【解決手段】本発明の高周波誘導加熱ヘッドは、プリント配線基板3の一面側において、それぞれの先端側に設けた加熱部8c、9cが、第1の間隔を介して対向配置させられるコア体8、9と、これらコア体8、9の少なくとも一方を可動させ、コア体の加熱部8cと、コア体9の加熱部9c間に存在する第1の間隔の距離を調整する可動機構とを備え、コア体8、9は、コア体8、9の加熱部8c、9c以外の軸支部8a、9a部分で、加熱時における、コア体8、9の加熱部8c、9c間に存在する前記第1の間隔よりも小さな第2の間隔を介して磁気的に結合される構成とした。また、加熱部8c、9cは保護層23で覆った。
前記第1及び第2のコア体の少なくとも一方は、回動支軸で回動自在に軸支された軸支部と、この軸支部と前記先端側の加熱部との間に設けた磁路部とを有する構成とした請求項1に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、回動支軸で回動自在に軸支された軸支部と、この軸支部と前記先端側の加熱部との間に設けた磁路部とを有し、前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とを重合させ、前記第1のコア体の軸支部と前記第2のコア体の軸支部とに前記回動支軸を貫通させた請求項2に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、板状体で形成し、これら第1及び第2のコア体の、それぞれの軸支部近傍における、板厚方向の断面積を、それぞれの磁路部における、板厚方向の断面積よりも大きくした請求項3に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1及び第2のコア体は、それぞれ、板状体で形成し、これら第1及び第2のコア体の、それぞれの加熱部における、板厚方向の断面積を、それぞれの軸支部近傍における、板厚方向の断面積、および、それぞれの磁路部における、板厚方向の断面積よりも小さくした請求項1乃至4のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1のコア体の加熱部と第2のコア体の加熱部との、加熱時における第1の対向距離は、前記軸支部側の距離よりも、先端側の距離を小さくした請求項2乃至5のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1及び第2のコア体の、少なくとも一方の加熱部の先端側には、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部を設けた請求項1乃至6のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッド。
前記第1及び第2のコア体の加熱部を、軸支部とは反対側に向けた突出形状とし、その先端側には、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部を設けた請求項7に記載の高周波誘導加熱ヘッド。
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の高周波誘導加熱ヘッドと、前記第1及び第2のコア体の加熱部の先端側に配置したXYΘテーブルと、を備えた高周波誘導加熱装置。
前記高周波誘導加熱ヘッドの可動機構は、第1のモータを有し、前記上下動機構は、第2のモータを有し、前記XYΘテーブルは、X軸用モータと、Y軸用モータと、Θ用モータを有し、これらの第1のモータ、第2のモータ、X軸用モータ、Y軸用モータ、Θ用モータおよび、前記コイルを制御部に接続した請求項11に記載の高周波誘導加熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1〜
図3は、高周波誘導加熱装置を示し、高周波誘導加熱ヘッド1と、XYΘテーブル2とを備えている。
XYΘテーブル2の可動枠2aには、配線基板の一例として、プリント配線基板3が装着されている。
【0017】
この実施形態で用いたプリント配線基板3には、その下面に、電子部品4が接着剤(図示せず)で仮止めされ、
図7〜
図10に示すように、電子部品4の端子5は、プリント配線基板3に設けた貫通孔6を、下方から上方へと貫通し、その先端がプリント配線基板3の上方へと突出している。
【0018】
また、
図7〜
図10に示すように、プリント配線基板3の貫通孔6内、および、プリント配線基板3の上下面における貫通孔6の開口縁には、はんだ付けのためのランド7が、銅などによって設けられている。
さらに、ランド7には、予め、クリームはんだが塗布されている。また、ランド7の近傍に、糸はんだ(図示せず)を供給する場合もある。
【0019】
本実施形態では、
図1〜
図3に示すように、プリント配線基板3の上面側において、高周波誘導加熱ヘッド1により、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、クリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5を、ランド7部分、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続するものである。
