【解決手段】本発明の気化式加湿器は、加湿モジュール4と、加湿モジュール4に加湿用水を供給する給水装置5と、加湿モジュール4の一側面に対して気体を供給する送風機3と、加湿モジュール4の下部に配置される箱型のドレンパン6と、を備え、加湿モジュール4の他側面は、ドレンパン6の壁面に対して、空間を介して配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
(ハウジング)
図1に示す通り、本実施形態の気化式加湿器は、建物の天井の内部に設置されるハウジング1を有する。このハウジング1は、グリッド型システム天井の開口部に挿入可能な寸法を有する。600×600mmの天井板を使用するグリッド型システム天井では、開口部の大きさは600×600mm未満となる。例えば、天井開口部の寸法としては、585×585mmとなる。ハウジング1は、開口部の内側に固定され得る寸法を有する。ハウジング1の下部は、天井面と略同一面となるように構成される。
【0020】
ハウジング1は箱型の部材であり、天井面と略同一面となる下部側に開口を有する。この開口は、矩形の板状の部材である化粧グリル2によって覆われ、化粧グリル2の下面が天井面と同一となる。従って、化粧グリル2の大きさは、天井の開口部より小さく、例えば580×580とすることができる。ハウジング1内には、送風機3、加湿モジュール4、給水装置5及びドレンパン6が設けられている。また、ハウジング1の内側にはドレンパン6の支持部材8が設けられる。
【0021】
(化粧グリル)
図2および3に示す通り、化粧グリル2には、吸気口2aと吹出口2bが設けられている。吸気口2aは、化粧グリル2の一端部と沿うように設けられた開口である。吸気口2aを介して取り込まれた気体は、送風機3に供給されるように構成されている。吹出口2bは、化粧グリル2の他端部に沿うように設けられた開口であり、吸気口2aと対向するように配置されている。
図3(b)に示す通り、給気口2aおよび吹出口2bには、それぞれ羽板21が回動可能に設けられており、羽板21の角度を調整することにより気体の方向性を調整可能に構成されている。
【0022】
吸気口2aと吹出口2bは、長手方向の寸法と、長手方向に対向する幅方向の寸法が、それぞれ同一となるように構成されていても良い。すなわち、化粧グリル2は、外観が左右対称となる。左右対称の構成を有する化粧グリル2を有する気化式加湿器を、グリッド型システム天井に配置することで、天井全体の意匠性が良好になる。
【0023】
図3(a)および(b)に示す通り、吸気口2aと、送風機3の間には、フィルタ22が設けられている。フィルタ22は、吸気口2aが形成された化粧グリル2の端部から、化粧グリル2の中心部分に至るように形成された矩形のフィルタである。フィルタ22は、化粧グリル2の中心側から吸気口2aに向かって傾斜するように設置されている。
【0024】
従来の気化式加湿器では、吸気口に対して平行にフィルタが配置されていたが、本実施形態では吸気口2aに対してフィルタ22は傾斜している。上記のように吸気口2aと吹出口2bを左右対称に形成する場合、吹出口2bの大きさに併せて吸気口2aの開口を縮小することとなる。そのため、従来の気化式加湿器と比べ、吹出口2bに対する吸気口2aの開口面積が縮小され、吸気口2aにおける吸気抵抗が増大する。そこで、吸気口2aに対してフィルタ22を傾斜させることで、吸気口2aとフィルタ22間の空間を増大させるとともに、吸気口2aに対向するフィルタの面積を増大させることにより、吸い込み効率を向上させている。
【0025】
フィルタ22の長手方向において対向する両端部の中央部分には、持ち手22aがそれぞれ設けられている。吸気口2aの開口が縮小された場合、フィルタ22のうち吸気口2a側のみに汚れが付着することとなる。従って、フィルタ22の向きを交換することで、フィルタ22の綺麗な面を吸気口2aと対峙させることができる。フィルタ22の両サイドに設けられた持ち手22aは、作業者が、フィルタ22の向きを交換する際に掴む部分である。
【0026】
また、化粧グリル2は、ネジ等の固定具を介してハウジング1に取り付けられる。そのため、化粧グリル2には、固定具を挿入可能に設けられた4枚の固定板23が角部に取り付けられている。固定板23のそれぞれには、固定具を挿入可能な長孔23aおよび23bと、ダルマ孔24aおよび24bが設けられている。長孔23aおよび23bは、対角線上に対向する2つの固定板23に設けられている。同様に、ダルマ孔24aおよび24bも、長孔23aおよび23bが設けられた固定板23とは異なる、対角線上に対向する2つの固定板23に設けられている。
