【解決手段】電動シリンダシステムは、ロッドと、電動機の駆動力によって回転運動するボールねじを有するボールねじ機構と、ロッドに接続されボールねじの回転運動によってボールねじの軸方向へロッドと共に直線運動するナットと、直線運動するナットが突き当たる接触部を有し、ボールねじ機構をボールねじの軸方向へ変位可能に支持する筒体と、筒体に固定されボールねじ機構の変位に応じた値を検出する歪検出器と、ナットを接触部に突き当ててボールねじ機構を変位させ、ボールねじ機構の変位に応じて前記歪検出器が検出する値に基づいて、前記歪検出器の異常を検出する制御部とを備える。
前記制御部は、所定の荷重値のときに前記歪検出器によって検出されたボールねじ機構の変位に応じた値と、前記所定の荷重値のときに予め取得された基準値との比較に基づいて、前記歪検出器の異常を検出する、請求項1に記載の電動シリンダシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電動プレスは、無荷重時のロードセルの出力のみに基づいてロードセルの交換を判定するため、ロードセルの交換の判定を正確に行えないおそれがある。例えば、無荷重時のロードセルの出力が許容範囲内であっても、有荷重時のロードセルの出力が許容範囲内にならない場合もある。
【0005】
本開示は、歪検出器の異常の検出精度を向上できる電動シリンダシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電動シリンダシステムは、ロッドと、電動機の駆動力によって回転運動するボールねじを有するボールねじ機構と、ロッドに接続されボールねじの回転運動によってボールねじの軸方向へロッドと共に直線運動するナットと、直線運動するナットが突き当たる接触部を有し、ボールねじ機構をボールねじの軸方向へ変位可能に支持する筒体と、筒体に固定されボールねじ機構の変位に応じた値を検出する歪検出器と、ナットを接触部に突き当ててボールねじ機構を変位させ、ボールねじ機構の変位に応じて歪検出器が検出する値に基づいて、歪検出器の異常を検出する制御部とを備える。
【0007】
この電動シリンダシステムでは、ナットはボールねじの回転運動によってボールねじの軸方向へ直線運動する。直線運動するナットは、筒体の接触部に突き当たり、筒体の接触部を支点としてボールねじ機構に荷重を発生させる。ボールねじ機構は発生した荷重によってボールねじの軸方向へ変位する。歪検出器はボールねじ機構の変位に応じた値を検出する。このように、この電動シリンダシステムは、ワークを用いることなく歪検出器に荷重を掛けることができる。このため、この電動シリンダの制御部は、有荷重時に歪検出器が検出した値に基づいて歪検出器の異常を検出できる。よって、この電動シリンダシステムは、無荷重時の歪検出器の出力のみに基づいて歪検出器の異常を検出する場合と比べて、歪検出器の異常の検出精度を向上できる。
【0008】
一実施形態においては、歪検出器は、筒体に固定される外縁部と、外縁部の内側に設けられボールねじの軸方向へ変位可能な可動部とを有し、ボールねじ機構は、ボールねじを回転可能に支持する複数の軸受を有し、複数の軸受は、筒体の接触部と歪検出器との間に配置される第1軸受と、歪検出器の可動部を第1軸受と挟持する第2軸受とを含んでもよい。この場合、ボールねじ機構がボールねじの軸方向のどちらに変位しても、歪検出器は変位を検出できる。
【0009】
一実施形態においては、筒体は、接触部が設けられ第1軸受を支持する第1筒体と、第2軸受を支持する第2筒体とを有してもよい。この場合、筒体の接触部の加工が容易になるため、単一の部材から筒体を製造する場合と比べて、筒体の製造にかかる時間が短縮できる。
【0010】
一実施形態においては、筒体の接触部と第1軸受との間に、ボールねじの軸方向へ空隙が設けられてもよい。第1軸受を有するボールねじ機構は、筒体の接触部と第1軸受との間に空隙が設けられることで、空隙分だけ接触部に近づく方向に移動することができる。このため、第1軸受が接触部に接触するまでの間、歪検出器は荷重に対するボールねじ機構の変位量を適切に測定できる。
【0011】
