特開2021-34663(P2021-34663A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工光半導体株式会社の特許一覧

特開2021-34663化合物半導体発光素子、化合物半導体発光素子の電極構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-34663(P2021-34663A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】化合物半導体発光素子、化合物半導体発光素子の電極構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20210201BHJP
   H01L 33/40 20100101ALI20210201BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
   H01L33/38
   H01L33/40
   H01L21/28 301R
   H01L21/28 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2019-156084(P2019-156084)
(22)【出願日】2019年8月28日
(71)【出願人】
【識別番号】520486443
【氏名又は名称】昭和電工光半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】平岩 大介
(72)【発明者】
【氏名】松村 篤
【テーマコード(参考)】
4M104
5F241
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104BB36
4M104CC01
4M104DD24
4M104EE02
4M104EE14
4M104EE17
4M104FF02
4M104FF13
4M104GG04
4M104HH08
5F241AA04
5F241AA05
5F241AA25
5F241CA05
5F241CA39
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA85
5F241CA88
5F241CA93
5F241CB36
(57)【要約】
【課題】発光層から出力される光の取り出し効率を向上させるとともに、発光層を含む化合物半導体層からの電極の剥離を抑制する。
【解決手段】半導体発光素子において、発光層を含む発光素子層のn型コンタクト層11に積層される負電極部は、導電体で構成されるとともにn型コンタクト層11に接触して発光素子層に電流を供給する電流供給層31と、絶縁体で形成される絶縁層322を含み且つn型コンタクト層11と電流供給層31との間に介在して電流を阻害する電流阻害層32とを備えている。また、電流阻害層32は、n型コンタクト層11と絶縁層322との間に介在して、両者の密着性を非介在時よりも高める第1密着層321と、絶縁層322と電流供給層31との間に介在して、両者の密着性を非介在時よりも高める第2密着層323とをさらに備えている。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体で構成されるとともに、通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と、
導電性を有し且つ前記化合物半導体層と対向して配置され、外部から供給される電流を受電する受電電極と、
導電性を有し且つ前記受電電極と前記化合物半導体層とに電気的に接続され、前記電流を当該化合物半導体層に給電する給電電極と、
絶縁性を有し且つ前記化合物半導体層と前記受電電極との間に配置される絶縁層と、
前記化合物半導体層と前記絶縁層との間で当該化合物半導体層と当該絶縁層とに接触して配置され、当該化合物半導体層と当該絶縁層とを密着させる第1密着層と、
前記受電電極と前記絶縁層との間で当該受電電極と当該絶縁層とに接触して配置され、当該受電電極と当該絶縁層とを密着させる第2密着層と
を含む化合物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1密着層および前記第2密着層は、前記絶縁層よりも絶縁性が低く、前記給電電極よりも導電性が低いことを特徴とする請求項1記載の化合物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1密着層および前記第2密着層が、同じ材料で構成されることを特徴とする請求項1または2記載の化合物半導体発光素子。
【請求項4】
前記受電電極および前記給電電極がともに金を含む金属で構成され、
前記絶縁層が酸化シリコンまたは窒化シリコンで構成され、
前記第1密着層および前記第2密着層がともに酸化インジウムスズで構成されること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の化合物半導体発光素子。
【請求項5】
化合物半導体で構成されるとともに、通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と、
金属で構成され、前記化合物半導体層と対向して配置される第1金属層と、
金属で構成され、前記第1金属層と前記化合物半導体層とに接触して配置される第2金属層と、
シリコンを含む絶縁体で構成され、前記化合物半導体層と前記第1金属層との間に配置されるシリコン含有層と、
インジウムを含む酸化物で構成され、前記化合物半導体層と前記シリコン含有層との間で当該化合物半導体層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第1インジウム酸化物層と、
インジウムを含む酸化物で構成され、前記第1金属層と前記シリコン含有層との間で当該第1金属層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第2インジウム酸化物層と
を含む化合物半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1インジウム酸化物層および前記第2インジウム酸化物層は、ともに、前記シリコン含有層よりも薄いことを特徴とする請求項5記載の化合物半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1金属層は、外部との電気的な接続に用いられる外部接続部と、当該外部接続部と前記第2金属層との接続に用いられる内部接続部とを有することを特徴とする請求項5または6記載の化合物半導体発光素子。
【請求項8】
導電性を有し、化合物半導体で構成されるとともに通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と対向して配置され、外部から供給される電流を受電する受電電極と、
導電性を有し且つ前記受電電極と前記化合物半導体層とに電気的に接続され、前記電流を当該化合物半導体層に給電する給電電極と、
絶縁性を有し且つ前記化合物半導体層と前記受電電極との間に配置される絶縁層と、
前記化合物半導体層と前記絶縁層との間で当該化合物半導体層と当該絶縁層とに接触して配置され、当該化合物半導体層と当該絶縁層とを密着させる第1密着層と、
前記受電電極と前記絶縁層との間で当該受電電極と当該絶縁層とに接触して配置され、当該受電電極と当該絶縁層とを密着させる第2密着層と
を含む化合物半導体発光素子の電極構造。
【請求項9】
金属で構成され、化合物半導体で構成されるとともに通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と対向して配置される第1金属層と、
金属で構成され、前記第1金属層と前記化合物半導体層とに接触して配置される第2金属層と、
シリコンを含む絶縁体で構成され、前記化合物半導体層と前記第1金属層との間に配置されるシリコン含有層と、
インジウムを含む酸化物で構成され、前記化合物半導体層と前記シリコン含有層との間で当該化合物半導体層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第1インジウム酸化物層と、
インジウムを含む酸化物で構成され、前記第1金属層と前記シリコン含有層との間で当該第1金属層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第2インジウム酸化物層と
を含む化合物半導体発光素子の電極構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体発光素子、化合物半導体発光素子の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光層を含む化合物半導体層(各種GaN層)と、化合物半導体層に電流を供給するための電極(ボンディングパッド用P側電極)とを備え、化合物半導体層における光の取り出し面に、この電極を設けてなる半導体発光素子において、外部から電極に供給されてくる電流を化合物半導体層に対し面方向に分散させるために、化合物半導体層と電極との間に、SiO膜等の絶縁層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−173224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体発光素子を含む化合物半導体素子は、電極に対しボンディング等によって給電体(例えばワイヤ)を接続した状態で、様々な環境下で使用される。そして、使用中に、何らかの理由により、化合物半導体発光素子から電極が剥がれると、化合物半導体素子に給電が行われなくなってしまい、化合物半導体素子が発光できなくなってしまう。そして、化合物半導体層と電極との間に、シリコンを含む絶縁膜を設ける構成を採用した場合に、特に化合物半導体発光素子から電極が剥がれやすくなる、ということが見出された。
本発明は、発光層から出力される光の取り出し効率を向上させるとともに、発光層を含む化合物半導体層からの電極の剥離を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の化合物半導体発光素子は、化合物半導体で構成されるとともに、通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と、導電性を有し且つ前記化合物半導体層と対向して配置され、外部から供給される電流を受電する受電電極と、導電性を有し且つ前記受電電極と前記化合物半導体層とに電気的に接続され、前記電流を当該化合物半導体層に給電する給電電極と、絶縁性を有し且つ前記化合物半導体層と前記受電電極との間に配置される絶縁層と、前記化合物半導体層と前記絶縁層との間で当該化合物半導体層と当該絶縁層とに接触して配置され、当該化合物半導体層と当該絶縁層とを密着させる第1密着層と、前記受電電極と前記絶縁層との間で当該受電電極と当該絶縁層とに接触して配置され、当該受電電極と当該絶縁層とを密着させる第2密着層とを含む。
このような化合物半導体発光素子において、前記第1密着層および前記第2密着層は、前記絶縁層よりも絶縁性が低く、前記給電電極よりも導電性が低いことを特徴とすることができる。
また、前記第1密着層および前記第2密着層が、同じ材料で構成されることを特徴とすることができる。
また、前記受電電極および前記給電電極がともに金を含む金属で構成され、前記絶縁層が酸化シリコンまたは窒化シリコンで構成され、前記第1密着層および前記第2密着層がともに酸化インジウムスズで構成されることを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明の化合物半導体発光素子は、化合物半導体で構成されるとともに、通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と、金属で構成され、前記化合物半導体層と対向して配置される第1金属層と、金属で構成され、前記第1金属層と前記化合物半導体層とに接触して配置される第2金属層と、シリコンを含む絶縁体で構成され、前記化合物半導体層と前記第1金属層との間に配置されるシリコン含有層と、インジウムを含む酸化物で構成され、前記化合物半導体層と前記シリコン含有層との間で当該化合物半導体層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第1インジウム酸化物層と、インジウムを含む酸化物で構成され、前記第1金属層と前記シリコン含有層との間で当該第1金属層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第2インジウム酸化物層とを含む。
このような化合物半導体発光素子において、前記第1インジウム酸化物層および前記第2インジウム酸化物層は、ともに、前記シリコン含有層よりも薄いことを特徴とすることができる。
また、前記第1金属層は、外部との電気的な接続に用いられる外部接続部と、当該外部接続部と前記第2金属層との接続に用いられる内部接続部とを有することを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明の化合物半導体発光素子の電極構造は、導電性を有し、化合物半導体で構成されるとともに通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と対向して配置され、外部から供給される電流を受電する受電電極と、導電性を有し且つ前記受電電極と前記化合物半導体層とに電気的に接続され、前記電流を当該化合物半導体層に給電する給電電極と、絶縁性を有し且つ前記化合物半導体層と前記受電電極との間に配置される絶縁層と、前記化合物半導体層と前記絶縁層との間で当該化合物半導体層と当該絶縁層とに接触して配置され、当該化合物半導体層と当該絶縁層とを密着させる第1密着層と、前記受電電極と前記絶縁層との間で当該受電電極と当該絶縁層とに接触して配置され、当該受電電極と当該絶縁層とを密着させる第2密着層とを含む。
また、他の観点から捉えると、本発明の化合物半導体発光素子の電極構造は、金属で構成され、化合物半導体で構成されるとともに通電により発光する発光層を含む化合物半導体層と対向して配置される第1金属層と、金属で構成され、前記第1金属層と前記化合物半導体層とに接触して配置される第2金属層と、シリコンを含む絶縁体で構成され、前記化合物半導体層と前記第1金属層との間に配置されるシリコン含有層と、インジウムを含む酸化物で構成され、前記化合物半導体層と前記シリコン含有層との間で当該化合物半導体層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第1インジウム酸化物層と、インジウムを含む酸化物で構成され、前記第1金属層と前記シリコン含有層との間で当該第1金属層と当該シリコン含有層とに接触して配置される第2インジウム酸化物層とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発光層から出力される光の取り出し効率を向上させるとともに、発光層を含む化合物半導体層からの電極の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される半導体層形成基板の断面構成を示す図である。
図2】半導体層形成基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3】発光素子層を含む半導体発光素子の断面構成を示す図である。
図4】半導体発光素子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5】半導体発光素子における負電極部の構成例を示す斜視図である。
図6】半導体発光素子における負電極部の構成例を示す上面図である。
図7図6のVII−VII断面図である。
図8図6のVIII−VIII断面図である。
図9図6のIX−IX断面図である。
図10図6のX−X断面図である。
図11図6のXI−XI断面図である。
図12図6のXII−XII断面図である。
図13図6のXIII−XIII断面図である。
図14図6のXIV−XIV断面図である。
図15図6のXV−XV断面図である。
図16図6のXVI−XVI断面図である。
図17図6のXVII−XVII断面図である。
図18図12のXVIII部の拡大図(電流阻害層の拡大断面図)である。
図19】負電極部の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図20】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(初期状態:第1導体層形成工程の前)を説明するための図である。
図21】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(第1導体層形成工程の後:電流阻害層形成工程の前)を説明するための図である。
図22】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(電流阻害層形成工程の後:第2導体層形成工程の前)を説明するための図である。
図23】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(第2導体層形成工程の後:分離溝形成工程の前)を説明するための図である。
