【解決手段】充電器が全固体リチウムイオン二次電池を充電する際、当該電池の内部抵抗値またはその初期内部抵抗値に対する上昇率が予め定められたしきい値以上であるときに、定格充電電流よりも大きい加熱用電流で当該電池を充電する。
前記制御部は、前記加熱用電流の印加後の前記正極活物質および前記負極活物質の最高温度がそれぞれの融点未満となるように前記加熱用電流の大きさおよび/または印加時間を制御する、請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
前記全固体リチウムイオン二次電池は車両に搭載されており、前記充電器は前記車両の外部に設置された電源から供給される電力を用いて前記全固体リチウムイオン二次電池に前記加熱用電流を印加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
前記全固体リチウムイオン二次電池は車両に搭載されており、前記充電器は前記車両に搭載された他の電源から供給される電力を用いて前記全固体リチウムイオン二次電池に前記加熱用電流を印加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
前記正極活物質が硫黄単体またはリチウムを含有する硫黄の還元生成物を含み、前記負極活物質が金属リチウム単体を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、上述した本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
[二次電池システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムの構成を説明するためのブロック図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムを搭載した電気自動車の電気系統のシステム概要図である。
【0019】
図1を参照して、この全固体リチウムイオン二次電池システム(以下、「二次電池システム1」とも称する)は、全固体リチウムイオン二次電池(以下、「二次電池2」とも称する)を備える。そして、二次電池2のセル電圧(端子間電圧)を測定する電圧センサー3、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する温度センサー4、二次電池2へ充電電力を供給する電圧電流調整部5、二次電池2の充放電電流を測定する電流センサー6、二次電池2の充放電を制御する制御部7を備える。また、電圧電流調整部5は外部電源8に接続されていて充電時には電力の供給を受ける一方、放電時には電圧電流調整部5を介して外部電源8側へ放電する(詳細は後述する)。
【0020】
図2を参照して、二次電池2は通常、二次電池モジュール(組電池)110の形態でバッテリパック100に格納されている。バッテリパック100にはバッテリマネジメント(電池制御)システム(BMS)120が搭載されている。このBMS120は、電圧センサー3、温度センサー4、電流センサー6などを備えており、バッテリパック100および二次電池2(二次電池モジュール110)の情報を上位の制御部7に送信し、その指示を受信し、バッテリパック100および二次電池2(二次電池モジュール110)を制御する。すなわち、BMS120もまた、本発明における制御部として機能する。バッテリパック100はさらに、二次電池モジュール110の強電回路との接続遮断を制御するためのジャンクションボックス130を備えており、このジャンクションボックス130は制御部7の制御を受けている。
【0021】
電気自動車は、DC/DCジャンクションボックス200も備えている。DC/DCジャンクションボックス200には、二次電池2(二次電池モジュール110)からの高電圧を低電圧に変換するためのDC/DCコンバータ210が搭載されている。また、DC/DCジャンクションボックス200は、二次電池2(二次電池モジュール110)の普通充電系統への接続遮断を制御するための普通充電リレー220と、急速充電系統への接続遮断を制御するための急速充電リレー230とをさらに備えている。普通充電リレー220は、車載充電器221を介して普通充電ポート222に接続されており、また、急速充電リレー230は急速充電ポート232と直接接続されている。
【0022】
以下、
図1に示す各部の詳細を説明する。
【0023】
二次電池2は、通常の全固体リチウムイオン二次電池であり、正極活物質を含有する正極活物質層を含む正極と、負極活物質を含有する負極活物質層を含む負極と、前記正極活物質層および前記負極活物質層との間に介在する固体電解質層と、を有する発電要素を備える。なお、全固体リチウムイオン二次電池の詳細については後述する。
【0024】
電圧センサー3は、例えば電圧計でよく、二次電池2の正極と負極との間のセル電圧(端子間電圧)を測定する。二次電池2に通電していないときに測定されるセル電圧(端子間電圧)は二次電池2の開回路電圧(OCV)である。一方、二次電池2の充放電時に測定されるセル電圧(端子間電圧)は、二次電池2の内部抵抗(R)に起因する電圧降下(ΔV=ΔI×R)のぶんだけこの開回路電圧(OCV)から変化した値となる。すなわち、電圧センサー3は、SOC検出部またはOCV検出部として機能しうる。電圧センサー3の取り付け位置は特に制限されず、二次電池2に接続される回路内において正極と負極との間のセル電圧を測定することができる位置であればよい。
【0025】
温度センサー4は、二次電池2の外表面温度(環境温度)を測定する。温度センサー4は、例えば、二次電池2のケース(外装体、筐体)の表面などに取り付けられる。本実施形態では、温度センサー4によって測定された二次電池2の外表面温度から、後述する制御部7が二次電池2の内部における温度を推定することにより、二次電池2の温度を取得する。すなわち、温度センサー4および制御部7は、二次電池2の温度を検出する温度検出部として機能する。
【0026】
電圧電流調整部5は、二次電池2の充電時には、制御部7からの指令に基づいて外部電源8からの電力の電圧および電流を調整し、前記電力を二次電池2へ供給する。また、二次電池2の放電時には、電圧電流調整部5は、二次電池2から放電された電気を外部電源8側へ放出する。このようにして、電圧電流調整部5、外部電源8および後述する制御部7は、二次電池2を充電する充電器として機能する。
【0027】