一実施形態においては、制御部は、所定の荷重値のときに歪検出器によって検出されたボールねじ機構の変位に応じた値と、所定の荷重値のときに予め取得された基準値との比較に基づいて、歪検出器の異常を検出してもよい。この場合、この電動シリンダシステムは、予め取得された基準値を基準として歪検出器の異常を検出できる。
【0012】
本開示の他の側面に係る電動シリンダの異常検出方法は、電動シリンダのボールねじを電動機の駆動力によって回転運動させ、ボールねじに取り付けられたナットをボールねじの軸方向へ直線運動させ、直線運動するナットを電動シリンダの筒体に設けられた接触部に突き当てるステップと、突き当てられたナットによって、筒体に設けられた接触部を支点としてボールねじを有するボールねじ機構をボールねじの軸方向に変位させるステップと、筒体に固定された歪検出器によって変位に応じた値を検出するステップと、検出するステップにおいて検出された、変位に応じた値に基づいて歪検出器の異常を検出するステップとを備える。
【0013】
この電動シリンダの異常検出方法では、直線運動するナットは電動シリンダの筒体に設けられた接触部に突き当たる。突き当たったナットは筒体に設けられた接触部を支点として荷重を発生し、発生した荷重によってボールねじを有するボールねじ機構がボールねじの軸方向に変位する。ボールねじの変位に応じた値が、筒体に固定された歪検出器によって検出される。そして、ボールねじの変位に応じた値に基づいて歪検出器の異常が検出される。このように、この電動シリンダの異常検出方法は、ワークを用いることなく歪検出器に荷重を掛けることができる。このため、この電動シリンダの制御部は、有荷重時に歪検出器が検出した値に基づいて歪検出器の異常を検出できる。よって、この電動シリンダの異常検出方法は、無荷重時の歪検出器の出力のみに基づいて歪検出器の異常を検出する場合と比べて、歪検出器の異常の検出精度を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る電動シリンダシステムによれば、歪検出器の異常の検出精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0017】
[電動シリンダシステムの構成]
図1は、実施形態に係る電動シリンダシステムの一例を示す概要図である。図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元空間の直交座標系における互いに直交する軸方向である。
図1に示す電動シリンダシステム100は、ワーク(不図示)を押圧して、成型又は圧入などを行うシステムである。電動シリンダシステム100は、電動シリンダ1及び制御装置50を備える。電動シリンダ1は、フレーム2に固定される。ワークは、フレーム2のワーク台2aに設置され、電動シリンダ1のロッドが伸長することで、ワーク台2aとロッド先端との間で押圧される。
【0018】
電動シリンダ1は、電動機10、回転伝達機構20、及びシリンダ部30を備える。
図1においては、回転伝達機構20及びシリンダ部30は断面で示される。電動機10は、回転伝達機構20を介してシリンダ部30に接続される。電動機10で発生した駆動力は回転伝達機構20を介してシリンダ部30に伝達される。制御装置50は、電動シリンダ1に接続され、電動シリンダ1の動作を制御する。より具体的には、制御装置50は、電動機10及びシリンダ部30と通信可能に接続され、電動機10を制御する。
【0019】
電動機10は、制御装置50から供給される電力によって駆動力を発生する。電動機10は、例えばサーボモータである。電動機10は、モータ本体11及びエンコーダ12を有する。モータ本体11はモータシャフト111を含む。モータ本体11は、制御装置50から電力を供給され、モータシャフト111の軸方向(ここではZ方向)を中心としてモータシャフト111を回転させる。エンコーダ12は、モータシャフト111の回転角を検出し、制御装置50にフィードバックする。電動機10で発生した駆動力は、モータシャフト111を通して回転伝達機構20に伝達される。
【0020】