【0027】
長孔23aおよび23bは、挿入されたネジ等の固定具がスライド移動可能となる長尺の孔である。長孔23aおよび23bは、例えば固定具のネジ頭部が通り抜けられない大きさで形成されている。よって、固定具が、長孔23aおよび23bを介してハウジング1に装着されると、固定板23が、固定具のネジ頭部によりハウジング1側に押さえつけられ、化粧グリル2がハウジング1に固定される。
【0028】
ダルマ孔24aおよび24bは、固定具がスライド移動可能となる長尺の孔に、円形の孔が連結された孔である。ダルマ孔24aおよび24bの長尺の孔は、例えば固定具のネジ頭部が通り抜けられない大きさで形成されている。ダルマ孔24aおよび24bの円形の孔は、例えば固定具のネジ頭部が通り抜けられる大きさで形成されている。よって、固定具が、ダルマ孔24aおよび24bの長尺の孔を介してハウジング1に装着される場合には、固定板23が、固定具のネジ頭部によりハウジング1側に押さえつけられ、化粧グリル2がハウジング1に固定される。
【0029】
(送風機)
送風機3は、ファン等を用いることができ、ハウジング1内において、化粧グリル2の吸気口2a側に配置されている。送風機3の排出口は加湿モジュール4に向き合うように配置されている。送風機3は、吸気口2aを介して吸入した気体を、加湿モジュール4の一側面に対して供給するように構成されている。具体的には、送風機3の排出口側には、排出される気体を広げて加湿モジュール4に供給するように、加湿モジュール4に向かって広がる四角錘台状の気体ガイド31が設けられている。送風機3は、従来の気化式加湿器で使用されていたものをそのまま用いている。すなわち、送風機3は、グリッド型システム天井の開口部に挿入可能な600×600mmの気化式加湿器を提供するために小型化されていない。
【0030】
(加湿モジュール)
加湿モジュール4は、例えば不織布等により形成された断面波型の板状の加湿素材が複数積層された構造を有する、直方体状の部材である。このような加湿モジュール4は、給水装置5により供給された水を一時的に保持し、加湿モジュール4が保持した水により気体の加湿を行う。送風機3により加湿モジュール4の一側面側に供給された気体は加湿されて、加湿モジュール4の他側面側から流出する。加湿モジュール4はドレンパン6に取り外し可能に固定されている。ドレンパン6をハウジング1から取り外すことで加湿モジュール4も同時にハウジング1から取り外すことができる。
【0031】
加湿モジュール4の寸法は、例えば、幅405mm×長さ80mm×高さ240mmである。従来の気化式加湿器における加湿モジュールの大きさは、幅405mm×長さ110mm×高さ250mである。すなわち、加湿モジュール4は、従来の加湿モジュールと比較して、小型化されている。ただし、加湿モジュール4は、ハウジング1の大きさに併せて単純に小型化されているわけではなく、十分な加湿能力を提供可能な大きさに設計されている。
【0032】
本実施形態の加湿モジュール4は、1.5kg/hの加湿量を得られるように、上記の寸法に設定されている。ただし、加湿モジュール4の加湿量は、加湿モジュール4の送風機3に対向する一側面の面積と、風量により決定される。本実施形態では、風量が460m
3/hのときに、加湿モジュール4の通過風速が1.5m/sとなるように、加湿モジュール4の寸法が決定されているが、加湿モジュール4の寸法は上記に限定されない。
【0033】
(給水装置)
給水装置5は、給水パイプを含み、加湿モジュール4の上部に給水可能に構成されている。給水装置5は、図示しない電磁弁により給水と停止が制御される。給水装置5は、従来の気化式加湿器で使用されていたものをそのまま用いている。すなわち、給水装置5は、グリッド型システム天井の開口部に挿入可能な600×600mmの気化式加湿器を提供するために小型化されていない。
【0034】
(ドレンパン)
図4および6に示す通り、ドレンパン6は、加湿モジュール4の下部に設けられる箱型の部材である。ドレンパン6は、長手方向および長手方向に直交する幅方向の双方において、加湿モジュール4より大きい。従って、加湿モジュール4から流れ落ちる水を受け止めて、貯留することが可能な構成を有している。ドレンパン6は、ハウジング1に対して取り外し可能に固定される。
