【解決手段】光学部品の移載機は吸着コレット10を備える。吸着コレット10は、先端部分の長手方向側面に形成された基準平面11と、基準平面11中に形成され、光学部品を吸着する吸着口12と、吸着コレット10の先端から吸着口よりも離れた位置で、基準平面11から突出した第1突出部13と、第1突出部13の基準平面14と距離離れた位置から吸着コレット10の先端側に向けて突出した第2突出部を有する。光通信モジュールの製造方法は、基板上に光学部品を実装する際に、吸着コレット10を備えた移載機を用いている。
基板上に実装された複数の発光素子または受光素子と、前記基板上の前記複数の発光素子または受光素子のそれぞれに対応する位置に固定された複数の光学部品とを有する光通信モジュールの製造方法であって、
先端部分の長手方向側面に設けられた基準平面と、前記基準平面中に設けられた吸着口と、前記先端部分の先端から前記吸着口よりも離れた位置で、前記基準平面から突出した第1突出部と、前記第1突出部の前記基準平面と所定距離離れた位置から前記先端部分の先端側に向けて突出した第2突出部を有する吸着コレットにより、前記光学部品の光学面を前記基準平面に吸着する吸着工程と、
前記吸着コレットに吸着された前記光学部品を、前記基板の所定位置まで移動させ、前記所定位置の上方で前記基板に接触させることなく保持する保持工程と、
前記基準平面に吸着された前記光学部品の前記光学面と対向する光学面に光を照射することで得られる反射光を測定し、前記光学部品の位置を調整する工程と、
前記光学部品を搭載する基板の所定位置に接着用の樹脂を塗布する工程と、
前記光学部品と前記基板との隙間に充填された前記樹脂を硬化させることにより、前記光学部品を前記基板の前記所定位置に固定する固定工程とを含む、
光通信モジュールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の吸着コレットを光学部品の実装に応用しようとする場合、光学部品は1mm
2に満たない寸法しかない。従来の吸着コレットは本来電子デバイス(半導体チップ)用に開発されたものであり、その吸着口をコレット先端に下向きに有している。
【0007】
しかしながら、この吸着コレットを上記光学部品の搭載工程に適用する場合、次のような問題がある。各光学部品の光学面(光学基準面ともいう、例えば、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)フィルタ、ミラー、PBC(Polarization Beam Combiner:偏波ビームコンバイナ)の場合には反射面、レンズの場合にはレンズ主面)は全て基板の主面に対して垂直である。すなわち、mPD(monitor Photo Diode:モニター・フォトダイオード)のみはその光学面(受光面)が基板の主面に平行であるところ、他の全ての部品は押しなべて垂直な位置にその光学面がある。この場合、従来の吸着コレットを利用すると、mPD以外では部品の吸着面は光学面以外となるため、例えば、光学面と接する上面を吸着しなければならない。
【0008】
光学部品について、その主面(光学面)とその反対の面についての平行度は厳密に規定されている。特に、WDMフィルタ、λ/2波長板、PBCでは両面が非平行になると、出射光が入射光と非平行となるので好ましくないため、製品の一仕様として厳密に規定されている。ところが、通常、光学部品の主面とその主面に接する上面との直交性(直角性)については規定されていない。この直角性を製品仕様に含めた場合には、製品価格が格段に上昇してしまう。したがって、光学面との直角性が不確実な上面を吸着コレットの先端で吸着した場合には、部品の光学面と基板との直角性が全く維持されないことになる。
【0009】
このように、吸着コレットの先端で部品上面を吸着する場合、部品光学面のLD光軸に対する角度(向き)が全く補償されない。吸着コレットに吸着させる瞬間の部品の状態や、吸引速度等により、吸着コレットで吸着した直後の部品の角度は、たとえ吸着コレットに角度についての指標(index)やマークなどを設けていたとしても、その角度は不定になってしまう。しかし、光送信モジュールでは、これらの部品の光学面のLD光軸に対する角度が最も厳密に規定されなくてはならない。