回転伝達機構20は、電動機10の駆動力をシリンダ部30に伝達する。回転伝達機構20は、筐体21、二つのタイミングプーリ22,24、タイミングベルト23、回転軸25、及び二つの軸受26,27を有する。筐体21は、二つのタイミングプーリ22,24、タイミングベルト23、回転軸25、及び二つの軸受26,27をその内部に収容する。筐体21の外側には電動機10が固定され、タイミングプーリ22には電動機10のモータシャフト111が接続される。筐体21の外側には電動機10と並設するようにシリンダ部30が固定される。タイミングプーリ24には、二つの軸受26,27に回転可能に支持された回転軸25が接続される。二つのタイミングプーリ22,24は、タイミングベルト23によって連結される。電動機10によって発生した駆動力は、タイミングベルト23を介してタイミングプーリ22からタイミングプーリ24へ伝達され、回転軸25の軸方向(ここではZ方向)を中心として回転軸25を回転させる。
【0021】
シリンダ部30は、回転伝達機構20から伝達された駆動力に基づいて動作する。シリンダ部30は、筒体30a、歪検出器33、ボールねじ機構35、ナット356、ロッド357、減速機36、及びすべりキー37を有する。筒体30aは、歪検出器33、ボールねじ機構35、ナット356、ロッド357、及び減速機36を、収容又は保持する。筒体30aの外周面には、すべりキー37が後述するロッドの溝にアクセス可能とするための開口が設けられる。ボールねじ機構35には、ボールねじ353のスプライン部35eを介して減速機36が接続される。減速機36には回転軸25が接続される。回転軸25の駆動力は、減速機36及びボールねじ353のスプライン部35eを介してボールねじ機構35に伝達され、ボールねじ機構35及びすべりキー37によってロッドの直線運動の駆動力に変換される。
【0022】
図2は、
図1のボールねじ機構の断面の部分拡大図である。
図1,2に示されるように、ボールねじ機構35は、二つの軸受351,352(複数の軸受の一例)、ボールねじ353、カラー354、及びベアリングナット355を含む。ボールねじ353は、回転軸25の軸方向に延在し、ねじ部35a、円柱部35b及びスプライン部35eを含む。ねじ部35aは、外周面にねじ山を有し、ナット356が螺合される棒状部材である。円柱部35bは、ねじ部35aの末端に接続され、ねじ部35aよりも縮径された形状を有する。ねじ部35aの末端には、円柱部35bとの直径の違いによって段差面35dが形成される。スプライン部35eは円柱部35bの末端に形成され、例えば、インボリュート曲線に基づくスプライン形状を外周面に有し、減速機36に設けられた内周面のスプライン形状と嵌合する。円柱部35bは、二つの軸受351,352によって回転可能に支持される。軸受351(第1軸受の一例)は、ねじ部35aの段差面35dに接触するように設けられる。軸受352(第2軸受の一例)は、円柱部35bの末端に配置される。二つの軸受351,352の間には、カラー354が介在する。カラー354は、二つの軸受351,352によって挟持される。さらに、円柱部35bの末端には、ベアリングナット355が設けられる。ベアリングナット355は、カラー354を挟持する二つの軸受351,352を、ねじ部35aの段差面35dとの間に挟持する。
【0023】
ナット356は、ボールねじ353に螺合される。ナット356には、ボールねじ353の回転力が伝達される。ナット356は、ロッド357に接続される。ロッド357に設けられたキー溝は、筒体30aに設けられたすべりキー37と嵌合する。ナット356に伝達された回転力は、ロッド357のキー溝及びすべりキー37によって回転運動が規制され、ボールねじ353の軸方向(ここではZ方向)への駆動力となる。このように、ナット356は、ボールねじ353の回転運動によってボールねじ353の軸方向へロッド357と共に直線運動する。
【0024】
