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特開2021-34474電子基板、電子基板の製造方法及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-34474(P2021-34474A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】電子基板、電子基板の製造方法及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/32 20060101AFI20210201BHJP
   H01L 25/10 20060101ALI20210201BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
   H01L23/32 D
   H01L25/12 Z
   H01L23/12 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2019-151235(P2019-151235)
(22)【出願日】2019年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平林 涼
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れる電子基板、電子基板の製造方法及び電子基板を使用する電子機器を提供する。
【解決手段】電子基板100において、第1の面160に複数の配線端子111〜116が配置された配線基板110と、第1の面上に実装されるリードレス電子部品120は、第1の面に対向する第2の面140を有し、第2の面に複数の電極端子121〜126が配置されている。複数の配線端子における各配線端子は、接続部材131〜136を介して電気的に接続され、第1の面において、各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層171〜176で覆われ、第2の面において、各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層151〜156で覆われ、1対の配線端子及び電極端子において、配線端子の周囲を覆う防湿層に対して電極端子の周囲を覆う防湿層が対面している。防湿層151〜156は、夫々防湿層171〜176から離れている、。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有し、前記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、
前記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、
前記リードレス電子部品は前記第1の面に対向する第2の面を有し、前記第2の面に複数の電極端子が配置され、
前記複数の配線端子における各配線端子は、前記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続され、
前記第1の面において、前記各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、
前記第2の面において、前記各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われ、
前記接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子において、前記配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して前記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、前記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が前記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている、電子基板。
【請求項2】
前記第1の面において、互いに隣接する2つの配線端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層A1が一体化して防湿層A2を形成し、
前記第2の面において、前記互いに隣接する2つの配線端子にそれぞれ電気的に接続する2つの電極端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層B1が一体化して防湿層B2を形成し、
前記防湿層A2に対して前記防湿層B2は対面し、前記防湿層B2は前記防湿層A2から離れている、請求項1に記載の電子基板。
【請求項3】
第1の面を有し、前記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、
前記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、
前記リードレス電子部品は前記第1の面に対向する第2の面を有し、前記第2の面に複数の電極端子が配置され、
前記複数の配線端子における各配線端子は、前記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続され、
前記第1の面が、前記第2の面と対向する範囲全てが、防湿層A3で覆われ、
前記第2の面の全体が、防湿層B3で覆われ、
前記防湿層A3に対して前記防湿層B3は対面し、前記防湿層B3は前記防湿層A3から離れている、電子基板。
【請求項4】
前記リードレス電子部品が、前記接続部材を持つボールグリッドアレイ型パッケージである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項5】
前記接続部材が、半田である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項6】
前記防湿層A1及び前記防湿層B1が、又は、前記防湿層A3及び前記防湿層B3が、それぞれ、含フッ素重合体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項7】
前記接続部材の側面が、防湿層C1で覆われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項8】
前記防湿層A1、前記防湿層B1及び前記防湿層C1が、又は、前記防湿層A3、前記防湿層B3及び前記防湿層C1が、それぞれ、含フッ素重合体を含む、請求項7に記載の電子基板。
【請求項9】
前記防湿層A1及び前記防湿層B1が、又は、前記防湿層A3及び前記防湿層B3が、それぞれ、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤が乾燥されたものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項10】
前記表面処理剤が、被膜成分として、含フッ素重合体を含む、請求項9に記載の電子基板。
【請求項11】
前記表面張力が30mN/m以下である、請求項9又は10に記載の電子基板。
【請求項12】
前記表面張力が20mN/m以下である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項13】
前記表面処理剤が、含フッ素溶剤を含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項14】
前記粘度が25mPa・s以下である、請求項9〜13のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項15】
前記粘度が10mPa・s以下である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項16】
第1の面を有し、前記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、前記第1の面の上に実装されるリードレス電子部品とを備え、前記リードレス電子部品は前記第1の面に対向する第2の面を有し、前記第2の面に複数の電極端子が配置され、前記複数の配線端子における各配線端子は、前記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続された電子基板を用いて、前記配線基板と前記リードレス電子部品との間に、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤を充填する充填工程と、
前記充填工程後、前記表面処理剤を乾燥させることによって、前記表面処理剤が、前記第1の面に配置された前記複数の配線端子における各配線端子の周囲を少なくとも覆う防湿層A1となり、且つ前記第2の面に配置された前記複数の電極端子における各電極端子の周囲を少なくとも覆う防湿層B1となり、前記接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子において、前記配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して前記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、前記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が前記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている電子基板を得る乾燥工程とを有する、電子基板の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥工程において、前記表面処理剤が、さらに、前記接続部材の側面を覆う防湿層C1となる、請求項16に記載の電子基板の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の電子基板を使用した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子基板、電子基板の製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化、高性能化に伴う端子数の増大に対応すべく、端子の高密度実装を実現可能とするBGA(Ball Grid Array)型パッケージが実用化されている。
BGA型パッケージは、通常、パッケージ本体と、接続部材としての例えば複数の半田ボールとを有し、上記半田ボールが上記パッケージ本体の一面に配列されている。上記BGA型パッケージは、配線基板の部品実装面に搭載され、上記接続部材(例えば半田ボール)によって、配線基板と電気的に接続される。
一方、BGA型パッケージが配線基板に実装された電子基板(表面実装基板)に防湿を目的とするコート剤を使用する場合、一般的に使用される防湿コート剤の線膨張係数が半田及びBGA型パッケージ本体の線膨張係数と大きく異なるため、上記電子基板(表面実装基板)に冷熱衝撃が加わると、上記防湿コート剤が膨張・収縮する際に、接続部材(半田ボール)に大きな応力を加え、その結果、半田接続における熱サイクルに対する耐久性が低い(具体的には半田による接合部が割れる)という問題があった。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1が提案されている。
特許文献1には、BGA型パッケージが回路基板にはんだで実装されている電子装置であって、上記回路基板と上記BGA型パッケージの端子形成面との間に配置されている第1の樹脂と、上記BGA型パッケージの外周または側方に配置されている第2の樹脂とを備え、上記第2の樹脂は、上記第1の樹脂よりも弾性率が小さく、室温で0.5GPa以上28GPa以下である電子装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−92312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして、BGA型パッケージが配線基板に実装された電子基板(表面実装基板)において、配線基板とBGA型パッケージの端子形成面との間に、一般的な防湿コート剤を使用して、上記間に防湿層を有する表面実装基板を製造しこれを評価したところ、このような表面実装基板では、配線基板の部品実装面、及び/又は、リードレス電子部品の端子形成面において、マイグレーションが発生しやすいことが明らかとなった。
また、上記表面実装基板においては、上記BGA型パッケージが有する半田ボール(接続部材)における破損を抑制することが困難であることが明らかとなった。
【0006】
添付の図面を用いて、一般的な防湿コート剤でコーティングされた電子基板を以下に説明する。
図13は、一般的な防湿コート剤でコーティングされた電子基板を模式的に表す縦断面図である。
図13において、電子基板1101は、配線基板1102が有する部品実装面1160上に、リードレス電子部品1103及び複数の半田ボール1114〜1119を有するBGA1105が表面実装されている表面実装基板である。リードレス電子部品1103は、部品実装面1160に対向する端子形成面1140を有し、端子形成面1140上に半田ボール1114〜1119を有する。配線基板1102は、半田ボール1114〜1119を介してリードレス電子部品1103と電気的に接続されている。なお、図13においてBGA1105がリードレス電子部品1103及び半田ボール1119を有するように記載されているが、上述のとおり、BGA1105は、リードレス電子部品1103及び半田ボール1114〜1119を有する。
また、電子基板1101は、配線基板1102とリードレス電子部品1103との間が、防湿コート剤1106(ドットで示す部分)でコーティングされている。
【0007】
