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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-42300(P2021-42300A)
(43)【公開日】2021年3月18日
(54)【発明の名称】ウレアポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20210219BHJP
   C08L 75/02 20060101ALI20210219BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20210219BHJP
【FI】
   C08G18/32 025
   C08L75/02
   C08K5/1535
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2019-164777(P2019-164777)
(22)【出願日】2019年9月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「バイオスーパーエンジニアリングプラスチックの合成および有機電子材料への展開」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 達雄
(72)【発明者】
【氏名】高田 健司
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 拓哉
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK011
4J002EL066
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC28
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC16
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原料としてバイオベースモノマーを使用することができ、熱応答性ゲル、自己修復材料などに使用することができる材料の提供。
【解決手段】式(I):

で表わされる繰り返し単位を有するウレアポリマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【化2】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とするウレアポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有することを特徴とする自己修復性樹脂組成物。
【請求項3】
式(II):
【化3】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【化4】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とするマレイミドポリマー。
【請求項4】
式(III):
【化5】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【化6】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基、Yは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基または−Ph−(CH2)r−Ph−基(Phはフェニレン基、rは1〜4の整数を示す)、pおよびqは、それぞれ独立して各繰り返し単位の重合度を示す〕
で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレアポリマーに関する。さらに詳しくは、本発明は、ウレアポリマー、当該ウレアポリマーを含有する自己修復性樹脂組成物、当該ウレアポリマーが用いられてなるマレイミドポリマー、および前記修復性樹脂組成物をゲル化させてなるビス(ポリマレイミド)ポリマーに関する。本発明のウレアポリマー、自己修復性樹脂組成物、マレイミドポリマーおよびビス(ポリマレイミド)ポリマーは、いずれも、例えば、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することが期待される。
【背景技術】
【0002】
4−アミノ桂皮酸などの微生物による変換によって得られるバイオベースモノマーを原料とする樹脂として、4−アミノ桂皮酸の二量体または4−アミノ桂皮酸誘導体の二量体からなり、カルボキシル基がアルキル鎖で保護されていることにより、重合可能である高分子原料が重合されてなる高分子材料であって、主鎖にイミド結合、アミド結合、尿素結合、アミド結合およびイミド結合のいずれかを有する高分子材料(例えば、特許文献1の請求項1参照)、および特定構造を有するトルキシン酸ポリマー(例えば、特許文献2の請求項1参照)が提案されている。
【0003】
前記高分子材料およびトルキシン酸ポリマーは、いずれも、バイオ由来ポリマーであり、耐熱性および機械的強度に優れていることから、例えば、航空宇宙分野、自動車産業、鉄道車両、船舶などの用途に使用することが期待される。
【0004】
しかし、近年、バイオベースモノマーとして入手することができる2,5−ビス(アミノメチル)フランが原料として使用され、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用されるポリマーの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/073519号パンフレット
【特許文献2】特許第6483481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、バイオベースモノマーとして入手することができる2,5−ビス(アミノメチル)フランが原料として使用され、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用される自己修復性樹脂組成物およびポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)式(I):
【0008】
【化1】
【0009】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【0010】
【化2】
【0011】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とするウレアポリマー、
(2)前記(1)に記載のウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有することを特徴とする自己修復性樹脂組成物、
(3)式(II):
【0012】
【化3】
【0013】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【0014】
【化4】
【0015】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とするマレイミドポリマー、および
(4)式(III):
【0016】
【化5】
【0017】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【0018】
【化6】
【0019】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基、Yは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基または−Ph−(CH2)r−Ph−基(Phはフェニレン基、rは1〜4の整数を示す)、pおよびqは、それぞれ独立して各繰り返し単位の重合度を示す〕
で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマー
に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バイオベースモノマーとして入手することができる2,5−ビス(アミノメチル)フランが原料として使用され、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することができる自己修復性樹脂組成物およびポリマーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】製造例1で得られたポリアミドの熱重量分析の結果を示すグラフである。
図2】製造例2で得られたポリイミドの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】実施例1で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図4】実施例1で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図5】実施例1で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートである。
図6】実施例3で得られた2,4−トルエンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図7】実施例3で得られた2,4−トルエンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図8】実施例4で得られた2,6−トルエンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,6−TDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図9】実施例5で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図10】実施例5で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図11】実施例6で得られた1,4−フェニレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図12】実施例6で得られた1,4−フェニレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図13】実施例7で得られたで得られたm−キシリレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(m−XDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図14】実施例8で得られた1,5−ジイソシアネートナフタレート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(NDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図15】実施例9で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図16】実施例9で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図17】実施例9で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートを示すグラフである。
