【解決手段】蒸発器2は、冷媒液が導入される缶胴31と、缶胴31内に配置された下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bと、少なくとも下側伝熱管33Aに被冷却媒体を導くための入口ポート36と、缶胴31内に配置され、缶胴31の内部を第1領域R1と第2領域R2に区画する第1堰41と、第1領域R1に連通する第1冷媒導入流路39と、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルを、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段41,42を備えており、第2領域R2は、入口ポート36と第1領域R1との間に位置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献1のように、蒸発器内圧や温度を指標にして冷媒液の液面レベルを最適に制御する方法が提案されている。しかしながら、一般に蒸発器はその長手方向において温度分布があり、冷媒液の沸騰の仕方が場所によって異なる。すなわち、被冷却流体の入口側では冷媒液と被冷却流体との温度差が大きく、冷媒液は激しく沸騰するが、被冷却流体の反入口側(ターン側または出口側)では、冷媒液と被冷却流体との温度差は小さく、冷媒液の沸騰は弱くなる。このように、被冷却流体の入口側と反入口側では、冷媒液の沸騰の激しさが異なり、蒸発器全体で最適な液面レベルにすることはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、蒸発器の内部全体において伝熱を向上させることができる蒸発器を提供する。また、本発明は、そのような蒸発器を備えたターボ冷凍機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、ターボ冷凍機に使用される蒸発器であって、冷媒液が導入される缶胴と、前記缶胴内に配置された下側伝熱管および上側伝熱管と、少なくとも前記下側伝熱管に被冷却媒体を導くための入口ポートと、前記缶胴内に配置され、前記缶胴の内部を第1領域と第2領域に区画する第1堰と、前記第1領域に連通する第1冷媒導入流路と、前記第2領域内の前記冷媒液の液面レベルを、前記第1領域内の前記冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段を備えており、前記第2領域は、前記入口ポートと前記第1領域との間に位置している、蒸発器が提供される。
本発明によれば、第2領域内では冷凍液は沸騰し、多くの冷媒液滴を上側伝熱管に接触させることができる。入口ポートから離れた第1領域内では、第2領域に比べて冷媒液の沸騰は弱いが、冷媒液の液面レベルは高いので、沸騰によって吹き上げられた多くの冷媒液を上側伝熱管に接触させることができる。結果として、第1領域および第2領域の両方において伝熱が向上できる。
【0008】
一態様では、前記蒸発器は、前記缶胴内に配置された第2堰をさらに備えており、前記缶胴の内部は、前記第1堰および前記第2堰によって、前記第1領域、前記第2領域、および第3領域に区画されており、前記液面調節手段は、前記第1堰および前記第2堰から少なくとも構成され、前記第2堰の高さは、前記第1堰の高さよりも低い。
一態様では、前記蒸発器は、前記缶胴内に配置された第2堰をさらに備えており、前記缶胴の内部は、前記第1堰および前記第2堰によって、前記第1領域、前記第2領域、および第3領域に区画されており、前記第1堰は、該第1堰の一方の面から反対側の面に延びる第1流路を有し、前記第2堰は、該第2堰の一方の面から反対側の面に延びる第2流路を有しており、前記液面調節手段は、前記第1堰および前記第2堰から少なくとも構成され、前記第2流路は、前記第1流路よりも低い位置にある。
一態様では、前記第3領域は、前記入口ポートと前記第2領域との間に位置している。
【0009】
一態様では、前記第1堰および前記第2堰は、前記下側伝熱管および前記上側伝熱管を支持するチューブサポートを構成する。
一態様では、前記蒸発器は、前記第2領域に連通する第2冷媒導入流路をさらに備えており、前記液面調節手段は、前記第1冷媒導入流路および前記第2冷媒導入流路から構成されており、前記第2冷媒導入流路の少なくとも一部の断面積は、前記第1冷媒導入流路の少なくとも一部の断面積よりも小さい。
一態様では、前記第1領域の上方に配置された第1冷媒液散布ノズルと、前記第2領域の上方に配置された第2冷媒液散布ノズルをさらに備えており、前記第2冷媒液散布ノズルの開口面積は、前記第1冷媒液散布ノズルの開口面積よりも大きい。
【0010】
一態様では、ターボ冷凍機に使用される蒸発器であって、冷媒液が導入される缶胴と、前記缶胴内に配置された下側伝熱管および上側伝熱管と、少なくとも前記下側伝熱管に被冷却媒体を導くための入口ポートと、前記缶胴内に配置され、前記缶胴の内部を第1領域と第2領域に区画する第1堰と、前記第1領域に連通する第1冷媒導入流路と、前記第2領域内の前記冷媒液の液面レベルを、前記第1領域内の前記冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段と、前記第1領域の上方に配置された第1冷媒液散布ノズルと、前記第2領域の上方に配置された第2冷媒散布ノズルを備えており、前記第1領域は、前記入口ポートと前記第2領域との間に位置しており、前記第2冷媒液散布ノズルの開口面積は、前記第1冷媒液散布ノズルの開口面積よりも大きい、蒸発器が提供される。
本発明によれば、第2領域での冷媒液の散布流量は、第1領域での冷媒液の散布流量よりも高いので、下側伝熱管内の被冷却流体の温度勾配を補うことができる。結果として、第1領域および第2領域において伝熱が向上できる。
【0011】
