(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-45112(P2021-45112A)
(43)【公開日】2021年3月25日
(54)【発明の名称】微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を含有する加工食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20210226BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20210226BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20210226BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20210226BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20210226BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20210226BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L5/00 N
A23L29/262
A23L29/25
A23L29/238
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-183312(P2019-183312)
(22)【出願日】2019年9月14日
(71)【出願人】
【識別番号】593184776
【氏名又は名称】木村 一孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 一孝
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC02
4B035LC03
4B035LE02
4B035LG23
4B035LG26
4B035LG27
4B035LG29
4B035LG32
4B035LG34
4B035LG37
4B035LP21
4B041LC01
4B041LD01
4B041LH07
4B041LH09
4B041LH11
4B041LH16
4B041LK11
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4B041LK21
4B041LK22
4B041LK27
4B041LK29
4B041LK33
4B041LP01
4B041LP13
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を含有させることにより、嫌味、生臭み、苦み、異臭を減少させた食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合乾燥物。セルロース含有量が60〜90重量%、水溶性高分子の含有量が10〜40重量%であり、かつ1重量%の懸濁液の粘度が400〜1000cp(B型粘度計、50rpm、25℃)である、微小繊維状セルロースと水溶性高分子を含有する加工食品とすることにより前記課題を達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小繊維状セルロース含有量が60〜90重量%および水溶性高分子含有量が10〜40重量%からなる微小繊維状セルロース粉末と水溶性高分子の混合物、かつ1重量%濃度懸濁液の粘度が400〜1000cp(B型粘度計、50rpm、25℃)である微小繊維状セルロースと水溶性高分子を含有することを特徴とする加工食品。
【請求項2】
微小繊維状セルロースの成分が針葉樹林、広葉樹林、サトウキビ、トウモロコシ、オーツ麦、小麦、オレンジ由来であることを特徴とする請求項1記載の加工食品。
【請求項3】
水溶性高分子の成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウム、あるいはキサンタンガム、グアガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、であることを特徴とする請求項1記載の加工食品。
【請求項4】
微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物の水分量が10重量%以下(赤外線水分計)であることを特徴とする請求項1記載の加工食品
【請求項5】
加工食品に含まれる微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物の量が、0.1〜20重量%(固形分換算)である請求項1〜4何れか1項に記載の加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を含有する加工食品、特にペースト状食品、アイスクリーム、ゼリー状食品、飲料、ハム・ソーセージ、かまぼこ、パン、麺、などの加工食品に関する。
【0002】
従来から微小繊維状セルロースを利用した加工食品およびその製造方法については提案されており、クリーミィさ、ボディ感を提供することが提案されている。ただし、使用されている微小繊維状セルロースは水分が15%以上含有されたペースト状であり、乾燥粉末化された微小繊維状セルロースではない。
【0003】
本発明はセルロース繊維をミクロフィブリル化した際に水溶性高分子を混合分散し、その後に乾燥させ、粉砕することを特徴とした微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を使用するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献】特開2008−237195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を含有する加工食品であり、ペースト状食品、アイスクリーム、ゼリー状食品、飲料、ハム・ソーセージ、かまぼこ、パン、麺、での嫌味、生臭み、苦み、異臭を減少させた加工食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意努力した結果、特定の繊維質、特定の水溶性高分子をセルロース繊維をミクロフィブリル化した際の溶液に混合分散し、その後乾燥粉砕した微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を加工食品に含有させることにより、本発明の課題が解決することを見出し本発明を完成するに至った。以下本発明を詳細に説明する。
【0007】
微小繊維状セルロースを構成するセロロース由来物質としては、針葉樹林パルプ繊維、広葉樹林パルプ繊維、サトウキビ繊維、トウモロコシ繊維、オーツ麦繊維、小麦繊維、オレンジ繊維のいずれかを用いる。前記セロロース繊維としては、単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0008】
水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、グアガム、タラガム、を単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0009】
