【実施例】
【0082】
本発明者らは、ネコTERTの不活性化形をコードするDNAワクチンおよびネコ/イヌハイブリッド型TERTをコードするDNAワクチンを構築し(実施例1)、そしてそれらの機能性、安全性、および免疫原性を評価した。
【0083】
本発明者らは、それらのプラスミドが、トランスフェクション後に、哺乳動物細胞においてインビトロで正しくプロセシングされ、そしてプラスミドの発現産物(TERTタンパク質)が適切に発現されることを実証した。更に、酵素活性は検出されず、かつTERTタンパク質は、トランスフェクトされた細胞の核小体を除いて見出され、それは該コンストラクトの安全性の証拠である(実施例2)。
【0084】
その際、それらのプラスミドは、免疫原性であり、かつマウスにおいて特異的で効果的なCD8T細胞およびCD4T細胞を導き出すことが見出された(実施例3)。
【0085】
実施例1:DNAプラスミドの構築
全てのコンストラクトにおいて、TERT配列の上流には、ヒトユビキチンをコードするDNA配列がある。ユビキチンの存在は、TERTタンパク質のプロテアソームへのアドレッシングを高め、かつ得られたTERTペプチドのクラスI提示経路を増加させることとなる。TERT配列の下流には、例えばウェスタンブロットまたは組織化学による融合タンパク質の将来的な精製または検出を容易にするために、インフルエンザタンパク質V5の配列がある。TERTタンパク質をコードするDNA配列は、核小体移入シグナルをコードするN末端領域における47のアミノ酸を欠失している。更に、タンパク質酵素活性を阻害するために、TERTの触媒部位における3つのアミノ酸(VDD)が除去されている。pUF2は、ネコTERT配列の95%およびイヌTERT配列の5%をコードし(
図1A)、pCDTは、ネコTERT配列の54.4%およびイヌTERT配列の35.9%をコードしている(
図1B)。
【0086】
全てのTERTのDNA配列は、Genecust(ルクセンブルク、デュドランジュ)から合成されたものである。次いでそれらの配列は、Life technologies SAS(フランス、サン・トーバン)によって供給されるpCDNA3.1またはpcDNA3.1 TOPO−V5発現プラスミド中に、HindIIIおよびXbaI制限部位を使用してクローニングした(
図1Cを参照)。プラスミドは、使用するまで1×PBS中で2mg/mLの濃度で−20℃で貯蔵した。バックボーンプラスミドは、ウェスタンブロットおよびTrapアッセイ実験のために空ベクターとして使用した。そのベクターは、遺伝子導入タンパク質DNA配列(TERT)を失ったpcDNA3.1バックボーンプラスミドからなる。
【0087】
実施例2:プラスミドの機能性および安全性
2.1.材料および方法
細胞培養
トランスフェクションアッセイおよび免疫蛍光実験のために使用された293T細胞系統は、サイモン・ウェイン−ホブソン教授(パスツール研究所)の好意により提供された。CrFK細胞は、J.リチャードソン教授(エコール・ヴェテリネール・ドゥ・メゾン−アルフォール)の好意により提供された。細胞は、37℃、5%CO
2で、ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)に10%の熱不活性化されたウシ胎児血清(FCS)、1%のピルビン酸ナトリウム、1%のペニシリン−ストレプトマイシンピルベート、および0.1%のβ−メルカプトエタノールを補充した培地において増殖させた。培養培地の全ての成分は、Life technologies SAS(フランス、サン・トーバン)から購入した。
【0088】
トランスフェクションアッセイ
293T細胞のトランスフェクションは、pCDTまたはpUF2プラスミドのいずれかでJetPRIME(登録商標)トランスフェクションキット(Polyplus−transfection SA、フランス、イルキルシュ)を使用して製造元の指示に従って実施した。6ウェルプレートにおいて、1ウェル当たり400000個のHeLa細胞または293T細胞を2mLのDMEM培養培地中に撒き、トランスフェクション前に37℃、5%のCO
2で24時間培養した。それぞれのウェルにつき、2μgのそれぞれのプラスミドを200μLのjetPRIME(登録商標)バッファー中で希釈したもの、またはそれぞれ4μLのjetPRIME(登録商標)剤だけしか有さない200μLのjetPRIME(登録商標)バッファーを、細胞上に滴下した。トランスフェクション媒体は、4時間後に除去し、そして2mLのDMEM培養培地によって置き換えた。細胞は37℃、5%CO2に置き、そして分析のために24時間後に回収した。
【0089】
ウェスタンブロット
