【解決手段】シート状の部材を加工するシート加工装置であって、装置を支持する支持基台と、第1のローラと、前記シート状の部材を加工するために前記第1のローラとで当該シート状の部材を挟み込む第2のローラと、前記第1のローラの回転軸を回転可能に支持する第1支持部を有し、前記支持基台に固定された第1支持側板部と、前記第2のローラの回転軸を回転可能に支持し、前記第2のローラを前記第1のローラに対して鉛直方向の位置に配置させる第2支持部を有すると共に、前記支持基台に対して鉛直方向に移動可能に構成された第2支持側板部と、前記第2支持側板部を鉛直方向に移動させる昇降機構と、を備える。
前記制御部は、前記第1のローラと前記第2のローラとの相対的な回転速度を変化させることにより、前記シート状の部材の前記搬送方向における加工の長さを調整することを特徴とする請求項1に記載のシート加工装置。
前記制御部は、前記第1のローラと前記第2のローラとの回転を同期させると共に、前記第1のローラ及び前記第2のローラの回転速度に対して、前記第2搬送ローラ部による前記シート状の部材の搬送速度を高くすることにより、前記シート状の部材の前記搬送方向における加工の長さを調整することを特徴とする請求項1に記載のシート加工装置。
前記制御部は、前記シート状の部材の前記搬送方向における弾性限界内で張力を変化させることにより、前記シート状の部材の前記搬送方向と交差する方向である幅方向における加工の形状を調整することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のシート加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るシート加工装置1の全体構成を示す模式図である。
また、
図2は、シート加工装置1の搬送機構を示す模式図である。
図1及び
図2に示すように、シート加工装置1は、第1フィードロール部10と、カットユニット20と、第2フィードロール部30と、第1モータ40と、第2モータ50と、第3モータ60と、第4モータ70と、ダンサローラ部80と、トルク調整用クラッチ90と、制御部100とを含んで構成される。
【0010】
第1フィードロール部10は、上側ローラ11と、下側ローラ12とを備え、上側ローラ11と下側ローラ12との間に、ワークとなるシート材Sが挟み込まれる。そして、第1フィードロール部10においては、第2フィードロール部30によってシート材Sが搬送されることにより、下側ローラ12が
図2中のA方向に回転されると共に上側ローラ11が
図2中のB方向に回転される。
【0011】
また、本実施形態において、第1フィードロール部10の下側ローラ12は、トルク調整用クラッチ90を介して第1モータ40によって駆動され、第1モータ40から下側ローラ12に伝達される回転駆動力を調整可能となっている。後述するように、第1モータ40は、第2モータ50及び第3モータ60に対して逆回転または停止しているため、第1モータ40の回転トルクが下側ローラ12に伝達されることにより、下側ローラ12はシート材Sの搬送にブレーキをかけることとなる。これにより、シート材Sの張力を調整することが可能となっている。
なお、本実施形態において、シート材Sは、基材Bと、フィルム等からなる製品素材Fとが貼り合わされた構成となっており、不図示の基材巻出しローラ及びフィルム材巻出しローラそれぞれから巻き出された基材Bと製品素材Fとが、第1フィードロール部10において貼り合わされる構成となっている。
【0012】
カットユニット20は、カッターローラ21と、受けローラ22とを備え、カッターローラ21と受けローラ22との間に、シート材Sが挟み込まれる。カッターローラ21は、シート材Sをカットする刃型部材を磁力により吸引して装着するマグネットローラである。なお、カッターローラ21の表面に刃型を形成することにより、カッターローラ21自体がシート材Sをカットする構成としてもよい。カッターローラ21と受けローラ22との間の間隔は、後述する間隔調整機構によって、カッターローラ21が受けローラ22との距離を変化されることにより、シート材Sのカット深さに合わせて調整される。そして、カットユニット20においては、受けローラ22が第2モータ50によって
