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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-37501(P2021-37501A)
(43)【公開日】2021年3月11日
(54)【発明の名称】破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/14 20060101AFI20210212BHJP
   B02C 18/16 20060101ALI20210212BHJP
【FI】
   B02C18/14 Z
   B02C18/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-162318(P2019-162318)
(22)【出願日】2019年9月5日
(71)【出願人】
【識別番号】591119624
【氏名又は名称】株式会社御池鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 由和
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀匡
(72)【発明者】
【氏名】相方 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065CA16
4D065CB10
4D065DD04
4D065DD18
4D065EB11
4D065EB14
4D065EB20
4D065EC09
4D065EE07
4D065EE12
4D065EE20
(57)【要約】
【課題】固定刃と回転刃によるせん断作用を適切に調節でき、従来よりも多種類の被処理物を破砕できる破砕機を提供する。
【解決手段】
破砕機は、ロータ2の回転体4の回転刃支持部11に固定される回転刃5の厚みに応じて、ロータ2の半径Kに対する固定刃5のすくい面5aの傾斜角度θ1が調節可能に形成されている。また、固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置が調節可能に形成され、回転刃5のすくい面5aと固定刃6のすくい面6aとの間のせん断角度θ2が調節可能に形成されている。傾斜角度θ1とせん断角度θ2をパラメータとして、回転刃5の刃線と固定刃6の刃線の間のクリアランスの大きさの分布を調節可能に形成されている。回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさを、せん断の開始時よりも終了時の方が小さくなるように設定することにより、繊維類の被処理物を効果的に破砕する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記処理室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕機において、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項3】
請求項1に記載の破砕機において、
上記回転刃支持部は、異なる厚みの回転刃が固定可能に形成され、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更すると共に、上記回転刃支持部に固定する回転刃の厚みを設定することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の破砕機において、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が小さくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の破砕機において、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が大きくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項6】
請求項1に記載の破砕機において、
上記固定刃支持部と固定刃との間に配置され、固定刃固定ボルトが挿通される挿通孔を有する位置調節板を備え、
上記固定刃は、上記固定刃固定ボルトに挿通される固定刃挿通孔を有し、
上記固定刃支持部は、上記固定刃固定ボルトに螺合する螺子孔を有し、
上記固定刃の固定刃挿通孔と上記位置調節板の挿通孔とに挿通された上記固定刃固定ボルトが上記固定刃支持部の螺子孔に螺合して、上記固定刃支持部に上記位置調節板を介して上記固定刃が固定されることにより、上記位置調節板の厚みに応じて上記固定刃の固定位置が厚み方向に調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項7】
請求項6に記載の破砕機において、
上記固定刃の固定刃挿通孔が、上記V字型の刃線の先端が向く方向に延びる長孔に形成され、上記固定刃の固定位置が上記長孔に沿って上記刃線の先端の向く方向に調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項8】
請求項2又は3に記載の破砕機において、
上記回転刃の刃線を含む面の回転半径に対する傾斜角度が、5°以上15°以下の間で調節可能に形成され、