トランスフェクトさせた293T細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(完全にEDTA不含、ロシュ・ダイアグノスティックス、米国、インディアナポリス)を含有する放射免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解バッファー(RIPAバッファー、Sigma Aldrich chimie SARL、フランス、サン・カンタン・ファラヴィエ)を用いて氷上で10〜20分にわたり溶解させた。次いで、懸濁液を、細胞砕片の除去のために、14000rpmで4℃で15分間遠心分離した。上清を収集し、ブラッドフォード法を使用してタンパク質濃度を測定した。タンパク質試料を、95℃で5分間変性させ、Nu−PAGE(登録商標)Novex 4〜12%Bis−Trisゲル(インビトロジェン、米国、カールスバッド)で分離し、PVDF膜(iBlot(登録商標)transfer stack、インビトロジェン、米国、カールスバッド)へとiBlot(登録商標)装置(インビトロジェン、米国、カールスバッド)を使用して移した。膜は約60kDaのカットであった。まず、上方部の膜を抗V5抗体(インビトロジェン、米国、カールスバッド)でプロービングし、その一方で他の部分は、抗βアクチン抗体(Sigma Aldrich chimie SARL、フランス、サン・カンタン・ファラヴィエ)でプロービングし、次いで試料を、ECL(強化された化学発光)の抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体(GEヘルスケア、フランス、ヴェリジー)によって曝露した。イムノブロットシグナルは、両者ともGEヘルスケア(英国、バッキンガムシア)から購入した製品である18×24のフィルムと相応するカセットを使用して明らかにした。
【0090】
免疫蛍光および顕微鏡検査
293T細胞を、8ウェルのLab−Tek(登録商標)チャンバースライド(Sigma Aldrich chimie SARL、フランス、サン・カンタン・ファラヴィエ)上に200μLの培養培地中で20・10
3細胞/ウェルで撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日に、培養培地を破棄した。1μgのpCDTまたはpUF2プラスミドのいずれか、50μLのOptiMEM(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)および2.5μLのFugene HD(Promega France、フランス、シャルボニエール・レ・バン)を含有する10μLの混合溶液を、相応するチャンバーに添加した。コントロールとして、20・10
3個のHeLa細胞を、プラスミドを含まない同じ混合物10μLと一緒にインキュベートした。チャンバースライドを、インキュベーター中で24時間放置した。トランスフェクトさせた293T細胞を、1×PBSで慎重に洗浄し、そして200μLの2%PFAを各ウェルへと+4℃で10分にわたり加えて、細胞を固定し、そして透過性にさせた。次いでウェルを、0.05%Tween(登録商標)20の1×PBSで2回洗浄し、そして293T細胞を室温で200μLのブロッキング溶液(0.5%TritonX100、3%BSA、10%ヤギ血清)と一緒に30分間インキュベートした。最後に、ウェルを室温で一次マウス抗V5抗体(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)をブロッキング溶液中で1/200で希釈したものと一緒に僅かに撹拌しつつ1.5時間にわたりインキュベートした。0.05%Tween(登録商標)20の1×PBS中で3回洗浄した後に、二次ヤギ抗マウスAlexa Fluor 488(登録商標)抗体(Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)をブロッキング溶液で希釈(1/500)したものを、それらのウェルの中に入れ、光を避けて僅かに撹拌しつつ室温で45分間置いた。ウェルを、0.05%Tween(登録商標)20の1×PBSで3回洗浄し、そしてウェルにDAPIを含有するVectashield(登録商標)マウンティング培地(Vector laboratories、英国、ピーターバラ)をマウントした。スライドを、画像処理および解析システム(Axiovision、Carl Zeis MicroImaging GmbH、ドイツ、イェーナ)を備えた蛍光顕微鏡(Axio observer Z1、Carl Zeis MicroImaging GmbH、ドイツ、イェーナ)を用いて解析した。
【0091】
Trapアッセイ
