特開2021-4336(P2021-4336A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-4336(P2021-4336A)
(43)【公開日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20201211BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20201211BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20201211BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20201211BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K7/14
   C08K5/524
   C08K5/10
   C08K5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-120163(P2019-120163)
(22)【出願日】2019年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太白 啓介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CG001
4J002CG011
4J002CG021
4J002DL006
4J002EH038
4J002EH048
4J002EV239
4J002EW067
4J002EW087
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD067
4J002FD070
4J002FD137
4J002FD139
4J002FD168
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の優れた機械的強度、剛性および耐熱性が損なわれることなく、流動性と難燃性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物、および、その樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%およびガラス繊維(B)20〜60重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.01〜0.2重量部、脂肪酸エステル(D)を0.1〜2重量部、および金属塩化合物(E)を0.005〜0.5重量部含有することを特徴とする、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%およびガラス繊維(B)20〜60重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.01〜0.2重量部、脂肪酸エステル(D)を0.1〜2重量部、および金属塩化合物(E)を0.005〜0.5重量部含有することを特徴とする、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が16000〜30000である、請求項1に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
ガラス繊維(B)がエポキシ系集束剤またはウレタン系集束剤で処理され、繊維断面の平均直径が6〜20μmである、請求項1または2に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
ガラス繊維(B)が繊維断面の長径の平均値が10〜50μmであり、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が2〜8である扁平断面を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
炭素繊維を含まない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)が、下記一般式(1)、下記一般式(2)、および、下記一般式(3)で表される化合物から選択された1種以上の化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1):
【化1】
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
一般式(3):
【化3】
(一般式(3)において、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【請求項7】
前記一般式(1)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトである、請求項6に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(2)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンである、請求項6に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(3)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、3,9−ビス[2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンから選択された1種以上の化合物である、請求項6に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸エステル(D)が、ペンタエリスリトールテトラステアレートである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項11】
金属塩化合物(E)がパーフルオロブタンスルホン酸カリウムまたはパラトルエンスルホン酸ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物、および、その樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的強度、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であることから、電気電子分野や自動車分野等広く工業的に利用されている。ガラス繊維で強化されたポリカーボネート樹脂は、強度や剛性に優れることから電気機器や電子機器の筐体や電動工具の筐体等に利用されている。これらの分野においては、高い難燃性が要求される用途もあり、例えばアンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価において、V−2以上に適合する難燃性が求められている。さらには、それら製品の筐体や電機電子部品の内部シャーシ等は更なる薄肉化を達成するため、流動性が良い成形材料が求められている。
【0003】
しかしながら、従来の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性、流動性と難燃性の並立について十分に検討されておらず、強度や剛性に優れながら、耐熱性、流動性、難燃性に優れる成形材料という需要を満たすことはできていない。
【0004】
繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させるためにポリカーボネート樹脂にリン系難燃剤や含フッ素滴下防止剤を含有させる方法が複数知られている。特許文献1〜2には、ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維、リン系難燃剤からなる、強度および難燃性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。特許文献1の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には含フッ素滴下防止剤が含まれており、特許文献2の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物にはポリテトラフルオロエチレンが含まれていてもよいことが記載されている。特許文献3には、ポリカーボネート樹脂、ガラス繊維、リン系難燃剤からなる、強度および難燃性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に記載の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物では、いずれもリン系難燃剤が必要であり、耐熱性を満足するものではなく、機械的強度と流動性、耐熱性、難燃性の並立について満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−070468号公報
【特許文献2】特開2011−001514号公報
【特許文献3】特表2009−521568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の優れた機械的強度、剛性および耐熱性が損なわれることなく、流動性と難燃性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物、および、その樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行ったところ、ポリカーボネート樹脂とガラス繊維からなる樹脂組成物に、特定構造を有する亜リン酸エステル系化合物、脂肪酸エステルおよび金属塩化合物を含有させることにより、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の優れた機械的強度、剛性、耐熱性を損なうことなく、流動性と難燃性に優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%及びガラス繊維(B)20〜60重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.01〜0.2重量部、脂肪酸エステル(D)を0.1〜2重量部、および金属塩化合物(E)を0.005〜0.5重量部含有することを特徴とする、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物及び、それを含む樹脂成形品に関する。
【0010】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、16000〜30000であることが好ましい。
【0011】
ガラス繊維(B)がエポキシ系集束剤またはウレタン系集束剤で処理され、繊維断面の平均直径が6〜20μmであることが好ましい。
【0012】
ガラス繊維(B)が繊維断面の長径の平均値が10〜50μmであり、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が2〜8である扁平断面を有することが好ましい。
【0013】
炭素繊維を含まないことが好ましい。
【0014】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)が、下記一般式(1)、下記一般式(2)、および、下記一般式(3)で表される化合物から選択された1種以上の化合物であることが好ましい。
一般式(1):
【0015】
【化1】
(一般式(1)において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
一般式(2):
【0016】
【化2】
(一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
一般式(3):
【0017】
【化3】
(一般式(3)において、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【0018】
前記一般式(1)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトであることが好ましい。
【0019】
前記一般式(2)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンであることが好ましい。
【0020】
前記一般式(3)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)が、3,9−ビス[2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンから選択された1種以上の化合物であることが好ましい。
【0021】
前記脂肪酸エステル(D)が、ペンタエリスリトールテトラステアレートであることが好ましい。
【0022】
金属塩化合物(E)がパーフルオロブタンスルホン酸カリウムまたはパラトルエンスルホン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形品に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系難燃剤を含まないため、耐熱性を低下させることなく、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物のもつ優れた機械的強度や剛性を維持しながら、難燃性に優れた成形品を提供することができる。そのため、例えば、電気機器や電子機器に使用される薄肉筐体や内部シャーシに用いる金属製品の代替品への使用が可能であり、製品の軽量化が出来る。また、このような樹脂組成物から得られた成形品へ外部力が印加された場合に、当該成形品が撓み、成形品内部に収納される電子部品へ損傷を及ぼすといった不具合の発生が可及的に抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0026】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%及びガラス繊維(B)20〜60重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、亜リン酸エステル系化合物(C)を0.01〜0.2重量部、脂肪酸エステル(D)を0.1〜2重量部、および金属塩化合物(E)を0.005〜0.5重量部含有することを特徴とする。
【0027】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0028】
ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0029】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0030】
さらに、上記ジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは16000〜30000、さらに好ましくは19000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0032】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂の割合としては、40〜80重量%である。80重量%を越えると剛性に劣り、40重量%未満では組成物の製造が困難となる。
【0033】
