特開2021-3813(P2021-3813A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-3813(P2021-3813A)
(43)【公開日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】付加製造物の品質推定装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20201211BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20201211BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20201211BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20201211BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B29C64/153
   B33Y10/00
   B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-117146(P2019-117146)
(22)【出願日】2019年6月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】長濱 貴也
(72)【発明者】
【氏名】星野 広行
(72)【発明者】
【氏名】溝口 高史
(72)【発明者】
【氏名】田野 誠
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AP20
4F213AQ01
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL45
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】付加製造物の内部欠陥を非破壊により検知可能な付加製造物の品質推定装置を提供すること。
【解決手段】品質推定装置の制御装置120は、領域を撮像した画像において、領域の少なくとも造形面にて反射した光の明るさを数値化した輝度を補正する輝度補正部123と、補正された造形面の輝度に基づいて金属粉末Pが溶融凝固した状態における造形密度を推定する造形密度推定部124と、造形密度に基づいて付加製造物Wの強度を良品に比べて低下させる内部欠陥の有無を判定する欠陥判定部125と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料粉末が供給された造形位置にて光ビームが照射されて前記材料粉末が溶融凝固することにより付加製造物が製造される際に、前記付加製造物の製造途中の造形面を含む領域を照らし、且つ、前記領域を撮像する撮像装置と、
前記領域を撮像した画像において、前記領域の少なくとも前記造形面にて反射した光の明るさを数値化した輝度を取得する輝度取得部と、
前記輝度取得部によって取得された前記造形面の前記輝度に基づいて前記材料粉末が溶融凝固した状態における密度を表す造形密度を推定する造形密度推定部と、
を備える、付加製造物の品質推定装置。
【請求項2】
前記付加製造物の品質推定装置は、更に、
前記輝度取得部によって取得された前記造形面の前記輝度を補正する輝度補正部を備え、
前記造形密度推定部は、前記輝度補正部によって補正された前記造形面の前記輝度に基づいて前記造形密度を推定する、請求項1に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、
所定の方向から前記領域を照らす照明部と、
前記照明部によって照らされた前記領域を撮像する撮像部と、
を備え、
前記輝度補正部は、前記照明部が前記領域を照らす前記所定の方向に対する前記造形面における前記光ビームの走査方向に応じて前記輝度を補正する、請求項2に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項4】
前記光ビームの前記走査方向は、前記付加製造物における隣接する付加層毎に変化される、請求項3に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項5】
前記輝度補正部は、前記領域のうち、前記造形面以外の周辺領域における周辺輝度を予め設定された基準輝度となるように補正する、請求項2−4のうちの何れか一項に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項6】
前記造形面の前記輝度は、前記画像における単位面積当たりの単位面積輝度を平均した単一層平均輝度である、請求項1−5のうちの何れか一項に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項7】
前記造形面の前記輝度は、前記付加製造物における付加層のうち異なる複数層の前記造形面の前記単一層平均輝度を、複数の前記造形面の数で更に平均した複数層平均輝度である、請求項6に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項8】
前記造形密度推定部は、前記単一層平均輝度と、前記単一層平均輝度における前記単位面積輝度のばらつきを表す単一層標準偏差と、を含む重回帰式で表される相関関係に基づいて前記造形密度を推定する、請求項6に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項9】
前記造形密度推定部は、前記複数層平均輝度と、前記単一層平均輝度における前記単位面積輝度のばらつきを表す単一層標準偏差を複数の前記造形面の数で更に平均した複数層平均標準偏差と、を含む重回帰式で表される相関関係に基づいて前記造形密度を推定する、請求項7に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項10】
前記撮像装置は、
前記造形面が形成された後であり、且つ、前記造形位置に新たに前記材料粉末が供給される前に前記領域を撮像する、請求項1−9のうちの何れか一項に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項11】
前記付加製造物の品質推定装置は、更に、
前記造形密度推定部によって推定された前記造形密度に基づいて、前記付加製造物の強度を良品に比べて低下させる内部欠陥の有無を判定する欠陥判定部を備える、請求項1−10の何れか一項に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項12】