テロメラーゼ活性を、テロメラーゼ活性の定量的測定のための測光酵素イムノアッセイによって、テロメリックリピート増幅プロトコール(TRAP)(Yang et al. 2002)を利用して測定した。
【0092】
CrFK(Crandell Reesネコ腎臓)テロメラーゼ陰性細胞(Yazawa et al., 2003)に、pUF2またはpCDT TERTコンストラクトをコードするプラスミドをトランスフェクトさせた。簡潔には、トランスフェクションの24時間後に、CrFK細胞を機械的スクレイピングにより採取し、次いで1mLのPBSで2回洗浄し、そして3000gで4℃における5分間の遠心分離によってペレット化させた。テロメラーゼ活性は、TRAP−ELISAアッセイによってTeloTAGGGテロメラーゼPCR ELISAPLUSキット(ロシュ・ダイアグノスティックス、ドイツ)を使用して製造元の指示に従って評価した。細胞抽出物におけるタンパク質濃度は、ブラッドフォード法(バイオ・ラッド・ラボラトリーズ)によって測定した。3マイクロリットルの細胞抽出物(2.1μg、0.21μg、0.021μgに相当)を、キットで提供されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物中でインキュベートした。サイクルプログラムは、25℃で30分のプライマー伸長で行い、次いでその混合物を、94℃で30秒の変性、50℃で30秒のアニーリング、72℃で90秒の重合、および72℃で10分の最終伸長からなる30サイクルのPCRにかけた。2.5μlの増幅産物を、ELISAのために製造元の指示に従って使用した。それぞれのウェルの450nmでの吸光度(690nmの参照波長で)を、Dynex MRX RevelationおよびDynex MRX Revelation TC 96 Well Microplate Readerを使用して測定した。
【0093】
テロメラーゼ活性は、キットのマニュアルに指示される通りに、100の相対テロメラーゼ活性(RTA)を表す0.1amolのテロメア反復配列のコントロールテンプレートと比較して計算した。不活性化された試料および溶解バッファーはネガティブコントロールとして用いた。
【0094】
2.2.結果
TERTをコードする新たなプラスミドは、トランスフェクション後にインビトロで機能性を示す
新たなプラスミドコンストラクトの機能性は、pCDTまたはpUF2でインビトロでトランスフェクトされた細胞の全タンパク質ライセート中のプラスミドでコードされたTERTタンパク質の存在によって示される。本発明者らは、pCDTまたはpUF2でトランスフェクトされた293T細胞プラスミド(トランスフェクションの24時間後)の全タンパク質ライセートに対するウェスタンブロット分析を行った。それぞれのプラスミドによってコードされたTERTタンパク質配列はV5タンパク質配列でタグ付けされているので、当該融合タンパク質の存在を明らかにするために、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合された抗V5抗体を使用した。
【0095】
トランスフェクションの24時間後にpCDTまたはpUF2でトランスフェクトされた細胞のタンパク質ライセート中で高度に陽性のV5特異的シグナルが検出された。検出されたタンパク質バンドのサイズは、分子量123kDaのプラスミドによってコードされる異なるTERTタンパク質に相当する。更に、未処理の細胞または空のプラスミドでトランスフェクトされた細胞においてはV5特異的シグナルは検出されなかった。本発明者らは、pUF2およびpCDTプラスミドが、トランスフェクション後に、哺乳動物細胞においてインビトロで正しくプロセシングされ、そしてプラスミドの発現産物(TERTタンパク質)が適切に発現されることを実証した。
【0096】
TERTをコードする新たなプラスミドは、インビトロでトランスフェクトした後に細胞発現が核小体から排除される非機能的酵素を発現する
酵素活性の不在を試験するために、TRAPezeアッセイを行った。
図2によって概説されるように、pUF2またはpCDTでトランスフェクトされた細胞からのタンパク質ライセートは、いかなるテロメラーゼ活性も示さない。ポジティブコントロールとして、ネイティブなヒトTERTでトランスフェクトされた293T細胞からのタンパク質抽出物を使用した。このように、本発明者らは、pCDTまたはpUF2プラスミドのいずれかによってコードされるTERTタンパク質が、インビトロでのトランスフェクション後にいかなる機能的な酵素活性も示さないことを実証した。
【0097】