筒体30aは、ボールねじ機構35をボールねじ353の軸方向へ変位可能に支持する。筒体30aは、筒体31(第1筒体の一例)、筒体32(第2筒体の一例)及び筒体34を有し、筒体31、筒体32及び筒体34が連結されて構成される。筒体31は、軸受351を収容し、軸受351をボールねじ353の軸方向へ変位可能に支持する。筒体31の内径は、軸受351の外径とほぼ等しい。筒体31は、直線運動するナット356が突き当たる接触部31bを含む。接触部31bは、筒体31の先端において筒体31の内側に突出した部位(鍔)である。接触部31bの内径は、ナット356の外径よりも小さい。このため、ナット356は、ボールねじ機構35の末端へと移動したときに接触部31bに突き当たる。
【0025】
接触部31bと軸受351との間には空隙31aが設けられる。つまり、接触部31bと軸受351とは接触しておらず、ボールねじ機構35が空隙31aだけボールねじ353の軸方向への変位を許容する。空隙31aは、一例として0.5mm〜2.0mmであるがその大きさには限定されず、要はボールねじ機構35の変位を後述する歪検出器33が検出可能な程度の隙間であれば何でもよい。
【0026】
筒体32は、軸受352を収容し、軸受352をボールねじ353の軸方向へ変位可能に支持する。つまり、軸受351は筒体31に、軸受352は筒体32に、それぞれ変位可能に支持される。ボールねじ機構35は、筒体31及び筒体32によって、ボールねじ353の軸方向に変位可能に支持される。
【0027】
歪検出器33は、ボールねじ機構35の変位に応じた値を検出する。歪検出器33は、一例としてロードセルである。歪検出器33は、外縁部33a及び可動部33bを含む。歪検出器33は、一例として板状部材である。外縁部33aは、板状部材の縁を構成し、筒体30aに固定される。一例として、外縁部33aは、筒体31と筒体32とに挟持される。可動部33bは、外縁部33aの内側に設けられボールねじ353の軸方向へ変位可能である。例えば、可動部33bは、板状部材の外縁部33aの内側の弾性部33cを介して外縁部33aに接続される。弾性部33cには歪みゲージが設けられる。歪みゲージは、可動部33bの変位に応じた弾性部33cの歪みに基づいて、可動部33bの変位に応じた値を出力する。
【0028】
軸受351は、筒体30aの接触部31bと歪検出器33の可動部33bとの間に配置される。軸受352は、歪検出器33の可動部33bを軸受351との間に挟持する。これにより、可動部33bは、軸受351と軸受352とに挟持され、軸受351及び軸受352と共に変位する。ボールねじ機構35の変位は、軸受351及び軸受352を介して可動部33bに伝達する。
【0029】
図3は、ナット356が接触部31bに突き当たり、ボールねじ機構35が変位した場合の概念図である。
図3の(A)は、ナット356が接触部31bに突き当たる前のボールねじ機構35の位置を示す。ナット356と接触部31bとの間には空間があり、ナット356と接触部31bとは接触していない。軸受351と接触部31bとの間には空隙31aが設けられる。軸受352と筒体32との間にも、空隙31aと同程度の幅の空隙32aが設けられる。可動部33bは変位しておらず、外縁部33aと同一平面上に位置する。
【0030】
図3(B)は、ボールねじ機構35が変位した後の位置を示す。ロッド357の収縮方向にナット356を直線運動させると、ナット356は接触部31bに突き当たる。ナット356は、接触部31bを支点に、ボールねじ機構35をロッド357の伸長方向に変位させる。ロッド357の伸長方向へのボールねじ機構35の変位によって、空隙31aは小さくなり、空隙32aは広がる。可動部33bはボールねじ機構35と共に変位して、外縁部33aよりもナット356に近接する。このように、電動シリンダ1は、ワークを用いること無く、歪検出器33に荷重を与えることができる。なお、ボールねじ353と減速機36とはボールねじ353のスプライン部35eによって接続されているため、回転力の伝達は、ボールねじ機構35がボールねじ353の軸方向に変位しても影響を受けない。
【0031】
[制御装置の構成]