上記回転刃の刃線を含む面と、上記固定刃の刃線を含む面との間の角度が、10°以上30°以下の間で調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば都市ごみ等の廃棄物を破砕する破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、廃棄物の処理施設において、廃棄物の処理の容易化や再生資源としての利用等を目的として、廃棄物を破砕する破砕機が用いられている。従来の破砕機としては、被処理物である廃棄物の投入口が上部に設けられた本体ケーシングと、この本体ケーシング内に配置されて回転駆動される円筒状のロータと、このロータの外周面に配置された複数の回転刃と、上記本体ケーシング内に配置された固定刃と、上記ロータの周囲の一部を取り囲む有孔スクリーンとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来の破砕機は、投入口から本体ケーシング内に投入された廃棄物を、ロータが回転して発揮される固定刃と回転刃のせん断作用で破砕する。廃棄物は、固定刃と回転刃で破砕されて寸法が小さくなり、有孔スクリーンの孔よりも小さい寸法になると、有孔スクリーンを通過して排出される。
【0004】
上記回転刃は、上記端ロータの外周面に設けられた回転刃支持部に、ボルトナットで交換可能に固定されている。また、上記固定刃は、上記回転刃が接近してせん断作用を奏する位置に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−28517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の破砕機は、被処理物が布や網等のような繊維で形成されたものである場合、固定刃と回転刃によるせん断が不十分となる問題がある。このような処理困難物は、せん断が不十分であるので、ロータの周りに巻き付いて、運転の異常停止を招く場合がある。すなわち、上記従来の破砕機は、被処理物の材質によっては、せん断作用が十分に発揮できず、破砕効果が得られ難い場合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、固定刃と回転刃によるせん断作用を適切に調節でき、従来よりも多種類の被処理物を破砕できる破砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の破砕機は、被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記処理室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、被処理物がケーシングの投入口に投入され、破砕室に導かれる。破砕室内では、回転軸に回転力が入力されて、回転体が回転駆動される。この回転体の外周部の回転支持部に支持された回転刃と、処理室内の固定刃支持部に支持された固定刃との協働により、被処理物がせん断される。詳しくは、回転刃の三角山型の刃線と、この回転刃の刃線に対応する固定刃のV字型の刃線との間で、被処理物がせん断される。ここで、上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されているので、せん断の過程で回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさを、変化させることができる。これにより、異なる材質の被処理物を有効にせん断することができる。その結果、多様な材質の被処理物を、材質に応じて適切に破砕することができる。
【0010】
三角山型の刃線を有する回転刃と、V字型の刃線を有する固定刃とでせん断を行う場合、せん断の過程で、回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが変化する場合がある。従来の破砕機において、繊維で形成された被処理物の破砕が不十分となるのは、回転刃の刃線と固定刃の刃線とのクリアランスの大きさが、回転刃の先端部分よりも、回転刃の基端部分の方が大きいことに起因することが、本発明者によって発見された。この発見に基づいて研究を行った結果、本発明者は、せん断の過程で回転刃の三角山型の刃線と固定刃のV字型の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさの分布を、被処理物の材質に応じて調節すれば、被処理物を適切に破砕できることを見出した。そして、せん断の過程における回転刃の刃線と固定刃の刃線とのクリアランスの大きさの分布は、固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、有効かつ容易に調節できることが、本発明者によって見出され、本発明が成されるに至った。
【0011】
一実施形態の破砕機は、上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されている。
【0012】
上記実施形態によれば、固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、回転刃の回転に伴って実行される回転刃と固定刃によるせん断の過程で、回転刃の刃線と固定刃の刃線とのクリアランスの大きさの分布が調節される。ここで、クリアランスの大きさが、回転刃の先端部分と、回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されているので、被処理物の材質に応じた分布に調節することにより、異なる材質の被処理物を適切に破砕することができる。
【0013】
一実施形態の破砕機は、上記回転刃支持部は、異なる厚みの回転刃が固定可能に形成され、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更すると共に、上記回転刃支持部に固定する回転刃の厚みを設定することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、固定刃の固定刃支持部に対する固定位置と、回転刃支持部に固定する回転刃の厚みを変更することにより、回転刃の回転に伴って実行される回転刃と固定刃によるせん断の過程で、回転刃の刃線と固定刃の刃線とのクリアランスの大きさの分布が調節される。ここで、クリアランスの大きさが、回転刃の先端部分と、回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されているので、被処理物の材質に応じた分布に調節することにより、異なる材質の被処理物を適切に破砕することができる。