【0035】
ドレンパン6の寸法は、例えば、幅550mm×長さ220mm×高さ75mmである。従来の気化式加湿器におけるドレンパンの大きさは、幅560mm×長さ225mm×高さ85mmである。すなわち、本実施形態におけるドレンパン6は、従来のドレンパンと比較して、若干小型化されている。本実施形態のドレンパンは、仮に給水装置5の電磁弁等において漏水が発生した場合に、漏水を受け止めることが可能な大きさに設計されている。ただし、ドレンパン6の寸法は、上記に限定されず、さらに小型化することもできる。
【0036】
また、
図4に示す通り、ドレンパン6の底面には、排水口が設けられている。ドレンパン6の底面は、排水口に向かって傾斜するように形成されている。排水口には、ドレンパン6の外底面側に設けられた円筒型の排水管が接続されている。この排水管には、排水キャップ7が設けられている。
【0037】
(排水キャップ)
図5(a)に示す通り、排水キャップ7は、リング7a、ベルト7b、およびキャップ7cを含む。排水キャップ7は、ゴムなどの弾性体で形成されている。リング7aは、ドレンパン6の排水管の外周側に装着される部分である。リング7aの内径は、排水管の外径より小さい。すなわち、排水管に装着した際に排水管から落下しない大きさである。リング7aは、作業者がリング7aの一部を引っ張ることにより伸びて、排水管から外すことが可能となるように構成されている。
【0038】
ベルト7bは、リング7aとキャップ7cを繋ぐ、帯状の部材である。ベルト7bの一端にはリング7aが、ベルト7bの他端にはキャップ7cが形成されている。キャップ7cは排水管の開口部に装着される蓋である。
図5(b)に示すように、キャップ7cは、底面を有し、外径が排水管の内径と略一致する内筒71が、底面から立ち上がるように形成されている。また、内筒71の外周側には、内径が排水管の外径と略一致する外筒72が、キャップ7cの底面から内筒71と同一方向に立ち上がるように形成されている。内筒71の外周と、外筒72の内周の間には、排水管の厚みと略一致する寸法の空間が形成されている。キャップ7cは、内筒71と外筒72で排水管の内周と外周を挟み込むように装着され、排水管の蓋となる。ただし、キャップ7cの形状はこれに限定されない。
【0039】
(水滴回収板)
図1および6に示す通り、ドレンパン6は、加湿モジュール4の他側面側、すなわち気体が流出する側と対向する壁面の端部に、水滴回収板61が設けられている。水滴回収板61は、ドレンパン6の壁面端部に向かって傾斜する板状の部材である。水滴回収板61は、加湿モジュール4から飛散した水滴を受け止め、傾斜により水滴をドレンパン6に導く部材である。
【0040】
水滴回収板61の長さは、ドレンパン6の長手方向の長さと略同一である。水滴回収板61の幅方向の長さは、20〜25mm程度となるように形成されている。この水滴回収板61の幅方向の長さは、従来の気化式加湿器における水滴回収板の1/3程度の長さである。水滴回収板61には、水滴回収板61に水滴がついたことを検出可能に構成された、漏水センサ62が設けられている。
【0041】
(ドレンパンと加湿モジュールの配置構成)
ドレンパン6に対する加湿モジュール4の配置構成についてさらに説明する。
図6に示す通り、加湿モジュール4の通気面および排気面は、ドレンパン6の幅方向に対向する2つの壁面の双方に対して、空間を介して配置されている。通気面は、送風機3を介して気体が供給される側、排気面は加湿モジュール4を通過した気体が排出される側の面である。
【0042】
送風機3の排出口から加湿モジュール4までの距離は、送風機3から供給される気体が加湿モジュール4の通気面の全面に対して供給可能となる距離である。送風機3から排出された気体は、気体ガイド31に沿って加湿モジュール4の通気面の面積と同等に拡大される。この気体の拡大に距離が必要となるため、送風機3と加湿モジュール4との間に所定の距離が必要となる。
【0043】
ドレンパン6の一壁面は、加湿モジュール4の通気面に対して空間を介して配置されていても良い。加湿モジュール4の通気面側において、ドレンパン6を拡張することにより、給水装置5の電磁弁等から万一漏水が発生した場合には、ドレンパン6で漏水を回収することができる。ただし、加湿モジュール4とドレンパン6の一側面との間に空間を設けず、隣接するように配置しても良い。
