【解決手段】人工関節機構は、4つの蝶番関節によって折り畳み可能に連結される5枚のプレートを有する2軸機構と、前記2軸機構に接続される回転手段を有する回内外機構と、前記2軸機構を初期位置に復帰させる復帰手段と、を有し、前記4つの蝶番関節のうちの2つは第1の軸と平行に配置され、別の2つは前記第1の軸と直交する第2の軸と平行に配置される。
前記2軸機構は、第1プレートと第2プレートを連結する第1の蝶番関節と、前記第2プレートと第3プレートを連結する第2の蝶番関節と、前記第3プレートと第4プレートを連結する第3の蝶番関節と、前記第4プレートと第5プレートを連結する第4の蝶番関節を有し、
前記第1の蝶番関節、前記第2の蝶番関節、前記第3の蝶番関節、および第4の蝶番関節は互いにプレート面の異なる辺に配置されることを特徴とする請求項1に記載の人工関節機構。
前記第1の蝶番関節、前記第2の蝶番関節、前記第3の蝶番関節、および前記第4の蝶番関節の少なくともひとつは、連続する2枚のプレートの折り畳み線であることを特徴とする請求項2に記載の人工関節機構。
前記回内外機構の前記回転手段は、前記第1の軸および前記第2の軸に直交する第3の軸のまわりに回転することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工関節機構。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施形態の人工関節機構10の斜視図である。人工関節機構10は、屈伸、橈尺屈、および回内外の3自由度をもつ、このうち、屈伸と橈尺屈の2自由度を2軸機構20で実現し、回内外の1自由度は、回内外機構110で実現する。
【0013】
屈伸、および橈尺屈のための2軸機構20は、動力の供給を必要としない受動機構である。ユーザまたはロボットハンドが物をつかむ、物を動かすなどの動作を行うときに、上腕、肘関節、前腕等から2軸機構20にかかる負荷や重力、あるいはテーブル、作業台などの固定面から受ける反力を利用して、2軸機構20は動作する。
【0014】
一方、回内外機構110は、ヘリカルギア111等の薄型の回転機構を用いており、動力源からの動力の供給により駆動される。
【0015】
x軸、y軸、およびz軸の3軸の座標系を考える。たとえば、屈伸はyz面でのx軸まわりの運動、橈尺屈はxz面でのy軸まわりの運動、回内外はz軸まわりの回動とする。屈伸のうち、手首を掌側に曲げる動作は「掌屈」、手の甲側に反らせる動作は「背屈」と呼ばれる。橈尺屈のうち、手首を親指側に曲げる動作は「橈屈」、小指側に曲げる動作は「尺屈」と呼ばれる。回内外のうち、掌を上に向けた状態から下に向ける動作は回内運動、反対向きの動作は回外運動と呼ばれる。
【0016】
屈伸と橈尺屈をつかさどる2軸機構20は、5枚のプレート11〜15と、4個の蝶番関節21〜24を有する。蝶番関節は、一軸方向にのみ動くヒンジ状の模擬関節である。5枚のプレート11〜15は、蝶番関節21〜24によって折り畳み可能に連結されている。
【0017】
プレート11〜15は、機械的強度と剛性に優れ、経年劣化の少ない材料で形成されるのが望ましい。そのような材料の例として、チタン、タングステン、ステンレス等が挙げられる。これらの金属は、耐久性があるだけでなく、後述するモータ35等の動力供給源のヒートシンクとして機能することができる。
【0018】
図1の例では、プレート11〜15は正方形の主面を有するが、プレート主面の形状は正方形に限定されない。プレート11〜15の主面のサイズは、人工関節機構10の適用箇所、ユーザの体型、年齢等に応じて適宜設計可能であり、たとえば1.5cm×1.5cm〜2.5cm×2.5cm程度である。
【0019】
プレート11はベースプレートであり、接着剤、固定具などによって、図示しない支持体、もしくは回内外機構110に固定されている。プレート12は、蝶番関節21によってプレート11に対して回動可能に連結されている。
【0020】
プレート12とプレート13は、蝶番関節22によって、相対的に回動可能に連結されている。蝶番関節22は、プレート12の辺のうち、蝶番関節21が設けられている辺以外の辺に設けられ、
