【解決手段】穴が形成されたワークを加工するショット処理装置は、ワークが搬入される加工室が内部に形成されたキャビネットと、加工室に配置されたワークの穴に噴射材を噴射する噴射機構と、ワークの準備位置とキャビネットとの間でワークを搬送する搬送装置と、を備え、搬送装置は、回転軸を中心に回転可能に設けられ、ワークを移動させる搬送部がその上面に設けられ、複数のワークを配置可能な板状の回転テーブルを有し、回転テーブルは、所定の回転位置において搬送部と準備位置及びキャビネットとを接続し、準備位置と回転テーブルの回転軸との間に、ワークの穴の状態を検査するための検査領域を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の装置などを用いて、穴の開いたワークを加工することが考えられる。そして、ワークの品質を担保するために、ワークの加工の良否を検査することが考えられる。例えば、ワークの加工工程の後に検査工程を行い、検査工程の後に次のワークの加工工程を開始することが考えられる。しかしながら、ワークに形成された穴の内壁は視認可能な方向が限定されているため、検査工程に時間を要するおそれがある。検査工程に時間を要するほど次のワークの加工工程の開始が遅れるため、結果として複数のワークに対する全体の処理時間が増大するおそれがある。
【0005】
本開示は、複数のワークに対する全体の処理時間を短縮できるショット処理装置及びショット処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る装置は、穴が形成されたワークを加工するショット処理装置である。この装置は、キャビネット、噴射機構及び搬送装置を備える。キャビネットは、ワークが搬入される加工室が内部に形成される。噴射機構は、加工室に配置されたワークの穴に噴射材を噴射する。搬送装置は、ワークの準備位置とキャビネットとの間でワークを搬送する。搬送装置は、板状の回転テーブルを有する。回転テーブルは、回転軸を中心に回転可能に設けられ、ワークを移動させる搬送部がその上面に設けられ、複数のワークを配置可能である。回転テーブルは、所定の回転位置において搬送部と準備位置及びキャビネットとを接続する。この装置は、準備位置と回転テーブルの回転軸との間に、ワークの穴の状態を検査するための検査領域を有する。
【0007】
本開示の一側面に係るショット処理装置によれば、加工前のワークは、搬送装置によって準備位置からキャビネットへと搬送される。回転テーブルに設けられた搬送部は、回転テーブルの回転に応じて準備位置及びキャビネットに接続される。回転テーブルが所定の回転位置に位置するときに、加工前のワークは準備位置から回転テーブルへと移動でき、加工済みのワークはキャビネットから回転テーブルへと移動できる。そして、回転テーブルが所定の回転位置に位置するときに、加工前のワークは搬送部からキャビネットへと移動できるとともに、加工後のワークは準備位置と回転テーブルの回転軸との間の検査領域に配置される。このため、このショット処理装置は、ワークの加工工程と、加工後のワークの検査工程とをラップさせることができる。よって、このショット処理装置は、直線状の搬送路を採用したショット処理装置と比べて、複数のワークに対する全体の処理時間を短縮できる。
【0008】
一実施形態においては、穴は、ワークの底部に形成され、検査領域は、回転テーブルの下方に設けられ、回転テーブルには、ワークの底部を下方から視認可能な第1開口が形成されてもよい。この場合、ワークの底部に形成された穴の状態は、回転テーブルの下方に設けられた検査領域にて第1開口を介して検査される。よって、ショット処理装置は、ワークの姿勢などを変更することなく、ワークの底部に形成された穴の状態を検査させることができる。
【0009】
一実施形態においては、搬送部は、第1搬送部及び第2搬送部を有し、第1搬送部及び第2搬送部は、互いに同一方向に伸延するように配置され、第1開口は、第1搬送部と第2搬送部との間に設けられてもよい。この場合、ショット処理装置は、第1開口を跨ぐようにワークを搬送できる。このため、ショット処理装置は、ワークの姿勢などを変更することなく、第1開口を介してワークの底部に形成された穴の状態を検査させることができる。