【0044】
また、加湿モジュール4の排気面は、ドレンパン6の他壁面に対して空間を介して配置されている。図示の例では、加湿モジュール4の排気面は、210mmの高さを有する。ここでは、加湿モジュール4の排気面は加湿素材の露出面と同等であり、加湿素材の露出面の高さが210mmであることを意味する。加湿モジュール4の排気面から、ドレンパン6の他壁面までの距離は、30mm以上あると好ましい。すなわち、加湿モジュール4の他側面と、ドレンパン6の他壁面と、の間の空間が、加湿モジュール4の高さの7分の1以上となるように構成されている。加湿モジュール4から飛散する水滴をドレンパン6内に回収できるからである。従来の気化式加湿器では、加湿モジュール4の排気面は、ドレンパンの他壁面と隣接するように設けられていた。すなわち、従来では加湿モジュール4の排気面とドレンパン6の壁面の間に空間はない。
【0045】
本実施形態では、上述の通り、小型化にあたり水滴回収板61の長さが従来の水滴回収板よりも短くなっている。そのため、従来のようにドレンパン6の他壁面と隣接するように加湿モジュール4を配置すると、加湿モジュール4の排気面から、ドレンパン6の他壁面側に飛んだ水滴が、水滴回収板61を飛び越える可能性がある。加湿モジュール4の排気面と、ドレンパン6の他壁面との間に空間を設けることで、ドレンパン6にて水滴を回収しつつ、ドレンパン6を超える水滴については水滴回収板61が確実に回収する。
【0046】
言い換えると、加湿モジュール4の排気面と、水滴回収板61の端部との間の距離を55mm以上とする。すなわち、加湿モジュール4の他側面と、水滴回収板61の端部と、の間の距離が、加湿モジュールの高さの4分の1以上となるように構成されている。水滴回収板61が確実に水滴を回収できて良いからである。本実施形態のドレンパン6は、従来の気化式加湿器のドレンパンと比較して、長さ方向の寸法が短くなるように構成されている。それに加え、加湿モジュール4と水滴回収板61の端部との距離を確保するために、ドレンパン6の幅方向の寸法を短くするとドレンパン6の容量が失われる。一方、本実施形態では、加湿モジュール4の排気面とドレンパン6の壁面との間に空間を設けることで、ドレンパン6が飛散した水滴を回収する。また、空間により加湿モジュール4の排気面から水滴回収板61の端部までの距離と、ドレンパン6の容量と、の双方が確保されている。
【0047】
ただし、加湿モジュール4の排気面とドレンパン6の他壁面の間の距離、ドレンパン6、および水滴回収板61の具体的な寸法は上記に限定されない。加湿モジュール4の排気面と、ドレンパン6の他壁面との間の空間が、加湿モジュール4の高さの7分の1以上となる範囲で適宜変更可能である。水滴回収板61の長さを変更せずに、傾斜角を変更することにより、加湿モジュール4と水滴回収板の端部との間の距離を変更しても良い。また、水滴回収板61を設けず、加湿モジュール4の排気面と、ドレンパン6の他壁面との間の空間を、加湿モジュール4の高さの4分の1以上に拡大して、ドレンパン6で全ての水滴を回収する構成としても良い。その場合には、ドレンパン6の他壁面の上端部側に、漏水センサ62を設けても良い。
【0048】
(ドレンパンの取り外し構造)
ドレンパン6は、ハウジング1に対して取り外し可能に固定される。
図7に示す通り、ドレンパン6の長手方向において対向する2つの壁面には、一定の間隔で3個の突起63が設けられている。突起63は、ドレンパン6の壁面から垂直方向に伸びる短い板である。
【0049】
図1に示す通り、ハウジング1の内側にはドレンパン6の支持部材8が設けられる。この支持部材8は、ハウジング1の内面において、ドレンパン6の突起63と対向する位置にそれぞれ設けられる板状の部材である。支持部材8は、ドレンパン6の突起63と係合することで、ドレンパン6の両端を支持する。
【0050】
具体的には、
図7に示す通り、支持部材8のドレンパン6と向き合う面には3個のホルダ81が設けられている。ホルダ81は、ドレンパン6の突起63と対向する位置に設けられた溝であり、その下部が開口して、突起63の出入口になっている。ドレンパン6を上下させると、突起63はホルダ81内で上下に移動することとなる。ドレンパン6を下方に移動させて、突起63をホルダ81の下方の出入口外部に移動させることで、ドレンパン6は気化式加湿器から取り外される。
【0051】