前記欠陥判定部は、
前記造形密度推定部によって推定された前記造形密度が予め設定された基準造形密度以下である場合に、前記付加製造物の内部に前記内部欠陥があると判定する、請求項11に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項13】
前記欠陥判定部により前記付加製造物の内部に前記内部欠陥があると判定された場合、前記付加製造物の製造を中止させる、請求項11又は12に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項14】
前記欠陥判定部により前記内部欠陥があると判定された前記付加製造物を不良品として選別させる、請求項11又は12に記載の付加製造物の品質推定装置。
【請求項15】
前記材料粉末は、
アルミ又はSKD61である請求項1−14のうちの何れか一項に記載の付加製造物の品質推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造物の品質推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造には、例えば、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式等があることが知られている。粉末床溶融結合方式は、平らに敷き詰められた粉末に対して、光ビーム(レーザビーム及び電子ビーム等)を照射することで付加製造を行う。粉末床溶融結合方式には、SLM(Selective Laser Melting)、EBM(Electron Beam Melting)等が含まれる。指向性エネルギー堆積方式は、光ビームの照射と粉末材料の吐出を行うヘッドの位置を制御することで付加製造を行う。指向性エネルギー堆積方式には、LMD(Laser Metal Deposition)、DMP(Direct Metal Printing)等が含まれる。
【0003】
付加製造に関し、従来から、例えば、特許第6374934号公報に開示された撮像装置を含む付加製造システム及びそのようなシステムを動作させる方法(以下、「従来の付加製造システム等」と称呼する。)が知られている。この従来の付加製造システム等は、表面に対して配置され、且つ、溶融パスの少なくとも一部分の画像を生成するように構成されたカメラと、画像を処理するためのプロセッサとを備えている。
【0004】
そして、従来の付加製造システム等は、複数の画像が一定の間隔で累積的に取得され、プロセッサが複数の画像中の光強度を検出するようになっている。これにより、従来の付加製造システム等では、表面における溶融プールにより放出される光の強度に基づき、溶融プール内の欠陥を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6374934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、付加製造された付加製造物は、付加製造物の内部に空隙等の内部欠陥が存在すると、強度が低下する。このため、品質維持の観点から、付加製造物に内部欠陥が存在するか否かについて、例えば、破壊検査やX線CTスキャンによる非破壊検査等を行う必要がある。しかしながら、破壊検査を行う場合には、検査に伴って破壊した付加製造物は、長時間を要して製造したにも拘わらず出荷することができない。又、非破壊検査を行う場合には、現状において透過撮影可能な領域が微小であり、付加製造物と同時に作成した試験片について非破壊検査した結果を付加製造物の非破壊検査の結果と見なす必要がある。
【0007】
本発明は、付加製造物の内部欠陥を非破壊により検知可能な付加製造物の品質推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る付加製造物の品質推定装置は、材料粉末が供給された造形位置にて光ビームが照射されて材料粉末が溶融凝固することにより付加製造物が製造される際に、付加製造物の製造途中の造形面を含む領域を照らし、且つ、領域を撮像する撮像装置と、領域を撮像した画像において、領域の少なくとも造形面にて反射した光の明るさを数値化した輝度を取得する輝度取得部と、輝度取得部によって取得された造形面の輝度に基づいて材料粉末が溶融凝固した状態における密度を表す造形密度を推定する造形密度推定部と、を備える。
【0009】
これによれば、付加製造物の製造途中において、造形面にて反射した輝度に基づいて造形密度を推定することができる。そして、製造途中において推定した造形密度に基づいて、付加製造物の内部欠陥の有無を判定することができる。従って、付加製造した付加製造物の内部欠陥を、非破壊によって容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】付加製造装置を示す図である。
図2図1の光ビーム照射部の構成を示す図である。
図3図1の付加製造装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図1の品質推定装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】造形密度と機械強度との関係を示すグラフである。
図6】内部欠陥を説明するための図である。
図7】単位面積輝度及び単一層平均輝度を説明するための図である。
図8】複数層平均輝度、全層平均輝度、複数層平均標準偏差及び全層平均標準偏差を説明するための図である。
図9】輝度と造形密度との関係を説明するための図である。
図10】アルミに関する造形密度、複数層平均輝度及び複数層平均標準偏差の関係を示すグラフである。
図11】SKD61に関するエネルギー密度と造形密度との関係を示すグラフである。
図12】SKD61に関する造形密度、複数層平均輝度及び複数層平均標準偏差の関係を示すグラフである。
図13】欠陥判定プログラムを示すフローチャートである。
図14】変形例に係り、内部欠陥の修正を説明するための図である。
図15図14の修正により内部欠陥が修正された状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.付加製造装置1の構成)
付加製造装置1の構成について図面を参照しながら説明する。付加製造装置1は、例えば、粉末床溶融結合方式であってSLM方式を採用する。付加製造装置1は、図1に示すように、層状に配置された(積層された)粉末材料としての金属粉末Pに光ビームを照射することを繰り返すことによって、付加製造物Wを製造する装置である。