一態様では、前記蒸発器は、前記缶胴内に配置された第2堰をさらに備えており、前記缶胴の内部は、前記第1堰および前記第2堰によって、前記第1領域、前記第2領域、および第3領域に区画されており、前記液面調節手段は、前記第1堰および前記第2堰から少なくとも構成され、前記第2堰の高さは、前記第1堰の高さよりも低い。
一態様では、前記蒸発器は、前記缶胴内に配置された第2堰をさらに備えており、前記缶胴の内部は、前記第1堰および前記第2堰によって、前記第1領域、前記第2領域、および第3領域に区画されており、前記第1堰は、該第1堰の一方の面から反対側の面に延びる第1流路を有し、前記第2堰は、該第2堰の一方の面から反対側の面に延びる第2流路を有しており、前記液面調節手段は、前記第1堰および前記第2堰から少なくとも構成され、前記第2流路は、前記第1流路よりも低い位置にある。
一態様では、前記第2領域は、前記第1領域と前記第3領域との間に位置している。
【0012】
一態様では、前記第1堰および前記第2堰は、前記下側伝熱管および前記上側伝熱管を支持するチューブサポートを構成する。
一態様では、前記蒸発器は、前記第2領域に連通する第2冷媒導入流路をさらに備えており、前記液面調節手段は、前記第1冷媒導入流路および前記第2冷媒導入流路から構成されており、前記第2冷媒導入流路の少なくとも一部の断面積は、前記第1冷媒導入流路の少なくとも一部の断面積よりも小さい。
【0013】
一態様では、ターボ冷凍機に使用される蒸発器であって、冷媒液が導入される缶胴と、前記缶胴内に配置された下側伝熱管および上側伝熱管と、少なくとも前記下側伝熱管に被冷却媒体を導くための入口ポートと、前記缶胴内に配置され、前記缶胴の内部を第1領域、第2領域、および第3領域に区画する第1堰および第2堰と、前記第1領域に連通する第1冷媒導入流路と、前記第3領域の上方に配置された冷媒液散布ノズルを備えており、前記第1領域は、前記第2領域と前記第3領域との間に位置しており、前記第1領域と前記第2領域は、前記入口ポートと前記第3領域との間に位置している、蒸発器が提供される。
本発明によれば、第1堰、第2堰、および冷媒液散布ノズルの組み合わせによって、下側伝熱管内の被冷却流体の温度勾配を補うことができる。結果として、第1領域、第2領域、および第3領域において伝熱が向上できる。
【0014】
一態様では、前記第1堰および前記第2堰は、前記下側伝熱管および前記上側伝熱管を支持するチューブサポートを構成する。
【0015】
一態様では、冷媒蒸気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮された冷媒蒸気を凝縮させて冷媒液を生成する凝縮器と、前記冷媒液を蒸発させて前記冷媒蒸気を生成する上記蒸発器を備えている、ターボ冷凍機が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蒸発器の内部全体において伝熱を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒蒸気を圧縮する圧縮機1と、圧縮された冷媒蒸気を凝縮させて冷媒液を生成する凝縮器3と、冷媒液を蒸発させて冷媒蒸気を生成する蒸発器2を備えている。圧縮機1の吸込口は、冷媒配管4Aによって蒸発器2に連結されている。圧縮機1の吐出し口は、冷媒配管4Bによって凝縮器3に連結されている。凝縮器3から蒸発器2に延びる冷媒配管4Cには膨張弁21が取り付けられている。膨張弁21は、その開度が調整可能に構成されており、例えば開度可変な電動弁から構成されている。
【0019】
本実施形態では、圧縮機1は、単段遠心式圧縮機から構成されている。より具体的には、圧縮機1は、単段の羽根車11と、羽根車11を回転させる電動機13を備えている。圧縮機1の吸込口には、冷媒蒸気の羽根車11への吸込流量を調整するガイドベーン16が配置されている。ガイドベーン16は羽根車11の吸込側に位置している。ガイドベーン16は放射状に配置されており、各ガイドベーン16が自身の軸心を中心として互いに同期して所定の角度だけ回転することにより、ガイドベーン16の開度が変更される。蒸発器2から送られた冷媒蒸気は、ガイドベーン16を通過し、その後、回転する羽根車11によって昇圧される。昇圧された冷媒蒸気は、冷媒配管4Bを通って凝縮器3に送られる。
【0020】
蒸発器2は、被冷却流体(例えば冷水)から熱を奪って冷媒液が蒸発して冷凍効果を発揮する。圧縮機1は、蒸発器2で生成された冷媒蒸気を圧縮し、凝縮器3は、圧縮された冷媒蒸気を冷却流体(例えば冷却水)で冷却して凝縮させることで、冷媒液を生成する。冷媒液は、膨張弁21を通過することによって減圧される。減圧された冷媒液は、蒸発器2に送られる。このように、ターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムとして構成される。
【0021】
図2は、一実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。蒸発器2は、冷媒液が導入される缶胴31と、缶胴31内に配置された伝熱管33と、伝熱管33に被冷却媒体を導くための入口ポート36と、缶胴31内に配置され、缶胴31の内部を第1領域R1と第2領域R2に区画する第1堰41と、第1領域R1に連通する第1冷媒導入流路39を備えている。第2領域R2は、入口ポート36と第1領域R1との間に位置している。
【0022】
蒸発器2は、缶胴31内に配置された第2堰42をさらに備えている。缶胴31の内部は、第1堰41および第2堰42によって、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3に区画されている。第1堰41は、第1領域R1と第2領域R2との間に配置され、第2堰42は、第2領域R2と第3領域R3との間に配置されている。第3領域R3は、入口ポート36と第2領域R2との間に位置している。第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3は、入口ポート側から、第3領域R3、第2領域R2、および第1領域R1の順に並んでいる。
