特開2021-4394(P2021-4394A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021004394-遠心噴霧装置 図000003
  • 特開2021004394-遠心噴霧装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-4394(P2021-4394A)
(43)【公開日】2021年1月14日
(54)【発明の名称】遠心噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/10 20060101AFI20201211BHJP
【FI】
   B22F9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-118284(P2019-118284)
(22)【出願日】2019年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】米虫 悠
(72)【発明者】
【氏名】津田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】中井 泰弘
【テーマコード(参考)】
4K017
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA10
4K017ED02
4K017ED03
(57)【要約】
【課題】金属の微粉末を製造するディスクアトマイズ法において、ディスクの融点より溶湯の温度が高い場合であっても、ディスクの溶損や破損の発生を抑制することができる遠心噴霧装置を開示すること。
【解決手段】遠心噴霧装置1は、溶融された金属である溶湯Mから、ディスクアトマイズ法により微粉末Pを製造する。遠心噴霧装置1は、溶湯Mの温度より低い融点を有する材料によって形成されるとともに、上面21aに溶湯Mが供給され、かつ、軸線22a回りに回転駆動するディスク20と、ディスク20の温度をディスク20の融点より低い温度にするように、ディスク20を冷却する冷却装置40と、を備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された金属である溶湯から、ディスクアトマイズ法により微粉末を製造する遠心噴霧装置であって、
前記溶湯の温度より低い融点を有する材料によって形成されるとともに、上面に前記溶湯が供給され、かつ、軸線回りに回転駆動するディスクと、
前記ディスクの温度を前記ディスクの融点より低い温度にするように、前記ディスクを冷却する冷却装置と、を備えている遠心噴霧装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、
前記ディスクから離れて配置され、前記ディスクの熱を吸収する吸熱部材を備えている請求項1に記載の遠心噴霧装置。
【請求項3】
前記ディスクは、
前記上面を有する円盤状に形成された円盤部と、
前記円盤部から、前記軸線に沿って延びるように形成された軸部と、を備え、
前記吸熱部材は、
前記円盤部の下面から、前記円盤部の下方に第1所定距離離れて設けられた第1吸熱部と、
前記軸部の外周面から、前記軸部の径方向外側に第2所定距離離れて設けられた第2吸熱部と、を備えている請求項2に記載の遠心噴霧装置。
【請求項4】
前記吸熱部材の内部には、第1冷媒が流通する流路が設けられ、
前記冷却装置は、前記流路に前記第1冷媒を流通させて前記吸熱部材を冷却する第1冷媒供給部をさらに備えている請求項2または請求項3に記載の遠心噴霧装置。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記ディスクと前記吸熱部材との間に第2冷媒を供給して前記ディスクを冷却する第2冷媒供給部をさらに備えている請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の遠心噴霧装置。
【請求項6】
前記冷却装置は、
前記ディスクの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出される前記ディスクの温度を、前記ディスクの融点より低い温度とするように、前記第2冷媒の流量を制御する制御部と、をさらに備えている請求項5に記載の遠心噴霧装置。