本発明者らは、更に、2つのプラスミドの発現産物の細胞内の所在を調査した。この目的のために、インビトロ免疫蛍光アッセイを実施した。簡潔には、pCDTまたはpUF2での293T細胞のインビトロでのトランスフェクションの24時間後に、Alexa−Fluor標識された二次抗体に結合された抗V5抗体を、細胞内のTERTタンパク質の検出のために使用した。ネイティブなヒトTERTをコードするプラスミドでトランスフェクトされた293T細胞で観察されたのとは対照的に、pCDTおよびpUF2にコードされるTERTは細胞核小体内部で検出されなかった。
【0098】
結論として言えば、本発明者らは、pUF2およびpCDTプラスミドでのインビトロでのトランスフェクションの後に、第一に、TERTタンパク質発現が核小体から排除されること、そして第二に、これらの発現産物がいかなる酵素活性も示さないことを実証した。これらの2つの判断基準は、プラスミドの安全性を確立し、該プラスミドをインビボでのワクチン接種に使用することを好都合にする。
【0099】
実施例3:インビボでの免疫応答
3.1.材料および方法
マウス
雌のBalb/cByマウスおよびC57BL/6Jマウス(6〜8週齢)をJanvier laboratories(フランス、サン・ベルトヴァン)から購入した。動物を、パスツール研究所の特定病原不在(Specific Pathogen Free)動物施設に収容した。マウスを皮内(ID)または筋内(IM)での免疫化の前に、1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS、Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)中の2%キシラジン(Rompun、バイエル・サンテ、フランス、ロス)および8%のケタミン(Imalgen 1000、メリアル、フランス、リオン)の混合溶液で、個々の動物の体重および麻酔期間に応じて麻酔をかけた(腹腔内経路)。全ての動物を、良好な動物診療に厳密に従って取り扱い、パリのパスツール研究所の地元の動物実験倫理委員会のガイドラインに従った。
【0100】
H2拘束性ペプチド
マウスの研究(IFNγ ELIspot)で使用されるTERTペプチドを、マウスのクラスIのMHC、H2K
b、H2D
bまたはマウスのクラスIIのH2−IA
dに結合するためにオンラインで利用できる4つのアルゴリズム:Syfpeithi(http://www.syfpeithi.de/)、Bimas(http://www−bimas.cit.nih.gov/)、NetMHCpanおよびSMM(http://tools.immuneepitope.org/main/)を使用してインシリコでのエピトープ予測によって予測した。
【0101】
全ての合成ペプチドは、Proimmune(英国、オックスフォード)から凍結乾燥状態(90%を上回る純度)で購入した。凍結乾燥されたペプチドを、滅菌水中に2mg/mLで溶解させ、そして使用前に35μLのアリコートで−20℃で貯蔵した。ペプチド配列およびH2拘束の詳細を第1表に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
マウス免疫化およびインビボエレクトロポレーション
皮内(ID)での免疫化は、脇腹の下方部でインスリン用ニードル(U−100、29GX1/2’’−0.33×12mm、ベルギー、テルモ)を用いて剃毛後に行った。剃毛後に、免疫化処置の間およびその後に、紅斑は観察されなかった。筋内免疫化(IM)を、前脛骨筋中で、またインスリン用ニードルU−100を用いて実施した。それぞれの動物に、100μgのDNAに相当するpCDTまたはpUF2のいずれかのプライミング用量を、ワクチン経路とは無関係に投与した。全ての動物を、プライミング14日後に同じ量のプラスミドおよび同じ免疫化経路を使用して追加免疫した。皮内的ワクチン接種直後に、侵襲性ニードル電極(6×4×2、47−0050、BTX、米国)を、注射部位が2つのニードル列(2つのニードル列は0.4cm離れている)の間に位置するように皮膚中に挿入した。異なる電圧の2つのパルスをかけた(HV−LV):HV=1125V/cm(2パルス、50μs−0.2μsパルス間隔)およびLV=250V/cm(8パルス、100V−10ms−20msパルス間隔)。筋内的免疫化の直後に、筋肉注射箇所を超音波ゲル(Labo FH、blue contact gel、NM Medical、フランス)で覆い、ピンセット電極(0.5cm間隔、tweezertrode 7mm、BTXI45−0488、米国)によって取り囲み、そして皮膚エレクトロポレーションと同じパラメータを使用して電圧を印加した。Agilepulse(登録商標)in vivo systemというエレクトロポレーターを全ての実験のために使用した(BTX、米国)。それぞれの免疫化経路(筋内的、皮内的)について、コントロールマウスを、同じ手順で同じ容量の1×PBSを使用して処理した。