【0015】
一実施形態の破砕機は、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が小さくなるように調節可能に形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、回転刃の回転に伴って回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、回転刃の先端部分よりも、回転刃の基端部分の方が小さくなるように調節されることにより、例えば繊維で形成された被処理物のように、柔軟かつ靭性の高い被処理物を、効果的にせん断することができる。これにより、例えば布や網等のせん断が不十分となって回転体の周りに巻き付くような不都合を、効果的に防止できる。
【0017】
一実施形態の破砕機は、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が大きくなるように調節可能に形成されている。
【0018】
上記実施形態によれば、回転刃の回転に伴って回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、回転刃の先端部分よりも、回転刃の基端部分の方が大きくなるように調節されることにより、例えば木材や硬質プラスチックのような、脆性の比較的高い被処理物を、固定刃と回転刃からの逃げを防止して、効果的にせん断することができる。これにより、被処理物に対する固定刃と回転刃の食い付きの不足によって破砕効率が低下する不都合を、効果的に防止できる。
【0019】
一実施形態の破砕機は、上記固定刃支持部と固定刃との間に配置され、固定刃固定ボルトが挿通される挿通孔を有する位置調節板を備え、
上記固定刃は、上記固定刃固定ボルトに挿通される固定刃挿通孔を有し、
上記固定刃支持部は、上記固定刃固定ボルトに螺合する螺子孔を有し、
上記固定刃の固定刃挿通孔と上記位置調節板の挿通孔とに挿通された上記固定刃固定ボルトが上記固定刃支持部の螺子孔に螺合して、上記固定刃支持部に上記位置調節板を介して上記固定刃が固定されることにより、上記位置調節板の厚みに応じて上記固定刃の固定位置が厚み方向に調節可能に形成されている
【0020】
上記実施形態によれば、固定刃支持部と固定刃との間に、厚みによって固定刃の位置を調節するための位置調節板が配置される。固定刃固定ボルトを、固定刃の固定刃挿通孔と、位置調節板の挿通孔とに挿通して、固定刃支持部の螺子孔に螺合する。このように、位置調節板を介して固定刃を固定刃支持部に固定することにより、位置調節板の厚みに応じて固定刃の固定位置を厚み方向に調節することができる。これにより、固定刃の刃線と回転刃の刃線との間の角度を容易に変更することができる。その結果、せん断の過程で回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさの分布を、容易かつ適切に調節にできる。
【0021】
一実施形態の破砕機は、上記固定刃の固定刃挿通孔が、上記V字型の刃線の先端が向く方向に延びる長孔に形成され、上記固定刃の固定位置が上記長孔に沿って上記刃線の先端の向く方向に調節可能に形成されている。
【0022】
上記実施形態によれば、固定刃固定ボルトに挿通される固定刃の固定刃挿通孔が、固定刃のV字型の刃線の先端が向く方向に延びる長孔に形成されている。これにより、固定刃固定ボルトによって固定刃支持部へ固定される固定刃の固定位置が、上記長孔に沿って刃線の先端の向く方向に調節可能である。したがって、せん断の過程で回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさの分布を、容易かつ適切に調節にできる。
【0023】
一実施形態の破砕機は、回転軸方向視において、上記回転刃の刃線の回転半径に対する傾斜角度が5°以上15°以下の間で調節可能に形成され、上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間の角度が10°以上30°以下の間で調節可能に形成されている。
【0024】
上記実施形態によれば、回転軸方向視において、回転刃の刃線の回転半径に対する傾斜角度が5°以上15°以下の間で調節可能であることにより、回転刃の回転半径に対する姿勢を調節することで、せん断の過程で回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさの分布を適切な範囲で有効に調節することができる。ここで、回転軸方向視における回転刃の刃線の回転半径に対する傾斜角度とは、回転軸方向視において、回転刃の先端と回転軸の中心とを結ぶ半径に対して回転刃の刃線が成す角度である。また、回転軸方向視において、回転刃の刃線と固定刃の刃線との間の角度が10°以上30°以下の間で調節可能であることにより、固定刃と回転刃との間の角度を調節することで、せん断の過程で回転刃の刃線と固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさの分布を適切な範囲で有効に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の破砕機の主要部を模式的に示す断面図である。
図2】破砕機の回転体の外周部に設けられた回転刃支持部及び回転刃を示す断面図である。
図3】回転刃を示す正面図である。
図4】破砕機の破砕室内に設けられた固定刃支持部及び固定刃を示す断面図である。
図5】固定刃を示す平面図である。