【0023】
伝熱管33は、入口ポート36に連結された下側伝熱管33Aと、被冷却媒体の出口ポート37に連結された上側伝熱管33Bを備えている。下側伝熱管33Aは、上側伝熱管33Bの下方に位置している。下側伝熱管33Aと、上側伝熱管33Bは、反入口ポート側で連結されている。冷水などの被冷却流体は、入口ポート36を通って下側伝熱管33Aに導入され、下側伝熱管33A内を流れる。さらに、被冷却流体は、下側伝熱管33Aから上側伝熱管33Bに移動し、上側伝熱管33B内を流れ、そして、出口ポート37を通って蒸発器2から流出する。
【0024】
本実施形態では、下側伝熱管33Aは1パス目の伝熱管であり、上側伝熱管33Bは2パス目の伝熱管であるが、本発明は本実施形態には限定されない。一実施形態では、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bの両方は、1パス目の伝熱管であってもよい。この場合は、入口ポート36は、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bの両方に連結され、出口ポート37は入口ポート36とは反対側に位置する。さらに、一実施形態では、伝熱管33は、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bに加え、3パス目以上の伝熱管をさらに備えてもよい。
【0025】
下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bは、第1堰41および第2堰42を貫通して延びており、かつ第1堰41および第2堰42によって支持されている。すなわち、第1堰41および第2堰42は、これら伝熱管33A,33Bを保持するチューブサポートを構成する。第1堰41および第2堰42は、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bを隙間なく保持しており、第1堰41および第2堰42は、冷媒液の流通を許容しないように構成されている。第1堰41および第2堰42は、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルを、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段として機能する。より具体的には、第2堰42の高さは、第1堰41の高さよりも低い。
【0026】
第1冷媒導入流路39は、凝縮器3に連結された冷媒配管4C(
図1参照)に接続されている。凝縮器3内で生成された冷媒液は、冷媒配管4Cを流れて第1冷媒導入流路39に導入され、第1冷媒導入流路39を通って第1領域R1内に流入する。冷媒液は、第1領域R1内を満たし、やがて第1堰41の上端から溢れ出る。第1堰41を溢れ出た冷媒液は、第2領域R2に流れ込み、第2領域R2を満たす。やがて、第2領域R2内の冷媒液は、第2堰42の上端から溢れ出て、第3領域R3内に流入する。第2堰42の高さは、第1堰41の高さよりも低いので、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低く、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低い。
【0027】
下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液に浸漬されている。すなわち、下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも低い位置にある。上側伝熱管33Bは、第2領域R2および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも高い位置にあり、かつ第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低い位置にある。一実施形態では、上側伝熱管33Bは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも高い位置にあってもよい。
【0028】
伝熱管33内を流れる被冷却流体の温度は、缶胴31内の冷媒液との熱交換により、徐々に低下する。すなわち、第3領域R3内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第2領域R2内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度よりも高い。したがって、第3領域R3内の冷媒液は、下側伝熱管33A内を流れる被冷却流体との熱交換により激しく沸騰する。沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触し、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。このようにして、冷媒液は、第3領域R3内において2段階で加熱されて冷媒蒸気となる。
【0029】
第2領域R2内の冷媒液は、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第2領域R2内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第3領域R3での熱交換の結果、ある程度低下しているので、第2領域R2内の冷媒液の沸騰は、第3領域R3での沸騰よりは激しくない。しかしながら、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも高いので、沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しやすい。上側伝熱管33Bに接触した冷媒液滴は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。このようにして、冷媒液は、第2領域R2内において2段階で加熱されて冷媒蒸気となる。