図18】実施例10で得られたイソホロンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図19】実施例10で得られたイソホロンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図20】実施例10で得られたイソホロンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートである。
図21】実施例11で得られた1,4−ブタンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−BDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図22】実施例12で得られたヘキサメチレンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図23】実施例13で得られた1,8−オクタンジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,8−ODI−PU)のFT−IRスペクトル示すグラフである。
図24】実施例14で得られたN−フェニレンマレイミドポリマー(MDI−PMI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図25】実施例14で得られたN−フェニレンマレイミドポリマー(MDI−PMI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図26】実施例15で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)の1H−NMRスペクトルを示すグラフである。
図27】実施例15で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図28】実施例16で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(1,3−PDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図29】実施例17で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(CDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図30】実施例18で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(IDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
図31】実験例2で用いられたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図32】実験例2で用いられたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)のDSC曲線を示すグラフである。
図33】実験例2で用いられた4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(DMMDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図34】実験例2で用いられた2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図35】実験例2で用いられた2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)のDSC曲線を示すグラフである。
図36】実験例2で用いられた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図37】実験例2で用いられた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)のDSC曲線を示すグラフである。
図38】実験例2で用いられた1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図39】実験例2で用いられた1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)のDSC曲線を示すグラフである。
図40】実験例2で用いられたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図41】実験例2で用いられたm−キシリレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(m−XDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図42】実験例2で用いられた1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(NDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図43】実験例2で用いられたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図44】実験例2で用いられた1,4−ブタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−BDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図45】実験例2で用いられたヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図46】実験例2で用いられたヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)のDSC曲線を示すグラフである。
図47】実験例2で用いられた1,8−オクタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,8−ODI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図48】実験例2で用いられたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)のTGA曲線を示すグラフである。
図49】実験例3でメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)が用いられた試験片の引張強度の測定結果を示すグラフである。
図50】実験例3で1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)が用いられた試験片の引張強度の測定結果を示すグラフである。
図51】実験例3でジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)が用いられた試験片の引張強度の測定結果を示すグラフである。
図52】実験例3でメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)が用いられた試験片の引張強度の測定結果を示すグラフである。
図53】実験例4でポリマーとしてメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)が用いられている試験片の光線透過率の測定結果を示すグラフである。
図54】実験例4でポリマーとしてジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)が用いられている試験片の光線透過率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)本発明の概要
本発明の大まかな概要を以下に示す。
本発明のウレアポリマーの原料として、式(IV):
【0023】
【化7】
【0024】
で表わされる2,5−ビス(アミノメチル)フラン(AMF)を用いることができる。2,5−ビス(アミノメチル)フランは、バイオマスから得ることができる化合物であるが、有機合成によって得られたものであってもよい。
【0025】
式(I)で表わされるウレアポリマーを調製する際に、2,5−ビス(アミノメチル)フランと反応させる化合物として、例えば、式:OCN−R−NCO(式中、Rは任意の有機基を示す)で表わされるジイソシアネート化合物を用いた場合、式(V):
【0026】
【化8】
【0027】
で表わされるように、2,5−ビス(アミノメチル)フランとジイソシアネート化合物とが反応し、式(I)で表わされるウレアポリマーが得られる。
【0028】
本発明の自己修復性樹脂組成物は、式(I)で表わされるウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有する。本発明の自己修復性樹脂組成物は、例えば、式(VI):
【0029】
【化9】
【0030】
(式中、nは重合度を示す)
で表わされるように、式(I)で表わされるウレアポリマーとビスマレイミドとは、室温(25℃程度)下では液状で併存している。