【0010】
一実施形態においては、搬送部は、第3搬送部及び第4搬送部を有し、第3搬送部及び第4搬送部は、互いに同一方向に伸延するように配置され、回転テーブルには、ワークの底部を下方から視認可能な第2開口が第3搬送部と第4搬送部との間に形成されてもよい。この場合、ショット処理装置は、第2開口を跨ぐようにワークを搬送できる。このため、ショット処理装置は、ワークの姿勢などを変更することなく、第2開口を介してワークの底部に形成された穴の状態を検査させることができる。
【0011】
一実施形態においては、キャビネット、回転軸及び準備位置は、直線状に並び、第1搬送部、第2搬送部、第3搬送部及び第4搬送部は同一の方向に伸延し、第1搬送部及び第2搬送部と、第3搬送部及び第4搬送部とは、回転軸を通る径方向の直線が対称軸となる線対称に配置されてもよい。この場合、第1搬送部及び第2搬送部と準備位置とが接続するときには、第3搬送部及び第4搬送部とキャビネットとが接続する。そして、回転テーブルが180度回転すると、第1搬送部及び第2搬送部とキャビネットとが接続し、第3搬送部及び第4搬送部と準備位置とが接続する。このように、搬送部は、180度回転の度にキャビネット及び準備位置の両方に接続することができるので、回転テーブルと準備位置との間のワークの移動と、回転テーブルとキャビネットとの間のワークの移動とを、180度回転ごとに行うことができる。これにより作業効率がさらに向上するため、ショット処理装置は、複数のワークに対する全体の処理時間をさらに短縮することができる。
【0012】
一実施形態においては、回転テーブルは準備位置に対応する所定の高さで支持されており、ショット処理装置は、準備位置にワークを昇降させる昇降部をさらに備えてもよい。この場合、ショット処理装置は、ワークの準備位置への配置を自動化できる。
【0013】
一実施形態においては、ショット処理装置は、穴の内壁をピーニング加工してもよい。この場合、ショット処理装置は、圧縮残留応力を穴の内壁に付与できる。
【0014】
一実施形態においては、噴射機構は、噴射材を貯留し、圧縮気体供給源に接続された加圧タンクと、圧縮気体供給源に接続され、加圧タンクから定量供給された噴射材と圧縮空気とを混合するミキシング部と、ミキシング部に接続され、噴射材を圧縮空気と共に噴射するノズルと、を備えてもよい。この場合、ショット処理装置は、噴射材を圧縮空気とともに噴射できる。
【0015】
本開示の他の側面に係る方法は、穴が形成されたワークを加工するショット処理方法である。この方法は、第1ワークを準備位置に配置する工程と、回転軸を中心に回転可能に設けられ、第1端部及び第2端部を有する搬送部がその上面に設けられた板状の回転テーブルを回転させて、準備位置と搬送部の第1端部とを接続する工程と、第1ワークを準備位置から回転テーブルの搬送部へ移動させる工程と、第1ワークが配置された回転テーブルを回転させ、加工室を有するキャビネットと搬送部の第1端部とを接続するとともに、準備位置と搬送部の第2端部とを接続する工程と、第1ワークを回転テーブルから加工室へと移動させる工程と、第2ワークを準備位置に配置する工程と、第2ワークを準備位置から回転テーブルへ移動させる工程と、加工された第1ワークを回転テーブルへ移動させる工程と、加工された第1ワーク及び第2ワークが配置された回転テーブルを回転させ、キャビネットと搬送部の第2端部とを接続するとともに準備位置と搬送部の第1端部とを接続する工程と、第2ワークを回転テーブルから加工室へと移動させるとともに、回転テーブル上の加工された第1ワークを検査する工程と、を含む。
【0016】