図2中のA方向に回転され、受けローラ22と共にシート材Sを挟み込むカッターローラ21が第4モータ70によって
図2中のB方向に回転されることにより、シート材Sが刃型部材によってカットされながら、
図2中のMD(Machine Direction)方向に搬送される。なお、本実施形態において、カッターローラ21の回転速度と、受けローラ22の回転速度とは同期(即ち、各ローラの円周面の速度を一致)させることの他、受けローラ22の回転速度に対して、カッターローラの回転速度を変化させること(より低速にすること等)が可能である。これにより、カッターローラ21に装着された刃型部材の刃型と同一の形状のみならず、刃型とは搬送方向(MD方向)の長さが異なる製品形状にシート材Sをカットすることが可能となる。
【0013】
第2フィードロール部30は、上側ローラ31と、下側ローラ32とを備え、上側ローラ31と下側ローラ32との間に、ワークとなるシート材Sが挟み込まれる。そして、第2フィードロール部30においては、下側ローラ32が第4モータ70によって
図2中のA方向に回転されることにより、下側ローラ32と共にシート材Sを挟み込む上側ローラ31が
図2中のB方向に従動回転し、シート材Sが
図2中のMD方向に搬送される。第2フィードロール部30の下流の所定位置において、シート材Sは、カット後の製品部分と不要部分(抜きカス)とが分離され、不図示の製品巻き取りローラ及び抜きカス巻き取りローラにそれぞれ巻き取られる。
【0014】
第1モータ40は、トルク調整用クラッチ90を介して、第1フィードロール部10の下側ローラ12の回転軸に連結され、シート材Sの搬送にブレーキをかけるためのトルクを下側ローラ12に入力する。なお、本実施形態において、第1モータ40は、ユーザの設定等により、所定回転トルク及び所定回転速度で定常回転し、トルク調整用クラッチ90の制御によって、下側ローラ12に入力されるトルクが調整される。
第2モータ50は、カットユニット20の受けローラ22の回転軸に連結され、制御部100の制御に従う回転トルク及び回転速度で、受けローラ22を回転駆動する。
第3モータ60は、第2フィードロール部30の下側ローラ32の回転軸に連結され、制御部100の制御に従う回転トルク及び回転速度で、下側ローラ32を回転駆動する。
第4モータ70は、カットユニット20のカッターローラ21の回転軸に連結され、制御部100の制御に従う回転トルク及び回転速度で、カッターローラ21を回転駆動する。
なお、第1モータ40、第2モータ50、第3モータ60及び第4モータ70は、例えばサーボモータ等によって構成することができる。
【0015】
ダンサローラ部80は、鉛直方向に移動可能なダンサローラ81を備え、第1フィードロール部10から搬出されたシート材Sの弛みを解消して、カットユニット20にシート材Sを送出する。なお、本実施形態におけるダンサローラ部80は、トルク調整用クラッチ90によって第1フィードロール部10の下側ローラ12における回転トルクが変化された場合に、その変化をシート材Sの張力に反映させる構成となっている。このような構成は、例えば、ダンサローラ部80において、シート材Sの張力に抗してダンサローラ81を押し付けるために、シート材Sの張力に応じて変化する弾性力を発揮する流体圧シリンダ(エアシリンダ等)を用いたり、ダンサローラ81の位置をアクチュエータによって制御したりすることで実現できる。
【0016】
トルク調整用クラッチ90は、制御部100の制御に従って、第1モータ40から第1フィードロール部10の下側ローラ12に伝達される回転トルクを調整する。シート加工装置1において、第2モータ50及び第3モータ60は、目的とするシート材Sの搬送速度となるよう制御部100によって回転速度を制御されるところ、トルク調整用クラッチ90によって第1モータ40から下側ローラ12に伝達される回転トルク(相対的に逆回転方向のトルク)が変化されることで、第1フィードロール部10によってシート材Sの搬送に目的とする大きさのブレーキをかけることが可能となる。これにより、カットユニット20で加工を行う際に、シート材Sの搬送方向(MD方向)の張力を制御することができ、張力から解放された後の製品の形状を種々異ならせることが可能となる。
【0017】