ここで、外部電源8は、電気自動車等の充電に使用される、いわゆる電源グリッドなどと称される電気自動車用の電源であり、直流が出力されている。このような電気自動車用の電源は、商用電力(交流)を二次電池2の充電のために必要な電圧および電流の直流に変換して提供している。また、外部電源8には電力回生機能が備えられており、二次電池2からの放電があった場合は、直流を交流に変換して商用電源へ回生することができる。なお、このような外部電源8を構成する装置としては、電力回生機能の付いた周知の電源を使用すればよいため、ここでは詳細な説明は省略する(電力回生機能の付いた電源としては、例えば、特開平7−222369号公報、特開平10−080067号公報などに開示されているものがある)。
【0028】
外部電源8が商用電源などの外部電源装置に接続されていない場合、例えば外部に設置された他の二次電池などを電源として二次電池2を充電するときには、二次電池2から放電した電力を他の二次電池へ蓄電させることが好ましい。これによりエネルギーの無駄を少なくすることができる。
【0029】
電流センサー6は、例えば電流計である。電流センサー6は、二次電池2の充電時には電圧電流調整部5から二次電池2へ供給される電力の電流値を測定し、放電時には二次電池2から電圧電流調整部5へ供給される電力の電流値を測定する。電流センサー6の取り付け位置は特に制限されず、電圧電流調整部5から二次電池2に電力を供給する回路内に配置されて、充放電時の電流値を測定することができる位置であればよい。
【0030】
制御部7は、例えば、CPU71や記憶部72などを含んでいる、いわゆるコンピューターである。制御部7は、後述する手順に従って、二次電池2に充電処理を行う際に充電器を制御して、充電処理の条件などを調節する。このような制御部7としては、電気自動車においては、例えばECU(Electronic Control Unit)などを用いるようにしてもよい。なお、二次電池2が車載される場合、当該二次電池2および制御部7は車両に搭載され、充電器は当該車両の外部に設置されている構成でありうる。また、充電器は車両の外部に設置され、制御部7もまた当該充電器に搭載されている形態であってもよい。
【0031】
ここで、記憶部72は、CPU71がワーキングエリアとして使用するRAMのほかに、不揮発性メモリーを搭載している。不揮発性メモリーには、本実施形態における充電器の制御(充電処理の条件の調節)を行うためのプログラムを記憶している。
【0032】
また、記憶部72は、本実施形態における充電器の制御(充電処理の条件の調節)を行う際に参照される、二次電池2の初期内部抵抗値R
1、並びに、二次電池2の内部抵抗値Rの初期内部抵抗値R
1に対する上昇率R’についてのしきい値(R’
t)および二次電池2の電池温度Tについてのしきい値(T
t)を記憶している。さらに、記憶部72は、二次電池2の電池電圧Vと二次電池の充電状態(SOC;State of Charge)との関係を示すマップ(以下、「第1マップ」とも称する)を記憶している。
【0033】
[充電処理]
このように構成された二次電池システム1における充電処理の手順を説明する。
【0034】
この充電処理は、二次電池システム1が外部電源8に接続されて、二次電池2に対して充電電力が供給可能な状態において行われる。また、本実施形態における充電処理の制御は、二次電池2の電圧が所定電圧となるまで行う定電流(CC)充電方式である。ただし、充電処理の形態はこれに制限されず、定電流(CC)充電方式で充電を行い、二次電池2の電圧が所定電圧となった後には定電圧(CV)充電方式で行う、定電流・定電圧(CC−CV)充電方式を用いてもよい。
【0035】
本実施形態における制御では、上記充電器が二次電池2を充電する際に(具体的には、二次電池2を定格充電電流で充電する前に、または、二次電池2を定格充電電流で充電している途中に)、前記内部抵抗測定部が測定した内部抵抗値の初期内部抵抗値に対する上昇率が予め定められたしきい値以上であるか否かが判断される。そして、内部抵抗値の初期内部抵抗値に対する上昇率がしきい値以上であるときには、定格充電電流よりも大きい加熱用電流で二次電池2を充電するように上記充電器を制御するものである。なお、特に断りのない限り、この充電処理(充電器の制御)は制御部7によって行われる。以下、
図3を参照して、急速充電を実施する場合におけるこの制御の手順を説明する。
図3は、二次電池システム1における急速充電処理の手順を示すフローチャートである。
【0036】
まず、制御部7は、急速充電リレー230をONにする(ステップS101)。続いて、制御部は、外部電源8から電圧電流調整部5へ電力を導入して、二次電池2に数秒間程度の充電電流(パルス電流)を印加する(ステップS102)。なお、この際に印加される充電電流(パルス電流)は、二次電池2の内部抵抗値Rを算出する目的で印加されるものである。したがって、長時間にわたって印加される必要はないため、パルス電流でよい。また、充電電流(パルス電流)の値は、内部抵抗値Rの算出が可能な値であれば特に制限はない。
【0037】
次いで、制御部7は、電流センサー6から充電電流Iを取得し、電圧センサー3から電池電圧Vを取得する。そして、制御部7は、取得したこれらの値に基づいて、オームの法則から二次電池2の内部抵抗値R(=V/I)を算出するとともに、二次電池2の内部抵抗値Rの初期内部抵抗値R
1に対する上昇率R’を算出する(ステップS103)。ここで、上昇率R’は、
R’=(R−R
1)/R
1×100
のように表される。
【0038】
また、本実施形態において、制御部7は、記憶部82に記憶された「二次電池2の電池電圧Vと二次電池の充電状態(SOC)との関係を示すマップ」(第1マップ)を参照して、電圧センサー3から取得した電池電圧Vに基づき、二次電池2のSOCを算出してこれを取得する(ステップS103)。
【0039】
さらに、本実施形態において、制御部7は、温度センサー4から取得した測定温度T
mから二次電池2の内部の温度(電池温度T)を算出してこれを取得する(ステップS103)。この際、制御部7は、温度センサー4による温度の検出位置と二次電池2の発電要素との間の熱抵抗値(熱伝導度)に基づいて、温度センサー4が検出した二次電池の測定温度T
mを補正する。ここで、
図4は、温度センサー4による二次電池2の測定温度T
mから電池温度Tを算出する方法の一例を説明するためのグラフ(縦軸は温度;横軸は算出したい電池温度Tとなる電池内部の位置(温度推定位置)からの距離)である。
図4に示すように、温度推定位置から電池表面までの距離をΔx
1とし、電池表面から温度センサー4による測定位置(例えば、電池ケースの表面)までの距離をΔx
2とし、電池表面の両側の温度をそれぞれT
s1およびT
s2(T
s1>T
s2)とする。そうすると、いずれも既知のパラメータである電池表面および電池ケースの表面におけるそれぞれの熱伝達率h
1およびh
2、電池における熱伝導度λ
