特開2021-45993(P2021-45993A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-45993(P2021-45993A)
(43)【公開日】2021年3月25日
(54)【発明の名称】車両の電気機器支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20210226BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20210226BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20210226BHJP
【FI】
   B60K1/04 ZZHV
   B60L9/18 J
   B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-168091(P2019-168091)
(22)【出願日】2019年9月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】廣田 和起
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB05
3D235BB25
3D235CC01
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD02
3D235DD12
3D235DD17
3D235DD19
3D235DD47
3D235FF22
3D235FF32
3D235HH21
5H125AA01
5H125AC12
5H125DD08
5H125FF01
5H125FF03
(57)【要約】
【課題】車両衝突時におけるインバータなどの高電圧機器121,122の倒壊を防止する。
【解決手段】車両前部のコンパートメント5に当該車両に駆動力を与える駆動系装置8が設けられ、駆動系装置8の上に下側高電圧機器121が支持され、該下側高電圧機器121の上に上側高電圧機器122が支持されている。駆動系装置8及び上側高電圧機器122の車両前方側に、駆動系装置8と上側高電圧機器122を連結し、上側高電圧機器122から駆動系装置8に荷重を直接伝える荷重伝達部材22が配置されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に形成されたコンパートメントに当該車両に駆動力を与える駆動系装置が設けられ、該駆動系装置の上に下側高電圧機器が支持され、該下側高電圧機器の上に上側高電圧機器が支持されている車両の電気機器支持構造であって、
上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両前方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記荷重伝達部材は、上記下側高電圧機器に結合されることなく、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結していることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
上記下側高電圧機器は、車両前方側及び車両後方側各々において上記駆動系装置に結合されて支持されていることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記駆動系装置はモータを筐体に収容したモータ装置を備えてなり、
上記下側高電圧機器は、バッテリから入力された電気を昇圧して上記モータに出力する回路部品を筐体に収容してなるインバータであり、
上記上側高電圧機器は、上記バッテリと上記インバータとの電気的な接続及び遮断を行なう切替回路部品を筐体に収容してなるジャンクションボックスであり、
上記インバータの筐体が上記モータ装置の筐体の上に支持され、上記ジャンクションボックスの筐体が上記インバータの筐体の上に支持され、
上記荷重伝達部材が上記モータ装置の筐体と上記ジャンクションボックスの筐体とを連結していることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両後方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える後方側荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【請求項6】
車両前部に形成されたコンパートメントに当該車両に駆動力を与える駆動系装置が設けられ、該駆動系装置の上に下側高電圧機器が支持され、該下側高電圧機器の上に上側高電圧機器が支持されている車両の電気機器支持構造であって、