【請求項7】
前記冷却装置は、前記ディスクの温度を前記溶湯の凝固点より低い温度にするように、前記ディスクを冷却する請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の遠心噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至特許文献4には、溶湯から微粉末を製造する遠心噴霧法のうち、高速回転するディスクに溶湯が供給されて、溶湯が、ディスクの遠心力によりディスクの表面を伝って、ディスクの周縁から噴霧されるディスクアトマイズ法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240060号公報
【特許文献2】特許第5095384号公報
【特許文献3】特許第5748991号公報
【特許文献4】特開2013−14810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスクアトマイズ法において、ディスクは、一般的に耐熱性及び耐反応性を有する材料にて設けられている。しかしながら、ディスクの融点より溶湯の温度が高い場合、ディスクに溶湯が供給されることにより、ディスクの溶損や破損の発生が考えられる。
【0005】
そこで、本明細書は、金属の微粉末を製造するディスクアトマイズ法において、ディスクの融点より溶湯の温度が高い場合であっても、ディスクの溶損や破損の発生を抑制することができる遠心噴霧装置を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示された実施例に記載の遠心噴霧装置は、溶融された金属である溶湯から、ディスクアトマイズ法により微粉末を製造する遠心噴霧装置であって、溶湯の温度より低い融点を有する材料によって形成されるとともに、上面に溶湯が供給され、かつ、軸線回りに回転駆動するディスクと、ディスクの温度をディスクの融点より低い温度にするように、ディスクを冷却する冷却装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示された実施例に記載の遠心噴霧装置によれば、冷却装置によって
ディスクの温度がディスクの融点より低くなるようにディスクが冷却される。よって、遠心噴霧装置は、ディスクの融点より溶湯の温度が高い場合であっても、ディスクの溶損や破損の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書の実施例に係る遠心噴霧装置の概要図である。
図2図1に示すディスク及び冷却装置の詳細を示す図であり、ディスクに溶湯が供給されて、微粉末が製造されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書の実施例に係る遠心噴霧装置について図面を参照しながら説明する。本明細書においては、説明の便宜上、図1の上下方向を、遠心噴霧装置1の上下方向とする。なお、上下方向は、鉛直方向である。
【0010】
遠心噴霧装置1は、インゴット等が溶融された金属である溶湯Mから微粉末Pを製造するものである。金属は、例えばチタンである。遠心噴霧装置1は、図1に示すように、噴霧室1a、るつぼ10、ディスク20、ディスク駆動部30、及び、冷却装置40を備えている。噴霧室1aは、中空に形成され、ディスク20及びディスク駆動部30を少なくとも収容するものである。噴霧室1aは、ディスク20の大きさに対して十分大きい大きさに形成されている。
【0011】
るつぼ10は、溶湯Mを内側に貯留するものである。るつぼ10は、下方に向けて突出する凸状に形成された底壁10aを有する筒状に設けられている。るつぼ10は、出湯部11および蓋部材12を備えている。底壁10aは、噴霧室1aの一部を構成する。
【0012】
出湯部11は、るつぼ10の底壁10aと一体に設けられ、溶湯Mを下方に向けて吐出するものである。出湯部11は、底壁10aの中央部に、底壁10aを貫通する貫通穴11aを有する筒状に設けられている。出湯部11の下端部は、噴霧室1aの内側に位置する。噴霧室1a内には、不活性ガスが充填されている。不活性ガスは、例えばアルゴンである。