本発明の微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物における成分組成は、微小繊維状セルロース60〜90重量%、水溶性高分子10〜40重量%、好ましくは微小繊維状セルロース70〜80重量%、水溶性高分子として20〜30重量%である。
【0010】
微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は、セルロース繊維をミクロフイブリル化した際の溶液中に水溶性高分子を添加し、混合分散化した後に乾燥粉砕することを特徴としており、微小化繊維状セルロース粉末と水溶性高分子粉末を単に混合したものではない。
【0011】
本発明の微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は、加工食品に添加されて使用されるが、加工食品中に含まれる微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜2重量%である。
【0012】
本発明は、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を含有する加工食品であればマヨネーズ、ドレッシング、ヨーグルト、フラワーペースト、等のペースト状食品、ハムソーセージ等の保型食品、飲料、パン、麺、など限定されるものではない。また、加工食品の製造時においてグアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、等の増粘安定剤微結晶セルロース等の乳化安定剤、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、加工澱粉、等本発明の効果を損なわない範囲にて使用されても良い。
【0013】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中「%」は特に断らない限り重量%を意味する。
【0014】
実施例で使用した材料は次の通りである。
微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物:商品名「Senci Fi」、SenciFi Inc製
ゲル化剤:商品名「クリアガー100」、青葉化成株式会社製
グラニュー糖:商品名:グラニュー糖、日新カップ株式会社製
ビタミン製剤:商品名:ビタミンプレミックスNRV−2015、DSM株式会社製
アロエエキス粉末:商品名:キダチアロエエキス粉末SD、株式会社南伊豆アロエセンター製
セルロース粉末:商品名:KCフロックW400G、日本製紙株式会社製
【0015】
(粘度)微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物が1重量%濃度で、水に懸濁させた懸濁液の状態においてB型粘度型(50rpm、25℃)で測定、粘度545cpの材料を使用した。
【0016】
試料の調整は、つぎの通りおこなった。
微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は、事前に4重量%の水懸濁溶液とするため、水に分散させ、家庭用ミキサー15000rpm/分にて10分間撹拌したものを使用した。
【実施例1】
【0017】
ゼリー状加工食品の嫌味、異臭の改善作用
水70.3重量%〜82.8重量%、ゲル化剤2重量%、グラニュー糖15重量%、ビタミン製剤0.2重量%を基本組成とし、それぞれに本発明の微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物または対照物を加えた。
手順としては、ゲル化剤とグラニュー糖を混合、水に加えて撹拌後、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物、または対照物を加え加熱しながら撹拌、ゲル化剤を完全に溶解させる。溶解確認後、加熱を中断し、ビタミン製剤を添加、カップに充填して冷蔵庫で冷やし固める。
【0017】
ゼリー状加工食品10gを口に入れ、嫌味、異臭を感じるかどうかを官能評価した。
官能評価は未特定の10人を選抜して行い以下の5段階の基準で数値化を行い平均を算出した。
【0018】
コントロールを5として、嫌味、異臭の感じ方を評価
5・・・コントロールと同じ嫌味、異臭を感じる
4・・・コントロールとほぼ同等だが若干少ない
3・・・コントロールと比べて明らかに少ない
2・・・わずかに嫌味、異臭を感じるもほとんど分からない
1・・・全く嫌味、異臭を感じない
【0019】
【表1】
※微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は、水に懸濁させた4重量%品を使用
(固形分換算0.5重量%)
【0020】
【表2】
表2からも明らかな様に、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を添加した加工食品は、コントロール、対照物と比べても明らかに嫌味、異臭を感じる程度は低くなっている。
【実施例2】
【0021】
ゼリー状加工食品の苦みの低減化作用
水70.3重量%〜82.8重量%、ゲル化剤2重量%、グラニュー糖15重量%、ビタミン製剤0.2重量%を基本組成とし、それぞれに本発明の微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物または対照物を加えた。
手順としては、ゲル化剤とグラニュー糖を混合、水に加えて撹拌後、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物、または対照物を加え加熱しながら撹拌、ゲル化剤を完全に溶解させる。溶解確認後、加熱を中断し、アロエエキス粉末を添加、カップに充填して冷蔵庫で冷やし固める。
【0022】
ゼリー状加工食品10gを口に入れ、苦みを感じるかどうかを官能評価した。
官能評価は未特定の10人を選抜して行い以下の5段階の基準で数値化を行い平均を算出した。
【0023】
コントロールを5とし、苦みの感じ方を評価
5・・・コントロールと同じ苦みを感じる
4・・・コントロールより苦みを感じない
3・・・コントロールと比べて明らかに苦みを感じない
2・・・わずかに苦みを感じる
1・・・苦みを感じない
【0024】
【表3】
※微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物は、水に懸濁させた4重量%品を使用
(固形分換算0.5重量%)
【0025】
【表4】
【0026】
表4からも明らかな様に、微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物を添加した加工食品は、コントロール、対照物と比べても明らかに苦みを感じる程度が、低くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上記載したごとく、本発明によれば微小繊維状セルロースと水溶性高分子の混合物の効果により、嫌味、異臭、苦みを低減させることにより加工食品の味の改善に寄与することが可能である。