上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両後方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える後方側荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする車両の電気機器支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の電気機器支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両駆動用モータとインバータを車両前部のコンパートメントに収容した構造が一般に知られている。特許文献1には、インバータをモータの上にブラケットを介して固定することが記載されている。この特許文献1では、インバータの前端部とモータの前端部を鉛直方向に略揃えることによって、車両の前面衝突時に衝撃を剛性の高いモータで受け、そのことによって、インバータの破損を抑制するようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−9724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、モータのような車両の駆動系装置の上にインバータのような高電圧機器を複数積み重ねる構造に関する。このような構造において、上側高電圧機器に衝突荷重が加わると、その荷重が上側高電圧機器から下側高電圧機器に伝わり、下側高電圧機器の駆動系装置に結合された付け根部分に衝突荷重が集中する。そのため、衝突荷重が大きいときは、下側高電圧機器がその付け根部分から破損して、上側高電圧機器と共に駆動系装置から倒壊するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、車両衝突時におけるインバータなどの高電圧機器の倒壊を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、上側高電圧機器に加わる衝突荷重を土台となる駆動系装置に直接伝達する荷重伝達部材を設けるようにした。
【0007】
すなわち、ここに開示する車両の電気機器支持構造は、車両前部に形成されたコンパートメントに当該車両に駆動力を与える駆動系装置が設けられ、該駆動系装置の上に下側高電圧機器が支持され、該下側高電圧機器の上に上側高電圧機器が支持されており、
上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両前方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
この電気機器支持構造によれば、車両の前面衝突に伴って上側高電圧機器に後方に倒れる方向の衝突荷重が加わったとき、その衝突荷重の一部が荷重伝達部材によって駆動系装置に伝達される。この場合、上側高電圧機器は衝突荷重によってその前側が浮き上がろうとするから、荷重伝達部材には引張荷重が加わることになる。すなわち、荷重伝達部材は、上側高電圧機器に加わる衝突荷重を引張荷重として駆動系装置に伝えることになる。その結果、上側高電圧機器から下側高電圧機器に伝わる衝突荷重が軽減されて、下側高電圧機器の駆動系装置に結合された付け根部分に衝突荷重が集中することが避けられる。よって、当該電気機器支持構造は、下側高電圧機器がその付け根部分から破損するに至るまでの耐荷重強度が実質的に高くなり、上側高電圧機器が下側高電圧機器と共に倒壊することの防止に有利になる。
【0009】
一実施形態では、上記荷重伝達部材は、上記下側高電圧機器に結合されることなく、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結している。従って、荷重伝達部材によって上側高電圧機器から駆動系装置に衝突荷重が確実に伝達される。また、荷重伝達部材から下側高電圧機器に衝突荷重が入ることが避けられるから、下側高電圧機器の損壊防止に有利になる。
【0010】
一実施形態では、上記下側高電圧機器は、車両前方側及び車両後方側各々において上記駆動系装置に結合されて支持されている。これにより、下側高電圧機器の倒壊防止に有利になる。
【0011】
一実施形態では、上記駆動系装置はモータを筐体に収容したモータ装置を備えてなり、上記下側高電圧機器は、バッテリから入力された電気を昇圧して上記モータに出力する回路部品を筐体に収容してなるインバータであり、上記上側高電圧機器は、上記バッテリと上記インバータとの電気的な接続及び遮断を行なう切替回路部品を筐体に収容してなるジャンクションボックスであり、
上記インバータの筐体が上記モータ装置の筐体の上に支持され、上記ジャンクションボックスの筐体が上記インバータの筐体の上に支持され、上記荷重伝達部材が上記駆動系装置の筐体と上記ジャンクションボックスの筐体とを連結している。