【0012】
ここで、光ビームは、例えば、レーザビーム及び電子ビームを含み、その他に金属粉末Pを溶融することができる種々のビームを含む。又、レーザビームには、例えば、ファイバレーザ、COレーザ(遠赤外レーザ)、半導体レーザ等、種々のレーザを適用でき、対象の金属粉末P(例えば、アルミ、ステンレス鋼、チタン、マルエージング鋼、合金工具鋼等)に応じて適宜決定される。
【0013】
付加製造装置1は、図1に示すように、チャンバ10、造形物支持装置20、粉末供給装置30、光ビーム照射装置40、加熱装置50及び制御装置60を備える。更に、付加製造装置1は、後述するように、撮像装置110及び制御装置120を有する付加製造物Wの品質推定装置100を備える。
【0014】
チャンバ10は、内部の空気を、例えば、He(ヘリウム)やN(窒素)、Ar(アルゴン)等の不活性ガスに置換可能に構成されている。尚、チャンバ10は、内部を不活性ガスに置換することに代えて、内部を減圧可能な構成としても良い。
【0015】
造形物支持装置20は、チャンバ10の内部に設けられ、付加製造物Wを造形(付加製造)するための支持部材により構成されている。造形物支持装置20は、造形用容器21、昇降テーブル22及びベース23を備えている。造形用容器21は、上側に開口部を有し、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。昇降テーブル22は、造形用容器21の内部にて内壁面に沿うように上下方向に昇降動作可能に設けられる。ベース23は、昇降テーブル22の上面に着脱可能に載置され、ベース23の上面が付加製造物Wを造形するための部位となる。即ち、ベース23は、昇降テーブル22の降下に伴って上面に層状に金属粉末Pを配置すると共に、付加製造時に付加製造物Wを支持可能とされている。
【0016】
粉末供給装置30は、チャンバ10の内部であって、造形物支持装置20に隣接して設けられている。粉末供給装置30は、粉末収納容器31、供給テーブル32及びリコータ33を備えている。粉末収納容器31は上側に開口部を有しており、粉末収納容器31の開口部の高さは造形用容器21の開口部の高さと同一に設けられている。粉末収納容器31は、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。供給テーブル32は、粉末収納容器31の内部にて内壁面に沿うように上下方向に移動可能に設けられている。そして、粉末収納容器31内において、供給テーブル32の上側領域に、金属粉末Pが収納されている。
【0017】
リコータ33は、造形用容器21の開口部及び粉末収納容器31の開口部の全領域に亘って、両開口部の上面に沿って往復移動可能に設けられている。リコータ33は、例えば、図1の左右方向にて右側から左側に移動するとき、即ち、粉末収納容器31の開口部から造形用容器21の開口部に向けて移動するときに、粉末収納容器31の開口部から盛り出ている金属粉末Pを造形用容器21に運搬する。
【0018】
更に、リコータ33は、後述するように降下した昇降テーブル22と共に降下したベース23の上面にて運搬した金属粉末Pを均し、ベース23の上面にて同種の金属粉末Pを層状に配置する、即ち、リコートする。ここで、「同種」とは、材料粉末である金属粉末Pの材質が同一であり、金属粉末Pの平均粒径等が所定の範囲内に含まれることを意味する。
【0019】
光ビーム照射装置40は、図1に示すように、チャンバ10の外部に配置されており、ベース23の上面に層状に配置された同種の金属粉末Pの表面にチャンバ10の外部から光ビーム40aを照射する。光ビーム40aは、上述したように、レーザビーム及び電子ビーム等である。光ビーム照射装置40は、リコートされた金属粉末Pに光ビーム40aを照射することにより金属粉末Pを金属粉末Pの融点以上の温度に加熱する。これにより、金属粉末Pは溶融してその後凝固し(又は焼結し)、一体化された層からなる付加製造物Wが造形(製造)される。即ち、隣接する金属粉末P同士は、溶融接合によって一体化される。
【0020】
光ビーム照射装置40は、予め設定されたプログラムに従って、光ビーム40aの照射位置を移動すると共に、ビーム強度を変更することができる。光ビーム40aの照射位置を移動することにより、三次元形状を有する付加製造物Wを造形することができる。又、光ビーム40aのビーム強度を変化させることにより、リコートされた金属粉末Pの被照射部分における投入エネルギー(被照射部分に流入する入熱量)が変化し、金属粉末Pの溶融状態を変化させることができる。ここで、光ビーム40aは、加熱装置50により加熱される範囲よりも狭い範囲に対して照射可能である。
【0021】
光ビーム照射装置40は、図1及び図2に示すように、レーザ発振器41及びレーザヘッド42を備えている。又、光ビーム照射装置40は、レーザ発振器41から発振された光ビーム40a(近赤外レーザ光)をレーザヘッド42に伝送する光ファイバ43を備えている。
【0022】
レーザ発振器41は、波長が予め設定された所定の赤外波長となるように発振させて連続波の近赤外レーザ光を光ビーム40aとして生成する。レーザヘッド42は、チャンバ10内に層状に配置された金属粉末Pの表面から所定の距離を隔てて配置される。レーザヘッド42は、図2に示すように、コリメートレンズ42a、ミラー42b、ガルバノスキャナ42c及びfθレンズ42dからなる光学系を備えている。
【0023】
これにより、レーザヘッド42においては、光ファイバ43を介して入射された近赤外レーザ(光ビーム40a)がコリメートレンズ42aによってコリメートされて平行光に偏向される。コリメートされた近赤外レーザ(光ビーム40a)は、図2に示すように、ガルバノスキャナ42cに入射されるようにミラー42bによって進行方向が変更される。
【0024】
そして、レーザヘッド42においては、ガルバノスキャナ42cが近赤外レーザ(光ビーム40a)の進行方向即ち照射角度を自在に変更する。これにより、fθレンズ42dによって集光された近赤外レーザ(光ビーム40a)は、リコートされた金属粉末Pの層表面にて所定の位置に照射される。即ち、レーザヘッド42は、光ビーム40aを、左右方向及び左右方向に直交する方向、換言すれば、リコートされた金属粉末Pの層表面においてこれらの方向を含む水平方向に移動させることができる。
【0025】
尚、金属粉末Pの層表面とは、ベース23の上面にて層状に配置された即ちリコートされた金属粉末Pにおける上側に露出した面である。又、光ビーム40aは、チャンバ10の上側に設けられる透明なガラス又は樹脂を通してチャンバ10内に照射されるようになっている。