【0013】
蓋部材12は、第1位置P1に位置する場合に出湯部11からの溶湯Mの吐出を規制し、第2位置P2に位置する場合にて出湯部11からの溶湯Mの吐出を許容するものである。第1位置P1は、蓋部材12が出湯部11の上端に貫通穴11aを塞ぐように液密に接触する位置である。第2位置P2は、第1位置P1より上方の位置であり、貫通穴11aが開放される位置である。蓋部材12は、蓋駆動部(図示省略)によって第1位置P1と第2位置P2との間を移動する。
【0014】
ディスク20は、溶湯Mの温度より低い融点を有する材料によって形成されるとともに、上面21aに溶湯Mが供給され、かつ、軸線22a回りに回転駆動するものである。本実施例の金属であるチタンの融点がおよそ1660℃であるため、溶湯Mの温度は、1660℃以上である。ディスク20の材料は、チタンの融点より低い融点を有するステンレス鋼が用いられている。本実施例のステンレス鋼の融点は、1420℃である。なお、チタンの融点は、チタンの凝固点と同じ温度である。すなわち、本実施例において、ディスク20の融点は、溶湯Mの凝固点より低い。
【0015】
ディスク20は、円盤状に設けられた円盤部21および軸部22を備えている。ディスク20は、軸部22の軸線22a周りに矢印Aの方向に回転駆動する。ディスク20の回転方向は、上面視において反時計回り方向である。軸線22aの延びる方向は、上下方向に沿う方向である。
【0016】
円盤部21は、上面21aが軸線22aに対して直交するように、かつ、上面21aの中央部が出湯部11と対向するように配置されている。すなわち、円盤部21は、上面21aが水平方向に沿うように設けられている。以下、円盤部21の上面21aをディスク20の上面21aと記載する場合がある。円盤部21の上面21aは、特許請求の範囲のディスク20の上面21aに相当する。軸部22は、円盤部21の中央部から上下方向に沿って下方に向けて延びるように設けられている。円盤部21と軸部22は、一体的に設けられている。
【0017】
ディスク駆動部30は、ディスク20を回転駆動させるものである。ディスク駆動部30は、例えばサーボモータである。ディスク駆動部30は、ディスク20の回転数であるディスク回転数を調整する。
【0018】
冷却装置40は、ディスク20の温度をディスク20の融点より低い温度にするように、ディスク20を冷却するものである。具体的には、冷却装置40は、ディスク20の温度が目標とする温度である目標温度となるようにディスク20を冷却する。本実施例において、目標温度は、ディスク20の融点より所定温度(例えば100℃)だけ低い温度に設定されている。なお、上述したように、ディスク20の融点が溶湯Mの凝固点より低いため、目標温度は、溶湯Mの凝固点より低い。
【0019】
冷却装置40は、少なくとも、ディスク20の上面21aの温度をディスク20の融点より低い温度とする。冷却装置40は、図1及び図2に示すように、吸熱部材41、第1冷媒供給部42、第2冷媒供給部43、温度検出部44、及び、制御部45を備えている。
【0020】
吸熱部材41は、ディスク20から離れて配置され、ディスク20の放射熱を吸収するものである。吸熱部材41は、熱伝導率が比較的高い材料にて設けられている。吸熱部材41の材料は、例えば銅やアルミニウムである。吸熱部材41は、第1吸熱部41a及び第2吸熱部41bを備えている。第1吸熱部41aと第2吸熱部41bとは、一体に設けられている。
【0021】
第1吸熱部41aは、円盤部21の下面21bから、円盤部21の下方に第1所定距離d1離れて設けられたものである。第1吸熱部41aは、円盤状に設けられ、第1吸熱部41aの上面41a1が円盤部21の下面21bと上下方向に沿って第1所定距離d1だけ離れて対向する。第1吸熱部41aは軸部22が貫通する穴部41a2が設けられている。
【0022】
第2吸熱部41bは、軸部22の外周面22bから、軸部22の径方向外側に第2所定距離d2離れて設けられたものである。第2吸熱部41bは、内側に軸部22が貫通する筒状に設けられている。第2吸熱部41bの内側面は、軸部22の外周面22bから、径方向に沿って第2所定距離d2だけ離れて設けられている。第2吸熱部41bの内側面と、穴部41a2の内側面とは同一面である。
