【課題】低粘度であるとともに、良好な着色性能を示し、顔料の分散安定性及び長期保存性に優れた、カラーフィルター用着色剤の材料等として有用な顔料分散液組成物を提供する。
:水素原子、アルキル基等)で表されるマクロモノマー(a)に由来する構成単位(A)と、塩基性基含有モノマー(b)に由来する構成単位(B)とを有するポリマーであり、マクロモノマー(a)の数平均分子量が、1,000〜10,000であり、ポリマーのアミン価が20〜250mgKOH/gであり、数平均分子量が3,000〜15,000である顔料分散液組成物である。
前記塩基性基含有モノマー(b)が、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、及びビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の顔料分散液組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、本明細書中の各種物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0013】
<顔料分散液組成物>
本発明の顔料分散液組成物(以下、「顔料分散液」とも記す)は、顔料、有機溶剤、及び顔料分散剤を含有する、いわゆる「油性」の顔料分散液である。そして、顔料分散剤が、一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)に由来する構成単位(A)と、塩基性基含有モノマー(b)に由来する構成単位(B)と、その他の共重合性モノマー(c)に由来する構成単位(C)とを有するポリマーである。以下、本発明の顔料分散液の詳細について説明する。
【0014】
(顔料分散剤)
微粒子状の顔料を顔料分散液中に分散させるための成分である顔料分散剤は、その分子構造中に塩基性基を有するポリマーである。顔料分散剤中の塩基性基は、顔料の粒子表面、好ましくは顔料の粒子表面に存在する酸性基とイオン結合し、顔料と顔料分散剤が吸着することで、顔料の分散安定性及び長期保存性が発揮される。
【0015】
顔料分散剤は、下記一般式(1)で表されるマクロモノマー(a)に由来する構成単位(A)と、アミノ基等の塩基性基を有する塩基性基含有モノマー(b)に由来する構成単位(B)とを有するポリマーである。また、この顔料分散剤(ポリマー)は、好ましくは、マクロモノマー(a)及び塩基性基含有モノマー(b)と共重合可能なその他の共重合性モノマー(c)に由来する構成単位(C)をさらに有する。
【0016】
(前記一般式(1)中、Xは、ラジカル重合末端を表し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルキルシクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ポリ(2以上)ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニルオキシアルキル基、アリロキシアルキル基、ポリ(2以上)アルキレングリコール基、モノアルコキシポリ(2以上)アルキレングリコール基、モノアリロキシポリ(2以上)アルキレングリコール基、モノオキセアルカノニルアルキル基、又はポリ(2以上)オキセアルカノニルアルキル基を表し、R
2は複数種あってもよく、nは、前記マクロモノマー(a)の数平均分子量が1,000〜10,000となる数である)
【0017】
マクロモノマー(a)は、より具体的には、下記一般式(1−1)で表すことができる。
【0019】
一般式(1−1)中、R
1及びXは、前記一般式(1)中のR
1及びXと同義であり、R
2−1、R
2−2、…、及びR
2−xは、それぞれ独立に、前記一般式(1)中のR
2と同義であり、n
1、n
2、…、及びn
xの合計は、マクロモノマー(a)の数平均分子量が1,000〜10,000となる数である。マクロモノマー(a)は、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。
【0020】
顔料分散剤は、メタクリル酸系モノマーを構成成分とするマクロモノマー(a)末端の付加重合性基、塩基性基含有モノマー(b)の付加重合性基、及び必要に応じて用いられるその他の共重合性モノマー(c)の付加重合性基が重合してポリマー化した重合物である。顔料分散剤は、塩基性基含有モノマー(b)に由来する主鎖(構成単位(b))に、マクロモノマー(a)に由来する複数本のポリマー鎖(構成単位(A))が枝分かれした状態でグラフト結合した、いわゆるグラフトポリマーであると推測される。但し、顔料分散剤のすべてが上記のグラフトポリマーではない場合もある。例えば、1本のマクロモノマー(a)のみが分岐したT字型の構造を有するポリマーである場合や、ブロック構造を有するポリマーである場合もありうる。
【0021】
[マクロモノマー(a)]
マクロモノマー(a)は、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を含む、その末端に付加重合性基を有するモノマーである。マクロモノマー(a)は、メタクリル酸系モノマーによって実質的に構成されている。このため、構成単位となるメタクリル酸系モノマーを適宜選択することで、マクロモノマー(a)のガラス転移温度(Tg)を、低温から高温までの任意の温度に設定することが可能であり、得られるポリマー(顔料分散剤)に優れた耐熱性を付与することが期待される。