c、電池から測定位置までの熱伝導度λ
M、並びに測定温度T
mおよび外気温度T
∞を用いて、この系における熱流束Jは、
J=λ
c(T−T
s1)/Δx
1
J=h
1(Ts
1−Ts
2)
J=λ
M(Ts
2−T
∞)/Δx
2
J=h
2(T
m−T
∞)
のように表される。これらをTについて解くことで、電池温度Tを算出することができる。このように補正された電池温度Tを用いて以下の制御を行うことで、より精密な制御が可能となる。
【0040】
本実施形態において、制御部7は、続いて、上記で算出された内部抵抗値の上昇率R’を、予め定められて記憶部72に記憶されたしきい値R’
tと比較し、R’がR’
t以上であるか否かを判断する(ステップS104)。ここで、R’がR’
tよりも小さい(R’<R’
t)と判断されれば(S104:NO)、内部抵抗値の上昇率R’に基づく制御を終了して次のステップに進む。これは、二次電池2の内部抵抗値の上昇率R’が(そして、内部抵抗値Rの絶対値も)十分に低いことから、高い内部抵抗値に起因する種々の問題が発生する虞がないとみなしていることを意味する。なお、この場合、制御部7は、外部電源8から電圧電流調整部5へ電力を導入して、二次電池2に定格充電電流を印加して本充電を開始する(ステップS105)。
【0041】
ステップS105において本充電が開始されたら、制御部7は、電圧センサー3から電池電圧Vを取得するとともに、記憶部82に記憶された第1マップを参照して、電圧センサー3から取得した電池電圧Vに基づき、二次電池2のSOCを算出してこれを取得する(ステップS106)。その後、制御部7は、ステップS106において算出された二次電池2のSOCの値が充電処理を終了するのに十分な値として予め設定された目標SOCよりも大きい(SOC>目標SOC)か否かを判断する(ステップS107)。ここで、二次電池2のSOCの値が目標SOCよりも大きい(SOC>目標SOC)と判断されれば(S107:YES)、制御部7は、電圧電流調整部5を制御して、充電処理を終了するとともに、急速充電リレーをOFFにする(ステップS108)。
【0042】
一方、ステップS107において二次電池2のSOCの値が目標SOCよりも大きい(SOC>目標SOC)と判断されなければ(S107:NO)、制御部7は、ステップS103からの制御を繰り返す。
【0043】
一方、ステップS104において内部抵抗値Rの上昇率R’がしきい値R’
t以上である(R’≧R’
t)と判断されれば(S104:YES)、制御部7は、外部電源8から電圧電流調整部5へ電力を導入して、二次電池2に定格充電電流よりも大きい電流(加熱用電流)を印加する(ステップS110)。一般に、二次電池2に電流が印加されるとQ=RI
2×t(Rは抵抗値、Iは電流値、tは時間)で算出されるジュール熱が発生するが、上記加熱用電流は定格充電電流よりも大きい。このため、加熱用電流の印加時には、定格充電電流による充電時よりも多量のジュール熱が電池内部において発生することになる。これにより、電池の内部温度(電池温度T)は上昇し、電池の内部温度が発電要素を構成するある材料の融点近くまで上昇すると、当該材料は溶融する。本実施形態では、このことを利用して二次電池2の内部抵抗の低減(回復)を図っているのである。具体的には、例えば、二次電池2の主要な構成材料である固体電解質の融点と、正極および負極の活物質の融点とを比較すると、酸化物や硫化物から構成される固体電解質の方が通常はより高い融点を有している。そして、正極活物質として好適に用いられている硫黄(S)の融点は115.2℃であり、負極活物質として好適に用いられている金属リチウム単体(Li)の融点は180.5℃である。したがって、これらのうち最も低い硫黄(S)の融点(115.2℃)付近まで二次電池2の内部温度を上昇させると、正極活物質である硫黄(S)が溶融する。このように正極活物質(硫黄(S))が溶融することで、正極活物質層と固体電解質層との界面に流動性が生じてこれらの層間における接触状態が改善される。その結果、これらの層間におけるオーミック抵抗(界面抵抗)が低減され、ひいては二次電池2の内部抵抗が低減(回復)されるのである。このように内部抵抗が低減(回復)された二次電池2に対して定格充電電流を印加して本充電を実施することで、充電時間を短縮することが可能となるという利点がある。
【0044】
なお、上述したように、加熱用電流の印加によって、二次電池2の内部温度(電池温度T)を発電要素の構成材料の融点付近まで上昇させるが、この融点を超える値まで上昇させてしまうと、当該材料が融解してしまい発電要素の形状を保持できなくなる。このため、制御部は、ステップS110において加熱用電流の印加を開始したら、温度センサー4から測定温度T
mを取得し、上記と同様の手法により電池温度Tを算出してこれを取得する(ステップS111)。そして、制御部7は、このようにして取得した電池温度Tが予め定められて記憶部72に記憶されたしきい温度T
tと比較し、TがT
t以上であるか否かを判断する(ステップS112)この際、しきい温度T
tの具体的な値について特に制限はなく、二次電池2の内部抵抗値を低減するのに十分高く、かつ、発電要素の構成材料の融点のうち最も低い値(上記では硫黄(S)の融点である115.2℃)よりも十分低い値であればよい。
【0045】
ここで、電池温度Tがしきい温度T
t以上である(T≧T
t)と判断されれば(S112:YES)、二次電池2の内部抵抗値が十分に低減されたものとみなすことができる。したがって、この場合に制御部7は、電圧電流調整部5を制御して、加熱用電流の印加を停止することにより加熱用電流での充電を停止し(ステップS113)、ステップS102からの制御を繰り返す。このようにしきい温度T
tを設定し、二次電池2の電池温度Tが当該しきい温度T
t以上となったら加熱用電流での充電を停止することにより、加熱用電流の印加後の正極活物質および負極活物質の最高温度がそれぞれの融点以上とならない(それぞれの融点未満となる)ようにすることができる。その結果、活物質成分の融解とそれに伴う発電要素の形状の破壊が防止される。なお、この制御を可能とするため、本実施形態において制御部7は、加熱用電流の大きさおよび/または加熱用電流の印加時間を制御している。
【0046】
一方、ステップS112において電池温度Tがしきい温度T
t未満である(T<T
t)と判断されれば(S112:NO)、制御部7は、ステップS111からの制御を繰り返す。
【0047】
以上、本発明に係る制御について詳細に説明したが、図面を参照しつつ説明した実施形態はあくまでも一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内において適宜改変して本発明を実施してもよい。例えば、上述した実施形態においては、電池の内部抵抗値の上昇率R’のしきい値R’