【0023】
第1所定距離d1および第2所定距離d2は、後述する第1冷媒R1の第1所定流量及び第2冷媒R2の流量と合わせて考慮されて、ディスク20の温度が目標温度となる距離に設定されている。第1所定距離d1および第2所定距離d2は、実験等によって実測されて導出されている。第1所定距離d1と第2所定距離d2とは、異なる距離に設定されている。
【0024】
吸熱部材41の内部には、第1冷媒R1が流通する流路41cが設けられている。流路41cは、吸熱部材41に複数設けられている。本実施例において、流路41cは、第1流路41d及び第2流路41eを備えている。第1流路41dは、第2吸熱部41bの底面にそれぞれ開口する第1導入部41d1と第1導出部41d2とを接続する。第2流路41eは、第2吸熱部41bの底面にそれぞれ開口する第2導入部41e1と第2導出部41e2とを接続する。第1流路41d及び第2流路41eは、吸熱部材41の外周面に沿うように設けられている。第1冷媒R1は、水である。
【0025】
第1冷媒供給部42は、流路41cに第1冷媒R1を流通させて吸熱部材41を冷却するものである。第1冷媒供給部42は、タンク42a、第1流通管42b、第2流通管42c、及び、ポンプ42dを備えている。タンク42aは、第1冷媒R1を貯留するものである。タンク42aは、噴霧室1aの外部に配置されている。第1流通管42bは、第1端がタンク42a内に開口し、第2端が第1流路41dの第1導入部41d1に接続され、第1冷媒R1が流通する管である。第1流通管42bは、第1分岐管42b1を備えている。第1分岐管42b1は、第1流通管42bに設けられた第1分岐点42b2と第2流路41eの第2導入部41e1とを接続し、第1冷媒R1が流通する管である。
【0026】
第2流通管42cは、第1端がタンク42aの内側に向けて開口し、第2端が第1流路41dの第1導出部41d2に接続され、第1冷媒R1が流通する管である。第2流通管42cは、第2分岐管42c1を備えている。第2分岐管42c1は、第2流通管42cに設けられた第2分岐点42c2と第2流路41eの第2導出部41e2とを接続し、第1冷媒R1が流通する管である。
【0027】
ポンプ42dは、第1流通管42bにおける第1端と第1分岐点42b2との間に配置され、第1冷媒R1を送出するものである。ポンプ42dが駆動することにより、第1冷媒R1が、タンク42a、第1流通管42b及び第1分岐管42b1、第1流路41d及び第2流路41e、第2流通管42c及び第2分岐管42c1、並びに、タンク42aの順に循環する。ポンプ42dは、第1冷媒R1が第1所定流量一定にて循環するように駆動する。第1所定流量は、上述した所定距離d1,d2及び後述する第2冷媒R2の流量と合わせて考慮されて、ディスク20の温度が目標温度となる流量に設定されている。第1所定流量は、実験等によって実測されて導出されている。
【0028】
第2冷媒供給部43は、ディスク20と吸熱部材41との間に第2冷媒R2を供給してディスク20を冷却するものである。第2冷媒供給部43は、具体的には、第2冷媒R2を、第2吸熱部41bの下端から第2吸熱部41bの内側に向けて供給し、図2の破線の矢印にて示すように、第2吸熱部41bの内側、及び、第1吸熱部41aと円盤部21との間を流通させ、円盤部21の径方向外側に向けて流出させる。第2冷媒供給部43は、ノズル43a、ブロワ43b、及び、ノズル43aとブロワ43bとを接続して第2冷媒R2を流通させる第3流通管43cを備えている。
【0029】
ノズル43aは、第2冷媒R2を第2吸熱部41bの内側に向けて噴出するものである。本実施例において、ノズル43aは複数設けられている。ブロワ43bは、第2冷媒R2を吸い込んで、第3流通管43cを介して、第2冷媒R2をノズル43aに供給する送風機である。ブロワ43bは、噴霧室1a内におけるディスク20や溶湯Mの熱の影響が抑制された場所に配置されている。ブロワ43bは、噴霧室1a内の不活性ガスを吸い込んで送出する。すなわち、第2冷媒R2は、不活性ガスである。第3流通管43cは、第3分岐点43c1から分岐して複数のノズル43aに第2冷媒R2を供給する。