【0022】
マクロモノマー(a)は、必要に応じて、上記のメタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマー(その他のメタクリル酸系モノマー)に由来する構成単位を含んでいてもよい。その他のメタクリル酸系モノマーとしては、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等のハロゲン化アルキル基を有するメタクリル酸系モノマー;メタクリル酸テトラヒドロフルフリル;メタクリル酸ヒドロキシエチルにフタル酸、コハク酸、マレイン酸、トリメリット酸等の多塩基酸を反応させた低級アルコールエステル;等を挙げることができる。また、2−(2’−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェニルエチルメタクリレート等を用いることで、得られる顔料分散剤の耐光性を向上させることができるために好ましい。
【0023】
マクロモノマー(a)は、例えば、コバルトポルフィリン、ジアクアビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシマト)コバルタート(II)等の金属触媒、及びラジカル発生剤(以下、「開始剤」とも記す)を使用し、メタクリル酸系モノマーを重合することで製造することができる。また、α−ハロメチルアクリル酸やα−ハロメチルアクリル酸エステル(以下、「α−ハロメチルアクリル酸系モノマー」とも記す)等の連鎖移動剤を使用することでも製造することができる。
【0024】
しかし、上記の金属触媒を使用する方法では、重合後に金属触媒を除去する必要があるとともに、重合率が良好であるとも限らない。このため、α−ハロメチルアクリル酸系モノマー等の連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(a)を製造することが、精製工程が簡略化されるとともに、重合率(生産効率)が高く、コスト的にも有利であるために好ましい。なお、連鎖移動剤、メタクリル酸系モノマー、及び開始剤を用いてマクロモノマー(a)を調製する際の反応機構については、例えば、特開2017−58612号公報等の記載内容を参酌することができる。
【0025】
マクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は1,000〜10,000であり、好ましくは2,000〜5,000である。なお、本明細書における「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。マクロモノマー(a)に由来する構成単位(A)は、有機溶剤に溶解し、その立体反発及び立体障害によって顔料微粒子の凝集を抑制し、分散安定性を向上させることができる。マクロモノマー(a)の数平均分子量が1,000未満であると、立体反発及び立体障害障害が不足し、分散安定性を高めることができない。一方、マクロモノマー(a)の数平均分子量が10,000超であると、有機溶剤に溶解している構成単位(A)の分子量が大きすぎてしまい、顔料分散液組成物の粘度が過度に上昇したり、構成単位(A)同士の相互作用によって顔料微粒子がかえって凝集しやすくなったりして、分散安定性を高めることが困難になる。
【0026】
マクロモノマー(a)の数平均分子量は、例えば、開始剤と連鎖移動剤の使用量を調整することで制御することができる。なかでも、連鎖移動剤の使用量を調整することで、得られるマクロモノマー(a)の数平均分子量を制御することが好ましい。具体的には、マクロモノマー(a)を調製する際に用いる連鎖移動剤の量は、マクロモノマー(a)を構成するためのモノマー全体に対して、0.5〜10質量%とすることが好ましく、1〜5質量%とすることがさらに好ましい。
【0027】
マクロモノマー(a)は、メタクリル酸に由来する構成単位を有することが好ましい。すなわち、一般式(1)中のR
2(R
2が複数存在する場合には、少なくとも1つのR
2)が、水素原子であることが好ましい。メタクリル酸に由来する構成単位を有するマクロモノマー(a)、すなわち、酸性基を有するマクロモノマー(a)を用いることで、より容易にアルカリに溶解し、良好なアルカリ現像性を示すポリマーとすることができる。
【0028】
マクロモノマー(a)の酸価は、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、30〜100mgKOH/gであることがさらに好ましい。マクロモノマー(a)の酸価が10mgKOH/g未満であると、有効なアルカリ現像性を得ることができない場合がある。一方、マクロモノマー(a)の酸価が150mgKOH/g超であると、耐水性が低下したり、顔料分散液の粘度が高くなりすぎたりすることがある。マクロモノマーやポリマー等の樹脂の酸価は、樹脂1gを中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)で表される。樹脂の酸価は、有機溶媒(例えば、トルエン/エタノール=70/30質量比)に溶解させた樹脂を、0.1N水酸化カリウムを滴定液、フェノールフタレイン液を指示薬として滴定して得られる値(単位:mgKOH/g)である。
【0029】