【0026】
加熱装置50は、昇降テーブル22に内蔵される。加熱装置50は、ベース23を介して付加製造物Wを加熱するためのヒータであり、昇降テーブル22を介してベース23の全体を加熱する。加熱装置50は、例えば、コイルヒータ、カートリッジヒータ、ノズルヒータ、面状ヒータ等、種々のヒータを適用できる。加熱装置50による加熱範囲は、光ビーム40aの照射範囲を一部に含む範囲に設定されている。ここで、加熱装置50は、光ビーム40aのように金属粉末Pを溶融させることはない。
【0027】
制御装置60は、造形物支持装置20、粉末供給装置30、光ビーム照射装置40及び加熱装置50を制御する。更に、品質推定装置100の制御装置120は、制御装置60と協調しながら動作する。
【0028】
(2.制御装置60の構成)
制御装置60は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を主要構成部品とするマイクロコンピュータである。制御装置60は、図3に示すように、データ記憶部61、昇降テーブル作動制御部62、粉末供給制御部63、光ビーム照射制御部64及び加熱制御部65を備える。
【0029】
データ記憶部61は、付加製造物Wを含む空間全体を所定の厚さで分割した分割層ごとのデータが含まれていて、分割層における形状を表す形状データを含む各種データを記憶している。ここで、形状データは、例えば、図3にて詳細な図示を省略するCAD(Computer Aided Design)端末から供給されるようになっている。
【0030】
昇降テーブル作動制御部62は、昇降テーブル22を昇降させる駆動装置(図示省略)の作動を制御する。昇降テーブル作動制御部62は、粉末供給装置30が金属粉末Pを供給する際において、予め設定された降下量となるように昇降テーブル22を降下させる。
【0031】
粉末供給制御部63は、粉末供給装置30の作動を制御するものである。具体的に、粉末供給制御部63は、供給テーブル32を上下方向に移動させて粉末収納容器31に収容された金属粉末Pを粉末収納容器31の開口部から盛り出させると共に、リコータ33を往復移動させるように制御する。
【0032】
光ビーム照射制御部64は、光ビーム照射装置40の作動を制御するものである。具体的に、光ビーム照射制御部64は、光ビーム照射装置40が照射する光ビーム40aの照射位置(照射軌跡)及びビーム強度を、データ記憶部61に記憶されている形状データに基づいて制御する。
【0033】
加熱制御部65は、加熱装置50の作動を制御するものである。尚、加熱制御部65による加熱装置50の作動制御の詳細については、本発明に直接関係しないため、その説明を省略する。
【0034】
(3.品質推定装置100の構成)
撮像装置110は、図1に示すように、付加製造装置1のチャンバ10内において、ベース23の上面に対向する位置に配置されている。撮像装置110は、造形位置にて光ビーム40aが照射されて金属粉末Pが溶融凝固することにより付加製造物Wが製造される際に、付加製造物Wの製造途中の造形面を含む領域を撮像する。
【0035】
撮像装置110は、ライトを有しており、造形面を含む領域である金属粉末Pの層表面の全域を所定の方向(例えば、一方向)から照らす照明部111を備えている。又、撮像装置110は、カメラを有しており、照明部111によって照らされた造形面を含む領域即ち金属粉末Pの層表面の全域を撮像する撮像部112を有している。これにより、撮像部112は、光ビーム照射装置40による造形後において、照明部111によって照らされた製造途中の造形面を含む金属粉末Pの層表面の全域を撮像する。
【0036】
制御装置120は、撮像装置110を制御する。制御装置120は、撮像装置110により撮像された画像に基づいて、付加製造物Wの品質に関連する付加製造物Wの内部欠陥Hの有無を推定して判定する。
【0037】
(4.制御装置120の構成)
制御装置120は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を主要構成部品とするマイクロコンピュータである。制御装置120は、図3に示すように、撮像装置作動制御部121、輝度取得部122、輝度補正部123、造形密度推定部124及び欠陥判定部125を備える。
【0038】
撮像装置作動制御部121は、撮像装置110の作動を制御するものである。撮像装置作動制御部121は、撮像装置110の照明部111の照明動作と撮像部112の撮像動作とが同期するように、撮像装置110の作動を制御する。そして、撮像装置作動制御部121は、撮像装置110から付加製造物Wの造形面を含む金属粉末Pの層表面を撮像した画像データを取得する。
【0039】
輝度取得部122は、撮像装置作動制御部121から画像データを取得する。そして、輝度取得部122は、取得した画像データによって表される画像に画像処理を施すことにより、造形面にて反射した光の明るさを数値化した輝度を取得する。輝度取得部122は、取得した輝度を輝度補正部123に出力する。ここで、輝度とは、画像データによって表される画像において、造形面及び層表面が撮像装置110の照明部111によって照らされて反射した光の明るさ(強度)を、例えば、256階調等に数値化したものである。
【0040】
輝度補正部123は、輝度取得部122から造形面を含む領域の輝度を取得する。そして、輝度補正部123は、後述するように、画像データによって表される画像に画像処理を施すことにより、光ビーム40aの走査方向に一致する付加製造物Wにおける造形部分の延設方向によって変化する輝度を前記延設方向に応じて補正する。又、輝度補正部123は、造形面が明瞭に識別可能となるように、層表面のうちの造形面以外の周辺領域における周辺輝度を予め設定された基準輝度に補正する。
【0041】
造形密度推定部124は、付加製造物Wの造形密度を推定するものである。造形密度推定部124は、輝度補正部123から画像処理によって輝度が補正された画像データを取得する。そして、造形密度推定部124は、後述するように、取得した画像データを解析することにより造形面における輝度を計測し、造形面における輝度に基づいて付加製造物Wの造形密度を推定する。
【0042】
欠陥判定部125は、付加製造物Wに、例えば、品質である機械強度に影響を与えるような空隙である内部欠陥Hがあるか否かを判定する。欠陥判定部125は、造形密度推定部124によって推定された造形密度を用いて、付加製造物Wの機械強度に影響を与えるような内部欠陥Hがあるか否かを判定する。そして、欠陥判定部125は、判定した結果を制御装置60に出力する。