図24】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(分離溝形成工程の後:粗面化工程の前)を説明するための図である。
図25】(a)、(b)は、分離溝形成工程の前後の状態を説明するための図である。
図26】(a)〜(e)は、負電極部の製造手順(最終状態:粗面化工程の後)を説明するための図である。
図27】(a)、(b)は、比較例2の半導体発光素子における、ボールシェアテスト後の負電極部の状態を示す光学顕微鏡写真である。
図28】各実施例および各比較例にかかる半導体発光素子の取出光量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で参照する図面における各部の大きさや厚さ等は、実際の寸法とは異なっている場合がある。また、以下では、3元素以上で構成されるIII−V族半導体に関し、各元素の組成比を省略した形(例えば「AlGaInAsP」など)で記述する場合がある。
【0009】
<半導体層形成基板の構成>
図1は、本実施の形態が適用される半導体層形成基板1の断面構成を示す図である。
この半導体層形成基板1は、後述する半導体発光素子2(図3参照)の製造において、半導体発光素子2(より具体的には発光素子層10)の原材料となるものである。
【0010】
この半導体層形成基板1は、成長基板1aと、成長基板1a上に複数の半導体層を積層してなり、通電により発光する発光素子層10とを備えている。なお、詳細は後述するが、この発光素子層10は、それぞれがpn接合を有する複数の発光層(発光ダイオード)を積み重ねてなり、これら発光層間には、トンネル効果により逆方向(n型層からp型層)に電流を流すトンネル接合層(トンネルダイオード)を設けてなる、所謂ダブルスタック型の発光ダイオードとして機能する。
【0011】
[成長基板]
本実施の形態において、成長基板1aは、化合物半導体(III−V族半導体)の単結晶で構成される。この種の成長基板1aとしては、GaAsやInP等を例示することができる。
【0012】
[発光素子層]
発光素子層10は、成長基板1aに積層されるn型コンタクト層11と、n型コンタクト層11に積層される第1発光層12と、第1発光層12に積層されるトンネル接合層13と、トンネル接合層13に積層される第2発光層14と、第2発光層14に積層されるp型コンタクト層15とを有している。以下では、発光素子層10の構成要素について、順番に説明を行う。
【0013】
(n型コンタクト層)
電子をキャリアとするn型コンタクト層11は、図示しないn電極(負電極部30:後述する図3参照)を設けるための層である。本実施の形態のn型コンタクト層11は、成長基板1aの表面(成長面)と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0014】
そして、n型コンタクト層11には、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を5×1017〜2×1019cm−3の濃度で含有すると、抵抗の上昇を抑制できるとともに結晶性の劣化を招きにくいという点で好ましい。ここで、n型不純物としては、特に限定されないが、例えばTe、SiあるいはSe等が挙げられる。
【0015】
(第1発光層)
第1発光層12は、所謂ダブルヘテロ接合および量子井戸構造を有し、通電により発光する層である。
【0016】
本実施の形態の第1発光層12は、n型コンタクト層11に積層される第1n型クラッド層121と、第1n型クラッド層121に積層される第1活性層122と、第1活性層122に積層される第1p型クラッド層123とを有している。また、第1活性層122は、複数の第1井戸層1221と複数の第1障壁層1222とを、交互に積層した構造を有している。
【0017】
〔第1n型クラッド層〕
第1n型クラッド層121は、第1p型クラッド層123とともに、第1活性層122へのキャリア(正孔および電子)の注入および閉じ込めを行う層である。本実施の形態の第1n型クラッド層121は、n型コンタクト層11と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0018】
ここで、第1n型クラッド層121は、n型コンタクト層11よりも、バンドギャップが大きいことが好ましい。
【0019】
そして、第1n型クラッド層121には、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を5×1017〜1×1019cm−3の濃度で含有すると、量子井戸構造を有する第1活性層122へのキャリア注入効果を得やすくなるとともに、第1n型クラッド層121内でのキャリアによる光吸収を減らせるという点で好ましい。このとき、第1n型クラッド層121は、n型コンタクト層11と同じn型不純物を含んでいることが好ましい。
【0020】
〔第1活性層〕
第1活性層122は、電子および正孔の再結合により発光する層である。また、本実施の形態の第1活性層122は、第1井戸層1221と第1障壁層1222とを交互に重ね合わせた、所謂多重量子井戸構造(MQW)を有する層となっている。なお、第1活性層122(第1井戸層1221および第1障壁層1222)は、基本的に、n型不純物およびp型不純物を含まない。ただし、製造時に、第1n型クラッド層121からn型不純物が拡散してきたり、第1p型クラッド層123からp型不純物が拡散してきたりすることがあり得る。
【0021】
{第1井戸層}
第1井戸層1221は、隣接する2つの第1障壁層1222によって挟み込まれる層である。ただし、この例において、図中最も下側(第1n型クラッド層121側)に位置する第1井戸層1221は、第1n型クラッド層121と第1障壁層1222とによって挟み込まれる。また、この例において、図中最も上側(第1p型クラッド層123側)に位置する第1井戸層1221は、第1p型クラッド層123と第1障壁層1222とによって挟み込まれる。したがって、この例において、第1井戸層1221の層数は、第1障壁層1222の層数よりも1層だけ多い。本実施の形態の第1井戸層1221は、第1n型クラッド層121および第1p型クラッド層123と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、第1井戸層1221には、(AlGa1−xIn1−yAs1−z(0≦x≦0.2,0.7≦y≦1.0,0.7≦z≦1.0)を用いることが好ましい。また、第1井戸層1221には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0022】
ここで、第1井戸層1221は、第1n型クラッド層121および第1p型クラッド層123よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、第1井戸層1221は、第1n型クラッド層121および第1p型クラッド層123よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。
【0023】
{第1障壁層}
第1障壁層1222は、他の第1障壁層1222とともに第1井戸層1221を挟み込む層である。本実施の形態の第1障壁層1222は、第1井戸層1221と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、第1障壁層1222には、AlGa1−xAs1−z(0≦x≦0.3,0.7≦z≦1.0)を用いることが好ましい。また、第1障壁層1222には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0024】
ここで、第1障壁層1222は、第1n型クラッド層121および第1p型クラッド層123よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、第1障壁層1222は、第1井戸層1221よりも、膜厚が大きいことが好ましい。さらに、第1障壁層1222は、第1n型クラッド層121および第1p型クラッド層123よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。さらにまた、第1障壁層1222は、第1井戸層1221よりも、バンドギャップが大きいことが好ましい。
【0025】
〔第1p型クラッド層〕
第1p型クラッド層123は、第1n型クラッド層121とともに、第1活性層122へのキャリアの注入および閉じ込めを行う層である。本実施の形態の第1p型クラッド層123は、第1井戸層1221と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0026】
ここで、第1p型クラッド層123は、第1n型クラッド層121と、膜厚を同じにすることが好ましい。また、第1p型クラッド層123は、第1n型クラッド層121と、バンドギャップを同じにすることが好ましい。
【0027】
そして、第1p型クラッド層123には、p型不純物がドープされていることが好ましく、p型不純物を1×1017〜5×1018cm−3の濃度で含有すると、量子井戸構造を有する第1活性層122へのキャリア注入効果を得やすくなるとともに、第1p型クラッド層123内でのキャリアによる光吸収を減らせるという点で好ましい。ここで、p型不純物としては、特に限定されないが、例えばC、MgあるいはZn等が挙げられる。このとき、第1p型クラッド層123のp型不純物の濃度は、第1n型クラッド層121のn型不純物の濃度よりも低くすることが好ましい。また、第1p型クラッド層123は、第1n型クラッド層121と、含まれる不純物を除いて同組成とすることが好ましい。
【0028】
(トンネル接合層)
トンネル接合層13は、第1発光層12と第2発光層14とを接続する層である。また、トンネル接合層13は、自身を介して直列に接続された第1発光層12および第2発光層14に、自身のトンネル接合を利用して、第2発光層14側から第1発光層12側に向かう順方向電流を流すための層である。
【0029】
トンネル接合層13は、第1発光層12の第1p型クラッド層123に積層されるp型トンネル層131と、第2発光層14の第2n型クラッド層141(詳細は後述する)の積層対象となるn型トンネル層133とを有している。また、トンネル接合層13は、p型トンネル層131とn型トンネル層133との間に設けられた、高濃度n型不純物含有層132をさらに有している。したがって、本実施の形態のトンネル接合層13は、第1p型クラッド層123に積層されるp型トンネル層131と、p型トンネル層131に積層される高濃度n型不純物含有層132と、高濃度n型不純物含有層132に積層されるn型トンネル層133とを有していることになる。
【0030】
〔p型トンネル層〕
p型トンネル層131は、n型トンネル層133および高濃度n型不純物含有層132とともに、トンネル接合を形成する層である。本実施の形態のp型トンネル層131は、第1p型クラッド層123と格子整合する、少なくともGa(III族元素)およびAs(V族元素)を含む化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、p型トンネル層131には、AlGa1−xAs(0≦x≦0.3)を用いることが好ましい。また、p型トンネル層131には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0031】
ここで、p型トンネル層131は、第1発光層12の第1p型クラッド層123よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、p型トンネル層131は、第1発光層12の第1p型クラッド層123よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。
【0032】
そして、p型トンネル層131には、p型不純物がドープされている。ここで、p型トンネル層131は、第1発光層12の第1p型クラッド層123と同じp型不純物を含んでいることが好ましい。また、p型トンネル層131のp型不純物の濃度は、第1発光層12の第1p型クラッド層123のp型不純物の濃度よりも高いことが好ましい。
【0033】
〔n型トンネル層〕
n型トンネル層133は、p型トンネル層131および高濃度n型不純物含有層132とともにトンネル接合を形成する層である。本実施の形態のn型トンネル層133は、p型トンネル層131と格子整合する、少なくともGa、In(III族元素)およびP(V族元素)を含む化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、n型トンネル層133には、(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦0.2, 0.4≦y≦0.6)を用いることが好ましい。また、n型トンネル層133には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0034】
ここで、n型トンネル層133は、p型トンネル層131よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、n型トンネル層133は、p型トンネル層131よりも、バンドギャップが大きいことが好ましい。
【0035】
そして、n型トンネル層133には、n型不純物がドープされている。ここで、n型トンネル層133は、第1発光層12の第1n型クラッド層121と同じn型不純物を含んでいることが好ましい。また、n型トンネル層133のn型不純物の濃度は、第2発光層14の第2n型クラッド層141(詳細は後述する)のn型不純物の濃度よりも高いことが好ましい。さらに、n型トンネル層133のn型不純物の濃度は、p型トンネル層131のp型不純物の濃度よりも低いことが好ましい。
【0036】
〔高濃度n型不純物含有層〕
高濃度n型不純物含有層132は、p型トンネル層131とn型トンネル層133との間に介在して、トンネル接合層13の電気的な抵抗を低下させるための層である。本実施の形態の高濃度n型不純物含有層132は、p型トンネル層131およびn型トンネル層133のぞれぞれと格子整合する、III−V族半導体で構成される。そして、高濃度n型不純物含有層132には、III族元素としてGaおよびInが、V族元素としてAsおよびPが、それぞれ含まれ得る。また、高濃度n型不純物含有層132には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0037】
ここで、高濃度n型不純物含有層132は、p型トンネル層131よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、高濃度n型不純物含有層132は、n型トンネル層133よりも、膜厚が小さいことが好ましい。
【0038】
そして、高濃度n型不純物含有層132には、n型不純物がドープされている。ここで、高濃度n型不純物含有層132は、n型トンネル層133と同じn型不純物を含んでいることが好ましい。また、高濃度n型不純物含有層132のn型不純物の濃度は、n型トンネル層133のn型不純物の濃度よりも高い。さらに、高濃度n型不純物含有層132のn型不純物の濃度は、p型トンネル層131のp型不純物の濃度よりも高い。そして、順方向電圧の低減を図るという観点からすれば、高濃度n型不純物含有層132のn型不純物の濃度は、1×1020cm−3以上1×1021cm−3以下であることが好ましい。
【0039】
なお、ここでは、p型トンネル層131とn型トンネル層133との間に、高濃度n型不純物含有層132が存在する場合を例として説明を行ったが、これに限られない。例えばn型トンネル層133自身が、高濃度(例えば1×1020cm−3以上1×1021cm−3以下)のn型不純物を含むものとなっていてもよい。
【0040】
(第2発光層)
第2発光層14は、所謂ダブルヘテロ接合および量子井戸構造を有し、通電により発光する層である。本実施の形態において、第2発光層14は、第1発光層12と同一波長で発光する。なお、本実施の形態における同一波長は、例えば第2発光層14の発光波長におけるピーク波長が、第1発光層12の発光波長におけるピーク波長に対し、±10nm(より好ましくは±5nm)の範囲内にあることをいう。したがって、第1発光層12および第2発光層14のそれぞれの発光波長のピーク波長が、完全に一致している必要はない。
【0041】
また、第1発光層12および第2発光層14の発光波長については、特に制限されるものではないが、赤色領域から近赤外領域の範囲であることが好ましく、近赤外領域の範囲であることがより好ましい。
【0042】
ここで、第2発光層14は、第1発光層12と異なる構造(材料、組成、厚さ、不純物濃度等)を採用してもかまわないが、より容易に、第2発光層14の発光波長を第1発光層12の発光波長に近づけるという観点からすれば、第2発光層14の構造を、第1発光層12の構造と共通化することが好ましい。以下では、第2発光層14の構造を、第1発光層12の構造と共通化した場合を例として説明を行う。
【0043】