【0031】
本発明の自己修復性樹脂組成物を、例えば、50〜60℃程度の温度に加温すると、反応が矢印Aの方向に進行し、ウレアポリマーとビスマレイミドとが反応してウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーがゲル状で生成するようになる。
【0032】
また、ウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーを例えば、約100℃以上の温度に加熱すると、反応が矢印Bの方向に進行して液体化する。
【0033】
加熱によって液体化したウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーを、例えば、50〜60℃程度の温度よりも低い温度に冷却した場合には、反応が矢印Aの方向に進行し、ウレアポリマーとビスマレイミドとが反応し、ウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーがゲル状で生成するようになる。
【0034】
ウレアポリマーとビスマレイミドとを加温することによってウレアポリマーとビスマレイミドとのゲル状のコポリマーが生成する反応およびウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーをさらに加熱することによってウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーがウレアポリマーとビスマレイミドとに分離して液体化する反応は、可逆的に進行する。
【0035】
したがって、本発明の自己修復性樹脂組成物は、例えば、液状状態で充填材として使用し、その後に加温することによってウレアポリマーとビスマレイミドとのゲル状のコポリマーを生成し、必要により、当該ウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーをさらに加熱することにより、ウレアポリマーとビスマレイミドとのコポリマーがウレアポリマーとビスマレイミドとに分離させて液体化するので、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することが期待される。
【0036】
(2)ウレアポリマー
本発明のウレアポリマーは、前記したように、式(I):
【0037】
【化10】
【0038】
〔式中、Xは式:−R1−NH−(R1は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia):
【0039】
【化11】
【0040】
[R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R5は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す]で表わされる基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする。
【0041】
式(I)で表わされるウレアポリマーは、2,5−ビス(アミノメチル)フランとジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸もしくはその二無水物〔以下、シクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)という〕とを反応させることによって調製することができる。ジイソシアネート化合物およびシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0042】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、式(VII):
OCN−R6−NCO (VII)
(式中、R6は、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基、アルキレン基の炭素数が1〜4であるジシクロヘキシルアルキレン基または式(Ia)で表わされる基を示す)
で表わされるジイソシアネート化合物などを用いることができる。
【0043】
6が炭素数1〜12のアルキレン基であるジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
6が炭素数1〜4のアルキレン基を有していてもよい炭素数6〜14のアリーレン基であるジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−トルエンジイソシアネート)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−トルエンジイソシアネート)、m−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,6−ジイソシアネート、2,7−ジメチルナフタレン−1,6−ジイソシアネート、アントリレンジイソシアネート、フェナントリレンジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
6がアルキレン基の炭素数が1〜4であり、フェニレン基に炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいアルキレンジフェニレン基であるジイソシアネート化合物としては、例えば、式(VIIa):
【0046】
【化12】
【0047】
(式中、R6は、炭素数1〜4のアルキレン基、R7およびR8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされるジイソシアネート化合物などが挙げられる。式(VIIa)で表わされるジイソシアネート化合物の具体例としては、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、エチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、プロピレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ブチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルエタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
6が炭素数1〜4のアルキレン基を有するジシクロヘキシルアルキレン基であるジイソシアネート化合物としては、例えば、式(VIIb):
【0049】
【化13】
【0050】
(式中、R9は、炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるジイソシアネート化合物などが挙げられる。式(VIIb)で表わされるジイソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルエタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルプロパンジイソシアネート、ジシクロヘキシルブタンジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
6が式(Ia)で表わされる基を有するジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0052】
2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)との反応は、化学量論的に進行する。2,5−ビス(アミノメチル)フラン1モルあたりのジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)の量は、好ましくは0.8〜1.2モル、より好ましくは0.9〜1.1モル、さらに好ましくは0.95〜1.05モル、特に好ましくは1.0モルである。
【0053】
2,5−ビス(アミノメチル)フランおよびジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)は、2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを均一に反応させる観点から、それぞれ溶媒中で反応させることが好ましい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0054】
2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを混合する際には、例えば、2,5−ビス(アミノメチル)フランを溶媒に溶解させた溶液と、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)を溶媒に溶解させた溶液とを混合することが、2,5−ビス(アミノメチル)フランとジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを均一に反応させる観点から好ましい。溶媒100質量部あたりの2,5−ビス(アミノメチル)フランの量および溶媒100質量部あたりのジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)の量は、特に限定されないが、それぞれ、10〜100質量部程度であることが好ましい。
【0055】
2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)との反応温度は、2,5−ビス(アミノメチル)フランとジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを均一に反応させる観点から、0〜5℃程度であることが好ましい。また、2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0056】
2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とが反応すると、固体の析出物が生成する。生成した固体の析出物がウレアポリマーである。
【0057】
以上のようにして2,5−ビス(アミノメチル)フランと、ジイソシアネート化合物またはシクロブタンテトラカルボン酸(二無水物)とを反応させることにより、式(I)で表わされる繰り返し単位を有するウレアポリマーが得られる。
