特開2021-4393(P2021-4393A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-4393(P2021-4393A)
(43)【公開日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】遠心噴霧装置および微粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/10 20060101AFI20201211BHJP
   B22D 11/01 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   B22F9/10
   B22D11/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-118283(P2019-118283)
(22)【出願日】2019年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】米虫 悠
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】中井 泰弘
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA10
4K017ED02
(57)【要約】
【課題】金属の微粉末を製造するディスクアトマイズ法において、溶湯の温度とディスクの温度との温度差を抑制して、微粉末の製造の安定化を図る。
【解決手段】溶湯Mを第1所定回転数にて回転駆動するディスク20の上面21aに供給して所望の粒径の微粉末Pを製造する遠心噴霧装置1は、ディスク温度を検出する第1温度センサ40と、溶湯Mがディスク20に供給されている際に、第1温度センサ40によって検出されたディスク温度が溶湯温度以下に設定された第1温度以上であるか否かを判定する判定部62と、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数にて制御するとともに、判定部62によってディスク温度が第1温度以上であると判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数にて制御する回転数制御部63と、を備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された金属である溶湯を、第1所定回転数にて回転駆動するディスクの上面に供給して、前記ディスクの遠心力によって噴霧することにより、前記溶湯から所望の粒径の微粉末を製造する遠心噴霧装置であって、
前記ディスクの温度であるディスク温度を検出する温度検出部と、
前記溶湯が前記ディスクに供給されている際に、前記温度検出部によって検出された前記ディスク温度が前記溶湯の温度である溶湯温度以下に設定された第1温度以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記ディスク温度が前記第1温度より低いと判定された場合、前記ディスクの回転数であるディスク回転数を前記第1所定回転数より低い回転数にて制御するとともに、
前記判定部によって前記ディスク温度が前記第1温度以上であると判定された場合、前記ディスク回転数を前記第1所定回転数にて制御する回転数制御部と、を備えている遠心噴霧装置。
【請求項2】
前記回転数制御部は、前記判定部によって前記ディスク温度が前記第1温度より低いと判定された場合、前記ディスク回転数を前記第1所定回転数より低い第2所定回転数にて一定とするように制御する請求項1に記載の遠心噴霧装置。
【請求項3】
前記回転数制御部は、前記微粉末の製造が開始される時に、前記ディスク回転数を前記第1所定回転数より低い回転数に設定する請求項1または請求項2に記載の遠心噴霧装置。
【請求項4】
前記溶湯の流量を調整する流量調整部と、
前記回転数制御部によって前記ディスク回転数が前記第1所定回転数にて制御されている場合、前記流量調整部によって、前記溶湯の流量を所定流量にて制御するとともに、
前記回転数制御部によって前記ディスク回転数が前記第1所定回転数より低い回転数にて制御されている場合、前記流量調整部によって、前記溶湯の流量を前記所定流量より多い流量にて制御する流量制御部と、をさらに備えている請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の遠心噴霧装置。
【請求項5】
第1所定回転数にて回転駆動するディスクの上面に、溶融された金属である溶湯が供給されて、前記ディスクの遠心力によって噴霧されることにより、所望の粒径を有する微粉末を製造する遠心噴霧法に適用される微粉末の製造方法であって、