本開示の他の側面に係るショット処理方法によれば、第1ワークは回転テーブルに配置され、回転テーブルの回転によりキャビネットと対向する位置に搬送される。第1ワークは、キャビネットへ搬入されて加工される。そして、第2ワークが回転テーブルに配置される。加工された第1ワークは、回転テーブルに再び配置される。加工された第1ワーク及び第2ワークが配置された回転テーブルが回転することにより、加工された第1ワークは検査領域へと配置され、第2ワークはキャビネットと対向する位置に搬送される。このように、ショット処理方法は、第1ワークを検査領域に位置させたときに、第2ワークをキャビネットへ搬入可能な状態にできる。よって、ショット処理方法は、ワークの加工工程と、加工後のワークの検査工程とをラップさせることができる。よって、ショット処理方法は、直線状の搬送路を採用したショット処理方法と比べて、複数のワークに対する全体の処理時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、複数のワークに対する全体の処理時間を短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書中における「上下方向」は、特に断りのない限り図中に方向を示すが、図中のX方向、Y方向、Z方向でも説明する。ここで、X方向、Y方向、Z方向は、
図1の視線において、それぞれ紙面に対して水平方向(X方向、Y方向)及び鉛直方向(Z方向)を指す。
【0020】
[ワークの構成]
図4は、ワークの一例を示す部分断面図である。
図4に示されるように、ワークWは、立体物であり、内部に向かって穴が形成される。
図4の例においては、ワークWの外面に3つの穴G1〜G3が形成される。穴の数は、3つに限定されることはなく、1つでもよいし複数でもよい。ワークは、金属で形成される。ワークの一例は、エンジンのシリンダヘッド、シリンダブロック、クランクシャフト、又は金型などである。穴の一例は、水冷孔などの冷却材孔、押し出しピン用の孔、又は深部温度計の挿入孔である。穴の内径は一例として約4〜15mmであり、穴の長さ(深さ)は一例として約50〜400mmである。本実施形態では、鋳造用金型に設けられた水冷孔に対してショット処理を行った。
【0021】
ショット処理は、一例として、表面を削るブラスト加工、圧縮残留応力を付与するショットピーニング加工などである。加工は、上述した具体例に限定されることはなく、穴の側壁に適用可能な任意の適切な加工が含まれ得る。本実施形態では、ショット処理としてショットピーニング加工を行った。
【0022】
[ショット処理装置の構成]
図1は、実施形態に係るショット処理装置の一例を示す正面図である。
図2は、
図1に示すショット処理装置の平面図である。
図3は、
図2のIII−III線に沿った部分断面図である。
図1〜
図3に示されるショット処理装置1は、穴が形成されたワークを加工する装置である。
【0023】
ショット処理装置1は、キャビネット10と、噴射機構20と、集塵機30と、搬送装置40と、制御部60とを備える。
【0024】
キャビネット10は、ワークWが搬入される加工室R(
図3参照)が内部に形成される。キャビネット10は、一例として箱体である。キャビネット10の側面には、キャビネット10を開閉するシャッタ10aが設けられる。シャッタ10aは、一例として、キャビネット10の側面のうち上半分程度を開閉する。シャッタ10aは、ワークWを加工室Rに搬入する場合、又は、加工室RからワークWを搬出する場合に開となり、キャビネット10を開放する。シャッタ10aは、ワークWを加工する場合に閉となり、キャビネット10を封止する。シャッタ10aの駆動は図示しない駆動装置により実現する。加工室Rには、ワークWを移動可能に支持するステージ10b(
図3参照)が所定の高さ位置で支持される。ステージ10bは、一例としてローラコンベアである。
【0025】
噴射機構20は、加工室Rに配置されたワークWの穴に噴射材を噴射する。噴射材の一例は、ショット(鋼球)などの砥粒である。噴射機構20は、重力式(吸引式)の装置、直圧式(加圧式)の装置、遠心式の装置など、何れのタイプの装置を用いることができる。本実施形態に係るショット処理装置は、一例として、直圧式の噴射機構を用いる。
【0026】