【0030】
温度検出部44は、ディスク20の温度を検出するものである(図1参照)。温度検出部44は、非接触型の温度センサであり、具体的には、放射温度計である。温度検出部44は、第1吸熱部41aに設けられた貫通穴41a3の内側に配置されている。温度検出部44は、制御部45と有線又は無線によって電気的に接続されている。
【0031】
温度検出部44は、円盤部21の上面21aの温度を検出する。温度検出部44は、具体的には、円盤部21の下面21bの温度を検出することにより、円盤部21の上面21aの温度を間接的に検出する。円盤部21の上面21aの温度と円盤部21の下面21bの温度との相関関係は、実験等により実測されて導出されている。温度検出部44によって検出されたディスク20の温度は、制御部45に出力される(図1参照)。
【0032】
制御部45は、温度検出部44によって検出されるディスク20の温度をディスク20の融点より低い温度とするように、第2冷媒R2の流量を制御する。制御部45は、具体的には、温度検出部44によって検出されるディスク20の温度と目標温度との差分に基づいて、ブロワ43bの駆動量を導出し、その駆動量を制御指令値としてブロワ43bに出力するフィードバック制御を実行する。
【0033】
次に、微粉末Pが製造される場合における、上述した遠心噴霧装置1の動作について図2を用いて説明する。はじめに、ディスク20がディスク駆動部30によって回転駆動されるとともに、冷却装置40によってディスク20の温度を目標温度とするように、ディスク20が冷却される。
【0034】
具体的には、吸熱部材41が、ディスク20からの放射熱(輻射熱)を吸収する。また、第1冷媒供給部42のポンプ42dによって吸熱部材41の流路41cに第1冷媒R1が第1所定流量にて流通する。これにより、吸熱部材41が冷却されるため、ディスク20からの放射熱が吸熱部材41に継続して吸収される。
【0035】
さらに、第2冷媒供給部43によって、第2冷媒R2がディスク20と吸熱部材41との間を流通する。これにより、第2冷媒R2がディスク20の熱を吸収して、ディスク20の径方向外側に向けて流出するとともに、ディスク20の熱が第2冷媒R2を介して吸熱部材41に伝達する。また、第2冷媒R2の流量は、温度検出部44によって検出されるディスク20の温度に基づいて調整される(制御部45)。これらによって、ディスク20の温度がディスク20の融点より低い目標温度に調整される。
【0036】
続けて、出湯部11から溶湯Mが吐出される。吐出された溶湯Mは、ディスク20の上面21aに到達し、ディスク20の遠心力によって円盤部21の周縁に向けてディスク20の上面21aを伝うとともに、ディスク20の上面21aにて冷却される。本実施例においては、上述したように、目標温度が溶湯Mの凝固点より低いため、ディスク20の上面21aの温度が溶湯Mの凝固点より低くなっている。よって、ディスク20の上面21aにおいて溶湯Mが凝固して、金属の膜である金属膜Fが形成される。
【0037】
ディスク20の温度と溶湯Mの凝固点との温度差が大きい程、金属膜Fの厚みが厚くなる。ディスク20の上面21aから金属膜Fの上面に向かうにしたがって金属膜Fの温度が高くなり、金属膜Fの上面の温度は、溶湯Mの凝固点以上となる。よって、金属膜Fの上面に供給された溶湯Mは、凝固せずに、金属膜Fの上面を伝って、円盤部21の周縁に向けて移動し、円盤部21の径方向外側に向けて噴霧される。噴霧された溶湯Mは、不活性ガスによって冷却されて凝固して、微粉末Pが形成される。製造された微粉末Pは、噴霧室1aの底部にて回収される。
【0038】
溶湯Mがディスク20に供給されている場合、溶湯Mの熱がディスク20に伝達するため、ディスク20の温度が上昇する。これにより、温度検出部44の検出温度が上昇するため、この検出温度と目標温度と差が増加する。よって、第2冷媒R2の流量が増加するように制御される。これにより、ディスク20がより冷却されるため、ディスク20の温度が目標温度に抑制される。
【0039】