前記ディスクを前記第1所定回転数より低い回転数にて回転駆動させて、前記ディスクの上面に前記溶湯を供給する第1工程と、
前記第1工程が実行された後、前記ディスクの温度が前記溶湯の温度以下に設定された第1温度以上となった場合、前記ディスクの回転数を前記第1所定回転数に調整する第2工程と、を備えている微粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心噴霧装置および微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至特許文献4には、溶湯から微粉末を製造する遠心噴霧法のうち、高速回転するディスクに溶湯が供給されて、溶湯が、ディスクの遠心力によりディスクの表面を伝って、ディスクの周縁から噴霧されるディスクアトマイズ法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240060号公報
【特許文献2】特許第5095384号公報
【特許文献3】特許第5748991号公報
【特許文献4】特開2013−14810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスクアトマイズ法において、溶湯の温度とディスクの温度との温度差が比較的大きいことにより、溶湯がディスクの表面になじまず、ディスクの表面にて溶湯が跳ね返る場合がある。この場合、溶湯がディスクの表面を伝うことなく、ディスクから噴霧されないため、微粉末の安定した製造が困難である。
【0005】
そこで、本明細書は、金属の微粉末を製造するディスクアトマイズ法において、溶湯の温度とディスクの温度との温度差を抑制して、微粉末の製造の安定化を図ることができる遠心噴霧装置を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示された実施例に記載の遠心噴霧装置は、溶融された金属である溶湯を、第1所定回転数にて回転駆動するディスクの上面に供給して、ディスクの遠心力によって噴霧することにより、溶湯から所望の粒径の微粉末を製造する遠心噴霧装置であって、ディスクの温度であるディスク温度を検出する温度検出部と、溶湯がディスクに供給されている際に、温度検出部によって検出されたディスク温度が溶湯の温度である溶湯温度以下に設定された第1温度以上であるか否かを判定する判定部と、判定部によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスクの回転数であるディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数にて制御するとともに、判定部によってディスク温度が第1温度以上であると判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数にて制御する回転数制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示された実施例に記載の遠心噴霧装置によれば、溶湯が供給されている際に、ディスク温度が溶湯温度以下の第1温度より低い場合、ディスク回転数が第1所定回転数より低い回転数にて制御される。これにより、ディスクの上面において溶湯の跳ね返りが抑制されるため、溶湯がディスクの上面を伝いやすくなり、ひいては、溶湯の熱がディスクに伝達しやすくなる。したがって、溶湯の温度とディスクの温度との温度差を抑制して、微粉末の製造の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書の実施例に係る遠心噴霧装置の概要図である。
図2図1に示すディスクの拡大図である。
図3図1に示す遠心噴霧装置のブロック図である。
図4図1に示す遠心噴霧装置が微粉末を製造する場合におけるタイムチャートであり、上段がディスク温度、下段がディスク回転数を表している。
図5】本明細書の実施例の変形例に係る遠心噴霧装置のブロック図である。
図6】本明細書の実施例の変形例に係る遠心噴霧装置が微粉末を製造する場合におけるタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書の実施例に係る遠心噴霧装置について図面を参照しながら説明する。本明細書においては、説明の便宜上、図1の上下方向を、遠心噴霧装置1の上下方向とする。なお、上下方向は、鉛直方向である。遠心噴霧装置1は、インゴット等が溶融された金属である溶湯Mから微粉末Pを製造するものである。金属は、例えばチタンである。遠心噴霧装置1は、図1に示すように、るつぼ10、ディスク20、ディスク駆動部30、第1温度センサ40、第2温度センサ50、及び、制御装置60を備えている。
【0010】
るつぼ10は、溶湯Mを内側に貯留するものである。るつぼ10は、下方に向けて突出する凸状に形成された底壁10aを有する筒状に設けられている。るつぼ10は、出湯部11および蓋部材12を備えている。