本実施の形態の第2発光層14は、n型トンネル層133に積層される第2n型クラッド層141と、第2n型クラッド層141に積層される第2活性層142と、第2活性層142に積層される第2p型クラッド層143とを有している。また、第2活性層142は、複数の第2井戸層1421と複数の第2障壁層1422とを、交互に積層した構造を有している。
【0044】
〔第2n型クラッド層〕
第2n型クラッド層141は、第2p型クラッド層143とともに、第2活性層142へのキャリア(正孔および電子)の注入および閉じ込めを行う層である。本実施の形態の第2n型クラッド層141は、トンネル接合層13のn型トンネル層133と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0045】
ここで、第2n型クラッド層141は、トンネル接合層13のn型トンネル層133よりも、膜厚が大きいことが好ましい。また、第2n型クラッド層141は、トンネル接合層13のn型トンネル層133よりも、バンドギャップが大きいことが好ましい。
【0046】
そして、第2n型クラッド層141には、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を5×1017〜1×1019cm−3の濃度で含有すると、量子井戸構造を有する第2活性層142へのキャリア注入効果を得やすくなるとともに、第2n型クラッド層141内でのキャリアによる光吸収を減らせるという点で好ましい。このとき、第2n型クラッド層141は、トンネル接合層13のn型トンネル層133と同じn型不純物を含んでいることが好ましい。また、第2n型クラッド層141のn型不純物の濃度は、トンネル接合層13のn型トンネル層133のn型不純物の濃度よりも低いことが好ましい。さらに、第2n型クラッド層141は、第1n型クラッド層121と、同組成とすることが好ましい。さらにまた、第2n型クラッド層141は、第1p型クラッド層123と、含まれる不純物を除いて同組成とすることが好ましい。
【0047】
〔第2活性層〕
第2活性層142は、電子および正孔の再結合により発光する層である。また、本実施の形態の第2活性層142は、第2井戸層1421と第2障壁層1422とを交互に重ね合わせた、所謂多重量子井戸構造(MQW)を有する層となっている。なお、第2活性層142(第2井戸層1421および第2障壁層1422)も、基本的に、n型不純物およびp型不純物を含まない。ただし、製造時に、第2n型クラッド層141からn型不純物が拡散してきたり、第2p型クラッド層143からp型不純物が拡散してきたりすることがあり得る。
【0048】
{第2井戸層}
第2井戸層1421は、隣接する2つの第2障壁層1422によって挟み込まれる層である。ただし、この例において、図中最も下側(第2n型クラッド層141側)に位置する第2井戸層1421は、第2n型クラッド層141と第2障壁層1422とによって挟み込まれる。また、この例において、図中最も上側(第2p型クラッド層143側)に位置する第2井戸層1421は、第2p型クラッド層143と第2障壁層1422とによって挟み込まれる。したがって、この例において、第2井戸層1421の層数は、第2障壁層1422の層数よりも1層だけ多い。本実施の形態の第2井戸層1421は、第2n型クラッド層141および第2p型クラッド層143と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、第2井戸層1421には、(AlGa1−xIn1−yAs1−z(0≦x≦0.2,0.7≦y≦1.0,0.7≦z≦1.0)を用いることが好ましい。また、第2井戸層1421には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0049】
ここで、第2井戸層1421は、第2n型クラッド層141および第2p型クラッド層143よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、第2井戸層1421は、第2n型クラッド層141および第2p型クラッド層143よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。そして、第2井戸層1421は、第1井戸層1221と共通の構成とすることが好ましい。
【0050】
{第2障壁層}
第2障壁層1422は、他の第2障壁層1422とともに第2井戸層1421を挟み込む層である。本実施の形態の第2障壁層1422は、第2井戸層1421と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。そして、第2障壁層1422には、AlGa1−xAs1−z(0≦x≦0.3,0.7≦z≦1.0)を用いることが好ましい。また、第2障壁層1422には、直接遷移型の化合物半導体(III−V族半導体)を用いることが好ましい。
【0051】
ここで、第2障壁層1422は、第2n型クラッド層141および第2p型クラッド層143よりも、膜厚が小さいことが好ましい。また、第2障壁層1422は、第2井戸層1421よりも、膜厚が大きいことが好ましい。さらに、第2障壁層1422は、第2n型クラッド層141および第2p型クラッド層143よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。さらにまた、第2障壁層1422は、第2井戸層1421よりも、バンドギャップが大きいことが好ましい。そして、第2障壁層1422は、第1障壁層1222と共通の構成とすることが好ましい。
【0052】
〔第2p型クラッド層〕
第2p型クラッド層143は、第2n型クラッド層141とともに、第2活性層142へのキャリアの注入および閉じ込めを行う層である。本実施の形態の第2p型クラッド層143は、第2井戸層1421と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0053】
ここで、第2p型クラッド層143は、第2n型クラッド層141と、膜厚を同じにすることが好ましい。また、第2p型クラッド層143は、第2n型クラッド層141と、バンドギャップを同じにすることが好ましい。
【0054】
そして、第2p型クラッド層143には、p型不純物がドープされていることが好ましく、p型不純物を1×1017〜5×1018cm−3の濃度で含有すると、量子井戸構造を有する第2活性層142へのキャリア注入効果を得やすくなるとともに、第2p型クラッド層143内でのキャリアによる光吸収を減らせるという点で好ましい。このとき、第2p型クラッド層143は、第1p型クラッド層123と同じp型不純物を含んでいることが好ましい。また、第2p型クラッド層143のp型不純物の濃度は、第2n型クラッド層141のn型不純物の濃度よりも低くすることが好ましい。また、第2p型クラッド層143は、第2n型クラッド層141と、含まれる不純物を除いて同組成とすることが好ましい。
【0055】
(p型コンタクト層)
正孔をキャリアとするp型コンタクト層15は、図示しないp電極(正電極部20:後述する図5参照)を設けるための層である。本実施の形態のp型コンタクト層15は、第2p型クラッド層143と格子整合する化合物半導体(III−V族半導体)で構成される。
【0056】
ここで、p型コンタクト層15は、第2p型クラッド層143よりも、膜厚が大きいことが好ましい。また、p型コンタクト層15は、第2p型クラッド層143よりも、バンドギャップが小さいことが好ましい。
【0057】
そして、p型コンタクト層15には、p型不純物がドープされていることが好ましく、p型不純物を5×1017〜2×1019cm−3の濃度で含有すると、抵抗の上昇を抑制できるとともに結晶性の劣化を招きにくいという点で好ましい。また、p型コンタクト層15は、第2p型クラッド層143と同じp型不純物を含んでいることが好ましい。さらに、p型コンタクト層15のp型不純物の濃度は、第2p型クラッド層143のp型不純物の濃度よりも、高くすることが好ましい。
【0058】
<半導体層形成基板の製造方法>
図2は、図1に示す半導体層形成基板1の製造方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施の形態の半導体層形成基板1は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて、成長基板1a上に発光素子層10を形成することで得られる。ただし、これに限られるものではなく、例えばMBE(Molecular Beam Epitaxy)法を用いてもかまわない。
【0059】
[n型コンタクト層形成工程]
まず、成長基板1aが設置されたチャンバ内に、キャリアガスと、n型コンタクト層11を構成する各元素(III族元素、V族元素、n型不純物を構成する元素)の原料ガスとを供給する(ステップ10)。ステップ10では、成長基板1a上に、n型コンタクト層11が積層される。
【0060】
[第1n型クラッド層形成工程]
次に、n型コンタクト層11を積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第1n型クラッド層121を構成する各元素(III族元素、V族元素、n型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ20)。ステップ20では、n型コンタクト層11上に、第1n型クラッド層121が積層される。
【0061】
[第1活性層形成工程]
続いて、第1n型クラッド層121までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第1井戸層1221を構成する各元素(III族元素、V族元素)の原料ガスと、第1障壁層1222を構成する各元素(III族元素、V族元素)の原料ガスとを、交互に供給する(ステップ30)。ステップ30では、第1n型クラッド層121上に、第1井戸層1221と第1障壁層1222とを交互に積層してなる、第1活性層122が形成される。
【0062】
[第1p型クラッド層形成工程]
それから、第1活性層122までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第1p型クラッド層123を構成する各元素(III族元素、V族元素、p型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ40)。ステップ40では、第1活性層122上に、第1p型クラッド層123が積層される。
以上により、n型コンタクト層11上に、第1発光層12が形成される。
【0063】
[p型トンネル層形成工程]
次に、第1p型クラッド層123までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、p型トンネル層131を構成する各元素(III族元素、V族元素、p型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ50)。ステップ50では、第1p型クラッド層123上に、p型トンネル層131が積層される。
【0064】
[n型トンネル層形成工程]
続いて、p型トンネル層131までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、n型トンネル層133を構成する各元素(III族元素、V族元素、n型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ60)。ステップ60では、p型トンネル層131上に、n型トンネル層133が積層される。
【0065】
ここで、本実施の形態では、ステップ50からステップ60への移行段階において、チャンバ内に供給する原料ガス等に工夫を施している。これにより、p型トンネル層131とn型トンネル層133との間に、n型不純物の濃度がn型トンネル層133よりも高い高濃度n型不純物含有層132を形成している。
以上により、第1発光層12上に、トンネル接合層13が形成される。
【0066】
[第2n型クラッド層形成工程]
次に、n型トンネル層133までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第2n型クラッド層141を構成する各元素(III族元素、V族元素、n型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ70)。ステップ70では、n型トンネル層133上に、第2n型クラッド層141が積層される。
【0067】
[第2活性層形成工程]
続いて、第2n型クラッド層141までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第2井戸層1421を構成する各元素(III族元素、V族元素)の原料ガスと、第2障壁層1422を構成する各元素(III族元素、V族元素)の原料ガスとを、交互に供給する(ステップ80)。ステップ80では、第2n型クラッド層141上に、第2井戸層1421と第2障壁層1422とを交互に積層してなる、第2活性層142が形成される。
【0068】
[第2p型クラッド層形成工程]
それから、第2活性層142までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、第2p型クラッド層143を構成する各元素(III族元素、V族元素、p型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ90)。ステップ90では、第2活性層142上に、第2p型クラッド層143が積層される。
以上により、トンネル接合層13上に、第2発光層14が形成される。
【0069】
[p型コンタクト層形成工程]
そして、第2p型クラッド層143までを積層した成長基板1aが設置されたチャンバ内に、引き続きキャリアガスを供給するとともに、p型コンタクト層15を構成する各元素(III族元素、V族元素、p型不純物を構成する元素)の原料ガスを供給する(ステップ100)。ステップ100では、第2p型クラッド層143上に、p型コンタクト層15が積層される。
以上により、成長基板1aに、n型コンタクト層11と、第1発光層12と、トンネル接合層13と、第2発光層14と、p型コンタクト層15とを、この順に積層してなる半導体層形成基板1が得られる。
【0070】
<半導体発光素子の構成>
図3は、発光素子層10を含む半導体発光素子2の断面構成を示す図である。ここで、図3から明らかなように、半導体発光素子2は、発光素子層10を含む一方、発光素子層10とともに半導体層形成基板1を構成していた成長基板1aを含んでいない。
【0071】
この半導体発光素子2は、上述した発光素子層10と、発光素子層10のp型コンタクト層15に接続される正電極部20と、発光素子層10のn型コンタクト層11に接続される負電極部30とを備えている。ここで、正電極部20は、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14のp電極として機能する。一方、負電極部30は、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14のn電極として機能する。また、正電極部20は、さらに、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14から正電極部20側に出力される光を、負電極部30側に反射する反射膜としても機能する。ここで、正電極部20は、各半導体発光素子2の図中下側に、ほぼ全面にわたって形成される。これに対し、負電極部30は、各半導体発光素子2の図中上側に、一部領域に島状に形成される。ここで、図3に示す負電極部30については、他の部材(他の層)との相対的な位置関係を示したものに過ぎず、実際の構造は図3に示すものとは異なる。なお、負電極部30の具体的な構造については後述する。
【0072】
[正電極部]
正電極部20は、発光素子層10のp型コンタクト層15に積層されるp電極層21と、p電極層21に積層される反射層22と、反射層22に積層される拡散防止層23とを備えている。また、正電極部20は、拡散防止層23に積層される接合層24と、接合層24に積層される内部電極層25と、内部電極層25に積層される支持基板26と、支持基板26に積層されて外部に露出する外部電極層27とをさらに備えている。
【0073】
(p電極層)
p電極層21は、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14に対し、面方向に電流を拡散させて供給するために設けられる。そして、p電極層21は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が設けられた透光層211と、これら複数の貫通孔のそれぞれを充填するように設けられた複数の柱状電極層212とを有している。
【0074】
〔透光層〕
透光層211は、絶縁性を有しており、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14から出力される光を透過する光学的バンドギャップを有している。そして、透光層211には、SiO等を用いることができる。
【0075】
〔柱状電極層〕
柱状電極層212は、導電性を有しており、発光素子層10のp型コンタクト層15とオーミック接触する。そして、柱状電極層212には、AuBe等を用いることができる。
【0076】