噴射機構20は、加圧タンク23、ミキシング部24及びノズル25を備える。加圧タンク23は、噴射材を貯留し、圧縮気体供給源(不図示)に接続される。加圧タンク23の内部は、圧縮気体供給源から供給される圧縮空気によって加圧される。ミキシング部24は、一例として加圧タンク23の下方に配置される。ミキシング部24は、圧縮気体供給源(不図示)に接続され、加圧タンク23から定量供給された噴射材と圧縮空気とを混合する。ノズル25は、加工室Rに配置される。ノズル25は、ミキシング部24に接続され、噴射材を圧縮空気と共に噴射する。ノズル25の位置及び噴射方向は、ロボット26(
図2及び
図3参照)によって制御される。ノズル25は、ロボット26に把持され、ワークWの穴に挿入される。
【0027】
噴射機構20は、加工に用いた噴射材を再利用する機構を備えてもよい。加工室Rの下部にはホッパ27が配置される。ノズル25にて噴射された噴射材は、粉塵とともに加工室Rの下部に落下し、ホッパ27に収容される。ホッパ27には、ダクト28が接続される。ダクト28は、空気を用いて分級するサイクロン21に接続される。ホッパ27に収容された粉塵及び噴射材は、ダクト28を介してサイクロン21へ供給され、粉塵と利用可能な噴射材とに分級される。サイクロン21は、加圧タンク23に接続される。利用可能な噴射材は、加圧タンク23へと供給され、ワークWへ噴射する噴射材として再利用される。
【0028】
サイクロン21は、ダクト31を介して集塵機30に接続される。集塵機30は、粉塵を吸引除去する装置である。サイクロン21により分離された粉塵は、ダクト31を介して集塵機30に吸引される。加工室Rは、ダクト32を介して集塵機30に接続される。加工室Rの粉塵は、ダクト32を介して集塵機30に吸引される。
【0029】
搬送装置40は、ワークWの準備位置H1とキャビネット10との間でワークWを搬送する。準備位置H1は、これから加工されるワークWが配置される位置であり、加工室Rに収容されたステージ10bと同一高さである。準備位置H1は、加工済みのワークWが戻る位置であってもよい。搬送装置40は、複数のワークWを配置可能な板状の回転テーブル41を有する。回転テーブル41は、例えば円盤形状を呈する。回転テーブル41は、Z方向に延びる回転軸M(
図1参照)を中心に回転可能に設けられる。回転テーブル41は、回転モータ42によって回転する。回転テーブル41は、準備位置H1とキャビネット10との間に配置される。例えば、回転テーブル41は、回転軸M、キャビネット10及び準備位置H1が直線状に並ぶように配置される。回転テーブル41は、準備位置H1に対応する所定の高さで支持される。例えば、回転テーブル41は、準備位置H1と同一高さとなるように支持される。
【0030】
回転テーブル41は、ワークWを移動させる搬送部43(
図1参照)がその上面に設けられる。回転テーブル41は、所定の回転位置において搬送部43と準備位置H1及びキャビネット10とを接続する。搬送部43の第1端部43A(
図2参照)が準備位置H1と接続しているときには、搬送部43の第2端部43B(
図2参照)がキャビネット10と接続する。これにより、回転テーブル41と準備位置H1との間のワークWの移動と、回転テーブル41とキャビネット10との間のワークWの移動とを並行して行える。なお、
図2の例では、回転軸M、キャビネット10及び準備位置H1が直線状に並んでいるため、搬送部43の第1端部43Aがキャビネット10と接続しているときには、搬送部43の第2端部43Bが準備位置H1と接続する。このように、回転テーブル41は、半回転するだけで搬送部43と準備位置H1及びキャビネット10とを再び接続できる。つまり、本実施形態においては、所定の回転位置は、180度の倍数となる。搬送部43の一例は、ローラコンベアである。
【0031】
回転テーブル41は、所定の回転位置において複数のワークW(本実施形態では2つのワークW)を配置する。このため、搬送部43は、それぞれのワークW用に分離することができる。例えば、搬送部43は、回転軸Mを通る径方向の直線L(
図2参照)を基準として2つに分離される。
【0032】