【0010】
また、光学部品の光学面を吸着コレットで吸引する場合であっても、基板に塗布した樹脂の位置や、光学部品を樹脂表面に下した位置によって、光学部品に傾きが生じる場合がある。光学部品に傾きが生じる現象は、光学部品の上面が光学面に対して斜めとなっている場合に生じやすい。また、光学部品の幅(光学面とこの光学面が対向する反対側の面との距離)が、吸着コレットの基準平面に直交して設けられた押さえ面に対して広く、光学部品の中心に力をかけられていない場合にも、光学部品に傾きが生じやすい。さらに、樹脂の塗布位置がずれている場合にも、光学部品に傾きが生じやすい。その原因は、吸着コレット、光学部品、および、光学部品と樹脂との接点のバランスが崩れることに起因していると考えられる。
【0011】
なお、吸着ロッドの下端両側に被搬送物の高さより低い側壁を形成した吸着コレットを用いた場合は、光学部品の位置決めをオートコリメータ等で位置合わせを行う場合に、側壁が光をさえぎるために、正確な位置決めができなくなるという問題がある。
【0012】
本開示は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、光学部品の切り出し精度によらず、光学部品を高精度に実装できる、光学部品の移載機および光通信モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る光学部品の移載機は、吸着コレットを備えた光学部品の移載機であって、前記吸着コレットは、先端部分の長手方向側面に設けられた基準平面と、前記基準平面中に設けられ、前記光学部品を吸着する吸着口と、前記吸着コレットの先端から前記吸着口よりも離れた位置で、前記基準平面から突出した第1突出部と、前記第1突出部の前記基準平面と所定距離離れた位置から前記吸着コレットの先端側に向けて突出した第2突出部を有する。
【0014】
また、本開示に係る光通信モジュールの製造方法は、基板上に実装された複数の発光素子または受光素子と、前記基板上の前記複数の発光素子または受光素子のそれぞれに対応する位置に固定された複数の光学部品とを有する光通信モジュールの製造方法であって、先端部分の長手方向側面に設けられた基準平面と、前記基準平面中に設けられた吸着口と、前記先端部分の先端から前記吸着口よりも離れた位置で、前記基準平面から突出した第1突出部と、前記第1突出部の前記基準平面と所定距離離れた位置から前記先端部分の先端側に向けて突出した第2突出部を有する吸着コレットにより、前記光学部品の光学面を前記基準平面に吸着する吸着工程と、前記吸着コレットに吸着された前記光学部品を、前記基板の所定位置まで移動させ、前記所定位置の上方で前記基板に接触させることなく保持する保持工程と、前記基準平面に吸着された前記光学部品の前記光学面と対向する光学面に光を照射することで得られる反射光を測定し、前記光学部品の位置を調整する工程と、前記光学部品を搭載する基板の所定位置に接着用の樹脂を塗布する工程と、前記光学部品と前記基板との隙間に充填された前記樹脂を硬化させることにより、前記光学部品を前記基板の前記所定位置に固定する固定工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、光学部品の光学面を確実に吸着することができ、光学部品の切り出し精度によらず、光学部品を高精度に実装することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る光学部品の移載機は、吸着コレットを備えた光学部品の移載機であって、前記吸着コレットは、先端部分の長手方向側面に設けられた基準平面と、前記基準平面中に設けられ、前記光学部品を吸着する吸着口と、前記吸着コレットの先端から前記吸着口よりも離れた位置で、前記基準平面から突出した第1突出部と、前記第1突出部の前記基準平面と所定距離離れた位置から前記吸着コレットの先端側に向けて突出した第2突出部を有する。
【0018】
この構成により、光学部品の光学面を確実に吸着することができ、光学部品の切り出し精度によらず、光学部品を高精度に実装することができる。
【0019】