tを設定し、これを基準として加熱用電流の印加の要否を判断した。ただし、上昇率を指標とすることなく、内部抵抗値の絶対値のしきい値R
tを設定し、これを基準として電池の内部抵抗値の測定値Rと比較し、加熱用電流の印加の要否を判断してもよい。また、全固体電池における内部抵抗値の上昇における支配的な原因は電極活物質層と固体電解質層との層間の剥離等に起因するオーミック抵抗(界面抵抗)の増加であることについては上述した。ここで、上述したようなオームの法則に基づく内部抵抗値の測定では、測定された内部抵抗値から上記オーミック抵抗(界面抵抗)を分離して制御に利用することはできない。一方、電気化学インピーダンス測定法(EIS)を利用して内部抵抗値を測定し、コール−コールプロットから算出される電解質抵抗成分を内部抵抗値とみなして本発明の制御を実施することにより、支配的な因子である電極活物質層と固体電解質層との層間のオーミック抵抗(界面抵抗)に近似した抵抗値を指標として制御が可能となる。ただし、上述したオームの法則に基づく測定では、車載用二次電池システムなどにおいてはオンボードでの制御が可能となるという利点もある。
【0048】
また、上述した実施形態では、二次電池2は車両に搭載されており、充電器は当該車両の外部に設置された電源(外部電源8)から供給される電力を用いて二次電池2に加熱用電流を印加する。このような実施形態によれば、充電ごとに二次電池2の健全性(SOH;State of Health)を確認できるとともに、内部抵抗値の上昇率を常にモニタリングすることができ、適切なタイミングで内部抵抗を低減(回復)させることができるという利点がある。
【0049】
ただし、二次電池2が車両に搭載されている場合であっても、充電器は、外部電源8ではなく、当該車両に搭載された他の電源から供給される電力を用いて二次電池2に加熱用電流を印加してもよい。例えば、
図2に示すような二次電池2が強電バッテリとして用いられる電気自動車においては、弱電バッテリ(いわゆる12Vバッテリ)として搭載される鉛蓄電池や従来の非水電解液リチウムイオン二次電池などを「車両に搭載された他の電源」として用いることができる。このような実施形態によれば、例えば走行中など外部電源8にアクセスできない状況においても、二次電池2の健全性(SOH)の判定を行って内部抵抗の上昇の有無を検知することにより、必要に応じて弱電バッテリから加熱用電流を印加して二次電池2の内部抵抗をオンボードで低減(回復)することが可能となる。
【0050】
また、車両に搭載された他の電源から供給される電力を用いて二次電池2に加熱用電流を印加する他の実施形態の一例について、
図5を参照しつつ説明する。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に係るアイドリングストップ車における電源回路の構成図である。電源回路300は、スタータモータ(SM)240、および他の電装負荷250に電力を供給する回路であり、メインバッテリ310と、サブバッテリ320と、リレー330と、を備える。なお、電源回路300は、コントローラ(図示せず)にも電力を供給しているものとする。
【0052】
メインバッテリ310としては、例えば鉛蓄電池が用いられる。鉛蓄電池の正極には二酸化鉛が用いられ、負極には海綿状の鉛が用いられ、電解液には希硫酸が用いられる。メインバッテリ310は、オルタネータ(ALT)260が発電した回生電力によって充電され、満充電状態での開放電圧は例えば12.7Vである。
【0053】
サブバッテリ320は、アイドリングストップからエンジン(図示せず)を再始動する際、スタータモータ(SM)240に流れる大電流によって車両の電源電圧が瞬時低下することを防ぐために設けられている。本実施形態においては、このサブバッテリ320として、全固体リチウムイオン二次電池2が用いられている。サブバッテリ320は、オルタネータ(ALT)260が発電した回生電力によって充電され、満充電状態での開放電圧は例えば13.1Vである。
【0054】
リレー330は、サブバッテリ320を電源回路300に対して接続するか、または電源回路300から遮断するかを切り替える開閉器であり、コントローラ(図示せず)によって制御される。リレー330は、ノーマルオープンのa接点であり、接点を開いているときにサブバッテリ320を電源回路300から遮断し、接点を閉じているときにサブバッテリ320を電源回路300に接続する。具体的には、エンジンが運転状態にある間は、サブバッテリ320を電源回路300に接続し、オルタネータ(ALT)260から供給される電力をサブバッテリ320に充電する。また、アイドリングストップからエンジンを再始動する際にサブバッテリ320を電源回路300に接続し、サブバッテリ320からの電力をスタータモータ(SM)240に供給する。その他、必要に応じてサブバッテリ320を電源回路300に接続したり、遮断したりする。
【0055】
このような実施形態においては、例えば、メインバッテリ310として搭載される鉛蓄電池が「車両に搭載された他の電源」として用いられうる。また、回生電力を発電するオルタネータ(ALT)260もまた、「車両に搭載された他の電源」として用いられうる。これらの実施形態によれば、例えば走行中など外部電源8にアクセスできない状況においても、二次電池2の健全性(SOH)の判定を行って内部抵抗の上昇の有無を検知することにより、必要に応じてメインバッテリ310(鉛蓄電池)またはオルタネータ(ALT)260から加熱用電流を印加してサブバッテリ320としての二次電池2の内部抵抗をオンボードで低減(回復)することが可能となる。
【0056】
なお、本発明の他の形態によれば、上述した二次電池2を充電するための充電装置(全固体リチウムイオン二次電池用充電装置)が提供される。全固体リチウムイオン二次電池を充電するための充電装置は、全固体リチウムイオン二次電池を充電する充電器と、前記全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定部と、前記充電器が前記全固体リチウムイオン二次電池を充電する際、前記内部抵抗測定部が測定した内部抵抗値またはその初期内部抵抗値に対する上昇率が予め定められたしきい値以上であるときに、定格充電電流よりも大きい加熱用電流で前記全固体リチウムイオン電池を充電するように前記充電器を制御する制御部とを備えるものである。
【0057】