【0104】
Elispotアッセイ
簡潔には、PVDFマイクロプレート(IFN−γ Elispot kit、Diaclone、Abcyss、フランス、10×96試験、ref.862.031.010P)を、捕捉抗体(抗マウスIFN−γ)で一晩被覆し、PBS2%ミルクでブロッキングした。pDNA免疫化されたマウスからの脾臓をすりつぶし、細胞懸濁液を70mmナイロンメッシュ(Cell Strainer、BD Biosciences、フランス)を通して濾過した。Ficollで精製された脾臓細胞(Lymphocyte Separation Medium、Eurobio、フランス)を、Cellometer(登録商標)Auto T4 Plusカウンター(Ozyme、フランス)を使用して計数し、そしてプレートに3部で2×10
5または4×10
5細胞/ウェルで添加し、そして5μg/mlのcTERTまたはhyTERT関連ペプチドまたはコンカナバリンA(10μg/ml)で刺激するか、または血清不含の培養培地で模擬刺激を行った。19時間後に、スポットを、ビオチンにコンジュゲートされた検出抗体に曝露し、引き続きAP標識ストレプトアビジンおよびBCIP/NBTの基質溶液に曝露した。スポットを、Immunospot ELIspotカウンターおよびソフトウェア(CTL、ドイツ)を使用して計数した。
【0105】
インビボでの細胞傷害性アッセイ
簡潔には、標的細胞調製のために、ナイーブなC57/Bl6マウス由来の脾臓細胞を、高濃度(5μM)、中濃度(1μM)または低濃度(0.2μM)のCFSEを含有する1×PBS中で標識した(Vybrant CFDA−SE cell−tracer kit;Life technologies SAS、フランス、サン・トーバン)。5μMおよび1μMのCFSEで標識した脾臓細胞を、2種の異なるH2ペプチドで5μg/mlにおいて1時間30分にわたり室温でパルスした。ペプチド987および621を、CFSEで高濃度標識されたナイーブな脾臓細胞とCFSEで中濃度標識されたナイーブな脾臓細胞のそれぞれのパルスのために使用した。CFSEで低濃度標識された脾臓細胞はパルスさせずにおいた。pCDTまたはpUF2で事前に免役したそれぞれのマウスに、追加免疫注射の10日後に、それぞれの分画からの同数の細胞を含む10
7個のCFSE標識された細胞混合物を眼窩後方の静脈を通じて投与した。15〜18時間後に、脾臓由来の単細胞懸濁液を、フローサイトメトリーによってMACSQUANT(登録商標)サイトメーター(Miltenyii、ドイツ)で分析した。
【0106】
ペプチドでパルスされた細胞の消失は、pDNAで免疫化されたマウスとコントロール(1×PBS注射された)マウスとにおいて、パルスされた集団(高/中(high/medium)CFSEの蛍光強度)のパルスされていない集団(低(low)CFSEの蛍光強度)に対する比率を比較することによって測定した。試験動物当たりの特異的殺傷率は、以下の計算に従って確立した:
[1−[平均(CFSE
lowPBS/CFSE
high/mediumPBS)/(CFSE
lowpDNA/CFSE
high/mediumpDNA)]]×100
【0107】
統計分析およびデータ処理
Prism−5ソフトウェアを、データ処理、解析および図形表示のために使用した。データは、平均±標準偏差として表される。ELIspotアッセイの統計分析のために、本発明者らは、マンホイットニーのノンパラメトリック検定を使用し、そしてインビボでの細胞傷害性アッセイのために、ダンの多重比較試験を用いたクラスカル−ウォリス分析を使用した。有意差は、p値<0.05に定めた。
【0108】
3.2.結果
pCDTは、マウスにおける皮内的もしくは筋内的免疫化およびエレクトロポレーションの後に、特異的なCD4T細胞応答と共に強力な細胞傷害性のCD8T細胞応答を誘導する
抗腫瘍免疫応答における細胞傷害性CD8T細胞の重要性に鑑みて、本発明者らは、プラスミドpCDTがそのような免疫応答をインビボで促進できるかどうかを評価した。こうして、9〜10匹のC57−Bl/6マウスの異なるグループを、pCDTによって該プラスミドの皮内的または筋内的注射によって免役した直後にエレクトロポレーションを行った。2週間後に、マウスに同じプロトコールで追加免疫注射を投与した。追加免疫の10日後に、マウス脾臓を採取し、そして誘導された免疫応答を、表1に記載されるH2拘束性ペプチドを使用したIFN−γ ELISPOTアッセイを介してモニタリングした。