制御部100は、PLC(Programmable Logic Controller)あるいはPC(Personal Computer)等の制御機能を備える装置によって構成され、シート材Sの搬送速度及び加工時の抵抗等の各種パラメータに基づいて、第2モータ50及び第3モータ60の回転トルク及び回転速度を制御する。また、制御部100は、シート材Sを加工する際に付与する目標張力に応じて、トルク調整用クラッチ90におけるクラッチの締結力を制御する。さらに、制御部100は、シート材Sにおける製品の目標形状に応じて、第4モータ70の回転を制御し、カッターローラ21の受けローラ22に対する回転速度を調整する。
【0018】
制御部100がこのような制御を行う結果、シート材Sの加工時における搬送方向(MD方向)の張力が調整されることにより、張力から解放された後の製品が幅方向(TD(Transverse Direction)方向)に伸びる度合いを調整することが可能となる。即ち、製品の主に幅方向(TD方向)における形状を調整することが可能となる。また、制御部100によって、カッターローラ21の回転速度が調整されることにより、製品の搬送方向(MD方向)のカット長さを変化させることができるため、刃型とは搬送方向(MD方向)の長さが異なる製品形状にシート材Sをカットすることが可能となる。
【0019】
ここで、シート材Sの加工時に付与する張力は、シート材Sの材料や目的とする製品形状によって設定されるが、シート材Sの適正な張力の範囲内で付与される。
具体的には、シート加工装置1においては、搬送方向(MD方向)に弾性限界内でシート材Sに応力(張力)を付与する。すると、シート材Sのポアソン比に基づいて幅方向(TD方向)にも一定の弾性変形が生じる。この弾性変形を利用し、シート材Sの幅方向(TD方向)の製品形状が調整される。
弾性変形の範囲内であれば、ポアソン比は材料固有の定数として扱うことができるため、搬送方向(MD方向)に所定の張力を付与した場合の幅方向(TD方向)の変形量(シート材Sの幅の変化量)は、材料に応じた一意の関係として扱うことができる。
なお、シート材Sに搬送方向(MD方向)の張力を付与した場合、搬送方向(MD方向)にも変形を生じるが、この変形については、カッターローラ21の回転速度の調整により、製品の搬送方向(MD方向)の形状を調整する制御と統合して調整することで、目的とする製品形状とすることができる。
【0020】
[カットユニット20の支持構造]
次に、カットユニット20の支持構造について説明する。
本実施形態におけるシート加工装置1は、カットユニット20における受けローラ22の回転軸が、シート加工装置1の支持基台における固定された位置で回転可能に支持されていると共に、カッターローラ21の回転軸は、支持基台に対して鉛直方向に移動可能とされている。そして、カッターローラ21の回転軸の位置が鉛直方向に移動されることで、カッターローラ21と受けローラ22との間隔が、シート材Sの厚み及びカット深さに応じた位置関係に調整される。なお、カッターローラ21は、回転軸の部分をエアシリンダによって押圧することにより、受けローラ22側に押し付けられている。このような構成とすることで、カットユニット20においては、ベアラを備えることなく、カッターローラ21と受けローラ22との位置関係を調整することができる。
【0021】
以下、カットユニット20の支持構造について、具体的に説明する。
図3は、カットユニット20の支持構造を示す模式図であり、
図3(A)はシート加工装置1の正面(シート材Sの搬送方向)からカットユニット20を見た模式図、
図3(B)はシート加工装置1の側面からカットユニット20を見た模式図である。
図3(A)、(B)に示すように、カットユニット20支持構造は、シート加工装置1の支持基台SBに固定された支持側板201と、支持側板201に対して鉛直方向に移動可能な移動側板202と、移動側板202を鉛直下方に押圧するエアシリンダ203と、移動側板202を鉛直方向に昇降する昇降機構204とを含んで構成される。これら支持側板201、移動側板202、エアシリンダ203及び昇降機構204によって、カッターローラ21と受けローラ22との間隔を調整する間隔調整機構を構成している。なお、本実施形態におけるシート加工装置1は、以下で説明する支持構造を左右対称に備えている。