図6】回転刃と固定刃によるせん断動作の開始時の様子を示す模式断面図である。
図7】せん断動作の開始時の固定刃と回転刃の位置関係を示した平面図である。
図8図7の円G1内の部分を拡大して示した平面図である。
図9】回転刃と固定刃によるせん断動作の終了時の様子を示す模式断面図である。
図10】せん断動作の終了時の固定刃と回転刃の位置関係を示した平面図である。
図11図10の円G2内の部分を拡大して示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態の破砕機の主要部を模式的に示す断面図である。実施形態の破砕機は、被処理物として、都市ごみ等のような種々の材質及び寸法のものが混在する廃棄物が投入され、この被処理物を破砕するものである。
【0028】
本実施形態の破砕機は、被処理物が投入される投入口と、破砕後の被処理物を排出する排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室10とを有するケーシング1を備える。ケーシング1の破砕室10には、複数の回転刃5が外周部に設けられたロータ2と、ロータ2の外周部に対向して配置された固定刃6と、固定刃6からロータ2の回転方向に向かってロータ2の外周部を取り囲むように配置された略半円筒状の有孔スクリーン9が配置されている。この破砕機は、破砕室10内にロータ2を1つ備える一軸破砕機である。破砕室10には、投入口から投入された被処理物が、矢印Jで示すように導かれる。ロータ2は、矢印Rで示すように、回転刃5が固定刃6の上方から歯合するように回転駆動される。破砕室10には、矢印Aで示すようにロータ2に向かって被処理物を押圧するプッシャ8が配置されている。
【0029】
ロータ2は、モータに連結された回転軸3と、この回転軸3の周りに複数のロータディスクが軸方向に取り付けられて形成された大略円筒形状の回転体4を有する。この回転体4の外周部には、回転軸3と直角の断面において径方向と直角に延びる平坦部14が形成されており、この平坦部14に回転刃支持部11が固定されている。
【0030】
図2は、回転体4の平坦部14における回転刃5と回転刃支持部11を示す断面図であり、回転軸3と直角の面で切断した断面図である。図3は、回転刃5の正面を示すロータ2の周方向視である。図3において、回転体4は、回転刃5の前端で回転軸3と平行に切断された様子が示されている。回転刃支持部11は、回転体4の平坦部14に固定され、この回転刃支持部11の回転方向の前側に回転刃5が固定されている。
【0031】
回転刃5は、正方形のすくい面5aを有する直方体形状を有し、図3に示すように、すくい面5aの対角線を径方向に向けて固定されている。すくい面5aは、回転刃5の回転方向を向く面であり、固定刃6と協働して被処理物のせん断を行う際に、固定刃6との間に被処理物を挟んで力を被処理物に直接作用させる面である。回転刃5のすくい面5aを取り囲む辺のうち、回転体4から突出して回転体4と接していない辺は、固定刃6の刃線と協働してせん断作用を発揮する刃線5b,5bになっている。この刃線5b,5bは、図3に示すように、周方向視において外径側が尖った三角山型を成している。
【0032】
回転刃支持部11には、回転軸3と直角に延びる挿通孔が形成されている。また、回転刃5には、すくい面5aの中央に位置するように螺子孔が形成されている。上記回転刃支持部11の挿通孔に、回転刃固定ボルト12が、回転方向の後側から挿入される。この回転刃固定ボルト12の先端部分が、回転刃支持部11の回転方向の前側に配置された回転刃5の螺子孔に螺合している。回転刃固定ボルト12の回転方向の後側に位置するボルト頭を六角棒スパナ等で操作することにより、回転刃5を回転刃支持部11に着脱するようになっている。図2において、点Cは、回転軸3の中心であって、ロータ2の回転の中心を示している。図2に示すように、回転刃5のすくい面5aの傾斜角度θ1は、すくい面5aの最も外径側の点とロータ2の半径Kとが成す角度である。したがって、回転刃5の厚みを設定することにより、すくい面5aの傾斜角度θ1を所望の値に設定することができる。
【0033】
また、回転刃5は、回転刃支持部11に固定される姿勢を、回転刃固定ボルト12の螺子孔の周りに90°ずつ回転させて変更できる。これにより、摩耗の程度に応じて回転刃5の螺旋孔回りの固定姿勢を変更することにより、全ての刃線5bが摩耗するまで同一の回転刃5を使用することができる。
【0034】
このロータ2には、図1に示すように、回転刃5が同一の軸方向位置に3個設置されていると共に、軸方向に所定間隔をおきながら周方向にずらした位置にそれぞれ配置されている。これにより、ロータ2の外周面に、螺旋状の模様を描くように複数の回転刃5が配列されている。このように回転刃5が外周面に螺旋状に配置されたロータ2が回転すると、回転軸3と平行に配置された固定刃6に対して、順次異なるタイミングで回転刃5が歯合し、モータに過大な負荷を与えることなくせん断を行うようになっている。
【0035】
図4は、破砕室10内に設置された固定刃6と固定刃支持部15を示す断面図であり、ロータ2の回転軸3と直角の面で切断した断面図である。図5は、固定刃6の平面図である。固定刃支持部15は、破砕室10内のロータ2に臨む位置に形成され、プッシャ8が進退駆動されて被処理物が送られるプッシャ台16の表面と段差を成すように形成されている。固定刃支持部15には、固定刃固定ボルト19が螺合する複数の螺子孔が設けられている。固定刃支持部15に固定刃6が取り付けられると、固定刃6の表面が、プッシャ台16の表面と概ね同一平面上に位置するようになっている。
【0036】