図1の例では蝶番関節21と平行に配置されている。
【0021】
プレート13とプレート14は、蝶番関節23によって、相対的に回動可能に連結されている。蝶番関節23は、蝶番関節21および22と直交するように配置されている。
【0022】
プレート14とプレート15は、蝶番関節24によって、相対的に回動可能に連結されている。蝶番関節24は、蝶番関節21および22と直交するように配置され、蝶番関節23と平行な位置関係となる。
【0023】
一例として、蝶番関節21と22は、xz面での橈尺屈に用いられる。蝶番関節21と22は、橈尺屈の方向に応じていずれかが回転して、その蝶番関節に接続される2枚のプレートを開く。蝶番関節21と22によって、180度の橈尺屈が可能になる。
【0024】
蝶番関節23と24は、yz面での屈伸に用いられる。蝶番関節23と24は、屈伸の方向によっていずれかが回転して、その蝶番関節に接続される2枚のプレートを開く。蝶番関節23と24によって、橈尺屈と直交する面内で180度の屈伸が可能になる。
【0025】
この例では、プレート12、13と蝶番関節21、22が橈尺屈に用いられ、プレート14,15と蝶番関節23、24が屈伸に用いられているが、蝶番関節21〜24の配置は
図1の例に限定されず、2軸方向の動きが実現される限り、どのような配置構成をとってもよい。
【0026】
たとえば、蝶番関節22を、蝶番関節21と平行に設ける替わりに、蝶番関節21と隣接する辺に設けてもよい。この場合、蝶番関節23と24のいずれか一方が蝶番関節21と平行になり、他方が蝶番関節21と直交するように配置される。4個の蝶番関節21〜24のうちの2つを第1の軸と平行に配置して屈伸または橈尺屈に用い、別の2つを第1の軸と直交する第2の軸と平行に配置して橈尺屈または屈伸に用いることができれば、どのような配置であってもよい。
【0027】
2軸機構20のプレート12〜15は、初期位置では完全に折り畳まれ、プレート12〜15の厚みを除いて、屈伸運動と橈尺屈運動のための原理的な厚さはほぼゼロになる。従来のジョイント構成が、屈伸運動と橈尺屈運動を実現するために、手の長手方向に、手首の径と同じか、それ以上の長さを必要としていたことと比較して、大幅にサイズと厚みを低減することができる。この超薄型の構成により、小児用の義手であっても、手首の内部に人工関節機構10を配置して、より正確かつ効率的な把持動作を支援することができる。ロボットハンド、あるいはロボットアームに適用される場合も、手首部品を大型化させずに、より正確で安定した把持動作を実現することができる。ロボットハンド、またはロボットアームから2軸機構20にかかる負荷や重力、固定面からの反力等を利用して、2軸機構20を受動的に操作することができる。
【0028】
図1の例では、蝶番関節21〜24は回転軸となる個別の部品として描かれているが、必ずしも回転軸部品である必要はなく、連続する2つのプレート間の角度を変化させることができるどのような構成を採用してもよい。たとえば、蝶番関節21〜24は、プレートの折り曲げだけによっても実現可能である。この場合、2軸機構20の原理的な厚みはより一層ゼロに近づく。
【0029】
プレート11〜15の姿勢変化を初期位置に復帰させる復帰手段として、弾性エラストマー31が用いられている。屈伸または橈尺屈によってプレートが開いた後、開いたプレートを受動的に初期位置に戻すことが望ましい。
図1の例では、復帰手段として、2軸機構20の外周を覆う薄膜の弾性エラストマー31が用いられているが、この例に限定されない。たとえば、プレート11〜15の中心を貫通するロッド状の弾性エラストマーやバネ、ゴム等の弾性体を用いてもよい。
【0030】
プレート11〜15の形状は必ずしも矩形に限定されず、八角形、十六角形等の多角形のプレートを用いてもよい。その場合、互いに平行関係にある一対の辺に、屈伸または橈尺屈のための蝶番関節を設け、この蝶番関節のペアと直交するように、別の平行な一対の辺に橈尺屈または屈伸のための蝶番関節を設けてもよい。また、蝶番関節が設けられる辺を直線で構成して、それ以外のプレート輪郭を円または楕円の一部を構成する曲線で構成してもよい。