支持側板201は、受けローラ22の回転軸を回転可能に支持するベアリング201aを備えている。ベアリング201aは、ベアリングケース201bに収容されている。また、支持側板201の下端には、後述するようにウォームジャッキによって構成される昇降機構204のウォーム軸を挿通するウォーム軸孔201cが形成されている。さらに、支持側板201のカッターローラ21の回転軸線上の部分には、カッターローラ21の回転軸を挿通する回転軸孔201dが形成されている。回転軸孔201dの直径は、移動側板202の鉛直方向への移動を妨げない大きさに設定されている。
【0022】
移動側板202は、カッターローラ21の回転軸を回転可能に支持するベアリング202aを備えている。ベアリング202aは、移動側板202に固定されたベアリングケース202bに収容されており、ベアリングケース202bは、鉛直上方からエアシリンダ203によって鉛直下方に押圧される。ベアリングケース202bにおいて、エアシリンダ203に押圧される位置は、回転軸方向においてベアリング202aがカッターローラ21の回転軸を支持する範囲の中央である。エアシリンダ203は、支持側板201に上端を固定されているため、エアシリンダ203のロッドがベアリングケース202bを押圧することにより、カッターローラ21の回転軸、即ち、カッターローラ21が鉛直下方に押圧され、受けローラ22側に押し付けられる。これにより、シート材Sがカッターローラ21と受けローラ22との間に搬入された場合にも、カッターローラ21が浮き上がることを防ぐことができる。なお、エアシリンダ203は、油圧等を用いた各種流体圧シリンダによって構成することとしてもよい。また、移動側板202の受けローラ22の回転軸線上の部分には、受けローラ22の回転軸を挿通する回転軸孔202cが形成されている。回転軸孔202cの直径は、移動側板202の鉛直方向への移動を妨げない大きさに設定されている。
【0023】
昇降機構204は、例えばウォームジャッキ等の昇降装置によって構成され、左右の支持側板201に亘って水平に配置された回転軸周りに回転可能なウォームギアと、ウォームギアと噛み合い、ウォームギアの回転に応じて回転されることにより鉛直方向にロッド(出力軸)を移動させるウォームホイールとを備えている。即ち、昇降機構204は、ウォームギアを回転されることにより、ウォームホイールがウォームギアの回転軸と直交する回転軸(鉛直方向の回転軸)の周りに回転することで、ウォームホイールの回転軸となるロッドが鉛直方向に移動する構成となっている。ウォームホイールのロッドは、エアシリンダ203がベアリングケース202bを押圧する位置の鉛直下方の位置において、移動側板202の下端を支持している。なお、本実施形態においては、昇降機構204は、左右の移動側板202を昇降させるために、左右それぞれの移動側板202に独立して設置されている。そのため、左右の移動側板202を鉛直方向の異なる位置に調整することができるため、シート材Sを幅方向(TD方向)で異なる厚みにカットすること等が可能である。
【0024】
ここで、本実施形態におけるカットユニット20の支持構造において、エアシリンダ203のロッドが鉛直下方にベアリングケース202bを押圧する位置は、上述のように、
図3(A)において、ベアリング202aがカッターローラ21の回転軸を支持する範囲の中央であると共に、
図3(B)において、カッターローラ21の回転軸における回転中心の鉛直上方の位置である。そして、エアシリンダ203のロッドが鉛直下方にベアリングケース202bを押圧する位置は、昇降機構204においてウォームホイールの回転軸となるロッドが移動側板202の下端を押し上げる位置の鉛直上方の位置となっている。即ち、エアシリンダ203が移動側板202に付与する押圧力と、昇降機構204が移動側板202に付与する持ち上げ力とは、いずれも、
図3(A)及び
図3(B)における作用線C−C上で作用する。この作用線C−Cは、移動側板202の側面及び正面における中心線となっている。そのため、エアシリンダ203が移動側板202に加える力、及び、昇降機構204が移動側板202に加える力のいずれも、移動側板202を回転させるモーメントを発生させることなく、鉛直方向に正確に作用するものとなる。