ポリカーボネート樹脂(A)の形態は特に限定されず、たとえばペレット状物、フレーク状物、ビーズ状物等が挙げられる。なかでも、均質な分散性を得られる点で、フレーク状物が好ましく、多孔質フレーク状物がより好ましい。ポリカーボネートの嵩密度も特に限定されないが、0.1〜0.9が好ましく、0.1〜0.7がより好ましい。ここで、嵩密度とは、JISK7370の固め見かけ嵩密度に準拠して測定される値をいう。ポリカーボネートの大きさは特に制限されないが、5mm以下が好ましい。
【0034】
本発明で使用するガラス繊維(B)は特に限定されず、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1〜1.5の断面がほぼ円形の円形断面ガラス繊維であっても、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が2〜8の扁平断面ガラス繊維であってもよい。
【0035】
ガラス繊維(B)の数平均繊維長は1〜8mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。ガラス繊維は従来公知の任意の方法に従い製造される。数平均繊維長が1mm未満では機械的強度の改良が十分でなく、8mmを越えるポリカーボネート樹脂を製造する際、ポリカーボネート樹脂中へのガラス繊維の分散性に劣ることからガラス繊維が樹脂から脱落する等して生産性が低下しやすい。
【0036】
ガラス繊維(B)が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1〜1.5の断面がほぼ円形の円形断面ガラス繊維の場合、ガラス繊維の直径は6〜20μmであることが好ましい。ガラス繊維の直径が6μm未満の場合は、機械的強度に劣り、20μmを越えると外観が低下しやすくなる。ガラス繊維の直径は、より好ましくは7〜18μm、さらに好ましくは8〜15μmである。
【0037】
市販にて入手可能な繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1〜1.5の断面がほぼ円形の円形断面ガラス繊維としては、直径10μmのものや13μmのものがあり、これらの数平均長さは2〜6mmとなっている。市場で入手可能なガラス繊維としては、例えば、KCC社製CS321、CS311やオーウェンスコーニングジャパン社製CS03MAFT737等が挙げられる。
【0038】
ガラス繊維(B)が、扁平断面ガラス繊維の場合、長径の平均値は10〜50μm、好ましくは15〜40μm、より好ましくは25〜30μmである。また、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値は2〜8が好ましく、2〜7がより好ましくは、2.5〜5がさらに好ましい。これらは従来公知の任意の方法に従い製造される。
【0039】
扁平断面ガラス繊維の長径が10μm未満では製造が困難であり、50μmを超えるとポリカーボネート樹脂組成物の成形品表面外観を損なうことがある。長径と短径の比が2未満では寸法安定性に劣り、8を超えると強度に劣る場合が発生することがある。
【0040】
市販にて入手可能な繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が2〜8の扁平断面ガラス繊維としては、例えば、日東紡績社製CSG 3PA−820やCSG 3PA−830等が挙げられる。
【0041】
ガラス繊維(B)は、ポリカーボネート樹脂との密着性を向上させる目的でアミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などにより表面処理を行うことができる。また、ガラス繊維を取り扱う際、取り扱い性を向上させる目的でウレタンやエポキシ等の集束剤などにより集束させることもできる。
【0042】
ガラス繊維(B)の配合量は、20〜60重量%である。60重量%を越えると外観性に劣る成形品が発生する事があることから好ましくない。又、20重量%未満では強度、剛性に劣るため好ましくない。より好ましい配合量は、30〜50重量%、最も好ましくは40〜45重量%である。
【0043】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には、亜リン酸エステル系化合物(C)が配合されている。亜リン酸エステル系化合物(C)を配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する機械的強度等の特性が損なうことなく、熱安定性と難燃性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0044】
亜リン酸エステル系化合物(C)は、特に限定されないが、たとえば下記一般式(1)〜(4)で表される化合物が挙げられる。なかでも一般式(1)〜(3)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):
【化4】
(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
【0045】
前記式(1)において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基であるが、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0046】
式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0047】
一般式(2):
【化5】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−(ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR−(ここで、Rは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
【0048】
一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0049】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0050】
、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、RおよびRは、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基または1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0051】
は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0052】
一般式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0053】
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR−で表される基を示す。ここで、式:−CHR−中のRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基および炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基およびシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0054】
一般式(2)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基または式:*−COR−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられるが、プロピレン基が好ましい。また、式:*−COR−におけるRは、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合またはエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0055】