防湿コート剤1106について詳細には、リードレス電子部品1103の周縁部分においては、部品実装面1160と端子形成面1140との間が防湿コート剤1106でほぼ満たされている(矢印1106で示す部分)。具体的には、リードレス電子部品1103の外周部分、半田ボール1114及び半田ボール1119の外周部分や、半田ボール1114、1115の間や、半田ボール1115、1116の間等が、部品実装面1160と端子形成面1140との間において、防湿コート剤1106でほぼ充填され、その結果、半田ボール1114、1115、1118、1119が防湿コート剤1106でほぼ埋まった状態である。なお、半田ボール1114、1115、1118、1119は、部品実装面1160と端子形成面1140との間が防湿コート剤1106でほぼ満たされている箇所に存在するので、半田ボール1114等の側面に存在する防湿コート剤1106の厚さは、配線基板1102に対して水平方向にも垂直方向にも非常に厚いといえる。
このように、半田ボール(例えば1114等)が防湿コート剤1106にほぼ埋まってしまうと、防湿コート剤1106の熱膨張によって、半田ボール1114のような接続部材に応力がかかり、上記接続部材と配線基板1102(の配線端子)又はリードレス電子部品1103(の電極端子)との接合部が割れてしまうおそれがある。以下、このような接続部材と配線基板(の配線端子)又はリードレス電子部品(の電極端子)との接合部が割れることを本明細書では「接続部材における破損」と称する。
【0008】
一方、リードレス電子部品1103の中央部分では、部品実装面1160と端子形成面1140との間、及び、個々の半田ボール(例えば、半田ボール1116、1117)の周辺において、防湿コート剤1106の量が少ない。このため、リードレス電子部品1103の中央部分では、上記のような接続部材における破損は起きにくいと考えられる。
しかし、このように防湿コート剤1106の量が少ない、リードレス電子部品1103の中央部分においては、リードレス電子部品1103の表面1107〜1109のように、端子形成面1140が防湿コート剤1106でコーティングされないことがある。
このように防湿コート剤1106でコーティングされていない箇所(表面1107〜1109)では、リードレス電子部品1103が有する電極端子から金属のマイグレーションが発生しやすいと考えられる。
【0009】
また、上述のような、配線基板とリードレス電子部品との間における防湿コート剤の不均一な分布は、上記防湿コート剤の表面張力と粘度が高く、配線基板とリードレス電子部品との間に上記防湿コート剤を付与する際、配線基板とリードレス電子部品との間の内部にまで上記防湿コート剤がしっかり浸透できないためであると考えられた。
【0010】
そこで、本発明は、マイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れる電子基板を提供することを目的とする。
また、本発明は、電子基板の製造方法、及び、上記電子基板を使用する電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、表面実装基板について、配線基板が有する第1の面において各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、リードレス電子部品が有する第2の面において各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われ、接続部材を介して互いに電気的に接続された各1対の配線端子及び電極端子において、配線端子の周囲を覆う防湿層A1に上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、上記防湿層B1が上記防湿層A1から離れていることによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0012】
[1] 第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、
上記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、
上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、
上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続され、
上記第1の面において、上記各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、
上記第2の面において、上記各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われ、
上記接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子において、上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている、電子基板。
[2] 上記第1の面において、互いに隣接する2つの配線端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層A1が一体化して防湿層A2を形成し、
上記第2の面において、上記互いに隣接する2つの配線端子にそれぞれ電気的に接続する2つの電極端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層B1が一体化して防湿層B2を形成し、
上記防湿層A2に対して上記防湿層B2は対面し、上記防湿層B2は上記防湿層A2から離れている、[1]に記載の電子基板。
[3] 第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、
上記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、
上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、
上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続され、
上記第1の面が、上記第2の面と対向する範囲全てが、防湿層A3で覆われ、
上記第2の面の全体が、防湿層B3で覆われ、
上記防湿層A3に対して上記防湿層B3は対面し、上記防湿層B3は上記防湿層A3から離れている、電子基板。
[4] 上記リードレス電子部品が、上記接続部材を持つボールグリッドアレイ型パッケージである、[1]〜[3]のいずれかに記載の電子基板。
[5] 上記接続部材が、半田である、[1]〜[4]のいずれかに記載の電子基板。
[6] 上記防湿層A1及び上記防湿層B1が、又は、上記防湿層A3及び上記防湿層B3が、それぞれ、含フッ素重合体を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の電子基板。
[7] 上記接続部材の側面が、防湿層C1で覆われる、[1]〜[6]のいずれかに記載の電子基板。
[8] 上記防湿層A1、上記防湿層B1及び上記防湿層C1が、又は、上記防湿層A3、上記防湿層B3及び上記防湿層C1が、それぞれ、含フッ素重合体を含む、[7]に記載の電子基板。
[9] 上記防湿層A1及び上記防湿層B1が、又は、上記防湿層A3及び上記防湿層B3が、それぞれ、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤が乾燥されたものである、[1]〜[8]のいずれかに記載の電子基板。
[10] 上記表面処理剤が、被膜成分として、含フッ素重合体を含む、[9]に記載の電子基板。
[11] 上記表面張力が30mN/m以下である、[9]又は[10]に記載の電子基板。
[12] 上記表面張力が20mN/m以下である、[9]〜[11]のいずれかに記載の電子基板。
[13] 上記表面処理剤が、含フッ素溶剤を含む、[9]〜[12]のいずれかに記載の電子基板。
[14] 上記粘度が25mPa・s以下である、[9]〜[13]のいずれかに記載の電子基板。
[15] 上記粘度が10mPa・s以下である、[9]〜[14]のいずれかに記載の電子基板。
[16] 第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、上記第1の面の上に実装されるリードレス電子部品とを備え、上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続された電子基板を用いて、上記配線基板と上記リードレス電子部品との間に、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤を充填する充填工程と、
上記充填工程後、上記表面処理剤を乾燥させることによって、上記表面処理剤が、上記第1の面に配置された上記複数の配線端子における各配線端子の周囲を少なくとも覆う防湿層A1となり、且つ上記第2の面に配置された上記複数の電極端子における各電極端子の周囲を少なくとも覆う防湿層B1となり、上記接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子において、上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている電子基板を得る乾燥工程とを有する、電子基板の製造方法。
[17] 上記乾燥工程において、上記表面処理剤が、さらに、上記接続部材の側面を覆う防湿層C1となる、[16]に記載の電子基板の製造方法。
[18] [1]〜[15]のいずれかに記載の電子基板を使用した電子機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子基板は、マイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れる。
本発明の電子基板の製造方法によれば、マイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れる電子基板を製造することができる。
本発明の電子機器は、電子基板におけるマイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の電子基板の全体を模式的に表す図である。
図2図2は、本発明の第1の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図3図3(b)は図2に示す縦断面図の一部であり、図3(a)は図2に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図4図4は、本発明の第2の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図5図5(b)は図4に示す縦断面図の一部であり、図5(a)は図4に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図6図6は、本発明の第3の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図7図7(b)は図6に示す縦断面図の一部であり、図7(a)は図6に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図8図8は、本発明の第3の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図9図9(b)は図8に示す縦断面図の一部であり、図9(a)は図8に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図10図10(a)は、本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部横断面図であり、図10(b)は一部縦断面図である。
図11図11(a)は、本発明の第2の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部横断面図であり、図11(b)は一部縦断面図である。
図12図12は、本発明の電子基板の製造方法の一例を模式的に表す図である。
図13図13は、一般的な防湿コート剤でコーティングされた電子基板を模式的に表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において、マイグレーション防止、及び接続部材における破損の抑制のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0016】
[電子基板]
本発明の電子基板には、後述するとおり、第1〜第4の態様がある。
本発明の第1〜第4の態様の電子基板をまとめて「本発明の電子基板」と称する場合がある。
本発明の電子基板(本発明の第1〜第4の態様の電子基板)は、第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、上記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続されている構造を有する点で共通する。本発明の電子基板における上記構造を以下、「基本構造」と称する場合がある。
【0017】
本発明の電子基板における基本構造としては、例えば、配線基板にリードレス電子部品を表面実装させた表面実装基板が挙げられる。
本発明の各態様の電子基板について図面を用いて説明する際、共通する構成についてその説明又は符号を省略する場合がある。
また、本発明の電子基板の製造方法において、充填工程で使用される電子基板は上記基本構造を有する電子基板である。
【0018】
まず、本発明において共通する構成について以下に説明する。
(配線基板)
本発明の電子基板が有する配線基板は、第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板であれば、特に制限されない。
配線基板の材質としては、紙、ガラス(布)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂、アルミニウム、アルミナ、セラミック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
(配線端子の配置)
上記配線基板において、第1の面上に存在する複数の配線端子の配置は特に制限されない。上記配線端子が不規則に配置されていても、本発明においては、少なくとも各配線端子の周囲が防湿層で覆われているため、上記第1の面におけるマイグレーションを防止することができる。
【0020】
(リードレス電子部品)
本発明の電子基板が有するリードレス電子部品は、上記配線基板が有する第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置された、リードを有さない電子部品であれば、特に制限されない。