(反射層)
反射層22は、導電性を有しており、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14から出力される光を反射する。そして、反射層22には、AgPdCu(APC)合金、Au、Cu、Ag、Al、Pt等の金属あるいはこれらの合金等を用いることができる。
【0077】
(拡散防止層)
拡散防止層23は、導電性を有しており、接合層24や支持基板26等に含まれる金属が、反射層22側に拡散して反射層22と反応するのを抑制するために設けられる。そして、拡散防止層23には、Ni、Ti、Pt、Cr、Ta、W、Mo等の金属を用いることができ、また、これらから選ばれた複数の金属層を積層した構成とすることもできる。
【0078】
(接合層)
接合層24は、導電性を有しており、発光素子層10に形成された拡散防止層23と、支持基板26に形成された内部電極層25とを接合するために設けられる。そして、接合層24には、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属等を用いることができる。なお、Au系の共晶金属としては、例えば、AuGe、AuSn、AuSi、AuIn等が挙げられる。
【0079】
(内部電極層)
内部電極層25は、導電性を有しており、接合層24と支持基板26とを電気的に接続するために設けられる。そして、内部電極層25には、各種金属材料を用いることができ、また、複数の金属層を積層した構成とすることもできる。
【0080】
(支持基板)
支持基板26は、導電性を有しており、半導体層形成基板1から成長基板1aを取り外すことで得られる発光素子層10(取り外しの詳細については後述する)を、物理的に支持するために設けられる。この例では、発光素子層10(第1発光層12および第2発光層14)と支持基板26との間に反射層22を設けているため、支持基板26として、第1発光層12および第2発光層14から出力される光を吸収する材料を用いることもできる。そして、支持基板26には、Geウエハ、Siウエハ、GaAsウエハ、GaPウエハ等を用いることができる。
【0081】
(外部電極層)
外部電極層27は、導電性を有しており、外部に設けられた配線(図示せず)と電気的に接続するために設けられる。そして、外部電極層27には、各種金属材料を用いることができ、また、複数の金属層を積層した構成とすることもできる。
【0082】
[負電極部]
負電極部30には、各種金属を用いることができ、また、複数の金属層を積層した構成とすることもできる。また、負電極部30には、必要に応じて、絶縁層を設けることもできる。なお、上述したように、負電極部30の具体的な構造については後述する。
【0083】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、図3に示す半導体発光素子2の製造方法を、具体例を挙げて説明する。
図4は、半導体発光素子2の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0084】
[正電極部形成工程]
まず、成長基板1aと発光素子層10とを有する半導体層形成基板1のp型コンタクト層15上に、正電極部20を形成する(ステップ110)。ここで、ステップ110の正電極部形成工程は、以下に説明する複数の工程(この例ではステップ111〜ステップ117)を含んでいる。
【0085】
(p電極層形成工程)
ステップ110の正電極部形成工程では、最初に、発光素子層10のp型コンタクト層15上にp電極層21を形成する(ステップ111)。ただし、ステップ111のp電極層形成工程では、先に透光層211を形成し(ステップ111a)、続いて柱状電極層212を形成する(ステップ111b)。
【0086】
〔透光層形成工程〕
ステップ111aの透光層形成工程では、p型コンタクト層15上にCVDによりSiOを全面にわたって積層した後、柱状電極層212の形成対象となる部位にエッチングによる孔あけ加工を施し、複数の貫通孔を形成する。これにより、SiOからなる透光層211が得られる。
【0087】
〔柱状電極層形成工程〕
ステップ111bの柱状電極層形成工程では、透光層211に形成された複数の貫通孔のそれぞれに、蒸着によりAuBeを充填し、複数の柱状電極層212を形成する。このとき、AuBeの厚さは透光層211の厚さと同じにする。以上により、透光層211と複数の柱状電極層212とを含むp電極層21が得られる。
【0088】
(反射層形成工程)
次に、p電極層21上に、蒸着によりAuを積層し、反射層22を形成する(ステップ112)。
【0089】
(拡散防止層形成工程)
続いて、反射層22上に、蒸着によりPtおよびTiをこの順に積層し、Pt層とTi層とを積層してなる拡散防止層23を形成する(ステップ113)。
【0090】
(接合層形成工程)
次いで、拡散防止層23上に、蒸着によりAuGeを積層し、接合層24を形成する(ステップ114)。この時点では、成長基板1aを含む半導体層形成基板1の発光素子層10におけるp型コンタクト層15には、p電極層21、反射層22、拡散防止層23および接合層24が積層された状態となっている。以下では、半導体層形成基板1にp電極層21〜接合層24を積層したものを、『第1積層体』と称する。
【0091】
(内部電極層形成工程)
また、上記第1積層体とは別に、Geウエハからなる支持基板26を用意する。そして、この支持基板26の一方の面(表面)に、蒸着によりPtおよびAuをこの順に積層し、Pt層とAu層とを積層してなる内部電極層25を形成する(ステップ115)。
【0092】
(外部電極層形成工程)
次に、上記支持基板26の他方の面(裏面)に、蒸着によりPtおよびAuをこの順に積層し、Pt層とAu層とを積層してなる外部電極層27を形成する(ステップ116)。この時点では、支持基板26の表面には内部電極層25が、その裏面には外部電極層27が、それぞれ積層された状態となっている。以下では、支持基板26に内部電極層25および外部電極層27を積層したものを、『第2積層体』と称する。
【0093】
(接合工程)
それから、上記第1積層体における接合層24と、上記第2積層体における内部電極層25とを対峙且つ接触させた状態で、加熱および加圧を行うことにより、第1積層体と第2積層体とを接合する(ステップ117)。このとき、加熱温度は400℃程度とし、加える圧力は2.5MPa程度とする。この時点では、成長基板1aおよび発光素子層10を含む半導体層形成基板1と、正電極部20とが積層された状態となっている。以下では、半導体層形成基板1と正電極部20とを積層したものを、『第3積層体』と称する。
以上により、ステップ110の正電極部形成工程が完了する。
【0094】
[成長基板除去工程]
続いて、上記第3積層体に対し、ウェットエッチングを行うことで、半導体層形成基板1における成長基板1aと発光素子層10とを分離し、第3積層体から成長基板1aを除去する(ステップ120)。この時点では、発光素子層10と正電極部20とが積層された状態となっており、発光素子層10のn型コンタクト層11が外部に露出している。以下では、発光素子層10と正電極部20とを積層したものを、『第4積層体』と称する。
【0095】
[負電極部形成工程]
次に、上記第4積層体における発光素子層10のn型コンタクト層11上に、複数の負電極部30を形成する(ステップ130)。この時点では、発光素子層10と正電極部20とを積層してなる第4積層体のうち、発光素子層10のn型コンタクト層11が形成されている面に、複数の負電極部30がマトリクス状に配置された状態となっている。以下では、発光素子層10に正電極部20および複数の負電極部30を積層したものを、『第5積層体』と称する。
【0096】
[分割工程]
最後に、上記第5積層体に対し、ウェットエッチングおよびレーザ照射を行うことで、第5積層体を複数の半導体発光素子2に分割する(ステップ140)。ステップ140の分割工程では、各半導体発光素子2のそれぞれに負電極部30が1つずつ含まれるように、個片化を行う。
以上により、それぞれが発光素子層10と正電極部20と負電極部30とを有する、半導体発光素子2が得られる。
【0097】
<負電極部の詳細>
では次に、本実施の形態の半導体発光素子2に設けられる負電極部30の構成について、より詳細な説明を行う。
図5は、半導体発光素子2における負電極部30の構成例を示す斜視図である。また、図6は、半導体発光素子2における負電極部30の構成例を示す上面図である。また、図7は、図6のVII−VII断面図である。また、図8は、図6のVIII−VIII断面図である。また、図9は、図6のIX−IX断面図である。また、図10は、図6のX−X断面図である。また、図11は、図6のXI−XI断面図である。また、図12は、図6のXII−XII断面図である。また、図13は、図6のXIII−XIII断面図である。また、図14は、図6のXIV−XIV断面図である。また、図15は、図6のXV−XV断面図である。また、図16は、図6のXVI−XVI断面図である。また、図17は、図6のXVII−XVII断面図である。そして、図18は、図12のXVIII部の拡大図である。
【0098】
なお、以下の説明では、例えば図5において、図中右上側に向かう方向を「X方向」、図中左上側に向かう方向を「Y方向」、図中上側に向かう方向を「Z方向」、とそれぞれ称する。ここで、X方向は半導体発光素子2の横方向(幅方向)に、Y方向は半導体発光素子2の縦方向(奥行方向)に、Z方向は半導体発光素子2の高さ方向に、それぞれ対応している。そして、上記図7図18のうち、図7図12図18はYZ断面となっており、図13図17はXZ断面となっている。
【0099】
この負電極部30は、導電性を有することで、発光素子層10のn型コンタクト層11に発光のための電流の供給を行う電流供給層31と、全体としてみたときに絶縁性を有することで、電流供給層31から発光素子層10に対する電流の供給を、一部の領域において阻害する電流阻害層32とを備えている。ここで、電流阻害層32は、発光素子層10のうち、外部に露出するn型コンタクト層11における一部の領域に接触して配置されている。換言すれば、電流阻害層32は、n型コンタクト層11のうちの一部の領域に積層されている。これに対し、電流供給層31は、発光素子層10のうち、外部に露出するn型コンタクト層11における一部の領域に接触し、且つ、n型コンタクト層11の上に配置された電流阻害層32が存在している領域に接触して配置されている。換言すれば、電流供給層31は、n型コンタクト層11の一部の領域と、n型コンタクト層11の上に積層された電流阻害層32の略全部の領域(略全域)とに跨がって配置されている。
【0100】
なお、本実施の形態の場合、負電極部30の形成対象となるn型コンタクト層11の表面には、図5図17に示したように、粗面化処理に伴う微細な凹凸が設けられている。ただし、後述するように、このような微細な凹凸は、n型コンタクト層11が外側に露出している領域に設けられるものであって、負電極部30が存在することでn型コンタクト層11が外側に露出していない領域には設けられていない。
以下、電流供給層31および電流阻害層32のそれぞれについて、説明を行う。
【0101】
[電流供給層]
電流供給層31は、図5および図6に示すように、例えば上方(Z方向下流側)からみたときに、八木・宇田アンテナ状(あるいは櫛形形状)を呈するようになっている。より具体的に説明すると、電流供給層31は、上方からみたときにそれぞれがX方向に沿って延びる12個の第1電極311と、上方からみたときにそれぞれがY方向に沿って延び且つY方向に沿って並べて配置される3個の第2電極312と、上方からみたときにそれぞれが円形状を呈し且つY方向に沿って並べて配置される2つの外部接続電極313とを備えている。また、本実施の形態の電流供給層31は、12個の第1電極311と、3個の第2電極312および2個の外部接続電極313とを互いに接続する12個の内部接続電極314をさらに備えている。
【0102】
なお、本実施の形態の場合、電流供給層31を構成する第1電極311、第2電極312、外部接続電極313および内部接続電極314のすべてが導電性を有しており、各々が「電流供給」を行う機能を備えている。そして、電流供給層31を構成する第1電極311、第2電極312、外部接続電極313および内部接続電極314は、互いに電気的に接続されることにより一体化している。
【0103】
(第1電極)
12個の第1電極311は、n型コンタクト層11の上面側に、X方向に沿って2個ずつ、Y方向に沿って6個ずつ並べて配置されている。なお、以下の説明では、これら12個の第1電極311のうち、例えば図6で図中左上に位置する第1電極311のことを、必要に応じて「1/1第1電極311」(「1行1列目の第1電極311」という意味)と称することがあり、例えば図6で図中右下に位置する第1電極311のことを、必要に応じて「6/2第1電極311」(「6行2列目の第1電極311」という意味)と称することがある。なお、これ以外についても、「A/B第1電極311」(「A行B列目の第1電極311」という意味:Aは1〜6、Bは1、2のいずれか)と称することがある。また、図6で図中左側に位置する6個の第1電極311のことを、まとめて「1列目の第1電極311」と称することがあり、図6で図中右側に位置する6個の第1電極311のことを、まとめて「2列目の第1電極311」と称することがある。さらに、図6で図中最上段に位置する2個の第1電極311のことを、まとめて「1行目の第1電極311」と称することがあり、図6で図中最下段に位置する2個の第1電極311のことを、「6行目の第1電極311」と称することがある。なお、これらの間に存在するものについては、それぞれ「2行目の第1電極311」〜「5行目の第1電極311」とそれぞれ称することがある。
【0104】
12個の第1電極311のうち、相対的にX方向上流側に位置する6個の第1電極311(1列目の第1電極311)は、Y方向に沿って並ぶ3個の第2電極312および2個の外部接続電極313よりも、X方向上流側に配置されている。これに対し、相対的にX方向下流側に位置する残りの6個の第1電極311(2列目の第1電極311)は、Y方向に沿って並ぶ3個の第2電極312および2個の外部接続電極313よりも、X方向下流側に配置されている。
【0105】
また、1行目の第1電極311、2行目の第1電極311〜6行目の第1電極311は、それぞれが互いに平行となるように配置されている。また、1行目の第1電極311〜6行目の第1電極311は、隣接する2行の第1電極311(例えば1行目の第1電極311と2行目の第1電極311)の間隔が等しくなる(等間隔となる)ように、各行の位置決めがなされている。
【0106】
また、12個の第1電極311のうち、1行1列目、1行2列目、3行1列目、3行2列目、4行1列目、4行2列目、6行1列目および6行2列目の第1電極311(合計8個)は、X方向の長さが同じ大きさに設定されている。これに対し、2行1列目、2行2列目、5行1列目および5行2列目の第1電極311(合計4個)は、X方向の長さが同じ大きさであって、上記1行1列目の第1電極311等よりも短い大きさに設定されている。そして、1列目の第1電極311(6個)は、X方向上流側の端部の位置が揃えられている。これに対し、2列目の第1電極311(6個)は、X方向下流側の端部の位置が揃えられている。その結果、2行目および5行目の第1電極311におけるX方向のギャップは、1行目、3行目、4行目および6行目の第1電極311におけるX方向のギャップよりも大きくなっている。
【0107】
12個の第1電極311は、それぞれのZX断面が略長方形状を呈する板状(直方体状)となっている。そして、12個の第1電極311のそれぞれにおいては、X方向の長さがY方向の長さよりも大きくなっており、Z方向の長さがX方向よりも小さく且つY方向よりも大きくなっている。
【0108】
また、12個の第1電極311では、それぞれにおけるZ方向上流側の面が、n型コンタクト層11と接触するようになっている。
【0109】
また、12個の第1電極311は、導電性を有する材料で構成されており、このような材料としては例えば金属または合金を挙げることができる。そして、第1電極311として使用可能な金属または合金としては、Au(金)、Al(アルミニウム)、AuGe、AuNi、AuGeNi等を挙げることができる。
【0110】
また、12個の第1電極311については、第1発光層12および第2発光層14の発光波長に対する透過性(透光性)を有していることが望ましい。ただし、第1電極311は、通常、上述したように透光性を有しない金属等で構成されることが多いことから、透光性を有していなくてもかまわない。
【0111】
(第2電極)
