特開2021-35280(P2021-35280A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000010
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000011
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000012
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000013
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000014
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000015
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000016
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000017
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000018
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000019
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000020
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000021
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000022
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000023
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000024
  • 特開2021035280-診断装置および電動アクチュエータ 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-35280(P2021-35280A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】診断装置および電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/64 20160101AFI20210201BHJP
【FI】
   H02P29/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-156397(P2019-156397)
(22)【出願日】2019年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】成田 浩昭
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA30
5H501DD08
5H501GG02
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ30
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL35
5H501LL36
5H501LL39
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】モータの状態の診断を可能とする診断装置およびこの診断装置を備えた電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】診断装置(70)は、モータ(10)の巻線(U,V,W)の温度を測定する測定回路(71)と、前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値に基づいて前記モータの状態を診断する診断回路(72)とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの巻線の温度を測定する測定回路と、
前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値に基づいて前記モータの状態を診断する診断回路と
を備える、診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された診断装置において、
前記診断回路は、
前記巻線の温度の測定値が所定の範囲内にあるときは、前記モータは第1の状態にあると判断し、前記巻線の電気的特性の測定値が所定の範囲内にないときは、前記モータは第2の状態にあると判断する、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された診断装置において、
前記測定回路は、
前記巻線に流れる電流と、前記巻線に印加される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記巻線の温度を算出する演算装置を有する、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載された診断装置において、
前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値を出力データとして外部に出力する出力回路をさらに備える、
診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載された診断装置において、
前記出力回路は、
前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値の時系列データを出力データとして外部に出力する、
診断装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載された診断装置において、
無線通信により前記出力データを入出力することを可能にする無線通信インターフェース回路をさらに含む、
診断装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載された診断装置において、
前記出力データをネットワークを介して入出力するネットワーク・インターフェース回路をさらに含む、
診断装置。
【請求項8】
複数の巻線を備えたモータと、
前記複数の巻線のうち選択された巻線に電流を供給する駆動回路と、
前記モータの回転に応じて変位する出力機構と、
前記複数の巻線のうち電流を供給する巻線を選択して前記駆動回路を制御する制御回路と、
前記モータの診断を行う診断装置と
を備え、
前記診断装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載された診断装置である、