【0030】
第1領域R1内の冷媒液は、第2領域R2および第3領域R3と同じように、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第1領域R1内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第3領域R3および第2領域R2での熱交換の結果、さらに低下しているので、第1領域R1内の冷媒液の沸騰は、第2領域R2での沸騰よりは激しくない。しかしながら、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも高く、上側伝熱管33Bは第1領域R1内の冷媒液中に浸漬している。したがって、上側伝熱管33Bに接触した冷媒液は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。このようにして、冷媒液は、第1領域R1内において2段階で加熱されて冷媒蒸気となる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、入口ポート36に近い第3領域R3内で冷凍液は最も激しく沸騰し、多くの冷媒液滴を上側伝熱管33Bに接触させることができる。第2領域R2内では、第3領域R3に比べて冷媒液の沸騰は弱いが、冷媒液の液面レベルは高いので、沸騰によって吹き上げられた多くの冷媒液滴を上側伝熱管33Bに接触させることができる。さらに、入口ポート36から離れた第1領域R1内では、冷媒液の沸騰は弱いが、冷媒液の液面レベルは高いので、多くの冷媒液を上側伝熱管33Bに接触させることができる。したがって、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3において伝熱が向上できる。
【0032】
本実施形態では、缶胴31の内部は、第1堰41および第2堰42によって3つの領域、すなわち第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3に区画されているが、本発明は本実施形態に限定されない。一実施形態では、缶胴31の内部は、第1堰41によって第1領域R1および第2領域R2のみに区画されてもよいし、他の実施形態では、缶胴31の内部は、3つまたはそれよりも多い堰により、4つまたはそれよりも多い領域に区画されてもよい。
【0033】
図3は、他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図であり、
図4は
図3のA−A線断面図であり、
図5は
図3のB−B線断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0034】
第1堰41は、該第1堰41の一方の面から反対側の面に延びる第1流路41aを有し、第2堰42は、該第2堰42の一方の面から反対側の面に延びる第2流路42aを有している。第2流路42aは、第1流路41aよりも低い位置にある。第1堰41および第2堰42の高さは、缶胴31内に保持されている冷媒液の液面レベルよりも高い。第1堰41および第2堰42の高さは、同じであってもよい。
【0035】
第1冷媒導入流路39を通じて第1流路41a内に導入された冷媒液は、第1堰41の第1流路41aを通って第2領域R2に流入し、さらに第2堰42の第2流路42aを通って第1領域R1に流入する。第2流路42aの位置は、第1流路41aの位置よりも低いので、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低く、かつ第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低い。本実施形態では、液面調節手段は、第1流路41aを有する第1堰41、および第2流路42aを有する第2堰42から少なくとも構成されている。
【0036】
本実施形態では、第1流路41aは、
図4に示すように、第1堰41の両側に形成された切り欠きであり、第2流路42aは、
図5に示すように、第2堰42の両側に形成された切り欠きである。一実施形態では、第1流路41aは、第1堰41の上縁に形成された切り欠きであってもよい。同様に、第2流路42aは、第2堰42の上縁に形成された切り欠きであってもよい。さらに、一実施形態では、第1流路41aは、第1堰41を貫通する通孔であってもよい。同様に、第2流路42aは、第2堰42を貫通する通孔であってもよい。
【0037】
図6は、さらに他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、第1堰41および第2堰42に加えて、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bを保持するチューブサポート48,49が設けられている。チューブサポート48,49は、通孔48a,49aを有しており、冷媒液を堰き止める機能はない。第1堰41および第2堰42の構成は、
図2に示す実施形態と同じである。第1堰41および第2堰42の構成は、
図3乃至
図5に示す実施形態と同じであってもよい。
【0038】
図7は、さらに他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。蒸発器2は、第2領域R2に連通する第2冷媒導入流路45を備えている。第2冷媒導入流路45は第1冷媒導入流路39に接続されている。第2冷媒導入流路45の少なくとも一部の断面積は、第1冷媒導入流路39の少なくとも一部の断面積よりも小さい。第1堰41および第2堰42は、冷媒液の液面レベルよりも高く、冷媒液は第1堰41および第2堰42を越流しない。