【0058】
ウレアポリマーの数平均分子量は、自己修復性を付与する観点から、5000〜40000であることが好ましい。ウレアポリマーの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0059】
(2)自己修復性樹脂組成物
本発明の自己修復性樹脂組成物は、式(I)で表わされるウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有することを特徴とする。
【0060】
本発明の自己修復性樹脂組成物は、式(I)で表わされるウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有しており、ウレアポリマーとビスマレイミドとは、室温(25℃程度)では液状で併存する。
【0061】
本発明の自己修復性樹脂組成物を、ゲル化温度(例えば、50〜60℃程度の温度)に加温したとき、ウレアポリマーとビスマレイミドとが反応し、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーがゲル状で生成する。ビス(ポリマレイミド)ポリマーをさらに液体化温度(例えば、90〜120℃程度の温度)に加熱すると、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーが液体化し、ウレアポリマーおよびビスマレイミドが生成する。式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーを液体化させてウレアポリマーおよびビスマレイミドが生成させた後、ゲル化温度以下の温度に冷却した場合、再度、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーがゲル状で生成する。
【0062】
したがって、本発明の式(I)で表わされるウレアポリマーおよびビスマレイミドを含有する自己修復性樹脂組成物は、液状であるので、例えば、間隙などに充填するための充填材として使用し、間隙などに充填した後、ゲル化温度に加温することによってゲル状のビス(ポリマレイミド)ポリマーを生成させることができ、必要により、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーをさらに液体化温度に加熱することにより、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーをウレアポリマーとビスマレイミドとに分離させて液体化させることができるので、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することができる。
【0063】
なお、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーのゲル化温度は、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーのゲル化が生じるときの温度を意味する。また、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーの液体化温度は、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーが加熱によって液体化するときの温度を意味する。式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーのゲル化温度および液体化温度は、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーの種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーを用いてゲル化温度および液体化温度を測定することが好ましい。
【0064】
ビスマレイミドとしては、例えば、式(VIII):
【0065】
【化14】
【0066】
〔式中、Yは、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基または−Ph−(CH2)r−Ph−基(Phはフェニレン基、rは1〜4の整数を示す)を示す〕
で表わされるビスマレイミドなどが挙げられる。
【0067】
炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が挙げられる。炭素数6〜14のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフタレン基、アントリレン基、フェナントリレン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
式(I)で表わされるウレアポリマー1モルあたりのビスマレイミドの量は、自己修復性を付与する観点から、好ましくは0.05〜3モル、より好ましくは0.08〜1モルである。
【0069】
ウレアポリマーおよびビスマレイミドは、ウレアポリマーとビスマレイミドとを均一に分散させる観点から、それぞれ溶媒に溶解させることが好ましい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ウレアポリマーとビスマレイミドを混合する際には、例えば、ウレアポリマーを溶媒に溶解させた溶液と、ビスマレイミドを溶媒に溶解させた溶液とを混合することが、ウレアポリマーとビスマレイミドとを均一に分散させる観点から好ましい。ウレアポリマー1gあたりの溶媒の量およびビスマレイミド1gあたりの溶媒の量は、特に限定されないが、それぞれ、3〜30mL程度であることが好ましい。
【0070】
ウレアポリマーとビスマレイミドとを混合する際の温度は、両者が反応することによってゲル化することを抑制する観点から、ゲル化温度よりも低い温度、例えば、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜35℃である。また、ウレアポリマーとビスマレイミドとを混合する際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0071】
以上のようにしてウレアポリマーとビスマレイミドとを混合することにより、本発明の自己修復性樹脂組成物が得られる。
【0072】
(3)ビス(ポリマレイミド)ポリマー
本発明のビス(ポリマレイミド)ポリマーは、前記したように、式(III):
【0073】
【化15】
【0074】
(式中、Xは前記と同じであり、pおよびqは、それぞれ独立して各繰り返し単位の重合度を示す)
で表わされる構造を有する。
【0075】
ビス(ポリマレイミド)ポリマーは、前記自己修復性樹脂組成物をゲル化温度に加熱することによって容易に調製することができる。前記自己修復性樹脂組成物の加熱温度は、ビス(ポリマレイミド)ポリマーを効率よく調製する観点から、ゲル化温度以上の温度、例えば、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、生成したビス(ポリマレイミド)ポリマーが溶液化することを防止する観点から、ビス(ポリマレイミド)ポリマーの液体化温度よりも低い温度、例えば、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。前記自己修復性樹脂組成物を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0076】
以上のようにして前記自己修復性樹脂組成物をゲル化温度に加熱することにより、ウレアポリマーがビスマレイミドによって架橋されるのでゲル化され、ビス(ポリマレイミド)ポリマーがゲル状で得られる。
【0077】
ビス(ポリマレイミド)ポリマーは、ビスマレイミドによる架橋構造を有することから、その分子量を測定することが困難である。したがって、ビス(ポリマレイミド)ポリマーの数平均分子量は、当該ビス(ポリマレイミド)ポリマーの原料として用いられるウレアポリマーおよびビスマレイミドの量に基づいて推定すると、ウレアポリマーおよびビスマレイミドの種類などによって相違するが、通常、10000〜80000程度であるものと考えられる。式(III)に記載のpおよびqは、それぞれ独立して式(III)に記載の各繰り返し単位の重合度を示すが、より具体的にはビス(ポリマレイミド)ポリマーの数平均分子量を満たす整数である。式(III)に記載のpおよびqは、通常、それぞれ各繰り返し単位の数平均分子量5000〜40000を満足する整数である。
【0078】
前記したように、ビス(ポリマレイミド)ポリマーは、液体化温度以上の温度に加熱することによって液体化してウレアポリマーおよびビスマレイミドに分離し、その後、前記液体化温度よりも低い温度、例えば、室温に冷却した場合には、ゲル状のビス(ポリマレイミド)ポリマーが生成する。
【0079】
(4)マレイミドポリマー
本発明のマレイミドポリマーは、前記したように、式(II):
【0080】
【化16】
【0081】
(式中、Xは前記と同じ)
で表わされる繰り返し単位を有する。
【0082】
本発明のマレイミドポリマーは、例えば、式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとを反応させることによって調製することができる。
【0083】
式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとの反応は、化学量論的に進行する。N−フェニレンマレイミド1モルあたりの式(I)で表わされるウレアポリマーの量は、1〜1.5モルであることが好ましい。
【0084】
式(I)で表わされるウレアポリマーおよびN−フェニレンマレイミドとは、均一に反応させる観点から、それぞれ溶媒中で反応させることが好ましい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、N−メチルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとを混合する際には、例えば、式(I)で表わされるウレアポリマーを溶媒に溶解させた溶液と、N−フェニレンマレイミドを溶媒に溶解させた溶液とを混合することが、式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとを均一に反応させる観点から好ましい。溶媒100質量部あたりの式(I)で表わされるウレアポリマーの量および溶媒100質量部あたりのN−フェニレンマレイミドの量は、特に限定されないが、それぞれ、100〜300質量部程度であることが好ましい。