図4は、制御装置50とシリンダ部30と電動機10との関係を示す概要図である。制御装置50は、制御部51及びモータドライバ52を有する。制御部51はモータドライバ52と、双方向通信可能に接続される。制御部51は、例えば、サーボコントローラ、プログラマブルロジックコントローラである。制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(ReadOnly Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、及び通信装置などを有する汎用コンピュータで構成されてもよい。
【0032】
制御部51には、歪検出器33の可動部33bの変位に応じた信号が入力される。モータドライバ52は、例えば、サーボアンプである。モータドライバ52には、モータシャフト111の回転角に応じた信号が、エンコーダ12から入力される。モータドライバ52は、エンコーダ12から入力された信号に基づいて、モータ本体11に電流を流し、電動機10を制御する。この時に流れる電流値と、電動機10の定格電流値とに基づいて、電動機10のトルク負荷率が計算される。
【0033】
図5は、制御装置50の制御部51を示すブロック図である。制御部51は、ロードセルアンプ部511、A/D変換部512、ゲイン設定部513、オフセット設定部514、荷重値変換部515、演算部516、記憶部517、及びモータドライバ通信部518を含む。
【0034】
ロードセルアンプ部511は、可動部33bの変位を電圧値の信号へ変換する。A/D変換部512は、ロードセルアンプ部511から入力された電圧値の信号を、デジタル電気信号に変換する。ゲイン設定部513は、A/D変換部512から入力されたデジタル電気信号に乗数をかけて、ゲインを調整する。オフセット設定部514は、ゲイン設定部513から入力されたデジタル電気信号に補正値を加えることで、無負荷時の歪検出器33の出力を調整する。荷重値変換部515は、オフセット設定部514から入力されたデジタル電気信号を、可動部33bの変位に応じたデジタル電気信号から、可動部33bに加わる荷重に応じたデジタル電気信号に変換する。
【0035】
モータドライバ通信部518は、モータドライバ52及び演算部516と双方向に通信する。例えば、モータ本体11に流した電流値、電流値に基づくトルク負荷率、又は、モータシャフト111の回転角などが、モータドライバ52からモータドライバ通信部518に入力される。モータドライバ通信部518は、演算部516から入力された指示に基づいて、電動機10を制御する信号をモータドライバ52に出力する。
【0036】
演算部516は、荷重値変換部515から入力されたデジタル電気信号に基づいて、可動部33bの受けた荷重を記憶部517に出力する。演算部516は、モータドライバ通信部518から入力された、モータ本体11に印加した電流値、電流値に基づくトルク負荷率、又はモータシャフト111の回転角など(ボールねじ機構の変位に応じた値の一例)を、記憶部517に出力する。また、演算部516は、記憶部517を参照して、電動機10を制御する指示をモータドライバ52に出力する。
【0037】
演算部516は、記憶部517に記憶された歪検出器33の荷重に基づいて電動機10の制御を行い、この時の電動機10のトルク負荷率に基づいて、歪検出器33の異常を検出する。例えば、演算部516は、電動機10のトルク負荷率及び可動部33bの荷重を基準値として記憶部517に記憶する。基準値は、実際に荷重が負荷された時のトルク負荷率である。次に、演算部516は、記憶部517に記憶された荷重と同一となるまで、ナット356を接触部31bに押し当てる指示を、モータドライバ52に出力する。演算部516は、ナット356を接触部31bに押し当てて得られた電動機10のトルク負荷率と、記憶部517に記憶されたトルク負荷率(基準値の一例)とを比較して、演算部516は歪検出器33の異常を検出する。
【0038】
[電動シリンダシステムの動作]
次に、電動シリンダ1が歪検出器33の異常を検出する工程の一例を説明する。
図6は、歪検出器の異常を検出する工程の一例を示すフローチャートである。
図6に示されるフローチャートは、制御装置50によって実行される。
【0039】