[塩基性基含有モノマー(b)]
塩基性基含有モノマー(b)は、アミノ基を有するビニル系モノマー及びアミノ基を有するアクリレート系モノマーの少なくともいずれかである。アミノ基を有するビニル系モノマーとしては、ビニルピロール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルベンズイミダゾール、ビニルピリミジン、ビニルキノリン等を挙げることができる。アミノ基を有するアクリレート系モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、モルホリノエチルアクリレート等を挙げることができる。さらには、グリシジル基含有アクリレート、イソシアネート基含有アクリレート、又はアセチルアセトニル基含有アクリレートに、1級又は2級のアミノ基と、3級のアミノ基とを有するジアミン化合物を反応させて得られるモノマー等を挙げることができる。なかでも、塩基性基含有モノマー(b)としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、及びビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種が、コスト、入手のしやすさ、汎用性、及び吸着性等の面で好ましい。
【0030】
[その他の共重合性モノマー(c)]
その他の共重合性モノマー(c)は、マクロモノマー(a)及び塩基性機含有モノマー(b)と共重合可能なモノマーであればよく、例えば、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、ビニル系モノマー、ビニリデン系モノマー等を用いることができる。
【0031】
その他の共重合性モノマー(c)の具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸の低級アルコールエステル、ビニルカルバゾール、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の低級アルコールエステル等の芳香族又は複素環ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪族、脂環族、又は芳香族カルボン酸ビニルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメチルスルホン)イミド塩等の(メタ)アクリル酸系モノマーの第4級塩;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノ低級アルコールエステル、マレイン酸のジ低級アルコールエステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸のモノ低級アルコールエステル、イタコン酸のジ低級アルコールエステルなどの二塩基酸ビニル系モノマー;等を挙げることができる。
【0032】
その他の共重合性モノマー(c)は、下記式(A)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート(以下、「尿素基含有モノマー」とも記す)であることが好ましい。この尿素基含有モノマーに由来する構成単位は、その分子構造中の環状尿素が顔料と水素結合し、顔料に吸着しやすい。このため、尿素基含有モノマーに由来する構成単位を有するポリマーを顔料分散剤として用いると、顔料の分散安定性をさらに向上させることができる。なかでも、水素結合で結晶化しているキナクリドン系顔料やジケトピロロピロール系顔料等と併用することが有効である。
【0034】
顔料分散剤として用いるポリマーを構成する、構成単位(A)、構成単位(B)、及び構成単位(C)の質量比は、構成単位(A)、構成単位(B)、及び構成単位(C)の合計を100質量%とした場合に、(A):(B):(C)=50〜90:10〜50:0〜40であり、好ましくは55〜85:5〜45:0〜35である。構成単位(A)は、有機溶剤に溶解して相互に立体反発する部分であることから、十分な比率で含まれていることが必要である。構成単位(B)の比率が少なすぎると、顔料微粒子に十分に吸着しない。一方、構成単位(B)の比率が多すぎると、粘度が高くなりやすく、顔料の分散安定性が低下する。
【0035】
顔料分散剤として用いるポリマーの数平均分子量(Mn)は、3,000〜15,000であり、好ましくは4,000〜10,000である。ポリマーの数平均分子量が3,000未満であると、顔料の分散安定性が低下したり、耐熱性が低下したりすることがある。一方、ポリマーの数平均分子量が15,000超であると、顔料分散液の粘度が過度に高くなることがある。また、ポリマーの数平均分子量が大きすぎると、顔料の微粒子を分散させるのにより多くのポリマーを含有させる必要がある。
【0036】
顔料分散剤として用いるポリマーのアミン価は、20〜250mgKOH/gであり、好ましくは25〜150mgKOH/gである。そのアミン価が上記の範囲内にあるポリマーを顔料分散剤として用いることで、顔料表面やその表面にある顔料誘導体の酸性基とイオン結合等の吸着をして顔料分散剤が脱離することなく、良好に分散することができる。なお、ポリマーのアミン価が20mgKOH/g未満であると、吸着量が足りず、分散剤が脱離してしまう場合がある。一方、ポリマーのアミン価が250mgKOH/g超であると、塩基性基が多すぎて、別途使用する酸性基を有するポリマーとイオン結合してゲル化してしまったり、耐熱性が悪くなったり、黄変しやすくなる場合がある。