【0011】
出湯部11は、るつぼ10の底壁10aと一体に設けられ、溶湯Mを下方に向けて吐出するものである。出湯部11は、底壁10aの中央部に、底壁10aを貫通する貫通穴11aを有する筒状に設けられている。
【0012】
蓋部材12は、第1位置P1に位置する場合に出湯部11からの溶湯Mの吐出を規制し、第2位置P2に位置する場合にて出湯部11からの溶湯Mの吐出を許容するものである。第1位置P1は、蓋部材12が出湯部11の上端に貫通穴11aを塞ぐように液密に接触する位置である。第2位置P2は、第1位置P1より上方の位置であり、貫通穴11aを開放する位置である。蓋部材12は、蓋駆動部(図示省略)によって第1位置P1と第2位置P2との間を移動する。
【0013】
ディスク20は、円盤状に設けられた円盤部21および軸部22を備えている(図2参照)。ディスク20は、軸部22の軸線22a周りに矢印Aの方向に回転駆動する。ディスク20の回転方向は、上面視において反時計回り方向である。軸線22aの方向は、上下方向に沿う方向である。
【0014】
円盤部21は、上面21aが軸線22aに対して直交するように、かつ、上面21aの中央部が出湯部11と対向するように配置されている。すなわち、円盤部21は、上面21aが水平方向に沿うように設けられている。以下、円盤部21の上面21aをディスク20の上面21aと記載する場合がある。円盤部21の上面21aは、特許請求の範囲のディスク20の上面21aに相当する。軸部22は、円盤部21の中央部から上下方向に沿って下方に向けて延びるように設けられている。円盤部21と軸部22は、一体的に設けられている。
【0015】
ディスク駆動部30は、ディスク20を回転駆動させるものである。ディスク駆動部30は、例えばサーボモータである。ディスク駆動部30は、制御装置60によって出力される制御指令値にしたがってディスク20の回転数であるディスク回転数を調整する。
【0016】
第1温度センサ40は、ディスク20の温度であるディスク温度を検出するものである。第1温度センサ40は、非接触型の温度センサであり、具体的には、放射温度計である。第1温度センサ40は、円盤部21の上面21aの温度を検出する。第1温度センサ40は、具体的には、円盤部21の下面21bの温度を検出することにより、円盤部21の上面21aの温度を間接的に検出する。円盤部21の上面21aの温度と円盤部21の下面21bの温度との相関関係は、実験等により実測されて導出されている。第1温度センサ40によって検出されたディスク温度は、制御装置60に出力される。第1温度センサ40は、特許請求の範囲の温度検出部に相当する。
【0017】
第2温度センサ50は、溶湯Mの温度である溶湯温度を検出するものである。第2温度センサ50は、るつぼ10の底壁10aの外面に接触して配置されている。第2温度センサ50は、るつぼ10の底壁10aの温度を検出することにより、溶湯温度を間接的に検出する。溶湯温度とるつぼ10の底壁10aの温度との相関関係は、実験等により実測されて導出されている。第2温度センサ50によって検出された溶湯温度は、制御装置60に出力される。
【0018】
微粉末Pが製造される場合、図2に示すように、ディスク駆動部30によってディスク20が回転駆動され、出湯部11からディスク20の上面21aに溶湯Mが供給される。溶湯Mは、ディスク20の遠心力によってディスク20の上面21aを伝って、円盤部21の周縁に向けて移動し、円盤部21の周縁から円盤部21の径方向に沿って円盤部21の外側に向けて噴霧される。噴霧された溶湯Mは、ディスク20の周囲にある気体によって冷却されることにより凝固して、微粉末Pが形成される。気体は、例えば不活性ガスである。
【0019】
遠心噴霧装置1の使用者が所望する微粉末Pの粒径を得るために、ディスク回転数が第1所定回転数に調整され、溶湯Mの流量が第1所定流量に調整される。溶湯Mの流量の調整は、出湯部11に設けられた絞り弁(図示省略)によって、出湯部11の流路面積が調整されることにより行われる。第1所定回転数及び第1所定流量は、金属の種類や溶湯温度に応じて、実験等によって実測されて設定されている。第1所定流量は、特許請求の範囲の所定流量に相当する。
【0020】
このように、遠心噴霧装置1は、溶融された金属である溶湯Mを、第1所定回転数にて回転駆動するディスク20の上面21aに供給して、ディスク20の遠心力によって噴霧することにより、溶湯Mから微粉末Pを製造する。すなわち、遠心噴霧装置1は、遠心噴霧法(ディスクアトマイズ法)を用いて、微粉末Pを製造する。
【0021】
また、円盤部21の上面21aの温度すなわちディスク温度と、溶湯温度との温度差が比較的大きい場合、溶湯Mが円盤部21の上面21aになじまず、図2の破線にて示すように溶湯Mの跳ね返りが発生する場合がある。この場合、微粉末Pが安定して製造されない。