【0039】
第2冷媒導入流路45を通って第2領域R2に流入する冷媒液の流量は、第1冷媒導入流路39を通って第1領域R1に流入する冷媒液の流量よりも低い。したがって、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低い。第1冷媒導入流路39および第2冷媒導入流路45は、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルを、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段を構成する。
【0040】
蒸発器2は、第3領域R3に連通する第3冷媒導入流路46をさらに備えている。第3冷媒導入流路46は第2冷媒導入流路45に接続されている。第3冷媒導入流路46の少なくとも一部の断面積は、第2冷媒導入流路45の少なくとも一部の断面積よりも小さい。第3冷媒導入流路46を通って第3領域R3に流入する冷媒液の流量は、第2冷媒導入流路45を通って第2領域R2に流入する冷媒液の流量よりも低い。したがって、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低い。第2冷媒導入流路45および第3冷媒導入流路46は、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルを、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段を構成する。
【0041】
図8は、さらに他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。蒸発器2は、第1領域R1の上方に配置された第1冷媒液散布ノズル51と、第2領域R2の上方に配置された第2冷媒液散布ノズル52をさらに備えている。第1冷媒液散布ノズル51および第2冷媒液散布ノズル52は、冷媒配管4C(
図1参照)に接続された冷媒液移送ライン55に連結されている。
【0042】
冷媒液は、冷媒液移送ライン55を通って、第1冷媒液散布ノズル51および第2冷媒液散布ノズル52に供給される。第2冷媒液散布ノズル52の開口面積は、第1冷媒液散布ノズル51の開口面積よりも大きい。したがって、第2冷媒液散布ノズル52から第2領域R2に散布される冷媒液の流量は、第1冷媒液散布ノズル51から第1領域R1に散布される冷媒液の流量よりも高い。
【0043】
図2に示す実施形態で説明したように、第2領域R2で蒸発によって吹き上げられる冷媒液滴の量は、第1領域R1で蒸発によって吹き上げられる冷媒液滴の量よりも多いが、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低い。このため、第2領域R2で吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しにくい。その一方で、第2冷媒液散布ノズル52は、第1冷媒液散布ノズル51から第1領域R1に散布される冷媒液の流量よりも高い流量で、冷媒液を第2領域R2に散布するので、第2領域R2での伝熱が向上できる。さらに、
図2と
図8とを比較すると分かるように、第1領域R1および第2領域R2に貯留される冷媒液の量を少なくすることができる(すなわち、液面レベルを低くすることができる)。
【0044】
蒸発器2は、第3領域R3の上方に配置された第3冷媒液散布ノズル53をさらに備えている。第3冷媒液散布ノズル53は、冷媒液移送ライン55に連結されている。冷媒液は、冷媒液移送ライン55を通って、第3冷媒液散布ノズル53に供給される。第3冷媒液散布ノズル53の開口面積は、第2冷媒液散布ノズル52の開口面積よりも大きい。したがって、第3冷媒液散布ノズル53から第3領域R3に散布される冷媒液の流量は、第2冷媒液散布ノズル52から第2領域R2に散布される冷媒液の流量よりも高い。
【0045】
第3領域R3で蒸発によって吹き上げられる冷媒液滴の量は、第2領域R2で蒸発によって吹き上げられる冷媒液滴の量よりも多いが、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも低い。このため、第3領域R3で吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しにくい。その一方で、第3冷媒液散布ノズル53は、第2冷媒液散布ノズル52から第2領域R2に散布される冷媒液の流量よりも高い流量で、冷媒液を第3領域R3に散布するので、第3領域R3での伝熱が向上できる。さらに、
図2と
図8とを比較すると分かるように、第2領域R2および第3領域R3に貯留される冷媒液の量を少なくすることができる(すなわち、液面レベルを低くすることができる)。
【0046】
本実施形態によれば、堰41,42と、冷媒散布ノズル51,52,53との組み合わせにより、蒸発器2全体での伝熱を均一化でき、蒸発器2全体での伝熱を向上させることができる。
図8に示す本実施形態は、
図3乃至
図7に示す実施形態に適用することができる。
【0047】
図9は、さらに他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。蒸発器2は、缶胴31内に配置され、缶胴31の内部を第1領域R1と第2領域R2に区画する第1堰41と、第1領域R1に連通する第1冷媒導入流路39を備えている。第1領域R1は、入口ポート36と第2領域R2との間に位置している。すなわち、第1領域R1は、入口ポート36に隣接している。
【0048】