本実施例によれば、遠心噴霧装置1は、溶融された金属である溶湯Mから、ディスクアトマイズ法により微粉末Pを製造する。遠心噴霧装置1は、溶湯Mの温度より低い融点を有する材料によって形成されるとともに、上面21aに溶湯Mが供給され、かつ、軸線22a回りに回転駆動するディスク20と、ディスク20の温度をディスク20の融点より低い温度にするように、ディスク20を冷却する冷却装置40と、を備えている。
【0040】
これによれば、冷却装置40によって、ディスク20の温度がディスク20の融点より低くなるようにディスク20が冷却される。よって、遠心噴霧装置1は、ディスク20の融点より溶湯Mの温度が高い場合であっても、ディスク20の溶損や破損の発生を抑制することができる。また、本実施例においては、ディスク20の融点及び目標温度が溶湯Mの凝固点より低いため、ディスク20の上面21aにて溶湯Mが冷却されることにより凝固して、金属膜Fが形成される。この金属膜Fによってディスク20が保護される。
【0041】
また、冷却装置40は、ディスク20から離れて配置され、ディスク20の熱を吸収する吸熱部材41を備えている。
これによれば、冷却装置40は、吸熱部材41によって、ディスク20の熱を確実に吸収することができる。
【0042】
また、ディスク20は、上面21aを有する円盤状に形成された円盤部21と、円盤部21から、軸線22aに沿って延びるように形成された軸部22と、を備えている。吸熱部材41は、円盤部21の下面21bから、円盤部21の下方に第1所定距離d1離れて設けられた第1吸熱部41aと、軸部22の外周面22bから、軸部22の径方向外側に第2所定距離d2離れて設けられた第2吸熱部41bと、を備えている。
これによれば、冷却装置40は、吸熱部材41によって、ディスク20の熱をより確実に吸収することができる。
【0043】
また、吸熱部材41の内部には、第1冷媒R1が流通する流路41cが設けられている。冷却装置40は、流路41cに第1冷媒R1を流通させて吸熱部材41を冷却する第1冷媒供給部をさらに備えている。
これによれば、冷却装置40は、第1冷媒供給部によって吸熱部材41が冷却されるため、ディスク20の熱をさらに確実に吸収することができる。
【0044】
また、冷却装置40は、ディスク20と吸熱部材41との間に第2冷媒R2を供給してディスク20を冷却する第2冷媒供給部43をさらに備えている。
これによれば、冷却装置40は、第2冷媒供給部43によって、ディスク20の熱をより確実に吸収することができる。
【0045】
また、冷却装置40は、ディスク20の温度を検出する温度検出部44と、温度検出部44によって検出されるディスク20の温度を、ディスク20の融点より低い温度とするように、第2冷媒R2の流量を制御する制御部45と、をさらに備えている。
これによれば、冷却装置40は、温度検出部44の検出結果に基づいて、ディスク20の温度を確実にディスク20の融点より低い温度にすることができる。
【0046】
また、冷却装置40は、ディスク20の温度を溶湯Mの凝固点より低い温度にするように、ディスク20を冷却する。
これによれば、ディスク20の上面21aにて溶湯Mが凝固することにより、ディスク20の上面21aに金属膜Fが形成される。よって、ディスク20の溶損や破損の発生をより確実に抑制することができる。本実施例においては、ディスク20の融点より低く設定された目標温度が溶湯Mの凝固点より低いため、ディスク20の上面21aに金属膜Fが形成される。
【0047】
なお、上述した実施例において、遠心噴霧装置の一例を示したが、本明細書の実施例はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。制御部45は、ディスク20の温度をディスク20の融点より低い温度とするように、第1冷媒R1の流量及び第2冷媒R2の流量のうち第2冷媒R2の流量を変動させて制御しているが、これに代えて、第1冷媒R1の流量のみを変動させて制御してもよい。この場合、第1冷媒R1の流量が第1所定流量一定ではなく、制御部45により、温度検出部44によって検出されるディスク20の温度と目標温度との差分に基づいて、ポンプ42dの駆動量が導出され、その駆動量を制御指令値としてポンプ42dに出力するフィードバック制御が実行される。さらに、この場合、第2冷媒R2が第2所定流量一定にて調整される。第2所定流量は、上述した所定距離d1,d2及び第1冷媒R1の流量と合わせて考慮されて、ディスク20の温度が目標温度となる流量に設定される。また、制御部45は、温度検出部44の検出結果に基づいて、第1冷媒R1の流量及び第2冷媒R2の流量の両方を変動させて制御してもよい。