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0056】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0057】
一般式(3):
【化6】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【0058】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−24G」として商業的に入手可能である。(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0059】
一般式(4):
【化7】
【0060】
(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19〜R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。d〜gは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。X〜Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X〜Xが単結合である場合、R11〜R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(3)から除外される)
【0061】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S−9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−45」(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
【0062】
亜リン酸エステル系化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%及びガラス繊維(B)20〜60重量%を含む樹脂組成物100重量部に対して0.01〜0.2重量部であるが、0.03〜0.15重量部が好ましく、0.05〜0.1重量部がより好ましい。配合量が0.2重量部を越えると熱安定性が逆に悪くなる。0.01重量部未満だと熱安定性に劣る。
【0063】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には、脂肪酸エステル(D)が配合されている。脂肪酸エステル(D)を配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する機械的強度等の特性が損なわれることがなく、離型性および熱安定性に優れた繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0064】
前記脂肪酸エステル(D)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
【0065】
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
【0066】
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
【0067】
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
【0068】
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0069】
脂肪酸エステル(D)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、ミリシルパルミテート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、主として炭素数16〜36の炭素数をもつ直鎖脂肪酸とアルコールの混合エステルである蜜蝋などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールステアレートが好適であり、例えば、コグニス社製ロキシオールVPG861等が商業的に入手可能である。
【0070】
本発明にて使用される脂肪酸エステル(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%及びガラス繊維(B)20〜60重量%から成る樹脂組成物100重量部に対して0.1〜2重量部である。配合量が2重量部を越えると安定生産が困難になるため好ましくない。0.1重量部未満だと離型性に劣るため好ましくない。より好ましくは0.3〜1.5重量部、最も好ましくは0.5〜1.0重量部である。
【0071】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には、金属塩化合物(E)が配合されている。金属塩化合物(E)を亜リン酸エステル系化合物(C)と脂肪酸エステル(D)と共に配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する機械的強度等の特性が損なわれることがなく、難燃性を向上させることができる。
【0072】
金属塩化合物(E)における金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブテン(Mo)等が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。金属塩化合物(E)は、ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性が高まる観点、ポリカーボネート樹脂の機械的物性(例えば耐衝撃性)、耐熱性が良好に維持される観点から、アルカリ金属塩(有機アルカリ金属塩)、アルカリ土類金属塩(有機アルカリ土類金属塩)が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が更に好ましい。
【0073】
金属塩化合物(E)としては、有機金属塩が好ましく、優れた難燃性及び耐着火性が容易に得られる観点から、脂肪族スルホン酸の金属塩、および芳香族スルホン酸の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0074】
脂肪族スルホン酸の金属塩としては、含フッ素脂肪族スルホン酸の金属塩等が挙げられる。含フッ素脂肪族スルホン酸の金属塩としては、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸の金属塩等が挙げられ、分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸としては、パーフルオロブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム等が挙げられる。分子中に少なくとも1つのC−F結合を有する含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸マグネシウム、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウム、パーフルオロブタンスルホン酸バリウム、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム、トリフルオロメタンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
【0075】