3個のホルダ81の下部には出入口を塞ぐように1本のストッパ82が設けられている。ストッパ82は、長手方向に対向する2つの端部が垂直に立ち上がる板状の部材であり、支持部材8の横幅の約半分の長さを有する。ストッパ82は、ホルダ81の下方に水平方向に設けられたストッパ溝83に、水平方向にスライド移動可能に支持されている。また、
図8(a)に示す通り、ストッパ82は、板状部材の底面側に凸部82aを有する。
【0052】
ストッパ溝83は、ストッパ82を保持可能に設けられた溝である。ストッパ溝83は、支持部材8の横幅と略同一の長さ、すなわちストッパ82の約2倍の長さを有する。ストッパ82がホルダ81の下方に位置するようにスライド移動されたストップ位置においては、ストッパ溝83は支持部材8の内側に設けられている。
【0053】
ここで、
図8(b)に示す通り、ストップ位置において、ストッパ溝83の上面には、凹部83aが設けられている。凹部83aは、凸部82aと係合するように構成されている。すなわち、凸部82aと、凹部83aは、係合部である。凸部82aおよび凹部83aの形状は変更可能であり、図示のものに限定されない。また、凹部83aをストッパ82に設け、凸部82aをストッパ溝83に設ける構成としても良い。
【0054】
一方、ストッパ82がホルダ81の下方に位置しないようにスライド移動された解除位置においては、ストッパ溝83は、支持部材8の外側に設けられている。すなわち、ストッパ溝83は、ストップ位置においては支持部材8の内側に、解除位置においては支持部材8の外側に露出するように設けられている。そして、支持部材8には、そのストップ位置から解除位置にストッパ82を移動可能とする貫通孔84が設けられている。
【0055】
ストッパ溝83におけるストッパ82の解除位置には、ストッパ溝83の長さ方向に沿って長溝85が設けられている。ストッパ82の解除位置側の端部には、ストッパ82を固定するための部材としてねじ86が設けられている。このねじ86は、長溝85を貫通して支持部材8の内側に突出しており、ねじ86の頭部とストッパ82により長溝85の縁を締め付けることで、ストッパ82が支持部材8に固定される。
【0056】
ストッパ82の下方には、3個の四角形の空間部87が設けられている。空間部87の縦の長さは突起63の長さよりも長い。ドレンパン6を取り外す際に、3個のホルダ81から下降した3本の突起63が水平方向に移動することができる長さである。空間部87の上部には、ホルダ81を構成する縦溝の延長上に、ホルダ81よりも短い縦溝88が設けられている。
【0057】
空間部87の下辺は突起63の下端が当たる落下防止部87aとなる。空間部87の横の長さは、図示の実施形態では突起63の間隔とほぼ同一であるが、落下防止部87aから突起63が外れない寸法であれば、突起63の間隔とほぼ同一でなくても良い。落下防止部87aにおけるホルダ81と反対側の端部には、空間部87から下方に開口した通過部89が設けられている。この通過部89は、突起63が縦方向に移動することのできる幅を有する。
【0059】
(化粧グリルの取り付け)
本実施形態の化粧グリル2は、以下の手順でハウジング1に固定される。まず、長孔23aおよび23bと、ダルマ孔24aおよび24bと対向する位置に設けられた、ハウジング1側の固定孔に2本のねじ等の固定具を挿入して固定する。この2本の固定具は、ダルマ孔24aおよび24bと対向する位置に設けられた固定孔に挿入される。
【0060】
次に、化粧グリル2のダルマ孔24aおよび24bの円形の孔から、ハウジング1に固定された固定具の頭部を挿入し、そのまま長尺の孔にスライド移動させる。固定具がダルマ孔24aおよび24bの長尺の孔に移動されれば、作業者が化粧グリル2から手を放しても、化粧グリル2が落下することはない。その状態で、作業者は両手を使って、さらに2本の固定具を長孔23aおよび23bを介して挿入し、ハウジング側の固定孔に装着することができる。そして、作業者は、天井開口位置を考慮の上、化粧グリル2の取り付け位置を調整してから固定具を締め込むことで、化粧グリル2を固定する。
【0061】
(ドレンパンの取り付けおよび取り外し)
本実施形態の気化式加湿器では、
図1に示すドレンパン6の取り付け状態では、ドレンパン6の両側に設けられた3つの突起63が、左右の支持部材8に設けられた3つのホルダ81内に収納されている。この状態から、
図7に示すように、ドレンパン6を左右の支持部材8から下方に取り外すには、以下の作業を行う。