電動アクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記診断装置は、
前記モータの前記複数の巻線のうち任意の巻線に電流が流れるように前記制御回路を介して前記駆動回路を制御する、
電動アクチュエータ。
【請求項10】
請求項8または9に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記モータは、永久磁石を備えたロータと、前記ロータの磁極と対向する位置に配設された前記複数の巻線とを有するブラシレス直流モータである、
電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置および電動アクチュエータに関し、特にモータまたはモータを備えた電動アクチュエータの診断装置およびその診断装置を備えた電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動アクチュエータは、駆動装置となるモータの回転に応じて、出力機構を機械的に変位させる装置であり、様々な分野で利用されている。例えば、特許文献1には、ボール弁等のロータリ式の調節弁の弁軸を操作する電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータでは、バルブの弁体に連結された回転軸にモータの回転をギアその他の伝達機構を介して伝達して、この回転軸を回動させるとともに、回転軸の回転方向の機械的変位、すなわち回転角を、可変抵抗器から成るポテンショメータなどの位置センサによって検出し、その検出結果に基づいて回転軸の操作量を決定している。
【0003】
また、特許文献2には、モータを用いたアクチュエータにおいて、モータの巻線の温度推定し、推定した温度が閾値を超えると電流を遮断して、モータの発熱を回避するモータ温度保護の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−74935号公報
【特許文献2】特開平6−153381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動アクチュエータは、定期的に点検および保守が行われるとしても、実際に不具合が生じたときには、作業員が現場に赴き、しばしばその不具合の原因を特定する作業から始めなければならず、その負担は小さくない。また、原因の特定や修理のために、電動アクチュエータのみならず、その電動アクチュエータを含むシステム全体の使用を臨時に中止しなければならないこともある。このようなシステムの使用中止を回避するとともに、点検・修理の負担を軽減することは、人手不足の問題を抱える中で、緊急の課題ともいえる。このような課題を解決する手段として、電動アクチュエータの故障診断を不具合が発生する前から適宜行うことが有効であると考えられる。
【0006】
しかしながら、従来の電動アクチュエータにおいて、モータ等の故障診断を行っているものはない。そのため、使用中の電動アクチュエータに実際に不具合が生じた場合には、その対応に手間がかかっていた。
【0007】
そこで、本発明は、電動アクチュエータにおいてモータの状態の診断を可能とする診断装置およびこの診断装置を備えた電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明に係る診断装置は、モータ(10)の巻線(U,V,W)の温度を測定する測定回路(71)と、前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値に基づいて前記モータの状態を診断する診断回路(72)とを備える。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る診断装置において、前記診断回路(72)は、前記巻線の温度の測定値が所定の範囲内にあるときは、前記モータは第1の状態にあると判断し、前記巻線の電気的特性の測定値が所定の範囲内にないときは、前記モータは第2の状態にあると判断する。
【0010】
また、本発明の一実施の形態に係る診断装置において、前記測定回路(71)は、前記巻線に流れる電流と、前記巻線に印加される電圧と、前記モータの回転を表す量とに基づいて前記巻線の温度を算出する演算装置(701)を有する。
【0011】
また、本発明の一実施の形態に係る診断装置は、前記測定回路によって測定された前記巻線の温度の測定値を出力データとして外部に出力する出力回路(75、76)をさらに備える。
【0012】
また、本発明の一実施の形態に係る診断装置において、前記出力回路(75、76)は、前記測定回路(71)によって測定された前記巻線の温度の測定値の時系列データを出力データとして外部に出力する。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係る診断装置は、無線通信により前記出力データを入出力することを可能にする無線通信インターフェース回路(75)をさらに含む。
【0014】
また、本発明の一実施の形態に係る診断装置は、前記出力データをネットワークを介して入出力するネットワーク・インターフェース回路(76)をさらに含む。
【0015】
また、本発明に係る電動アクチュエータは、複数の巻線を備えたモータ(10)と、前記複数の巻線のうち選択された巻線に電流を供給する駆動回路(60)と、前記モータの回転に応じて変位する出力機構(30)と、前記複数の巻線のうち電流を供給する巻線を選択して前記駆動回路を制御する制御回路(50)と、前記モータの診断を行う診断装置(70)とを備え、前記診断装置は、上述したいずれかの診断装置である。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータにおいて、前記診断装置(70)は、前記モータの前記複数の巻線のうち任意の巻線に電流が流れるように前記制御回路を介して前記駆動回路を制御する。
【0017】
また、本発明の一実施の形態に係る電動アクチュエータにおいて、前記モータ(10)は、永久磁石(11m)を備えたロータ(11)と、前記ロータの磁極と対向する位置に配設された前記複数の巻線(U,V,W)とを有するブラシレス直流モータである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電動アクチュエータにおいてモータの状態の診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータおよびその駆動回路の構成例を示す図である。
図3A図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータの動作とホールセンサの関係を示す図である。