【0012】
一実施形態では、上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両後方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える後方側荷重伝達部材が配置されている。
【0013】
上側高電圧機器は衝突荷重によって後方に倒れようとするから、後方側荷重伝達部材には圧縮荷重が加わる。すなわち、後方側伝達部材は、上側高電圧機器に加わる衝突荷重を圧縮荷重として駆動系装置に伝達することになる。その結果、上側高電圧機器から下側高電圧機器に伝達する衝突荷重が軽減されて、下側高電圧機器の駆動系装置に結合された付け根部分に衝突荷重が集中することが避けられる。よって、上側高電圧機器が下側高電圧機器と共に倒壊することの防止に有利になる。
【0014】
後方側荷重伝達部材は、下側高電圧機器に結合されることなく、駆動系装置と上側高電圧機器を連結する構造とすることができる。後方側荷重伝達部材は、上記駆動系装置の筐体と上記ジャンクションボックスの筐体とを連結する構造とすることができる。
【0015】
ここに開示する車両の電気機器支持構造は、車両前部に形成されたコンパートメントに当該車両に駆動力を与える駆動系装置が設けられ、該駆動系装置の上に下側高電圧機器が支持され、該下側高電圧機器の上に上側高電圧機器が支持されており、
上記駆動系装置及び上記上側高電圧機器の車両後方側に、上記駆動系装置と上記上側高電圧機器を連結し、上記上側高電圧機器から上記駆動系装置に荷重を直接伝える後方側荷重伝達部材が配置されていることを特徴とする。
【0016】
先の後方側荷重伝達部材の説明から明らかなように、当該電気機器支持構造によれば、上側高電圧機器から下側高電圧機器に伝達する衝突荷重が軽減されて、下側高電圧機器の付け根部分に衝突荷重が集中することが避けられるから、上側高電圧機器が下側高電圧機器と共に倒壊することの防止に有利になる。
【0017】
当該電気機器支持構造においても、後方側荷重伝達部材は、下側高電圧機器に結合されることなく、駆動系装置と上側高電圧機器を連結する構造とすることができる。また、下側高電圧機器は、車両前方側及び車両後方側各々において上記駆動系装置に結合して支持させることができる。また、当該後方側荷重伝達部材は、上記駆動系装置のモータ装置の筐体と上記ジャンクションボックスの筐体とを連結する構造とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両前部のコンパートメントにおいて、駆動系装置の上に下側高電圧機器を支持し、該下側高電圧機器の上に上側高電圧機器を支持し、駆動系装置及び上側高電圧機器の車両前方側に、駆動系装置と上側高電圧機器を連結し、上側高電圧機器から駆動系装置に荷重を直接伝える荷重伝達部材を配置したから、車両衝突時に上側高電圧機器が下側高電圧機器と共に倒壊することを防止する上で有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両前部のエンジンルームを示す平面図。
図2】発電・駆動ユニットの平面図。
図3】発電・駆動ユニットの正面図。
図4】モータ装置に対する高電圧機器の支持構造を示す正面図。
図5】モータ装置に対する高電圧機器の支持構造を背面側から見た斜視図。
図6】モータ装置に対する高電圧機器の支持構造を示す概略側面図。
図7】車両衝突時の電気機器支持構造の挙動を模式的に示す側面図。
図8】通しボルトありのケースと通しボルトなしのケースの構造解析結果を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
<車両の電気機器支持構造の全体構成>
図1に示す車両1の前部において、2は車両のフェンダー、3はホイールエプロン、4はホイールエプロン3の内側を車両前後方向に延びるサイドフレームである。左右のサイドフレーム4の間に形成されたコンパートメント5に当該車両1を駆動するための発電・駆動ユニット(パワートレイン)6が収容されている。
【0022】
発電・駆動ユニット6は、発電装置7と、車両1に駆動力を与える駆動系装置8と、第1高電圧機器11と、第2高電圧機器12とを備えてなる。発電・駆動ユニット6は、左右のサイドフレーム4及びこの両サイドフレーム4に渡したサスペンションクロスメンバー(図示省略)に支持されている。発電装置7と駆動系装置8は、前者が車両左側に位置し後者が車両右側に位置するように車幅方向に並べて配置されている。
【0023】
図示は省略しているが、車両1の車室のフロア下に、発電装置7によって充電されるバッテリが配置されている。
【0024】
<電気機器支持構造各部の構成>
図2に発電・駆動ユニット6を拡大して示す。
【0025】