【0109】
マウスMHCクラスIに拘束性のhyTERTペプチドを、材料と方法の節に記載したようにインシリコで予測した。
図3Aに示されるように、hyTERT特異的IFN−γ分泌性CD8T細胞の度数におけるコントロールマウスと比較しての大きな増加は、皮内的におよび筋内的にワクチン接種された動物の脾臓において観察された。これは、3つのクラスI拘束性ペプチドのうち2つについて観察された(p621およびp987、p<0.05)。特異的CD8T細胞の度数において、ペプチドp921とp987の両方について筋内的および皮内的経路の間で有意差は認められなかった。
【0110】
本発明者らは、更に、hyTERT拘束性CD4T細胞応答を調査した。この目的のために、9〜10匹のBalb−Cマウスを、pCDTによって皮内的または筋内的注射によって免役した直後にエレクトロポレーションを行い、そしてCD4特異的T細胞応答を、脾臓において前記の通りhyTERT IA
d拘束性ペプチドを使用してモニタリングした(インシリコ予測)。Balb−Cマウスを選択したのは、このマウス系統は良好なCD4T細胞応答を発することが知られているからである。
図3Bに示されるように、IFN−γ ELISPOTアッセイを実施した場合に、hyTERT特異的IFN−γ分泌性CD4T細胞の度数における、1×PBSを注射したコントロールマウスと比較しての大きな増加は、皮内的におよび筋内的にワクチン接種されたBalb/Cマウスの脾臓において観察された。これは3つのクラスI拘束性ペプチドのうち2つについて観察された(p1106およびp1105、p1106については皮内的経路の場合にp<0.05であり、かつ筋内的経路の場合にp<0.001であり、そして1105については皮内的経路の場合に有意差はなく、かつ筋内的経路の場合にp<0.01である)。特異的CD4T細胞の度数において、ペプチドp1105とp1106の両方について筋内的および皮内的経路の間で有意差は認められなかった。
【0111】
このように、pCDTコンストラクトは、マウスにおけるhyTERT特異的CD8およびCD4T細胞の増殖を促進することができる。本発明者らは、次に、hyTERT特異的CD8T細胞が腫瘍細胞の破壊に必要であろうインビボでの機能的細胞傷害活性を示すことを望んだ。pCDT免疫化によって惹起されたCD8+T細胞応答のインビボでの細胞溶解性強度を測定するために、本発明者らは、インビボでの細胞傷害性試験を、カルボキシフルオレセイン−ジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識されたペプチドでパルスされた脾臓細胞を標的細胞として使用して実施した。前記のように皮内的または筋内的な経路を介してpCDTでのプライムおよび追加免疫ワクチン接種を受けたか、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で模擬免疫化された7週齢のC57/Bl6マウスに、10
7個の標的細胞を静注した。標的細胞は、CFSEの3種の異なる濃度で別々に標識され、かつ個々のペプチド(p621またはp987)でパルスされたか、または内部コントロールとしてパルスさせずにおいたナイーブな類似遺伝子系マウスからの脾臓細胞であった。15〜18時間後に、脾臓細胞が得られ、コントロール対免疫化されたマウスにおけるペプチドでパルスされた細胞の消失を、蛍光活性化セルソーティングによって定量化した。
【0112】
結果は、マウスがインシリコで予測された2つのペプチドp621およびp987に対してCTLを発生することを示している。ペプチド987は、最も強いインビボでの細胞溶解をもたらす。結果は、IFN−γ Elispotアッセイからの結果と一致した(
図3A)。p621について、細胞溶解の平均パーセントは、pCDTが皮内的経路を介して注射された場合に僅かに優れていたが(皮内での平均=7.7%対筋内での平均=0.2%)、2つの免疫化の経路の間に有意差は認められなかったということは言及するに値することである。
【0113】
pUF2は、マウスにおける皮内的もしくは筋内的免疫化およびエレクトロポレーションの後に、特異的なCD4T細胞応答と共に強力な細胞傷害性のCD8T細胞応答を誘導する
本発明者らは、更に、pUF2プラスミドがマウスにおいてcTERT特異的CD8T細胞応答を刺激しうるかどうかを調査した。この目的のために、5匹のC57−Bl/6マウスの異なるグループを、pUF2で皮内的または筋内的な注射によって免疫化した直後にエレクトロポレーションをした。2週間後に、マウスに同じプロトコールで追加免疫注射を投与した。ブーストの10日後に、マウス脾臓を採取し、そして誘導された免疫応答を、表1に記載されるH2拘束性ペプチドを使用したIFN−γ ELISPOTアッセイを介してモニタリングした。マウスMHCクラスIに拘束性のイヌTERTペプチドを、上記の材料と方法の節に記載したようにインシリコで予測した。