図3B図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるホールセンサの出力の例を説明する図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータの動作とホールセンサの出力との関係を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの診断装置のハードウェア構成を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの診断の手順を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、巻線を流れる電流と本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータの診断装置おけるしきい値との関係を説明するための図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電動アクチュエータの診断における巻線抵抗の第1の測定方法を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電動アクチュエータの診断における巻線抵抗の第2の測定方法を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電動アクチュエータの診断における巻線抵抗の第3の測定方法を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータにおけるモータおよびその駆動回路の他の構成例を示す図である。
図12図12は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電動アクチュエータの診断における巻線抵抗の第4の測定方法を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、本発明の第2の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
図14図14は、端末装置のハードウェア構成を示す図である。
図15図15は、本発明の第3の実施の形態に係る電動アクチュエータおよび診断装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るモータの診断装置および電動アクチュエータの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る電動アクチュエータは、モータの巻線温度をモニターして故障診断を行う機能を備えている。
【0022】
[電動アクチュエータの構成]
図1に示すように、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100は、モータ10と、モータ10の回転を伝達する伝達機構となる減速機20と、減速機20を介して伝達されるモータ10の回転に応じて軸線周りに回動する回転軸30と、モータ10の回転を制御する制御回路50と、制御回路50からの制御信号に基づいてモータ10を回転させる駆動回路60と、モータ10の診断を行う診断装置70とを備えている。このうち、モータ10と、減速機20と、回転軸30の一部と、角度センサ40と、制御回路50と、駆動回路60は、筐体80の中に収容されている。また、後述する診断の結果を含め、各種情報を表示する表示装置90が設けられている。表示装置90としては、例えば、液晶表示装置(LCD)等を用いることができる。
【0023】
上述した構成要素のうち、モータ10は、本実施の形態においては、三相のブラシレス直流モータである。図2に駆動回路60とモータ10との構成例を示し、図3Aにモータ10の構成例を示す。モータ10は、モータ軸に直交する方向に分極した永久磁石11mを有するロータ11と、このロータ11が軸線周りに回転する過程で永久磁石11mの磁極と対向するように配置され、スター結線された3つの巻線U、V、Wとからなる。なお、図3Aにおいてロータ11の軸受等の構成要素は省略されている。
【0024】
また、図3Aに示すように、モータ10には、3つのホールセンサHU、HV、HWが、モータ軸を中心に互いに120°間隔をあけて設けられている。例えば、図3Aは、ロータ11の永久磁石11mによる磁界がV相のホールセンサHVの方向を向いている。このときの各ホールセンサから出力される信号は、図3Bに示すように、V相のホールセンサHVの信号が「H」レベルを示すのに対し、他の2相、すなわちU相とW相のホールセンサHU、HWの信号は、いずれも「L」レベルとなる。これらホールセンサHU、HV、HWの信号はロータ11の回転にともなって変化することから、モータ10の回転を検出するセンサとして機能する。
【0025】
一方、駆動回路60は、図2に示すように、巻線U、V、Wの各相に対応して並列に設けられた3対のMOSFET Quu、Qul;Qvu、Qvl;Qwu、Qwlを備えている。各対のMOSFETは、互いに直列に接続され、制御回路50がこれらのMOSFETを適宜オン/オフすることによって、モータ10の3つの巻線U,V,Wのうち通電する相、すなわち巻線と、その電流の方向、すなわちその巻線によって生じる磁界の方向を切り替えることができる。
【0026】
制御回路50は、ホールセンサHU、HV、HWから出力される信号に応じて、駆動回路60の上記のMOSFETのオン/オフを切り替えて、図4に示すように、通電する相とその通電する方向を切り替え、6つの通電パターンを順次切り替えていくことによって回転磁界を生成して、モータ10を回転させることができる。
【0027】
また、制御回路50は、モータ10の巻線U,V,Wの通電状態、すなわち、MOSFET Quu,Qul,Qvu,Qvl,Qwu,Qwlのオン/オフ状態を示す信号Sや、モータ10の角速度ωを、後述する診断装置70に出力する。モータ10の角速度ωは、制御回路50が、ホールセンサHU、HV、HWから出力される信号に基づいて算出することができる。
【0028】
ここで、モータ10の巻線U,V,Wの通電状態とは、3つの巻線U,V,Wのうち通電している2つの巻線の組み合わせを指し、例えば、図4に示すような「状態A」、「状態B」、「状態C」がここでいう「通電状態」に該当する。
なお、三相のブラシレス直流モータの場合、電流の方向も考慮すると、6通りの通電状態を特定することもできるが、巻線温度を求める目的からすれば、電流の方向を考慮せずに、図4に示すような「状態A」、「状態B」、「状態C」の3通りを特定できれば必要かつ十分である。
【0029】
また、制御回路50は、目標角度θspと角度センサ40によって検出される回転軸30の回転角度θptとの偏差に応じて操作量を決定し、駆動回路60を動作させることによってモータ10の回転を制御する。より具体的には、制御回路50は、目標角度θspと角度センサ40によって検出される回転軸30の回転角度θptとの偏差に応じて操作量OAを決定し、駆動回路60にこの操作量OAに応じた駆動信号Dを与える。例えば、一般的な比例制御(P制御)の場合は、OA=α(θsp−θpt)(ただし、αは比例定数)よって算出される。制御回路50は、このようにして求められた操作量OAとモータ10の状態を表すホールセンサHU、HV、HWの信号とに基づいて、図2に示すような駆動回路60のMOSFETをオン/オフさせる駆動信号Dを生成して出力する。