【0031】
ヘリカルギア111は、モータ35等の駆動手段によって駆動され、z軸まわりの回内外運動を実現する。モータ35の駆動力をヘリカルギア111に伝達するために、伝達ギア112が用いられている。ヘリカルギア111と伝達ギア112で、回内外機構110
が形成される。
【0032】
伝達ギア112は、ピニオンギア、ウォームギア等であり、伝達ギア112の回転軸はヘリカルギア111の回転軸とずらして配置される。回内外運動の駆動力を、ヘリカルギアの回転軸からずらして供給することで、伝達ギア112を超小型のモータ35とともに人工関節機構10のための狭いスペース内に配置することができる。
【0033】
回内外機構20の厚さは、ヘリカルギア111の厚さと、伝達ギア112の直径で規定される。回内外機構20の厚さを10ミリ程度、またはそれ以下の厚さに設計しても、大トルクの伝達が可能になる。
【0034】
図2は、人工関節機構10の初期状態の側面図である。2軸機構20の可動のプレート12〜15は折りたたまれて、固定のプレート11に重ねられている。隣接するどの2枚のプレート間に形成される角度も0度であり、理論的な厚さは、ほぼゼロである。
【0035】
プレート11とプレート12、およびプレート12とプレート13は、それぞれy軸と平行な蝶番関節21、22で接続され、プレート13とプレート14、およびプレート14とプレート15は、それぞれx軸と平行な蝶番関節21、22で接続されている。プレート11〜15と蝶番関節21〜24の配置がこの構成例に限定されないことは、上述したとおりである。
【0036】
2軸機構20の全体が、復帰手段としての弾性エラストマー31で覆われている。義手パーツとの接続のためにプレート15の一部を屈曲させる場合は、屈曲部分を弾性エラストマー31の外部に露出しておいてもよい(
図1参照)。弾性エラストマー31を設けることで、プレート12〜15を受動的に元の姿勢に復帰させることができる。
【0037】
回内外機構110は、留め具33によって、2軸機構20の最下段に接続されている。回内外の運動は、上段の2軸機構20に伝達され、2軸機構20を介して、義手の掌部を上に向ける、下に向ける等の回内外の動作が可能になる。
【0038】
図3は、回内外機構110の平面図である。ヘリカルギア111の歯と噛み合うように伝達ギア112が配置されている。伝達ギア112の回転軸は、ヘリカルギア111の回転軸と交差しないように配置されている。伝達ギア112の回転軸をヘリカルギア111の回転軸からはずして配置することで、回内外機構110を最小のスペースに収めることができる。
【0039】
ヘリカルギア111は、強度、速度等の観点で有利であるが、ヘリカルギア111に替えて平歯車を用いてもよい。また、ギアの歯が内側に向いた環状の平歯車を回転手段として用い、環の内側で平歯車とかみ合う内歯車を伝達ギア112として用いてもよい。
【0040】
図4は、実際に作製した人工関節機構10の屈伸運動を説明する図である。
図4では、5枚のプレート11〜15の姿勢をわかりやすくするために、弾性エラストマー31は省略されている。プレート15は、主面から連続して立ち上がる屈曲部またはタブ151を有している。タブ151は、たとえば義肢パーツとの接続等のために用いられるが、必ずしもタブ151を設ける必要はない。
【0041】
左側の初期状態で、プレート11〜15は平坦に折りたたまれている。蝶番関節23と24は、屈伸用の蝶番関節#3、#4として用いられる。ヘリカルギア111は、回内外運動に用いられる。
【0042】
矢印の右側の屈伸(A)では、蝶番関節23が回転して、プレート13とプレート14の間が開き、人工関節機構10は矢印Aの方向に動く。屈伸(B)では、蝶番関節24が回転して、プレート14とプレート15の間が開き、人工関節機構10は矢印Bの方向に動く。
【0043】
図5は、人工関節機構10Aに義手パーツ50を組み合わせたときの屈伸運動を示す模式図である。
図5の(A)は、手首を手の甲側に反らせる背屈、