【0085】
式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとの反応温度は、均一に反応させる観点から、40〜80℃程度であることが好ましい。また、式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとを反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0086】
式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとが反応すると、固体の析出物が生成する。生成した固体の析出物がマレイミドポリマーである。
【0087】
以上のようにして式(I)で表わされるウレアポリマーとN−フェニレンマレイミドとを反応させることにより、式(II)で表わされる繰り返し単位を有するマレイミドポリマーが得られる。
【0088】
マレイミドポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、通常、10000〜50000程度である。マレイミドポリマーの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、バイオベースモノマーとして入手することができる2,5−ビス(アミノメチル)フランを原料として用いることができ、当該2,5−ビス(アミノメチル)フランを用いることにより、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することができる自己修復性樹脂組成物およびポリマーが得られる。
【0090】
本発明の自己修復性樹脂組成物をキャスティングなどによってフィルム化させ、得られたフィルムをゲル化温度に加熱することにより、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーからなるゲル状の自己修復性フィルムとすることができる。また、本発明の自己修復性樹脂組成物を所定の成形型内に充填し、ゲル化温度以上の温度に加熱することにより、式(III)で表わされるビス(ポリマレイミド)ポリマーからなるゲル状の成形体を得ることができる。
【実施例】
【0091】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0092】
なお、以下の各実施例および比較例で得られた化合物の物性は、以下の方法に基づいて調べた。
【0093】
〔モノマーおよびポリマーの構造〕
モノマーおよびポリマーの構造は、核磁気共鳴(1H−NMR)およびフ−リエ変換赤外分光(FT−IR)によって決定した。
【0094】
核磁気共鳴(1H−NMR)は、核磁気共鳴分光装置〔ブルカー(Bruker)社製、商品名:AVANCE III HD NMR Spectrometer 400MHz〕を用い、サンプル5mgをジメチルスルホキシド−d60.5mLに溶解させ、得られた溶液をガラス製サンプルチュ−ブに移し、25℃の温度で積算回数16にて測定した。
【0095】
フ−リエ変換赤外分光(FT−IR)は、フ−リエ変換型赤外分光装置〔バーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製、品番: Spectrum 100 (ATR法)〕を用い、測定波数領域を400cm-1〜4000cm-1とし、積算回数4回にて測定した。
【0096】
〔モノマーの分子量およびポリマーの平均分子量〕
モノマーの分子量およびポリマーの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によって測定した。より具体的には、装置として送液ポンプユニット〔日本分光(株)製、品番:PU-2080〕、カラムオーブン〔ジーエル・サイエンス(GL Science)社製、品番:CO 631A、設定温度:40 ℃〕、紫外可視検出器〔日本分光(株)製、品番:UV−2075〕、示差屈折計〔日本分光(株)製、品番:RI-2031〕、カラム〔昭和電工(株)製、商品名:Shodex SB−806 MHQ、2本〕、標準物質(ポリメチルメタクリレートスタンダ−ド、分子量:30701、7360、18500、68800、211000、569000、1050000)、移動相(0.01mol/LのLiBrのN,N−ジメチルスルホキシド溶液)を用い、溶液の流速を1.0mL/minに調節してモノマーの分子量およびポリマーの平均分子量を測定した。
【0097】
製造例1(ポリアミドの調製)
式:
【0098】
【化17】
【0099】
(式中、nは重合度を示す)
で表わされる反応式に基づき、以下の方法により、ポリアミドを調製した。
【0100】
2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液と、4,4’−ジアセトアミド−α−トルキシル酸410.4mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液とを室温下で大気中にて混合することにより、混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液を3時間静置したところ、析出物が生じた。得られた析出物を濾過することによって回収し、減圧下(約10kPa)で80℃に加熱することにより、ポリアミドを得た。
【0101】
前記で得られたポリアミドの熱重量分析を行なった。その結果を図1に示す。なお、熱重量分析の測定条件は、以下のとおりである。
【0102】
〔熱重量分析の測定条件〕
熱重量分析には、熱重量−示差熱同時測定装置〔(株)日立ハイテクノロジ−ズ製、商品名:STA7200〕を用いた。窒素ガス雰囲気中にて昇温速度10℃/minで800℃までポリマーを加熱することにより、熱重量分析を行なった。
【0103】
製造例2(ポリイミドの調製)
式:
【0104】
【化18】
【0105】
(式中、nは重合度を示す)
で表わされる反応式に基づき、以下の方法により、ポリイミドを調製した。
【0106】
2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液と、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196.1mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液とを室温下で大気中にて混合することにより、混合溶液を調製した。前記で得られた混合溶液は、当初、透明であったが、しだいに白濁になった。混合溶液を調製してから48時間経過後に当該混合溶液を濾過することにより、ポリアミド酸を回収した。
【0107】
次に、前記で得られたポリアミド酸を100℃から250℃まで段階的に加熱することによってイミド化させてポリイミドを得た。前記で得られたポリイミドの赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【0108】
実施例1〔メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート250.3mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0109】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の繊維状の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0110】
【化19】
【0111】
で表わされる繰り返し単位を有するメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)365.1mgを得た(収率:97.0%)。前記で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)の数平均分子量は7350であり、重量平均分子量は20871であり、分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.84であった。前記で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図3に、FT−IRスペクトルを図4に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートを図5に示す。
【0112】
実施例2〔4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン278.3mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタンと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0113】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0114】
【化20】
【0115】
で表わされる繰り返し単位を有する4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(DMMDI−PU)191.2mgを得た(収率:47.3%)。前記で得られた4,4’−ジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(DMMDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。
【0116】
実施例3〔2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
2,4−トルエンジイソシアネート174.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、2,4−トルエンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0117】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0118】