【0037】
(顔料)
顔料としては、従来公知の無機顔料や有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、サーマルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、オーカー、複合酸化物顔料等を挙げることができる。なかでも、塩基性基を有する顔料分散剤を用いることから、酸性の表面を有する顔料を用いることが好ましい。例えば、カーボンブラックとしては、いわゆる酸性カーボンブラックを用いることが好ましい。酸化チタンは、シリカや酸性のシランカップリング剤で処理し、表面を酸性にしておくことが好ましい。有機顔料としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、有機黒色顔料等を挙げることができる。
【0038】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、従来公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ドデカノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸ジメチル等のエステル系溶媒;ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルモノエーテルエステル系溶媒等を挙げることができる。顔料分散液に含有させる有機溶剤は、顔料分散剤(ポリマー)を合成する際に用いる有機溶剤と同一であることが好ましい。
【0039】
(その他の成分)
顔料分散液には、上述の各成分の他に、従来公知の添加剤や樹脂をさらに含有させることができる。添加剤としては、前述の顔料以外の着色剤、色素誘導体(シナジスト)、光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、光重合開始剤等を挙げることができる。顔料以外の着色剤としては、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、直接染料、蛍光染料等の各種染料を挙げることができる。
【0040】
樹脂としては、感光性の樹脂ワニス、非感光性の樹脂ワニスを用いることができる。
感光性の樹脂ワニスとしては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等のワニスを挙げることができる。さらに、これらのワニスに反応性希釈剤としてのモノマーが添加されたワニスを用いることもできる。
【0041】
非感光性の樹脂ワニスとしては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂等のワニスを挙げることができる。
【0042】
顔料分散液は、例えば、上述の各成分を配合し、有機溶剤中に顔料を分散させることで調製することができる。なお、顔料原体を顔料化する際に顔料分散剤を添加して、又は顔料を微細化(微粒子化)する際に顔料分散剤を添加して、樹脂処理顔料を調製してもよい。顔料分散液中の顔料の含有量は、5〜70質量%とすることが好ましく、10〜60質量%とすることがさらに好ましい。顔料分散液中の顔料分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、5〜100質量部とすることが好ましく、10〜50質量部とすることがさらに好ましい。
【0043】
顔料分散剤、顔料、及び液媒体である有機溶剤を混合し、必要に応じて各種の添加剤等をさらに混合した後、分散機等を使用して、顔料が所望とする粒子径の微粒子となるまで分散処理することで、顔料分散液を得ることができる。また、顔料、顔料分散剤、及び有機溶剤を混合し、必要に応じて予備混合した後、さらに分散機等で分散処理することでも、顔料分散液を得ることができる。分散機としては、従来公知の各種分散機を使用することができる。分散機としては、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコンなどを使用したサンドミル、横型メディア分散機、コロイドミル等を挙げることができる。顔料分散液の信頼性を高めるために、分散処理後に、遠心分離機、超遠心分離機、又はろ過機を使用してさらに処理して、僅かに存在する粗大粒子を除去することが好ましい。
【0044】
本発明の顔料分散液は油性であることから、従来のインクや塗料等に用いることができる。さらに、油性インクジェットインク用着色剤、紫外線硬化型インク用着色剤、紫外線硬化型インクジェットインク用着色剤、ディスプレイ向け部材用の着色剤、懸濁又は乳化重合法トナー用着色剤等に用いることもできる。なかでも、顔料分散液は、カラーフィルターを製造するための着色剤(カラーフィルター用着色剤)の構成材料として有用である。
【0045】
<カラーフィルター用着色剤>
上述の顔料分散剤は、良好な着色性能を示すとともに、顔料の分散安定性や長期保存性に優れていることから、カラーフィルター用着色剤(以下、「CF用着色剤」とも記す)の材料として有用である。具体的には、CF用着色剤は、前述の顔料分散液組成物、及び酸性基を有する色素誘導体を含有し、顔料として有機顔料を用いる。
