【解決手段】使用者の少なくとも何れか一方の手Hにより保持される消火剤放出器具1であって、内部に消火剤Fが収容された容器部11と、消火剤Fを外部に放出するスプレー部12と、を備え、容器部11は、容器部本体11aと、容器部本体11aの上方に向かって開口し、スプレー部12が着脱可能に取り付けられる開口部11bと、を有し、容器部本体11aは、袋体である。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭やオフィス、工場等で火災が発生した場合に、人が持ち運んで初期火災を消火するための道具として、例えば、粉末等を放出する消火器が用いられてきた。
【0003】
しかし、粉末消火器や泡消火器は、短時間の使用であっても、大量の消火剤が放出されるため、出火箇所のみならず、その周囲が広範囲に汚損される。そのため、小火を消す目的に対して被る損害が大きくなってしまう。
また、粉末消火器や泡消火器は、消火剤の放出時において使用者が受ける反動が大きく、高齢者や幼児には扱いが難しい、という問題もあった。
【0004】
このような問題点を解決するために、小火を消す目的のため、より簡易に構成された、消火器具が、種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、トリガー式スプレーヤーと、内部に消火剤が収容され、ポリプロピレン等のプラスチックで構成された容器本体と、を備えた、消火器具が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ノズルやフレーム、固定ホルダ、ガスボンベ等により構成されたスプレー部と、清涼飲料水等の空きプラスチック容器により構成された容器と、を備えた、消火器具が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の消火器具は、消火剤を収容する容器が定形であるから、不使用時において、使用時の形態よりもコンパクトな形態として保管しておくことが困難である。
【0009】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、不使用時においてコンパクトな形態として保管しておくことができ、使い勝手を向上させた消火剤放出器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、使用者の少なくとも何れか一方の手により保持される消火剤放出器具であって、
内部に消火剤が収容された容器部と、前記消火剤を外部に放出するスプレー部と、を備え、
前記容器部は、容器部本体と、前記容器部本体の上方に向かって開口し、前記スプレー部が着脱可能に取り付けられる開口部と、を有し、
前記容器部本体は、袋体である。
【0011】
本発明によれば、容器部本体が袋体であることで、使用者は、本消火剤放出器具の不使用時には、容器部本体の容積を減少させ、コンパクトな形態として保管しておくことが可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記消火剤は、粉体である。
【0013】
このような構成とすることで、使用者は、本消火剤放出器具の不使用時には、丸める又は折り畳むといった方法で、容器部本体全体の形状をコンパクトにし、保管しておくことが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記消火剤は、ゲル化剤を含む。
【0015】
このような構成とすることで、本消火剤放出器具の消火能力が向上する。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記容器部に取り付けられる持ち手部を備え、前記持ち手部は、前記容器部の上方に向かって突出し、前記手が挿通される輪状体を有する。
【0017】
このような構成とすることで、容器部本体の重量が大きい場合であっても、輪状体に手を挿通させることで、容器部本体を手に吊り下げた態様とし、片手でスプレー部を操作することが可能なる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記持ち手部は、前記容器部に対して着脱可能に取り付けられる。
【0019】
このような構成とすることで、容器部本体の大きさや重量等に合わせて、適宜持ち手部の使用の有無を変更することができ、本消火剤放出器具の使い勝手が向上する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記持ち手部は、柔軟性を有する素材により構成される。
【0021】
このような構成とすることで、本消火剤放出器具を、持ち手部を含めてコンパクトな形態として保管しておくことが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記輪状体の開口方向は、前記放出方向と略同一である。
【0023】
このような構成とすることで、本消火剤放出器具の操作性が向上する。
即ち、使用者は、自身の手を輪状体に挿通した後、輪状体を捻ることなく、スムーズにスプレー部を把持することが可能となる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記持ち手部は、輪状の帯状体に対して、その長手方向に切り込みを設けることにより構成される。
【0025】
このような構成とすることで、本消火剤放出器具を、容器部の底面と持ち手部の内周面とを当接させた態様で使用することが可能となる。また、本消火剤放出器具を、切り込みからスプレー部を突出させた態様で使用することが可能となる。
このような態様によれば、容器部が持ち手部によって、安定的に支持される。また、このような態様によれば、輪状体が、スプレー部の操作の邪魔となることがなく、使い勝手が向上する。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記容器部は、その上方に向かって突出する吊り下げ部を有する。