【0030】
なお、上述した比例制御は、モータ10または回転軸30の回転角度の制御の一例にすぎず、本発明においては、例えば、PD制御、PID制御の他、ニューラルネットワークモデルその他のモデルを用いたモデル制御など、どのような制御手法を用いていてもよい。
【0031】
減速機20は、互いに組み合わされた複数のギアから構成されるが、チェーンやベルトを組み合わせた機構であってもよい。
【0032】
回転軸30は、剛性の高い金属等から形成された棒状の部材であり、一端が減速機20の出力端に連結されるとともに、筐体80にその軸線周りに回動可能に支持される。図示はしないが、回転軸30の他端は、バルブの弁体その他、操作対象要素に連結される。
【0033】
角度センサ40は、回転軸30の回転方向の機械的変位、すなわち回転角度を検出するセンサである。このような角度センサ40は、回転軸30の、任意の基準位置からの絶対的な回転角度を検出するアブソリュートセンサであることが望ましい。この角度センサ40として、例えば、可変抵抗器から成るポテンショメータを用いることができる。
【0034】
[診断装置の構成]
診断装置70は、図1に示すように、モータ10の巻線の温度を測定する測定回路71と、測定回路71によって測定されたモータ10の巻線の温度に基づいて、モータ10の状態を診断する診断回路72とを備えている。また、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100の診断装置70においては、診断回路72による診断結果のほか、測定回路71によって測定されたモータ10の巻線の温度を出力データとして外部に出力する出力回路73をさらに備えている。
【0035】
上述した診断装置70のハードウェア構成の例を図5に示す。診断装置70は、バス704を介して互いに通信可能に接続された演算装置701、メモリ702、I/F回路703を含むコンピュータと、このコンピュータにインストールされたコンピュータプログラムとから構成することができる。この場合、コンピュータを構成する各種ハードウェア資源がコンピュータプログラムにしたがって協働することにより、このコンピュータが後述する測定回路71、診断回路72、出力回路73の機能を実現する。
【0036】
[測定回路による巻線の温度の測定と診断回路によるモータの診断の概要]
次に、測定回路71による巻線の抵抗の測定と、それに続く診断回路72によるモータの診断について図2図4および図6を参照して説明する。
【0037】
巻線の温度は、モータに設けられた温度センサによって測定してもよいが、本実施の形態においては、巻線の抵抗値が巻線温度によって変化することを利用して、巻線の抵抗値から巻線温度を算出する形態について説明する。
前提として、工場出荷時におけるモータ10の3つの巻線U、V、Wの基準巻線抵抗値Ruref,Rvref,Rwrefと、これらの抵抗値を測定したときの巻線U、V、Wの基準温度tref [℃]は既知であるとする。
【0038】
[測定回路による巻線の温度の測定(概要)]
本実施の形態において、診断装置70、より具体的には測定回路71は、図1に示すように、制御回路50から入力される、駆動回路60のMOSFETのオン/オフ状態を示す信号Sや、モータ10の角速度ωに関する情報と、駆動回路60から入力される電流および電圧に関する情報とに基づいて、各巻線の抵抗値を測定するものとする。しかしながら、他の形態として、測定回路71が、モータ10の3つの巻線U、V,Wのうち任意の2つ巻線に電流が流れるように制御回路50を介して駆動回路60を制御するようにしてもよい。
【0039】
図6に示すように、測定回路71は、まず、モータ10の巻線U,V,Wの通電状態、すなわち、MOSFET Quu、Qul;Qvu、Qvl;Qwu、Qwlのオン/オフ状態を示す信号Sと、駆動回路60を介してモータ10に印加される電圧Eaと、モータ10の巻線に流れる電流Iとから、モータ10のスター結線された巻線のうち直列に接続された2つの巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを測定する(ステップS01)。巻線の抵抗値Ruv,Rvw,Rwuの具体的な測定方法については後述する。
【0040】
巻線の抵抗値Ruv,Rvw,Rwuと、基準巻線抵抗値Ruref,Rvref,Rwrefと、基準温度tref とから、抵抗値Ruv,Rvw,Rwuを測定したときの基準温度tref からの巻線温度tuv,tvw,twuの偏差Δtを算出し(ステップS02)、抵抗値Ruv,Rvw,Rwuを測定したときの巻線温度tuv,tvw,twuを算出する(ステップS03)。
【0041】
具体的には、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、QuuとQvlとをオン状態とし、その他のMOSFETをすべてオフ状態とした場合(図4に示す「状態A」)については、次の式(1)および式(2)により巻線温度tuvを算出することができる。また、QvuとQwlをオン状態とし、その他のMOSFETを全てオフ状態した場合(同「状態B」)については、次の式(3)および式(4)により巻線温度tvwを算出することができる。また、QuuとQwlをオン状態とし、その他のMOSFETを全てオフ状態した場合(同「状態C」)については、次の式(5)および式(6)により、巻線温度twuを算出することができる。ただし、式(1)、式(3)、式(5)において、Kは定数であり、巻線が銅線の場合はK=234.5、アルミニウム電線の場合はK=225である。
【0042】
【数1】
【0043】
このようにして測定回路71によって測定されたモータ10の巻線温度tuv,tvw,twuは、測定回路71から診断回路72に送られる。
【0044】
[診断回路によるモータの診断]
診断回路72は、測定回路71によって測定された巻線温度tuv,tvw,twuがすべて所定の範囲内にあるときは、モータ10は第1の状態にあると判断し、巻線温度tuv,tvw,twuのうち少なくともいずれか1つが所定の範囲内にないときは、モータ10は第1の状態とは異なる第2の状態にあると判断する。例えば、巻線温度tuv,tvw,twuに基づいてモータ10の故障診断を行うときには、診断回路72は、巻線温度tuv,tvw,twuが所定範囲内にあるか否かを判断し(ステップS04)、巻線温度tuv,tvw,twuがすべて所定範囲内であれば(ステップS04:YES)、巻線温度tuv,tvw,twuは正常であるとし(ステップS05)、よって、モータ10は正常であると判断する。逆に、巻線温度tuv,tvw,twuのいずれかが所定範囲内になければ(ステップS04:NO)、異常であり(ステップS06)、したがって、モータ10は故障している可能性があると判断する。
【0045】