リードレス電子部品のパッケージの材質としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ビスマレイミド/トリアジン/エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
リードレス電子部品としては、例えば、BGA(Ball Grid Array)型パッケージ、CSP(Chip Size Package又はChip Scale Package)、QFN(Quad Flat non−leaded Package)が挙げられる。
【0022】
(電極端子の配置)
上記リードレス電子部品において、第2の面上に存在する複数の電極端子の配置は特に制限されない。上記電極端子が不規則に配置されていても、本発明においては、少なくとも各電極端子の周囲が防湿層で覆われているため、上記第2の面におけるマイグレーションを防止することができる。
【0023】
また、上記リードレス電子部品の第2の面において、複数の電極端子の配置として、例えば、上記第2の面の全面において複数の電極端子が配列されている場合のほか、上記第2の面の外周部分に電極端子が配置され中央部分には電極端子がない場合、上記第2の面の中央部分に電極端子が配置され外周部分には電極端子がない場合、上記第2の面の外周部分及び中央部分にそれぞれ電極端子が配置され、上記外周部分と上記中央部分との間に電極端子がない場合が挙げられる。本発明においては、少なくとも各電極端子の周囲が防湿層で覆われているため、上記リードレス電子部品の第2の面における複数の電極端子の配置が上記のような場合であっても、上記第2の面におけるマイグレーションを防止することができる。
上記電極端子の配列は、配線基板の第1の面における複数の配線端子についても同様である。
【0024】
上記リードレス電子部品は、上記接続部材を持つボールグリッドアレイ型パッケージであることが好ましい。
【0025】
(複数の配線端子と複数の電極端子との関係)
配線基板の第1の面上にある複数の配線端子は、リードレス電子部品の第2の面上にある複数の電極端子にそれぞれ対応している。
【0026】
(接続部材)
本発明の電子基板が有する接続部材は特に制限されない。
本発明において、記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、上記接続部材を介して電気的に接続される。
【0027】
上記接続部材(の材質)は、半田であることが好ましい。
接続部材の形状としては、例えば、ボール状(球状)が挙げられる。
【0028】
上記基本構造において、上記リードレス電子部品の大きさは特に制限されないが、例えば、縦横の長さをそれぞれ5〜30mmとすることができる。
上記基本構造において、接続部材のピッチ(隣接する2つの接続部材における、配線基板に対し垂直方向の各接続部材の中心軸の間の距離)は、例えば、0.3〜2mmとすることができる。
上記基本構造において、配線基板に対し水平方向の接続部材の最大直径は、例えば、0.1〜2mmとすることができる。上記最大直径は、上記接続部材のピッチよりも小さいことが好ましい。上記ピッチが2mmである場合、接続部材の最大直径は2mm未満となる。
上記基本構造において、上記第1面と上記第2面との間の距離は、例えば、50〜300μmとすることができる。
【0029】
本発明の電子基板について、添付の図面を用いて以下に説明する。本発明は添付の図面に限定されない(以下同様)。
図1は、本発明の電子基板の全体を模式的に表す図である。なお、図1は、本発明の第1〜4の態様の電子基板に共通する。
図1において、電子基板100は、第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板110と、
上記第1の面上に実装されるリードレス電子部品120とを備え、
上記リードレス電子部品120は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、
上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続されている。
【0030】
本発明の第1〜第4の態様の電子基板について以下に説明する。
なお、本発明の第1の態様の電子基板における防湿層A1、本発明の第2の態様の電子基板における防湿層A2、及び本発明の第3の態様の電子基板における防湿層A3をまとめて防湿層Aと称する場合がある。上記と同様に、防湿層B1、防湿層B2、及び防湿層B3をまとめて防湿層Bと称する場合がある。
また、以下、本発明の第1〜第4の態様の電子基板について添付の図面を用いて説明する際、各図面において複数の配線端子は、同じ配線端子が複数あることを示す。複数の電極端子、上記接続部材についても同様である。
【0031】
[第1の態様の電子基板]
本発明の第1の態様の電子基板は、
第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、
上記第1の面上に実装されるリードレス電子部品とを備え、
上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、
上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続され、
上記第1の面において、上記各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、
上記第2の面において、上記各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われ、
上記接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子において、上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている、電子基板である。
【0032】
本発明の第1の態様の電子基板は、上記のような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。
本発明においては、配線基板が有する第1の面において各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、リードレス電子部品が有する第2の面において各電極端子の周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われることによって、配線端子及び電極端子におけるマイグレーションを防止できる。
また、本発明においては、接続部材を介して互いに電気的に接続された各1対の配線端子及び電極端子において、配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、上記防湿層B1が上記防湿層A1から離れているため、接続部材が防湿層により完全に埋め込まれることがなく、防湿コート層の熱膨張による応力が軽減し、接続部材における破損を抑制できる。
上記のとおり、接続部材を介して互いに電気的に接続された各1対の配線端子及び電極端子において、各配線端子の周囲が防湿層で覆われ、各電極端子の周囲が防湿層で覆われ、第1の面における上記防湿層と第2の面における上記防湿層とが対面し、離れていることは本発明の第2〜第4の態様の電子基板にも共通する。
なお、本発明に関する上記メカニズムは推測であり、上記以外のものであってもよい。
【0033】
図2は、本発明の第1の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図2において、電子基板100は、第1の面160を有し、第1の面160に複数の配線端子111〜116が配置された配線基板110と、
第1の面160上に実装されるリードレス電子部品120とを備え、
リードレス電子部品120は第1の面160に対向する第2の面140を有し、第2の面140に複数の電極端子121〜126が配置され、
複数の配線端子111〜116における各配線端子は、複数の電極端子121〜126における各電極端子と、接続部材131〜136を介して電気的に接続され、
第1の面160において、各配線端子111〜116の周囲がそれぞれ防湿層A1(171〜176)で覆われ、
第2の面140において、各電極端子121〜126の周囲がそれぞれ防湿層B1(151〜156)で覆われている。
【0034】
(配線端子の周囲が防湿層A1で覆われている)
ここで、各配線端子の周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われているとは、防湿層A1が電子基板100の第1の面160上において各配線端子の周りを隙間なく取り囲む状態を意味する。防湿層B1についても同様である(以下同様)。
【0035】
また、本発明の第1の態様の電子基板において、接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子に関し、図3を参照して以下に説明する。
図3(b)は図2に示す縦断面図の一部であり、図3(a)は図2に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図3(b)には、接続部材(例えば133)を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子(例えば113)及び電極端子(例えば123)が示されている。
図3(b)において、配線端子113の周囲を覆う防湿層A1(173)に対して電極端子123の周囲を覆う防湿層B1(153)が対面する。
また、電極端子123の周囲を覆う防湿層B1(153)が配線端子113の周囲を覆う防湿層A1(173)から、離れている。
【0036】
(対面)
本発明の第1の態様の電子基板において、1対の配線端子及び電極端子について、配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面することは、防湿層B1が防湿層A1に向き合っていることを意味する。
【0037】
(離れている)
本発明の第1の態様の電子基板において、1対の配線端子及び電極端子について、上記電極端子が有する防湿層B1が、上記配線端子が有する防湿層A1から離れていることは、上記防湿層A1が覆っている第1の面の部分と、上記防湿層B1が覆っている第2の面の部分との間が、防湿層(防湿層A1及び防湿層B1)で完全に満たされていない(充填されていない)ことを意味する。
本発明の第1の態様の電子基板において、1対の配線端子及び電極端子について、上記電極端子が有する防湿層B1が、上記配線端子が有する防湿層A1から離れていることによって、接続部材における破損を抑制することができる。
一方、上記第1の面と上記第2の面との間が完全に防湿層で充填される(防湿層A1と防湿層B1とが1つの層となって、防湿層A1と防湿層B1との間を満たしている状態となる)と、上記第1の面と上記第2の面との間を完全に充填する防湿層の熱膨張によって応力が発生し、接続部材における破損が発生しやすくなる。
【0038】
図3(b)において、防湿層B1(154)が防湿層A1(174)から離れていることは、防湿層B1(154)と防湿層A1(174)との間が距離W14を有することによって表されている。防湿層B1(154)と防湿層A1(174)とは距離W14を隔てて離れている。なお、距離W14は0より大きい。
【0039】
図3(b)において、第1の面160と、第2の面140との間の距離はH11で表されている。第1の面160と第2の面140との間の距離(距離H11)は、例えば、50〜300μmとすることができる。
防湿層A1(174)の厚さ、防湿層B1(154)の厚さはそれぞれ、H12、H13で表されている。
厚さH12は、距離H11の半分未満とすることができ、本発明の効果(特に接続部材における破損の抑制)により優れるという観点から、距離H11の1/3以下が好ましい。厚さH13も同様である。
厚さH12は、距離H11が100μmを超える場合、本発明の効果(特に接続部材における破損の抑制)により優れるという観点から、具体的には、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜30μmがより好ましい。厚さH13も同様である。
防湿層A1(174)と防湿層B1(154)との間の距離W14は、本発明の効果により優れるという観点から、防湿層A1(174)の厚さH12と防湿層B1(154)の厚さH13の合計以上であることが好ましい。距離W14は、本発明の効果により優れるという観点から、距離H11の1/3以上が好ましく、距離H11の1/2以上がより好ましい。
上記距離W14は、図3(b)における距離W13、並びに、図2における距離W11〜13、15、及び16に共通する。
防湿層A1(174)以外の防湿層A1の厚さは、厚さH12と同様である。
防湿層B1(154)以外の防湿層B1の厚さは、厚さH13と同様である。
【0040】
図3(b)では、本発明の第1の態様の電子基板における、接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子に関し、上記のとおり、接続部材134を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子114及び電極端子124を例にして説明したが、上記説明は、他の1対の配線端子及び電極端子についても同様である。
【0041】
次に、図3(a)は図2に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図3(a)において、電極端子123の半径を半径r11と表し、接続部材113の最大半径を半径r12と表し、電極端子123の中心から防湿層B1(153)の外周までの半径を半径r13と表す。
防湿層B1(153)は、半径r13の円から電極端子123を除いた部分である。
半径r13の下限値は、半径r11よりも大きく、本発明の効果により優れるという観点から、半径r12よりも大きいことが好ましい。
また、半径r13の上限値は特に制限されない。半径r13の上限値は、ピッチP1(電極端子123の中心と電極端子123に隣接する電極端子124の中心との間の距離)