また、プリント配線基板3の上面側において、ランド7の近傍に、糸はんだを供給し、その糸はんだを、電子部品4の端子5、ランド7とともに加熱し、溶融した糸はんだを、ランド7上、および貫通孔6内に流入させ、これにより電子部品4の端子5を、ランド7部分、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する場合もある。
【0020】
このように、はんだとしてはランド7上に塗布したクリームはんだや、ランド7上に供給する糸はんだが用いられるが、以降の説明では、ランド7上に、クリームはんだを塗布したものを例に、説明を続ける。
さて、そのようなはんだ付けを行う高周波誘導加熱ヘッド1は、
図1〜
図3に示すように、例えば、フェライトなどの軟磁性体よりなるコア体8、9を備えている。
【0021】
コア体8、9は、それぞれ、Cの字状となっており、その開口側を対向させた状態で組み合わされている。
具体的には、コア体8は上方に、軸支部8a、中部に磁路部8b、下方に加熱部8cを備えている。
同じく、コア体9は上方に、軸支部9a、中部に磁路部9b、下方に加熱部9cを備えている。
【0022】
そして、これらのコア体8、9を、上述のごとく、その開口側を対向させた状態で組み合わせる。
このとき、コア体8、9の軸支部8a、9aは重ね合わされ、この状態で、それぞれの軸支部8a、9aに設けた貫通孔(図示せず)に、回動支軸10を貫通させている。
つまり、コア体8、9は、回動支軸10の周りに、回動自在に支持されているのである。
【0023】
コア体8、9について説明を続ける。
これらのコア体8、9は板状体で形成されているが、加熱部8c、9cにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)は、磁路部8b、9bや、軸支部8a、9a近傍における、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも小さくしている。
【0024】
つまり、
図8〜
図10に示すように、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、クリームはんだを溶融させる場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを端子5の両側に、近接(非接触状態)させるが、目標とする端子5、およびランド7部分に、磁束を集中させ、効果的に加熱すべく、コア体8、9の加熱部8c、9cは小型化(板厚方向の断面積を小さくする)することが好ましい。
【0025】
これに対して、磁路部8b、9bや、軸支部8a、9aは、磁束が通りやすいように、その板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)を、加熱部8c、9cにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも大きくする必要がある。
【0026】
また、軸支部8a、9a近傍における、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)を、それぞれの磁路部8b、9bにおける、板厚方向の断面積(板厚方向に切断した場合に、そこに存在する断面の面積)よりも大きくしている。
これは、コア体8、9が開閉動作を行う場合でも、軸支部8a、9a間では、その重なり、摺動する部分に存在する隙間を介して、両者間に磁束が流れるので、軸支部8a、9aの対向面積を大きくし、これにより、この軸支部8a、9a間で磁束が流れやすく、かつ、軸支部8a、9aの一部に、磁束が集中しないようにするためである。
【0027】
そのようなことを考慮し、軸支部8a、9aの重なり部分に存在する隙間(第2の間隔)の距離を、加熱時における、加熱部8c、9c間に存在する距離(第1の間隔)よりも小さくし、軸支部8a、9aでの磁気的結合が効果的に行われるようにしている。
【0028】
また、この部分に関して別の表現で説明すると、コア体8、9は板状体で形成されているので、つぎのような表現でも説明される。
つまり、コア体8を平面視した場合、軸支部8aは、磁路部8b、加熱部8cよりも平面積が大きな状態となっている。
また、コア体9を平面視した場合、軸支部9aは、磁路部9b、加熱部9cよりも平面積が大きな状態となっている。
【0029】
そして、このように面積を大きくした軸支部8aを、
図1〜
図3のように重ねた状態で、コア体8、9を開閉させるので、軸支部8a、9aは常に広い面積で、しかも狭い距離で対向することとなり、その結果として、軸支部8a、9a間における磁気抵抗は小さく、磁束の移動は効果的に行われる。
【0030】
次に、コア体8、9を開閉動作させる構成について説明する。
コア体8、9を開閉動作(回動動作)させる回動支軸10の一端は、基体11の下部縦面に、XYΘテーブル2と水平状態で固定されている。
