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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-341(P2021-341A)
(43)【公開日】2021年1月7日
(54)【発明の名称】胸腔内圧センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20201204BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20201204BHJP
【FI】
   A61B5/08
   A61B5/00 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-116272(P2019-116272)
(22)【出願日】2019年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】591165908
【氏名又は名称】山田 芳嗣
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳嗣
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038SU06
4C117XB01
4C117XD23
4C117XE27
(57)【要約】
【課題】胸腔内圧を検出するための代替手法を提供する。
【解決手段】第一チューブ11は、患者2の気管21に挿入されて気管21と連通する第一通気路11aを区画している。カフ12は、第一チューブ11における気管21内に配置される部分に設けられており、膨縮可能である。第二チューブ13、カフ12の内部と連通する第二通気路13aを区画している。トランスデューサ15は、第二通気路13a内の圧力に対応する信号S1を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気管に挿入されて当該気管と連通する第一通気路を区画する第一チューブと、
前記第一チューブにおける前記気管内に配置される部分に設けられており、膨縮可能である第一カフと、
前記第一カフの内部と連通する第二通気路を区画する第二チューブと、
前記第二通気路内の圧力に対応する信号を出力するトランスデューサと、
を備えている、
胸腔内圧センサ。
【請求項2】
前記第一通気路に連通されて前記患者の口腔内圧に対応する信号を出力するフローセンサを備えている、
請求項1に記載の胸腔内圧センサ。
【請求項3】
前記第二通気路に連通しており、前記第一カフよりも容積が小さく、膨縮可能である第二カフを備えている、
請求項1または2に記載の胸腔内圧センサ。
【請求項4】
前記第一カフは、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタンを含む材料から形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の胸腔内圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の胸腔内圧を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸に伴う胸腔内圧の変化量は、呼吸器疾患の診断や肺機能の評価に有効な指標となりうる。胸腔内圧の検出は困難とされており、食道内圧を検出することによって胸腔内圧に替えることが一般的である。特許文献1は、患者の食道内にバルーンカテーテルを挿入することによって当該患者の胸腔内圧を検出する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4214593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、胸腔内圧を検出するための代替手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、胸腔内圧センサであって、
患者の気管に挿入されて当該気管と連通する第一通気路を区画する第一チューブと、
前記第一チューブにおける前記気管内に配置される部分に設けられており、膨縮可能である第一カフと、
前記第一カフの内部と連通する第二通気路を区画する第二チューブと、
前記第二通気路内の圧力に対応する信号を出力するトランスデューサと、
を備えている。
【0006】
第一チューブ、第一カフ、および第二チューブは、気管内挿管に使用される気管内チューブとして利用可能である。トランスデューサによる患者の胸腔内圧の検出が行なわれている間も、第一通気路を通じた患者の呼吸支援などを実行可能である。したがって、胸腔内圧の代替値を提供するに過ぎない食道内圧を検出するために、患者の食道内へバルーンカテーテルを挿入する必要がない。これにより、他に必要なプローブ等(胃管、経食道エコー、食道温プローブなど)を食道に挿入できる余地が生じるだけでなく、食道内に挿入されたバルーンカテーテルによる食道内圧の検出をこれらのプローブ等が阻害することもない。したがって、呼吸支援や食道内圧の検出などを阻害することのない胸腔内圧を検出するための代替手法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る胸腔内圧センサの構成を例示している。
図2図1の胸腔内圧センサの使用法を例示している。
図3図1の胸腔内圧センサの別構成例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。各図面においては、説明対象の各要素を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0009】
図1は、一実施形態に係る胸腔内圧センサ1の構成を例示している。胸腔内圧センサ1は、第一チューブ11を備えている。第一チューブ11は、図2の(A)に示されるように、患者2の気管21に挿入されるように構成されている。第一チューブ11は、例えばポリ塩化ビニルを含む材料によって形成されており、気管21の形状に応じて曲がりうる柔軟性を有している。
【0010】
第一チューブ11は、第一通気路11aを区画している。第一チューブ11が気管21に挿入されると、第一通気路11aは、気管21と連通する。第一通気路11aは、人工呼吸器による呼吸支援時における呼吸気の通路や、手術時における麻酔ガスの供給路として使用されうる。
【0011】
図1に示されるように、胸腔内圧センサ1は、カフ12を備えている。カフ12は、第一チューブ11において気管21内に配置される位置の外周に沿って設けられている膨縮可能な袋体である。カフ12は、ポリ塩化ビニルまたはポリウレタンを含む材料により形成されている。