芳香族スルホン酸の金属塩としては、分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸の金属塩等が挙げられ、分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、(ポリ)スチレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸等が挙げられる。分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等が挙げられる。分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩としては、パラトルエンスルホン酸マグネシウム、パラトルエンスルホン酸カルシウム、パラトルエンスルホン酸ストロンチウム、パラトルエンスルホン酸バリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、優れた難燃性が容易に得られる観点から、脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、および、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩がより好ましく、脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましく、含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、含フッ素芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましく、含フッ素脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩がさらに好ましい。具体的には、優れた難燃性が容易に得られる観点から、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、および、パラトルエンスルホン酸ナトリウムが好ましい。金属塩化合物(E)は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
本発明にて使用される金属塩化合物(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜80重量%及びガラス繊維(B)20〜60重量%から成る樹脂組成物100重量部に対して0.005〜0.5重量部である。配合量が0.5重量部を越えると燃焼中にドリップが起きにくくなり、燃焼時間が長くなるため好ましくない。0.005重量部未満だと難燃性に劣るため好ましくない。より好ましくは0.005〜0.1重量部、最も好ましくは0.01〜0.05重量部である。
【0078】
本発明の繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、ポリカーボネート樹脂を第一フィーダー(原料供給口)から押出機バレル内に供給し、樹脂を十分に溶融した後にガラス繊維を第二フィーダー(充填剤供給口)から押出機バレル内に供給して混練することができる。混練に用いるスクリューには、一般的に入手可能なディスク(例えば、ニーディングディスク)等を適用し、公知の手法によりこのディスクをスクリュー構成として複数用いたり、ディスクの配置を適宜変えたりする等により調整して混練を行うことが可能である。ガラス繊維を引きながらポリカーボネート樹脂を当該繊維に含浸させる引き抜き成形法も使用することができる。
【0079】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に各種の樹脂、酸化防止剤、蛍光増白剤、顔料、染料、カーボンブラック、充填材、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ゴム、軟化材、展着剤(流動パラフィン、エポキシ化大豆油等)、難燃剤、有機金属塩等の添加剤、滴下防止用ポリテトラフルオロエチレン樹脂等を配合しても良い。
【0080】
各種の樹脂としては、例えば、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AES、AAS、AS、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が挙げられる。これらは一種だけでなく、二種以上を併用してもよい。
【0081】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。なかでも、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に使用される。セミヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、住友化学社製スミライザーGA−80などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、BASF社製Irganox1076などが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上で併用してもよい。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においては、任意に変更乃至改変して実施することができる。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」及び「部」は、それぞれ重量基準に基づく「重量%」及び「重量部」を示す。
【0083】
使用した原料の詳細は以下のとおりである。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
1−1.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−20、粘度平均分子量
19000、以下「PC1」と略記)
1−2.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−13、粘度平均分子量
21000、以下「PC2」と略記)
1−3.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−3、粘度平均分子量
28000、以下「PC3」と略記)
【0084】
2.ガラス繊維(B):
2−1.円形断面ガラス繊維
(KCC社製 CS321、繊維径10μm、繊維長3mm、
エポキシ系集束剤、以下「GF1」と略記)
2−2.円形断面ガラス繊維
(KCC社製 CS311、繊維径10μm、繊維長3mm、
ウレタン系集束剤、以下「GF2」と略記)
2−3.扁平断面ガラス繊維
(日東紡績社製 CSG 3PA−830、長径28μm、短径7μm、繊維長3mm、
エポキシ/ウレタン系集束剤、以下「GF3」と略記)
【0085】
3.亜リン酸エステル系化合物(C):
3−1.以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン
【0086】
【化8】
アデカスタブPEP−36(商品名、ADEKA社製、以下「C1」と略記)
【0087】
3−2.以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
【0088】
【化9】
イルガフォス168(商品名、BASF社製、以下「化合物C2」という)
【0089】
3−3.以下の式で表される、3,9−ビス[2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
【0090】
【化10】
Doverphos S−9228(商品名、Dover Chemical社製、以下「C3」と略記)
【0091】
4.脂肪酸エステル(D):
4−1.ペンタエリスリトールステアレート
ロキシオールVPG861(商品名、コグニス製、以下、「D1」と略記)
4−2.Bee’s wax
天然蜜ロウ・ゴールデンブランド