【0031】
基体11の上部水平面には、モータ12が固定されている。このモータ12は、例えば特開2016−59170号公報に示されるようなステッピングモータで構成された、一般的なものであるので、説明の煩雑化を避けるために、簡単な説明にとどめる。
つまり、この特開2016−59170号公報に記載されたように、内部の、ローターマグネットのシャフトに雄ねじを形成し、このシャフトの雄ねじに、上下に移動する移動体13を、螺合させている。
【0032】
この移動体13の下端は、コア体8、9の上方に配置された、連結部14に連結されている。
また、連結部14には、
図1に示す左右方向に対向する状態で、リンク機構15、16が連結されている。
【0033】
リンク機構15、16は周知の構造で、二枚の折れ曲げ板15a、15b、16a、16bで構成され、上部の関節部分は、連結部14の回動軸14aに回動自在に支持されている。
また、リンク機構15の中部には、折れ曲げ板15a、15bを関節動作させるように、支軸15cが設けられている。
同じように、リンク機構16の中部には、折れ曲げ板16a、16bを関節動作させるように、支軸16cが設けられている。
【0034】
また、リンク機構15の折れ曲げ板15b下部は、コア体9の軸支部9aに、爪部15dにより固定されている。
同じように、リンク機構16の折れ曲げ板16b下部は、コア体8の軸支部8aに、爪部16dにより固定されている。
【0035】
なお、リンク機構15の折れ曲げ板15b下部も、リンク機構16の折れ曲げ板16b下部も、基体11に固定した回動支軸10に対しては、回動自在となっている。
【0036】
以上の構成で、モータ12を正転させ、または逆転させることで、移動体13を上下動させ、連結部14も上下動させ、リンク機構15、16の折れ曲がり状態を可変することで、コア体8、9の加熱部8c、9cを開閉動作させるのである。
つまり、電子部品4の端子5が細い場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを接近(加熱部8c、9c間のギャップが狭い)させ、また、電子部品4の端子5が太い場合には、コア体8、9の加熱部8c、9cを、広げる(加熱部8c、9c間のギャップを広げる)のである。
【0037】
次に、コア体8、9の上下動について説明する。
コア体8、9や、モータ12を支持した基体11は、上下動機構17に連結され、この上下動機構17により基体11を上下動させることで、コア体8、9も上下動させる。
【0038】
上下動機構17は、外周に螺旋状の溝が設けられたシャフト18をモータ19で正転、または逆転させ、シャフト18の外周に螺合連結された連結体20を上下動させ、連結体20に固定された基体11を上下動させ、これにより、コア体8、9を上下動させる構成となっている。
なお、モータ19も、例えば特開2016−59170号公報に示されるようなステッピングモータで構成された、一般的なものであるので、説明の煩雑化を避けるために、簡単な説明にとどめる。
【0039】
このモータ19は、上述したモータ12とは異なり、内部のローターマグネットのシャフトに、シャフト18を連結している。つまり、シャフト18は回転動作を行うように構成されている。
また、連結体20の上下動をスムーズに行わせるために、シャフト18とは平行状態で支持軸21も設けられ、これにより基体11を固定した連結体20は、シャフト18と支持軸21に支えられた状態で、上下動することになる。
【0040】
次に、コア体8、9に磁束を供給するためのコイル22について説明する。
このコイル22は、内部に冷却水を循環させるパイプ形状のもので、一例として1MHz、100Aの電流が供給される。
したがって、前記冷却水を安定的に供給するためにも、コイル22は、XYΘテーブル2の上方の定置に配置され、これ自体は基本的には可動させず、XYΘテーブル2の可動枠2aと、コア体8、9を可動させる。
【0041】
図1〜
図3は、XYΘテーブル2によって、
図7のプリント配線基板3の、はんだ付けする端子5が設定位置に移動配置された状態で、コア体8、9が下降させられた状態を示している。
つまり、はんだ付け時には、
図1〜
図3に示すように、コア体8、9の間に、コイル22が存在する状態にしなければならないので、加熱部8c、9cを開いた状態で、コア体8、9を、上方から下降させ、コア体8、9の間に、コイル22が存在する状態とする。
【0042】
次に、加熱すべき端子5の太さ、形状に対応する加熱部8c、9c間のギャップまで、コア体8、9を閉じ、その後、
図8から
図10のように、コア体8、9を、端子5位置にまで下降させる。
そして、この状態でコイル22に通電し、プリント配線基板3の上面側において、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5をランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続するのである。
【0043】