図5Aに示されるように、cTERT特異的IFN−γ分泌性CD8T細胞の度数におけるコントロールマウスと比較しての大きな増加は、皮内的におよび筋内的にワクチン接種された動物の脾臓において観察された。これは3つのクラスI拘束性ペプチドのうち2つについて観察された(p621およびp987、それぞれp621については皮内的経路の場合にp<0.05であり、かつ筋内的経路の場合に有意差はなく、p687については皮内的経路の場合にp<0.001であり、かつ筋内的経路の場合にp<0.01である)。特異的CD8T細胞の度数において、ペプチドp921とp987の両方について筋内的および皮内的経路の間で有意差は認められなかった。しかしながら、p987特異的CD8T細胞の平均度数は、マウスに皮内的経路を介して注射した場合に、筋内経路の場合と比較して僅かに高かった(皮内での平均=143.2対筋内での平均=54.2)。本発明者らは、更に、cTERTに拘束されたCD4T細胞応答を調査した。この目的のために、9〜10匹のBalb−Cマウスを、pUF2で皮内的または筋内的に免疫化した直後にエレクトロポレーションを行い、そしてCD4特異的T細胞応答を、脾臓において前記の通りcTERT IA
d拘束性ペプチドを使用してモニタリングした(インシリコ予測)。Balb−Cマウスを選択したのは、このマウス系統は良好なCD4T細胞応答を発することが知られているからである。
図3Bに示されるように、IFN−γ ELISPOTアッセイを実施した場合に、hyTERT特異的IFN−γ分泌性CD4T細胞の度数における、1×PBSを注射したコントロールマウスと比較しての大きな増加は、皮内的におよび筋内的にワクチン接種されたBalb−Cマウスの脾臓において観察された。これは、試験された2II拘束性ペプチドについて観察された(p1106およびp1105、皮内経路および筋内経路についてp<0.01)。特異的CD4T細胞の度数において、ペプチドp1105とp1106の両方について筋内的および皮内的経路の間で有意差は認められなかった。
【0114】
このように、pUF2コンストラクトは、マウスにおけるcTERT特異的CD8およびCD4T細胞の増殖を促進することができる。本発明者らは、次に、これらのcTERT特異的CD8T細胞が腫瘍細胞の破壊に必要であろうインビボでの機能的細胞傷害活性を示すことを望んだ。pUF2免疫化によって惹起されたCD8
+T細胞応答のインビボでの細胞溶解強度を測定するために、本発明者らは、インビボでの細胞傷害性試験を、カルボキシフルオレセイン−ジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識されたペプチドでパルスされた脾臓細胞を標的細胞として使用して実施した。前記のように皮内的または筋内的な経路を介してpUF2でのプライムおよび追加免疫ワクチン接種を受けたか、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で模擬免疫化された7週齢のC57/Bl6マウスに、10
7個の標的細胞を静注した。標的細胞は、CFSEの3種の異なる濃度で別々に標識され、かつ個々のペプチド(p621またはp987)でパルスされたか、または内部コントロールとしてパルスさせずにおいたナイーブな類似遺伝子系マウスからの脾臓細胞であった。15〜18時間後に、脾臓細胞が得られ、コントロール対免疫化されたマウスにおけるペプチドでパルスされた細胞の消失を、蛍光活性化セルソーティングによって定量化した。
【0115】
本発明者らは、マウスが、インシリコで予め特定された2つのペプチドp621およびp987に対してCTLを発生することを観察した。ペプチド621は、最も強いインビボでの細胞溶解をもたらす。これらの結果は、IFN−γ Elispotアッセイからの結果と一致した(
図5A)。興味深いことに、p621については、2つの免疫化経路の間に有意差が認められた。実際に、p621については、細胞溶解の平均パーセントは、pUF2を皮下的経路を介して注射した場合には優れていた(皮内での平均=64.5%対筋内での平均=11%)。p987については有意差は認められなかった(皮内での平均=35.7%対筋内での平均=21.3%)。これにより、pUF2による皮下的なワクチン接種は、筋内経路よりも強力かつ大きなCD8T細胞応答を発生させることが確認される。
【0116】
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