より具体的な例を挙げると、診断回路72は、所定のしきい値をメモリ702に記憶しておき、このしきい値と測定回路71が測定した巻線の抵抗値とを比較するように構成する。診断回路72は、測定回路71によって測定された巻線温度のすべてが、しきい値以下であれば、モータ10は正常な状態にあると診断する一方、巻線温度tuv,tvw,twuの少なくともいずれか1つが上記のしきい値を超えているときには、モータ10の状態は、異常な状態と診断する。
【0046】
この診断回路72による診断の結果は、出力回路73から外部に出力され、例えば、オペレータによる操作に応じて、表示装置90に表示される。特に、異常な状態と診断されたときには、メンテナンスを促すメッセージを表示装置90に表示するように構成してもよい。
【0047】
なお、上記のしきい値は、巻線を流れる電流の大きさに応じて変化させるようにしてもよい。例えば、モータの過負荷保護特性の観点より、しきい値と電流の大きさとが、図7に示すような逆相関、または反比例の関係とすることが考えられる。
【0048】
また、測定回路71によって測定した巻線温度の値をメモリ702に時系列データとして順次保存しておき、例えば、時間、特に通電時間の経過に伴う巻線温度の変化を監視対象としてしきい値を設定するようにしてもよい。
【0049】
[測定回路による巻線の抵抗値Ruv,Rvw,Rwuの測定方法]
ここで測定回路71による巻線の抵抗値Ruv,Rvw,Rwuの具体的な測定方法について説明する。
【0050】
[第1の測定方法:モータ10が回転している場合]
巻線抵抗の第1の測定方法は、モータ10が回転している場合に、定電圧Eaを印加し、各巻線の誘起起電力を考慮して巻線抵抗を算出する方法である。ただし、MOSFETのオン抵抗Rq、巻線U,V,WそれぞれのインダクタンスLu、Lv、Lw、および各巻線の誘起電圧定数KEu,KEv,KEwが既知であるとする。以下に図8を参照して説明する。
【0051】
まず、モータを回転させた状態とする(ステップS11)。
その上で、駆動回路60を構成するMOSFETのうち、例えば、QuuとQvlとをオン状態とし、その他のMOSFETをすべてオフ状態として(図4に示す「状態A」)、定電圧Ea を巻線UおよびVに印加し(ステップS12)、この状態で、モータ10が角速度ω1 で回転している時の、時間t0 のときの電流I0 と、時間t1 (>t0 )のときの電流I1 とを測定する(ステップS13)。このときの巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rvと角速度ω1 と電流との関係は、次の式(7)で表すことができる。
【0052】
【数2】
【0053】
また、駆動回路60のMOSFETのうち、QvuとQwlとをオン状態とし、その他のMOSFETをオフ状態として(「状態B」)として、定電圧Ea を巻線Vおよび巻線Wに印加し(ステップS14)、この状態でモータ10が角速度ω2で回転している時の、時間t2のときの電流I2、および、時間t3(>t2)のときの電流I3を測定する(ステップS15)。このときの巻線の抵抗値Rvw=Rv+Rwと角速度ω2 と電流との関係は、次の式(8)で表すことができる。
【0054】
【数3】
【0055】
また、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQwlとをオン状態とし、その他のMOSFETをオフ状態とした場合(「状態C」)として、定電圧Ea を巻線Wおよび巻線Uに印加し(ステップS16)、この状態でモータ10が角速度ω3 で回転している時の、時間t4のときの電流I4、および、時間t5(>t4)のときの電流I5を測定する(ステップS17)。このときの巻線の抵抗値Rwu=Rw+Ruと角速度ω3 と電流との関係は、次の式(9)で表すことができる。
【0056】
【数4】
【0057】
したがって、上記の式(7)、式(8)および式(9)に基づいて巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを算出する(ステップS18)。
このようにして算出した巻線の抵抗値から、上述した式(1)〜式(6)に従って巻線温度tuv,tvw,twuを算出することができる(図6のステップS02およびステップS03)。
【0058】
なお、この第1の算出方法においては、次のような簡略化が可能である。
(a)MOSFETのオン抵抗Rqは、巻線抵抗Ru、Rv、Rwと比較して、十分に小さいのでRq=0とすることにより、計算時間が短縮できる。
(b)巻線U,V,WそれぞれのインダクタンスLu、Lv、Lwを同値とすることによっても、計算時間が短縮できる。
(c)巻線U,V,Wにおける誘起電圧定数KEu、KEv、KEwを同値とすることによっても、計算時間が短縮できる。
(d)巻線抵抗Ru、Rv、Rwが同値とすれば、QuuとQvl、QvuとQwl、QuuとQwlのうちいずれかのみをオンさせた状態における1回の測定で巻線抵抗を算出することができ、計算時間を短縮することができる。
(e)また、上記(a)、(b)、(c)、(d)の簡略化手法を組み合わせることによって、計算時間の短縮を図ることができる。
【0059】
なお、本実施の形態に係る電動アクチュエータ100の駆動回路60については、MOSFETより構成される例に基づいて説明したが、MOSFETの他にトランジスタを用いてもよい。ただし、トランジスタを用いた場合は、トランジスタの飽和電圧をVce、その時に回路に流れた電流をIとすれば、上記のオン抵抗Rqは、次の式に置き換える。
【0060】
Rq =Vce/I
【0061】
[第2の測定方法:モータ10が静止している場合(その1)]
巻線抵抗の第2の測定方法は、モータ10を静止させた状態で、定電圧Ea を印加して抵抗値を算出する方法である。ただし、MOSFETのオン抵抗Rq、巻線U,V,WそれぞれのインダクタンスLu、Lv、Lwが既知であるとする。以下に図9を参照して説明する。
【0062】
まず、モータを静止させた状態として(ステップS21)、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQvlをオンにして定電圧Eを印加する一方、その他のMOSFETをオフとした状態(状態A)として(ステップS22)、時間t0のときの電流I0、および、時間t1(>t0)のときの電流I1を測定する(ステップS23)。このときの巻線の抵抗値と電流との関係は、式(10)で表すことができる。
【0063】
【数5】
【0064】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QvuとQwlをオンにして定電圧Ea を印加する一方、その他のMOSFETをオフとした状態(状態B)として(ステップS24)、時間t2のときの電流I2、および、時間t3(>t2)のときの電流I3を測定する(ステップS25)。このときの巻線の抵抗値と電流との関係は、次の式(11)となる。
【0065】
【数6】
【0066】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQwlをオンにして定電圧Ea を印加する一方、その他のMOSFETをオフとした状態(状態C)として(ステップS26)、時間t4のときの電流I4、および、時間t5(>t4)のときの電流I5を測定する(ステップS27)。このときの巻線の抵抗値と電流との関係は、式(12)となる。