【化21】
【0119】
で表わされる繰り返し単位を有する2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)258.3mgを得た(収率:86.0%)。前記で得られた2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた2,4−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,4−TDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図6に、FT−IRスペクトルを図7に示す。
【0120】
実施例4〔2,6−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
2,6−トルエンジイソシアネート174.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、2,6−トルエンジイソシアネート)と2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0121】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0122】
【化22】
【0123】
で表わされる繰り返し単位を有する2,6−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,6−TDI−PU)278.4mgを得た(収率:92.7%)。前記で得られた2,6−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,6−TDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた2,6−トルエンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(2,6−TDI−PU)のFT−IRスペクトルを図8に示す。
【0124】
実施例5〔1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
1,3−フェニレンジイソシアネート160.1mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、1,3−フェニレンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0125】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0126】
【化23】
【0127】
で表わされる繰り返し単位を有する1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)287.7mgを得た(収率:100%)。前記で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図9に、FT−IRスペクトルを図10に示す。
【0128】
実施例6〔1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
1,4−フェニレンジイソシアネート160.1mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、1,4−フェニレンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0129】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の繊維状の固体を回収した。前記で得られた白色の固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0130】
【化24】
【0131】
で表わされる繰り返し単位を有する1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)264.1mgを得た(収率:92.2%)。前記で得られた1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,4−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−PDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図11に、FT−IRスペクトルを図12に示す。
【0132】
実施例7〔m−キシリレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
m−キシリレンジイソシアネート188.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、m−キシリレンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0133】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0134】
【化25】
【0135】
で表わされる繰り返し単位を有するm−キシリレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(m−XDI−PU)285.3mgを得た(収率:90.8%)。前記で得られたm−キシリレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(m−XDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られたm−キシリレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(m−XDI−PU)のFT−IRスペクトルを図13に示す。
【0136】
実施例8〔1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト210.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、1,5−ジイソシアネートナフタレ−トと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0137】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0138】
【化26】
【0139】
で表わされる繰り返し単位を有する1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(NDI−PU)317.6mgを得た(収率:94.4%)。前記で得られた1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(NDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,5−ジイソシアネートナフタレ−ト−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(NDI−PU)のFT−IRスペクトルを図14に示す。
【0140】
実施例9〔ジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
ジシクロヘキシルメタン262.4mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、ジシクロヘキシルメタンと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0141】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0142】
【化27】
【0143】
で表わされる繰り返し単位を有するジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)377.9mgを得た(収率:97.3%)。前記で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)の数平均分子量は8006であり、重量平均分子量は21190であり、分子量分散度は2.65であった。前記で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(CDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図15に、FT−IRスペクトルを図16に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートを図17に示す。
【0144】
実施例10〔イソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
イソホロンジイソシアネート222.3mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、イソホロンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0145】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0146】
【化28】
【0147】
で表わされる繰り返し単位を有するイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)317.6mgを得た(収率:91.1%)。前記で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)の数平均分子量は29587であり、重量平均分子量は102417であり、分子量分散度は3.46であった。前記で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)の1H−NMRスペクトルを図18に、FT−IRスペクトルを図19に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)のチャートを図20に示す。