蒸発器2は、缶胴31内に配置された第2堰42をさらに備えており、缶胴31の内部は、第1堰41および第2堰42によって、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3に区画されている。第3領域R3は、第2領域R2に隣接しており、第2領域R2は、第1領域R1と第3領域R3との間に位置している。第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3は、入口ポート側から、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3の順に並んでいる。
【0049】
下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bは、第1堰41および第2堰42を貫通して延びており、かつ第1堰41および第2堰42によって支持されている。すなわち、第1堰41および第2堰42は、これら伝熱管33A,33Bを保持するチューブサポートを構成する。第1堰41および第2堰42は、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bを隙間なく保持しており、第1堰41および第2堰42は、冷媒液の流通を許容しないように構成されている。第1堰41および第2堰42は、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルを、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段として機能する。より具体的には、第2堰42の高さは、第1堰41の高さよりも低い。
【0050】
第1冷媒導入流路39は、凝縮器3に連結された冷媒配管4C(
図1参照)に接続されている。凝縮器3内で生成された冷媒液は、冷媒配管4Cを流れて第1冷媒導入流路39に導入され、第1冷媒導入流路39を通って第1領域R1内に流入する。冷媒液は、第1領域R1内を満たし、やがて第1堰41の上端から溢れ出る。第1堰41を溢れ出た冷媒液は、第2領域R2に流れ込み、第2領域R2を満たす。やがて、第2領域R2内の冷媒液は、第2堰42の上端から溢れ出て、第3領域R3内に流入する。第2堰42の高さは、第1堰41の高さよりも低いので、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低く、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低い。
【0051】
下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液に浸漬されている。すなわち、下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも低い位置にある。上側伝熱管33Bは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも高い位置にある。
【0052】
蒸発器2は、第1領域R1の上方に配置された第1冷媒液散布ノズル51と、第2領域R2の上方に配置された第2冷媒液散布ノズル52をさらに備えている。第1冷媒液散布ノズル51および第2冷媒液散布ノズル52は、冷媒配管4C(
図1参照)に接続された冷媒液移送ライン55に連結されている。
【0053】
冷媒液は、冷媒液移送ライン55を通って、第1冷媒液散布ノズル51および第2冷媒液散布ノズル52に供給される。第2冷媒液散布ノズル52の開口面積は、第1冷媒液散布ノズル51の開口面積よりも大きい。したがって、第2冷媒液散布ノズル52から第2領域R2に散布される冷媒液の流量は、第1冷媒液散布ノズル51から第1領域R1に散布される冷媒液の流量よりも高い。
【0054】
蒸発器2は、第3領域R3の上方に配置された第3冷媒液散布ノズル53をさらに備えている。第3冷媒液散布ノズル53は、冷媒液移送ライン55に連結されている。冷媒液は、冷媒液移送ライン55を通って、第3冷媒液散布ノズル53に供給される。第3冷媒液散布ノズル53の開口面積は、第2媒液散布ノズルの開口面積よりも大きい。したがって、第3冷媒液散布ノズル53から第3領域R3に散布される冷媒液の流量は、第2冷媒液散布ノズル52から第2領域R2に散布される冷媒液の流量よりも高い。
【0055】
伝熱管33内を流れる被冷却流体の温度は、缶胴31内の冷媒液との熱交換により、徐々に低下する。すなわち、第1領域R1内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第2領域R2内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度よりも高い。したがって、第1領域R1内の冷媒液は、下側伝熱管33A内を流れる被冷却流体との熱交換により激しく沸騰する。沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触し、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。同時に、第1冷媒液散布ノズル51は、第1領域R1を延びる上側伝熱管33Bに冷媒液を第1の流量で散布する。散布された冷媒液は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0056】
第2領域R2内の冷媒液は、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第2領域R2内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第1領域R1での熱交換の結果、ある程度低下しているので、第2領域R2内の冷媒液の沸騰は、第1領域R1での沸騰よりは激しくない。また、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低いので、沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しにくい。しかしながら、第2冷媒液散布ノズル52は、第2領域R2を延びる上側伝熱管33Bに、冷媒液を上記第1の流量よりも高い第2の流量で散布し、冷媒液を上側伝熱管33Bに接触させることができる。散布された冷媒液は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0057】