【0027】
このような構成とすることで、容器部を、場所を取らずに保管しておくことが可能となる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記容器部は、前記吊り下げ部を介して、内部に水が収容された容器に吊り下げられる。
【0029】
このような構成とすることで、使用者は、火災が発生した際に、迅速に容器部の内部に水を注ぎこみ、本消火剤放出器具を用いた消火作業を行うことが可能となる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記消火剤には、蛍光剤が含まれる。
【0031】
このような構成とすることで、使用者は、消火剤を任意の箇所に吹き付けて、この消火剤を道標等の目印として表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、不使用時においてコンパクトな形態として保管しておくことができ、使い勝手を向上させた消火剤放出器具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、
図1〜
図7を用いて、本発明の実施形態に係る消火剤放出器具について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号1は、本実施形態に係る消火剤放出器具を示す。
【0035】
図1に示すように、消火剤放出器具1は、内部に消火剤Fが収容された容器部11と、消火剤Fを外部に放出するスプレー部12と、を備えている。
なお、
図1では、容器部11の内部を透過し、消火剤Fを示している。
【0036】
容器部11は、容器部本体11aと、容器部本体11aの上方に向かって開口し、スプレー部12が着脱可能に取り付けられる開口部11bと、を有している。
【0037】
容器部本体11aは、袋体である。
詳述すれば、容器部本体11aは、略長方形のパウチ状に形成され、その一表面に任意の文字情報や図等を記載可能な広告表示部Cが設けられている。
なお、容器部本体11aの素材は、アルミニウムや、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が好適に用いられるが、柔軟性を有していれば、特に限定されない。
【0038】
スプレー部12は、内部に液体放出用ポンプ(図示せず)が設けられたスプレー部本体12aと、液体放出用ポンプを駆動させるトリガー部12bと、容器部11の内部に挿入される吸い上げ管12cと、開口部11bと連結する連結部12dと、ノズル部12eと、を有している。
【0039】
消火剤Fは、粉末状であり、ゲル化剤を含んでいる。このような消火剤Fは、水を加えることで、100倍以上の体積の消火液となる。
なお、消火剤Fは、水をゲル化する作用を有するものであって、水の消火機能を損なわないものであれば、特段の制限なく用いることができる。また、消火剤Fには、ゲル化剤が含まれなくても良い。また、消火剤Fに、重曹や硫酸アンモニウム等の粉末を付加することで、消火能力を向上させることが好ましい。
【0040】
この他にも、消火剤Fを濃縮された発泡液体とし、スプレー部12から泡が噴霧されるような構成としても良い。
これにより、消火剤Fを壁面等に張り付かせることができ、ゲル化剤を含んでいなくとも、高い消火能力が得られる。
【0041】
ゲル化剤としては、塊を形成する粘弾性を有するもの、水温にかかわらず10分以内、好ましくは5分以内にゲル化するものが好適に用いられる。
このような素材としては、例えば、寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム等の天然のゲル化剤の他、高分子吸収材料が挙げられる。
また、高分子吸収材料としては、デンプン系、セルロース系、多糖類、ポリビニル系、アクリル酸系等が好適に用いられる。
中でも、動物が残渣を食べても無害な食用ゲル化剤を用いることで、自然環境に無害な消火剤Fとすることができる。
【0042】
図2に示すように、容器部11とスプレー部12とは、不使用時において、容器部11を長辺方向に丸めて筒状にし、丸めた状態の容器部11の中心から軸方向に沿って、吸い上げ管12cを挿通させた態様とすることができる。
また、開口部11bには、蓋部Lを取り付けておくことが好ましい。
【0043】
容器部11とスプレー部12とは、
図2に示す態様で、防災用品として家庭や会社等各施設での保管や、店舗での販売、ノベルティとしての配布等が行われ得る。
そして、容器部11とスプレー部12とは、簡易な構成で、組み立てが容易であることから、誰でも手軽に扱え、即座に消火器具として用いることができる。
【0044】
以下、
図3〜
図5を用いて、消火剤放出器具1の使用方法について説明する。
【0045】
まず、使用者は、
図3に示すように、容器部11とスプレー部12とを組み立てる。
即ち、使用者は、容器部11から蓋部Lを取外し、容器部11の内部に水を注ぎ込むことで、消火剤Fをゲル状とする。そして、使用者は、容器部11の内部に、吸い上げ管12cを挿通させ、開口部11bと連結部12dとを螺合させることで、容器部11とスプレー部12とを連結させる。
容器部11には、予めマチが設けられているため、内部に水が注ぎ込まれることで底面が形成され、自立可能となる。
なお、
図3において、容器部11の内部の吸い上げ管12cは、点線で示している。
【0046】
ここで、消火剤放出器具1は、容器部11に取り付けられる持ち手部13を備えている。
持ち手部13は、輪状の帯状体に対して、その長手方向に切り込みnを設けることにより構成されている。
また、持ち手部13は、柔軟性を有する素材により構成されている。
なお、持ち手部13の素材は、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が好適に用いられるが、柔軟性を有していれば、特に限定されない。