【0148】
実施例11〔1,4−ブタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
1,4−ブタンジイソシアネート140.1mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、1,5−ジイソシアネートナフタレ−トと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0149】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0150】
【化29】
【0151】
で表わされる繰り返し単位を有する1,4−ブタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−BDI−PU)252.2mgを得た(収率:94.7%)。前記で得られた1,4−ブタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−BDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,4−ブタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,4−BDI−PU)のFT−IRスペクトルを図21に示す。
【0152】
実施例12〔ヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
ヘキサメチレンジイソシアネート168.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、ヘキサメチレンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0153】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0154】
【化30】
【0155】
で表わされる繰り返し単位を有するヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)292.7mgを得た(収率:99.4%)。前記で得られたヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られたヘキサメチレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,6−HDI−PU)のFT−IRスペクトルを図22に示す。
【0156】
実施例13〔1,8−オクタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアの調製〕
1,8−オクタンジイソシアネート196.3mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液を氷水上で撹拌しながら当該溶液に2,5−ビス(アミノメチル)フラン126.2mg(1.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.0mLに溶解させた溶液をゆっくりと滴下することにより、1,8−オクタンジイソシアネートと2,5−ビス(アミノメチル)フランとの重合反応を行なった。
【0157】
反応終了後、得られた反応溶液をメタノ−ル300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の固体を回収した。前記で得られた固体を減圧下(約10kPa)で乾燥させることにより、式:
【0158】
【化31】
【0159】
で表わされる繰り返し単位を有する1,8−オクタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,8−ODI−PU)287.6mgを得た(収率:89.2%)。前記で得られた1,8−オクタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,8−ODI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,8−オクタンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,8−ODI−PU)のFT−IRスペクトルを図23に示す。
【0160】
実施例14〔N−フェニレンマレイミドポリマーの調製〕
実施例1で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)100.0mg(264.9 mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液と、N−フェニレンマレイミド32.2mg(185.9mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させた溶液とを混合し、得られた混合溶液を60℃に加熱し、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)とN,N−ジメチルアセトアミドを反応させた。
【0161】
反応終了後、得られた反応溶液をアセトン300mLに撹拌下で滴下し、析出した白色の繊維状の固体を回収した。得られた白色の固体を減圧下で(約10kPa)乾燥させることにより、式:
【0162】
【化32】
【0163】
で表わされる繰り返し単位を有するN−フェニレンマレイミド(MDI−PMI−PU)84.0mgを得た(収率:63.5%)。前記で得られたN−フェニレンマレイミドポリマー(MDI−PMI−PU)の1H−NMRスペクトルを図24に、FT−IRスペクトルを図25に示す。
【0164】
実施例15〔メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンの調製〕
実施例1で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)100.0mg(264.9mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液と、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン9.5mg(26.5mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させた溶液とを混合し、得られた混合溶液を50℃に加熱することにより、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(MDI−PU)と4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンを反応させた。
【0165】
反応終了後、得られたゲル状の黄色の反応溶液を100℃に加熱して再度溶液化させることにより、式:
【0166】
【化33】
【0167】
で表わされる繰り返し単位を有するメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)を得た。前記で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られたメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(MDI−BMI−PU)の1H−NMRスペクトルを図26に、FT−IRスペクトルを図27に示す。
【0168】
実施例16〔1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマーの調製〕
実施例5で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(1,3−PDI−PU)100.0mg(349.3mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液と、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン12.5mg(34.9mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させた溶液とを混合し、得られた混合溶液を50℃に加熱することにより、1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンを反応させた。
【0169】
反応終了後、得られたゲル状の反応溶液を100℃に加熱して再度溶液化させることにより、式:
【0170】
【化34】
【0171】
で表わされる繰り返し単位を有する1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(1,3−PDI−BMI−PU)を得た。前記で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(1,3−PDI−BMI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られた1,3−フェニレンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(1,3−PDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを図28に示す。
【0172】
実施例17〔ジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマーの調製〕
実施例9で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア100.0mg(257.4mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液と、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン9.2mg(25.7 mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させた溶液とを混合し、得られた混合溶液を50℃に加熱することにより、ジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンを反応させた。