図6に示されるように、最初に、制御装置50は、突当処理(ステップS1)として、電動シリンダ1のボールねじ353を電動機10の駆動力によって回転運動させ、ボールねじ353に取り付けられたナット356をボールねじ353の軸方向(収縮方向)へ直線運動させ、直線運動するナット356を電動シリンダ1の筒体30aに設けられた接触部31bに突き当てる。
【0040】
続いて、制御装置50は、変位処理(ステップS2)として、突き当てられたナット356によって、筒体30aに設けられた接触部31bを支点としてボールねじ353を有するボールねじ機構35をボールねじ353の軸方向に変位させる(
図3の(B))。
【0041】
続いて、制御装置50は、変位検出処理(ステップS3)として、筒体30aに固定された歪検出器33によって変位に応じた値を検出する。
【0042】
続いて、制御装置50は、異常判定処理(ステップS4)として、変位検出処理(ステップS3)において検出された、変位に応じた値に基づいて歪検出器33の異常を検出する。制御装置50は、例えば、所定の荷重値のときに歪検出器33によって検出されたボールねじ機構35の変位に基づいて電動機10のトルク負荷率を算出する。そして、制御装置50は、電動機10のトルク負荷率と、記憶部517に記憶された基準値(実際に荷重が負荷された時のトルク負荷率)との比較に基づいて、歪検出器33の異常を検出する。制御装置50は、例えば、電動機10のトルク負荷率と基準値との差分の絶対値が予め設定された閾値以下である場合には、歪検出器33が正常であると判定する。制御装置50は、例えば、電動機10のトルク負荷率と基準値との差分の絶対値が予め設定された閾値を超える場合には、歪検出器33が異常であると判定する。異常判定処理(ステップS4)が終了すると、
図6に示されるフローチャートは終了する。
【0043】
図6に示されるフローチャートを実行することにより、所定の荷重値において実測した過去のトルク負荷率と、所定の荷重値において実測した現在のトルク負荷率とを比較して歪検出器33の異常を検出することができる。
【0044】
制御装置50は、
図6において説明された所定の荷重値を変更し、複数の荷重値において比較を行い、歪検出器33の異常を検出することもできる。
図7は、トルク負荷率が基準値として記憶される工程を示すフローチャートである。
図8は、各目標荷重において、トルク負荷率を基準値と比較して、歪検出器33の異常を検出する工程を示すフローチャートである。
図9は、各目標荷重における、時間とトルク負荷率の関係を示すグラフである。
図7及び
図8に示される工程は、制御装置50によって実行される。
【0045】
図7の工程では、一例として3つの目標荷重が設定される。この工程は、校正された電動シリンダシステム100を用いて行われる。目標荷重とは、歪検出器33の異常を検出する際に、制御装置50が歪検出器33にかける荷重の値である。
図7の工程では、電動シリンダ1の定格推力を最大荷重値として、最大荷重値を3分割した値が、それぞれ、第1目標荷重と、第2目標荷重と、第3目標荷重とに設定される。これらの目標荷重は、
図8における目標荷重と同一である。また、これらの目標荷重におけるトルク負荷率が
図9に示されている。
【0046】
図7に示されるように、制御装置50は、ステップS10として、ロッド357及びナット356を、ボールねじ353の軸方向においてロッド357の収縮方向に直線運動させて、接触部31bに突き当てる。突き当てられたナット356は、接触部31bを支点に、ボールねじ機構35をロッド357の伸長方向に変位させる。可動部33bはボールねじ機構35と共に変位して、外縁部33aよりもナット356に近接する。制御装置50は、可動部33bの変位に応じた信号に基づいて、歪検出器33の荷重を測定する。荷重が第1目標荷重になった時、制御装置50はロッド357及びナット356を、接触部31bに突き当てた状態を維持して停止させる。換言すれば、制御装置50は、ボールねじ機構35から歪検出器33にかかる荷重が第1目標荷重になるように、電動機10を制御する。
【0047】
制御装置50は、ステップS12として、歪検出器33に第1目標荷重がかかる時の電動機10のトルク負荷率を算出して、そのトルク負荷率を基準値として記憶部517に記憶する。