固定刃6は、平面視において、長方形の長辺の一辺が、複数の回転刃5が順次歯合する鋸状に形成されている。固定刃6のプッシャ台16と略同一平面上に位置する表面のうち、鋸状に形成された辺の周辺部分が、回転刃5のすくい面5aと共に被処理物を挟むすくい面6aに形成されている。すくい面6aの縁である鋸状の辺は、1つの回転刃5が有する三角山型の刃線5b,5bに対応するV字型の刃線6b,6bの組が、長辺方向に連なって形成されている。
【0037】
固定刃6には、厚み方向に貫通する複数の挿通孔21が形成されている。この挿通孔21は、短辺方向に延びる長穴に形成されている。また、挿通孔21の表面側は、この挿通孔21に挿通される固定刃固定ボルト19のボルト頭が没入するための没入溝22が形成されている。この没入溝22は、平面視において、挿入溝21の周囲を取り囲むにように形成されている。固定刃6が固定刃支持部15に固定されるとき、固定刃6と固定刃支持部15との間に、所定の厚みの位置調節板17が配置される。位置調節板17は、固定刃6の挿通孔21と固定刃支持部15の螺子孔とに連通する貫通孔が形成されている。上記固定刃6の挿通孔21と、上記位置調節板17の貫通孔とに固定刃固定ボルト19が挿通され、この固定刃固定ボルト19の先端部分が固定刃支持部15の螺子孔に螺着されて、固定刃6が固定刃支持部15に固定される。固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置は、矢印Dで示すように、位置調節板17の厚みによって固定刃6の厚み方向に調節される。また、固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置は、矢印Eで示されるように、長穴の挿通孔21に沿った固定刃固定ボルト19の挿通位置によって短辺方向、すなわち、V字型部分の先端側と基端側との間の方向に調節される。このような固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置を調節することにより、回転刃5の厚みの設定と併せて、回転刃5と固定刃6がせん断を開始する時の固定刃6のすくい面6aと回転刃5のすくい面5aとの間の角度であるせん断角度θ2が調節可能になっている。上記回転刃5のロータ2の半径Kに対する傾斜角度θ1と、上記回転刃5と固定刃6の間のせん断角度θ2とを調節することにより、後述する回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスの大きさの分布が調節可能になっている。
【0038】
固定刃6は、厚み方向の表面と裏面の両面に、互いに同一の形状のV字型の刃線6aと、すくい面6aと、没入溝22が形成されている。これにより、一方の面の刃線6aが摩耗すると、固定刃支持部15から固定刃6を取り外し、裏返して再度固定して、両面を使用することができる。
【0039】
プッシャ台16の上を駆動されるプッシャ8は、投入口から投入されてプッシャ台16上に位置する被処理物を、回転するロータ2に向かって押圧することにより、回転刃5と固定刃6による被処理物の破砕を促進する。プッシャ8は、ロータ2の回転軸方向視において、プッシャ台16に沿う方向に延在する大略矩形状に形成され、ロータ2に臨む側の辺が、ロータ2の湾曲に沿うように屈曲している。また、プッシャ8は、ロータ2の回転軸直角方向視において矩形状に形成されている。このプッシャ8は、電力又は油圧で作動するアクチュエータにより、プッシャ台16の上で、ロータ2に接近又は遠ざかる方向に進退駆動される。
【0040】
ロータ2の外周部を取り囲む有孔スクリーン9は、ロータ2の回転軸方向視において、固定刃6の固定刃支持部15の側部から、ケーシング1の投入口に形成されたホッパーの下端にわたって配置されている。有孔スクリーン9に設けられた多数の孔は、被処理物を破砕すべき破砕寸法に対応した寸法に形成されている。回転刃5と固定刃6で破砕された被処理物が破砕寸法よりも大きいと、有孔スクリーン9よりもロータ2の側に残留し、回転刃5と固定刃6によるせん断作用を再度受ける。被処理物が回転刃5と固定刃6で破砕されて破砕寸法よりも小さくなると有孔スクリーン9の孔を通過し、矢印Pで示すように下方に落下して排出口から排出される。
【0041】
図6は、ロータ2が回転して被処理物の破砕を行う際に、回転刃5と固定刃6が歯合を開始し、回転刃5と固定刃6によるせん断動作が開始する時の様子を模式的に示す断面図である。図6は、ロータ2の回転軸3と直角を成す切断面であって、回転刃5の三角山型部分の先端と、固定刃6のV字型部分の基端とを通る切断面による断面図である。図6において、Fはロータ2の回転に伴って回転刃5の三角山型部分の先端であって、すくい面5aの先端が描く軌跡である。
【0042】
図6に示すように、回転刃5と固定刃6によるせん断動作の開始時では、回転軸直角断面において、回転刃5の三角山型のすくい面5aの先端が、固定刃6のV字型部分の基端に接近する。図7は、歯合を開始する時の回転刃5と固定刃6の位置関係を、固定刃6のすくい面6aを通る平面に、回転刃5のすくい面5aの輪郭を投影して示した平面図である。図7において、50は回転刃5のすくい面5aの輪郭の投影像である。図8は、図7の円G1内の部分を拡大して示した図であり、固定刃6のV字型部分の基端部分の周辺を拡大して示している。図8において、55bは、回転刃5の刃線5bの投影像である。図6乃至8に示すように、回転刃5と固定刃6によるせん断動作の開始時では、最も接近している回転刃5の三角山型部分の先端と、固定刃6のV字型部分の基端部分との間に、クリアランスH1が形成される。ここで、回転刃5の三角山型部分の先端は、回転刃5の2つの刃線5b,5bの先端であり、図8では2つの投影像55b,55bの先端に相当する。このクリアランスH1は、回転軸方向視において、回転刃5の刃線5bと、固定刃6の刃線6bとが交差する箇所における刃線5b,6bの相互間の距離である。
【0043】