【0012】
胸腔内圧センサ1は、第二チューブ13を備えている。第二チューブ13は、第二通気路13aを区画している。第二通気路13aは、カフ12を形成する袋体の内部と連通している。第二通気路13aは、第一通気路11aとは連通していない。
【0013】
胸腔内圧センサ1は、逆止弁14を備えている。逆止弁14は、第二通気路13aの端部に配置されている。逆止弁14は、シリンジ3が接続されると第二通気路13aとシリンジ3の内部を連通し、シリンジ3が取り外されると第二通気路13aを外気から封止するように構成されている。
【0014】
胸腔内圧センサ1は、トランスデューサ15を備えている。トランスデューサ15は、第二通気路13a内の圧力に対応する信号S1を出力する装置である。すなわち、トランスデューサ15の圧力検出部は、第二通気路13aと連通している。例えば、トランスデューサ15は、逆止弁14の第二通気路13aに面する側に配置されうる。
【0015】
胸腔内圧センサ1の使用法について説明する。まず、シリンジ3を逆止弁14に接続してシリンジ3の内部と第二通気路13aを連通した後、シリンジ3で第二通気路13a内の空気を吸い出す。これにより、第二通気路13aと連通しているカフ12の内部の空気も吸い出され、カフ12が収縮された状態とされる。
【0016】
この状態において、図2の(A)に示されるように、第一チューブ11が患者2の気管21に挿入される。適切な位置まで挿入がなされると、シリンジ3の操作によって第二通気路13aへ空気が注入される。これにより、第二通気路13aと連通しているカフ12の内部へ空気が注入され、図2の(B)に示されるように、カフ12が膨張する。カフ12の外面は気管21の内壁に接触し、気管21の閉塞がなされる。患者2の気管21の内側と外側は、第一チューブ11の第一通気路11aによって連通される。
【0017】
患者2の呼吸に伴う胸腔内圧の変化は、気管21の内壁に接触しているカフ12内の圧力変化に反映される。カフ12内の圧力変化は、第二通気路13a内の圧力変化に反映される。したがって、トランスデューサ15から出力されて第二通気路13a内の圧力に対応する信号S1をモニタすることにより、患者2の胸腔内圧を検出できる。
【0018】
第一チューブ11、カフ12、および第二チューブ13は、気管内挿管に使用される気管内チューブとして利用可能である。トランスデューサ15による患者2の胸腔内圧の検出が行なわれている間も、第一通気路11aを通じた患者2の呼吸支援などを実行可能である。したがって、胸腔内圧の代替値を提供するに過ぎない食道内圧を検出するために、患者2の食道22内へバルーンカテーテルを挿入する必要がない。これにより、他に必要なプローブ等(胃管、経食道エコー、食道温プローブなど)を食道22に挿入できる余地が生じるだけでなく、食道22内に挿入されたバルーンカテーテルによる食道内圧の検出をこれらのプローブ等が阻害することもない。したがって、呼吸支援や食道内圧の検出などを阻害することのない胸腔内圧を検出するための代替手法を提供できる。
【0019】
図1に示されるように、胸腔内圧センサ1は、フローセンサ16を備えうる。フローセンサ16は、第一チューブ11の第一通気路11aに連通されて患者2の口腔内圧に対応する信号S2を出力する装置である。
【0020】
このような構成によれば、患者2の経肺圧を検出することができる。経肺圧は、肺組織の損傷を回避しうる人工呼吸器の設定を行なう上で重要な指標になりうると提唱されている。他方、口腔内圧は、胸腔内圧と経肺圧の和として表されることが知られている。したがって、フローセンサ16により検出される口腔内圧とトランスデューサ15により検出される胸腔内圧の差分を算出することにより、患者2の経肺圧の変化量が取得されうる。
【0021】
図1に示されるように、胸腔内圧センサ1は、パイロットカフ17を備えうる。パイロットカフ17は、第二通気路13aおよび逆止弁14に連通している。パイロットカフ17は、カフ12よりも小さな容積を有する膨縮可能な袋体である。パイロットカフ17は、第二カフの一例である。
【0022】
パイロットカフ17は第二通気路13aを介してカフ12と連通するので、パイロットカフ17の内圧は、カフ12の内圧を反映する。したがって、パイロットカフ17の膨張の程度を視覚と触覚の少なくとも一方を通じて確認することにより、カフ12の状態把握が患者2の体外から可能とされる。また、第一通気路11aを麻酔ガスが流通する場合、麻酔ガスの拡散によるカフ12の内圧上昇を、所定値以下に抑えることができる。所定値の例としては、最大動脈毛細管潅流圧が挙げられる。
【0023】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0024】
図3に示されるように、図1に示された構成例における逆止弁14は、三方弁18で置き換えられうる。三方弁18は、第一通路18a、第二通路18b、および第三通路18cを備えている。第一通路18aは、第二通気路13aと連通するように第二チューブ13と接続される。第二通路18bは、シリンジ3と接続される。第三通路18cは、トランスデューサ15と接続される。三方弁18は、第二通路18bと第三通路18cのいずれかを第一通路18aに連通できるように構成されている。
【0025】
胸腔内圧センサ1の気管21への挿入時および気管21からの抜出時には、第二通路18bが第一通路18aと連通するように三方弁18の操作がなされる。これにより、シリンジ3の操作を通じてカフ12の膨張または収縮が可能とされる。
【0026】
カフ12の膨張により胸腔内圧センサ1の気管21内における位置が定まると、第三通路18cが第一通路18aと連通するように三方弁18の操作がなされる。これにより、トランスデューサ15を通じた第二通気路13a内の圧力の検出が可能とされる。
【0027】
三方弁18の第二通路18bを大気開放すれば、トランスデューサ15を通じた第二通気路13a内の圧力検出におけるゼロ点較正を容易に行なうことができる。すなわち、胸腔内圧の測定精度を高めるための基準値を容易に定めることができる。当該基準値を利用すれば、胸腔内圧の測定結果を生体情報モニタなどによって連続的にモニタすることも容易になる。
【符号の説明】
【0028】
1:胸腔内圧センサ、11:第一チューブ、11a:第一通気路、12:カフ、13:第二チューブ、13a:第二通気路、15:トランスデューサ、16:フローセンサ、17:パイロットカフ、2:患者、21:気管、S1、S2:信号
図1
図2
図3