図9に示されるように、トルク負荷率は、目標荷重に到達した直後に大きく変動して、その後に安定する。大きく変動するトルク負荷率を基準値として記憶すると、歪検出器33の異常の検出が正確に行われないため、安定したトルク負荷率を基準値として記憶する。一例として、制御装置50は、トルク負荷率安定範囲が設定されることで、安定したトルク負荷率を算出できる。
【0048】
図9を参照して、トルク負荷率安定範囲が設定された制御装置50の、トルク負荷率を算出する手順を説明する。トルク負荷率安定範囲が設定された制御装置50は、歪検出器33の荷重値が第1目標荷重(l
1)に到達しても、一定期間(t
1)は、その状態を維持する。制御装置50は、一定期間(t
1)経過後に、時間を遡ってトルク負荷率の平均値を算出し、トルク負荷率がトルク負荷率安定範囲から外れる時間(t
1a)を、平均値の算出から除外する。制御装置50は、上記の過程で算出したトルク負荷率の平均値を、トルク負荷率の基準値として記憶部517に記憶する。以下、第2目標荷重(l
2)においても同様に、制御装置50は、トルク負荷率がトルク負荷率安定範囲から外れる時間(t
2a)を平均値の算出から除外する処理を行い、第3目標荷重(l
3)においても同様の処理を行う。
【0049】
ステップS14〜ステップS16では、目標荷重を第2目標荷重に変えて、上記のステップS10〜ステップS12と同一の操作が行われる。また、ステップS18〜ステップS20も、目標荷重を第3目標荷重に変えて、上記のステップS10〜ステップS12と同一の操作が行われる。ステップS10〜ステップS20において、3つの目標荷重における電動機10のトルク負荷率が、基準値として記憶部517に記憶される。制御装置50は、ステップS22として、接触部31bに突き当たっていたロッド357及びナット356を、ボールねじ353の軸方向において歪検出器33に荷重がかからない所定の原位置まで移動させる。ステップS22が終了すると、
図7に示されるフローチャートが終了する。
【0050】
次に、歪検出器33の異常を検出する工程を説明する。歪検出器33の異常の検出は通常作業時に行われ、例えば、始業前の点検などで行われる。
図8に示されるように、制御装置50は、ステップS30として、ステップS10と同一の操作を行い、ボールねじ機構35から歪検出器33にかかる荷重が第1目標荷重になるように、電動機10を制御する。
【0051】
制御装置50は、ステップS32として、歪検出器33に第1目標荷重がかかる時の電動機10のトルク負荷率を算出して、ステップS12のトルク負荷率との比較を行う。具体的には、演算部516が、基準値として記憶部517に記憶されたステップS12のトルク負荷率と、ステップS32の実際のトルク負荷率とを比較する。比較とは、基準値として記憶部517に記憶されたステップS12のトルク負荷率に所定の閾値を設定して、実際のトルク負荷率がその閾値内に含まれるか判断する作業をいう。
【0052】
ステップS34〜ステップS36では、目標荷重を第2目標荷重に変えて、上記のステップS30〜ステップS32と同一の操作が行われる。また、ステップS38〜ステップS40にかけても、目標荷重を第3目標荷重に変えて、上記のステップS30〜ステップS32と同一の操作が行われる。ステップS42では、ステップS22と同様に、制御装置50は、ロッド357及びナット356を所定の原位置まで移動させる。
【0053】
ステップS44では、ステップS32、ステップS36、及びステップS40の各比較の結果に基づいて、歪検出器33の異常を検出する。一例として、各目標荷重におけるトルク負荷率の比較の結果がすべて閾値内に含まれる場合には、演算部516は歪検出器33が正常と判定して、ステップS46で正常判定を出力する。上記に該当しない場合は、演算部516は歪検出器33の異常と判定して、ステップS48で異常判定を出力する。
【0054】
ステップS10〜ステップS22の工程は、マスターデータ取得用の動作プログラムとして、記憶部517に記憶される。また、ステップS30〜ステップS42の工程も、歪検出器33の異常検出動作プログラムとして、記憶部517に記憶される。制御装置50は、オペレータの操作によって、上記プログラムを実行する。