(2)前記吸着口が、前記基準平面において前記第2突出部の先端よりも吸着コレットの先端側に設けられていることが望ましい。
この構成により、光学部品の上面が光学面に対して傾斜していたとしても、光学部品を確実に吸着することが可能となる。
【0020】
(3)前記基準平面と前記第2突出部との距離が、前記光学部品が前記基準平面に接触した際に、前記光学部品の前記第2突出部側の前記第2突出部に沿った上面距離よりも小さく、該上面距離の2分の1以上であることが望ましい。
この構成により、吸着コレットの第2突出部の先端によって光学部品の上面を押さえることができ、光学部品の光学面が吸着コレットの基準平面から離れることがない。
【0021】
(4)前記第2突出部の先端における前記吸着コレットの長手方向と前記第2突出部の突出方向とがなす面の断面が曲線形状であってもよい。
この構成により、光学部品の上面と光学面とのなす角度にばらつきがあった場合でも、第2突出部の先端が光学部品の上面を断面で見た場合に一点で押さえることが可能となる。
【0022】
(5)本開示の一態様に係る光通信モジュールの製造方法は、基板上に実装された複数の発光素子または受光素子と、前記基板上の前記複数の発光素子または受光素子のそれぞれに対応する位置に固定された複数の光学部品とを有する光通信モジュールの製造方法であって、先端部分の長手方向側面に設けられた基準平面と、前記基準平面中に設けられた吸着口と、前記先端部分の先端から前記吸着口よりも離れた位置で、前記基準平面から突出した第1突出部と、前記第1突出部の前記基準平面と所定距離離れた位置から前記先端部分の先端側に向けて突出した第2突出部を有する吸着コレットにより、前記光学部品の光学面を基準平面に吸着する吸着工程と、前記吸着コレットに吸着された前記光学部品を、前記基板の所定位置まで移動させ、前記所定位置の上方で前記基板に接触させることなく保持する保持工程と、前記基準平面に吸着された前記光学部品の前記光学面と対向する光学面に光を照射することで得られる反射光を測定し、前記光学部品の位置を調整する工程と、前記光学部品を搭載する基板の所定位置に接着用の樹脂を塗布する工程と、前記光学部品と前記基板との隙間に充填された前記樹脂を硬化させることにより、前記光学部品を前記基板の前記所定位置に固定する固定工程とを含む。
【0023】
この構成により、光学部品の光学面を確実に吸着することができ、光学部品の切り出し精度によらず、光学部品を高精度に実装した光通信モジュールを得ることができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しながら、本開示の光学部品の移載機および光通信モジュールの製造方法に係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0025】
図1は、光送信モジュールの光学系近傍の一構成例を示す模式図である。
光送信モジュール100は、基板(キャリアともいう)111上に、4チャンネルドライバ101で駆動される4個のLD102を搭載し、これら4個のLD102から出射される光信号(λ1〜λ4:波長がそれぞれ異なる)を多重化して出力する。基板111上には、4チャンネルドライバ101、4個のLD102の他に、4個の集光レンズ103、4個のmPD104、BS(Beam Splitter)105、コリメートレンズ106、WDMフィルタ(波長分割多重フィルタ)107、λ/2波長板108は、ミラー109、および、PBC110を備えている。
【0026】
各LD102から出射された光信号λ1〜λ4の波長は、CWDM規格(1310nm,1330nm,…,以下20nm間隔)に準ずる。このような極めて小さな隣接波長間隔を有する複数の信号光を多重化するに際し、WDMフィルタ107では隣接する波長に対する選択比を確保するのが難しくなる。
【0027】
4個のLD102から出射された信号光は、4個の集光レンズ103で一旦集光された後に、mPD104に入力される。mPD104は4連のBS105上に搭載されており、BS105は集光レンズ103からの光を二分し、一方を基板111の主面に垂直な方向、つまり、mPD104の方向に反射させ、他方を透過させる。BS105は二つのプリズムを貼り合わせたものであり、二つのビームの強度比は二つのプリズムの界面の特性で決定される。例えば、反射光:透過光は1:9の比となる。