搬送部43は、1つ目のワーク用に、第1搬送部43a及び第2搬送部43bを有する。第1搬送部43a及び第2搬送部43bは、互いに同一方向に伸延するように配置される。第1搬送部43a及び第2搬送部43bは、平行に離間して設けられる。回転テーブル41における第1搬送部43aと第2搬送部43bとの間には、ワークWの底部を下方から視認可能な第1開口41aが形成される。第1開口41aは、回転テーブル41を貫通して形成されており、後述する検査において窓として機能する。搬送部43は、回転テーブル41において、第1開口41aよりも径方向外側に第1補助搬送部43cを備えてもよい。第1補助搬送部43cは、ワークWの移動を補助する。
【0033】
搬送部43は、2つ目のワーク用に、第3搬送部43d及び第4搬送部43eを有する。第3搬送部43d及び第4搬送部43eは、互いに同一方向に伸延するように配置される。第3搬送部43d及び第4搬送部43eは、平行に離間して設けられる。回転テーブル41における第3搬送部43d及び第4搬送部43eとの間には、ワークWの底部を下方から視認可能な第2開口41bが形成される。第2開口41bは、回転テーブル41を貫通して形成されており、後述する検査において窓として機能する。搬送部43は、回転テーブル41において、第2開口41bよりも径方向外側に第2補助搬送部43fを備えてもよい。第2補助搬送部43fは、ワークWの移動を補助する。
【0034】
第1搬送部43a、第2搬送部43b、第3搬送部43d及び第4搬送部43eは同一の方向に伸延してもよい。そして、第1搬送部43a及び第2搬送部43bと、第3搬送部43d及び第4搬送部43eとは、回転軸Mを通る径方向の直線Lが対称軸となる線対称に配置されてもよい。これにより、回転テーブル41の180度回転の度に、搬送部43と準備位置H1及びキャビネット10とを接続することができる。
【0035】
回転テーブル41には、その中央に、第1搬送部43a及び第2搬送部43bに対応した第1ストッパ44aが設けられてもよい。回転テーブル41には、その中央に、第3搬送部43d及び第4搬送部43eに対応した第2ストッパ44bが設けられてもよい。これにより、ワークWは回転テーブル41上に停止できる。第1ストッパ44a、第2ストッパ44bには、ワークWを固定するためのピンが設けられてもよい。
【0036】
ショット処理装置1は、準備位置H1と回転テーブル41の回転軸Mとの間(
図1の領域D3)に、ワークWの穴の状態を検査するための検査領域を有する。検査領域は、作業員やロボットなどが目視又は検査機器を用いる場所であり、回転テーブル41の上方又は下方に設定される。第1検査領域D1は、回転テーブル41の上方に設定され、第1検査機器N1を用いてワークWの上面又は側面に形成された穴の状態を検査する。第2検査領域D2は、回転テーブル41の下方に設定され、第2検査機器N2を用いてワークWの底部に形成された穴の状態を検査する。第1検査機器N1及び第2検査機器N2は、センサ機能を有する機器であり、残留応力、色、荒さ、砂残りチェックなど、検査に応じて適宜の機器が用意される。
【0037】
ショット処理装置1は、準備位置H1にワークWを昇降させる昇降部45を備えてもよい。昇降部45は、ワークWを配置可能な第5搬送部45aを有する。昇降部45は、図示しない駆動源により第5搬送部45aを準備位置H1の高さまで移動させる。これにより、ワークWの準備を自動で行える。
【0038】
上述したショット処理装置1の各構成は、制御部60により統括される。制御部60は、一例として表示部及び処理部を含む。処理部は、CPU及び記憶部などを有する一般的なコンピュータである。制御部60は、予め設定されたプログラムを用いて、ワークWの搬送、加工、検査などを実行する。
【0039】
[搬送用のトレイ]
ワークWは、トレイ50に配置されて搬送されてもよい。回転テーブル41は、開口を有するため、ワークWの幅によっては搬送できないおそれがある。トレイ50を用いることにより、種々の幅のワークWにも対応することができる。この場合、ワークWの底部に形成された穴を検査するために、トレイ50にも開口が形成される。
図5は、トレイの一例を示す図である。
図5の(A)は平面図であり、
図5の(B)は側面図である。
