサ本体の変形抑制力を調整することもできる。