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述した二次電池2を充電する二次電池の充電方法もまた、提供される。全固体リチウムイオン二次電池の充電方法は、充電器が前記全固体リチウムイオン二次電池を充電する際に、前記全固体リチウムイオン二次電池の内部抵抗値またはその初期内部抵抗値に対する上昇率が予め定められたしきい値以上であるときに、定格充電電流よりも大きい加熱用電流で前記全固体リチウムイオン電池を充電することを含むものである。
【0058】
以下、本実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池システムを構成する全固体リチウムイオン二次電池について説明する。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面図である。
図6に示す積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0060】
図6に示すように、本形態の積層型二次電池10aの発電要素21は、正極集電体11’の両面に正極活物質層13が配置された正極と、固体電解質層17と、負極集電体11’’の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、正極、固体電解質層および負極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、固体電解質層、および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、
図6に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、
図6とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面又は両面に負極活物質層が配置されるようにしてもよい。
【0061】
正極集電体11’および負極集電体11’’には、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極端子リードおよび負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11’および負極集電体11’’に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0062】
なお、上記の説明では、積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウムイオン二次電池を例に挙げて本発明の一形態に係る全固体電池の一実施形態を説明した。しかしながら、本発明が適用可能な全固体電池の種類は特に制限されず、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層とを有する双極型電極を含む、双極型(バイポーラ型)の全固体電池にも適用可能である。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係る双極型(バイポーラ型)の全固体リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)を模式的に表した断面図である。
図7に示す双極型二次電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0064】
図7に示すように、本形態の双極型二次電池10bの発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、固体電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、固体電解質層17は、固体電解質が層状に成形されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが固体電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および固体電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に固体電解質層17が挟まれて配置されている。
【0065】
隣接する正極活物質層13、固体電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型二次電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。
【0066】
さらに、
図7に示す双極型二次電池10bでは、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板(正極タブ)25が配置され、これが延長されて電池外装体であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板(負極タブ)27が配置され、同様にこれが延長されてラミネートフィルム29から導出している。
【0067】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型二次電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装体であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0068】
以下、上述した積層型二次電池10aの主な構成要素について説明する。
【0069】
[集電体]
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はない。集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0070】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0071】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0072】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0073】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0074】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、およびSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0075】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、集電体の全質量100質量%に対して5〜80質量%である。