図5に示されるトレイ50は、ワークWを位置決めする固定部50bと、固定部50bに囲まれた領域に形成された開口50aとを有する。トレイ50には、回転テーブルの第1ストッパ44a又は第2ストッパ44bに設けられたピンと係合するための穴50cが形成される。ピンと穴50cとが係合することにより、回転テーブル41の遠心力によるワークの落下を防止できる。なお、開口50aの大きさや固定部50bの位置は、ワークWに合わせて適宜変更可能である。
図6は、トレイの他の例を示す図である。
図6の(A)は平面図であり、
図6の(B)は側面図である。
図6に示されるトレイ51は、開口50aよりもやや大きめの開口51aと、開口51aの形状に合わせて配置された固定部51bとを有する。トレイ51には、穴50cと同様に穴51cが形成される。
【0040】
[ショット処理方法]
図7は、実施形態に係るショット処理方法の一例を示すフローチャートである。
図7に示されるフローチャートは、第1ワークW1の準備から検査終了までを示し、第1ワークW1の次に加工される第2ワークW2の処理を含む。以下では、制御部60がフローチャートを実行する例を説明するが、工程の一部又は全部を手動で行うことも可能である。なお、フローチャートは、
図8を参照しつつ説明する。
図8は、実施形態に係るショット処理方法によるワークの移動の一例を示す図である。
【0041】
最初に、第1ワークの準備工程(S10)として、制御部60は、第1ワークW1を準備位置H1に準備する。例えば、制御部60は、他の搬送部に、昇降部45の第5搬送部45a上に第1ワークW1を配置させる。制御部60は、昇降部45に、第5搬送部45aが準備位置H1の高さとなるように、第5搬送部45aを上昇させる。
【0042】
続いて、搬送部接続工程(S12)として、制御部60は、準備位置H1と搬送部43の第1端部43Aとを接続する。制御部60は、回転テーブル41を所定の回転位置まで回転させることで、回転テーブル41の搬送部43と準備位置H1の第5搬送部45aとを接続する。なお、回転テーブル41が既に所定の回転位置に位置するときには、搬送部接続工程(S12)は省略できる。
【0043】
続いて、第1ワークの移動工程(S14)として、制御部60は、第1ワークW1を準備位置H1から回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。制御部60は、第5搬送部45a並びに第1搬送部43a及び第2搬送部43bを駆動させることで、第1ワークW1を準備位置H1から回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。第1ワークW1は、第1ストッパ44aに突き当たることで位置決めされる。トレイ50を用いる場合には、穴50cと第1ストッパ44aのピンとが係合されて固定される。
【0044】
続いて、搬送部接続工程(S16)として、制御部60は、回転テーブル41を回転させて、キャビネット10と搬送部43の第1端部43Aとを接続するとともに、準備位置H1と搬送部43の第2端部43Bとを接続する。制御部60は、回転テーブル41を回転させて第1ワークW1をキャビネット10と対向する位置まで移動させる。例えば、
図8の(A)及び
図8の(B)に示されるように、回転テーブル41の180度の回転により、第1ワークW1はキャビネット10と対向する位置まで移動する。このとき、キャビネット10内のステージ10bと搬送部43の第1搬送部43a及び第2搬送部43bとが接続される。さらに、準備位置H1の第5搬送部45aと搬送部43の第3搬送部43d及び第4搬送部43eとが接続される。
【0045】
続いて、第1ワークの移動工程(S18)として、制御部60は、第1ワークW1を回転テーブル41から加工室Rへと移動させる。制御部60は、第1搬送部43a及び第2搬送部43b並びにステージ10bを駆動させることで、第1ワークW1を回転テーブル41から加工室Rへと移動させる。制御部60は、加工室Rにおいて第1ワークW1に形成された穴を加工する。
【0046】
第2ワークの準備工程(S20)及び第2ワークの移動工程(S22)は、第1ワークの移動工程(S18)と同時に開始可能であり、後述する搬送部接続工程(S24)の開始前に終了する。以下では、説明のために、第1ワークの移動工程(S18)、第2ワークの準備工程(S20)、第2ワークの移動工程(S22)、第1ワークの移動工程(S24)の順に説明するが、実施順序はこれに限定されない。