図6のように、回転刃5と固定刃6が歯合を開始した後、更にロータ2が回転すると、回転刃5の三角山型部分が、固定刃6のV字型部分の相互間に進入して厚み方向に移動する。これにより、回転軸方向視において回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとが交差する点であって、上記刃線5bと刃線6bの間の最短距離であるクリアランスが形成される位置が、回転刃5の三角山型部分の基端側、すなわち、固定刃6のV字型部分の先端側に移動する。このように、回転軸方向視における刃線5bと刃線6bの交差点が、回転刃5の三角山型部分の基端側に移動するに伴い、刃線5bと刃線6bによってせん断作用が発揮され、回転刃5と固定刃6の間に挟まれた被処理物がせん断されて破砕される。
【0044】
図9は、回転刃5と固定刃6の歯合が終了し、刃線5bと刃線6bによるせん断動作が終了する時の様子を模式的に示す断面図である。図10は、歯合が終了する時の回転刃5と固定刃6の位置関係を、固定刃6のすくい面6aを通る平面に、回転刃5のすくい面5aの輪郭を投影して示した平面図である。図10において、50は回転刃5のすくい面5aの輪郭の投影像である。図11は、図10の円G2内の部分を拡大して示した図であり、固定刃6のV字型部分の先端部分の周辺を拡大して示している。図11において、55bは、回転刃5の刃線5bの投影像である。図9乃至11に示すように、回転刃5と固定刃6によるせん断動作の終了時では、最も接近している固定刃6のV字型部分の先端と、回転刃5の三角山型部分の基端部分との間に、クリアランスH2が形成される。ここで、固定刃6のV字型部分の先端は、固定刃6の2つの刃線6b,6bの先端である。このクリアランスH2は、回転軸方向視において、回転刃5の刃線5bと、固定刃6の刃線6bとが交差する箇所における刃線5b,6bの相互間の距離である。
【0045】
本実施形態の破砕機は、回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさが、せん断の開始時には大きく、せん断の終了時には小さくなるように調節可能に形成されている。すなわち、図6のせん断の開始時に回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスH1が、図9のせん断の終了時に回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスH2よりも大きくなるように、調節可能である。これにより、回転刃5が固定刃6と歯合を開始してせん断を開始するときの刃線5b,6bのクリアランスH1が比較的大きく、ロータ2の回転に伴って回転刃5と固定刃6によるせん断動作が進むにつれて刃線5b,6bのクリアランスが縮小し、せん断動作が終了するときに比較的小さいクリアランスH2となる。このようなクリアランスの大きさの分布を形成することにより、従来の破砕機では破砕が困難であった繊維や布や網等のような柔軟かつ靭性の高い被処理物を、効果的にせん断して破砕できる。したがって、繊維や布や網等の処理困難物が、ロータ2に巻き付いて破砕機が異常停止する不都合を、効果的に防止できる。
【0046】
また、本実施形態の破砕機は、回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさが、せん断の開始時には小さく、せん断の終了時には大きくなるようにも調節可能に形成されている。すなわち、図6のせん断の開始時に回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスH1が、図9のせん断の終了時に回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスH2よりも小さくなるように、調節可能である。これにより、回転刃5が固定刃6と歯合を開始してせん断を開始するときの刃線5b,6bのクリアランスH1が比較的小さく、ロータ2の回転に伴って回転刃5と固定刃6によるせん断動作が進むにつれて刃線5b,6bのクリアランスが拡大し、せん断動作が終了するときに比較的大きいクリアランスH2となる。このようなクリアランスの大きさの分布を形成することにより、硬質プラスチック等の被処理物に対する回転刃5と固定刃6の食い付きを向上し、従来と同等以上の効率でせん断して破砕できる。
【0047】
せん断の過程で回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスの大きさの分布は、回転刃5の厚みと、固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置とを調節することにより、調節することができる。固定刃6の固定刃支持部15への固定位置は、位置調節板17の厚みと、固定刃固定ボルト19の挿通孔21における挿通位置によって調節を行う。
【0048】
表1は、実施例として複数の実施形態の破砕機を用いて、回転刃5の厚みと固定刃6の固定位置に基づいて回転刃5と固定刃6の間のクリアランスの大きさの分布を設定し、2種類の被処理物を破砕して破砕能力を確認した実験結果を示している。表1において、ロータ2の半径Kに対する回転刃5の傾斜角度θ1と、回転刃5と固定刃6の間のせん断角度θ2は、所定の厚みの回転刃5を選択することと、固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置を調節することにより設定した。実施例1及び2は、回転刃5の一辺が50mmかつ厚みが27mmであり、回転刃5の先端の回転直径が400.02mmの破砕機を用いた。実施例3及び4は、回転刃5の一辺が50mmかつ厚みが27mmであり、回転刃5の先端の回転直径が500mmの破砕機を用いた。実施例5及び6は、回転刃5の一辺が60mmかつ厚みが32mmであり、回転刃5の先端の回転直径が600.06mmの破砕機を用いた。実施例7及び8は、回転刃5の一辺が60mmかつ厚みが32mmであり、回転刃5の先端の回転直径が700.1mmの破砕機を用いた。比較例は、従来の破砕機を用いた場合であり、回転刃の一辺は60mmかつ厚みが32mmであり、回転刃の先端の回転直径は698.86mmである。破砕能力の評価は、繊維類の被処理物を破砕したときにロータ2の巻き付きが生じなかった場合を〇とし、巻き付きが生じた場合は×とした。また、硬質プラスチック類の被処理物を破砕したときに、時間当たりの処理量が従来の破砕機の処理量に対して10%以上増加した場合は◎とし、増加量が0%以上10%未満の場合は〇とした。