【0043】
(5.付加製造物Wの機械強度と造形密度との相関関係)
付加製造物Wにおける引っ張り強さ等の機械強度と金属粉末Pが溶融して凝固した状態における付加製造物Wの造形密度(或いは、比重)との間には相関関係が成立する。即ち、図5に示すように、造形密度が高くなる程(高密度になる程)機械強度は高くなり、造形密度が低くなる程(低密度になる程)機械強度は低くなる関係が成立する。
【0044】
一方、付加製造においては、金属粉末Pに光ビーム40aを照射することによって金属粉末Pの一部を溶融させ付加製造物Wを造形する。この場合、図6に概略的に示すように、照射される光ビーム40aのビーム強度やリコートされた金属粉末Pの層表面に対する光ビーム40aの入射角度等によって溶融した金属粉末Pが飛散し、その結果、付加製造物Wの内部に空隙、所謂、内部欠陥Hが生じる場合がある。内部欠陥Hが生じた場合、付加製造物Wの造形密度は低くなる。従って、機械強度と造形密度との関係を鑑みれば、付加製造物Wの製造(造形)においては、内部欠陥Hの有無を判別することが肝要である。
【0045】
(6.輝度及び標準偏差に関する用語の定義)
ここで、以下の説明において用いる用語の定義について説明しておく。「単位面積輝度au」は、図7に示すように、造形面における単位面積当たりの輝度に対応する値である。「単一層平均輝度aa」は、図7に示すように、付加製造された付加層(単一層)において「単位面積輝度au」を平均した値である。例えば、図7においては、25個の「単位面積輝度au」を平均した値が「単一層平均輝度aa」となる。
【0046】
又、「複数層平均輝度am」は、図8に示すように、付加製造された付加層である単一層L1、単一層L2、単一層L3、・・・の複数層において、それぞれの「単一層平均輝度aa1」、「単一層平均輝度aa2」、「単一層平均輝度aa3」・・・を層の数で平均した値である。例えば、図8においては、3つの「単一層平均輝度aa1」、「単一層平均輝度aa2」及び「単一層平均輝度aa3」を層の数である「3」で平均した値が「複数層平均輝度am」になる。更に、「全層平均輝度at」は、図8に示すように、付加製造された全層であるn層の「単一層平均輝度aa」を層の数である「n」で平均した値である。
【0047】
又、「単一層標準偏差bu」は、「単一層平均輝度aa」における「単位面積輝度au」のばらつき、例えば、図7においては25個の「単位面積輝度au」のばらつきを表す値である。又、「複数層平均標準偏差ba」は、付加製造された複数層のそれぞれの「単一層標準偏差bu」を平均した値である。例えば、図8においては、単一層L1,L2,L3のそれぞれの「単一層標準偏差bu」を層の数である「3」で平均した値が「複数層平均標準偏差ba」になる。更に、「全層平均標準偏差bt」は、付加製造された全層について、「単一層標準偏差bu」を平均した値である。例えば、図8においては、n層の「単一層標準偏差bu」を層の数である「n」で平均した値が「全層平均標準偏差bt」となる。
【0048】
尚、以下の説明において、「平均輝度情報A」には、上述した「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」が含まれる。又、「標準偏差情報B」には、上述した「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」が含まれる。
【0049】
(7.造形密度と造形面の輝度との関係)
上述したように、光ビーム40aを照射して金属粉末Pを溶融し付加製造物Wを製造(造形)する場合、内部欠陥Hの存在により造形密度が高くなったり低くなったりする。ところで、付加製造物Wに内部欠陥Hが存在する場合、特に、付加製造物Wの造形面(光ビーム40aが照射された面)における輝度に変化が生じることが経験上知られている。そこで、本発明の発明者等は、種々の実験を行うことにより、造形面における輝度と造形密度との間に成立する相関関係を見出した。以下、この相関関係について説明する。
【0050】
相関関係を検討するに当たり、図8に示すように、金属粉末Pに光ビーム40aを照射して、正方形の上面及び底面を有し、且つ、n層からなる直方体を評価サンプルとして複数作製する。この場合、それぞれの評価サンプルについては、例えば、光ビーム40aの照射条件等を変更し、造形密度が異なるように作製する。
【0051】
作製した評価サンプルにおいては、図9に示すように、造形密度が増加する程、造形面における輝度が低くなる傾向を有する。そこで、評価サンプルを作製するに当たり、光ビーム40aが照射された後に、それぞれの造形面を撮像し、撮像した画像を表す画像データを取得する。そして、取得した画像データにおいて、図7に示すように、評価サンプルにおける正方形の造形面を単位面積に分割して「単位面積輝度au」を計測する。
【0052】
そして、「単位面積輝度au」を用いて、「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」を算出する。更に、「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」を算出する。これにより、造形密度は、「平均輝度情報」と「標準偏差情報」とを用いた重回帰式(モデル)として表すことが可能となる。
【0053】
具体的に、金属粉末Pがアルミである場合を説明する。アルミの金属粉末Pを用いて上述したように作製した評価サンプルについて、造形面における「単位面積輝度au」を計測してプロットした結果を図10に示す。図10において、横軸は造形密度であり、第一縦軸は黒丸で表される例えば「複数層平均輝度am」であり、第二縦軸は白丸で表される例えば「複数層平均標準偏差ba」である。
【0054】
図10に示すように、金属粉末Pがアルミの場合、造形密度と輝度である「複数層平均輝度am」、及び、造形密度と標準偏差である「複数層平均標準偏差ba」の間における重相関係数が高い。このため、金属粉末Pがアルミの場合には、造形密度ρは、下記式1に示すように、「平均輝度情報A」と「標準偏差情報B」とを用いた重回帰式(モデル式)に基づいて推定することが可能となる。
ρ=K1−K2×A+K3×B+K4×C+G…式1
【0055】