【0076】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0077】
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質は、金属リチウム単体(Li)またはリチウム含有合金を含むことが好ましい。これらの負極活物質の種類としては、特に制限されないが、Li含有合金としては、例えば、Liと、In、Al、SiおよびSnの少なくとも1種との合金が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。また、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0078】
負極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。負極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D
50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm〜20μmの範囲内であり、特に好ましくは1〜20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D
50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0079】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40〜99質量%の範囲内であることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0080】
負極活物質層は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。負極活物質層が固体電解質を含むことにより、負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質や酸化物固体電解質が挙げられるが、一般的に結晶粒界の影響を受けにくいことから実質的な破壊靱性値が大きく(すなわち、デンドライトに起因する亀裂が進展しにくく)、しかもイオン伝導度が高いという観点からは、硫化物固体電解質を含むことが好ましい。
【0081】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI−Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−P
2O
5、LiI−Li
3PO
4−P
2S
5、Li
2S−P
2S
5、LiI−Li
3PS
4、LiI−LiBr−Li
3PS
4、Li
3PS
4、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−P
2S
5−LiI、Li
2S−P
2S
5−Li
2O、Li
2S−P
2S
5−Li
2O−LiI、Li
2S−SiS
2、Li
2S−SiS
2−LiI、Li
2S−SiS
2−LiBr、Li
2S−SiS
2−LiCl、Li
2S−SiS
2−B
2S
3−LiI、Li
2S−SiS
2−P
2S
5−LiI、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−P
2S
5−Z
mS
n(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li
2S−GeS
2、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
2S−SiS
2−Li
xMO
y(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li
2S−P
2S
5」の記載は、Li
2SおよびP
2S
5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
【0082】
硫化物固体電解質は、例えば、Li
3PS
4骨格を有していてもよく、Li
4P
2S
7骨格を有していてもよく、Li
4P
2S
6骨格を有していてもよい。Li
3PS
4骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI−Li
3PS
4、LiI−LiBr−Li
3PS
4、Li
3PS
4が挙げられる。また、Li
4P
2S
7骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi−P−S系固体電解質(例えば、Li
7P
3S
11)が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li
(4−x)Ge
(1−x)P
xS
4(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。なかでも、硫化物固体電解質は、P元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましく、硫化物固体電解質は、Li
2S−P
2S
5を主成分とする材料であることがより好ましい。さらに、硫化物固体電解質は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)を含有していてもよい。
【0083】
また、硫化物固体電解質がLi
2S−P
2S
5系である場合、Li
2SおよびP
2S
5の割合は、モル比で、Li
2S:P
2S
5=50:50〜100:0の範囲内であることが好ましく、なかでもLi
2S:P
2S
5=70:30〜80:20であることが好ましい。
【0084】
また、硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラスであってもよく、固相法により得られる結晶質材料であってもよい。なお、硫化物ガラスは、例えば原料組成物に対してメカニカルミリング(ボールミル等)を行うことにより得ることができる。また、結晶化硫化物ガラスは、例えば硫化物ガラスを結晶化温度以上の温度で熱処理を行うことにより得ることができる。また、硫化物固体電解質の常温(25℃)におけるイオン伝導度(例えば、Liイオン伝導度)は、例えば、1×10
−5S/cm以上であることが好ましく、1×10
−4S/cm以上であることがより好ましい。なお、固体電解質のイオン伝導度の値は、交流インピーダンス法により測定することができる。