【0055】
[実施形態のまとめ]
電動シリンダシステム100、及び電動シリンダ1の異常検出方法によれば、ナット356はボールねじ353の回転運動によってボールねじ353の軸方向へ直線運動する。直線運動するナット356は、筒体30aの接触部31bに突き当たり、筒体30aの接触部31bを支点としてボールねじ機構35に荷重を発生させる。ボールねじ機構35は発生した荷重によってボールねじ353の軸方向へ変位する。歪検出器33はボールねじ機構35の変位に応じた値を検出する。このように、この電動シリンダシステム100は、ワークを用いることなく歪検出器33に荷重を掛けることができる。このため、この電動シリンダ1の制御部51は、有荷重時に歪検出器33が検出した値に基づいて歪検出器33の異常を検出できる。つまり、制御部51は、経年劣化による歪検出器33の出力値と荷重の関係の変化(歪みゲージの接着材の硬化・劣化による変化)を考慮して歪検出器33の異常を検出できる。よって、この電動シリンダシステム100は、無荷重時の歪検出器33の出力のみに基づいて歪検出器33の異常を検出する場合と比べて、歪検出器33の異常の検出精度を向上できる。
【0056】
筒体30aは、接触部31bが設けられ軸受351を支持する筒体31と、軸受352を支持する筒体32とを有することにより、接触部31bの加工が容易になるため、単一の部材から筒体30aを製造する場合と比べて、筒体30aの製造にかかる時間が短縮できる。
【0057】
筒体30aの接触部31bと軸受351との間に、ボールねじ353の軸方向へ空隙31aが設けられることにより、ボールねじ機構35は、空隙31a分だけ接触部31bに近づく方向に移動することができる。このため、軸受351が接触部31bに接触するまでの間、歪検出器33は荷重に対するボールねじ機構35の変位量を適切に測定できる。
【0058】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。例えば、歪検出器33の異常の検出を、トルク負荷率から電流値に置き換えて行ってもよい。また、目標荷重の代わりに目標トルク負荷率を設定して、各目標トルク負荷率における荷重を比較して、歪検出器33の異常を検出する工程があってもよい。複数の目標荷重におけるトルク負荷率を算出して、歪検出器33の出力の直進性を評価して、歪検出器33の異常を検出してもよい。
【0059】
電動シリンダシステム100は、ワークを押圧する際に、歪検出器33の異常を検出してもよい。この場合、伸長方向に直線運動したロッド357のワーク押圧部35cは、ワーク(図示しない)に突き当たる。ロッド357は、ワークを支点に、ボールねじ機構35をロッド357の収縮方向に変位させる。ボールねじ機構35の収縮方向への変位によって、空隙32aは小さくなり、空隙31aは広がる。可動部33bはボールねじ機構35とともに変位して、外縁部33aよりもナット356から離間する。制御装置50は、可動部33bの変位に応じた信号に基づいて、歪検出器33の荷重を測定する。荷重が第1目標荷重になった時、制御装置50はロッド357を、ワークに突き当てた状態を維持して停止させる。このように動作することで、電動シリンダシステム100は、ワークを押圧する際に、歪検出器33の異常を検出することができる。このような動作は、歪検出器33の可動部33bを二つの軸受351,352で挟持することにより実現する。このような構成により、ボールねじ機構35がボールねじ353の軸方向のどちらに変位しても、歪検出器33は変位を検出できる。
【0060】
電動シリンダシステム100は、筒体34の内部において、ナット356の先端が突き当たる接触部を設けてもよい。この場合、電動シリンダシステム100は、上述したワークを押圧する場合と同一の手順で歪検出器33の異常を検出することができる。
【0061】
電動シリンダ1は、軸受351,352を備えなくてもよい。筒体30aは、単一の部材で構成されてもよい。筒体31と筒体34とは一体的に形成されてもよい。歪検出器33は、筒体30aに固定されていればよく、分割された筒体に挟持されることに限定されない。