【0028】
上記において、透過光が主成分であり、これは次のコリメートレンズ106に入力される。集光レンズ103のmPD104側の焦点とコリメートレンズ106のmPD104側の焦点とは概ね一致している。これにより、後段の光学系の結合効率が高まると同時に各光学部品のアライメントが容易となる。コリメートレンズ106を透過した光は実質コリメート光(平行光)に変換され、一方の一群の光信号λ3とλ4はミラー109で全反射され、その光軸がほぼ90°曲げられる。他の一群の光信号λ1とλ2はそれぞれWDMフィルタ107に入力される。WDMフィルタ107では、コリメートレンズ106を直進した光信号λ1,λ2と、コリメートレンズ106を透過後にミラー109で反射された光信号λ3,λ4とを合成する。
【0029】
すなわち、WDMフィルタ107は第1のWDMフィルタ107aと第2のWDMフィルタ107bとからなる。第1のWDMフィルタ107aに注目すると、光信号λ1を透過し、光信号λ3を反射する波長特性を有する多層膜からなる。第2のWDMフィルタ107bについても同様に光信号λ2と光信号λ4の関係において、透過/反射を有する光学多層膜からなる。このように、WDMフィルタ107を介することで、光信号λ1と光信号λ3の光、光信号λ2と光信号λ4の光が合波されその光軸を一致させる。
【0030】
次いで、光信号λ1とλ3を合波した光のみλ/2波長板108を通過させ、その偏光方向を90°回転させる。本光送信モジュール100では端面発光型のLDを想定している。この種のLDの出射光の偏光方向は実質活性層に平行である。すなわち、エピダウン/エピアップの実装形態に係らず、端面発光型LDでのその出射光の偏光方向はチップ表面(裏面)に平行となる。したがって、本光送信モジュール100では基板111の主面に平行な方向にλ1〜λ4の光は偏光している。
【0031】
集光レンズ103、BS105、コリメートレンズ106、WDMフィルタ107、及びミラー109は偏光方向に作用しないので、WDMフィルタ107を出射した二つの合波光の偏光方向は基板111の主面に平行である。そして、λ1,λ3の合波光をλ/2波長板108を通過させることで、その偏光方向を基板111の主面に垂直な方向に変換する。
【0032】
上記のような偏光成分を有する二つの合波光をPBC110に入射させることで、これらを合波することができる。具体的には、光信号λ1,λ3の合波光はそのまま直進し、PBC110に入射する。一方、光信号λ2,λ4の合波光はミラー109によりその進行方向が90°変換されて、PBC110に入射する。
【0033】
この光学系において、光信号λ1,λ3の合波光がp波であり、光信号λ2,λ4の合波光がs波に相当する。PBC110は、s波、p波についてその反射/透過特性に大きな差を持たせることで、二つの合波光を効率よく合波することができる。すなわち、本例のPBC110は、s波(光信号λ2+λ4)に大きな反射率(小さな透過率)、p波(光信号λ1+λ3)に大きな透過率(小さな反射率)を持たせている。以上のような光学系により複数のLD102の出射光を効率良く合波して出力することができる。
【0034】
しかしながら、上記光学系は多数の光学部品を基板111上に搭載する必要がある。すなわち、8個のレンズ(集光レンズ103及びコリメートレンズ106)、ミラー109、2個のWDMフィルタ107、λ/2波長板108、及びPBC110を全て基板111の上に搭載しなければならない。LD102を出射した光は5〜6個の光学部品を反射/透過して出力される。したがって、個々の光学部品の調芯精度は、2〜3個の部品を介して出力される通常の光送信モジュールに対して1/2〜1/4程度の調芯尤度しか与えられない。
【0035】
また、上記光学系を複雑にしているのは、ミラー109、WDMフィルタ107、PBC110について、LD102の光軸に対し45°の角度を維持しつつ、基板111上に搭載しなければならない点である。光信号λ3,λ4の光に至っては45°傾けられた光学部品を2度反射する。