【0022】
金属粉末装置の構成について説明を続ける。
制御装置60は、ディスク回転数を少なくとも制御するものである。制御装置60と、ディスク駆動部30、第1温度センサ40及び第2温度センサ50とは、有線または無線によって電気的に接続されている。制御装置60は、図3に示すように、取得部61、判定部62、及び、回転数制御部63を備えている。
【0023】
取得部61は、第1温度センサ40及び第2温度センサ50の検出結果を取得するものである。取得部61によって取得された検出結果は、判定部62に導出される。
【0024】
判定部62は、溶湯Mがディスク20に供給されている際に、第1温度センサ40によって検出されたディスク温度が溶湯Mの温度である溶湯温度以下に設定された第1温度以上であるか否かを判定する。第1温度は、第1所定回転数にて回転するディスク20に溶湯Mが供給されている場合に、円盤部21の上面21aにおいて溶湯Mの跳ね返りが抑制される温度に設定される。第1温度は、溶湯Mの種類毎に設定される。本実施例において、第1温度は、溶湯温度の90%に設定されている。
【0025】
回転数制御部63は、ディスク回転数を制御するものである。回転数制御部63は、ディスク回転数に応じたディスク駆動部30の駆動量を制御指令値としてディスク駆動部30に出力する。回転数制御部63は、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスク20の回転数であるディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数にて制御する。
【0026】
具体的には、回転数制御部63は、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数より低い第2所定回転数にて一定とするように制御する。第2所定回転数は、ディスク温度が第1温度より低い場合であっても、溶湯Mの跳ね返りが抑制される回転数に設定される。第2所定回転数は、第1所定回転数のおよそ5〜60%、好ましくは10〜50%、より好ましくは15〜40%にて設定される。本実施例において、第2所定回転数は、第1所定回転数の20%に設定されている。
一方、回転数制御部63は、判定部62によってディスク温度が第1温度以上であると判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数にて制御する。
【0027】
次に、遠心噴霧装置1が微粉末Pを製造する動作について図4のタイムチャートを用いて説明する。るつぼ10に溶湯Mが貯留されておらず、蓋部材12が第1位置P1に位置し、かつ、ディスク20が回転駆動していない状態から説明する。このとき、ディスク回転数はゼロであり、ディスク温度は、ディスクの周囲の気体の温度に相当する雰囲気温度である。
【0028】
蓋部材12が第1位置P1から第2位置P2に移動されることにより、溶湯Mの供給が第1所定流量にて開始され、かつ、ディスク20の回転駆動が開始される(時刻t1)。溶湯Mがディスク20の上面21aに到達することにより(図2参照)、溶湯Mの熱がディスク20に伝達するため、ディスク温度がさらに上昇する。この時、ディスク温度が第1温度より低いため、ディスク回転数が第2所定回転数にて一定となるように、ディスク20が回転駆動する(回転数制御部63、ディスク駆動部30)。
【0029】
ディスク回転数が第1所定回転数より低い第2所定回転数であるため、ディスク温度が第1温度より低い場合であっても、ディスク20の上面21aにおいて溶湯Mの跳ね返りが抑制される。よって、溶湯Mは、ディスク20の上面21aを伝って、ディスク20の上面21aの周縁から円盤部21の径方向に沿って円盤部21の外側に向けて噴霧される。また、このとき、製造される微粉末Pの粒径は、使用者が所望する粒径よりも大きくなる。
【0030】
続けて、溶湯Mがディスク20の上面21aに供給されることにより、ディスク温度がさらに上昇し、ディスク温度が第1温度に到達した時(時刻t2)、ディスク回転数が第1所定回転数に切り替えられて、ディスク20が回転駆動する(回転数制御部63、ディスク駆動部30)。これにより、製造される微粉末Pの粒径は、使用者が所望する粒径となる。さらに、溶湯Mが供給されることによってディスク温度が上昇し、溶湯温度に到達する。溶湯Mが供給されている間は、ディスク温度が溶湯温度に維持される。
【0031】
微粉末Pの製造が終了し、蓋部材12が第2位置P2から第1位置P1に移動されることにより溶湯Mの供給が停止され、かつ、ディスク20の回転駆動が停止されると(時刻t3)、ディスク温度が徐々に低下する。
【0032】