【0062】
まず、ドレンパン6が支持部材8に固定されている状態では、3本の突起63はその上端が3個のホルダ81の上端とほぼ同位置になるように、ホルダ81の内部に収容されている。このとき、ストッパ82は各ホルダ81の下方に移動し、突起63がホルダ81から落下しないように支持している。ストッパ81は、ねじ86の頭部を締め付けることで、ストッパ溝83内で固定され、移動することがない。このストップ位置において、ストッパ82の凸部82aは、ストッパ溝83の凹部83aと係合している。
【0063】
ドレンパン6を取り外すには、まず、ドレンパン6の両側の支持部材8において、ストッパ82を固定しているねじ86の頭部を緩め、ねじ86を長溝85に沿って解除方向に押すことで、ストッパ82をストッパ溝83に沿って解除方向に移動させる。この時、ねじ86を緩めただけではストッパ81が移動しないので、ドレンパン6を支持していなくてもドレンパン6が落下することはない。従って、ねじ86を緩める作業を簡単に行うことができる。
【0064】
ねじ86を緩めた後は、ドレンパン6を下から片手で支えながらストッパ82を移動させる。ストッパ82が3個のホルダ81の下方から移動されると、ホルダ81の出入口が開く。そこで、突起63を、出入口を通すように下降させる。下降した突起63は、空間部87の下辺である落下防止部87aに引っ掛かるため、それ以上ドレンパン6が落下することがない。
【0065】
ドレンパン6の両側の突起63が落下防止部87aに引っ掛かった状態で、空間部87内においてドレンパン6を横移動させる。突起63が落下防止部87aの端部に達した後は、通過部89を通して突起63を落下防止部の下方に移動させ、ドレンパン6を支持部材8から取り外す。この手順によれば、ドレンパン6を常に水平に保持した状態で取り外すことが可能である。
【0066】
前記の様にして取り外したドレンパン6を支持部材8に固定するには、前記とは逆の作業を行う。その場合、ストッパ82は、当初は解除位置にあるが、ドレンパン6の突起部63が、支持部材8のホルダ81に挿入された後、ストップ位置にスライド移動される。ストッパ82がストップ位置に移動されると、ストッパ82の底面に設けられた凸部82aと、ストッパ溝83の上面に設けられた凹部83aと、が重なりクリック音が生じる。作業者は、凸部82aと凹部83aとの係合により発生したクリック感を、手応えとして感じられる。
【0067】
[1−3.効果]
本実施形態の気化式加湿器が奏する作用効果は以下の通りである。
(1)加湿モジュール4と、加湿モジュール4に加湿用水を供給する給水装置5と、加湿モジュール4の一側面に対して気体を供給する送風機3と、加湿モジュール4の下部に配置される箱型のドレンパン6と、を備え、加湿モジュール4の他側面は、ドレンパン6の壁面に対して、空間を介して配置されている。
【0068】
従来の気化式加湿器では、加湿モジュールの排気面とドレンパンの壁面の間には空間が無く、両者は隣接するように設けられていた。そのため、加湿モジュールの排気面から飛散する水滴の回収の役割は水滴回収板が単独で担っていた。従って、水滴回収板は所定の長さが必要となり、気化式加湿器の小型化のために水滴回収板を単純に短くすると漏水の危険性があり、小型化が困難であった。
【0069】
一方、本実施形態の気化式加湿器では、加湿モジュール4の排気面は、ドレンパン6の壁面に対して、空間を介して配置されている。そのため、加湿モジュール4の排気面から飛散した水滴の回収をドレンパン6で行うことが可能となり、水滴回収板を縮小することが可能となった。加湿性能に直接的に貢献しない水滴回収板を縮小することで、十分な加湿性能を有し、従来の気化式加湿器と一部の構成を共通化しつつも小型化された気化式加湿器を提供することが可能となる。
【0070】
(2)加湿モジュール4の他側面と、ドレンパン6の壁面と、の間の空間が、加湿モジュール4の高さの7分の1以上である。
【0071】
加湿モジュール4の排気面と、ドレンパン6の壁面と、の間の空間を、加湿モジュール4の高さの7分の1以上とすることで、ドレンパン6が確実に水滴を回収することが可能となる。
【0072】
(3)ドレンパン6には、加湿モジュール4の他側面側の壁面端部に、壁面端部に向かって傾斜する水滴回収板61が設けられ、加湿モジュール4の他側面と、水滴回収板61の端部との間の距離が、加湿モジュール4の高さの4分の1以上となるように構成されている。