但し、式1において、K1は実験的に求まる所定値であり、Gは実験的に求まる誤差である。又、式1において、K2,K3,K4はそれぞれ所定の係数を表す。そして、式1のAには、「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れかの値、例えば、「複数層平均輝度am」を代入することができる。又、式1のBには、「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」の何れかの値、例えば、「複数層平均標準偏差ba」を代入することができる。尚、前記式1のCは、輝度を標準化するための値であり、例えば、「複数層平均輝度am」から「全層平均輝度at」を減じた値になる。
【0056】
次に、金属粉末PがSKD61の場合を説明する。SKD61の場合、上述したアルミに比べて、光ビーム40aによって溶融する際のエネルギー密度の大きさが影響する。即ち、SKD61を溶融する場合、図11に示すように、エネルギー密度が小さいと溶融後の相対密度が小さくなり、エネルギー密度が大きくなるにつれて溶融後の相対密度が大きく安定する。従って、SKD61の場合には、光ビーム40aにおけるエネルギー密度を一定以上とし、相関関係を求めるものとする。
【0057】
SKD61の金属粉末Pを用いて上述したように作製した評価サンプルについて、造形面における「単位面積輝度au」を計測してプロットした結果を図12に示す。図12においても、横軸は造形密度であり、第一縦軸は黒丸で表される例えば「複数層平均輝度am」であり、第二縦軸は白丸で表される例えば「複数層平均標準偏差ba」である。
【0058】
図12に示すように、金属粉末PがSKD61の場合、上述したようにエネルギー密度を考慮することにより、造形密度と「複数層平均輝度am」、及び、造形密度と「複数層平均標準偏差ba」の間における重相関係数が高くなる。このため、金属粉末PがSKD61の場合には、造形密度ρは、下記式2に示すように、「平均輝度情報A」と「標準偏差情報B」とを用いた重回帰式(モデル式)に基づいて推定することが可能となる。
ρ=K1−K2×A+K3×B+K4×D+G…式2
【0059】
但し、式2においても、K1は実験的に求まる所定値であり、Gは実験的に求まる誤差である。又、式1においても、K2,K3,K4はそれぞれ所定の係数を表す。そして、式2のAにも、「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れかの値、例えば、「複数層平均輝度am」を代入することができる。又、式1のBにも、「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」の何れかの値、例えば、「複数層平均標準偏差ba」を代入することができる。但し、前記式2のDは、標準偏差を標準化するための値であり、例えば、「複数層平均標準偏差ba」から「全層平均標準偏差bt」を減じた値になる。
【0060】
尚、造形密度ρを推定するための重回帰式(モデル式)は、上記式1及び式2に限定されるものではなく、例えば、輝度を標準化するための値C及び標準偏差を標準化するための値Dの両方を有することも可能である。又、重回帰式(モデル式)においては、上記式1及び式2において示した「A」、「B」、「C」及び「D」に限らず、他の値、例えば、エネルギー密度に関連する値を付加したりすることも可能である。
【0061】
ところで、通常、付加製造装置1に設けられる撮像装置110においては、照明部111はチャンバ10の内部を所定の方向として、例えば、一方向から照らす。この場合、照明部111が照らす照明方向に対する光ビーム40aの走査方向に依存して、照明部111によって照らされた造形面を撮像した際の「単位面積輝度au」に差異が生じる可能性がある。例えば、照明部111の照明方向に対して光ビーム40aの走査方向が平行である場合と、照明方向に対して光ビーム40aの走査方向が直角である場合とでは、特に、造形面における凹凸に起因する光の反射状態が異なるために「単位面積輝度au」に差異が生じる。
【0062】
このような、光ビーム40aの走査方向(造形部分の延設方向)に依存する「単位面積輝度au」の差異については、例えば、撮像装置110の照明部111が照らす方向に平行な方向と直交する方向との間を複数分割(例えば、30度ごとに分割)した各方向ごとに予め実験的に測定することが可能である。そして、測定結果に基づいて操作方向と「単位面積輝度au」との相関関係を取得することができる。
【0063】
このため、「単位面積輝度au」を計測する場合、画像データによって表される造形面及び層表面の画像において、光ビーム40aの走査方向に応じて「単位面積輝度au」を補正(補完)する画像処理が施される。これにより、「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」を算出する場合には、予め「単位面積輝度au」を補正(補完)することにより、走査方向に拘わらず、より正確に計測することができる。
【0064】
又、光ビーム40aの走査方向は、例えば、付加製造物Wに異方性に起因する問題が生じることを防止するために、付加製造物Wにおける隣接する付加層毎に変更される場合がある。この場合には、上述したように、走査方向の変化によって照明部111の照射方向との相関関係に差異が生じる可能性があり、その結果、「単位面積輝度au」に影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
このため、予測精度の高い上記式1及び式2を求めるには、照明部111の照射方向と走査方向との間の相関関係を考慮する必要がある。この場合、複数の付加層のうち、光ビーム40aの走査方向が同一の又は類似する付加層について、例えば、「単位面積輝度au」を平均して用いることにより、走査方向の変化に起因する影響を小さくすることができる。その結果、予測精度の高い上記式1及び式2を求めることができる。
【0066】
又、画像処理においては、「単位面積輝度au」を更に正確に計測するため、層表面のうち、造形面以外の周辺領域の輝度が基準輝度に補正される。これにより、造形面以外の周辺領域における基準輝度を計測の基準とすることができ、ひいては、造形面が明確になって「単位面積輝度au」をより正確に計測することができる。従って、上述した重回帰式(モデル式)に対して、「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れか及び「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」の何れかを入力することにより、造形密度ρを正確に推定することができる。
【0067】