(商品名、三木化学工業株式会社製、以下、「D2」と略記)
【0092】
5.金属塩(E):
5−1.パーフルオロブタン酸カリウム
Bayowet C4(商品名、ランクセス製、以下、「E1」と略記)
5−2.パラトルエンスルホン酸ナトリウム
パラトルエンスルホン酸ナトリウム(東豊化工股聞有限公司製、以下「E2」と略記)
【0093】
6.その他難燃剤(F)
6−1.リン酸エステル系難燃剤:
レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、PX−200
(大八化学製、以下「F1」と略記)
【0094】
実施例1〜19および比較例1〜9
前述の各種配合成分を表1〜2に示す配合比率にて、二軸押出機(東芝機械社製TEM−37SS)を用いて、溶融温度300℃にて混練し、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を得た。ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂はポリカーボネート樹脂、亜リン酸エステル系化合物、脂肪酸エステルおよび金属塩を第一フィーダー(原料供給口)から押出機バレル内に供給し、樹脂組成物を十分に溶融した後にガラス繊維を第二フィーダー(充填剤供給口)から押出機バレル内に供給した後、混練を行い、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。
【0095】
(難燃性)
実施例および比較例で作製した樹脂組成物ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(ファナック株式会社製、ROBOSHOT S2000i100A)を用いて設定温度350℃、射出圧力90MPaにて難燃性評価用試験片(125×13×0.8mm)を作製した。
【0096】
得られた試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間以上放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、以下のクラスに分けられる。
V−0 V−1 V−2
各試料の残炎時間 10秒以下 30秒以下 30秒以下
5試料の全残炎時間 50秒以下 250秒以下 250秒以下
ドリップによる綿の着火 なし なし あり
*上記の条件に満たない物は“NR”(No Rating)と表示される。
【0097】
残炎時間とは着火源を遠ざけた後の試験片が燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは試験片の下端から300mm下にある標識用の綿が試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
難燃性がV−2クラス以上を良好とした。
【0098】
(曲げ弾性率)
実施例および比較例で作製した樹脂組成物のペレットをそれぞれ125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(ファナック株式会社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度300℃、射出圧力80〜120MPaの適切な圧力にてISO試験法に準じた厚み4mmの試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO 178に準じ曲げ弾性率(剛性)を測定した。曲げ弾性率が、6000MPa以上を良好とした。
【0099】
(耐熱性)
実施例および比較例で作製した樹脂組成物のペレットをそれぞれ125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(ファナック株式会社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度300℃射出圧力85〜115MPaの適切な圧力にてISO試験法に準じた試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO 179−2、ISO 75−2に準じ荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度が130℃以上を良好とした。
【0100】
(分子量低下)
実施例および比較例で作製した樹脂組成物のペレット及び曲げ弾性率(剛性)を測定した試験片をジクロロメタンに溶解し、NO.1濾紙を用いて溶解液中の不溶物をろ過した。この濾液をドライアップし、得られたポリマーの一定量(0.25g)をジクロロメタン50mlに溶解した。キャノン・フェンスケ粘度計を用いてジクロロメタン希薄溶液の粘度を23℃で測定し、シュネルの式を用いて各試験片の粘度平均分子量を求めた。
(シュネルの式) [η]=1.23×10−4・M0.83
[η]:固有粘度、M:粘度平均分子量
なお、熱安定性の指標である分子量低下は、ペレットの粘度平均分子量から試験片の粘度平均分子量を減じた値(ΔMv)が、2000未満を良好とした。
【0101】
(離型性)
実施例および比較例で作製した樹脂組成物のペレットをそれぞれ125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(ファナック株式会社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用いて、シリンダー設定温度300℃、金型温度50℃、冷却時間20秒の条件にて、離型性を評価した。金型には、コップ型の離型抵抗金型(成形品の形状:直径70mm、高さ20mm、厚み4mm)を用いて、カップ型成形品を成形する際の突き出しピンにかかる突き出し荷重を測定し、離型抵抗値を求めた。評価の基準として、離型抵抗値が800N未満を良好とした。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
実施例1〜19に示すように、本発明の構成要件を満足するものについては、要求性能を満たしていた。一方、比較例1〜9に示すように、本発明の構成要件を満足しないものについては、それぞれ次のとおり欠点を有していた。
比較例1の樹脂組成物は、金属塩化合物(E)を含まないため、難燃性に劣っていた。
比較例2の樹脂組成物は、金属塩化合物(E)の配合量が規定量より多いため、難燃性に劣っていた。
比較例3の樹脂組成物は、金属塩化合物(E)を含まず、リン系難燃剤(F1)を含むため、荷重たわみ温度が低下した。また、難燃性も満足いく結果ではなかった。
比較例4の樹脂組成物は、ガラス繊維(B)の配合量が規定量よりも少ないため、曲げ弾性率が劣っていた。
比較例5の樹脂組成物は、ガラス繊維(B)の配合量が規定量よりも多いため、ペレット作製が不可能であった。
比較例6の樹脂組成物は、脂肪酸エステル(D1)の配合量が規定量よりも少ないため、離型性に劣っていた。
比較例7の樹脂組成物は、脂肪酸エステル(D1)の配合量が規定量よりも多いため、ペレット作製が不可能であった。
比較例8の樹脂組成物は、亜リン酸エステル系化合物(C)の配合量が規定量よりも少ないため、熱安定性が劣っていた
比較例9の樹脂組成物は、亜リン酸エステル系化合物(C)の配合量が規定量よりも多いため、熱安定性が劣っていた
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の優れた機械的強度、剛性および耐熱性が損なわれることなく、流動性と難燃性に優れるため、その産業状の利用価値は高い。例えば、電気機器や電子機器に使用される薄肉筐体や内部シャーシに用いる金属製品の代替品への使用が可能であり、製品の軽量化が出来る。また、このような樹脂組成物から得られた成形品へ外部力が印加された場合に、当該成形品が撓み、成形品内部に収納される電子部品へ損傷を及ぼすといった不具合の発生が可及的に抑えられる。