【0036】
さらに、上記の光学部品は全て一の基板111上に搭載されている。この光学系の前提として、光信号λ1〜λ4の光軸が全て基板111の主面に平行に維持される必要がある。各光学部品は樹脂、接着剤等により基板111上に固定される。光学部品を搭載する際にそのあおり角が適正に維持されない場合には、次の光学部品を搭載する際に、部品と主面との間隔が大きくなり過ぎ、樹脂でその隙間を埋めきれない、あるいは、部品寸法を上回って光軸が主面に近寄ってしまう、等の不都合を生ずる。
【0037】
従来、このような光学系について各部品を基板上に搭載するに際しては、その大きさが1mm
2に満たない光学部品を吸着コレットで吸着し、光学部品を部品トレイから予め接着樹脂(紫外線硬化樹脂)が塗布されている搭載箇所に搬送し、真空吸着している状態で光学調芯を行い、調芯後に紫外線を照射して樹脂を固化する、という方法が採用されていた。
【0038】
(第1の実施形態)
以下、本開示の光学部品の移載機の具体例について説明する。
図2Aは、本開示の光学部品の移載機に用いられる吸着コレットの先端部分の一例を示す斜視図であり、
図2Bは、
図2Aに示す吸着コレットの側面図である。また、
図3A、
図3Bは、それぞれ
図2Aに示す吸着コレットで光学部品を吸着した際の側面図である。
【0039】
本開示に係る光学部品の移載機は、XYZ方向に移動可能であり、かつ、Z軸およびX軸を中心に回転可能な吸着手段としての吸着コレット10を備えている。本実施形態では、吸着コレット10の長手方向の先端は長手方向に直交する断面が略四角形状であり、その先端の一側面は基準平面11として形成されている。また、基準平面11中には吸着口12が形成されており、吸着口12は吸入管15に連通している。また、吸着コレットの先端から吸着口12よりも長さL2だけ離れた位置で、基準平面11から突出した第1突出部13が設けられており、この第1突出部13の先端側には、基準平面11と長さL1だけ離れた位置から吸着コレット10の先端側に向けて突出した第2突出部14を有している。第2突出部14は、吸着コレット10の長手方向に平行に設けられている。
【0040】
第2突出部14の長さはL4であり、長さL4は長さL2よりも短くなっている。このため、吸着口12と第2突出部14との長手方向(Z軸方向)の長さL3は零よりも大きく、吸着口12は、第2突出部14の先端よりも吸着コレット10の先端側に位置することになる。
図2Bに示すように、吸着口12は、第2突出部14の先端の位置を基準平面11側へ平行移動した基準平面11の位置よりも吸着コレット10の先端側に位置している。また、吸着口12の全部が第2突出部14の先端の位置を基準平面11側へ平行移動した基準平面11の位置よりも吸着コレット10の先端側に位置していることが望ましい。第2突出部14の長さL4は、吸着する光学部品の上面と光学面との角度、光の透過/反射位置によって、所望の長さとなるように設定することができる。なお、基準平面11における吸着コレット10の長手方向の長さは光学部品1の高さよりも短く形成されている。そして、光学部品1のコレット先端からの突き出し長は、光学部品1を基板に固定する時に使用する樹脂が、吸着コレット10に接触しない距離となるように定める。具体的には、約0.2〜0.5mm程度とする。なお、突き出し長が大き過ぎる場合には、吸着口12が光学部品1の光学面の中心を吸引できない可能性があり、吸着コレット10の基準平面を適切な長さに設定することが望ましい。
【0041】
吸着コレット10の吸入管15を大気圧よりも負圧にすることによって、基準平面11に、光学部品1の光学面2が保持される。この場合、光学部品1の光学面2を直接吸引することになるため、光学面2に機械的損傷を与える虞がある。そこで、吸着コレット10では、吸着口12を比較的大きく設定し、光学部品1の光学面2のうち、光が実際の透過/反射する領域を全てこの吸着口12で覆うように構成されている。これにより光学面2の機械的損傷を防止することが可能となる。
【0042】
図3A、
図3Bに示すように、基準平面11と第2突出部14との距離(長さL1)は、光学部品の光学面2とこの光学面2と対向する反対側の面3とがなす幅Wの2分の1以上となっている。また、長さL1は幅Wよりも小さくなっている。これにより、