又、走査方向と照明部111によって照らされる方向とに応じて「単位面積輝度au」に差異が生じ得ることを勘案して、上記式1及び式2の重回帰式(モデル式)を求めることも可能である。即ち、重回帰式(モデル式)を、照明部111が照らす方向に対する光ビーム40aの走査方向に対応して予め複数求めておく。
【0068】
具体的には、重回帰式(モデル式)は、撮像装置110の照明部111が照らす方向に平行な方向と直交する方向との間を複数分割(例えば、30度ごとに分割)した各方向ごとに求めることができる。或いは、撮像装置110の照明部111が照らす方向や撮像部112による撮像方向を重回帰式(モデル式)を求めた状態に合わせて適宜変更する。そして、撮像された画像データを用いて「単位面積輝度au」を計測することにより、予め求められている重回帰式(モデル式)を用いて造形密度ρを推定することができる。
【0069】
(8.付加製造方法)
次に、付加製造装置1を用いた付加製造方法について、図13に示す欠陥判定プログラムのフローチャートを参照して説明する。制御装置60(光ビーム照射制御部64)は、データ記憶部61に記憶された付加製造物Wの形状データに基づいて、光ビーム照射装置40を作動させて光ビーム40aの照射を開始する。即ち、制御装置60(光ビーム照射制御部64)は、図示省略の所定のプログラムを実行することにより、形状データに基づいて光ビーム40aを走査して金属粉末Pの融点以上の温度で金属粉末Pを加熱する。ここで、光ビーム照射制御部64は、光ビーム40aのビーム強度、走査速度、走査間隔及び走査パターン等、適宜変更可能な照射条件に従って、光ビーム40aを走査させる。
【0070】
光ビーム40aが照射されることにより、金属粉末Pは溶融しその後凝固する。このように、光ビーム40aが照射された位置は、強固な力によって一体化されて付加製造物Wが製造(造形)される。そして、この付加製造物Wの製造(造形)において、制御装置60及び品質推定装置100の制御装置120は、協調して図13の欠陥判定プログラムを実行し、内部欠陥Hの有無を判定して付加製造物Wを製造(造形)する。
【0071】
先ず、制御装置60(マイクロコンピュータを構成するCPU)は、ステップS10にて付加製造プログラムの実行を開始し、続くステップS11にて、制御装置60(昇降テーブル作動制御部62)は、昇降テーブル22を予め設定された降下量だけ降下させる(昇降テーブル降下工程)。これにより、昇降テーブル22に載置されたベース23も予め設定された降下量だけ降下する。制御装置60(昇降テーブル作動制御部62)は、昇降テーブル22及びベース23を降下させると、ステップS12に進む。
【0072】
ステップS12においては、制御装置60(粉末供給制御部63)は、ベース23の上面に金属粉末Pを供給すると共にリコートする(粉末供給工程)。具体的に、粉末供給制御部63は、粉末供給装置30における供給テーブル32を上昇させて、所望量の金属粉末Pが粉末収納容器31の開口部から盛り出た状態とする。尚、粉末供給装置30においては、供給テーブル32を下方に位置させた状態で粉末収納容器31内に金属粉末Pが予め収納されている。
【0073】
そして、粉末供給制御部63は、リコータ33を粉末供給装置30側である原位置からベース23の他端側である造形物支持装置20側に向かって移動させる。これにより、リコータ33は、ベース23の上面に金属粉末Pを供給しつつリコートする。リコータ33は、ベース23の他端側まで前進すると停止する。そして、制御装置60(粉末供給制御部63)は、ベース23の上面にて金属粉末Pを供給してリコートすると、ステップS13に進む。
【0074】
ステップS13においては、制御装置60(光ビーム照射制御部64)は、データ記憶部61に記憶された形状データに基づいて光ビーム照射装置40を作動させる(造形工程)。具体的に、光ビーム照射制御部64は、レーザ発振器41によって生成される光ビーム40aのビーム強度を変更したり、レーザヘッド42のガルバノスキャナ42cによって光ビーム40aの照射角度を変更したりして、光ビーム40aを層状に配置された金属粉末Pの層表面に照射する。これにより、付加製造物Wには、形状データに基づく造形面が形成される。そして、制御装置60(光ビーム照射制御部64)は、光ビーム40aを照射すると、ステップS14に進む。
【0075】
ステップS14においては、制御装置60と通信可能とされた制御装置120が制御装置60からプログラム実行に関する信号を受信する。そして、制御装置120(撮像装置作動制御部121)は、撮像装置110を作動させて、光ビーム40aが照射された後のベース23における層表面を撮像する(撮像工程)。具体的に、撮像装置作動制御部121は、撮像装置110の照明部111を作動させて層表面を照らした状態で、撮像部112が製造途中の造形面を含む領域を撮像する。ここで、照明部111は、チャンバ10の内部にて所定位置に固定された状態で、且つ、所定の方向、例えば、一方向に向けて、例えば、白色光をフラッシュさせ、撮像部112は、照明部111によって照らされた瞬間の造形面を含む領域を撮像する。そして、撮像装置作動制御部121は撮像した画像を表す画像データを輝度取得部122に出力し、制御装置120はステップS15に進む。
【0076】
ステップS15においては、制御装置120(輝度取得部122、輝度補正部123及び造形密度推定部124)は、前記ステップS14にて撮像装置110によって取得された画像データに基づいて、付加製造物Wの造形密度ρを推定する(造形密度推定工程)。具体的に、輝度補正部123は、輝度取得部122によって取得された画像データによって表される造形面及び層表面の画像について上述した画像処理を行う。そして、造形密度推定部124は、光ビーム40aが照射された造形面の「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れかの値を算出する。又、造形密度推定部124は、「単一層標準偏差bu」、「複数層平均標準偏差ba」及び「全層平均標準偏差bt」の何れかの値を算出する。更に、造形密度推定部124は、必要に応じて値Cや値Dを算出し、上述した重回帰式(モデル式)を用いて造形密度ρを推定する。
【0077】
ステップS16においては、制御装置120(欠陥判定部125)は、前記ステップS15にて推定した造形密度ρに基づいて、付加製造物Wに内部欠陥Hがあるか否かを判定する(欠陥判定工程)。即ち、欠陥判定部125は、造形密度ρが予め設定された基準造形密度ρ0以下であれば、付加製造物Wに内部欠陥Hがあるため「Yes」と判定してステップS17に進む。
【0078】