の半分以下であってもよい。半径r13の上限値は、本発明の効果により優れるという観点から、ピッチP1の半分の値を超えることが好ましい。
半径r13−半径r11の値(防湿層B1の幅の値)は、特に制限されないが、0.1μm以上とすることができ、少なくとも0.1〜50μmであれば、マイグレーションを防止することができる。半径r13−半径r11の値(防湿層B1の幅の値)は、上記範囲以上であってもよく、本発明の効果(特にマイグレーションの防止)により優れるという観点から、大きいほうが好ましい。
なお、図3(a)では、リードレス電子部品が有する第2の面側について、電極端子、接続部材、防湿層B1を電極端子123、接続部材133、防湿層B1(153)を用いて説明したが、上記説明は、他の、電極端子、接続部材、防湿層B1に共通する。
また、上記の電極端子、接続部材、防湿層B1に関する説明は、上記第2の面に対面する、配線基板が有する第1の面における、配線端子、接続部材、防湿層A1についても同様である。後述する図5(a)、図7(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)についても同様である。
【0042】
なお、本発明の第1の態様の電子基板における防湿層A1に関する記載は、後述する防湿層A2、A3に反映されるものとする。本発明の第1の態様の電子基板における防湿層B1に関する記載は、後述する防湿層B2、B3に反映されるものとする。
また、本発明の第1の態様の電子基板における、接続部材を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子及び電極端子に関する上記説明(対面、又は離れていることに関する説明)は、後述する本発明の第2以降の態様の電子基板についても同様である。
【0043】
(防湿層A1又は防湿層B1に含まれる含フッ素重合体)
上記防湿層A1及び上記防湿層B1は、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ、含フッ素重合体を含むことが好ましい。
上記防湿層A1及び上記防湿層B1に含有される含フッ素重合体は、同じでも異なってもよい。
また、後述する防湿層C1が、上記表面処理剤を含んでもよい。
【0044】
上記防湿層A1又は上記防湿層B1に含まれる上記含フッ素重合体は、フッ素を有する重合体であれば特に制限されない。
【0045】
(本発明の電子基板に使用することができる表面処理剤)
以下、本発明の電子基板に使用することができる表面処理剤について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、表面処理剤に使用される各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
【0046】
上記防湿層A1及び上記防湿層B1が、本発明の効果により優れるという観点から、それぞれ、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤が乾燥されたものであることが好ましい。
また、後述する防湿層C1が、上記表面処理剤を乾燥して形成されてもよい。
本発明の電子基板において、上記表面処理剤を用いることによって、上記表面処理剤が適用された箇所に上記基本構造の電子基板の形に沿った防湿層を形成することができる。上記防湿層は薄いこと及び/又は均一の厚さであることが好ましい。
【0047】
・表面張力
上記表面処理剤の25℃における表面張力は、配線基板、リードレス電子部品又は本発明の効果により優れるという観点から、40mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以下であることがより好ましく、20mN/m以下がさらに好ましい。
【0048】
・・表面張力の測定方法
本発明において、表面処理剤の25℃における表面張力は、自動表面張力計(K100C,KRUSS社製)を用いて、プレート法(Wilhelmy法)で、25℃の条件下で測定された。
【0049】
・粘度
上記表面処理剤の25℃における粘度は、本発明の効果により優れるという観点から、25mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下がより好ましい。
【0050】
・・粘度の測定方法
本発明において、表面処理剤の25℃での粘度は、回転式粘度計(RE−80L,東機産業社製)を用いて、25℃で測定された。
【0051】
・被膜成分
上記表面処理剤は、本発明の効果により優れるという観点から、被膜成分として、含フッ素重合体を含むことが好ましい。上記被膜成分としての含フッ素重合体が、上記防湿層A1又は上記防湿層B1に含まれる含フッ素重合体となり得る(防湿層A2若しくは防湿層B2、又は、防湿層A3若しくは防湿層B3についても同様)。また、上記被膜成分としての含フッ素重合体が、本発明の効果により優れるという観点から、後述する防湿層C1に含まれることが好ましい。
上記含フッ素重合体は、防湿性を有することが好ましい。
【0052】
上記含フッ素重合体としては、例えば、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体を挙げることができる。
上記ポリフルオロアルキル基は、例えば、2価の連結基を介して、含フッ素重合体の主鎖と結合することができる。上記2価の連結基は特に制限されない。
含フッ素重合体の主鎖としては、例えば、(メタ)アクリレート及び/又は(メタ)アクリルアミド類から構成される構成単位を少なくとも有する(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」の語は、アクリルおよびメタクリルの両方またはどちらか一方を意味する。
【0053】
上記含フッ素重合体は、本発明の効果により優れるという観点から、パーフルオロアルキル基を有する(フッ素系)重合体であることが好ましい。上記含フッ素重合体がパーフルオロアルキル基を含有する場合、防湿性だけでなく、撥水性に優れた表面処理剤を提供することができる。上記パーフルオロアルキル基は、例えば、2価の連結基を介して、含フッ素重合体の主鎖と結合することができる。上記2価の連結基は特に制限されない。
【0054】
《含フッ素重合体》
上記含フッ素重合体は、本発明の効果により優れるという観点から、少なくともポリフルオロアルキル基含有化合物から導かれる構成単位を含むことが好ましい。
上記ポリフルオロアルキル基含有化合物は、具体的には例えば下記式(a)で表される(メタ)アクリル酸化合物(以下、単に「化合物(a)」という場合がある。)であり、より具体的には例えば(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリルアミドなどである。
【0055】
上記化合物(a)としては、下記構造が挙げられる。
CH=CR−COX−Q−Rf (a)
上記式(a)において、
は、水素原子またはメチル基を表し、
Xは、−O−または>NHを表し、
は、単結合または2価の連結基を表し、
Rfは、炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基を表す。
上記2価の連結基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基である。
【0056】
このような化合物(a)を具体的に(メタ)アクリル酸エステルで例示すれば、下記式(a’)または下記式(a”)で表される化合物を挙げることができる。ただし、化合物(a)は、これらに限定されるものではない。
CH=CH−COO−(CH−(CFF (a’)
CH=C(CH)−COO−(CH−(CFF (a”)
上記式中、添字nは0〜4の整数を表し、添字mは1〜16の整数を表す。添字mは、好ましくは1〜6の整数を表す。
【0057】
上記含フッ素重合体は、化合物(a)から導かれる構成単位を、通常50質量%以上含有することができ、本発明の効果により優れるという観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する。本発明において、含フッ素重合体における構成単位の質量%は、重合に使用した原料化合物がすべて構成単位を構成するとみなした値である。
上記含フッ素重合体が、化合物(a)のみの重合体である場合には、化合物(a)の1種の単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0058】
また、含フッ素重合体が共重合体である場合には、上記化合物(a)以外の他の化合物(b)から導かれる構成単位を1種または2種以上含んでもよい。
上記化合物(b)は、通常、ポリフルオロアルキル基を有しない化合物であり、上記化合物(a)と共重合が可能であれば特に制限されない。
上記化合物(b)としては、例えば、
(メタ)アクリル酸;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物;
炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;
マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類((メタ)アクリル酸、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物を除く。);
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有化合物;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有化合物などであるが、これらに限られない。
【0059】
なお、上記含フッ素重合体の調製方法は特に制限されない。例えば、化合物(a)と、必要に応じて使用することができる化合物(b)とを、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)のような(重合)開始剤の存在下において、m−XHFのような反応溶媒中で、加熱して反応させることによって得ることができる。
【0060】
また、上記表面処理剤が上記含フッ素重合体とともに溶媒を含む場合、上記含フッ素重合体は溶質として機能することができる。
【0061】
本発明において、上記含フッ素重合体とともに使用できる溶媒は、25℃において粘度が10mPa・s未満の液体であればよい。
上記溶媒としては、例えば、後述する、含フッ素溶剤、他の溶剤(C)が挙げられる。
【0062】
《含フッ素重合体以外の溶質》
上記表面改質剤に溶解または分散させることが可能で、本発明の目的を損なわず、安定性、性能および外観等に悪影響を与えない範囲であれば、上記表面改質剤は上記含フッ素重合体以外の溶質を更に含んでもよい。
また、上記含フッ素重合体等以外の溶質としては、例えば、被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、防かび剤、表面処理剤を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤および帯電防止剤等の他の成分を挙げることができる。
【0063】
溶質全量中の上記含フッ素重合体の量は、本発明の効果により優れるという観点から、好ましくは溶質成分全体の80〜100質量%であり、より好ましくは溶質成分全体の90〜100質量%である。
【0064】
・含フッ素溶剤
上記表面処理剤は、本発明の効果により優れるという観点から、上記含フッ素重合体とともに含フッ素溶剤を含むことがより好ましい。
含フッ素溶剤は、フッ素を有し、上記含フッ素重合体を分散又は溶解させ得る溶剤であれば特に制限されない。
好ましい含フッ素溶剤としては、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロケトン(PFK)が挙げられる。使用可能な含フッ素溶剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、含フッ素溶剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上記含フッ素溶剤は、上記表面処理剤の粘度を低減でき、本発明の効果により優れ、乾燥性、作業性に優れるという観点から、好ましくはHFEである。
【0065】
((ハイドロフルオロエーテル(HFE)))
ハイドロフルオロエーテル(HFE)としては、例えば、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(CFCFCFOCH)、1,1−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CFCHOCFCH)、パーフルオロ−1−エチルブチルメチルエーテル(CFCFCFCF(CFCF)OCH)、2,2−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CF3-CH2-OCH2-CF2-H)、メチルノナフルオロブチルエーテル(COCH)およびエチルノナフルオロブチルエーテル(COC)を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるハイドロフルオロエーテル(HFE)は、これらに限定されるものではない。
上記ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、1種類を単独で、または2種類以上を組合せて、用いることができる。
【0066】
上記HFEは、上記表面処理剤の表面張力を低減でき、本発明の効果により優れ、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が低いことから、好ましくはCF3-CH2-OCH2-CF2-H、メチルノナフルオロブチルエーテル(COCH)およびエチルノナフルオロブチルエーテル(COC)からなる群から選択される少なくとも1種類であり、上記に加え、乾燥性、作業性に優れるという観点から、より好ましくはCF3-CH2-OCH2-CF2-H及び/又はエチルノナフルオロブチルエーテル(COC)であり、さらに好ましくはエチルノナフルオロブチルエーテル(COC)である。
【0067】