図3Aに示すように、光学部品1の光学面2と上面4とがなす角度θが鋭角であった場合には、第2突出部14の先端の基準平面11側の点P1で、光学部品1の上面4とで接するが、基準平面11と点P1の距離が光学素子の1の幅Wの2分の1以上であるため、光学部品1を安定して保持することが可能となる。また、
図3Bに示すように、光学部品1の光学面2と上面4とがなす角度θが鈍角であった場合には、第2突出部14の先端の基準平面11とは反対側の点P2で、光学部品1の上面4とで接することになり、基準平面11と点P2の距離が光学素子の1の幅Wの2分の1以上であるため、同様に、光学部品1を安定して保持することが可能となる。よって、光学部品1が基板に塗布した接着樹脂に接触した場合に傾くことがない。
【0043】
次に、本開示の光通信モジュールの製造方法について説明する。本開示の光通信モジュールの製造方法では、上記で説明した光学部品の移載機の吸着コレット、あるいは、後述する他の実施形態における吸着コレットを用いている。
図4Aから
図4Hは、本開示に係る光送信モジュールの製造方法の各工程を説明するための図であり、
図4Aは吸着工程、
図4Bは搬送工程、
図4Cは当て付け工程、
図4Dは調芯工程、
図4Eは樹脂塗布工程、
図4Fは位置決め工程、
図4Gは樹脂硬化工程、および、
図4Hは吸着コレット退避工程を示している。
【0044】
まず、
図4Aに示す吸着工程では、光学部品1の光学面2を吸着コレット10で吸引し、光学部品1を部品トレイ120から取り出す。通常、光学部品1には、光学面を示すためのインデックスが付与されている。例えば、λ/2波長板108の場合、外郭を構成する四角のうち一角について面取りがされており、面取り辺に垂直な方向が所定の結晶軸を示している。吸着工程では、このインデックスを基準に吸着面を吸引する。
【0045】
次に、
図4Bに示す搬送工程で、光学部品1を吸着した状態で吸着コレット10を、光学部品1を搭載する基板111の所定位置上に移動させる。位置決めに当たっては、例えば、基板111上にアライメントマーク(十字、L字、コの字等)を設けておくことで概略の位置を決定することができる。このアライメントマークの上方で吸着コレット10を保持する。
【0046】
次に、
図4Cに示す当て付け工程で、光学部品1の下面が基板111に接触するまで吸着コレット10を下降させる。なお、当て付け工程の前に、光学部品1を基板111の適当な箇所で、基板111に押し付け、光学部品1の上面4を第2突出部14の先端に押し付ける押付工程を含むようにしてもよい。なお、当て付け工程によって、移載機は、光学部品1の下面が基板111に接触した際の吸着コレット10の平面位置(XY軸方向の位置および高さ位置(Z軸方向の位置)を記憶しておく。
【0047】
次に、
図4Dに示す調芯工程を行う。調芯工程では、オートコリメータ20を用いる。オートコリメータ20は、内部に可視光源、ハーフミラー、受光部(2次元モニタ)を少なくとも有しており、被測定物に可視光を照射し、その反射光を観測して、被測定物が回転及びあおりずれを起こしていない位置を基準として、基準の位置と反射光の位置ずれから、回転(あおり)ずれ量を評価する装置である。調芯工程では、予め吸着コレット10の基準平面11に基準ミラー(図示せず)を吸着させ、反射光からオートコリメータ20の基準位置を予め調整しておく。なお、基準ミラーが吸着コレット10の基準平面11に密着しているかを確認するため、流量センサー(図示しない)を追加し、
図2Bに示す吸入管15内の流量をモニタしている。この流量が多くなれば隙間があるということになる。この流量が多くなっている場合には、吸着コレット10の基準平面11に対して、基準ミラーが斜めになっていると判断する。
【0048】
光学部品1の調芯時には、光学部品1の光学面2と対向する反対側の面3に可視光を照射し、面3からの反射光の位置ずれ量を計測する。そして、回転ずれがあった場合は、吸着コレットを
図4DのA方向に回転させ、あおりずれがあった場合は、吸着コレットを