第3領域R3内の冷媒液は、第1領域R1および第2領域R2と同じように、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第3領域R3内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第1領域R1および第2領域R2での熱交換の結果、さらに低下しているので、第3領域R3内の冷媒液の沸騰は、第2領域R2での沸騰よりは激しくない。さらに、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも低いので、沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しにくい。しかしながら、第3冷媒液散布ノズル53は、第3領域R3を延びる上側伝熱管33Bに、冷媒液を上記第2の流量よりも高い第3の流量で散布し、冷媒液を上側伝熱管33Bに接触させることができる。散布された冷媒液は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、缶胴31内の領域によって冷媒液の散布流量が変わるので、下側伝熱管33A内の被冷却流体の温度勾配を補うことができる。結果として、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3において伝熱が向上できる。さらに、
図2と
図9とを比較すると分かるように、缶胴31内に貯留される冷媒液の量を少なくすることができる(すなわち、液面レベルを低くすることができる)。
【0059】
本実施形態では、缶胴31の内部は、第1堰41および第2堰42によって3つの領域、すなわち第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3に区画されているが、本発明は本実施形態に限定されない。一実施形態では、缶胴31の内部は、第1堰41によって第1領域R1および第2領域R2のみに区画されてもよいし、他の実施形態では、缶胴31の内部は、3つまたはそれよりも多い堰により、4つまたはそれよりも多い領域に区画されてもよい。
【0060】
図3乃至
図7に示す本実施形態は、
図9に示す実施形態に適用することができる。
【0061】
図10は、さらに他の実施形態に係る蒸発器2の内部を模式的に示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図2に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。蒸発器2は、缶胴31内に配置され、缶胴31の内部を第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3に区画する第1堰41および第2堰42と、第1領域R1に連通する第1冷媒導入流路39を備えている。第1領域R1は、第2領域R2と第3領域R3との間に位置している。第2領域R2は、入口ポート36に隣接している。第1領域R1と第2領域R2は、入口ポート36と第3領域R3との間に位置している。第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3は、入口ポート側から、第2領域R2、第1領域R1、および第3領域R3の順に並んでいる。
【0062】
下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bは、第1堰41および第2堰42を貫通して延びており、かつ第1堰41および第2堰42によって支持されている。すなわち、第1堰41および第2堰42は、これら伝熱管33A,33Bを保持するチューブサポートを構成する。第1堰41および第2堰42は、下側伝熱管33Aおよび上側伝熱管33Bを隙間なく保持しており、第1堰41および第2堰42は、冷媒液の流通を許容しないように構成されている。第1堰41および第2堰42は、第2領域R2および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルを、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低くする液面調節手段として機能する。第1堰41および第2堰42は、同じ高さを有している。
【0063】
第1冷媒導入流路39は、凝縮器3に連結された冷媒配管4C(
図1参照)に接続されている。凝縮器3内で生成された冷媒液は、冷媒配管4Cを流れて第1冷媒導入流路39に導入され、第1冷媒導入流路39を通って第1領域R1内に流入する。冷媒液は、第1領域R1内を満たし、やがて第1堰41および第2堰42の上端から溢れ出る。第1堰41を溢れ出た冷媒液は、第2領域R2に流れ込み、第2堰42を溢れ出た冷媒液は、第3領域R3に流れ込む。
【0064】
下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液に浸漬されている。すなわち、下側伝熱管33Aは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも低い位置にある。上側伝熱管33Bは、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3内の冷媒液の液面レベルよりも高い位置にある。
【0065】
蒸発器2は、第3領域R3の上方に配置された冷媒液散布ノズル58をさらに備えている。冷媒液散布ノズル58は、冷媒配管4C(