【0085】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等が挙げられる。NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li
1+xAl
xGe
2−x(PO
4)
3(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li
1+xAl
xTi
2−x(PO
4)
3(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等が挙げられる。また、酸化物固体電解質の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li
0.34La
0.51TiO
3)、LiPON(例えば、Li
2.9PO
3.3N
0.46)、LiLaZrO(例えば、Li
7La
3Zr
2O
12)等が挙げられる。
【0086】
固体電解質の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状、薄膜形状等が挙げられる。固体電解質が粒子形状である場合、その平均粒径(D
50)は、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒径(D
50)は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0087】
負極活物質層における固体電解質の含有量は、例えば、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0088】
負極活物質層は、上述した負極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0089】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭素繊維等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0090】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。
【0091】
導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、「導電助剤の粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0092】
負極活物質層が導電助剤を含む場合、当該負極活物質層における導電助剤の含有量は特に制限されないが、負極活物質層の合計質量に対して、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%であり、さらに好ましくは4〜7質量%である。このような範囲であれば、負極活物質層においてより強固な電子伝導パスを形成することが可能となり、電池特性の向上に有効に寄与することが可能である。
【0093】
一方、バインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
【0094】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。
【0095】
負極活物質層の厚さは、目的とする全固体電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0096】
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S
8)またはリチウムを含有する硫黄の還元生成物(Li
2S
8〜Li
2Sの各化合物のいずれか)が好ましく用いられる。ここで例えば、硫黄単体(S
8)は、1670mAh/g程度と極めて大きい理論容量を有し、低コストで資源が豊富であるという利点を備えている。この場合、全固体リチウムイオン二次電池が充電状態で提供される場合には、正極活物質として硫黄単体(S
8)を含む。また、全固体リチウムイオン二次電池が放電状態で提供される場合には、正極活物質としてリチウムを含有する硫黄の還元生成物(上述したLi
2S
8〜Li
2Sの各化合物のいずれか)を含有する。
【0097】
なお、正極活物質層は、上述した硫黄単体(S
8)またはリチウムを含有する硫黄の還元生成物(上述したLi
2S
8〜Li
2Sの各化合物のいずれか)以外の正極活物質を含んでもよい。ただし、正極活物質層に含まれる正極活物質に占める硫黄単体またはリチウムを含有する硫黄の還元生成物の割合は、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%であり、さらに好ましくは90〜100質量%であり、いっそう好ましくは95〜100質量%であり、特に好ましくは98〜100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
【0098】
硫黄単体またはリチウムを含有する硫黄の還元生成物以外の正極活物質としては、例えば、ジスルフィド化合物、国際公開第2010/044437号パンフレットに記載の化合物に代表される硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等が挙げられる。また、S−カーボンコンポジット、TiS
2、TiS
3、TiS
4、NiS、NiS
2、CuS、FeS
2、MoS
2、MoS
3等の無機硫黄化合物も用いられうる。さらに、硫黄を含まない正極活物質としては、例えば、LiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、LiVO
2、Li(Ni−Mn−Co)O
2等の層状岩塩型活物質、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4等のスピネル型活物質、LiFePO
4、LiMnPO
4等のオリビン型活物質、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、Li
4Ti
5O
12が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0099】
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D
50)は、例えば、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm〜20μmの範囲内であり、特に好ましくは1〜20μmの範囲内である。なお、本明細書において、活物質の平均粒径(D