図4DのB方向に回転させることによって、調芯を行う。先述したように、WDMフィルタ107、λ/2波長板108、PBC110では光学面の両面が非平行になると、出射光が入射光と非平行となるので好ましくないため、光学面2と面3とが平行になるように、製品の一仕様として厳密に規定されている。このため、光学面2と平行な面3を用いて調芯が可能である。
【0049】
次に、
図4Eに示す樹脂塗布工程で、吸着コレット10を基板111の光学部品1の搭載箇所から退避させ、光学部品1を搭載する基板111の位置に、紫外線硬化樹脂30を塗布する。
【0050】
次に、
図4Fに示す位置決め工程では、調芯工程で調芯済みの吸着コレット10を、当て付け工程で移動させた基板111の位置、すなわち、光学部品1の搭載位置の上方に移動させ、さらに、下方に移動させる。この場合、吸着コレット10は、当て付け工程で計測した高さ位置の値を用いて、光学部品1の下面と基板111とが所望の距離D、例えば30μmだけ離れた位置まで下降させる。このように、光学部品1の下面の角度や基板111の平滑度の影響を避けるために、光学部品1の下面は紫外線硬化樹脂30の中に浮いた状態で保持される。
【0051】
そして、
図4Gに示す樹脂硬化工程で、光学部品1の下面と基板111とが所望の距離Dだけ離れた位置で吸着コレット10を維持した状態で、紫外線硬化樹脂30に紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂30を硬化させる。これによって、光学部品1は、基板111の所定箇所に調芯された状態で固定される。
【0052】
さらに、
図4Hに示す吸着コレット退避工程で、吸着コレット10の吸着口12による光学部品1の吸引を停止し、吸着コレット10を基板111から退避させて、光学部品1の基板111への実装を終了する。このとき、
図2Bの吸入管15内において、圧力センサー(図示しない)を用いて残圧を確認する。このとき、圧力センサーの残圧が大気圧まで達していない状態でコレットを動かすと、部品がずれる可能性があるため、実際は、圧力センサーの残圧が大気圧に達することを確認し、吸着コレット10を基板111から退避する。
【0053】
基板111への光学部品1の実装は、基板111を光送信モジュール内部に搭載する前に、上記の方法により行う。例えば、基板111上でPBC110、ミラー109、2つのWDMフィルタ107の調芯をこの順序に従って行う。これらはLD102の光軸に対して45°の角度をもって搭載する必要のある部品である。次いで、同様にして、基板111上にLD102、コリメートレンズ106等を搭載する。
【0054】
(第2の実施形態)
図5は、本開示の光学部品の移載機に用いられる吸着コレットの先端部分の形状の他の例を示す斜視図である。本実施形態では、第2突出部14の先端部14aの形状が、第1の実施形態と異なるだけで、他の構成については同様であるので、その説明を省略する。本実施形態では、第2突出部の突出方向(Y軸方向)と吸着コレット10の長手方向(Z軸方向)とがなす面(YZ平面)の第2突出部14の先端部14aの断面を曲線形状にしている。これにより、第2突出部の先端部14aが、常に光学部品1の上面を直線状で接触することが可能となる。なお、第2突出部14の先端部14aはX軸方向に所定の長さを有しているが、光学部品1の上面に対して1点で接触するように形成してもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
図6は、本開示の光学部品の移載機に用いられる吸着コレットの先端部分のさらに他の例を示す斜視図である。本実施形態では、吸着コレット10の長手方向の先端は長手方向に直交する断面が略円形状であり、その先端の側面に基準平面11が形成されている。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるが、第2突出部14の先端部は、第2の実施形態と同様に、断面を曲線形状にしてもよく光学部品1の上面に対して1点で接触するように形成してもよい。
【0056】
各実施形態における吸着コレット10の材料としては、熱膨張率が小さい材料、例えば、鉄、ニッケル、マンガン、炭素などが含まれる合金(インバー)が用いられる。