発電装置7は、エンジン13と、該エンジン13を動力源とする発電機14とを備えてなる。本例のエンジン13はロータリエンジンである。エンジン13のエキセントリックシャフトは車幅方向に配置されている。本例の発電機14は交流発電機であり、その回転子がエンジン13のエキセントリックシャフトによって回転駆動される。エンジン13と発電機14は、相対的に前者が車両右側に位置し後者が車両左側に位置するように車幅方向に並べて配置され且つ両者は互いに結合されている。
【0026】
駆動系装置8は、車両1を駆動するためのモータ装置15と減速機を構成するギヤボックス16とを備えてなる。本例のモータ装置15は三相交流モータである。モータ装置15とギヤボックス16は、相対的に前者が車両右側に位置し後者が車両左側に位置するように車幅方向に並べて配置され且つ両者は互いに結合されている。
【0027】
従って、コンパートメント5では、車両右側から順に、モータ装置15、ギヤボックス16、エンジン13及び発電機14の4部品が車幅方向に並んでいる。エンジン13とギヤボックス16は結合されている。なお、当該4部品の並び順は適宜に変更することができる。
【0028】
図3に発電・駆動ユニット6を車両前方から見た正面図で示すように、本例の第1高電圧機器11はエンジン13の上に立設されている。第1高電圧機器11は、発電機14で発電された交流電力を直流に変換してバッテリに充電するためのコンバータであり、交流電源から直流を作り出す回路部品がアルミ合金製の筐体に収容されてなる。
【0029】
第2高電圧機器12は、主として、バッテリによってモータ装置15の駆動を制御するための電気機器である。第2高電圧機器12は、下側高電圧機器としてのインバータ121、並びに上側高電圧機器としてのジャンクションボックス122及び上側高電圧機器としてのDC−DCコンバータ123を備えてなり、モータ装置15の上に立設されている。
【0030】
上述の如く、第1高電圧機器11はエンジン13の上に立設され、第2高電圧機器12はエンジン13から車幅方向に離れたモータ装置15の上に立設されているから、第1高電圧機器11と第2高電圧機器12は車幅方向に離れている。第1高電圧機器11と第2高電圧機器12のジャンクションボックス12bとは、高電圧ハーネス17によって接続されている。また、第1高電圧機器11の上端部とジャンクションボックス122の上端部とは、第1及び第2の両高電圧機器11,12間で互いに相手側に向かう倒れ荷重を支えるための車幅方向に略水平に延びる連結部材21によって連結されている。
【0031】
モータ装置15は、モータ15aをアルミ合金製のモータ筐体15bに収容してなる。インバータ121は、フロア下のバッテリから電源ケーブルを介して入力された電気を昇圧し、直流電力を三相交流に変換してモータ15aに出力する回路部品をアルミ合金製の筐体に収容してなる。ジャンクションボックス122は、バッテリとインバータ121との電気的な接続及び遮断を行なう切替回路部品をアルミ合金製の筐体に収容してなる。ジャンクションボックス122の前面にDC−DCコンバータ123が固定されている。DC−DCコンバータ123は、高電圧を車載機器駆動用の低電圧(例えば、12V)に変換する変換器である。
【0032】
図4に示すように、下側高電圧機器としてのインバータ121は、その筐体の下部より側方に張り出した連結部121aをモータ筐体15bの上部のボス15cにボルト18でねじ止めして、該モータ装置15の上に支持されている。このボルト18による結合は、車両前方側の左右2カ所と、図5及び図6に示すように車両後方側の左右2カ所に設けられている。
【0033】
上側高電圧機器としてのジャンクションボックス122及びDC−DCコンバータ123は、ジャンクションボックス122の筐体の下部より側方に張り出した連結部122aをインバータ121の筐体の上部のボス121bにボルト19でねじ止めして、該インバータ121の上に支持されている。このボルト19による結合は、図4に示すように車両前方側の左側1カ所と、図5及び図6に示すように車両後方側の左右2カ所に設けられている。
【0034】
そうして、当該電気機器支持構造の特徴は、上側高電圧機器に加わる車両衝突荷重を土台となる駆動系装置8に直接伝達する荷重伝達部材を設けた点にある。以下、具体的に説明する。
【0035】
本実施形態では、当該荷重伝達は、図3に示すように、車両前方側において、上側高電圧機器としてのジャンクションボックス122とモータ筐体15aとを連結する通しボルト(荷重伝達部材)22が担う。本例の通しボルト22は、車両前方側の右側に配置されていて、下側高電圧機器であるインバータ121の前面の隆起部121cを貫通している。隆起部121cは、車両前方に隆起していて、インバータ121の全高にわたって上下に延びている。
【0036】