【0025】
[作用]
次に、シート加工装置1の作用について説明する。
シート加工装置1において、シート材Sの加工が行われる場合、初めに、カッターローラ21と受けローラ22との間隔が調整される。具体的には、左右の昇降機構204それぞれによって移動側板202を鉛直方向に移動させることにより、シート材Sの厚みと、カッターローラ21に装着された刃型によってシート材Sに切り込むカット深さに応じて、カッターローラ21の受けローラ22に対する距離が調整される。
【0026】
次に、シート材Sの加工時にカッターローラ21が浮き上がらない強さに、エアシリンダ203の押圧力が調整される。
次に、制御部100の制御により、第2モータ50及び第3モータ60同期して回転されると共に、第4モータ70が回転され、シート材Sが、第1フィードロール部10、カットユニット20及び第2フィードロール部30のローラ間を所定速度で搬送方向(MD方向)に搬送される。
このとき、制御部100により、加工目的に応じてトルク調整用クラッチ90の締結力が制御され、搬送方向(MD方向)の張力が制御される。
これにより、張力が解放された際に形状が復元した場合の幅方向(TD方向)の製品形状が調整される。
【0027】
また、制御部100により、加工目的に応じて第4モータ70の回転速度が制御され、カッターローラ21と受けローラ22との相対的な回転速度が変化される。
これにより、カット時における製品の搬送方向(MD方向)のカット長さが調整される。なお、製品の幅方向(TD方向)の製品形状を調整する目的で搬送方向(MD方向)の張力が付与されることにより、製品の搬送方向(MD方向)の長さに影響が生じる場合には、その影響を解消するように、カッターローラ21の回転速度を制御することができる。
【0028】
図4は、シート加工装置1によって加工されるシート材Sの状態を示す模式図であり、
図4(A)はシート材Sの搬送方向(MD方向)の状態を示す図、
図4(B)はシート材Sの幅方向(TD方向)の状態を示す図である。なお、
図4においては、シート材Sを長方形の製品形状にカットする場合の例を示している。
図4(A)に示すように、カッターローラ21の受けローラ22に対する回転速度が遅くなるほど(相対回転速度が大きくなるほど)、シート材Sの搬送方向(MD方向)のカット長さが長くなり、製品形状が長くなる。
また、
図4(B)に示すように、搬送方向(MD方向)の張力が大きいほど、シート材Sの張力が解放されて復元した場合の搬送方向(MD方向)の収縮量が大きくなり(即ち、幅方向(TD方向)の拡大量が大きくなり)、製品形状は幅が大きくなる。
【0029】
このような動作の結果、シート加工装置1では、製品の幅方向(TD方向)及び搬送方向(MD方向)の長さを調整して、目的の形状の製品を得ることができる。
また、カッターローラ21の回転速度を受けローラ22に対して変化させることで、カッターローラ21に装着される刃型の形状とは異なる形状で製品をカットすることができるため、異なる形状の製品を製造する毎にカッターローラ21に刃型を装着する作業を軽減でき、作業効率の向上を図ることができる。
また、昇降機構204によって、左右それぞれの移動側板202が昇降され、カッターローラ21の受けローラ22に対する距離が調整されるため、ベアラを使用する場合に比べて、より正確な間隔調整(例えば1μm単位での間隔調整)が可能になる。これにより、製品の加工をより高精度に行うことができる。また、裏打ちフィルムを用いることなく、厚みがより薄いフィルムをハーフカットすることができる。この場合、裏打ちフィルムを用いる場合に比べ、不要な粘着層への刃の切れ込みがなく、製品のエッジの品質低下が発生したり、剥離する必要のない層のフィルム等まで2重剥離したりすることを防ぐことができる。そのため、製品の加工をより高精度に行うことができる。
さらに、ベアラを用いないことから、ベアラによるオイルの飛散を抑制できると共に、給油や清掃等の手間を解消することができる。
また、加圧ネジを用いることに代えて、エアシリンダ203を用いてカッターローラ21を押圧しているため、レギュレータによる数値管理が可能となり、製品の加工をより高精度に行うことができる。