上記メチルノナフルオロブチルエーテルおよび上記エチルノナフルオロブチルエーテルのノナフルオロブチル基(すなわち、パーフルオロブチル基)は、それぞれ、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。
直鎖状のパーフルオロブチル(ノナフルオロブチル)基としては、パーフルオロ−n−ブチル基(1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−n−ブチル基)を挙げることができる。
また、分枝状のパーフルオロブチル(ノナフルオロブチル)基としては、パーフルオロイソブチル基(1,1,2,3,3,3,4,4,4−ノナフルオロイソブチル基)、パーフルオロ−sec−ブチル基(1,2,2,3,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−sec−ブチル基)およびパーフルオロ−tert−ブチル基(2,2,2,3,3,3,4,4,4−ノナフルオロ−tert−ブチル基)を挙げることができる。
【0068】
また、上記メチルノナフルオロブチルエーテルおよび上記エチルノナフルオロブチルエーテルは、それぞれ、ノナフルオロブチル基の構造が同一である1種類の化合物からなる純物質であってもよいし、ノナフルオロブチル基の構造が相違する2種類以上の異性体からなる混合物であってもよい。
【0069】
例えば、上記エチルノナフルオロブチルエーテルとして、下記式(A−1−a)で表される化合物(以下「化合物(A−1−a)」という場合がある。)、下記式(A−1−b)で表される化合物(以下「化合物(A−1−b)」という場合がある。)および下記式(A−1−c)で表される化合物(以下「化合物(A−1−c)」という場合がある。)からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を単独で、または2種類以上の化合物を混合した混合物として用いることができる。
【0070】
【化1】
【0071】
また、例えば、上記メチルノナフルオロブチルエーテルとして、下記式(A−2−a)で表される化合物(以下「化合物(A−2−a)」という場合がある。)、下記式(A−2−b)で表される化合物(以下「化合物(A−2−b)」という場合がある。)および下記式(A−2−c)で表される化合物(以下「化合物(A−2−c)」という場合がある。)からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を単独で、または2種類の化合物を混合した混合物として用いることができる。
【0072】
【化2】
【0073】
((ハイドロフルオロカーボン(HFC)))
ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、一般的に、骨格が炭素で構成され、上記炭素に結合する水素の一部又は全てがフッ素で置換された化合物を指す。
上記HFCは、脂肪族系炭化水素が有する水素の一部又は全てがフッ素で置換された脂肪族系HFCであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記脂肪族系HFCの主鎖は、直鎖状、分岐状若しくは環状、又はこれらの組合せであればよい。
なお、脂肪族系HFCは例えばベンゼン環のような芳香族炭化水素基を有さないものとできる。
【0074】
ハイドロフルオロカーボン(HFC)(脂肪族系HFC)としては、例えば、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン(CFCFCFCFCFCFCHCH)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(CFCHFCHFCFCF)、ヘプタフルオロシクロペンタン(c−C)、トリデカフルオロヘキサン(CHF13)、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン(CFCFCFCFCHCH)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロ−n−ブタン(CFCHCFCH)を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるハイドロフルオロカーボン(HFC)は、これらに限定されるものではない。
上記ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、1種類を単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
なお、表面処理剤が後述する他の溶剤(C)として、例えば、m−XHFのような、芳香族炭化水素基を有するHFC(芳香族系HFC)を更に含有する場合、上記HFCは芳香族系HFCを含まないものとできる。
【0075】
((パーフルオロケトン(PFK)))
パーフルオロケトン(PFK)は、例えば、ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン((CFCFC(=O)CFCF)、テトラデカフルオロ−2−メチルヘキサン−3−オン(CFCFCFC(=O)CF(CF)およびテトラデカフルオロ−2,4−ジメチルペンタン−3−オン((CFCFC(=O)CF(CF)を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるパーフルオロケトン(PFK)は、これらに限定されるものではない。
上記パーフルオロカーボン(PFC)は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記パーフルオロカーボンを2種類組み合わせる場合、テトラデカフルオロ−2−メチルヘキサン−3−オン((CFCFC(=O)CFCFCF)とテトラデカフルオロ−2,4−ジメチルペンタン−3−オン((CFCFC(=O)CF(CF)の混合物として用いることができる。
【0076】
《含フッ素重合体又は溶質の濃度》
上記表面処理剤において、上記含フッ素重合体の濃度(又は上記含フッ素重合体等を含めた溶質の濃度)は、特に限定されないが、表面処理剤の作業性がより良好となることから、上記表面処理剤全量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは1〜15質量%である。
【0077】
上記表面処理剤において、上記含フッ素溶剤(又は含フッ素溶剤等を含めた溶媒全体)の含有量は、本発明の効果により優れ、表面処理剤の作業性がより良好となることから、上記表面処理剤全量(上記含フッ素重合体を含む)に対して、好ましくは80〜99質量%であり、より好ましくは85〜99質量%である。
なお、上述のとおり、表面処理剤が上記含フッ素重合体とともに上記含フッ素溶剤を含有し、後述する他の溶剤(C)として芳香族炭化水素基を有するHFC(芳香族系HFC)を更に含有する場合、上記芳香族系HFCの含有量は、上記含フッ素溶剤の含有量には含まれない。上記含フッ素溶剤等を含めた溶媒全体の含有量には、後述する他の溶剤(C)の含有量は含まれるものとする。
【0078】
(他の溶剤(C))
上記表面処理剤が上記含フッ素重合体とともに上記含フッ素溶剤を含有する場合、更に、上記含フッ素溶剤以外の他の溶剤(C)を含有してもよい。
上記他の溶剤(C)は、本発明の目的を損なわないものであれば特に限定されない。
他の溶剤(C)の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール;
m−キシレンヘキサフルオリド(以下、m−XHFと記す。)、p−キシレンヘキサフルオリドのような、芳香族炭化水素基を有するHFC(芳香族系HFC)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記他の溶剤(C)は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて、用いることができる。
【0079】
安全性の面から、上記表面処理剤は、非引火性であることが好ましい。表面処理剤の引火性は、表面処理剤が溶媒を含有する場合、その溶媒に起因することから、使用する溶媒は、非引火性であることが好ましい。
なお、本発明において上記表面処理剤が非引火性の溶媒のほかに更に引火性の溶媒を含有する場合、上記表面処理剤が後述する引火性に該当しない(非引火性である)範囲で、引火性の溶媒の含有量を適宜調節することが好ましい。
【0080】
《引火性》
本発明において、「引火性」とは、以下の手順で引火点測定を実施し引火点を持つことと定義する。各引火点測定方法はJIS K 2265−1:2006「引火点の求め方−第1部:タグ密閉法」またはJIS K 2265−4:2007「引火点の求め方−第4部:クリーブランド開放法」に定められている方法に従うものとする。
(引火点の測定手順)
(a)タグ密閉法(JIS K 2265−1)による引火点測定の実施。
(b)(a)において、引火点が80℃以下の温度で引火点が測定できない場合にあっては、クリーブランド開放法(JIS K 2265−4)による引火点測定の実施。
本発明において、「非引火性」とは、上記の手順で引火点測定を実施し、引火が認められなかったことを意味する。
なお、本発明の実施例で使用された表面処理剤1〜7はいずれも非引火性である。
【0081】
(表面処理剤の調製方法)
上記表面処理剤の調製方法としては、例えば、上記含フッ素重合体と、含フッ素溶剤、上記溶剤(C)、又は含フッ素重合体以外の溶質とを混合する方法が挙げられる。
【0082】
[第2の態様の電子基板]
本発明の第2の態様の電子基板は、本発明の第1の態様の電子基板の下位概念であり、上記第1の面において、互いに隣接する2つの配線端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層A1が一体化して防湿層A2を形成し、上記第2の面において、上記互いに隣接する2つの配線端子にそれぞれ電気的に接続する2つの電極端子(上記2つの配線端子に対応する2つの電極端子)の周囲をそれぞれ覆う防湿層B1が一体化して防湿層B2を形成し、上記防湿層A2に対して上記防湿層B2は対面し、上記防湿層B2は上記防湿層A2から離れている。
なお、本発明の第2の態様の電子基板において、上記防湿層A1が一体化して防湿層A2を形成するとは、上記の2つの防湿層A1が1つの防湿層A2になった状態を指す。防湿層B2についても同様である。
【0083】
(互いに隣接する2つの配線端子)
本発明において、2つの配線端子が互いに隣接するとは、2つの配線端子が、例えば、左右に、前後に、又は斜めに並び合うことを意味する。2つの配線端子の間の距離は特に制限されないが、左右に、前後に、又は斜めの方向で、互いに近い位置であればよい。2つの配線端子の間の距離は、互いに最も近い位置とできる。上記は電極端子についても同様である。
【0084】
図4は、本発明の第2の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図4において、電子基板200は、第1の面260において、互いに隣接する2つの配線端子(ここでは例えば213と214)の周囲をそれぞれ覆う防湿層A1(例えば273と274)が一体化して防湿層A2(例えば263)を形成し、
第2の面240において、上記互いに隣接する2つの配線端子(例えば213と214)にそれぞれ電気的に接続する2つの電極端子(例えば223と234)の周囲をそれぞれ覆う防湿層B1(例えば253と254)が一体化して防湿層B2(例えば243)を形成し、
防湿層A2(例えば263)に対して防湿層B2(例えば243)は対面し、防湿層B2(例えば243)は防湿層A2(例えば263)から離れている。
防湿層B2(243)と防湿層A2(263)とは、距離W21を隔てて離れている。
【0085】
図5(b)は図4に示す縦断面図の一部であり、図5(a)は図4に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
【0086】
(一体化する)
本発明において、第1の面において、互いに隣接する2つの配線端子の周囲をそれぞれ覆う防湿層A1が一体化するとは、上記2つの防湿層A1が互いに接続されて1つの防湿層を形成することをいう。一体化した後の防湿層A2の外周の形状は特に制限されない。防湿層B1が一体化することも同様である。
【0087】
図5(a)において、互いに隣接する2つの電極端子223、224の周囲をそれぞれ覆う防湿層B1(253、254)が一体化して、防湿層B2(243)を形成している。2つの防湿層B1(253、254)が互いに接続されて1つの防湿層B2(243)を形成している。
【0088】
防湿層A2は、さらに隣接する、別の配線端子が有する防湿層A1と一体化してもよい。防湿層A2がさらに隣接する、別の配線端子が有する防湿層A1と一体化することは、例えば、図4において、防湿層A2(263)が隣接する防湿層A1(272)と一体化して、第1の面260上において、防湿層A2(263)と防湿層A1(272)とその間の点線部分とで囲まれた部分も防湿層となり、防湿層A2(263)と防湿層A1(272)とが一体となって第1の面を覆わっていることを意味する。防湿層B2についても同様である。
【0089】
図5(b)において、防湿層A2(263)と防湿層B2(243)との間の距離W21は、本発明の効果により優れるという観点から、防湿層A2(263)の厚さと防湿層B2(243)の厚さの合計以上であることが好ましい。距離W21は、本発明の効果により優れるという観点から、第1の面260と第2の面240との間の距離の1/3以上が好ましく、上記距離の1/2以上がより好ましい。
なお、上述のとおり、防湿層A2の厚さは、本発明の第1の態様における厚さH12と同様である。防湿層B2の厚さは、本発明の第1の態様における厚さH13と同じである。
【0090】
[第3の態様の電子基板]
本発明の第3の態様の電子基板は、上記基本構造において、第1の面が、上記第2の面と対向する範囲全てが、防湿層A3で覆われ、第2の面の全体が、防湿層B3で覆われ、上記防湿層A3に対して上記防湿層B3は対面し、上記防湿層B3は上記防湿層A3から離れている。
【0091】
図6は、本発明の第3の態様の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図6において、電子基板300は、第1の面360を有し、第1の面360に複数の配線端子311〜316が配置された配線基板310と、