【表1】
【0049】
表1から分かるように、実施例1、実施例3、実施例5及び実施例7は、回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさが、せん断の開始時であって回転刃5の三角山型部分の先端部分と固定刃6のV字型部分の基端部分との間に形成されるよりも、せん断の終了時であって回転刃5の三角山型部分の基端部分と固定刃6のV字型部分の先端部分との間に形成される方が大きい。このようなクリアランスの大きさの分布により、硬質プラスチック類の被処理物について、比較例の従来の破砕機と同等又は10%以上の効率で破砕を行うことができる。
【0050】
一方、実施例2、実施例4、実施例6及び実施例8は、回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさが、せん断の開始時であって回転刃5の三角山型部分の先端部分と固定刃6のV字型部分の基端部分との間に形成されるよりも、せん断の終了時であって回転刃5の三角山型部分の基端部分と固定刃6のV字型部分の先端部分との間に形成される方が小さい。このようなクリアランスの大きさの分布により、繊維類のような柔軟かつ靭性の高い被処理物を、効果的にせん断して破砕することができる。その結果、布や網等の被処理物のせん断が不十分となって、ロータ2の周りに巻き付く不都合を、効果的に防止できる。上記実施形態の破砕機により破砕効果が向上した被処理物であって、従来は処理困難物とされていた柔軟かつ靭性の高い被処理物としては、衣類や、フレコンバッグ等の建設用のシート状製品や、各種のロープや、漁網や、農業用網等を例示できる。
【0051】
また、実施例1乃至8の破砕機は、比較例の破砕機よりも騒音が低減したと共に、モータの消費電力が低減した。これは、被処理物に応じて回転刃5と固定刃6のクリアランスの大きさの分布を設定したことにより、破砕に伴う回転刃5及び固定刃6への負荷が減少したことに起因している。
【0052】
このように、本実施形態の破砕機は、回転刃5の厚みを設定すると共に、固定刃支持部15に対する固定刃6の固定位置を調節することにより、ロータ2の半径Kに対する回転刃5の傾斜角度θ1と、回転刃5と固定刃6の間のせん断角度θ2を調節して、せん断の過程で回転刃5の刃線5bと固定刃6の刃線6bとの間に形成されるクリアランスの大きさの分布を調節することができる。これにより、従来の破砕機では破砕が困難であった繊維類等のような柔軟かつ靭性の高い被処理物を効果的に破砕できると共に、硬質プラスチック等のような脆性の高い被処理物を更に効率的に破砕できる。すなわち、被処理物の材質や形態に応じた回転刃5と固定刃6のクリアランス分布を設定することにより、従来よりも多種類の被処理物を、効果的に破砕することができる。
【0053】
上記実施形態において、せん断の開始時に回転刃5の先端部分と固定刃6の基端部分との間に形成されるクリアランスの大きさよりも、せん断の終了時に回転刃5の基端部分と固定刃6の先端部分との間に形成されるクリアランスの大きさを小さくすることにより、繊維類等の被処理物を効果的にせん断したが、このようなクリアランス分布は、繊維類のほか、ビニルシート等のような柔軟で靭性の高い被処理物に対して、せん断効果を高めることができる。
【0054】
また、上記実施形態において、せん断の開始時に回転刃5の先端部分と固定刃6の基端部分との間に形成されるクリアランスの大きさよりも、せん断の終了時に回転刃5の基端部分と固定刃6の先端部分との間に形成されるクリアランスの大きさを大きくすることにより、硬質プラスチック等の被処理物を効果的にせん断したが、このようなクリアランス分布は、硬質プラスチックのほか、木材等の脆性の高い被処理物に対して、せん断効果を高めることができる。
【0055】
本実施形態の破砕機は、表1によれば、ロータ2の半径Kに対する回転刃5の傾斜角度θ1が概ね6°以上11°以下の範囲で調節可能である。また、回転刃5と固定刃6の間のせん断角度θ2が概ね12°以上23°以下の範囲で調節可能である。他の実施例によれば、本実施形態の破砕機は、回転刃5と固定刃6の固定位置を調節することにより、回転刃5の傾斜角度θ1が5°以上15°以下の間で調節可能であり、かつ、回転刃5と固定刃6の間のせん断角度θ2が10°以上30°以下の範囲で調節可能である。このような範囲で回転刃5の傾斜角度θ1と回転刃5と固定刃6のせん断角度θ2が調節可能であることにより、多種類の材質と形態の被処理物を、効果的かつ効率的に破砕することができる。
【0056】
上記実施形態において、回転刃5は、刃線5bが直線状の直方体形状に形成されたが、刃線5bが湾曲して形成され、刃線5bと刃線5bが接続する角部が、刃線5bの他の部分よりも突出して形成されてもよい。この場合、すくい面5aは、中央が角よりも凹んだすり鉢状に形成される。このような湾曲した刃線5bを有する回転刃5を用いることにより、柔軟で靭性の高い被処理物のせん断能力を、更に高めることができる。
【0057】
また、上記実施形態において、回転刃5の厚みを調節して傾斜角度θ1を調節したが、回転刃5の厚みは調節せず、固定刃6の固定位置のみを調節してせん断角度θ2のみを調節することにより、クリアランスの大きさの分布を調節してもよい。