このように、本実施形態に係るシート加工装置1によれば、シート加工装置において、シート材の加工を行うための機能を向上させることが可能となる。
【0030】
[変形例]
第1実施形態において、カットユニット20の支持構造を、
図3(A)、(B)に示すように、支持基台SBに固定された支持側板201で受けローラ22の回転軸を支持すると共に、支持基台SBに対して鉛直方向に移動可能な移動側板202でカッターローラ21の回転軸を支持し、移動側板202を昇降機構204で鉛直下方から押し上げ、鉛直上方からエアシリンダ203で押圧する構成とした。
これに対し、カットユニット20の支持構造を、支持基台SBに固定された支持側板でカッターローラ21の回転軸を支持すると共に、支持基台SBに対して鉛直方向に移動可能な移動側板で受けローラ22の回転軸を支持し、移動側板を昇降機構204で鉛直下方から持ち上げる構成とすることができる。
【0031】
図5は、カットユニット20の支持構造の変形例を示す模式図であり、
図5(A)はシート加工装置1の正面(シート材Sの搬送方向)からカットユニット20を見た模式図、
図5(B)はシート加工装置1の側面からカットユニット20を見た模式図である。
図5(A)、(B)に示すように、本変形例におけるカットユニット20支持構造は、シート加工装置1の支持基台SBに固定された支持側板301と、支持側板301に対して鉛直方向に移動可能な移動側板302と、移動側板302を鉛直方向に昇降する昇降機構204とを含んで構成される。これら支持側板201、移動側板202及び昇降機構204によって、カッターローラ21と受けローラ22との間隔を調整する間隔調整機構を構成している。なお、シート加工装置1には、本変形例における支持構造が左右対称に備えられる。
図5に示すカットユニットの支持構造は、
図3に示すカットユニットの支持構造における支持側板201及び移動側板202の構成が、支持側板301及び移動側板302に置き換えられ、エアシリンダ203が備えられていない点が主として異なっている。
したがって、以下、異なる部分である支持側板301及び移動側板302の構成を説明し、他の部分については、
図3の説明を参照することとする。
【0032】
支持側板301は、カッターローラ21の回転軸を回転可能に支持するベアリング301aを備えている。ベアリング301aは、ベアリングケース301bに収容されている。また、支持側板301の下端には、後述するようにウォームジャッキによって構成される昇降機構204のウォーム軸を挿通するウォーム軸孔301cが形成されている。さらに、支持側板301の受けローラ22の回転軸線上の部分には、受けローラ22の回転軸を挿通する回転軸孔301dが形成されている。回転軸孔301dの直径は、移動側板302の鉛直方向への移動を妨げない大きさに設定されている。
【0033】
移動側板302は、受けローラ22の回転軸を回転可能に支持するベアリング302aを備えている。ベアリング302aは、移動側板302に固定されたベアリングケース302bに収容されている。移動側板302は、下端を昇降機構204のロッドに支持されている。そのため、シート材Sがカッターローラ21と受けローラ22との間に搬入された場合にも、昇降機構204のウォームジャッキのロック作用により移動側板302の位置が固定され、シート材Sからの押圧力によって受けローラ22が押し下げられることを防ぐことができる。
なお、本変形例においては、第1実施形態と同様に、昇降機構204は、左右の移動側板302を昇降させるために、左右それぞれの移動側板302に独立して設置されている。そのため、左右の移動側板302を鉛直方向の異なる位置に調整することができるため、シート材Sを幅方向(TD方向)で異なる厚みにカットすること等が可能である。
【0034】
このような構成とすることにより、エアシリンダ203等を備えることなく、支持側板301に支持されたカッターローラ21から受けローラ22への押圧力と、受けローラ22(移動側板302)を鉛直方向に移動させる昇降機構204のウォームジャッキが持つロック作用とによって、移動側板302を支持することができる。
したがって、より少ない部品によって、カッターローラ21と受けローラ22との間隔を調整可能としつつ、移動側板302を支持することが可能となる。
【0035】