50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0100】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、40〜99質量%の範囲内であることが好ましく、50〜90質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、正極活物質層もまた、上述した負極活物質層と同様に、必要に応じて、固体電解質、導電助剤、バインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。これらの材料の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
[固体電解質層]
本形態に係る双極型二次電池の固体電解質層は、固体電解質を主成分として含有し、上述した正極活物質層と負極活物質層との間に介在する層である。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0102】
固体電解質層における固体電解質の含有量は、例えば、10〜100質量%の範囲内であることが好ましく、50〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、90〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0103】
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。固体電解質層に含有されうるバインダの具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0104】
固体電解質層の厚さは、目的とする双極型二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1〜1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0105】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0106】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0107】
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、
図6および
図7に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0108】
図8は、積層型二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0109】
図8に示すように、扁平な積層型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、積層型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した
図6に示す積層型二次電池10aの発電要素21に相当するものである。
【0110】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0111】
また、
図8に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、
図8に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0112】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0113】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0114】
組電池に対して本発明に係る充電方法を実施する際には、例えば組電池を構成する個々の電池(単セル)のそれぞれの内部抵抗値を測定しながら充電処理を実行することができる。このような構成とすることで、個々の電池(単セル)のそれぞれにおける内部抵抗を低減させる制御を別々に実行しながら充電処理を行うことができる。
【0115】
[車両]
本形態の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0116】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0117】
[実験例]
本発明の実施可能性を確認することを目的として、定格充電電流よりも大きい電流(加熱用電流)を用いて充電処理を実施することにより、定格充電電流で充電処理を施した場合と比較して、電池の温度上昇に要する時間が短縮されることを確認するシミュレーション実験を行った。
【0118】
まず、市販の全固体リチウムイオン二次電池(正極活物質:硫黄(S)、負極活物質:金属リチウム(Li))について、初期の内部抵抗値を測定し、それに対して内部抵抗の上昇率を80%と仮定したときの内部抵抗値を算出した。そして、その内部抵抗値が電解質抵抗に相当すると仮定し、通電させる電流値から算出されるジュール熱に相当する熱量を算出した。
【0119】
一方、上記二次電池の構成材料から求められる当該電池の熱容量と、予め設定した上限温度の値から、当該電池の温度を室温(20℃)から当該上限温度まで上昇させるのに必要な熱量を算出した。そして、上述したジュール熱に相当する熱量がすべて電池の温度上昇に用いられると仮定して、当該電池の温度を室温(20℃)から当該上限温度まで上昇させるのに要する通電時間を、通電させる電流値ごとに算出して比較した。なお、上記電池の発電要素のなかで最も融点が低い材料である金属リチウム(Li)の融点が115.2℃であることに鑑み、上限温度は115℃に設定した。
【0120】
上記のシミュレーション実験を、普通充電(3kW単相200V)相当の電流値を用いて行った結果を下記の表1に示す。なお、この実験では、充電電流の値を、15A、18Aまたは22.5Aに設定した。
【0122】
同様にして、上記のシミュレーション実験を、急速充電(50kW)相当の電流値を用いて行った結果を下記の表2に示す。なお、この実験では、充電電流の値を、125A、150Aまたは187.5Aに設定した。
【0124】
表1および表2に示す結果からわかるように、充電電流の値を大きくするにつれて、電池の温度を上昇させるのに要する時間が短縮されることがわかる。このことから、本発明に係る二次電池システムまたは二次電池用充電装置における制御では、電池の内部抵抗値の上昇を検知した際に加熱用電流を用いて電池の温度を上昇させ、固体電解質層−電極活物質層界面の材料を溶融させることで、極めて短時間で内部抵抗値の低減(回復)が図られることが期待される。