【0047】
第2ワークの準備工程(S20)として、制御部60は、第2ワークW2を準備位置H1に準備する。例えば、制御部60は、他の搬送部に、昇降部45の第5搬送部45a上に第2ワークW2を配置させる。制御部60は、昇降部45に、第5搬送部45aが準備位置H1の高さとなるように、第5搬送部45aを上昇させる。
【0048】
第2ワークの移動工程(S22)として、制御部60は、第2ワークW2を準備位置H1から回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。制御部60は、第5搬送部45a並びに第3搬送部43d及び第4搬送部43eを駆動させることで、第2ワークW2を準備位置H1から回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。第2ワークW2は、第2ストッパ44bに突き当たることで位置決めされる。トレイ50を用いる場合には、穴50cと第2ストッパ44bのピンとが係合されて固定される。
図8の(B)及び
図8の(C)に示されるように、第1ワークW1は、キャビネット10内で加工され、第2ワークW2は、回転テーブル上に配置された状態となる。
【0049】
第1ワークの移動工程(S24)として、制御部60は、第1ワークW1を加工室Rから回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。制御部60は、ステージ10b並びに第1搬送部43a及び第2搬送部43bを駆動させることで、第1ワークW1を加工室Rから回転テーブル41の搬送部43へと移動させる。第1ワークW1は、第1ストッパ44aに突き当たることで位置決めされる。
図8の(C)及び
図8の(D)に示されるように、第1ワークW1は、キャビネット10から回転テーブル41へと移動する。
【0050】
第1ワークの移動工程(S18)、第2ワークの準備工程(S20)、第2ワークの移動工程(S22)、及び、第1ワークの移動工程(S24)が終了すると、搬送部接続工程(S26)が実行される。
【0051】
搬送部接続工程(S26)として、制御部60は、回転テーブル41を回転させて、キャビネット10と搬送部43の第2端部43Bとを接続するとともに、準備位置H1と搬送部43の第1端部43Aとを接続する。制御部60は、回転テーブル41を回転させて、第1ワークW1を準備位置H1と対向する位置まで移動させるとともに、第2ワークW2をキャビネット10と対向する位置まで移動させる。これにより、第1ワークW1は、検査領域に位置することになる。例えば、
図8の(E)及び
図8の(F)に示されるように、回転テーブル41の180度の回転により、第1ワークW1は準備位置H1と対向する位置まで移動し、第2ワークW2はキャビネット10と対向する位置まで移動する。このとき、キャビネット10内のステージ10bと搬送部43の第3搬送部43d及び第4搬送部43eとが接続される。さらに、準備位置H1の第5搬送部45aと搬送部43の第1搬送部43a及び第2搬送部43bとが接続される。
【0052】
続いて、第2ワークの移動工程(S28)として、制御部60は、第2ワークW2を回転テーブル41から加工室Rへと移動させる。制御部60は、第3搬送部43d及び第4搬送部43e並びにステージ10bを駆動させることで、第2ワークW2を回転テーブル41から加工室Rへと移動させる。制御部60は、加工室Rにおいて第2ワークW2に形成された穴を加工する。
【0053】
第1ワークの検査工程(S30)は、第2ワークの移動工程(S28)と同時に開始可能である。第1ワークの検査工程(S30)として、制御部60は、第1検査機器N1又は第2検査機器N2に第1ワークW1を検査させる。
【0054】