3個の第2電極312は、n型コンタクト層11の上面側に、Y方向に沿って3個並べて配置されている。そして、図6において最上段(Y方向下流側)に位置する第2電極312(以下では、必要に応じて「上段の第2電極312」と称する)と、図6において中段に位置する第2電極312(以下では、必要に応じて「中段の第2電極312」と称する)との間には、1個目の外部接続電極313(以下では、必要に応じて「上段の外部接続電極313と称する)が配置されている。また、中段の第2電極312と、図6において最下段(Y方向上流側)に位置する第2電極312(以下では、必要に応じて「下段の第2電極312」と称する)との間には、2個目の外部接続電極313(以下では、必要に応じて「下段の外部接続電極313」と称する)が配置されている。したがって、電流供給層31のうち、1列目の第1電極311(6個)と2列目の第1電極311(6個)との間には、Y方向上流側から下流側に向かって、「下段の第2電極312」→「下段の外部接続電極313」→「中段の第2電極312」→「上段の外部接続電極313」→「上段の第2電極312」が配置されていることになる。そして、これら3個の第2電極312と、2個の外部接続電極313とは、交互に連結されることにより一体化している。
【0112】
3個の第2電極312は、上方(Z方向下流側)からみたときのXY断面がそれぞれが略長方形状を呈する板状(直方体状)となっている。そして、3個の第2電極312のそれぞれにおいては、Y方向の長さがX方向の長さよりも大きくなっており、Z方向の長さがX方向の長さおよびY方向の長さよりも小さくなっている。また、3個の第2電極312のX方向の長さは略等しくなっている。これに対し、上段の第2電極312および下段の第2電極312のY方向の長さは略等しくなっており、中段の第2電極312のY方向の長さは、上段の第2電極312および下段の第2電極312のY方向のそれぞれの長さよりも大きくなっている。
【0113】
ここで、上述した12個の第1電極311のY方向の長さは、3個の第2電極312のX方向の長さおよびY方向の長さよりも小さくなっている。すなわち、本実施の形態の場合、12個の第1電極311は、3個の第2電極よりも幅が大きく(X方向)、奥行が小さい(Y方向)ことになる。
【0114】
また、3個の第2電極312では、それぞれにおけるZ方向上流側の面が、電流阻害層32の上面(後述する第2密着層323:図18参照)と接触するようになっている。また、3個の第2電極312では、それぞれにおけるX方向上流側の面およびX方向下流側の面が、8個の内部接続電極314を介して、8個の第1電極311(より具体的には、1/1第1電極311、1/2第1電極311、3/1第1電極311、3/2第1電極311、4/1第1電極311、4/2第1電極311、6/1第1電極311、6/2第1電極311)と接触するようになっている。そして、3個の第2電極312は、直接には、n型コンタクト層11と接触しないようになっている。
【0115】
また、3個の第2電極312は、上述した第1電極311と同様に、導電性を有する材料で構成されており、このような材料としては例えば金属または合金を挙げることができる。そして、第2電極312として使用可能な金属または合金としては、Au(金)、Al(アルミニウム)、AuGe、AuNi、AuGeNi等を挙げることができる。
【0116】
また、3個の第2電極312についても、上述した第1電極311と同様に、第1発光層12および第2発光層14の発光波長に対する透過性(透光性)を有していることが望ましい。ただし、第2電極312は、通常、上述したように透光性を有しない金属等で構成されることが多いことから、透光性を有していなくてもかまわない。
【0117】
(外部接続電極)
2個の外部接続電極313は、n型コンタクト層11の上面側に、Y方向に沿って2個並べて配置されている。そして、上述したように、下段の外部接続電極313のY方向上流側には下段の第2電極312が接続されており、下段の外部接続電極313のY方向下流側には中段の第2電極312が接続されている。また、上述したように、上段の外部接続電極313のY方向上流側には中段の第2電極312が接続されており、上段の外部接続電極313のY方向下流側には上段の第2電極312が接続されている。
【0118】
2個の外部接続電極313は、上方(Z方向下流側)からみたときのXY断面が略円形状を呈する板状(円板状)となっている。そして、2個の外部接続電極313の直径(X方向の長さ)は、3個の第2電極312のX方向のそれぞれの長さよりも大きくなっている。このため、3個の第2電極312と一体化した2個の外部接続電極313では、各外部接続電極313のX方向上流側の端部およびX方向下流側の端部が、3個の第2電極312のX方向上流側の端部およびX方向下流側の端部よりも側方に突出するようになっている。
【0119】
また、2個の外部接続電極313では、それぞれにおけるZ方向上流側の面が、電流阻害層32の上面(後述する第2密着層323:図18参照)と接触するようになっている。また、2個の外部接続電極313では、それぞれにおけるX方向上流側の面およびX方向下流側の面が、4個の内部接続電極314を介して、4個の第1電極311(より具体的には、2/1第1電極311、2/2第1電極311、5/1第1電極311、5/2第1電極311)と接触するようになっている。そして、2個の外部接続電極313は、上述した3個の第2電極312と同様、直接には、n型コンタクト層11と接触しないようになっている。
【0120】
また、2個の外部接続電極313は、上述した第1電極311および第2電極312と同様に、導電性を有する材料で構成されており、このような材料としては例えば金属または合金を挙げることができる。そして、外部接続電極313として使用可能な金属または合金としては、Au(金)、Al(アルミニウム)等を挙げることができる。
【0121】
また、2個の外部接続電極313についても、上述した第1電極311および第2電極312と同様に、第1発光層12および第2発光層14の発光波長に対する透過性(透光性)を有していることが望ましい。ただし、外部接続電極313は、通常、上述したように透光性を有しない金属等で構成されることが多いことから、透光性を有していなくてもかまわない。
【0122】
(内部接続電極)
12個の内部接続電極314は、n型コンタクト層11の上面側に、X方向に沿って2個ずつ、Y方向に沿って6個ずつ並べて配置されている。なお、以下の説明では、上述した12個の第1電極311と同様に、これらを、「1/1内部接続電極314」〜「6/2内部接続電極314」、「1列目の内部接続電極314」、「2列目の内部接続電極314」、「1行目の内部接続電極314」〜「6行目の内部接続電極314」、と称することがある。
【0123】
12個の内部接続電極314のうち、相対的にX方向上流側に位置する6個の内部接続電極314(1列目の内部接続電極314)は、Y方向に沿って並ぶ3個の第2電極312および2個の外部接続電極313よりも、X方向上流側に配置されている。これに対し、相対的にX方向下流側に位置する残りの6個の内部接続電極314(2列目の内部接続電極314)は、Y方向に沿って並ぶ3個の第2電極312および2個の外部接続電極313よりも、X方向下流側に配置されている。
【0124】
また、1/1内部接続電極314は、上段の第2電極312のX方向上流側に、上段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、1/1内部接続電極314は、上段の第2電極312と、1/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、1/2内部接続電極314は、上段の第2電極312のX方向下流側に、上段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、1/2内部接続電極314は、上段の第2電極312と、1/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0125】
また、2/1内部接続電極314は、上段の外部接続電極313のX方向上流側に、上段の外部接続電極313と一体的に設けられている。そして、2/1内部接続電極314は、上段の外部接続電極313と、2/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、2/2内部接続電極314は、上段の外部接続電極313のX方向下流側に、上段の外部接続電極313と一体的に設けられている。そして、2/2内部接続電極314は、上段の外部接続電極313と、2/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0126】
また、3/1内部接続電極314は、中段の第2電極312のX方向上流側に、中段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、3/1内部接続電極314は、中段の第2電極312と、3/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、3/2内部接続電極314は、中段の第2電極312のX方向下流側に、中段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、3/2内部接続電極314は、中段の第2電極312と、3/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0127】
また、4/1内部接続電極314は、中段の第2電極312のX方向上流側であって3/1内部接続電極314のY方向上流側に、中段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、4/1内部接続電極314は、中段の第2電極312と、4/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、4/2内部接続電極314は、中段の第2電極312のX方向下流側であって3/2内部接続電極314のY方向上流側に、中段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、4/2内部接続電極314は、中段の第2電極312と、4/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0128】
また、5/1内部接続電極314は、下段の外部接続電極313のX方向上流側に、下段の外部接続電極313と一体的に設けられている。そして、5/1内部接続電極314は、下段の外部接続電極313と、5/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、5/2内部接続電極314は、下段の外部接続電極313のX方向下流側に、下段の外部接続電極313と一体的に設けられている。そして、5/2内部接続電極314は、下段の外部接続電極313と、5/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0129】
また、6/1内部接続電極314は、下段の第2電極312のX方向上流側に、下段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、6/1内部接続電極314は、下段の第2電極312と、6/1第1電極311のX方向下流側の端部とを接続している。これに対し、6/2内部接続電極314は、下段の第2電極312のX方向下流側に、下段の第2電極312と一体的に設けられている。そして、6/2内部接続電極314は、下段の第2電極312と、6/2第1電極311のX方向上流側の端部とを接続している。
【0130】
また、12個の内部接続電極314では、それぞれにおけるZ方向上流側の面が、n型コンタクト層11と、自身の接続対象となる第1電極311の外周面とに接触するようになっている。
【0131】
また、12個の内部接続電極314は、上述した第1電極311、第2電極312および外部接続電極313と同様に、導電性を有する材料で構成されており、このような材料としては例えば金属または合金を挙げることができる。そして、内部接続電極314として使用可能な金属または合金としては、Au(金)、Al(アルミニウム)、AuGe、AuNi、AuGeNi等を挙げることができる。
【0132】
また、12個の内部接続電極314についても、上述した第1電極311、第2電極312および外部接続電極313と同様に、第1発光層12および第2発光層14の発光波長に対する透過性(透光性)を有していることが望ましい。ただし、内部接続電極314は、通常、上述したように透光性を有しない金属等で構成されることが多いことから、透光性を有していなくてもかまわない。
【0133】
なお、電流供給層31を構成する第1電極311、第2電極312、外部接続電極313および内部接続電極314のそれぞれについては、単体の金属(元素)で構成してもよいし、複数の金属を含む合金で構成してもよいし、これら単体の金属や合金からなる層を複数積層してなる積層体で構成してもかまわない。
【0134】
[電流阻害層]
電流阻害層32は、図5に示すように、例えば上方(Z方向下流側)からみたときに、上記電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体に倣った形状を呈するようになっている。より具体的に説明すると、電流阻害層32は、上方からみたときに、Y方向に並ぶ2つの円形状のものを、Y方向に沿って串で刺したような形状を呈している。
【0135】
そして、本実施の形態の電流阻害層32は、特に図18に示すように、n型コンタクト層11の上に積層される第1密着層321と、第1密着層321の上に積層される絶縁層322と、絶縁層322の上に積層される第2密着層323とを備えている。なお、電流阻害層32のうちで最上位に位置する第2密着層323は、電流供給層31(より具体的には3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体)の積層対象となる。
【0136】
ここで、本実施の形態の場合、電流阻害層32を構成する絶縁層322は、その名の通りに絶縁性を有している。これに対し、絶縁層322とともに電流阻害層32を構成する第1密着層321および第2密着層323は、必ずしも絶縁性を有している必要はない。したがって、本実施の形態における電流阻害層32の場合、絶縁層322は「電流阻害」を行う機能を備えているものの、第1密着層321および第2密着層323は「電流阻害」を行う機能を備えていなくてもかまわない。
【0137】
(第1密着層)
第1密着層321は、n型コンタクト層11の上面側であって、12個の第1電極311における1列目の第1電極311と2列目の第1電極311との間に、Y方向に沿って配置されている。換言すれば、第1密着層321は、n型コンタクト層11の上面側のうち、12個の第1電極311が形成されていない領域に配置されている。
また、第1密着層321は、自身のXZ断面が略長方形状を呈するようになっている。
さらに、第1密着層321は、自身のZ方向上流側の面がn型コンタクト層11と接触し、且つ、自身のZ方向下流側の面が絶縁層322のZ方向上流側の面と接触するようになっている。
【0138】
そして、第1密着層321は、自身が存在することにより、n型コンタクト層11と絶縁層322とを直接接触させた場合と比較して、より密着性を高めることのできる材料(より剥がれが生じ難くなる材料)で構成されている。このような材料としては、例えばIn(インジウム)を含む酸化物(インジウム酸化物)を挙げることができ、このようなインジウム酸化物としては、In、In−Sn−O、In−Zn−O等が存在する。そして、インジウム酸化物の中でも、In(インジウム)とSn(スズ)とを含む酸化インジウムスズ(所謂ITO)を用いることが望ましい。また、第1密着層321として所謂ITOを用いる場合、Sn(スズ)の濃度については適宜選定してかまわない。
【0139】
また、第1密着層321をインジウム酸化物で構成する場合、第1密着層321は結晶化していてもよいし、非晶質化していてもかまわない。また、結晶化した第1密着層321を用いる場合、第1密着層321がエピタキシャル化している必要はなく、多結晶体であってもかまわない。
【0140】
(絶縁層)
絶縁層322は、n型コンタクト層11の上面側であって、上述した第1密着層321の上に重ねて配置されている。したがって、絶縁層322は、上方(Z方向下流側)からみたときに、第1密着層321と同じ形状を有している。
また、絶縁層322は、自身のXZ断面が略長方形状を呈するようになっている。
さらに、絶縁層322は、自身のZ方向上流側の面が第1密着層321のZ方向下流側の面と接触し、且つ、自身のZ方向下流側の面が第2密着層323のZ方向上流側の面と接触するようになっている。
【0141】
そして、絶縁層322は、自身が存在することにより、n型コンタクト層11と電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体とを直接接触させた場合と比較して、より電気的な抵抗が高くなる材料(絶縁性を有する材料)で構成されている。このような材料としては、例えばSi(シリコン)を含む化合物(シリコン化合物)を挙げることができ、このようなシリコン化合物としては、SiO(酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)等が存在する。また、絶縁層322としてSiN(窒化シリコン)を用いる場合、シリコン(Si)とN(窒素)との比率(モル比)にいては、絶縁性が確保される範囲であれば適宜選定してかまわない。
【0142】