【0067】
【数7】
【0068】
したがって、上記の式(10)、式(11)および式(12)に基づいて巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを算出する(ステップS28)。
このようにして算出した巻線の抵抗値から、上述した式(1)〜式(6)に従って巻線温度tuv,tvw,twuを算出することができる(図6のステップS02およびステップS03)。
【0069】
なお、この第2の算出方法においては、次のような簡略化が可能である。
(a)MOSFETのオン抵抗Rqは、巻線抵抗Ru、Rv、Rwと比較して、十分に小さいのでRq=0とすることにより、計算時間が短縮できる。
(b)巻線U,V,WそれぞれのインダクタンスLu、Lv、Lwを同値とすることによっても、計算時間が短縮できる。
(c)巻線抵抗Ru、Rv、Rwが同値とすれば、QuuとQvl、QvuとQwl、QuuとQwlのうちいずれかのみをオンさせた状態における1回の測定で巻線抵抗を算出することができ、計算時間を短縮することができる。
(d)また、上記(a)、(b)、(c)の簡略化手法を組み合わせることによって、計算時間の短縮を図ることができる。
【0070】
[第3の測定方法:モータ10が静止している場合(その2)]
巻線抵抗の第3の測定方法は、上述した第2の測定方法と同様に、モータ10を静止させた状態で定電圧Ea を印加して巻線抵抗の値を算出する方法であるが、巻線を流れる電流が定常状態にある点で第2の測定方法と異なる。第3の測定方法においても、MOSFETのオン抵抗Rqが既知であるとする。以下に図10を参照して説明する。
【0071】
まず、モータ10を停止させた状態とし(ステップS31)、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQvlをオンにする一方、その他のMOSFETをオフとし、駆動回路60を介して定電圧Eaを印加して(ステップS32)、このときの電流I1を測定する(ステップS33)。
【0072】
図2に示す例によれば、このときの電流I1 は、モータ10の巻線のうち、直列に接続された巻線Uと巻線Vを流れる電流である。このときには、巻線Uの抵抗Ruと巻線Vの抵抗Rv、電圧Ea、電流I1との間には次の式(13)が成り立つ。ただし、Rqは、各MOSFETのオン抵抗である。
【0073】
Ru+Rv=E/I1−2Rq (13)
【0074】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QvuとQwlをオンにして、その他のMOSFETをオフとし、駆動回路60を介して定電圧Eaを印加して(ステップS34)、このときの電流I2を測定する(ステップS35)。
【0075】
図2に示す例によれば、このときの電流I2は、モータ10の巻線のうち、直列に接続された巻線Vと巻線Wを流れる電流である。このときには、巻線Vの抵抗Rvと巻線Wの抵抗Rw、電圧Ea、電流I2との間には次の式(14)が成り立つ。
【0076】
Rv+Rw=E/I2−2Rq (14)
【0077】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQwlをオンにして、その他のMOSFETをオフとし、駆動回路60を介して定電圧Eaを印加して(ステップS36)、このときの電流I3を測定する(ステップS37)。
【0078】
図2に示す例によれば、このときの電流I3は、モータ10の巻線のうち、直列に接続された巻線Uと巻線Wを流れる電流である。このときには、巻線Uの抵抗Ruと巻線Wの抵抗Rw、電圧Ea、電流I3との間には次の式(15)が成り立つ。
【0079】
Rw+Ru=E/I3−2Rq (15)
【0080】
したがって、各巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,Rw、MOSFETのオン抵抗Rqが既知であるとすれば、測定回路71は、上記の式(13)、(14)および(15)に基づいて巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを算出する(ステップS38)。
このようにして駆動回路60に供給される定電圧とモータ10を流れる電流から算出した巻線の抵抗値から、上述した式(1)〜式(6)に従って巻線温度tuv,tvw,twuを算出することができる(図6のステップS02およびステップS03)。
【0081】
なお、この第3の算出方法においては、次のような簡略化が可能である。
(a)MOSFETのオン抵抗Rqは、巻線抵抗Ru、Rv、Rwと比較して、十分に小さいのでRq=0とすることにより、計算時間が短縮できる。
(b)巻線抵抗Ru、Rv、Rwが同値とすれば、QuuとQvl、QvuとQwl、QuuとQwlのうちいずれかのみをオンさせた状態における1回の測定で巻線抵抗を算出することができ、計算時間を短縮することができる。
(c)また、上記(a)、(b)の簡略化手法を組み合わせることによって、計算時間の短縮を図ることができる。
【0082】
[第4の測定方法:モータ10が静止している場合(その3)]
上述した巻線抵抗の第3の測定方法は、駆動回路60の電力供給端に定電圧Eaを印加している場合の巻線抵抗の求め方の一例であったのに対し、巻線抵抗の第4の測定方法は、図11に示すように、駆動回路60に定電流Iを供給する方法であり、図12に示すような手順に沿って、巻線抵抗の値を測定することができる。
【0083】
まず、モータ10を停止させた状態とする(ステップS41)。この状態で駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQvlをオンにする一方、その他のMOSFETをオフとし、定電流Iを供給して(ステップS42)、このときの端子間電圧E1を測定する(ステップS43)。
【0084】
図11に示す例によれば、このときの電圧E1は、モータ10の巻線のうち、巻線Uおよび巻線Vと、MOSFET Quu、Qvlとからなる直列回路の端子間電圧である。このときには、巻線Uの抵抗Ruと巻線Vの抵抗Rv、電圧E1、電流Iとの間には次の式(16)が成り立つ。
【0085】
Ru+Rv=E1/I−2Rq (16)
【0086】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QvuとQwlをオンにする一方、その他のMOSFETをオフとし、定電流Iを供給して(ステップS44)、このときの端子間電圧E2を測定する(ステップS45)。
【0087】
図11に示す例によれば、このときの電圧E2は、モータ10の巻線のうち、巻線Vおよび巻線Wと、MOSFET Qvu、Qwlとからなる直列回路の端子間電圧である。このときには、巻線Vの抵抗Rvと巻線Wの抵抗Rw、電圧E2、電流Iとの間には次の式(17)が成り立つ。