第1の面360上に実装されるリードレス電子部品320とを備え、
リードレス電子部品320は第1の面360に対向する第2の面340を有し、第2の面340に複数の電極端子321〜326が配置され、
複数の配線端子311〜316における各配線端子は、複数の電極端子321〜326における各電極端子と、接続部材331〜336を介して電気的に接続され、
第1の面360が、第2の面340と対向する範囲全てが少なくとも、防湿層A3(371)で覆われ、第2の面340の全体が、防湿層B3(351)で覆われ、防湿層A3(371)に対して防湿層B3(351)は対面し、防湿層B3(351)は防湿層A3(371)から離れている。
防湿層B3(351)と防湿層A3(371)とは、距離W31を隔てて離れている。
【0092】
本発明の第3の態様の電子基板において、防湿層A3は、第1の面において、第2の面と対向する範囲内を少なくとも覆っていればよい。
図6では、第1の面360において、リードレス電子部品320の両端から垂直方向に配線基板310に向かって引かれた2本の点線の間の(第1の面360の)部分が、第2の面340と対向する範囲を示す。
図6において、防湿層A3(371)は、第2の面340と対向する範囲を超えて、第1の面360を覆っている。
【0093】
図7(b)は図6に示す縦断面図の一部であり、図7(a)は図6に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図7(a)において、第2の面340の全体が、防湿層B3(351)で覆われている。
【0094】
図6(b)において、防湿層A3(371)と防湿層B3(351)との間の距離W31は、本発明の効果により優れるという観点から、防湿層A2(371)の厚さと防湿層B3(351)の厚さの合計以上であることが好ましい。距離W31は、本発明の効果により優れるという観点から、第1の面360と第2の面340との間の距離の1/3以上が好ましく、上記距離の1/2以上がより好ましい。
なお、上述のとおり、防湿層A3の厚さは、本発明の第1の態様における厚さH12と同様である。防湿層B3の厚さは、本発明の第1の態様における厚さH13と同じである。
【0095】
本発明の電子基板は、マイグレーション防止により優れるという観点から、本発明の第1の態様の電子基板が好ましく、本発明の第2の態様の電子基板がより好ましく、本発明の第3の態様の電子基板が更に好ましい。
【0096】
[第4の態様の電子基板]
本発明の第4の態様の電子基板は、上記本発明の第1〜第3の態様の電子基板のいずれかにおいて、さらに、上記接続部材の側面が、防湿層C1で覆われる態様の電子基板である。
【0097】
本発明の第1の態様の電子基板〜第3の態様の電子基板のいずれかにおいて、本発明の効果により優れるという観点から、上記接続部材の側面が防湿層C1で覆われることが好ましい。
【0098】
[本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合]
本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合について以下に説明する。
上記の場合、本発明の第1の態様の電子基板において、少なくとも一部の接続部材の側面が防湿層C1でそれぞれ覆われていればよい。全ての接続部材の側面が防湿層C1でそれぞれ覆われていることが好ましい。
また、上記の場合、本発明の第1の態様の電子基板において、接続部材の側面の一部又は全部が防湿層C1で覆われていればよい。接続部材の側面全体が防湿層C1で覆われていれることが好ましい。
上記は、本発明の第2又は第3の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合についても同様である。
【0099】
図10(a)は、本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部横断面図であり、図10(b)は一部縦断面図である。
図10(b)は、本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部縦断面図であるが、その概要は、図3(b)に示す電子基板において、接続部材の側面が更に防湿層C1で覆われる場合を示すことにある。
図10(b)において、電子基板100が有する接続部材133、134の側面が防湿層C1(183、184)でそれぞれ覆われている。防湿層B1(153)と防湿層A1(173)とは距離W13を隔てて離れている。防湿層B1(154)と防湿層A1(174)とは距離W14を隔てて離れている。
防湿層A1(173)は第1の面160において配線端子113の周囲を第1の面160に沿って覆い、防湿層B1(153)は第2の面140において電極端子123の周囲を第2の面140に沿って覆い、防湿層C1(183)は接続部材133の側面に沿ってその表面を覆っている。
このため、防湿層C1(183)の端部は、それぞれ、湿層B1(153)及び防湿層A1(173)と連結しているが、防湿層B1(153)が防湿層A1(173)から離れた状態は保たれている。
【0100】
このように、本発明の第1の態様の電子基板が有する接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合において、本発明の第1の態様の電子基板で規定されている「上記電極端子の周囲を覆う防湿層B1が上記配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れている」ことは、
上記の本発明の第1の態様の電子基板に記載されたとおりであることに加え、具体的には、図10(a)に示すように、上記電極端子の中心から上記防湿層B1の外周までの半径が、上記電極端子の中心から上記防湿層C1の外周の最大半径よりも大きく、上記配線端子の中心から上記防湿層A1の外周までの半径が、上記配線端子の中心から上記防湿層C1の外周の最大半径よりも大きいことを意味する。
【0101】
図10(a)において、電子基板100が有する、電極部材123、接続部材133、防湿層B1(153)、防湿層C1(183)が表され、接続部材133の側面が防湿層C1(183)で覆われている。電極端子123の中心から防湿層B1(153)の外周までの半径が半径r14表され、電極端子123の中心から防湿層C1(183)の外周の最大半径が半径r13で表されている。
図10(a)において半径r14は半径r13よりも大きい。上記半径r14と半径r13との関係は、電極端子123に対応する配線端子113の中心から防湿層A1(173)の外周までの半径と、配線端子113の中心から防湿層C1(183)の外周の最大半径との関係に反映される。
これを踏まえて図10(b)を参照すると、防湿層A1(173)及び防湿層B1(153)の外周は、防湿層C1(183)の最大外周よりも大きい。図10(b)に示すように、防湿層A1(173)と防湿層B1(153)との間は、配線基板110に対して水平方向で、防湿層C1(183)の最大外周の外側の範囲で、離れている、といえる。
上述のとおり、基本構造において、接続部材のピッチ(隣接する2つの接続部材における、配線基板に対し垂直方向の各接続部材の中心軸の間の距離)は、例えば、0.3〜2mmとすることができる。
【0102】
また、上記基本構造において、配線基板に対し水平方向の接続部材の最大直径は、例えば、0.1〜2mmとすることができる。上記最大直径は、上記接続部材のピッチよりも小さいことが好ましい。上記ピッチが2mmである場合、接続部材の最大直径は2mm未満となる。
【0103】
図10(b)に示すピッチP1は、r13の2倍よりも大きいことが好ましい。
また、ピッチP1の値からr13の2倍の値を除いた値(W17に当たる)は、0を超え、本発明の効果により優れるという観点から、50μm以上が好ましい。本発明の第2〜第3の態様に電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合も同様である。
防湿層C1の厚さは、0.1〜50μmが好ましい。本発明の第2〜第3の態様に電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合も同様である。
【0104】
[本発明の第2の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合]
本発明の第2の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合について以下に説明する。
【0105】
図11(a)は、本発明の第2の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部横断面図であり、図11(b)は一部縦断面図である。
図11(b)は、本発明の第2の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す一部縦断面図であるが、その概要は、図5(b)に示す電子基板において、接続部材の側面が更に防湿層C1で覆われる場合を示すことにある。
図11(b)において、電子基板200が有する接続部材233、234の側面が防湿層C1(283、284)でそれぞれ覆われている。
【0106】
防湿層B2(243)と防湿層A2(263)とは距離W21を隔てて離れている。
防湿層A2(263)は第1の面260において配線端子213、214の周囲を第1の面260に沿って覆い、防湿層B2(243)は第2の面240おいて電極端子223、224の周囲を第2の面240に沿って覆い、防湿層C1(283、284)が接続部材(233、234)の側面に沿ってその表面を覆っている。
このため、防湿層C1(283、284)の端部は、それぞれ、防湿層B2(243)及び防湿層A2(263)と連結しているが、防湿層B2(243)が防湿層A2(263)から離れた状態は保たれている。
【0107】
このように、本発明の第2の態様の電子基板が有する接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合において、本発明の第2の態様の電子基板で規定されている「上記防湿層B2は上記防層A2から離れている」ことは、
上記の本発明の第1の態様の電子基板に記載されたとおりであることに加え、具体的には、図11(a)に示すように、防湿層B2(243)を形成した2つの防湿層B1(253、254)が互いに接続した部分について、2つの電極端子(223、224)の中心間の距離P2が、電極端子223の中心から防湿層C1(283)の外周までの半径r23と、電極端子224の中心から防湿層C1(284)の外周までの半径r24との合計よりも大きく、かつ上記状況が防湿層B2(243)に対面する図11(b)に示す防湿層A2(263)についても同様であることを意味する。
つまり、距離P2から半径r23と半径r24を除いたW24が、0より大きければよく、本発明の効果により優れるという観点から、50μm以上が好ましい。
また、図11(a)において、2つの防湿層B1(253、254)が互いに接続した部分以外については、本発明の第1の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合と同様である。
【0108】
[本発明の第3の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合]
本発明の第3の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合について以下に説明する。
【0109】
図8は、本発明の第3の態様の電子基板において接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合の電子基板の一実施形態の概略を模式的に表す縦断面図である。
図8において、第1の面460が、第2の面440と対向する範囲全てが、防湿層A3(471)で覆われ、第2の面440の全体が、防湿層B3(451)で覆われ、防湿層A3(471)に対して防湿層B3(451)は対面し、防湿層B3(451)は防湿層A3(471)から離れ、接続部材(431〜436)の側面が、防湿層C1(481〜486)で覆われている。
【0110】
防湿層B3(451)と防湿層A3(471)とは距離W41を隔てて離れている。距離W41は、本発明の第3の態様の電子基板の距離31と同様である。
【0111】
防湿層A3(471)は第1の面460において沿ってその表面を全て覆い、防湿層B3(451)は第2の面440に沿ってその表面を全て覆い、防湿層C1(481〜486)の接続部材(431〜436)の側面に沿ってその表面を覆っている。
このため、防湿層C1(481〜486)の端部は、それぞれ、防湿層B3(451)及び/又は防湿層A3(471)と連結しているが、防湿層B3(451)が防湿層A3(471)から離れた状態は保たれている。
【0112】
図9(b)は図8に示す縦断面図の一部であり、図9(a)は図8に示す電子基板の全体をB−B線で切断した横断面の一部概略図である。
図9(a)において、第2の面の全体が防湿層B3(451)で覆われている。
また、接続部材433、434の側面が防湿層C1(483、484)で覆われている。
防湿層C1の厚さは、例えば、防湿層A1又は防湿層B1と同じとすることができる。
防湿層C1(483、484)は、防湿層B3(451)及び/又は防湿層A3(471)と連結していてもよい。
【0113】
このように、本発明の第3の態様の電子基板が有する接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合において、本発明の第3の態様の電子基板で規定されている「上記防湿層B3は上記防層A3から離れている」ことは、
上記の本発明の第1の態様の電子基板に記載されたとおりであることに加え、具体的には、図9(a)に示すように、具体的には、
2つの電極端子(423、424)の中心間の距離P4が、電極端子423の中心から防湿層C1(483)の外周までの半径r43と、電極端子424の中心から防湿層C1(484)の外周までの半径r44との合計よりも大きく、かつ上記状況が防湿層B3(451)に対面する図9(b)に示す防湿層A3(471)についても同様であることを意味する。