一方、微粉末Pの製造が開始される時点(時刻t1)において、ディスク温度が第1温度以上である場合、微粉末Pの製造が開始される時点から、ディスク回転数が第1所定回転数にてディスク20が回転駆動される(回転数制御部63、ディスク駆動部30)。
【0033】
なお、本実施例とは異なり、ディスク温度が第1温度より低い場合にディスク回転数が、第2所定回転数より高い第1所定回転数にて回転駆動された場合、上述したように、ディスク20の上面21aにて溶湯Mの跳ね返りが発生する(図2の破線参照)。この場合、溶湯Mの熱がディスク20に十分に伝達されないため、図4の一転鎖線にて示すように、ディスク温度が第1温度にまで上昇しないことが考えられる。
【0034】
本実施例によれば、遠心噴霧装置1は、溶融された金属である溶湯Mを、第1所定回転数にて回転駆動するディスク20の上面21aに供給して、ディスク20の遠心力によって噴霧することにより、溶湯Mから所望の粒径の微粉末Pを製造する。遠心噴霧装置1は、ディスク20の温度であるディスク温度を検出する第1温度センサ40と、溶湯Mがディスク20に供給されている際に、第1温度センサ40によって検出されたディスク温度が溶湯Mの温度である溶湯温度以下に設定された第1温度以上であるか否かを判定する判定部62と、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスク20の回転数であるディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数にて制御するとともに、判定部62によってディスク温度が第1温度以上であると判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数にて制御する回転数制御部63と、を備えている。
【0035】
本実施例によれば、遠心噴霧装置1は、溶湯Mが供給されている際に、ディスク温度が溶湯温度以下の第1温度より低い場合、ディスク回転数が第1所定回転数より低い回転数にて制御される。これにより、ディスク20の上面21aにおいて溶湯Mの跳ね返りが抑制されるため、溶湯Mがディスク20の上面21aを伝いやすくなり、ひいては、溶湯Mの熱がディスク20に伝達しやすくなる。したがって、溶湯温度とディスク温度との温度差を抑制して、微粉末Pの製造の安定化を図ることができる。
【0036】
また、回転数制御部63は、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、ディスク回転数を第1所定回転数より低い第2所定回転数にて一定とするように制御する。
これによれば、溶湯Mの熱がディスク20に確実に伝達されるため、微粉末Pの製造の安定化をより図ることができる。
【0037】
なお、上述した実施例において、遠心噴霧装置の一例を示したが、本明細書の実施例はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、ディスク温度が第1温度より低い場合、ディスク回転数が第2所定回転数にて一定となるように制御されているが、これに代えて、ディスク回転数を第2所定回転数より低い回転数にて変動させるように制御してもよい。この場合、例えば、ディスク回転数をゼロから第2所定回転数まで徐々に増加させる。また、ディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数にて変動させるように制御してもよい。
【0038】
また、上述した実施例において、回転数制御部63は、判定部62の判定結果に基づいて、ディスク回転数を制御しているが、これに代えて、判定部62の判定結果に関わらず、微粉末Pの製造が開始される時(図4の時刻t1)に、ディスク回転数を第1所定回転数より低い回転数に設定してもよい。この場合、例えば、回転数制御部63は、製造が開始される時に、ディスク回転数を第2所定回転数に設定する。続けて、微粉末Pの製造が開始される時点から、ディスク温度が第1温度より低い場合、ディスク回転数が第2所定回転数に維持される(図4)。さらに、溶湯Mが供給されることによって、ディスク温度が第1温度以上となった場合、ディスク回転数が第1所定回転数に切り替えられる(図4の時刻t2)。これに対して、微粉末Pの製造が開始される時点からディスク温度が第1温度以上である場合、ディスク回転数は、微粉末Pの製造が開始された時点の直後に第2所定回転数から第1所定回転数に切り替えられる。なお、この場合において、製造が開始された時点から所定時間(例えば5秒)経過した時点から、回転数制御部63が、判定部62の判定結果に基づいて、ディスク回転数を制御してもよい。
【0039】