また、絶縁層322をシリコン化合物で構成する場合、絶縁層322は結晶化していてもよいし、非晶質化していてもかまわない。また、結晶化した絶縁層322を用いる場合、絶縁層322がエピタキシャル化している必要はなく、多結晶体であってもかまわない。
【0143】
(第2密着層)
第2密着層323は、n型コンタクト層11の上面側であって、上述した絶縁層322の上に重ねて配置されている。したがって、第2密着層323は、上方(Z方向下流側)からみたときに、第1密着層321および絶縁層322と同じ形状を有している。
また、第2密着層323は、自身のXZ断面が略長方形状を呈するようになっている。
ここで、第2密着層323のZ方向の大きさすなわち厚さは、上述した第1密着層321の厚さ以上とすることが望ましい(第2密着層323の厚さ≧第1密着層321の厚さ)。また、上述した絶縁層322の厚さは、第1密着層321の厚さおよび第2密着層323の厚さよりも大きくすることが望ましい(絶縁層322の厚さ>第1密着層321の厚さ、絶縁層322の厚さ>第2密着層323の厚さ)。
さらに、第2密着層323は、自身のZ方向上流側の面が絶縁層322のZ方向下流側の面と接触し、且つ、自身のZ方向下流側の面が電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体におけるZ方向上流側の面と接触するようになっている。
【0144】
そして、第2密着層323は、自身が存在することにより、絶縁層322と電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体とを直接接触させた場合と比較して、より密着性を高めることのできる材料(より剥がれが生じ難くなる材料)で構成されている。このような材料としては、例えばIn(インジウム)を含む酸化物(インジウム酸化物)を挙げることができ、このようなインジウム酸化物としては、In、In−Sn−O、In−Zn−O等が存在する。そして、インジウム酸化物の中でも、In(インジウム)とSn(スズ)とを含む酸化インジウムスズ(所謂ITO)を用いることが望ましい。また、第2密着層323として所謂ITOを用いる場合、Sn(スズ)の濃度については適宜選定してかまわない。
ここで、構成および製造を簡略化するという観点からすれば、第2密着層323は、上記第1密着層321と同じ材料で構成することが望ましい。
【0145】
また、第2密着層323をインジウム酸化物で構成する場合、第2密着層323は結晶化していてもよいし、非晶質化していてもかまわない。また、結晶化した第2密着層323を用いる場合、第2密着層323がエピタキシャル化している必要はなく、多結晶体であってもかまわない。
【0146】
[負電極部とn型コンタクト層との電気的な接続関係]
では、上述した負電極部30を構成する電流供給層31および電流阻害層32と、発光素子層10を構成するn型コンタクト層11との電気的な接続関係について、説明を行う。
【0147】
まず、電流供給層31では、12個の第1電極311と、12個の内部接続電極314の各一部とが、n型コンタクト層11と電気的に接続される。また、12個の第1電極311は、12個の内部接続電極314を介して3個の第2電極312あるいは2個の外部接続電極313と電気的に接続される。そして、これら3個の第2電極312および2個の外部接続電極313は、互いに電気的に接続されている。
【0148】
また、電流阻害層32に設けられた絶縁層322は、n型コンタクト層11と、電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313の連結体とを電気的に絶縁している。このとき、電流阻害層32に設けられた第1密着層321は、n型コンタクト層11と絶縁層322との間に介在してこれら両者の接合性を高めており、電流阻害層32に設けられた第2密着層323は、絶縁層322と電流供給層31における3個の第2電極312および2個の外部接続電極313との間に介在してこれら三者の密着性を高めている。
【0149】
ここで、例えば2個の外部接続電極313にワイヤボンディング等を施し、これらを介して発光素子層10に給電を行った場合を考えてみる。この場合、2個の外部接続電極313に供給された電荷は、自身に接続された4個の内部接続電極314あるいは自身と一体化した3個の第2電極312に接続された8個の内部接続電極314を介して、それぞれの内部接続電極314に接続された12個の第1電極311に供給される。そして、これら12個の第1電極311は、それぞれが接続されたn型コンタクト層11に対して、電荷の供給を行うことで発光素子層10に電流を流す。また、一部の電荷は、12個の内部接続電極314からn型コンタクト層11に対し、直接に供給され、こちらからも発光素子層10に電流を流す。このとき、2個の外部接続電極313およびこれらと一体化した3個の第2電極312と、n型コンタクト層11との間には、電流阻害層32の絶縁層322が存在している。このため、2個の外部接続電極313およびこれらに直接に接続される3個の第2電極312からn型コンタクト層11には、直接に電荷が供給されにくい状態となる。
【0150】
<負電極部形成工程の詳細>
では、上述した負電極部30の製造方法、すなわち、図4のステップ130に示した負電極部形成工程の詳細について説明を行う。
図19は、負電極部30の製造方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施の形態の負電極部30は、基本的に、スパッタリング法とリソグラフィ法(リフトオフ法)とを組み合わせることで得られる。ただし、これに限られるものではなく、各種手法を用いてもかまわない。
【0151】
ここでは、まず、図4のステップ120に示す成長基板除去工程を経て得られた、発光素子層10と正電極部20とを積層してなる『第4積層体』において、外部に露出するn型コンタクト層11に対し、第1導体層31a(図21等を参照、詳細は後述する)を積層する第1導体層積層工程を実行する(ステップ131)。ここで、第1導体層31aは、12個の第1電極311に対応するものである。以下では、第4積層体に第1導体層31aを積層したものを、『第1構造体』と称する。
【0152】
次に、上記第1構造体におけるn型コンタクト層11のうち、ステップ131で第1導体層31aが積層されなかった領域に、電流阻害層32を積層する電流阻害層形成工程を実行する(ステップ132)。ここで、本実施の形態では、ステップ132の電流阻害層形成工程が、n型コンタクト層11上に第1密着層321を積層する第1密着層形成工程(ステップ132a)と、第1密着層321上に絶縁層322を積層する絶縁層形成工程(ステップ132b)と、絶縁層322上に第2密着層323を積層する第2密着層形成工程(ステップ132c)とを含んでいる。以下では、第1構造体に電流阻害層32(第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323)を積層したものを、『第2構造体』と称する。
【0153】
続いて、上記第2構造体における、n型コンタクト層11のうちの一部の領域と、第1導体層31aのうちの一部の領域と、電流阻害層32(実際には最上位に位置する第2密着層323)の略全域とに、第2導体層31b(図23等を参照、詳細は後述する)を積層する第2導体層積層工程を実行する(ステップ133)。ここで、第2導体層31bは、3個の第2電極312と、2個の外部接続電極313と、12個の内部接続電極314とに対応するものである。以下では、第2構造体に第2導体層31bを積層したものを、『第3構造体』と称する。
【0154】
次いで、上記第3構造体に対し、図4のステップ140に示す分割工程で個片化を行う際に使用される分離溝3(図24図25を参照、詳細は後述する)を形成する分離溝形成工程を実行する(ステップ134)。以下では、第3構造体に分離溝3を形成したものを『第4構造体』と称する。
【0155】
最後に、上記第4構造体に対し、第4構造体のうち外部に露出しているn型コンタクト層11の露出面に対し、微小な凹凸を形成することで粗面化を行う粗面化工程を実行する(ステップ135)。以上により、上述した『第5積層体』が得られる。
【0156】
そして、このようにして得られた第5積層体に対し、上記ステップ134で形成された分離溝3に沿って分割(図4のステップ140に示す分割工程)を行うことで、図1等に示す半導体発光素子2が得られる。
【0157】
では、上述したステップ130の負電極部形成工程を構成する各工程について、具体的に説明を行う。
【0158】
[初期状態]
図20(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(初期状態:後述する第1導体層形成工程(ステップ131)の前)を説明するための図である。ここで図20(a)は、1つの半導体発光素子2に対応する上面図を示しており、図20(b)〜(e)は、図20(a)のXXB−XXB〜XXE−XXE断面図を示している。なお、これらの関係については、後述する図21図24および図26においても同様である。
【0159】
初期状態では、発光素子層10と正電極部20とを積層してなる『第4積層体』において、外部に露出するn型コンタクト層11の上面は、略平坦となっており、溝や突起等は形成されていない。
【0160】
[第1導体層形成工程]
図21(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(第1導体層形成工程(ステップ131)の後:後述する電流阻害層形成工程(ステップ132)の前)を説明するための図である。
【0161】
ステップ131の第1導体層形成工程では、第4積層体における発光素子層10のうちのn型コンタクト層11の上に、所謂リフトオフ法を用いて、第1導体層31aの形成を行う。
【0162】
ここでは、まず、n型コンタクト層11の上面の全面に対し、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより、第1導体層31a(12個の第1電極311に対応)の形成予定領域に存在するフォトレジストを除去する。これにより、n型コンタクト層11の上面には、12個の第1電極311に対応するマスクが形成される。
【0163】
次に、フォトレジストによるマスクが形成されたn型コンタクト層11の上面に対し、スパッタ法を用いて金属層を形成する。ここでは、例えばAuGeターゲットを用い、Ar雰囲気下にて、AuGeからなる金属層を形成する。
【0164】
続いて、剥離剤により、マスクとなったフォトレジストおよびフォトレジストの上に積層された金属層を除去する(リフトオフ)。その結果、n型コンタクト層11の上面には、n型コンタクト層11の上に直接に積層されることで、リフトオフによる除去がなされなかった金属層による第1導体層31aが形成される(残る)。このとき、第1導体層31aは、6行2列に配列された12個の第1電極311で構成されている。
【0165】
[電流阻害層形成工程]
図22(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(電流阻害層形成工程(ステップ132)の後:第2導体層形成工程(ステップ133)の前)を説明するための図である。
【0166】
ステップ132の電流阻害層形成工程では、第1構造体におけるn型コンタクト層11のうち、1列目の第1電極311(第1導体層31a)と2列目の第1電極311(第1導体層31a)との間に、所謂リフトオフ法を用いて、電流阻害層32の形成を行う。
【0167】
ここでは、まず、第1構造体のn型コンタクト層11および第1導体層31aの上面の全面に対し、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより、電流阻害層32(より具体的には第1密着層321)の形成予定領域に存在するフォトレジストを除去する。これにより、n型コンタクト層11および第1導体層31aの上面には、電流阻害層32(第1密着層321)に対応するマスクが形成される。このとき、実際には、n型コンタクト層11が存在し且つ第1導体層31aが存在しない領域が、マスクによって覆われることなく露出することになる。
【0168】
次に、フォトレジストによるマスクが形成されたn型コンタクト層11および第1導体層31aの上面に対し、スパッタ法を用いて下層を形成する。ここでは、例えばITOターゲットを用い、Ar+O雰囲気下にて、ITOからなる下層を形成する。
【0169】
続いて、前工程で形成された下層の上面に対し、スパッタ法を用いて中層を形成する。ここでは、例えばSiOターゲットを用い、Ar+O雰囲気下にて、SiOからなる中層を形成する。
【0170】
次に、前工程で形成された中層の上面に対し、スパッタ法を用いて上層を形成する。ここでは、例えばITOターゲットを用い、Ar+O雰囲気下にて、ITOからなる上層を形成する。
【0171】
続いて、剥離剤により、マスクとなったフォトレジストおよびフォトレジストの上に積層された下層、中層および上層を除去する(リフトオフ)。その結果、n型コンタクト層11の上には、n型コンタクト層11の上に直接に積層されることで、リフトオフによる除去がなされなかった下層(第1密着層321)、中層(絶縁層322)および上層(第2密着層323)を、この順で積層してなる電流阻害層32が形成される(残る)。このとき、電流阻害層32は、6個の第1導体層31a(第1電極311)で構成された1列目の第1電極311と、残りの6個の第1導体層31a(第1電極311)で構成された2列目の第1電極311との間に配置されている。
【0172】
なお、ここでは、電流阻害層32を構成する第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323を、一度のリフトオフにてまとめて形成しているが、これに限られるものではない。例えば、第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323のそれぞれについて、層毎に三度リフトオフを行うことによって電流阻害層32を形成してもかまわない。
【0173】
[第2導体層形成工程]
図23(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(第2導体層形成工程(ステップ133)の後:後述する分離溝形成工程(ステップ134)の前)を説明するための図である。
【0174】
ステップ133の第2導体層形成工程では、第2構造体におけるn型コンタクト層11側の上面の上に、所謂リフトオフ法を用いて、第2導体層31bの形成を行う。
【0175】
ここでは、まず、n型コンタクト層11側の上面の全面に、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより、第2導体層31b(3個の第2電極312、2個の外部接続電極313および12個の内部接続電極314)の形成予定領域に存在するフォトレジストを除去する。これにより、n型コンタクト層11側の上面には、3個の第2電極312、2個の外部接続電極313および12個の内部接続電極314に対応するマスクが形成される。
【0176】
次に、フォトレジストによるマスクが形成されたn型コンタクト層11側の上面に対し、スパッタ法を用いて金属層を形成する。ここでは、例えばAuターゲットを用い、Ar雰囲気下にて、Auからなる金属層を形成する。
【0177】
続いて、剥離剤により、マスクとなったフォトレジストおよびフォトレジストの上に積層された金属層を除去する(リフトオフ)。その結果、n型コンタクト層11側の上面には、マスクが形成されていない領域(n型コンタクト層11、第1導体層31aあるいは電流阻害層32)に直接に積層されることで、リフトオフによる除去がなされなかった第2導体層31bが形成される(残る)。このとき、第2導体層31bは、電流阻害層32の上に積層される3個の第2電極312および2個の外部接続電極313と、12個の第1導体層31a(第1電極311)およびn型コンタクト層11の上に積層される12個の内部接続電極314とで構成されている。
【0178】
これにより、ミクロ的にみたときに、n型コンタクト層11上には、12個の第1電極311と、3個の第2電極312と、2個の外部接続電極313と、12個の内部接続電極314とを含む電流供給層31と、第1密着層321と、絶縁層322と、第2密着層323とを積層してなる電流阻害層32とを備えた、負電極部30が形成される。
また、以上の手順により、マクロ的にみたときに、発光素子層10と正電極部20とを積層してなる第4積層体に、複数の負電極部30がマトリクス状に形成、配置された『第5積層体』が得られる。
【0179】
なお、この例では、以下に説明する、ステップ134の分離溝形成工程およびステップ135の粗面化工程を、ステップ130の負電極部形成工程の構成要素として扱っている。ただし、これらステップ134およびステップ135の2工程については、実際には、ステップ130の後に実行される、ステップ140の分割工程の構成要素あるいはステップ140の分割工程の前処理として把握することができる。
【0180】
[分離溝形成工程]