本実施形態では、
図7に示すように、プリント配線基板3の上面側には、複数本の端子5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5jが存在している場合について説明する。
この内、端子5a〜5cはY方向に、断続的ながら直線的に配置され、また、端子5d〜5eはX方向に、断続的ながら直線的に配置され、さらに、端子5f〜5hはY方向に、断続的ながら直線的に配置され、また、端子5i〜5jはX方向に、断続的ながら直線的に配置されている。
【0044】
そこで、本実施形態では、端子5a〜5jを一筆書きにはんだ付けする状況を説明する。
まず、
図8〜
図10のように、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、端子5aを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5a、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5aをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0045】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、端子5bを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5b、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5bをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0046】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、端子5cを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5c、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5cをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0047】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、その後、Θ回転させ、次に、X方向に移動させ、端子5dを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5d、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5dをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0048】
次に、XYΘテーブル2をX方向に移動させ、端子5eを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5eおよび、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5eをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0049】
次に、XYΘテーブル2をX方向に移動させ、その後、Θ回転させ、次に、Y方向に移動させ、端子5fを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5f、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5fをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0050】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、端子5gを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5g、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5gをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0051】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、端子5hを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5h、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5hをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0052】
次に、XYΘテーブル2をY方向に移動させ、その後、Θ回転させ、次に、X方向に移動させ、端子5iを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5i、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5iをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