【0173】
反応終了後、得られたゲル状の反応溶液を100℃に加熱して再度溶液化させることにより、式:
【0174】
【化35】
【0175】
で表わされる繰り返し単位を有するジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(CDI−BMI−PU)を得た。前記で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(CDI−BMI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られたジシクロヘキシルメタン−2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマー(CDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを図29に示す。
【0176】
実施例18〔イソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンポリマーの調製〕
実施例10で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア(IDI−PU)100.0mg(287.0mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド1.5mLに溶解させた溶液と、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン10.3mg(28.7mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド0.5mLに溶解させた溶液とを混合し、得られた混合溶液を50℃に加熱することにより、イソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレアと4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンを反応させた。
【0177】
反応終了後、得られたゲル状の反応溶液を100℃に加熱して再度溶液化させることにより、式:
【0178】
【化36】
【0179】
で表わされる繰り返し単位を有するイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(IDI−BMI−PU)を得た。前記で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(IDI−BMI−PU)の分子量は、溶媒(N,N−ジメチルスルホキシド)に対して不溶であるため、測定することができなかった。前記で得られたイソホロンジイソシアネート2,5−ビス(アミノメチル)フランポリウレア−4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(IDI−BMI−PU)のFT−IRスペクトルを図30に示す。
【0180】
実験例1
各実施例で得られたポリマー3mgを表1に示す溶媒1mLに添加することにより、混合物を得た。前記で得られた混合物を室温(約25℃)で1時間撹拌することにより、ポリマー分散体を調製した後、ポリマーが溶解するかどうかを確認した。ポリマーが溶媒に溶解しなかった場合には、前記ポリマー分散体をヒートガンで100℃に加熱することにより、ポリマーが溶媒に溶解するかどうかを調べた。
【0181】
次に、溶媒に対するポリマーの溶解性を以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
〔評価基準〕
+:室温でポリマーが溶媒に溶解する。
±:100℃に加熱することにより、ポリマーが溶媒に溶解する。
−:100℃に加熱してもポリマーが溶媒に溶解しない。
【0182】
なお、表1に記載の溶媒は、以下のことを意味する。
NMP:N−メチルピロリドン
DMAc:ジメチルアセテート
DMSO:ジメチルスルホキシド
THF:テトラヒドロフラン
Acetone:アセトン
CHCl3:クロロホルム
CH2Cl2:ジクロロメタン
EtOAc:酢酸エチル
2O:水
【0183】
【表1】
【0184】
実験例2
各実施例で得られたポリマーの熱的性質を熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)によって調べた。
【0185】
(1)熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、示差熱熱重量同時測定装置〔(株)日立ハイテクサイエンス製、品番:STA7200〕を用い、以下の測定条件および測定方法に基づいて調べた。
【0186】
〔測定条件〕
・サンプル(ポリマー)の量:6〜8mg
・雰囲気:窒素ガス(窒素ガスの流量:200mL/min)
〔測定方法〕
プラチナパンを使用し、リファレンスをブランク(サンプルなし)とし、測定前に25℃から200℃まで昇温速度5℃/minで加熱し、200℃で20分間保持した後、保持時間を設けることなく、200℃から25℃まで降温速度20℃/minで冷却した。
【0187】
熱重量分析(TGA)は、サンプルを25℃から800℃まで昇温速度5℃/minで加熱することによって行ない、サンプルの質量が1%、5%または10%減少したときの温度を測定した。サンプルの質量が1%減少したときの温度をTd1とし、サンプルの質量が5%減少したときの温度をTd5とし、サンプルの質量が10%減少したときの温度をTd10とした。
【0188】
(2)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)は、示差走査熱量計〔(株)日立ハイテクサイエンス製、品番:X−DSC7000T〕を用い、以下の測定条件および測定方法に基づいて調べた。
【0189】
〔測定条件〕
・サンプル(ポリマー)の量:3〜5mg
・雰囲気:窒素ガス(窒素ガスの流量:40mL/min)
〔測定方法〕
アルミニウムパンを使用し、酸化アルミニウム3〜5mgをリファレンスとし、25℃から昇温速度10℃/minで昇温し、220〜250℃の範囲のサンプルの分解温度(最高温度)で5分間保持し、最高温度から降温速度10℃/minで25℃まで冷却し、25℃で10分間保持する一連の捜査を1サイクルとし、このサイクルを3回繰り返して示差走査熱量を測定し、3回目のサイクルの試験結果を用いた。
【0190】
MDI−PUのTGA曲線を図31に、MDI−PUのDSC曲線を図32に、DMMDI−PUのTGA曲線を図33に、2,4−TDI−PUのTGA曲線を図34に、2,4−TDI−PUのDSC曲線を図35に、1,3−PDI−PUのTGA曲線を図36に、1,3−PDI−PUのDSC曲線を図37に、1,4−PDI−PUのTGA曲線を図38に、1,4−PDI−PUのDSC曲線を図39に、IDI−PUのTGA曲線を図40に、m−XDI−PUのTGA曲線を図41に、NDI−PUのTGA曲線を図42に、CDI−PUのTGA曲線を図43に、1,4−BDI−PUのTGA曲線を図44に、1,6−HDI−PUのTGA曲線を図45に、1,6−HDI−PUのDSC曲線を図46に、1,8−ODI−PUのTGA曲線を図47に、MDI−BMI−PUのTGA曲線を図48に示す。
【0191】
各実施例で得られたポリマーの熱分解温度を表2に示す。
【0192】
【表2】
【0193】
表2に示された結果から、各実施例で得られたポリマーは、熱分解温度が高いことから、耐熱性に優れていることがわかる。
【0194】
実験例3
各実施例で得られたポリマーの引張強度を調べた。より具体的には、各実施例で得られたポリマー200mgをN,N−ジメチルアセトアミド1.0〜2.0mLに溶解させ、得られた溶液をガラスシャーレ上にキャスト法で塗工することにより、フィルムを形成させ、大気中にてホットスターラー上で10分程度加熱することによって乾燥させた。
【0195】
前記で得られたフィルムをカッターナイフで縦5mm、横40mmの長方形に切断し、得られた試験片の厚さ、長さおよび幅をマイクロメーター〔(株)ミツトヨ製、商品名:クイックマイクロ〕および電子ノギス〔(株)ミツトヨ製〕で測定した。
【0196】
前記試験片の一端の縦5mm、横10mmの長方形の部分を引張部分とし、試験片の両面に粘着テ−プを貼り、引張試験機〔インストロン(INSTRON)社製、万能材料試験機、品番:3365〕のチャックに取り付けて引張強度を調べた。
【0197】
ポリマーとして、MDI−PUが用いられた試験片の引張強度の測定結果を図49に、1,3−PDI−PUが用いられた試験片の引張強度の測定結果を図50に、CDI−PUが用いられた試験片の引張強度の測定結果を図51に、MDI−BMI−PUが用いられた試験片の引張強度の測定結果を図52に示す。
【0198】
また、各ポリマーが用いられた試験片の引張強度、破断時の伸びおよびヤング率を図3に示す。
【0199】
【表3】
【0200】
表3に示された結果から、各ポリマーからなる試験片は、引張強度が約16MPa以上であり、破断時の伸びが約8.5%以上であり、ヤング率が約180MPa以上であることがわかる。
【0201】
実験例4
実験例3でポリマーとしてMDI−PUまたはCDI−PUが用いられている試験片の波長300〜800nmにおける光線透過率を紫外可視分光測定器〔日本分光(株)製、商品名:Jasco V670〕で調べた。
【0202】
ポリマーとしてMDI−PUが用いられている試験片の光線透過率の測定結果を図53に、ポリマーとしてCDI−PUが用いられている試験片の光線透過率の測定結果を図54に示す。
【0203】
図53および図54に示された結果から、前記試験片は、いずれも波長500nmにおける光線透過率が60%以上であることから、可視光線の透過性が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明のウレアポリマー、自己修復性樹脂組成物、マレイミドポリマーおよびビス(ポリマレイミド)ポリマーは、いずれも、例えば、熱応答性ゲル、自己修復材料などとして使用することが期待される。

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