図4に示すように、インバータ121の隆起部121cには上下方向に貫通する貫通孔121dが形成されている。図6に示すように、ジャンクションボックス122には、インバータ121の隆起部121cに対応して車両前方側に張り出した連結部122aが設けられ、図4に示すように、この連結部121bに隆起部121cの貫通孔121dに対応する貫通孔122bが形成されている。モータ筐体15bには、ジャンクションボックス122の連結部122に対応する(すなわち、インバータ121の隆起部121bに対応する)ボス15cが形成されている。
【0037】
通しボルト22は、ジャンクションボックス122の連結部122aの貫通孔122b及びインバータ121の隆起部121cの貫通孔121dに通されて、モータ筐体15bのボス15cにねじ込まれている。すなわち、通しボルト22は、インバータ121に結合されることなく、ジャンクションボックス122とモータ筐体15bを連結している。通しボルト22とモータ筐体15bのボス15cとの嵌め合い長さ(ねじ込み深さ)は、ボルト18とボス15cの嵌め合い長さよりも長くなっている。
【0038】
なお、図2及び図3において、27はエンジン13の燃料パイプ26を連結部材21に止めるクリップ、41はエンジン13の吸気ダクト、42は吸気ダクト41が接続されたエアクリーナ、43はエアクリーナ42からエンジン13の吸気ポートに向かって延びる吸気管、44はスロットルボディである。46はエンジン13の排気管、47は触媒コンバータである。
【0039】
<車両衝突時について>
車両の前面衝突に伴ってジャンクションボックス122に車両後方に倒れる方向の衝突荷重が加わったときの、インバータ121に加わる荷重について検討する。
【0040】
図7(A)は、通しボルト22に代えて、当該通しボルト位置でインバータ121とジャンクションボックス122をボルト19で結合したケース(以下、「通しボルトなしのケース」という。)である。
【0041】
ジャンクションボックス122に衝突荷重CLが加わると、ジャンクションボックス122の前側が浮き上がろうとするから、車両前方側のボルト19に引張荷重TLが加わって、ジャンクションボックス122からインバータ121に荷重が伝わる。これに伴って、インバータ121の前側がジャンクションボックス122と一緒になって浮き上がろうとするから、車両前方側のボルト18に引張荷重TLが加わって、インバータ121からモータ筐体15bに荷重が伝わる。すなわち、ジャンクションボックス122に加わる衝突荷重CLはボルト19及びボルト18を介してモータ筐体15bで受けられる。
【0042】
衝突荷重CLが大きい場合、インバータ121の筐体下部の連結部121aとモータ筐体15bを結合する車両前方側のボルト18に加わる引張荷重TLが大きくなり、そのため、インバータ121の筐体下部の連結部121aへの荷重集中が大きくなる。その結果、当該連結部121aが破壊してインバータ121がジャンクションボックス122と共に後方に倒壊することになる。
【0043】
図7(B)は、通しボル22を設けた上記実施形態のケース(以下、「通しボルトありのケース」という。)である。この場合は、衝突荷重CLによってジャンクションボックス122の前側が浮き上がろうとするとき、通しボルト22に引張荷重TLが加わってジャンクションボックス122からモータ筐体15bに荷重が直接伝達される。すなわち、衝突荷重CLは、ジャンクションボックス122から通しボルト22を介してモータ筐体15bに伝わる一方、ジャンクションボックス122から車両前方側のボルト18、インバータ121及び車両前方側のボルト18を介してモータ筐体15bに伝わる。
【0044】
このように、衝突荷重CLが通しボルト22側からモータ筐体15bに分散される結果、インバータ121の筐体下部の連結部121aとモータ筐体15bを結合する車両前方側のボルト18に加わる引張荷重TLは、通しボルトなしのケースに比べて小さくなる。すなわち、このインバータ121の筐体下部の連結部121aへの荷重集中が大きくなることが避けられる。
【0045】
図8は通しボルトありのケースと通しボルトなしのケースのジャンクションボックス122に車両後方への荷重が入力したときの構造解析結果を示す。同図において、縦軸はジャンクションボックス122に前方から入力した荷重であり、横軸は当該荷重入力によるジャンクションボックス122の上端の後方への移動量である。通しボルトありのケース及び通しボルトなしのケースのいずれも、入力荷重が上昇していき、最初に荷重の落ち込みを生じた時点でインバータ121の筐体下部の破壊が始まったことを示す。
【0046】
同図によれば、通しボルトありのケースでは、通しボルトなしのケースにおいてインバータ121の筐体が破壊した後でも、当該筐体が破壊することなく荷重の上昇に耐えていることがわかる。インバータ121の筐体が破壊するに至るまでの耐荷重強度は、通しボルトありのケースでは、通しボルトなしのケースの約2倍になっている。