【0048】
また、上述した実施例において、制御部45は、ディスク20の温度が目標温度となるようにブロワ43bの駆動量をフィードバック制御しているが、これに代えて、ディスク20の温度がディスク20の融点より低くなるように、ブロワ43bの駆動量及びポンプ42dの流量をそれぞれ一定の駆動量にて駆動させるようにしてもよい。この場合、冷却装置40は、温度検出部44を備えなくてもよい。
【0049】
また、上述した実施例において、冷却装置40は、第1冷媒供給部42及び第2冷媒供給部43の両方を備えているが、これに代えて、第1冷媒供給部42及び第2冷媒供給部43の一方を備えないようにしてもよい。冷却装置40が第1冷媒供給部42を備えない場合、吸熱部材41には流路41cが形成されない。また、冷却装置40が第2冷媒供給部43を備えない場合、吸熱部材41がディスク20に接触するように設けられてもよい。この場合、吸熱部材41とディスク20との接触する部位においては、摺動性の高い材料を用いてもよい。
【0050】
また、上述した実施例において、吸熱部材41は、第1吸熱部41a及び第2吸熱部41bの両方を備えているが、これに代えて、第1吸熱部41a及び第2吸熱部41bの一方を備えないようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施例において、ディスク20の融点より低く設定された目標温度が溶湯Mの凝固点より低いため、ディスク20の上面21aに金属膜Fが形成される。これに対して、上述した実施例と金属の種類が異なることにより、ディスク20の融点より溶湯Mの凝固点が低い場合において、目標温度を、ディスク20の融点より低くかつ溶湯Mの凝固点より低く設定してもよい。このとき、微粉末Pの製造時において、ディスク20の上面21aに金属膜Fが形成される。また、このディスク20の融点より溶湯Mの凝固点が低い場合において、目標温度を、ディスク20の融点より低くかつ溶湯Mの凝固点より高く設定してもよい。このとき、微粉末Pの製造時において、ディスク20の上面21aに金属膜Fが形成されない。
【0052】
また、上述した実施例において、第1所定距離d1と第2所定距離d2とは、異なる距離に設定されているが、これに対して、第1所定距離d1と第2所定距離d2とが同じ距離となるように設定してもよい。
【0053】
また、上述した実施例において、ディスク20の円盤部21が上面21aを有する円盤状に形成されているが、円盤部21の上面21aを、耐火物膜(図示省略)にて覆うようにしてもよい。耐火物膜は、円盤部21の上面21aの全体を覆う層状に形成される。耐火物膜の材料は、溶湯Mに対して化学的に安定した材料であり、かつ、溶湯Mの融点より高い融点をもつ材料である。耐火物膜の材料は、例えばカーボンファイバーである。この場合、冷却装置40は、耐火物膜の温度を、ディスク20の融点より低い温度とするように、ディスク20を冷却する。また、この場合、溶湯Mが耐火物膜の上面に供給され、金属膜Fが耐火物膜の上面に形成される。
【0054】
また、本明細書の要旨を逸脱しない範囲において、るつぼ10やディスク20の形状、金属の種類、溶湯Mの吐出方法、ディスク20の回転方向、ブロワ43bやタンク42aの位置、流路41cの個数及び形状、吸熱部材41の形状、目標温度、並びに、所定温度を変更してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…遠心噴霧装置、20…ディスク、21…円盤部、21a…上面、22…軸部、22a…軸線、22b…外周面、40…冷却装置、41…吸熱部材、41a…第1吸熱部、41b…第2吸熱部、41c…流路、42…第1冷媒供給部、43…第2冷媒供給部、44…温度検出部、45…制御部、d1…第1所定距離、d2…第2所定距離、F…金属膜、M…溶湯、P…微粉末、R1…第1冷媒、R2…第2冷媒。
図1
図2