これによれば、微粉末Pの製造が開始される時から溶湯Mの跳ね返りを確実に抑制することができる。したがって、製造の安定化をさらに図ることができる。なお、微粉末Pの製造が開始される時点(時刻t1)において、ディスク20を第1所定回転数より低い回転数にて回転駆動させて、ディスク20の上面21aに溶湯Mを供給する工程が、特許請求の範囲に記載の第1工程に相当する。また、第1工程が実行された後、ディスク20の温度が第1温度以上となった場合、ディスクの回転数を第1所定回転数に調整する工程が、特許請求の範囲に記載の第2工程に相当する。
【0040】
また、上述した実施例において、微粉末Pが製造されている間、溶湯Mが第1所定流量にて一定で供給されるが、これに代えて、溶湯Mの流量を変動させてもよい。この場合、遠心噴霧装置1は、図5に示すように、流量調整部170及び流量制御部164をさらに備える。
【0041】
流量調整部170は、溶湯Mの流量を調整するものである。流量調整部170は、例えば、流量を調整する絞り弁(図示省略)を有する流量調整弁である。流量調整部170は、例えば、出湯部11に配置され、制御装置60と有線または無線によって電気的に接続されている。流量調整部170には、制御装置60からの絞り弁の絞り量が制御指令値として出力される。
【0042】
流量制御部164は、ディスク回転数に応じて、溶湯Mの流量を制御するものである。具体的には、流量制御部164は、回転数制御部63によってディスク回転数が第1所定回転数にて制御されている場合、流量調整部170によって、溶湯Mの流量を第1所定流量にて制御する。また、回転数制御部63によってディスク回転数が第1所定回転数より低い回転数にて制御されている場合、流量調整部170によって、溶湯Mの流量が第1所定流量より多い流量にて制御される。具体的には、流量調整部170によって、溶湯Mの流量が第1所定流量より多い第2所定流量一定にて制御される。
【0043】
これにより、ディスク回転数が第1所定回転数より低い回転数にて制御されている場合、溶湯Mが第1所定流量より多い第2所定流量一定にて供給される。よって、ディスク20に伝達される単位時間当たりの溶湯Mの熱量が増加するため、上述した実施例に比べて、ディスク温度が早期に第1温度に到達する。よって、微粉末Pの製造の安定化を早期に図ることができる。ディスク回転数が第1所定回転数にて制御されている場合、溶湯Mが第1所定流量にて供給されるため、使用者が所望する微粉末Pが製造される。
【0044】
なお、流量制御部164は、ディスク回転数が第1所定回転数より低い回転数にて制御されている場合、第2所定流量一定ではなく、第1所定流量より多い流量にて変動させてもよい。
【0045】
また、流量制御部164は、判定部62の結果に基づいて溶湯Mの流量を制御してもよい。例えば、回転数制御部63は、判定部62によってディスク温度が第1温度より低いと判定された場合、溶湯Mの流量を第1所定流量より多い流量に設定するとともに、判定部62によってディスク温度が第1温度以上であると判定された場合、溶湯Mの流量を第1所定流量にて制御する。
【0046】
また、上述した実施例において、溶湯Mの流量の調整は、絞り弁によって行われているが、これに代えて、蓋部材12の移動量の調整によって行うようにしても良い。また、るつぼ10に貯留された溶湯Mの液面に作用する圧力を調整することによって、溶湯Mの流量を調整可能としてもよい。
【0047】
また、上述した実施例において、溶湯Mの供給が開始された時点(時刻t1)からディスク温度が上昇するが、これに代えて、溶湯Mの供給が開始される時点より前からディスク温度を上昇させるようにしてもよい。具体的には、るつぼ10とディスク20との距離を調整し、るつぼ10に貯留された溶湯Mの熱がディスク20に伝わるようにする。この場合、図6に示すように、るつぼ10に溶湯Mが貯められることにより(時刻t0)、るつぼ10からの輻射熱でディスク温度が雰囲気温度から上昇する。これによれば、溶湯Mの供給が開始される時点(時刻t1)より前にディスク温度を上昇させることができるため、微粉末Pの製造の安定化をより早期に図ることができる。具体的には、ディスク回転数が第2所定回転数にて制御されている時間を短くすることができる。
【0048】
また、本明細書の要旨を逸脱しない範囲において、るつぼ10やディスク20の形状、溶湯Mの吐出方法、ディスク20の回転方向を変更してもよい。また、るつぼ10としては、耐火物炉やコールドクルーシブル炉であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…遠心噴霧装置、20…ディスク、30…ディスク駆動部、40…第1温度センサ(温度検出部)、60…制御装置、62…判定部、63…回転数制御部、164…流量制御部、170…流量調整部、M…溶湯、P…微粉末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6