【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の技術案によって実現する。コンクリート構造全寿命性能スマートセンシング及び劣化早期警報システムは、メイン制御モジュール、多機能センサモジュール、盗難防止モジュール及び限界早期警報モジュールを含み、多機能センサモジュール、盗難防止モジュール及び限界早期警報モジュールはいずれもメイン制御モジュールと接続され、メイン制御モジュールは、多機能センサモジュールが収集したデータに対して解析処理を行い、且つ限界早期警報モジュールを介して即時の安全早期警報を実現する。
【0010】
多機能センサモジュールは、予めコンクリート構造内部に埋め込まれ、温湿度センサ、塩化物イオン−pH勾配センサ、ホール電圧式鉄筋腐食センサ、鉄筋応力センサ及びコンクリートひずみセンサを含む。温湿度センサ、鉄筋応力センサ、コンクリートひずみセンサは、コンクリート構造の温度、湿度、鉄筋応力及びひずみパラメータは、モニタリングするのに用いられ、塩化物イオン−pH勾配センサは、コンクリート構造内の様々な深度部分における塩化物イオン含有量、pH値の検出を行うのに用いられ、ホール電圧式鉄筋腐食センサは、鉄筋腐食状況及び腐食量の測定を実現するのに用いられる。
【0011】
盗難防止モジュールは、ネットワークビデオカメラ及び盗難防止警報装置を含み、ネットワークビデオカメラは、モニタリングエリアのビデオ監視を実現するのに用いられ、盗難防止警報装置は、システム装置付近の人員に対する感知及び音声警告を実現し、装置の盗難及び損壊を防止するのに用いられる。限界早期警報モジュールは、コンクリート構造の劣化がハイリスク状態に入ったことの早期警報に用いられ、上述のハイリスク状態はメイン制御モジュールがモデリング解析により得た結果に基づいており、腐食発生限界塩化物イオン濃度は腐食部分のコンクリート内部の塩化物イオン含有量に従って動的設定する。
【0012】
さらに、メイン制御モジュールは、データ前処理モジュール、動的閾値設定モジュール及び早期警報解析モジュールを含み、データ前処理モジュールは、多機能センサモジュールが収集したデータに対して前処理を行うのに用いられる。動的閾値設定モジュールは、データ前処理モジュールが修正した後の塩化物イオン濃度に基づき、使用環境条件下におけるコンクリート構造に対応する腐食発生限界塩化物イオン濃度を動的に修正し、且つ鉄筋応力、コンクリートのひずみ限界値を設定する。早期警報解析モジュールは、前処理後のデータと動的閾値設定モジュールが設定したデータを比較し、且つ得られた早期警報結果を限界早期警報モジュールへ送って警報を行うのに用いられる。
【0013】
さらに、塩化物イオン−pH勾配センサは筒状主体を含み、筒状主体にはAg/AgCl電極及びIr/IrOx-pH電極、並びにAg/AgCl電極及びIr/IrOx-pH電極と対応する参照電極(基準電極)が設けられており、筒状主体の外表面には周方向に沿って多層環状溝が設けられており、環状溝には筒状主体の厚さ方向に連通する導線予備孔が予め設けられており、筒状主体内部には環状溝と対応する導線溝がさらに設けられており、Ag/AgCl電極及びIr/IrOx-pH電極はそれぞれ半円状に作られており、環状溝内に固定される。
【0014】
さらに、データ前処理モジュールは塩化物イオン−pH勾配センサが収集したデータに対するデータ修正モジュールも含むことで温度とpHの両方の影響を考慮しており、データ修正モジュールはpH影響ベースの修正モジュール及び温度影響ベースの修正モジュールを含む。
【0015】
さらに、温度影響ベースの修正モジュールは、Ir/IrOx-pH電極の測定データに対する温度修正及びAg/AgCl電極の測定データに対する温度修正を実現する。
【0016】
(1)Ir/IrOx-pH電極の測定データの温度修正:
【0017】
[1] Ir/IrOx-pH電極を通じて2つの異なる温度条件下におけるコンクリート内部のIr/IrOx-pH電極の電位値を測定する。
【0018】
[2] 工程[1]のIr/IrOx-pH電極電位と対応する温度実測値との線形フィッティングを行い、フィッティング方程式を得る。
【0019】
[3] フィッティング方程式に基づき、20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極の電位を得る。
【0020】
[4] 20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極電位とpH値はネルンストの式を満たし、Ir/IrOx-pH電極電位y1とpH値x1は線形相関であり、方程式はy1=−51.84x1+369.52である。
【0021】
工程[3]で得られた20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極の電位及び方程式はy1=−51.84x1+369.52に基づき、このときのコンクリート内部のIr/IrOx-pH電極位置部分のpH値を得る。
【0022】
(2)Ag/AgCl電極の測定データの温度修正:
【0023】
[1] Ag/AgCl電極を通じて2つの異なる温度条件下におけるコンクリート内部のAg/AgCl電極の電位値を測定する。
【0024】
[2] 工程[1]のAg/AgCl電極電位と対応する温度実測値との線形フィッティングを行い、フィッティング方程式を得る。
【0025】
[3] フィッティング方程式に基づき、20℃の条件下におけるAg/AgCl電極の電位を得る。
【0026】
[4] 20℃の条件下におけるAg/AgCl電極電位と塩化物イオン濃度の対数はネルンストの式を満たし、Ag/AgCl電極電位y2塩化物イオン濃度の対数x2は線形相関であり、方程式はy2=−683.14x2−531.29である。