図5の(B)は手首をまっすぐにした正立、
図5の(C)は手首を掌側に曲げる掌屈の状態を示す。
【0044】
図5の構成例では、復帰手段として、プレート11〜15を貫通するロッド状の弾性エラストマー32が用いられている。
【0045】
図5の(A)で、たとえば、蝶番関節23が回転して、プレート13とプレート14の間が開き、手首を反らせることができる。弾性エラストマー32は、−y方向に撓む。
図5の(B)で、弾性エラストマー32は元の状態に復帰し、プレート11〜15のすべてが閉じて初期位置に戻る。
図5の(C)で、蝶番関節24が回転してプレート14とプレート15が開き、手首を手のひら側に曲げることができる。弾性エラストマー32は+y方向に撓む。掌屈動作が終わると、弾性エラストマー32は元の状態に復帰し、
図5の(B)の初期状態に戻る。
【0046】
人工関節機構10Aの屈伸運動は、たとえばテーブルの上のボール、果物等をつかみにいくとき、あるいは、つかんだ物を棚等の上に置くときなどに行われる。
【0047】
図6は、作製した人工関節機構10の橈尺屈を説明する図である。蝶番関節21と22は、橈尺屈用の蝶番関節#1、#2として用いられる。左側の初期状態から右側の橈尺屈動作に移行する。右側の橈尺屈(A)では、蝶番関節22が回転してプレート12とプレート13の間が開き、人工関節機構10は矢印Cの方向に動く。橈尺屈(B)では、蝶番関節21が回転してプレート11とプレート12の間が開き、人工関節機構10は矢印Dの方向に動く。
【0048】
図7は、人工関節機構10Aに義手パーツ50を組み合わせたときの屈伸運動を示す模式図である。
図7の(A)は、手首を親指側に曲げる橈屈、
図7の(B)は手首をまっすぐにした正立、
図7の(C)は手首を小指側に曲げる尺屈の状態を示す。
【0049】
図7の(A)で、たとえば、蝶番関節21が回転して、プレート11とプレート12の間が開き、手首を親指側に曲げることができる。弾性エラストマー32は、−x方向に撓む。
図7の(B)で、弾性エラストマー32は元の位置に復帰し、プレート11〜15のすべてが閉じて初期位置に戻る。
図7の(C)で、蝶番関節22が回転してプレート12とプレート13が開き、手首を小指側に曲げることができる。弾性エラストマー32は、+x方向に撓む。尺屈動作が終わると、弾性エラストマー32は元の状態に復帰し、
図7の(B)の初期状態に戻る。
【0050】
人工関節機構10Aの橈尺屈運動は、ビンの蓋の開け閉めや、テーブルを拭くなどするときに行われる。
【0051】
図8は、作製した人工関節機構10の回内外動作を説明する図である。左側の初期状態から右側の回内外動作に移行する。右側の回内外(A)では、ヘリカルギア111が矢印Eの方向に回転し、人工関節機構10は、z軸まわりに矢印Eの方向に回転する。回内外(B)では、ヘリカルギア111が矢印Fの方向に回転し、人工関節機構10は、z軸まわりに矢印Fの方向に回転する。回内外は、ドアノブを回すときに等行われる。
【0052】
日常動作では、屈伸、橈尺屈、回内外のいずれかだけを単独で行わう動作は多くなく、屈伸と回内外、橈尺屈と回内外など、2以上の自由度を組み合わせた動作が行われる。実施形態の人工関節機構10および10Aは、2以上の自由度を組み合わせるときに、さらに有利である。たとえば、筋電信号に基づいてモータ35でヘリカルギア111を回転させて回内外の動作を行いながら、受動的に蝶番関節21〜24のいずれかを回転させて、手首を屈伸または橈尺屈することができる。
【0053】
また、屈伸用の蝶番関節(たとえば、蝶番関節23または24)と、橈尺屈用の蝶番関節(たとえば蝶番関節21または22)を同時に回転させて、橈背屈、掌尺屈など斜め方向の動作を行うことができる。人工関節機構10または10Aでプレート12〜15をどの方向に動かした場合でも、弾性エラストマー31、32等の復帰手段によって、受動的に初期位置に戻すことができる。
【0054】
図9は、人工関節機構10を筋電義手60と組み合わせる例を示す。