【0088】
Rv+Rw=E2/I−2Rq (17)
【0089】
次に、駆動回路60のMOSFETのうち、QuuとQwlをオンにする一方、その他のMOSFETをオフとし、定電流Iを供給して(ステップS46)、このときの端子間電圧E3を測定する(ステップS47)。
【0090】
図11に示す例によれば、このときの電圧E3は、モータ10の巻線のうち、巻線Uおよび巻線Wと、MOSFET Quu、Qwlとからなる直列回路の端子間電圧である。このときには、巻線Uの抵抗Ruと巻線Wの抵抗Rw、電圧E3、電流Iとの間には次の式(18)が成り立つ。
【0091】
Rw+Ru=E3/I−2Rq (18)
【0092】
したがって、各巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,Rw、MOSFETのオン抵抗Rqが既知であるとすれば、測定回路71は、上記の式(16)、(17)および(18)に基づいて巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを算出する(ステップS48)。
このようにして駆動回路60に供給される定電圧とモータ10を流れる電流から算出した巻線の抵抗値から、上述した式(1)〜式(6)に従って巻線温度tuv,tvw,twuを算出することができる(図6のステップS02およびステップS03)。
【0093】
なお、この第4の算出方法においても、次のような簡略化が可能である。
(a)MOSFETのオン抵抗Rqは、巻線抵抗Ru、Rv、Rwと比較して、十分に小さいのでRq=0とすることにより、計算時間が短縮できる。
(b)巻線抵抗Ru、Rv、Rwが同値とすれば、QuuとQvl、QvuとQwl、QuuとQwlのうちいずれかのみをオンさせた状態における1回の測定で巻線抵抗を算出することができ、計算時間を短縮することができる。
(c)また、上記(a)、(b)の簡略化手法を組み合わせることによって、計算時間の短縮を図ることができる。
【0094】
[第1の実施の形態の効果]
本実施の形態に係るモータの診断装置によれば、モータ10の巻線温度に基づいてモータ10の状態を診断するので、電動アクチュエータ100のモータの状態の診断が可能となる。
【0095】
また、電動アクチュエータにおいてモータのみの状態について診断ができるので、電動アクチュエータを停止させなくても、故障箇所を特定することができる。したがて、メンテナンスの作業負担を軽減することができる。
さらに、モータの巻線温度のトレンドをモニタすることにより、バルブの故障診断などの予防保全に適用できる。
【0096】
また、本実施の形態に係る電動アクチュエータを弁の開閉に用いた場合には、次のような効果を得ることができる。
【0097】
本実施の形態に係る電動アクチュエータを弁の開閉に用いた場合には、巻線温度の当初の設定値からの乖離幅を、モータの劣化指標として用いることで、モータの劣化状況を容易に把握することができる。したがって、乖離幅が増大して乖離幅が大きくなって劣化が進んだ場合には、故障発生する前に適切な対応をとることができ、極めて効果的な予知保全を実現することが可能となる。これにより、保証期間を超える長期使用を想定した場合でも、一定の信頼性を提供することが可能となる。また、駆動回路や制御回路など、電動アクチュエータの既存構成を用いて劣化指標を容易に計算でき、回路規模さらには製品コストの増大を必要とすることなく、極めて簡素な構成であり、電動アクチュエータの信頼性を高めることが可能となる。
【0098】
この際、測定回路71によって測定した巻線温度や当初の設定値からの乖離幅をメモリ702に時系列データとして順次保存しておき、この時系列データから生成した近似関数に基づき将来の巻線温度tuv,tvw,twuの推定値tuv’,tvw’,twu’を推定し、推定値Tq’が正常範囲Eから離脱する時期を注意点として予測するようにしてもよい。これにより、モータの劣化時期すなわち交換時期を予測することができる。
【0099】
また、巻線温度tuv,tvw,twuや当初の設定値からの乖離幅の経時変化を、診断回路72や上位装置でモニタすることにより、モータの劣化時期すなわち交換時期を予測でき、流量制御バルブや風量調整ダンパーなどの予知保全に極めて有用である。また、巻線温度tuv,tvw,twuの計算は、極めて短い時間で済むため、アプリケーションによっては、通常の運転動作中であっても巻線温度の計算を行うことができる。したがって、測定および診断の処理動作を定期的に実行することにより、モータの劣化状態の変化をいち早く検出でき、迅速な対応をとることが可能となる。
【0100】
[第1の実施の形態の変形例]
なお、本実施の形態においては、巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruを求める際にMOSFETのオン抵抗Rqを考慮しているが、このオン抵抗Rqが巻線U,V,Wの抵抗Ru,Rv,Rwに比べて無視できるほど小さいのであれば、上記の各式においてRq=0としてもよい。このようにすることで計算時間を短縮することができる。
【0101】
また、本実施の形態においては、2つの巻線の抵抗値Ruv=Ru+Rv,Rvw=Rv+Rw,Rwu=Rw+Ruをそれぞれ求めるものとして説明したが、3つの巻線U,V,Wそれぞれの抵抗Ru,Rv,Rwが互いに等しい(Ru=Rv=Rw)との前提のもとに、3組の巻線の抵抗Ruv,Rvw,Rwuうちの少なくともいずれか1つの抵抗を測定するようにしてもよい。このとき、測定回路71は、モータ10の複数の巻線U,V,Wのうち任意の巻線に電流が流れるように制御回路50を介して駆動回路60を制御する。このようにすることで計算時間を短縮することができる。このときも、さらにMOSFETのオン抵抗Rq=0とすれば、計算時間をより短縮することができる。
【0102】
また、本実施の形態において、診断回路72は、測定回路71から入力される巻線温度tuv,tvw,twuに基づいて診断を行うものとして説明したが、巻線温度のトレンド(時系列データ)、すなわち、巻線温度の時間的な変化に基づいて診断を行ってもよい。
【0103】
また、本実施の形態においては、診断装置70が電動アクチュエータ100に内蔵されている例を示したが、診断装置70を電動アクチュエータ100とは別の装置として設けてもよいことはいうまでもない。
【0104】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る電動アクチュエータについて、図13を参照して説明する。なお、上述した第1の実施の形態に係る電動アクチュエータ100と共通する構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
上述した第1の実施の形態においては、電動アクチュエータ100内に診断装置70が設けられた例を説明したが、診断装置70を構成する各種回路を複数の装置に分散させて構成することも可能である。本発明の第2の実施の形態に係る診断装置は、診断回路72を電動アクチュエータ100Aとは別の装置に設ける例である。