図24(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(分離溝形成工程(ステップ134)の後:後述する粗面化工程(ステップ135)の前)を説明するための図である。したがって、図24(a)は、上記ステップ133の第2導体層形成工程の説明で用いた、図23に対応している。また、図25(a)、(b)は、分離溝形成工程(ステップ134)の前後の状態を説明するための図である。
【0181】
ステップ134の分離溝形成工程では、第3構造体における発光素子層10に、エッチング法を用いて、個片化のための分離溝3を形成する。
【0182】
ここでは、まず、複数の負電極部30が形成された発光素子層10の上面の全面に、フォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィーにより、分離溝3の形成予定領域に存在するフォトレジストを除去する。これにより、発光素子層10の上面には、各負電極部30がフォトレジストによって覆われ、且つ、各負電極部30の周囲がそれぞれ矩形(略正方形)状に露出するように、マスクの形成が行われる。
【0183】
次に、フォトレジストによるマスクが形成された発光素子層10の上面に対し、エッチング(ウェットエッチング)を施す。このとき、発光素子層10の上面のうち、マスクで覆われないことによって発光素子層10が露出している部位からエッチャントが進入することによって、発光素子層10が深さ方向(−Z方向)に浸食され、分離溝3となる。なお、ここでは、発光素子層10は浸食するものの正電極部20は浸食しないエッチャントを用いているため、発光素子層10と正電極部20との境界部に位置するp電極層21がエッチングストップ層として機能し、正電極部20はそのままの状態(形状)を維持する。したがって、分離溝3は、第3構造体を貫通せず、発光素子層10側にのみ形成される。
【0184】
続いて、剥離剤により、マスクとなったフォトレジストを除去する。その結果、発光素子層10と正電極部20と複数の負電極部30とを備えた第3構造体には、発光素子層10に対し、X方向およびY方向のそれぞれに沿って複数の分離溝3が形成されることで、発光素子層10は、それぞれが矩形状(正方形状)を呈する複数の領域に分割された第4構造体となる。このとき、第4構造体では、分割された各発光素子層10のそれぞれに対し、1つずつ負電極部30が配置されていることになる。
【0185】
[粗面化工程]
図26(a)〜(e)は、負電極部30の製造手順(最終状態:粗面化工程(ステップ135)の後)を説明するための図である。
【0186】
ステップ135の粗面化工程では、第4構造体におけるn型コンタクト層11の上面に、微小な凹凸を設けることでn型コンタクト層11を粗面化する。
【0187】
ここでは、まず、第4構造体を硝酸−水系エッチャントに浸漬し、n型コンタクト層11のうち、外部に露出している部位(負電極部30が形成されていない部位)を浸食させる。これにより、n型コンタクト層11における露出面には、微小な凹凸が形成されることによって粗面化される。なお、このとき、正電極部20および負電極部30も、エッチャント液に接触することとなるが、これらは、ここで使用したエッチャントでは浸食されないので、そのままの状態(形状)を維持する。
【0188】
そして、必要なだけn型コンタクト層11が浸食された(粗面化された)後、第4構造体を硝酸−水系エッチャントから取り出し、洗浄を施す。これにより、第4構造体にてn型コンタクト層11を粗面化した第5積層体が得られることになる。
【0189】
[第1、第2導体層と第1、第2、外部接続、内部接続電極との関係]
ここで、半導体発光素子2の製造方法の説明で用いた第1導体層31aおよび第2導体層31bと、半導体発光素子2の構成の説明で用いた第1電極311、第2電極312、外部接続電極313および内部接続電極314との関係について、再度説明しておく。
まず、第1導体層31aは、半導体発光素子2において、12個の第1電極311を形成する。これに対し、第2導体層31bは、半導体発光素子2において、3個の第2電極312と、2個の外部接続電極313と、12個の内部接続電極314とを形成する。ただし、電流供給層31における第1導体層31aおよび第2導体層31bを同じ材料(例えばAuGe)で形成した場合、半導体発光素子2では、電流供給層31を構成する第1導体層31aと第2導体層31bとの判別は困難となる。
【0190】
<対応関係>
ここで、本実施の形態では、発光素子層10(特にn型コンタクト層11)が、化合物半導体層の一例となっている。
また、本実施の形態では、第1発光層12および第2発光層14が、発光層の一例となっている。
また、本実施の形態では、各第2電極312および各外部接続電極313が、受電電極あるいは第1金属層の一例となっている。
また、本実施の形態では、各外部接続電極313が外部接続部の一例となっており、各第2電極312が内部接続部の一例となっている。
また、本実施の形態では、各第1電極311および各内部接続電極314が、給電電極あるいは第2金属層の一例となっている。
また、本実施の形態では、絶縁層322がシリコン含有層の一例となっている。
また、本実施の形態では、第1密着層321が第1インジウム酸化物層の一例となっており、第2密着層323が第2インジウム酸化物層の一例となっている。
また、本実施の形態では、ステップ131の第1導体層形成工程およびステップ132の電流阻害層形成工程の両者が、第1の工程の一例となっており、ステップ133の第2導体層形成工程が、第2の工程の一例となっている。
【0191】
<半導体発光素子の動作>
では、このようにして得られた半導体発光素子2の発光動作について説明を行う。
半導体発光素子2の正電極部20および負電極部30に順方向電圧を印加すると、発光素子層10には、p型コンタクト層15からn型コンタクト層11に向かう電流(順方向電流)が流れる。このとき、本実施の形態では、第1発光層12および第2発光層14を、トンネル接合層13を介して接続しているため、上記順方向電流の流れが妨げられにくくなっている。
【0192】
このとき、正電極部20では、基板等に設けられた電極(図示せず)と電気的に接続された外部電極層27から、支持基板26、内部電極層25、接合層24、拡散防止層23、反射層22、および、p電極層21に設けられた複数の柱状電極層212を介して、p型コンタクト層15(発光素子層10)に電流が流れる。
【0193】
また、このとき、負電極部30では、給電線(図示せず)と電気的に接続された2つの外部接続電極313から、直接あるいは3個の第2電極312を介して接続された12個の内部接続電極314と、各内部接続電極314に接続された12個の第1電極311とを介して、n型コンタクト層11(発光素子層10)に電流が流れる。
【0194】
そして、第1発光層12および第2発光層14のそれぞれに順方向電流が流れることにより、第1発光層12および第2発光層14は、同一波長の光を出力する。このとき、第1発光層12からは、主としてn型コンタクト層11側(図5において上側)とトンネル接合層13側(図3において下側)とに向かって、光が出力される。これに対し、第2発光層14からは、主としてトンネル接合層13側(図3において上側)とp型コンタクト層15側(図3において下側)とに向かって、光が出力される。
【0195】
このとき、第1発光層12および第2発光層14から、図3の上側に出力される光は、n型コンタクト層11を介して半導体発光素子2の外部に出力される(図中矢印方向参照)。これに対し、第1発光層12および第2発光層14から、図3の下側に出力される光は、反射層22によって反射され、n型コンタクト層11側(図3において上側)に向かう。
【0196】
ここで、本実施の形態の半導体発光素子2では、発光素子層10のうち光の取り出し面となるn型コンタクト層11に、所謂櫛形形状を呈する負電極部30を設けている。このため、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14から出力される光が、負電極部30によって遮られにくくなっている。
【0197】
また、本実施の形態の半導体発光素子2では、発光素子層10のうち光の取り出し面となるn型コンタクト層11に、粗面化処理を施している。このため、発光素子層10における第1発光層12および第2発光層14から出力される光が、n型コンタクト層11と外部との界面で反射されにくく(透過されやすく)なっている。
【0198】
<まとめ>
以上説明したように、本実施の形態では、第1発光層12および第2発光層14から出力される光の取り出し面となるn型コンタクト層11に設ける負電極部30を、所謂櫛形電極とした。これにより、例えば負電極部30を直線状に形成した場合等と比較して、n型コンタクト層11に供給する電流を面方向に分散させることができる。これにより、第1発光層12および第2発光層14を、より均一に発光させること(発光むらを抑制すること)が可能になる。
【0199】
また、本実施の形態では、櫛形電極を採用した負電極部30のうち、外部からの受電に用いられる2個の外部接続電極313およびこれらに接続される3個の第2電極312と、n型コンタクト層11(発光素子層10)との間に、絶縁層322を含む電流阻害層32を設けた。これにより、この部位に電流阻害層32を設けない場合と比較して、これら各外部接続電極313および各第2電極312から、直接にn型コンタクト層11に供給される電流を低減することが可能となり、発光層(この例では第1発光層12および第2発光層14)から出力される光の取り出し効率を向上させることが可能になる。
【0200】
さらに、本実施の形態の負電極部30では、n型コンタクト層11と絶縁層322との間に第1密着層321を設けるとともに、絶縁層322と2個の外部接続電極313およびこれらに接続される3個の第2電極312との間に第2密着層323を設けた。換言すれば、本実施の形態では、電流供給層31とともに負電極部30を構成する電流阻害層32を、第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323を積層してなる3層構成とした。これにより、負電極部30に第1密着層321および第2密着層323を設けない場合、換言すれば、n型コンタクト層11に絶縁層322を直接に接触させ、且つ、絶縁層322に各外部接続電極313および各第2電極312を直接に接触させる構成を採用した場合と比較して、半導体発光素子2から負電極部30が剥がれたり、半導体発光素子2の負電極部30内で電流供給層31と電流阻害層32(絶縁層322)とが剥がれたりすることに伴う故障を抑制することができる。なお、このことに関する詳細については後述する。
【0201】
<その他>
なお、本実施の形態では、負電極部30を例として説明を行ったが、上述した構造を正電極部20に適用することもできる。
【0202】
また、本実施の形態では、2つの発光層(第1発光層12および第2発光層14)をZ方向に積み重ねてなる、所謂ダブルスタック型の半導体発光素子2を例として説明を行ったが、これに限られるものではない。上述した負電極部30の電極構造は、例えば1つの発光層のみを有する半導体発光素子や、3以上の発光層を積み重ねてなる半導体発光素子に適用することもできる。また、この場合にも、上述した構造を正電極部にも適用することができる。
【0203】
また、本実施の形態では、GaAs系の活性層(第1活性層122および第2活性層142)を有する半導体発光素子2を例として説明を行ったが、これ以外の化合物半導体で活性層を構成してなる半導体発光素子2に適用することもできる。
【0204】
また、本実施の形態では、発光素子層10の上に負電極部30を形成する際に、第1導体層31a、電流阻害層32、第2導体層31bの順で製造を行っていたが、これに限られるものではない。例えば、電流阻害層32、第1導体層31a、第2導体層31bの順で製造を行ってもよい。
【0205】
また、本実施の形態では、発光素子層10の上に負電極部30を形成する際に、電流供給層31を、第1導体層31aと第2導体層31bとに分けて積層していたが、これに限られるものではない。例えば、n型コンタクト層11の上に電流阻害層32を形成した後に、電流供給層31を一括で形成するようにしてもかまわない。
【実施例】
【0206】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者は、負電極部30における電流阻害層32の構成を種々異ならせた半導体発光素子2の作製を行うとともに、得られた各種半導体発光素子2に関し、各種特性に関する評価を行った。
【0207】
<使用した半導体層形成基板>
まず、以下に説明する各実施例および各比較例で用いる半導体発光素子2のもととなった、半導体層形成基板1について説明を行う。
なお、ここでは、図2に示す製造方法を用いて、半導体層形成基板1の製造を行った。
表1は、今回使用した半導体層形成基板1の作製条件を示している。
【0208】
【表1】
【0209】
では、表1を参照しつつ、今回使用した半導体層形成基板1について説明を行う。
[成長基板]
成長基板1aには、ドーパントとしてn型不純物であるSiを添加した、GaAs単結晶からなるウエハを用いた。用いたウエハのキャリア濃度は、1.0×1018(/cm)であった(表1には「1.0E+18」と表記。以下同様)。ここで、成長基板1aにおけるキャリア濃度は、5.0×1017〜2.0×1018(/cm)の範囲より選択することが望ましい。そして、成長基板1aの厚さは350(μm)とし、成長基板1aにおける結晶成長面のオフ角は15°とした。
【0210】
[発光素子層]
発光素子層10の構成は以下の通りである。なお、ここでは、発光素子層10(より具体的には第1発光層12および第2発光層14)の発光波長(設計値)を810nmとした。
【0211】
(n型コンタクト層)
n型コンタクト層11には、AlGaAsを用いた。n型コンタクト層11には、ドーパントとして、n型不純物であるTeを5.0×1017(/cm)の濃度となるように添加した。n型コンタクト層11の厚さは、5.00(μm)とした。
【0212】
(第1発光層)
第1発光層12の構成は以下の通りである。
【0213】
〔第1n型クラッド層〕
第1n型クラッド層121には、AlGaAsを用いた。第1n型クラッド層121には、ドーパントとして、n型不純物であるTeを1.0×1018(/cm)の濃度となるように添加した。第1n型クラッド層121の厚さは、0.20(μm)とした。
【0214】
〔第1活性層〕
第1活性層122の構成は以下の通りである。なお、ここでは、第1井戸層1221を18層とし、第1障壁層1222を17層とした。
【0215】
{第1井戸層}
第1井戸層1221には、AlGaInAsPを用いた。第1井戸層1221には、ドーパントを添加していない(アンドープ(表1には「UN」と表記。以下同様)。第1井戸層1221の厚さは、0.0033(μm)とした。したがって、すべて(18層)の第1井戸層1221の厚さの合計値は、0.0594(μm)となる。
【0216】
{第1障壁層}
第1障壁層1222には、AlGaAsPを用いた。第1障壁層1222には、ドーパントを添加していない(アンドープ)。第1障壁層1222の厚さは、0.007(μm)とした。したがって、すべて(17層)の第1障壁層1222の厚さの合計値は、0.119(μm)となる。
【0217】
〔第1p型クラッド層〕
第1p型クラッド層123には、Al0.45Ga0.55As(表1には「Al0.45Ga0.55As」と表記。以下同様)を用いた。第1p型クラッド層123には、ドーパントとして、p型不純物であるCを8.0×1017(/cm)の濃度となるように添加した。第1p型クラッド層123の厚さは、0.20(μm)とした。
【0218】
(トンネル接合層)
トンネル接合層13の構成は以下の通りである。
【0219】
〔p型トンネル層〕
p型トンネル層131には、Al0.25Ga0.75Asを用いた。p型トンネル層131には、ドーパントとして、p型不純物であるCを4.0×1019(/cm)の濃度となるように添加した。p型トンネル層131の厚さは、0.020(μm)とした。
【0220】
〔n型トンネル層〕
n型トンネル層133には、Ga0.51In0.49Pを用いた。n型トンネル層133には、ドーパントとして、n型不純物であるTeを2.5×1019(/cm)の濃度となるように添加した。n型トンネル層133の厚さは、0.015(μm)とした。
【0221】
〔高濃度n型不純物含有層〕
表1には記載していないが、p型トンネル層131とn型トンネル層133との間には、n型トンネル層133よりもn型不純物であるTeを多く含む高濃度n型不純物含有層132が存在する。
【0222】
(第2発光層)
第2発光層14の構成は以下の通りである。なお、ここでは、第2発光層14における各層の構成を、基本的に、上記第1発光層12と共通にした。
【0223】
〔第2n型クラッド層〕
第2n型クラッド層141には、Al0.45Ga0.55Asを用いた。第2n型クラッド層141には、ドーパントとして、n型不純物であるTeを1.0×1018(/cm)の濃度となるように添加した。第2n型クラッド層141の厚さは、0.20(μm)とした。
【0224】
〔第2活性層〕
第2活性層142の構成は以下の通りである。なお、ここでは、第2井戸層1421を18層とし、第2障壁層1422を17層とした。
【0225】
{第2井戸層}