【0027】
工程[3]で得られた20℃の条件下におけるAg/AgCl電極の電位及び方程式y2=−683.14x2−531.29に基づき、このときのコンクリート内部のAg/AgCl電極位置部分の塩化物イオン濃度含有量を得る。
【0028】
さらに、pH影響ベースの修正モジュールは、Ag/AgCl電極の測定データに対するpH修正を実現する。Ir/IrOx-pH電極に基づき、コンクリート内部のpH値を測定する。pH値が10.5より大きく13より小さい場合、このときの同じ深度部分のAg/AgCl電極電位を修正する必要はない。pH値が1より大きく10.5より小さい場合には、このときの同じ深度部分のAg/AgCl電極電位y3に対し、公式y3=14.26x3+23.58に従ってpH値x3の修正を行う必要がある。
【0029】
さらに、早期警報システムは、クラウドサーバも含み、メイン制御モジュールとクラウドサーバはデータインタラクションを行い、コンクリート構造に対するシステム管理を実現するとともに、データの修正、記憶及び更新を即時に行う。
【0030】
本発明はさらに、コンクリート構造全寿命性能スマートセンシング及び劣化早期警報方法を提供するが、それには以下の工程を含む。
【0031】
工程1、多機能センサモジュールによりコンクリート構造の状態データを収集する。状態データは、温度、湿度、塩化物イオン濃度、pH値、鉄筋腐食パラメータ、鉄筋応力及びコンクリートひずみデータを含み、且つ収集したコンクリートの状態データに対して前処理を行う。
【0032】
工程2、温度に基づき収集したコンクリート構造内部のpH値に対して修正を行い、正確なコンクリート内部pH値のモニタリング結果を得る。
【0033】
工程3、温度及びpH値に基づき収集したコンクリート内部の塩化物イオン濃度情報に対して修正を行い、正確なコンクリート内部塩化物イオン含有量のモニタリング結果を得る。
【0034】
工程4、ある深度部分のホール電圧式鉄筋腐食センサが鉄筋に腐食が発生していることを検出した場合、早期警報システムが自動でこのときの深度部分の塩化物イオン−pH勾配センサが測定した塩化物イオン濃度を腐食発生限界塩化物イオン濃度として、限界早期警報モジュールに入力する。
【0035】
工程5、コンクリート状態のモニタリング結果と工程4で設定した腐食発生限界塩化物イオン濃度、並びに測定した鉄筋応力、コンクリートひずみ、コンクリート内部温度及び湿度パラメータにより、寿命予測モデルに基づき構造の故障率を計算し、且つ残存耐用年数を予測して、即時に安全早期警報を発する。
【0036】
さらに、工程2において、温度に基づき収集したコンクリート構造内部のpH値に対して修正を行うとき、Ir/IrOx-pH電極の測定データに対する温度修正は、主に以下の方式を採用する。
【0037】
[1] Ir/IrOx-pH電極を通じて、2つの異なる温度条件下におけるコンクリート内部のIr/IrOx-pH電極の電位値を測定する。
【0038】
[2] 工程[1]のIr/IrOx-pH電極電位と対応する温度実測値との線形フィッティングを行い、フィッティング方程式を得る。
【0039】
[3] フィッティング方程式に基づき、20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極の電位を得る。
【0040】
[4] 20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極電位とpH値はネルンストの式を満たし、Ir/IrOx-pH電極電位y1とpH値x1は線形相関であり、方程式はy1=−51.84x1+369.52である。
【0041】
工程[3]で得られた20℃の条件下におけるIr/IrOx-pH電極の電位及び方程式y1=−51.84x1+369.52に基づき、このときのコンクリート内部のIr/IrOx-pH電極位置部分のpH値を得る。
【0042】
さらに、工程3において、温度及びpH値に基づき収集したコンクリート内部の塩化物イオン濃度情報に対して修正を行うとき、Ag/AgCl電極の測定データに対する温度、pH値の修正は、主に以下の方式を採用する。
【0043】
[1] Ag/AgCl電極を通じて2つの異なる温度条件下におけるコンクリート内部のAg/AgCl電極の電位値を測定する。
【0044】
[2] 工程[1]のAg/AgCl電極電位と対応する温度実測値との線形フィッティングを行い、フィッティング方程式を得る。
【0045】
[3] フィッティング方程式に基づき、20℃の条件下におけるAg/AgCl電極の電位を換算して得る。
【0046】
[4] 20℃の条件下におけるAg/AgCl電極電位と塩化物イオン濃度の対数はネルンストの式を満たし、Ag/AgCl電極電位y2塩化物イオン濃度の対数x2は線形相関であり、方程式はy2=−683.14x2−531.29である。
【0047】
工程[3]で得られた20℃の条件下におけるAg/AgCl電極の電位及び方程式y2=−683.14x2−531.29に基づき、このときのコンクリート内部のAg/AgCl電極位置部分の塩化物イオン濃度含有量を得る。
【0048】
[5] Ir/IrOx-pH電極に基づき、コンクリート内部のpH値を測定する。
【0049】
pH値が10.5より大きく13より小さい場合、このときの同じ深度部分のAg/AgCl電極電位を修正する必要はない。pH値が1より大きく10.5より小さい場合には、このときの同じ深度部分のAg/AgCl電極電位y3に対してpH値x3の修正を行う必要があり、修正の公式はy3=14.26x3+23.58である。