【0053】
次に、XYΘテーブル2をX方向に移動させ、端子5jを、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動させ、その状態で、コイル22に通電し、高周波誘導加熱ヘッド1によって、電子部品4の端子5j、および、ランド7のクリームはんだを加熱し、ランド7のクリームはんだを溶融させ、その一部を、貫通孔6内にも流入させ、これにより電子部品4の端子5jをランド7と、貫通孔6内に、電気的、機械的に接続する。ここで、一旦、コイル22への通電を停止する。
以降、同じ繰り返しにより、次の、XYΘテーブル2に装着されたプリント配線基板3に対するはんだ付けが行われる。
【0054】
本実施形態において特徴的なのは、上述したように複数の端子5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5jに対して、高周波誘導加熱ヘッド1によって、一筆書き(連続的に)にはんだ付けが行えることである。
【0055】
さらに説明すれば、コア体8、9の加熱部8c、9c間の距離を変えることなく、連続的に端子5a〜5jに対してはんだ付けを行えるのである。
プリント配線基板3を、XYΘテーブル2に装着したことも一つの特徴ではあるが、もっとも大きな特徴は、
図8〜
図10に示すように、コア体8の加熱部8cで、コア体9の加熱部9cに対向する部分と、コア体9の加熱部9cで、コア体8の加熱部8cに対向する部分には、それぞれの加熱部8c、9c分を覆う保護層23を設けたことである。
【0056】
このように加熱部8c、9c分を覆う保護層23を設けると、コア体8、9の加熱部8c、9c間に、加熱すべき部品である端子5が、XYΘテーブル2によって、相対的に移動される状態となる時に、コア体8、9の加熱部8c、9cに、加熱すべき端子5部品が触れるのを、保護層23が防ぎ、その結果として、加熱部8c、9cの摩耗、損傷などを抑制することが出来る。
【0057】
また、保護層23は、コア体8,9の加熱部8c、9cの、それぞれが対向する方向(例えばX方向)に対して、水平方向に直交する方向(例えばY方向)において、中央部の層厚さよりも、両側部分の層厚さを薄くした構成としたので、コア体8、9の加熱部8c、9c間に、加熱すべき端子5が、相対的に移動しやすくなる。
つまり、加熱される端子5が、コア体8,9の加熱部8c、9cに相対的に移動される時には、その入り口側において、保護層23の層厚さが薄いので、コア体8,9の加熱部8c、9c間には大きな隙間が存在し、その結果として、コア体8,9の加熱部8c、9c間に、加熱すべき端子5が、相対的に移動しやすくなるのである。
【0058】
また、保護層23は、コア体8,9の加熱部8c、9cの、それぞれが対向する方向(例えばX方向)に対して、水平方向に直交する方向(例えばY方向)において、中央部の層厚さが、両側部分の層厚さよりも厚くなっているので、加熱すべき端子5が、例えば、細いリード線で、傾斜した状態となっていた場合でも、好ましいはんだ付け作業が行える。
つまり、リード線が傾斜状態していても、コア体8,9の加熱部8c、9cの入り口側は、保護層23が薄く、十分な隙間が存在するので、リード線は、コア体8,9の加熱部8c、9c間に相対的に移動することができ、しかも、その後、傾斜した状態のリード線が、コア体8,9の加熱部8c、9c間の中央部に相対的に移動する時には、傾斜側の保護膜23に、リード線が当接し、リード線の傾斜状態を緩和する状態となり、これらの結果として、好ましいはんだ付け作業が行えるのである。
【0059】
前記保護層23は耐熱性と耐摩耗性を考慮してフッ素樹脂製とした。
この保護層23は、
図8〜
図10のように、コア体8,9の加熱部8c、9cの全周を覆う構成としても良いし、
図14〜
図16に示すように、コア体8,9の加熱部8c、9cで、対向する面にだけ設けても良い。
ただし、この場合にも、保護層23は、コア体8,9の加熱部8c、9cの、それぞれが対向する方向(例えばX方向)に対して、水平方向に直交する方向(例えばY方向)において、中央部の層厚さよりも、両側部分の層厚さを薄くした構成とする。
【0060】
他の特徴点についても説明する。
本実施形態では、コア体8,9の、少なくとも一方の加熱部8c、9cを軸支部(回動支軸10)とは反対側に向けた突出形状とし、その先端側には、
図4のごとく、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部8d、9dを設けた。
図5、
図6は磁束が加熱部8c、9c間に集中しているだけではなく、下方、つまり、ランド7側にも広がり、ランド7も加熱でき、効果的なはんだ付けが行えるようになった。
【0061】
また、このようにコア体8,9の、少なくとも一方の加熱部8c、9cを軸支部(回動支軸10)とは反対側に向けた突出形状とし、その先端側に、