つまり、距離P4から、半径r43と半径r44を除いたW44が0より大きければよく、W44は本発明の効果により優れるという観点から、50μm以上が好ましい。
【0114】
また、本発明の第3の態様の電子基板が有する接続部材の側面が防湿層C1で覆われる場合、第2の面において外周に存在する接続部材(例えば図8における接続部材431、436)の側面を覆う防湿層C1とリードレス電子部品の第2の面上の外周付近を覆う防湿層B3との関係は、
図8を用いて接続部材431で説明すると、
配線端子411、接続部材431及び電極端子421を配線基板410に対して垂直方向に貫く中心軸を基準にして、配線基板410に対して水平方向で電極端子421の中心から防湿層B3のリードレス電子部品420の左端部までの距離W45が、接続部材431の中心から、配線基板410に対して水平に電子基板400の左側方向への、防湿層C1(481)の外周までの最大半径r45よりも大きいことを意味する。
【0115】
本発明の第3の態様の電子基板において、防湿層A3は、第1の面において、第2の面と対向する範囲を少なくとも覆っていればよい。
図8では、第1の面460において、リードレス電子部品420の両端から垂直方向に配線基板410に向かって引かれた2本の点線の間の(第1の面360の)部分が、第2の面440と対向する範囲を示す。
図8において、防湿層A3(471)は、第2の面440と対向する範囲を超えて、第1の面460を覆っている。
【0116】
本発明の電子基板は、マイグレーション防止により優れるという観点から、本発明の第1の態様の電子基板が好ましく、本発明の第2の態様の電子基板がより好ましく、本発明の第3の態様の電子基板が更に好ましく、本発明の第3の態様の電子基板においてさらに接続部材の側面が防湿層C1で覆われることがより更に好ましい。
【0117】
[電子基板の製造方法]
本発明の電子基板の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)充填工程
(2)乾燥工程
各工程について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図12は、本発明の電子基板の製造方法の一例を模式的に表す図である。
【0118】
(充填工程)
充填工程は、第1の面を有し、上記第1の面に複数の配線端子が配置された配線基板と、上記第1の面の上に実装されるリードレス電子部品とを備え、上記リードレス電子部品は上記第1の面に対向する第2の面を有し、上記第2の面に複数の電極端子が配置され、上記複数の配線端子における各配線端子は、上記複数の電極端子における各電極端子と、接続部材を介して電気的に接続された電子基板を用いて、上記配線基板と上記リードレス電子部品との間に、25℃における表面張力が40mN/m以下であり、25℃における粘度が50mPa・s以下である表面処理剤を充填する工程である。
【0119】
(基本構造を有する電子基板)
まず、図12(a)に示す、基本構造を有する電子基板101を準備する。
基本構造を有する電子基板101は、第1の面160を有し、第1の面160に複数の配線端子111〜113が配置された配線基板110と、第1の面160の上に実装されるリードレス電子部品120とを備え、リードレス電子部品120は第1の面160に対向する第2の面140を有し、第2の面140に複数の電極端子121〜123が配置され、複数の配線端子111〜113における各配線端子は、複数の電極端子121〜123における各電極端子と、接続部材131〜133を介して電気的に接続されている。
【0120】
上記充填工程に使用される電子基板(基本構造を有する電子基板)としては、例えば、リードレス電子部品を搭載した表面実装基板が挙げられ、より具体的には、BGAを搭載した表面実装基板が挙げられる。
【0121】
(表面処理剤)
上記充填工程に使用される表面処理剤は、上述した、(本発明の電子基板に使用することができる表面処理剤)と同様である。
本発明の電子基板の製造方法において、上記表面処理剤を用いることによって、上記表面処理剤を乾燥した後、上記表面処理剤が充填された箇所に上記基本構造の電子基板の形に沿って、防湿層を形成することができる。上記防湿層は薄いこと及び/又は均一の厚さであることが好ましい。
上記表面処理剤は、乾燥後の、表面処理剤に含まれる被膜成分(例えば上記含フッ素重合体等)によって構成される防湿層が、配線基板110とリードレス電子部品120との間を充填しにくい(例えば上記対面する防湿層A1と防湿層B1とにおいて、上記防湿層B1が上記防湿層A1から離れている)という観点から、上記被膜成分以外に更に上記フッ素溶剤を含むことが好ましい。
【0122】
上記充填工程では、基本構造を有する電子基板101の配線基板110とリードレス電子部品120との間に、上記表面処理剤を充填する。
上記間に上記表面処理剤を充填する方法としては、例えば、基本構造を有する電子基板を上記表面処理剤に浸漬(塗布)することによって、上記間に上記表面処理剤を充填する方法が挙げられる。
また、上記充填する方法として、例えば、図12(a)に示すように、リードレス電子部品120の側面近くから表面処理剤190を配線基板110の上に滴下し、表面処理剤190を毛細管現象によって配線基板110とリードレス電子部品120との間に浸透させる方法が挙げられる。毛細管現象による上記浸透のあと、図12(b)に示すように、配線基板110とリードレス電子部品120との間(斜線部分)を表面処理剤190で充填することができる。本発明に使用されうる表面処理剤は、上記のような表面張力及び粘度を有するので、配線基板/リードレス電子部品の間が狭くとも、上記表面処理剤が配線基板/リードレス電子部品の間の内部を含め、隅々にまで浸透することができる。
上記間に上記表面処理剤を充填する方法は、本発明の効果により優れるという観点から、表面処理剤を配線基板の上に滴下し、毛細管現象により配線基板とリードレス電子部品との間に浸透させる方法や浸漬による方法が好ましい。
具体的な装置としては、例えば、ディスペンサー、ディップコーターなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0123】
(乾燥工程)
乾燥工程は、上記充填工程後、上記表面処理剤を乾燥させる工程である。
乾燥工程において、上記表面処理剤を乾燥させる方法は特に制限されない。例えば、室温での自然乾燥、加熱乾燥が挙げられる。
乾燥工程における温度は、本発明の効果により優れるという観点から、20〜150℃が好ましい。
【0124】
図12(b)に示す、配線基板110とリードレス電子部品120との間(斜線部分)を充填していた表面処理剤190が乾燥され、その後、図12(c)に示すように、第1の面160に配置された複数の配線端子111〜113における各配線端子の周囲を少なくとも覆う防湿層A1(171〜173)となり、且つ第2の面140に配置された複数の電極端子121〜123における各電極端子の周囲を少なくとも覆う防湿層B1(151〜153)となり、接続部材131〜133を介して互いに電気的に接続された1対の配線端子(例えば113)及び電極端子(例えば123)において、配線端子113の周囲を覆う防湿層A1(173)に対して電極端子123の周囲を覆う防湿層B1(123)が対面し、電極端子123の周囲を覆う防湿層B1(153)が配線端子113の周囲を覆う防湿層A1(173)から離れている、電子基板100を得ることができる。
【0125】
上記では、乾燥工程後、得られる電子基板100を、本発明の第1の態様の電子基板(図1で示した電子基板100と同様)として説明したが、図12(b)に示す表面処理剤190が乾燥され、その後、図12(c)において、乾燥後の表面処理剤が、防湿層A1(171)と防湿層A1(172)との間を点線で結んだように防湿層A2(261)(図4の防湿層A2(261)と同じ)を形成し、防湿層B1(151)と防湿層B1(152)との間を点線で結んだように防湿層B2(241)(図4の防湿層B(241)と同じ)を形成すれば、本発明の第2の態様の電子基板を製造することができる。
【0126】
また、図12(b)に示す表面処理剤190が乾燥され、その後、図12(c)において、乾燥後の表面処理剤が、各防湿層A1の間を点線で結んだように第1の面の全体を覆う防湿層A3(371)(図6の防湿層A3(371)と同じ)を形成し、各防湿層B1の間を点線で結んだように第2の面の全体を覆う防湿層B3(351)(図6の防湿層B3(351)と同じ)を形成すれば、本発明の第3の態様の電子基板を製造することができる。
【0127】
また、図12(b)に示す表面処理剤190が乾燥され、その後、図12(c)において、表面処理剤が、さらに、各接続部材(例えば接続部材131)の側面を覆う防湿層C1(例えば481)(図8の防湿層C1(481)と同じ)となれば、本発明の第4の態様の電子基板を製造することができる。
【0128】
本発明の電子基板には、信頼性等向上を目的として、例えば、補強材、放熱剤などが、更に、施されていても構わない。上記補強材としては、例えば、サイドフィル剤が挙げられるが、補強材はこれに限定されない。上記放熱剤としては、例えば、放熱性の接着剤などが挙げられるが、放熱剤はこれに限定されない。
本発明の電子基板には、信頼性等向上を目的として、例えば、放熱シートを、更に、有してもよい。上記放熱シートは特に制限されない。
【0129】
[電子機器]
本発明の電子機器は、本発明の電子基板を使用した電子機器である。
本発明の電子機器に使用される電子基板は、本発明の電子基板であれば特に制限されない。例えば、本発明の第1〜第4の態様の電子基板が挙げられる。
本発明の電子機器としては、例えば、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、医療機器、カーナビゲーション、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、テレビ、ロボット、自動車や電車などの産業用機器等が挙げられる。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で表面処理剤を調製するために使用した化合物は、市販の試薬として入手することができるものまたは既知の合成法によって容易に合成できるものである。
また、以下の実施例において、特に断わりのない限り「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
なお、以下本実施例において表面処理剤を調製するために使用された原材料の略称と、その構造式又は正式名称を下記表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
[含フッ素重合体の合成]
密閉容器に上記表1に示す成分の一部を下記表2に示す比率で用いて原材料を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後、70℃で18時間以上反応させ、含フッ素重合体を得た。その後、反応溶剤と同じ溶剤を用いて、含フッ素重合体濃度20%の含フッ素重合体溶液を得た。
上記のとおり得られた含フッ素重合体溶液を、大量のメタノールに添加して、含フッ素重合体を析出させた。析出した含フッ素重合体を減圧乾燥器の中に入れ、減圧下(60℃)で真空乾燥させて、含フッ素重合体1を得た。
【0133】
【表2】
【0134】
[表面処理剤の調合]
下記表3の「表面処理剤の組成(質量部)」欄に示す、各含フッ素重合体および各種溶剤を混合しおよび溶解させて各表面処理剤を調合した。
なお、含フッ素重合体の種類の欄に示す「重合体1」は、上記のとおり合成された含フッ素重合体1を指す。
また、後述する電子部品における被膜個所を確認するために、各表面処理剤に蛍光染料(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)を250ppm添加した。
なお、比較表面処理剤1は蛍光染料添加品である。
【0135】
[評価方法]
上記のとおり製造された各表面処理剤の物性(表面張力及び粘度)を以下に記載する方法で測定した。結果を表3に示す。
【0136】
[粘度]
各表面処理剤について、回転式粘度計(RE−80L,東機産業社製)を用いて、25℃の条件下で粘度を測定した。測定開始から3分後の値を測定値とした。
【0137】
[表面張力]
自動表面張力計(K100C,KRUSS社製)を用いて、プレート法(Wilhelmy法)で25℃の条件下で、各表面処理剤の表面張力の測定を行った。測定は3秒ごとに1分間計測し、最後の5点の平均値を測定結果とした。
【0138】
【表3】
【0139】
表3中、濃度*1は、各表面処理剤全量に対する、その表面処理剤に含有される被膜成分としての含フッ素重合体1の濃度(質量%)である。
【0140】
比較表面処理剤1の詳細は以下のとおりである。
比較表面処理剤1:Humiseal(品番1B51NSLU)、Chase社製。被膜成分ポリオレフィン樹脂。主溶剤メチルシクロヘキサン。固形分22質量%。25℃における粘度287mPa・s。25℃における表面張力24mN/m。蛍光塗料添加品。
【0141】
(リードレス電子部品への処理)
・リードレス電子部品が搭載されている表面実装基板
9mm角で0.65mmピッチのリードレス電子部品が搭載されている表面実装基板(サイプレス セミコンダクタ社のPSoC 6 MCUシリーズ 品番CY8C624ABZI−D44。以下同様)を用意した。表面実装基板における配線基板の第1の面(実装面)は、リードレス電子部品の第2の面よりも大きい。
上記表面実装基板において、リードレス電子部品(の第2の面)と上記リードレス電子部品を搭載する、配線基板(の第1の面)との間の距離は、0.16〜0.26mmであった。上記表面実装基板においてリードレス電子部品(の複数の電極端子)と配線基板(の複数の配線端子)とは、半田ボールでそれぞれ接続されている。上記半田ボールの、配線基板に対して水平方向の直径は、0.25〜0.35mmであった。隣接する半田ボール間のピッチは上記のとおり0.65mmであった。上記リードレス電子部品の第2の面上の複数の半田ボールのうち、第2の面上において外周に存在する半田ボールについて、上記半田ボールが接続する電極端子の中心からリードレス電子部品の端部までの距離(図8で示されるW45)は1.2mmであった。なお、上記リードレス電子部品の第2の面の中央部には半田ボールが存在しない。