第2井戸層1421には、AlGaInAsPを用いた。第2井戸層1421には、ドーパントを添加していない(アンドープ)。第2井戸層1421の厚さは、0.0033(μm)とした。したがって、すべて(18層)の第2井戸層1421の厚さの合計値は、0.0594(μm)となる。
【0226】
{第2障壁層}
第2障壁層1422には、AlGaAsPを用いた。第2障壁層1422には、ドーパントを添加していない(アンドープ)。第2障壁層1422の厚さは、0.007(μm)とした。したがって、すべて(17層)の第2障壁層1422の厚さの合計値は、0.119(μm)となる。
【0227】
〔第2p型クラッド層〕
第2p型クラッド層143には、AlGaAsを用いた。第2p型クラッド層143には、ドーパントとして、p型不純物であるCを8.0×1017(/cm)の濃度となるように添加した。第2p型クラッド層143の厚さは、0.20(μm)とした。
【0228】
(p型コンタクト層)
p型コンタクト層15には、AlGaAsを用いた。p型コンタクト層15には、ドーパントとしてp型不純物であるCを、3.0×1018(/cm)の濃度となるように添加した。p型コンタクト層15の厚さは、3.50(μm)とした。
【0229】
<使用した半導体発光素子>
次に、以下に説明する各実施例および各比較例で用いる半導体発光素子2について説明を行う。
ここでは、上述した半導体層形成基板1を出発材料とし、図4に示す製造方法を用いて、半導体発光素子2の製造を行った。
表2は、今回使用した半導体発光素子2における正電極部20および負電極部30の作製条件を示している。
【0230】
【表2】
【0231】
[正電極部]
まず、正電極部20について説明を行う。
正電極部20の構成は以下の通りである。
【0232】
(p電極層)
p電極層21における透光層211および柱状電極層212の構成は、それぞれ次の通りである。
【0233】
〔透光層〕
透光層211には、SiOを用いた。透光層211の厚さは0.3μmとした。
【0234】
〔柱状電極層〕
柱状電極層212には、AuBeを用いた。柱状電極層212の厚さは0.3μmとした。また、各柱状電極層212の直径は11.5μmとし、隣接する柱状電極層212同士の間隔は44μmとした。
【0235】
(反射層)
反射層22には、Auを用いた。反射層22の厚さは0.7μmとした。
【0236】
(拡散防止層)
拡散防止層23には、PtとTiとの積層体(表には「Pt/Ti」と記載)を用いた。拡散防止層23の厚さは合計で0.5μmとした。
【0237】
(接合層)
接合層24には、AuGeを用いた。接合層24の厚さは1.0μmとした。
【0238】
(内部電極層)
内部電極層25には、PtとAuとの積層体(表には「Pt/Au」と記載)を用いた。内部電極層25の厚さは、Pt=0.1μm、Au=0.8μm(表には「0.1/0.8」と記載)とした。
【0239】
(支持基板)
支持基板26には、Ge単結晶基板を用いた。支持基板26の厚さは175μmとした。
【0240】
(外部電極層)
外部電極層27には、PtとAuとの積層体(表には「Pt/Au」と記載)を用いた。外部電極層27の厚さは、Pt=0.1μm、Au=0.5μm(表には「0.1/0.5」と記載)とした。
【0241】
[負電極部]
続いて、負電極部30の構成について説明を行う。
負電極部30の構成は以下の通りである。
【0242】
(電流供給層)
電流供給層31における第1導体層31a(第1電極311に対応)および第2導体層31b(第2電極312、外部接続電極313および内部接続電極314に対応)の構成は、それぞれ次の通りである。
【0243】
〔第1導体層〕
第1導体層31aには、AuGeを用いた。第1導体層31aの厚さは3.5μmとした。
【0244】
〔第2導体層〕
第2導体層31bには、Auを用いた。第2導体層31bの厚さは3.5μmとした。
【0245】
(電流阻害層)
電流阻害層32の有無、および、電流阻害層32が存在する場合における電流阻害層32の構成は、各実施例および各比較例で異なる。そこで、電流阻害層32については、後で示す表3を参照しながら説明を行うことにする。
【0246】
<各実施例および各比較例の電流阻害層>
では、以下に説明する各実施例および各比較例で用いる半導体発光素子2に設けられた、負電極部30における電流阻害層32について説明を行う。
ここでは、各実施例については、図19に示す製造方法を用いて、電流阻害層32を含む負電極部30の製造を行った。一方、各比較例については、図19に示す製造方法を基本とするものの、ステップ132の電流阻害層形成工程の一部または全部を省略した製造方法を用いて、負電極部30の製造を行った。
表3は、今回使用した半導体発光素子2の負電極部30における電流阻害層32の構成を示している。
【0247】
【表3】
【0248】
では、各実施例(実施例1〜5)および各比較例(比較例1〜4)のそれぞれについて、順番に説明を行う。
【0249】
[実施例1]
実施例1では、電流阻害層32を、第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323をこの順で積層してなる3層構成とした(表3においては、「有無」を「あり」、「あり」、「あり」と記載した、以下同じ)。そして、実施例1では、第1密着層321をITO(厚さ5nm)とし、絶縁層322をSiO(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、実施例1では、絶縁層322をSiOで構成するとともに、第2密着層323を第1密着層321よりも厚くした。実施例1の場合、得られた第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323は、すべて非晶質化していた。
【0250】
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同じく電流阻害層32を3層構成とした。そして、実施例2では、第1密着層321をITO(厚さ10nm)とし、絶縁層322をSiO(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、実施例2では、実施例1と同様に、絶縁層322をSiOで構成するとともに、第2密着層323を第1密着層321よりも厚くした。また、実施例2では、第1密着層321を、実施例1よりも厚くした。実施例2の場合、得られた第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323は、すべて非晶質化していた。
【0251】
[実施例3]
実施例3では、実施例1、2と同じく電流阻害層32を3層構成とした。そして、実施例3では、第1密着層321をITO(厚さ10nm)とし、絶縁層322をSiO(厚さ300nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、実施例3では、実施例1、2と同様に、絶縁層322をSiOで構成するとともに、第2密着層323を第1密着層321よりも厚くした。また、実施例3では、絶縁層322を、実施例2よりも厚くした。実施例3の場合、得られた第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323は、すべて非晶質化していた。
【0252】
[実施例4]
実施例4では、実施例1〜3と同じく電流阻害層32を3層構成とした。そして、実施例4では、第1密着層321をITO(厚さ5nm)とし、絶縁層322をSiN(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、実施例4では、実施例1〜3とは異なり、絶縁層322をSiNで構成した。ただし、実施例4では、実施例1〜3と同じく、第2密着層323を第1密着層321よりも厚くした。なお、実施例4は、絶縁層322の材料が異なる以外は、実施例1と共通である。実施例4の場合、得られた第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323は、すべて非晶質化していた。
【0253】
[実施例5]
実施例5では、実施例1〜4と同じく電流阻害層32を3層構成とした。そして、実施例5では、第1密着層321をITO(厚さ20nm)とし、絶縁層322をSiN(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、実施例5では、実施例4と同様に、絶縁層322をSiNで構成した。ただし、実施例5では、実施例4よりも第1密着層321を厚くすることによって、第1密着層321および第2密着層323を同じ厚さにした。実施例5の場合、得られた第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323は、すべて非晶質化していた。
【0254】
[比較例1]
比較例1では、電流阻害層32そのものを設けなかった。したがって、第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323のすべてが存在しない(表3においては、「有無」を、「なし」、「なし」、「なし」と記載した)。
【0255】
[比較例2]
比較例2では、電流阻害層32として絶縁層322のみを設ける単層構成とし、第1密着層321および第2密着層323の両者を設けなかった(表3においては、「有無」を、「なし」、「あり」、「なし」と記載した)。そして、比較例2では、絶縁層322をSiO(厚さ120nm)とした。すなわち、比較例2では、絶縁層322の材料および厚さを、実施例1、2と同じにした。比較例2の場合、得られた絶縁層322は非晶質化していた。
【0256】
[比較例3]
比較例3では、電流阻害層32を、絶縁層322および第2密着層323をこの順で積層してなる2層構成とし、第1密着層321を設けなかった(表3においては、「有無」を、「なし」、「あり」、「あり」と記載した)。そして、比較例3では、絶縁層322をSiO(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、比較例3では、第1密着層321を設けない以外は、実施例2と共通の構造を採用した。比較例3の場合、得られた絶縁層322および第2密着層323は、ともに非晶質化していた。
【0257】
[比較例4]
比較例4では、電流阻害層32を、絶縁層322および第2密着層323をこの順で積層してなる2層構成とし、第1密着層321を設けなかった(表3においては、「有無」を、「なし」、「あり」、「あり」と記載した)。そして、比較例4では、絶縁層322をSiN(厚さ120nm)とし、第2密着層323をITO(厚さ20nm)とした。すなわち、比較例4では、第1密着層321を設けない以外は、実施例4と共通の構造を採用した。比較例4の場合、得られた絶縁層322および第2密着層323は、ともに非晶質化していた。
【0258】
<評価>
次に、このようにして得られた、実施例1〜5および比較例1〜4の各半導体発光素子2に対し、「ボールシェアテスト」と、「発光出力試験」とによる評価を行った。
【0259】
[ボールシェアテスト]
まず、「ボールシェアテスト」について説明を行う。
このボールシェアテストは、IEC−60749−22等で規格化された「ワイヤプルテスト」に準拠するものである。この試験では、まず、各半導体発光素子2の負電極部30のうち、電流供給層31に設けられた外部接続電極313に対し、Auからなるボールを、熱および超音波を用いて接合させる。そして、外部接続電極313に接合させたAuからなるボールに対し、測定装置(ここでは、XYZTEC社製のCondor70)に設けられたツールを用いて、n型コンタクト層11の面方向(例えばX方向やY方向)に沿って押し付けた。このとき、発光素子層10(n型コンタクト層11)と負電極部30との間および負電極部30の内部で、剥がれ(分離)が生じないものを「合格」と評価した。なお、このボールシェアテストでは、各実施例1〜5および各比較例1〜4において、それぞれ100個の半導体発光素子2を評価の対象とした。
【0260】
表4は、ボールシェアテストに関する、実施例1〜5および比較例1〜4の評価結果を示している。より具体的に説明すると、表4は、各実施例および比較例と、それぞれにおける半導体発光素子2の試験個数と、ボールシェアテストで負電極部30に剥がれが生じた半導体発光素子2の個数(剥がれ発生個数)と、それぞれにおける合格率(=(1−(剥がれ発生個数/試験個数)×100%)との関係を示している。
【0261】
【表4】
【0262】
表4より、電流阻害層32を3層構成とした実施例1〜5では、電流阻害層32を単層構成または2層構成とした(3層構成としない)比較例2〜4と比べて、合格率が高い(実施例1〜5は合格率が100%である)ことがわかる。また、特に、電流阻害層32を絶縁層322のみで構成し、第1密着層321および第2密着層323の両者を設けない比較例2では、合格率がわずか3%となってしまった。ただし、電流阻害層32(絶縁層322)を設けない構成とした比較例1においても、合格率は100%であった。
【0263】
図27は、合格率が最も低かった、比較例2の半導体発光素子2における、ボールシェアテスト後の負電極部30の状態を示す光学顕微鏡写真である。ここで、図27(a)は、負電極部30のうち、一方の外部接続電極313およびその周辺を撮影したものであり、図27(b)は、一方の外部接続電極313の剥がれた跡およびその周辺を拡大したものである。
【0264】
図27(a)から、ボールシェアテストに伴い、一方の外部接続電極313とこれに隣接する2つの第2電極312とが、一体化した状態でn型コンタクト層11から剥がれていることわかる。ここで、図27(a)、(b)において、相対的に黒っぽくなっている部位は、n型コンタクト層11のうち、粗面化処理が施された領域が露出していることに起因するものと考えられる。また、図27(a)、(b)において、一方の外部接続電極313とこれに隣接する2つの第2電極312とが剥がれた部位は、相対的に白っぽくなっている。これは、剥がれが生じたことにより、n型コンタクト層11のうち、粗面化処理が施されていない領域が露出したことに起因するものと考えられる。
【0265】
[発光出力試験]
次に、「発光出力試験」について説明を行う。
この発光出力試験では、各実施例および各比較例の半導体発光素子2に対し、正電極部20および負電極部30を介して一定の電流(ここでは1A)を供給し、そのときに発光素子層10(より具体的にはn型コンタクト層11)から出力される光量を測定した。そして、各実施例および各比較例の中で、光量が最も少なかった比較例1の光量を用いて、実施例1〜5および実施例2〜4の光量を規格化した。
【0266】
図28は、各実施例および各比較例にかかる半導体発光素子2の取出光量を示す図である。ここで、図28において縦軸に示す取出光量は、上述した手順によって規格化された値であり、比較例1を基準とした相対値となっている。
【0267】
図28より、電流阻害層32を3層構成とした実施例1〜5では、電流阻害層32(絶縁層322)を設けない構成とした比較例1と比べて、取出光量が多くなる(比較例1の7.0%〜8.7%増しである)ことがわかる。ただし、電流阻害層32を単層構成または2層構成とした(3層構成としない)比較例2〜4も、上記比較例1と比べて、取出光量が多くなる(比較例1の7.6%〜8.1%増しである)こともわかる。
【0268】
[総合評価]
そして、ボールシェアテストおよび発光出力試験の結果から、次のことがいえる。
電流阻害層32を、第1密着層321、絶縁層322および第2密着層323の3層構成とした実施例1〜5では、ボールシェアテストおよび発光出力試験の両者に関し、良好な評価が得られた。
一方、絶縁層322を含む電流阻害層32を設けない構成とした比較例1では、ボールシェアテストについては良好な評価が得られたものの、発光出力試験については良好な評価が得られなかった。
他方、電流阻害層32を、絶縁層322を含む単層構成または2層構成とした実施例2〜4では、上記比較例1とは逆に、発光出力試験については良好な評価が得られたものの、ボールシェアテストについては良好な評価が得られなかった。
以上の結果から、負電極部30において、n型コンタクト層11と絶縁層322との間に第1密着層321を配置し、且つ、絶縁層322と電流供給層31(この例では、2個の外部接続電極313と3個の第2電極312との連結体)との間に第2密着層323を配置すること、の優位性がわかる。
【符号の説明】
【0269】
1…半導体層形成基板、1a…成長基板、2…半導体発光素子、3…分離溝、10…発光素子層、11…n型コンタクト層、12…第1発光層、13…トンネル接合層、14…第2発光層、15…p型コンタクト層、20…正電極部、21…p電極層、22…反射層、23…拡散防止層、24…接合層、25…内部電極層、26…支持基板、27…外部電極層、30…負電極部、31…電流供給層、31a…第1導体層、31b…第2導体層、311…第1電極、312…第2電極、313…外部接続電極、314…内部接続電極、321…第1密着層、322…絶縁層、323…第2密着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28