図4のごとく、先端側に向けて拡角する先端磁束強化部8d、9dを設けたことにより、保護層23形成時に、保護層23の一部が、下方に垂れ下がるのも抑制できることとなる。
なお、
図4〜
図6では磁束の状態を判りやすくするために、保護層23は表示していない。
【0062】
図11は、制御回路を示している。
前記コア体8、9を開閉させるモータ(M1)12と、コア体8、9を上下動させるモータ(M2)19は、制御部24に接続されている。
また、XYΘテーブル2のX軸用のモータ(M3)25と、Y軸用のモータ(M4)26、Θ回転用モータ(M5)27、および、タイマー28、メモリ29も、制御部24に接続されている。
さらに、コイル22は、インバータ30を介して制御部24に接続されている。
【0063】
なお、XYΘテーブル2のモータ25、26、27としては、ステッピングモータを用いている。
ステッピングモータは、例えば特開2016−59170号公報などでも、良く知られているように、パルスを与える毎にそのステッピングモータ固有の角度だけ、正転方向にも、逆転方向にも、回転させることができるもので、本実施形態でも、制御が正確、簡単と言うことで、採用した。
【0064】
また、現位置検出を、フォトインタラプタや、マイクロスイッチなどを用いて行えることも、モータ12、19、25、26、27としてステッピングモータを用いた理由である。
また、モータ12、19、25、26、27を制御するための位置情報などは、
図12、
図13に示す動作プログラムと共に、メモリ29に記憶されている。
【0065】
以上の構成において、動作説明を行う。
先ず、制御部24によって、XYΘテーブル2が駆動される。
すなわち、
図7、
図8に示すプリント配線基板3の、はんだ付けする端子5の設定位置は、メモリ29に位置情報として記憶されているので、
図8に示す位置まで、XYΘテーブル2によって、プリント配線基板3が移動させられる(
図12のS1、S2)。
【0066】
プリント配線基板3が定位置に移動させられると、モータ19によって、加熱部8c、9cを開いた状態で、コア体8、9が上方から下降させる(
図12のS3)。
コア体8、9が定位置(位置情報はメモリ29に記憶)まで下降すると、モータ12によって、コア体8、9を閉じる動作を行う(
図12のS4、S5)。
図8に示す、加熱すべき端子5の太さ、形状に対応する加熱部8c、9c間のギャップ位置(位置情報はメモリ29に記憶)まで、コア体8、9が閉じられると、モータ19によってコア体8、9が下降される(
図12のS6、S7)。
図8のように、コア体8、9が、端子5位置(位置情報はメモリ29に記憶)にまで下降させられると、インバータ30によりコイル22に通電を開始する(
図12のS8、S9)。
【0067】
タイマー28により通電時間が完了したことが判定されると、コイル22への通電を停止する(
図13のS10〜S12)。
以上のようにして、
図7のランド7部分での端子5aの、はんだ付けが完了すると、次のはんだ付けすべき対象物が存在するか、否かの判定が行われる(
図13のS13)。
【0068】
本実施形態では、
図7のごとく複数の端子5a〜5jが存在しているので、加熱部8c、9c間のギャップを維持した状態で、XYΘテーブル2によって、プリント配線基板3が移動させられ、次の端子5bのはんだ付けを行う(
図13のS14、S15、
図12のS9〜
図13のS12)。
【0069】
ここで特徴的なのは、端子5aの加熱時にはコイル22に通電するが、次の端子5bの移動時には、コイル22への通電を行わないことである。
端子5aの加熱時にコイル22への通電を行うと、磁気によりコア体8、9の加熱部8c、9c間の距離が近接し、端子5aの効果的な加熱が行える。
【0070】
また、次の端子5bが、コア体8、9の加熱部8c、9c間に移動してくる時には、コイル22への通電を断っているので、加熱部8c、9c間は広がり、これにより、加熱部8c、9c間に端子5bがスムーズに移動できるようになる。
コイル22への通電の有無により、加熱部8c、9c間の距離が変わるのは、コア体8、9をリンク機構15、16によって保持しているからである。
つまり、リンク機構15、16は、二枚の折れ曲げ板15a、15b、16a、16bで構成され、上部の関節部分は、連結部14の回動軸14aに回動自在に支持され、中部は支軸16cによって可動自在に支持され、下部は回動支軸10に対して回動自在としているので、その遊び部分の寸法により、コイルへの通電の有無により、加熱部8c、9c間の距離が変わることになる。
【0071】
そして、最後の端子5jへのはんだ付けが完了すると、モータ19によりコア体8、9の加熱部8c、9cがコイル22下方の所定位置まで上昇させ(
図13のS16、S17)、次に、モータ12によってコア体8、9の加熱部8c、9cを所定状態まで開き(
図13のS18、S19)、その後、モータ19によってコア体8、9の加熱部8c、9cをコイル22上方の初期位置まで上昇させ、動作を停止する(
図13のS20、S21、S22)。