続いて、第1ワークの移動工程(S32)として、制御部60は、第1ワークW1を回転テーブル41の搬送部43から準備位置H1へと移動させる。制御部60は、第5搬送部45a並びに第1搬送部43a及び第2搬送部43bを駆動させることで、第1ワークW1を回転テーブル41の搬送部43から準備位置H1へと移動させる。このとき、準備位置は、ワークの排出位置となる。第1ワークW1は、昇降部45により降下され、排出される。第1ワークの移動工程(S32)が終了すると、
図7に示されるフローチャートは終了する。ワークWは順次加工される。このため、
図8の(F)及び
図8の(G)に示されるように、第1ワークW1が排出された後に第3ワークW3が配置される。以降の処理は、
図8の(C)から同様に繰り返される。
【0055】
[実施形態のまとめ]
ショット処理装置1及びショット処理方法によれば、加工前のワークWは、搬送装置40によって準備位置H1からキャビネット10へと搬送される。回転テーブル41に設けられた搬送部43は、回転テーブル41の回転に応じて準備位置H1及びキャビネット10に接続される。回転テーブル41が所定の回転位置に位置するときに、加工前のワークWは準備位置H1から回転テーブル41へと移動でき、加工済みのワークWはキャビネット10から回転テーブル41へと移動できる。そして、回転テーブル41が所定の回転位置に位置するときに、加工前のワークWは搬送部43からキャビネット10へと移動できるとともに、加工後のワークWは準備位置H1と回転テーブル41の回転軸Mとの間の検査領域(第1検査領域D1,第2検査領域D2)に配置される。このため、このショット処理装置1及びショット処理方法は、ワークWの加工工程と、加工後のワークWの検査工程とをラップさせることができる。よって、このショット処理装置1及びショット処理方法は、直線状の搬送路を採用したショット処理装置と比べて、複数のワークWに対する全体の処理時間を短縮できる。
【0056】
ショット処理装置1及びショット処理方法によれば、ワークWの底部に形成された穴の状態は、回転テーブル41の下方に設けられた第2検査領域D2にて第1開口41a又は第2開口41bを介して検査される。よって、ショット処理装置1及びショット処理方法は、ワークWの姿勢などを変更することなく、ワークWの底部に形成された穴の状態を検査させることができる。
【0057】
ショット処理装置1及びショット処理方法によれば、第1開口41a及び第2開口41bを跨ぐようにワークを搬送できる。このため、ショット処理装置1及びショット処理方法は、ワークWの姿勢などを変更することなく、第1開口41a又は第2開口41bを介してワークWの底部に形成された穴の状態を検査させることができる。
【0058】
搬送部43は、180度回転の度にキャビネット10及び準備位置H1の両方に接続することができるので、ショット処理装置1及びショット処理方法は、回転テーブル41と準備位置H1との間のワークWの移動と、回転テーブル41とキャビネット10との間のワークWの移動とを、180度回転ごとに行うことができる。これにより作業効率がさらに向上するため、ショット処理装置1及びショット処理方法は、複数のワークWに対する全体の処理時間をさらに短縮することができる。
【0059】
以上、本実施形態について説明したが、本開示は、上記本実施形態に限定されるものでなく、本実施形態以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0060】
例えば、搬送部43は、フリーローラのローラコンベアであってもよいし、ベルトコンベアであってもよい。搬送部43としてフリーローラのローラコンベアを採用する場合には、作業員が手作業でワークを搬送してもよいし、フリーローラのローラコンベアにプッシャなどを備えてワークの搬送が自動化されてもよい。検査領域は、第2検査領域D2のみ設定されてもよい。また、加工室Rを複数設けた場合や、準備位置H1を複数設けた場合には、所定の回転位置でそれらの一部又は全部が接続されるように、搬送部を設ければよい。また、検査工程は、ワークWが検査領域に位置したときに実行可能であるため、例えば加工前のワークWに対して実施してもよい。
【0061】
第1検査機器N1及び第2検査機器N2は、さらに、加工ムラやバリ等の残りも検査してもよい。