【0142】
・表面処理剤による処理
下記表5に示す各表面処理剤を同表に示す各処理方法で上記表面実装基板に適用した。
【0143】
・・処理方法がピペッター使用であった場合
・・・充填工程
上記表面実装基板に実装(搭載)されているリードレス電子部品が水平になるように上記表面実装基板を置き、リードレス電子部品の側面1か所に、上記側面に接するように垂直上方から、各表面処理剤を30μL、ピペッターを用いて、上記表面実装基板の配線基板上に吐出した。
【0144】
なお、吐出した表面処理剤1〜7は毛細管現象によりリードレス電子部品の下部(配線基板とリードレス電子部品との間)に浸透した。
【0145】
・・・乾燥工程
その後、室温(25℃)で24時間乾燥させ、防湿層を有する各電子基板を得た。
【0146】
・・処理方法がディップ処理であった場合
9mm角で0.65mmピッチのリードレス電子部品が搭載されている表面実装基板(サイプレス セミコンダクタ社のPSoC 6 MCUシリーズ 品番CY8C624ABZI−D44。上記と同様)を用意した。
【0147】
・・・充填工程
上記リードレス電子部品の側面の一方が垂直方向上側になるように上記表面実装基板を吊るし、吊るした表面実装基板を卓上ディップコーター DT−0303−S4(株式会社SDI製)にセットした。
上記ディップコーターの下に、吊るした表面実装基板が浸漬できる大きさの防湿コート槽を設置し、上記防湿コート槽の中に上記のとおり得られた各表面処理剤を入れ、1m/分の速度で上記基板を上記各表面処理剤に浸漬させた。浸漬後、上記ディップコーターを停止し、上記表面実装基板が上記表面処理剤に浸漬した状態を20秒間保持した後、再び上記ディップコーターを作動し、1m/分の速度で上記表面実装基板を上記表面処理剤から引上げた。
【0148】
・・・乾燥工程
引き上げた後、上記実装基板を室温(25℃)で24時間乾燥させ、防湿層を有する各電子基板を得た。
【0149】
[評価]
[各防湿層の存在の有無の確認]
上記のとおり製造された各電子基板について、防湿層A、B、C1の存在の有無を以下の方法で確認した。結果を表5の防湿層A、B、C1の存在の各欄に示す。
(評価方法)
まず、各実施例、比較例の電子基板からそれぞれリードレス電子部品を剥がし、上記電子基板において、第1の面上でリードレス電子部品が搭載されていた配線基板における場所(第1の面が第2の面と対向する範囲)における防湿層A、及び剥がしたリードレス電子部品の第2の面における防湿層B、接続部材(半田ボール)の側面の防湿層C1の存在を以下の方法で確認した。
【0150】
上記実施例の電子基板からそれぞれリードレス電子部品を剥がした後、剥がした後の配線基板の第1の面(部品実装面)上のリードレス部品があった部分、又は剥がした後のリードレス電子部品の第2の面(端子形成面)に、それぞれ2−プロパノールを垂らし、リードレス部品があった第1の面上における防湿層A、第2の面上における防湿層Bの有無を確認した。
【0151】
接続部材(半田ボール)における防湿層C1の状態は、上記実施例の電子基板からそれぞれリードレス電子部品を剥がした後、接続部材にも2−プロパノールを垂らし、防湿層C1の有無を確認した。
【0152】
(評価基準)
上記第1の面上において、上記2−プロパノールがはじかれた場合、第1の面上の全体に防湿層Aがあると判断し、これを「あり」と表示した。実施例の防湿層Aは全て「あり」であった。
上記第2の面上において、上記2−プロパノールがはじかれた場合、第2の面上の全体に防湿層Bがあると判断し、これを「あり」と表示した。実施例の防湿層Bは全て「あり」であった。
上記接続部材(半田ボール)において、上記2−プロパノールがはじかれた場合、接続部材(半田ボール)の側面全体に防湿層C1があると判断し、これを「あり」と表示した。実施例の防湿層C1は全て「あり」であった。
また、上記の防湿層A及び防湿層Bの存在の評価結果が「あり」であった場合、第1の面及び第2の面の間にある接続部材(半田ボール)のすべてが防湿層C1を有すると評価した。
【0153】
比較例に関しては、上記のように破壊した後のリードレス電子部品等について、目視で、又は、UVランプを照射し蛍光する箇所を確認することで、防湿層の有無を確認した。
比較例1について、表5の防湿層A、B、C1の存在欄にまとめて記載したように、比較例1の電子基板は、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近(半田ボールが存在する領域。以下同様)が防湿成分で満たされていた。また、比較例1において、リードレス電子部品の第2の面の中央部(半田ボールが存在しない領域。以下同様)に防湿層は確認できなかった。比較例1において、配線基板の第1の面上のリードレス部品があった部分の中央部(半田ボールが存在しない領域。以下同様)には防湿層は確認できなかった。
なお、第1の面と第2の面との間が上記のように防湿成分で満たされていた部分において、防湿層C1は、第1の面と第2の面との間を満たす上記防湿成分に含まれている。
【0154】
[空間の確認]
対面する防湿層A、Bの間の距離(W41)及び隣接する防湿層C同士の間の距離(W44)を以下の方法で確認し、測定した。結果を、表5の空間の欄に示す。
・防湿層A、Bの間の距離及び隣接する防湿層C同士の間の距離
対面する防湿層A、Bの間の距離(W41)及び隣接する防湿層C同士の間の距離(W44)を、デジタルマイクロスコープ(VHX−6000、キーエンス社製)で計測した。被膜がある箇所を、目視、又は、ハンドライトブラックライト(SK365UV−001、ナイトライド製)で紫外光(365nm)を照射して確認した。
【0155】
上記デジタルマイクロスコープによる測定の結果、実施例は全て、対面する防湿層A、Bの間の距離が100μm以上であった。また、隣接する防湿層C1同士の間の距離も同様であった。
これに対して、比較例1は、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近では、接続部材(半田ボール)を埋めるくらい防湿層が存在していて空間は確認できなかった。つまり、比較例1の電子基板では、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近が防湿成分で満たされていたところは防湿層A、Bの間の距離はなし(ゼロ)であった。また、比較例1の電子基板では、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近が防湿成分で満たされていたところは隣接する防湿層C1同士の間の距離はなし(ゼロ)であった。
【0156】
[防湿層A、B、C1の膜厚の推定方法]
防湿層A、B、C1の膜厚を直接測定することは困難であるため以下の方法で膜厚を推測した。防湿層A、B、C1の膜厚を推測するにあたっては、膜厚測定システムF20−UV(フェルメトリクス製)のコンタクトプローブを用いた。
【0157】
<ピペッターを用いて処理した場合>
[防湿層A]
本発明において、ピペッターを用いて処理した場合の防湿層Aは、第1の面と第2の面と対向する厚さ(160μm〜260μm)と同じ厚さの表面処理剤が乾燥した際に形成する膜厚と同じ膜厚であると推測できるものとする。
配線がないレジスト基板に各表面処理剤を、Wet(ウェット)膜厚100μmおよび150μmのバーコーターそれぞれを用いて処理し25℃の条件下で乾燥して形成された膜の厚さを測定し、得られた測定データを元に、表面処理剤の液の厚さによる乾燥後の被膜の厚さを、原点を通る2次曲線で近似することで、液膜(表面処理剤)の厚さが160μm〜260μmの際の乾燥後の被膜の厚さ(表4の推定膜厚D1)を算出し、これをピペッターを用いて処理した場合の防湿層Aの厚さ(推測値)とした。結果を表4の推定膜厚D1欄に示す。
【0158】
[防湿層Bおよび防湿層C1]
本発明において使用される表面処理剤は表面張力が非常に低いため、半田ボールや電子基板及びリードレス電子部品の表面に対する表面処理剤の濡れ性とガラス板に対する表面処理剤の濡れ性は同等である。そこで、ピペッターを用いて処理した場合の、半田ボールの側面およびリードレス電子部品の下部(第2の面)に形成される膜厚は、表面処理剤にガラス板を浸漬処理し、ガラス板を表面処理剤から垂直に立てた状態で引き上げる浸漬処理テストで形成される膜厚D2とほぼ同等と考えられた。
このため、各表面処理剤にガラス板を浸漬し、ガラス板を各表面処理剤から垂直に立てた状態で引き上げ、引き上げてから、25℃の条件下で20分以上乾燥させる浸漬処理テストの後のガラス板上に形成された防湿層D2の厚さの計測値を、ピペッターを用いて処理した場合の、リードレス電子部品の第2の面における防湿層Bおよび半田ボールの側面における防湿層C1の厚さの推定値とした。
【0159】
[ディップコーターを用いて処理した場合]
本発明において使用される表面処理剤は表面張力が非常に低いため、半田ボールや電子基板及びリードレス電子部品の表面に対する表面処理剤の濡れ性とガラス板に対する表面処理剤の濡れ性は同等である。そこで、ディップコートした場合は、防湿層A、防湿層Bおよび防湿層C1の膜厚は、膜厚D2とほぼ同等と考えられた。
そこで、膜厚D2の値を、ディップコーターを用いて処理した場合の、防湿層A、防湿層Bおよび防湿層C1の厚さの推定値として記載した。
【0160】
[膜厚測定の結果]
上記のレジスト板でのWet膜厚100μm又は150μmの乾燥後の膜厚測定の結果および測定結果から得られた推定式(第1の面と第2の面と対向する厚さ(X[μm])と形成される防湿層の膜厚(Y[μm])の推定式)、並びに上記推定式から算出した推定膜厚D1を表4に記載した。
また、ガラス板を用いて上記浸漬処理テストを行って得られた膜厚D2を表4に記載した。
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
表5に示す結果から明らかなように、実施例の電子基板は、第1の面において、各配線端子の少なくとも周囲がそれぞれ防湿層A1で覆われ、第2の面において、各電極端子の少なくとも周囲がそれぞれ防湿層B1で覆われ、接続部材を介して互いに電気的に接続された各1対の配線端子及び電極端子において、配線端子の周囲を覆う防湿層A1に対して電極端子の周囲を覆う防湿層B1が対面し、電極端子の周囲を覆う防湿層B1が配線端子の周囲を覆う防湿層A1から離れていた。
実施例において、対面する防湿層Aと防湿層Bとの間の距離(例えば図8に示すW41)は100μm以上であったので、防湿層B1が防湿層A1から離れており、防湿層B1と防湿層A1との間に空間を有すると言える。
以上から、実施例の電子基板は、マイグレーション防止、接続部材における破損の抑制に優れると考えられる。
また、実施例の電子基板は、接続部材の側面が、防湿層C1で覆われていた。
実施例の電子基板は、配線基板の第1の面とリードレス電子部品の第2の面との間における(基本構造の電子基板の)形状に沿って、防湿層Aと防湿層Bが離れ、隣接する防湿層C1同士の間も離れた状態で、防湿層A(具体的には防湿層A3)、防湿層B(具体的には防湿層B3)、防湿層C1が形成されていた。なお、各実施例において、リードレス電子部品を剥がした状態で、隣接する防湿層C1同士の間も半田ボールの最大直径に対応する部分で互いに離れた状態であることが確認された。
実施例8の電子基板(処理方法がディップ処理)は、その全体が、基本構造の電子基板の形状に沿って、防湿層が形成されていた。実施例9も同様である。
【0164】
一方、比較例1の電子基板において、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近(半田ボールが存在する領域)が防湿成分で満たされていた。
また、比較例1では、第1の面と第2の面との間が上記のように防湿成分で満たされていた部分は、防湿層Aと防湿層Bは離れておらず、両者が第1の面と第2の面との間に1つの層として存在した。
比較例1では、第1の面と第2の面との間が上記のように防湿成分で満たされていた部分において、防湿層C1は、第1の面と第2の面との間を満たす上記防湿成分に含まれている。
つまり、比較例1の電子基板は、第1の面と第2の面との間において、リードレス電子部品の外周付近(半田ボールが存在する領域)は、防湿成分で充填され、その結果、半田ボールが防湿成分に埋まった状態であった。
上記のように、第1の面と第2の面との間が防湿成分で充填され、その結果、半田ボールが防湿成分に埋まった状態である比較例1は、少なくとも、各1対の配線端子及び電極端子において防湿層B1が防湿層A1から離れていない、又は、防湿層B3が防湿層A3から離れていないので、本発明の電子基板に該当しない。
【0165】
また、比較例1では、リードレス電子部品の第2の面上の中央部(半田ボールが存在しない領域)に防湿層は確認されなかった。配線基板の第1の面上のリードレス部品があった部分の中央部(半田ボールが存在しない領域)には防湿層は確認されなかった。
上記のように、比較例1は、第1の面において第2の面と対向する範囲全てが防湿層A3で覆われておらず、第2の面の全体が防湿層B3で覆われていないので、本発明の第3の態様の電子基板に該当しない。
以上から、比較例1の電子基板は、マイグレーション防止及び接続部材における破損の抑制に劣ると考えられる。
【符号の説明】
【0166】
100、200、300、400、1101 電子基板
110、210、310、410、1102 配線基板
111〜116、211〜216、311〜316、411〜416 配線端子
120、220、320、420、1103 リードレス電子部品
121〜126、221〜226、321〜326、421〜426 電極端子
131〜136、231〜236、331〜336、431〜436 接続部材
140、240、340、440 第2の面
151〜156、251〜256、 防湿層B1
160、260、360、460 第1の面
171〜176、271〜276 防湿層A1
241、243、254 防湿層B2
261、263、264 防湿層A2
351、451 防湿層B3
371、471 防湿層A3
481〜486 防湿層C1
1160 部品実装面
1114〜1119 半田ボール
1140 端子形成面
1106 防湿コート剤
図1
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