【0047】
次に、使用者は、持ち手部13を容器部11に取り付ける。
即ち、使用者は、容器部11の底面を持ち手部13の内周面に当接させ、スプレー部12を切り込みnの間に挿通させる。
【0048】
このようにすることで、
図4に示すように、容器部11の上方に向かって突出し、手H(
図5参照)が挿通される、2つの輪状体13aが形成される。
2つの輪状体13aは、消火剤Fの放出方向d(
図5参照)に間隔をおいて形成され、その開口方向は、放出方向dと略同一である。
【0049】
次に、使用者は、
図5に示すように、少なくとも何れか一方の手H(本実施形態では右手)で、消火剤放出器具1を保持する。
即ち、使用者は、手Hを放出方向dに向かって2つの輪状体13aに挿通させた状態で、スプレー部12を把持し、トリガー部12bにより消火作業を行う。
これにより、2つの輪状体13aの内周面が、手Hの側面に当接する。
【0050】
本実施形態によれば、容器部本体11aが袋体であることで、使用者は、消火剤放出器具1の不使用時には、容器部本体11aの容積を減少させ、コンパクトな形態として保管しておくことが可能となる。
【0051】
また、消火剤Fが粉体であることで、使用者は、消火剤放出器具1の不使用時には、丸める又は折り畳むといった方法で、容器部本体11a全体の形状をコンパクトにし、保管しておくことが可能となる。
【0052】
また、消火剤Fにゲル化剤が含まれることで、消火剤放出器具1の消火能力が向上する。さらに、火災が発生した際、このような消火剤Fを、発生源の周囲に放出しておくことで、消火剤Fが、発生源の周囲に長時間付着し続け、広範囲への延焼を防ぐことが可能となる。さらに、狭い箇所にも、確実にピンポイントで、消火剤Fを放出することが可能となる。
【0053】
また、持ち手部13が容器部11の上方に向かって突出し、手Hが挿通される輪状体13aを有することで、容器部本体11aの重量が大きい場合であっても、輪状体13aに手Hを挿通させることで、容器部本体11aを手に吊り下げた態様とし、片手でスプレー部12を操作することが可能となる。
【0054】
また、持ち手部13が容器部11に対して着脱可能に取り付けられることで、容器部本体11aの大きさや重量等に合わせて、適宜持ち手部13の使用の有無を変更することができ、消火剤放出器具1の使い勝手が向上する。
【0055】
また、持ち手部13が柔軟性を有する素材により構成されることで、消火剤放出器具1を、持ち手部13を含めてコンパクトな形態として保管しておくことが可能となる。
【0056】
また、輪状体13aの開口方向が放出方向dと略同一であることで、消火剤放出器具1の操作性が向上する。
即ち、使用者は、自身の手を輪状体13aに挿通した後、輪状体13aを捻ることなく、スムーズにスプレー部12を把持することが可能となる。
【0057】
また、持ち手部13が、輪状の帯状体に対して、その長手方向に切り込みを設けることにより構成されることで、消火剤放出器具1を、容器部11の底面と持ち手部13の内周面とを当接させた態様で使用することが可能となる。また、消火剤放出器具1を、切り込みnからスプレー部12を突出させた態様で使用することが可能となる。
このような態様によれば、容器部11が持ち手部13によって、安定的に支持される。また、このような態様によれば、輪状体13aが、スプレー部12の操作の邪魔となることがなく、使い勝手が向上する。
【0058】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、
図6に示すように、容器部11は、その上方に向かって突出する吊り下げ部11cを有していても良い。
吊り下げ部11cは、例えば、折り曲げ可能な平面体として構成され、その上部に貫通孔Pが設けられている。
なお、吊り下げ部11cは、広告表示部Cとして機能させることもできる。
【0060】
このように、容器部11が、その上方に向かって突出する吊り下げ部11cを有することで、容器部11を、場所を取らずに保管しておくことが可能となる。
そして、広告表示部Cに、例えば、消火器のマークや炎のマーク等を表示しておくことで、誰でも即座に、容器部11が消火を行うための器具であることを認識可能な態様としておくことができる。
【0061】
また、
図6に示すように、容器部11は、吊り下げ部11cを介して、内部に水Wが収容された容器B(本実施形態ではペットボトル)に吊り下げられることが好ましい。
なお、この場合、
図6に示すように、容器部11は、
図1〜
図5に示すようなパウチ状である必要はなく、内部に消火剤Fが含まれていれば、その態様については、特に限定されない。
【0062】
さらに、この場合、
図7に示すように、容器部11の開口部11aに、スプレー部12が取り付けられていることが好ましい。そして、スプレー部12の連結部12dは、容器Bの開口部にも取り付け可能なものとしておく。
なお、この場合、スプレー部12の吸い上げ管12cは、適宜丸めて、容器部11の内部に収容される。
【0063】
このようにすることで、火災が発生した際、使用者は、容器部11からスプレー部12を取り外し、容器Bからキャップ部bを取り外す。そして、使用者は、容器部11内部の消火剤Fを容器Bの内部に注ぎ込み、容器Bの開口部にスプレー部12を取り付ける。
これにより、使用者は、容器Bとスプレー部12とを用いて、迅速に消火作業を行うことが可能となる。
【0064】
さらに、消火剤Fには、蛍光剤を含めることができる。
【0065】
このように、消火剤Fに蛍光剤が含まれることで、使用者は、消火剤Fを任意の箇所に吹き付けて、この消火剤Fを道標等の目印として表示することが可能となる。
【0066】
なお、消火剤放出器具1は、火災が発生した場合の他、焚き火やバーベキュー後の消火等、アウトドア用品としても、好適に用いることができる。