そして、制御装置120は、付加製造装置1の制御装置60に対して、現在、付加製造しており、且つ、造形密度ρが基準造形密度ρ0以下の不良品である付加製造物Wを継続して製造する付加製造を中止させる。これにより、不良品を継続して製造(造形)する時間を無くすことができ、速やかに新たに付加製造物Wの製造(造形)を開始することができる。従って、生産効率を向上させることができる。
【0079】
尚、付加製造を停止させることなく、最終層まで付加製造を継続させた後、制御装置60に不良品を選別して排除させることも可能である。即ち、ステップS16にて制御装置120(欠陥判定部125)が「Yes」と判定した場合においては、不良品は次工程(例えば、検査工程等)に進むことが排除される。これにより、例えば、同一形状を有する付加製造物Wを大量生産する場合には、良品を継続して製造(造形)することができるため、生産効率を低下させることがない。
【0080】
一方、欠陥判定部125は、推定された造形密度ρが基準造形密度ρ0よりも大きければ、付加製造物Wに含まれる内部欠陥Hが極めて少ない、或いは、付加製造物Wに内部欠陥Hがないため、「No」と判定して前記ステップS11に戻る。この場合には、付加製造装置1の制御装置60は、前記ステップS11以降の各ステップ処理を実行し、次層の付加製造を行う。
【0081】
以上の説明からも理解できるように、上述した付加製造物Wの品質推定装置100によれば、付加製造物Wの製造途中において、輝度補正部123が造形面にて反射した「単位面積輝度au」を光ビーム40aの走査方向に応じて補正し、造形密度推定部124が「複数層平均輝度am」に基づいて造形密度ρを推定することができる。そして、製造途中において推定した造形密度ρに基づいて、欠陥判定部125が付加製造物Wの内部欠陥Hの有無を判定することができる。従って、付加製造した付加製造物Wの内部欠陥Hを、非破壊によって容易に検知することができる。
【0082】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態においては、品質推定装置100の造形密度推定部124は、撮像装置110によって撮像された画像(画像データ)における付加製造物Wの造形面について、単位面積当たりの「単位面積輝度au」を計測して「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れかの値を算出するようにした。これに代えて、例えば、撮像装置110の撮像部112の解像度が大きい場合には、付加製造物Wの造形面について、画像のピクセル(画素)ごとの「単位面積輝度au」に基づいて「単一層平均輝度aa」、「複数層平均輝度am」及び「全層平均輝度at」のうちの何れかの値を算出することも可能である。
【0084】
これによれば、計測可能な「単位面積輝度au」の数を増大させることができる。その結果、より正確な「単一層平均輝度aa」等の値を算出することができて、造形密度ρをより正確に推定することができる。
【0085】
又、上記実施形態においては、造形密度推定部124は、「複数層平均輝度am」を用いることにより、複数の付加層ごとに造形密度ρを推定するようにした。これに代えて、造形密度推定部124が「単一層平均輝度aa」を用いることにより、一層ごとに造形密度ρを推定することも可能である。
【0086】
又、上記実施形態においては、制御装置120は、造形密度ρが基準造形密度ρ0以下であり、付加製造物Wに内部欠陥Hがある場合には、付加製造装置1の制御装置60に製造(造形)を停止させるようにした。これに代えて、制御装置120は、制御装置60と協働して、付加製造物Wに内部欠陥Hがある場合において、内部欠陥Hの位置を特定すると共に存在する内部欠陥Hを修正することも可能である。
【0087】
この場合、制御装置120においては、例えば、欠陥判定部125が内部欠陥Hの存在位置を特定するために層表面即ち水平方向における座標に変換し、この座標を表す座標データを制御装置60(光ビーム照射制御部64)に出力する。光ビーム照射制御部64は、内部欠陥Hを除去するために光ビーム照射装置40を作動させて、内部欠陥Hに光ビーム40aを再度照射する。
【0088】
具体的に、光ビーム照射制御部64は、内部欠陥Hの位置を表す座標データに基づき、光ビーム照射装置40のガルバノスキャナ42cによって光ビーム40aの照射角度等を調整する。そして、光ビーム照射装置40は、図14に示すように、内部欠陥Hの周囲に向けて光ビーム40aを照射する。このように、内部欠陥Hの周囲に光ビーム40aが照射されることにより、図15に示すように、内部欠陥Hの周囲に存在する金属粉末Pが溶融して内部欠陥Hを埋め、その後凝固する。
【0089】
これにより、付加製造物Wに発生した内部欠陥Hは、再度照射された光ビーム40aによって除去され、内部欠陥Hが修正される。従って、この場合には、内部欠陥Hを随時修正して付加製造物Wを製造することができる。これにより、内部欠陥Hを有することなく所望の機械強度が得られる付加製造物Wを製造することができ、製造のやり直しを未然に防止することができる。従って、製造に要する時間を大幅に低減することができる。
【0090】
更に、上記実施形態においては、品質推定装置100の撮像装置作動制御部121は、光ビーム40aが照射された後であって、且つ、金属粉末Pがリコートされる前の層表面を撮像するように、撮像装置110を作動させるようにした。これに代えて、撮像装置作動制御部121が、光ビーム40aが照射され、且つ、金属粉末Pがリコートされた後の層表面を撮像するように、撮像装置110を作動させることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…付加製造装置、10…チャンバ、20…造形物支持装置、21…造形用容器、22…昇降テーブル、23…ベース、30…粉末供給装置、31…粉末収納容器、32…供給テーブル、33…リコータ、40…光ビーム照射装置、40a…光ビーム、41…レーザ発振器、42…レーザヘッド、42a…コリメートレンズ、42b…ミラー、42c…ガルバノスキャナ、42d…レンズ、43…光ファイバ、50…加熱装置、60…制御装置、61…データ記憶部、62…昇降テーブル作動制御部、63…粉末供給制御部、64…光ビーム照射制御部、65…加熱制御部、100…品質推定装置、110…撮像装置、111…照明部、112…撮像部、120…制御装置、121…撮像装置作動制御部、122…輝度取得部、123…輝度補正部、124…造形密度推定部、125…欠陥判定部、H…内部欠陥、P…金属粉末、W…付加製造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15