【0105】
図13に、本発明の第2の実施の形態に係る診断装置の構成例を示す。この例では、電動アクチュエータ100Aには、測定回路71と無線通信インターフェース回路(無線I/F)75とを含む測定装置70Aが設けられる。このうち測定装置70Aに設けられた無線I/F75は、無線通信により各種データを出力することを可能とし、例えば、測定回路71によって測定された巻線の温度の測定値を出力データとして外部に出力する出力回路としても作用する。
【0106】
一方、端末装置200には、無線I/F2003と診断回路72と出力回路73と表示装置90とが設けられている。この端末装置200は、図14に示すように、バス2004を介して互いに通信可能に接続された演算装置2001、メモリ2002、I/F回路2003、I/O装置2005を含むコンピュータと、このコンピュータにインストールされたコンピュータプログラムとから構成することができる。
【0107】
このうち、無線I/F2003は、例えば、測定装置70Aの無線I/F75と、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に則った通信方式に則って無線で接続する。また、I/O装置2005は、タッチパネル等の入力装置やLCD等の表示装置90を含む。このような端末装置200は、例えば、現場の担当者が使用する持ち運び可能なモバイル端末装置である。
【0108】
上述した構成を有することにより、端末装置200は、無線I/F2003を介して、電動アクチュエータ100A側の測定装置70Aの無線I/F75と無線通信を行い、測定回路71によって取得された巻線温度tuv,tvw,twu、および/または、巻線温度のトレンド、すなわち、巻線温度tuv,tvw,twuの時系列データ等の出力データを受信して、これを診断回路72に入力するように構成されている。そして、端末装置200に構成された診断回路72は、電動アクチュエータ100A側の測定装置70Aから出力された出力データに基づき、診断を行う。その診断の結果は、出力回路73を介して表示装置90に表示される。
【0109】
以上の機能は、端末装置200のコンピュータを構成する各種ハードウェア資源がコンピュータプログラムにしたがって協働することにより実現される。
【0110】
このように測定回路71と診断回路72とを、それぞれ電動アクチュエータ100Aと端末装置200とに分けて設けることによって、電動アクチュエータ100Aと端末装置200とは、一体となって診断装置を構成することとなる。その結果、電動アクチュエータ100Aの測定装置70Aを構成する演算装置の負荷を軽減することができる。
また、保守担当者等が使用する端末装置200において診断が行えるので、保守作業の効率が向上することが期待できる。
【0111】
なお、本実施の形態において、電動アクチュエータ100Aと端末装置200とは無線通信により互いに接続されるものとして説明したが、有線で接続されるように構成してもよい。
【0112】
[第3の実施の形態]
上述した第2の実施の形態においては、診断装置を構成する測定回路71と診断回路72をそれぞれ電動アクチュエータ100Aと端末装置200とに分離して設けたが、本発明の第3の実施の形態においては、図15に示すように、電動アクチュエータ100BがネットワークNWを介して上位装置300に接続されている場合において、診断装置を構成する測定回路71と診断回路72のうち、測定回路71を電動アクチュエータ100B側の測定装置70Bに設け、診断回路72を、上位装置300に設ける例である。
【0113】
電動アクチュエータ100B側の測定装置70Bには、ネットワーク・インターフェース回路(NW I/F)76が設けられ、測定装置70Bは、このネットワーク・インターフェース回路76を介して、Ethernet(登録商標)等のネットワークNWに接続可能に構成されている。
【0114】
一方、上位装置300も、ネットワーク・インターフェース回路3003を備えており、ネットワークNWを介して、電動アクチュエータ100Bの測定装置70Bと通信可能に構成されている。この上位装置300も、演算装置やメモリ、各種I/F回路やI/O装置から構成されたコンピュータであり、これらのハードウェア資源と上位装置300にインストールされたコンピュータプログラムとが協働することによって、診断回路72の機能を実現する。
【0115】
電動アクチュエータ100Bに設けられた測定装置70Bと上位装置300とは、それぞれネットワーク・インターフェース回路76、3003を介してネットワークNWに接続可能な構成をとることによって、測定回路71によって取得された巻線温度tuv,tvw,twu、および/または、巻線温度のトレンド、すなわち、巻線温度tuv,tvw,twuの時系列データを、出力データとして、測定装置70Bから上位装置300にネットワークNWを介して送信することができる。ここで、ネットワーク・インターフェース回路76は、測定回路71によって測定された巻線の温度の測定値を出力データとして外部に出力する出力回路としても作用する。
【0116】
一方、上位装置300は、測定装置70Bから出力される出力データを受信で、これを診断回路72に入力するように構成されており、診断回路72は、ネットワークNWを介して受信したデータに基づき、診断を行う。
【0117】
このように測定回路71と診断回路72とを、それぞれ電動アクチュエータ100Bと上位装置300とに分けて設けることによって、電動アクチュエータ100Aの測定装置70Aを構成する演算装置の負荷を軽減することができる。
また、中央監視装置を構成する上位装置300で診断を行うので、現場に行かなくても、電動アクチュエータ100Bの診断を行うことができる。
【0118】
上述した実施の形態は、電動アクチュエータを例に説明したが、本発明に係る診断装置は、電動アクチュエータのみならず、モータを使用したすべての製品に適用することができる。また、モータとしてブラシレス直流モータを例に説明したが、本発明は、ブラシレス直流モータのみならず、巻線構造を有するすべてのモータに適用することができる。
【0119】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、電動アクチュエータの維持管理に利用することができる。
【符号の説明】
【0121】
100、100A、100B…電動アクチュエータ、10…モータ、20…減速機、30…回転軸、40…角度センサ、50…制御回路、60…駆動回路、70…診断装置、71…測定回路、72…診断回路、73…出力回路、75…無線通信インターフェース回路(無線I/F)、76…ネットワーク・インターフェース回路、80…筐体、90…表示装置、200…端末装置、2003…無線通信インターフェース回路(無線I/F)、300…上位装置、3003…ネットワーク・インターフェース回路、U、V、W…巻線。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15