図1参照)に接続された冷媒液移送ライン55に連結されている。冷媒液は、冷媒液移送ライン55を通って、冷媒液散布ノズル58に供給される。第1領域R1および第2領域R2には、冷媒液散布ノズルは設けられていない。
【0066】
伝熱管33内を流れる被冷却流体の温度は、缶胴31内の冷媒液との熱交換により、徐々に低下する。すなわち、第2領域R2内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第1領域R1内を延びる下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度よりも高い。したがって、第2領域R2内の冷媒液は、下側伝熱管33A内を流れる被冷却流体との熱交換により激しく沸騰する。沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触し、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0067】
第1領域R1内の冷媒液は、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第1領域R1内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第2領域R2での熱交換の結果、ある程度低下しているので、第1領域R1内の冷媒液の沸騰は、第2領域R2での沸騰よりは激しくない。しかしながら、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルは、第2領域R2内の冷媒液の液面レベルよりも高いので、沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しやすい。上側伝熱管33Bに接触した冷媒液滴は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0068】
第3領域R3内の冷媒液は、第1領域R1および第2領域R2と同じように、下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体との熱交換により沸騰する。第3領域R3内の下側伝熱管33Aを流れる被冷却流体の温度は、第1領域R1および第2領域R2での熱交換の結果、さらに低下しているので、第3領域R3内の冷媒液の沸騰は、第2領域R2での沸騰よりは激しくない。さらに、第3領域R3内の冷媒液の液面レベルは、第1領域R1内の冷媒液の液面レベルよりも低いので、沸騰によって吹き上げられた冷媒液滴は、上側伝熱管33Bに接触しにくい。しかしながら、冷媒液散布ノズル58は、第3領域R3を延びる上側伝熱管33Bに冷媒液を散布し、冷媒液を上側伝熱管33Bに接触させることができる。散布された冷媒液は、上側伝熱管33B内を流れる被冷却流体によって加熱され、蒸発する。
【0069】
このように、本実施形態によれば、第1堰41、第2堰42、および冷媒液散布ノズル58の組み合わせによって、下側伝熱管33A内の被冷却流体の温度勾配を補うことができる。結果として、第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3において伝熱が向上できる。さらに、
図2と
図10とを比較すると分かるように、缶胴31内に貯留される冷媒液の量を少なくすることができる(すなわち、液面レベルを低くすることができる)。
【0070】
図10に示す本実施形態は、
図3乃至
図7に示す実施形態に適用することができる。
【0071】
図11は、ターボ冷凍機の他の実施形態を示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。ターボ冷凍機は、凝縮器3と蒸発器2との間に配置されたエコノマイザ60を備えている。本実施形態に使用される蒸発器2は、
図2乃至
図10に示す実施形態のいずれの蒸発器2である。冷媒配管4Cは、凝縮器3からエコノマイザ60まで延びる上流側配管4Caと、エコノマイザ60から蒸発器2まで延びる下流側配管4Cbを有している。
【0072】
エコノマイザ60は、冷媒配管4Eによって圧縮機1に連結されている。エコノマイザ60は、凝縮器3と蒸発器2との間に配置された中間冷却器である。凝縮器3からエコノマイザ60に延びる上流側配管4Caには膨張弁21が取り付けられ、エコノマイザ60から蒸発器2に延びる下流側配管4Cbには膨張弁22が取り付けられている。膨張弁21,22は、その開度が調整可能に構成されており、例えば開度可変な電動弁から構成されている。
【0073】
本実施形態では、圧縮機1は、多段遠心式圧縮機1から構成されている。より具体的には、圧縮機1は二段遠心式圧縮機からなり、一段目羽根車11と、二段目羽根車12と、これらの羽根車11,12を回転させる電動機13とを備えている。ガイドベーン16は一段目羽根車11の吸込側に位置している。蒸発器2から送られた冷媒蒸気は、ガイドベーン16を通過し、その後、回転する羽根車11,12によって順次昇圧される。昇圧された冷媒蒸気は、冷媒配管4Bを通って凝縮器3に送られる。
【0074】
蒸発器2は、被冷却流体(例えば冷水)から熱を奪って冷媒液が蒸発して冷凍効果を発揮する。圧縮機1は、蒸発器2で生成された冷媒蒸気を圧縮し、凝縮器3は、圧縮された冷媒蒸気を冷却流体(例えば冷却水)で冷却して凝縮させることで、冷媒液を生成する。冷媒液は、膨張弁21を通過することによって減圧される。減圧された冷媒液中に存在する冷媒蒸気はエコノマイザ60によって分離され、圧縮機1の一段目羽根車11と二段目羽根車12との間に設けた中間吸込口17に送られる。エコノマイザ60を通過した冷媒液は、膨張弁22を通過することによって減圧され、さらに蒸発器2に送られる。
【0075】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。