【0073】
加湿モジュール4の排気面から、水滴回収板61の端部までの距離を、加湿モジュール4の高さの4分の1以上とすることで、万が一ドレンパン6を飛び越える水滴があったとしても、水滴回収板61がその水滴を受け止めることができる。
【0074】
(4)加湿モジュール4と、給水装置5と、送風機3と、ドレンパン6と、を収容する、下部に開口を有するハウジング1と、ハウジング1の開口を覆う化粧グリル2と、をさらに備え、化粧グリル2の両端部には、吸気口2aと吹出口2bと、が形成され、吸気口2aと吹出口2bと、は、長手方向の寸法と、長手方向に対向する幅方向の寸法が、それぞれ同一となるように構成されている。
【0075】
化粧グリル2は、外観が左右対称となる。グリッド型システム天井では、矩形の天井板が格子状に配置される構成を活かして、ひとつの天井板に蛍光灯を2本ずつ左右対称に配置することが多い。このように蛍光灯が配置された天井板を複数並べて天井とすることで、天井全体の意匠性を向上させている。そのため、左右対称の構成を有する化粧グリル2を有する気化式加湿器を、グリッド型システム天井に配置することで、天井全体の意匠性を向上させることができる。
【0076】
(5)吸気口2a送風機3との間には、フィルタ22が設けられ、フィルタ22は、吸気口2aに対して傾斜している。
【0077】
本実施形態の気化式加湿器では、吸気口2aと吹出口2bを左右対称に形成されている。そのため、吹出口2bの大きさに併せて吸気口2aの開口が縮小される。従って、従来の気化式加湿器と比べ、吹出口2bに対する吸気口2aの開口面積が縮小され、吸気口2aにおける吸気抵抗が増大する。そこで、吸気口2aに対してフィルタ22を傾斜させることで、吸気口2aとフィルタ22間の空間を増大させることができ、吸い込み効率を向上することが可能となる。吸込み効率の向上により、加湿性能をさらに向上させることができる。
【0078】
(6)フィルタ22は矩形であり、長手方向において対向する両端部には、持ち手22aがそれぞれ設けられている。
【0079】
吸気口2aの開口が縮小された場合、フィルタ22のうち吸気口2a側の片側のみに汚れが付着する傾向となる。従って、フィルタ22の両端部に持ち手22aを設けることで、フィルタ22の向きを交換することを可能とした。これにより、フィルタ22の綺麗な面を吸気口2aと対峙させることができ、フィルタ22の全面を使用することが可能となる。従って、フィルタ22の清掃周期を長くすることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0080】
(7)化粧グリル2には、対角線上に対向する2枚の固定板23が取り付けられ、固定板23には、ダルマ孔24aおよび24bがそれぞれ設けられている。
【0081】
固定板23に設けられる固定孔をダルマ孔24aおよび24bとすることで、ダルマ孔24aおよび24bを介して化粧グリル2を取り付けた後は、作業者は化粧グリル2から手を離すことができるため、一人で化粧グリル2をハウジング1に固定することができる。すなわち、化粧グリル2の作業性が向上される。また、他の固定板23に長孔23aおよび23bを設けることにより、万一地震等により振動が発生し化粧グリル2の固定位置にずれが生じた場合であっても、化粧グリル2が外れて落下することがなく、安全性を向上できる。
【0082】
(8)ドレンパン6の排水口に接続された排水管には、排水キャップ7が設けられ、排水キャップ7は、リング7aと、リング7aが一端に形成された帯状のベルト7bと、ベルト7bの他端に形成された排水管に装着されるキャップ7cと、を含み、リング7aの内径は、排水管の外径より小さく形成されている。
【0083】
従来の気化式加湿器では、ドレンパンの底面の排水部には、ゴム製のキャップやネジ加工されたプラグでドレンパンの止水を行っていた。この場合、排水時にキャップやプラグを取り外しドレンパン内部の残水を排水することになる。従来の気化式加湿器の構造では、ドレンパンの排水作業を一人で行う場合、片手でバケツ上の水受けを持つと同時に、もう片方の手で排水キャップやプラグを取り外し、取り外したキャップやプラグが落下しないように保持する必要があった。そのため、両手が塞がり、特に天井面などの高所作業の場合には、危険な作業となっていた。
【0084】