【0058】
上記実施形態では、都市ごみ等の廃棄物を処理する破砕機について説明したが、都市ごみ以外の廃棄物や、廃棄物以外の他の被処理物を破砕する破砕機についても、本発明は適用可能である。
【0059】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーシング
2 ロータ
3 回転軸
4 回転体
5 回転刃
6 固定刃
8 プッシャ
9 有孔スクリーン
10 破砕室
11 回転刃支持部
15 固定刃支持部
17 位置調節板
D 固定刃の厚み方向の調節方向
E 固定刃の短辺方向の調節方向
R ロータの回転方向
K ロータの半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020年12月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記破砕室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されており、
上記回転刃支持部は、異なる厚みの回転刃が固定可能に形成され、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更すると共に、上記回転刃支持部に固定する回転刃の厚みを設定することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項2】
請求項に記載の破砕機において、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が小さくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項3】
被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記破砕室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されており、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成され、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が小さくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項4】
請求項に記載の破砕機において、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が大きくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項5】
被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記破砕室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されており、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置を変更することにより、上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分と、上記回転刃の基端部分とで異なるように調節可能に形成され、
上記回転刃の回転に伴って上記回転刃の刃線と上記固定刃の刃線との間に形成されるクリアランスの大きさが、上記回転刃の先端部分よりも、上記回転刃の基端部分の方が大きくなるように調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項6】
被処理物が投入される投入口と、破砕された被処理物が排出される排出口と、上記投入口と排出口の間に位置する破砕室とを有するケーシングと、
上記破砕室内に配置され、回転力が入力される回転軸と、
上記破砕室内に配置され、回転軸に固定されて回転駆動される回転体と、
上記回転体の外周部に配置され、回転刃を支持する回転刃支持部と、
上記回転刃支持部に固定され、周方向視において外径側が尖った三角山型の刃線を有する回転刃と、
上記破砕室に配置され、固定刃を支持する固定刃支持部と、
上記固定刃支持部に固定され、上記回転刃の刃線に対応するV字型の刃線を有して上記回転刃との協働により被処理物をせん断する固定刃と
を備えた破砕機であって、
上記固定刃の固定刃支持部に対する固定位置が変更可能に形成されており、
上記固定刃支持部と固定刃との間に配置され、固定刃固定ボルトが挿通される挿通孔を有する位置調節板を備え、
上記固定刃は、上記固定刃固定ボルトに挿通される固定刃挿通孔を有し、
上記固定刃支持部は、上記固定刃固定ボルトに螺合する螺子孔を有し、
上記固定刃の固定刃挿通孔と上記位置調節板の挿通孔とに挿通された上記固定刃固定ボルトが上記固定刃支持部の螺子孔に螺合して、上記固定刃支持部に上記位置調節板を介して上記固定刃が固定されることにより、上記位置調節板の厚みに応じて上記固定刃の固定位置が厚み方向に調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項7】
請求項6に記載の破砕機において、
上記固定刃の固定刃挿通孔が、上記V字型の刃線の先端が向く方向に延びる長孔に形成され、上記固定刃の固定位置が上記長孔に沿って上記刃線の先端の向く方向に調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。
【請求項8】
請求項に記載の破砕機において、
上記回転刃の刃線を含む面の回転半径に対する傾斜角度が、5°以上15°以下の間で調節可能に形成され、
上記回転刃の刃線を含む面と、上記固定刃の刃線を含む面との間の角度が、10°以上30°以下の間で調節可能に形成されていることを特徴とする破砕機。