なお、上述の実施形態において、シート材Sの加工時に付与する張力をシート材Sの適正な張力の範囲内で付与することとしたが、シート材Sの適正な張力は、複数のシート状の部材が貼り合わされたシート材Sである場合、塑性変形し易い部材を基準に決定することができる。
また、シート材Sの加工時に付与する張力について、従来は、製品の張力が解放された場合でも製品の形状に影響を与えない(即ち、製品の加工に可能な限り影響を及ぼさない)ように、所定範囲(以下、「変形抑制範囲」と呼ぶ。)で設定されていたところ、本実施形態においては、張力の開放時に製品の形状が目的とする量で変化するように、変形抑制範囲を超えた張力を付与している。
さらに、シート材Sの加工時に付与する張力について、変形抑制範囲や、弾性変形あるいは塑性変形する具体的な数値は、実験やキャリブレーションにより、実際に加工されるシート材Sの特性に基づいて決定することができる。
【0036】
また、上述の実施形態において、第1フィードロール部10は、第1モータ40の回転トルクをトルク調整用クラッチ90を介して下側ローラ12に伝達することにより、シート材Sの搬送にブレーキをかける構成であるものとしたが、これに限られない。即ち、第1フィードロール部10において、シート材Sの搬送にブレーキをかけることができれば、他の構成とすることが可能である。
例えば、トルク調整用クラッチ90を備えることなく、制御部100が第1モータ40の駆動電流を制御することにより、下側ローラ12に直接伝達される第1モータ40の回転トルクによって、シート材Sの搬送にブレーキをかける構成としてもよい。また、トルク調整用クラッチ90を備えることなく、制御部100が第1モータ40の回転速度を制御することにより、下側ローラ12の回転速度と、カットユニット20及び第2フィードロール部30の各ローラの回転速度とに回転速度差(即ち、円周面の速度差)を付与する制御(ドロー制御)を行って、シート材Sの搬送にブレーキをかける構成としてもよい。この場合、第1モータ40は、第2モータ50及び第3モータ60と同方向に、より低速で回転する。
これにより、簡単な構成でシート材Sの調整を行うことが可能となる。
【0037】
また、上述の実施形態において、ダンサローラ部80によってシート材Sの弛みを解消する構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、ダンサローラ部80を備えることなく、第1フィードロール部10によってシート材Sにブレーキをかけることで、シート材Sの弛みを解消する構成としてもよい。
【0038】
また、上述の実施形態において、第1フィードロール部10及び第2フィードロール部30を上側ローラ及び下側ローラの2つのローラでシート材Sを挟み込んで搬送する構成であるものとして説明したが、これに限られない。例えば、第1フィードロール部10及び第2フィードロール部30を単一のローラで構成し、シート材Sをローラに巻き掛けることで発生する摩擦力によって、シート材Sの搬送を行うこととしてもよい。
【0039】
また、上述の実施形態において、制御部100が、第4モータ70の回転を制御し、カッターローラ21の受けローラ22に対する回転速度を調整することで、製品の搬送方向(MD方向)のカット長さを変化させるものとして説明したが、これに限られない。例えば、カッターローラ21と受けローラ22との回転は同期させ、第4モータ70の回転速度に対する第3モータ60の回転速度を高くすることにより、カットユニット20を通過するシート材Sの搬送速度を相対的に高めることで、製品の搬送方向(MD方向)のカット長さを変化させることとしてもよい。この場合、カッターローラ21と受けローラ22との間をシート材Sが滑りながら搬送されることで、製品の搬送方向(MD方向)のカット長さが変化される。
【0040】
また、上述の実施形態において、カッターローラ21と受けローラ22との配置を、互いに置換してシート加工装置1を構成とすることとしてもよい。即ち、
図1〜3に示すシート加工装置1の構成あるいは
図5に示すシート加工装置1の構成において、カッターローラ21と受けローラ22とを入れ換えた装置構成とすることが可能である。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。