一方、本実施形態の気化式加湿器では、排水キャップ7は、リング7aとキャップ7cが帯状のベルト7bにより繋がっており、リング7aの内径は、排水管の外径より小さく形成されている。リング7aが排水管に固定されるため、キャップの取り外し時に作業者がキャップから手を放しても、キャップが落下しない。そのため、作業者は両手で作業を行うことが可能となり、ドレンパン6の排水時における作業性および安全性が向上する。また、排水キャップ7の紛失を防止することができる。
【0085】
(9)ドレンパン6の両端部にそれぞれ設けられた突起63と、ハウジング1の向かい合う内面にそれぞれ設けられた支持部材8と、支持部材8に設けられた、突起63のホルダ81と、ホルダ81の下部に設けられた、突起63の出入口と、突起63の出入口を開閉する方向に移動するストッパ82と、ストッパ82を保持可能に設けられたストッパ溝83と、突起63の出入口を閉鎖する位置に、ストッパ82を固定するねじ86と、突起63の出入口の下方に設けられた落下防止部87aと、落下防止部87aの一端において、下方に向けて開口した通過部89と、 を有し、ストッパ82の底面と、ストッパ溝83の上面とに、係合部が設けられている。
【0086】
従来の気化式加湿器では、ドレンパンと加湿モジュールの着脱の際には、ドレンパンの両端部をストッパで支える構造としていた。そのため、作業者によっては、ドレンパン取り付け作業時にストッパのスライド量が足りず、必要位置までストッパをスライドさせなかった場合、ドレンパンの取り付けが不十分になることがあった。
【0087】
一方、本実施形態の気化式加湿器では、ストッパ82とストッパ溝83に設けられた係合部により、ドレンパン6の取り付け時に、クリック音が生じるとともに、作業者は係合部が係合したことを手応えとして感じることができる。メンテナンス作業者がドレンパンの取り付け時にストッパ82を適正位置までスライドし、ドレンパン6が確実に取り付けできたことを手応えと音により容易に判別できるようになる。
【0088】
[2.他の実施形態]
(1)図示の実施形態では、ドレンパン6の両端にそれぞれ3個の突起63を設けたが、突起63の数は2つでも、4つ以上でもよい。各突起63は、垂直方向に伸びる板状の部材に限らず、水平方向に伸びる板状の部材でも、丸棒、角棒、筒状の部材であってもよい。この突起63の形状に合わせて、支持部材8に設けるホルダ81、落下防止部87a及び通過部89の形状も適宜変更できる。
【0089】
(2)ストッパ82は、横方向にスライドする板状の部材に限定されない。突起63の出入口を塞ぐものであれば、軸を中心として回転方向に移動するストッパ82を使用することもできる。ストッパ82を固定する部材はねじ86に限定されず、ピンやフックなど、ストッパ86を出入口の閉鎖位置に固定したり解除できるものであれば、他の形状でもよい。
【0090】
(3)図示の実施形態では、突起63をドレンパン6に設け、ホルダ81、落下防止部87a及び通過部89を支持部材8に設けたが、ドレンパン6にホルダ81、落下防止部87a及び通過部89を設け、支持部材8に突起63を設けてもよい。ドレンパン6をハウジング1に固定するストッパ82は、第1実施形態のように支持部材8に設ける代わりに、ドレンパン6に設けてもよい。
【0091】
この場合は、突起63と支持部材8を第1実施形態とは上下反対に構成することで、ドレンパン6に設けた落下防止部87aを支持部材8の突起63に引っかけることができる。
【0092】
すなわち、支持部材8にホルダ81を設け、ホルダ81の上部に突起63の出入口を設ける。この突起63の出入口には、出入口を開閉する方向に移動するストッパ82を設け、支持部材8における突起63の出入口を閉鎖する位置にストッパ82を固定するねじ86を設ける。突起63の出入口の上方に落下防止部87aを設け、ドレンパン6と共に支持部材8が落下した場合、支持部材8に設けた落下防止部87aが突起63に引っかかって、ドレンパン6のそれ以上の落下を防ぐ。その後、ドレンパン6を落下防止部87aの表面に沿って横に移動させ、落下防止部87aの端部に上方に向けて開口した通過部89に突起63を通すことで、ドレンパン6を突起63の下方に移動させる。
【0093】
(4)図示の実施形態は、加湿モジュール4を固定したドレンパン6を、加湿モジュール4と共に天井のハウジング1内から取り外すものであるが、加湿モジュール4とドレンパン6が別体に設けられ、ドレンパン6のみを取り外す構造の気化式加湿器にも本発明を適用することができる。