【0047】
また、上記実施形態では、ジャンクションボックス122からモータ筐体15bに荷重を伝達する部材として、通しボルト22を採用し、荷重伝達部材をインバータ121に結合していないから、ジャンクションボックス122からモータ筐体15に衝突荷重が確実に伝達される。また、通しボルト22からインバータ121に衝突荷重が入ることが避けられるから、インバータの損壊防止に有利になる。
【0048】
上記実施形態では、インバータ121の筐体を、車両前方側だけでなく、車両後方側においても、モータ筐体15bに結合しているから、車両衝突時のインバータ121の倒壊防止に有利になる。
【0049】
上記実施形態では、インバータ121に隆起部121cを設け、通しボルト22が隆起部121cを貫通する構造を採用した。しかし、隆起部121cを設けることなく、ボルト22によってジャンクションボックス122の筐体とモータ筐体15bを結合するようにしてもよい。ただし、隆起部121cを設けてその貫通孔121dにボルト22を通すようにすると、この貫通孔121dがボルト22をモータ筐体15bのねじ孔に螺合するときのガイドとなるから、組付性向上に有利になる。
【0050】
<他の実施形態>
上記実施形態では、ジャンクションボックス122からインバータ121を介さずにモータ筐体15bに荷重を伝達する荷重伝達部材(通しボルト22)をジャンクションボックス122の車両前方側に配置した。しかし、図5及び図6に鎖線及び破線で示すように、荷重伝達部材を車両後方側に配置することもできる。
【0051】
すなわち、インバータ121の後面に車両後方への隆起部121eを設け、モータ筐体15bに隆起部121eに対応するボス15dを設け、ボルト19を通しボルト19aとして隆起部121eの貫通孔に通し、ボス15dにねじ結合することができる。通しボルト19aとボス15dの嵌め合い長さは、ボルト18とモータ筐体15bのボス15cとの嵌め合い長さよりも長くする。もちろん、ボルト19を通しボルト19aとせずに、ジャンクションボックス122の筐体下部とモータ筐体15bとを連結する通しボルトを車両後方側に別に設けるようにしてもよい。このように車両後方側に配置する通しボルトを以下では「後方側通しボルト」という。
【0052】
ジャンクションボックス122が前方からの衝突荷重によって後方に倒れようとするとき、後方側通しボルトには圧縮荷重が加わる。すなわち、後方側通しボルト19aは、ジャンクションボックス122に加わる衝突荷重を圧縮荷重としてモータ筐体15bに伝達することになる。いわば、後方側通しボルト19aがモータ筐体1bを荷重受けとする突っ張りとなって、ジャンクションボックス122の後方への倒れ(前側の浮上り)を抑制する。その結果、ジャンクションボックス122から車両前方側のボルト19、インバータ121及び車両前方側のボルト18を介してモータ筐体15bに伝達する衝突荷重が軽減される。よって、インバータ121の筐体下部の車両前方側の連結部121aへの荷重集中が大きくなることが避けられる。従って、ジャンクションボックス122がインバータ121と共に車両後方へ倒壊することの防止に有利になる。
【0053】
なお、車両前方側の通しボルト22(荷重伝達部材)及び車両後方側の通しボルト19a(荷重伝達部材)のうちの一方のみを設けてもよく、その両方を設けるようにしてもよい。
【0054】
上記各実施形態においては、荷重伝達部材として通しボルト22,19aを採用したが、本発明は、荷重を伝達することができる剛体であれば、荷重伝達部材の形状は問わない。
【0055】
上記各実施形態においては、荷重伝達部材として通しボルト22,19aを、車両右側にオフセットした前面衝突を考慮して駆動系装置8の右側に配置したが、駆動系装置8の中央寄りに、あるいは左寄りに配置する場合もある。
【0056】
また、本発明において、上側高電圧機器及び下側高電圧機器は上述のジャンクションボックス122及びインバータ121に限るものではなく、また、この上下の高電圧機器を積層支持する土台は、モータ装置15に限るものではなく、エンジン13やギヤボックス16等であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
5 コンパートメント
6 発電・駆動ユニット(パワートレイン)
7 発電装置
8 駆動系装置
11 第1高電圧機器
12 第2高電圧機器
13 エンジン
14 発電機
15 モータ装置
15a モータ筐体
16 ギヤボックス
19a 後方側通しボルト(後方側荷重伝達部材)
22 通しボルト(荷重伝達部材)
121 インバータ(下側高電圧機器)
122 ジャンクションボックス(上側高電圧機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8