図9では、構成を明確にするために、筋電義手の内部に組み込まれる前の状態を示し、また復帰手段を省略しているが、実際は弾性エラストマー31等の復帰手段を設けた状態で、筋電義手の付け根の近傍に配置される。また、人工関節機構10の回内外機構110のモータ35には、別の配線と電極パッドが接続される。
【0055】
筋電義手60は、ユーザからの筋電信号によって物体の把持動作(親指と4指の開閉)等を制御することができる。ユーザの皮膚に接着される電極パッド61からの信号は、配線62を介して駆動制御部63に入力され、親指と4指の姿勢が制御される。
【0056】
このとき、人工関節機構10を組み合わせることで、筋電義手60の手のひらの向き、手首の屈伸の方向、橈尺屈の方向をユーザの意思で受動的に操作することができる。たとえば、テーブルの上のコップをつかむときに、筋電信号によって筋電義手60の親指と4指が開かれ、その後、コップの外表面にフィットするように親指と4指が閉じられる。同時に、回内外機構20によって、筋電義手60の掌部がコップの側面と対向するように手首部が駆動される。また、筋電義手60の付け根がテーブルから受ける反力や、ユーザからの負荷の方向によって、2軸機構20の蝶番関節21〜24の少なくともひとつが受動的に動作する。一般的に、コップをつかむ場合は背屈から掌屈の方向に手首が動く。人工関節機構10を用いることで、より自然な動作が可能になる。
【0057】
以上、特定の実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した構成例に限定されない。
図1および
図2の例では、蝶番関節21〜24を回転軸で表現しているため、一定程度の厚みを有するように描かれているが、各プレートの厚さ以下の径のヒンジまたは回転軸を用いてもよい。蝶番関節21〜24をプレートの折り曲げのみによって実現する場合は、あらかじめ展開図の形状の金属プレートを作製しておき、所定の線に沿って折り畳むことで、2軸機構20を実現してもよい。また、プレート11〜15の一部を折り畳み型にして、残りをヒンジで折りたたみ可能に連結してもよい。
【0058】
回内外機構110によるz軸まわりの回転動作は、ヘリカルギアと伝達ギアの組み合わせに限定されず、小型と薄化が実現される限り、円盤状のプーリとベルトを用いて実現されてもよい。
【0059】
実施形態の人工関節機構10または10Aは、その薄さと小型形状によって、特に小児用の義肢への適用が期待される。人工関節機構10または10Aは、義手のみならず、一般のロボットハンドやグリッパにも適用可能である。そのような適用例でも、限られた空間内に3自由度の運動機構を配置することができる。人工関節機構10を手首関節に適用する場合、手先の直近に3自由度を持つ薄くて小型の関節機構が配置され、最小の空間変位で手先を動かすことができる。
【0060】
人工関節機構10または10Aは、手首関節だけではなく、肩関節、首関節、足首関節など、3自由度で運動する任意の関節部分に適用可能である。上腕の付け根から切断されたユーザにとって、人工関節機構10または10Aを内蔵した義手を装着することで、屈伸(腕を横から上下に上げ下げする動き)、橈尺屈(腕を水平方向へ動かす動き)、回内外(腕を前後に振る動き)、あるいはこれらの2以上を組み合わせた斜め方向への動作が可能になる。
【0061】
人工関節機構10または10Aを足首関節に適応する場合は、薄く、かつ小型の構成で3自由度を実現できるので、斜面、凹凸のある道路、混雑した場所などでも安定して歩行を支援することができる。受動構成の2軸機構20で、足首の屈伸、橈尺屈だけではなく、橈背屈、掌尺屈など、斜め方向の動きが可能である。薄型のギア機構で回内外の動きが実現されるので、歩行中や起立中にバランスがとりやすくなる。
【0062】
足の場合、手先や腕以上に、長さの左右差が歩行の支障となるが、実施形態の人工関節機構10または10Aの2軸機構20の厚さは、初期状態で原理的にゼロに近い。回内外機構110と組み合わせた全体の構成でみても、10mm以下に薄く形成することができる。義足の場合、装着による左右差の影響が少なく、ユーザは安定して歩行することができる。