【0046】
(有機顔料)
有機顔料としては、カラーフィルターを構成する従来の各色の顔料を用いることができる。赤色顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255等を挙げることができる。緑色顔料としては、ピグメントグリーン(PG)7、36、58、59、ポリ(14〜16個)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15個)ブロム−ポリ(4〜12個)クロル銅フタロシアニンを挙げることができる。青色顔料としては、ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80等を挙げることができる。これらの各色の顔料に対する補色顔料や、多色型の画素用顔料を用いることもできる。具体的には、ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219;ピグメントバイオレット(PV)19、23;等を用いることができる。
【0047】
顔料は、カラーフィルターの透明性、輝度、及びコントラスト等の色特性を出すために、微細化された顔料であることが好ましい。顔料の数平均粒子径(一次粒子径)は、10〜100nmであることが好ましく、20〜80nmであることがさらに好ましく、20〜50nmであることが特に好ましい。顔料の数平均粒子径が10nm未満であると、顔料の結晶性が壊れやすく、高温で分解又は溶解しやすくなり、耐熱性が低下する場合がある。一方、顔料の数平均粒子径が100nm超であると、粒子径が大きすぎるために、透明性や輝度が低下しやすくなる場合がある。顔料の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して観察し、測定及び算出することができる。なお、CF用着色剤中の顔料の含有量は、5〜30質量%であることが好ましく、8〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0048】
顔料を微細化する方法としては、例えば、顔料、無機塩、及び必要に応じて用いられるジエチレングリコール等の有機溶媒を、ニーダー等で混練して微細化する方法;顔料を濃硫酸などに溶解させた後、水に析出させて微細な結晶粒子とする方法;等を挙げることができる。微細化された顔料の結晶の形状が球状に近いと、乱反射による光散乱が生じにくくなり、コントラストが良好となりやすいために好ましい。微細化された顔料の粒度分布は狭い方が、乱反射による光散乱が生じにくくなり、発色性及びコントラストが良好になりやすいために好ましい。微粒子化された顔料を特定の顔料分散剤(ポリマー)で分散させて得られる顔料分散液を用いて調製されるCF用着色剤を用いれば、高発色性、高画質、高透明性、及び高コントラストなカラーフィルターを製造することができる。
【0049】
(色素誘導体)
一般的に、有機溶剤を分散媒体として含有する顔料分散液は、顔料及び有機溶剤が油性であるとともに、有機溶剤に溶解する顔料分散剤も油性である。このため、顔料に吸着した顔料分散剤は有機溶剤に溶解しうるので、顔料から脱離しやすく、顔料の分散状態を安定に維持することが困難な場合がある。そこで、油性の顔料分散液の場合、顔料の表面に酸性基(又は塩基性基)を導入するとともに、塩基性基(又は酸性基)を持った顔料分散剤を使用し、酸性基と塩基性基をイオン結合させることで、顔料分散剤を顔料に吸着させている。低極性の有機溶剤中ではイオン結合は解離しにくいので、顔料分散剤が顔料から脱離しにくい。これにより、顔料の分散状態を安定に維持することができる。
【0050】
但し、微粒子化された顔料の表面に酸性基や塩基性基(官能性基)を導入することは困難である。そこで、特定の官能性を持った、顔料と同一の構造、類似の構造、又は相互作用しやすい構造を有する化合物(色素誘導体)をさらに含有させ、この色素誘導体を顔料の表面に吸着させることが従来行われている。このような特定の官能基を持った色素誘導体は、顔料処理剤やシナジストとも呼ばれている。
【0051】
前述の顔料分散剤は塩基性基を有するポリマーであることから、顔料の分散状態を安定に維持するには、顔料の表面に酸性基を導入することが好ましい。しかし、上述の通り、微粒子化した顔料の酸性基を導入するのは困難である。このため、酸性基を有する色素誘導体(シナジスト)を用いる。酸性基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。アルカリ現像性を持たせるために、顔料分散剤を構成するマクロモノマー(a)がカルボン酸基を有する場合がある。一方、顔料分散剤は塩基性基を有するポリマーであるため、カルボン酸基と塩基性基がイオン結合してしまうと、色素誘導体の酸性基と顔料分散剤の塩基性基がイオン結合しにくくなり、顔料分散剤が顔料に吸着しなくなる場合がある。そこで、色素誘導体の酸性基を、カルボン酸基によりも強い酸性を示す基にする。これにより、顔料分散剤の塩基性基と色素誘導体の酸性基を優位にイオン結合させ、顔料分散剤を顔料に吸着させることができる。したがって、色素誘導体の酸性基としては、リン酸基やスルホン酸基が好ましい。
【0052】
色素誘導体本体の構造は、顔料の原料となる化合物、顔料と同一の構造を有する化合物等を挙げることができる。また、一般的な顔料は芳香環骨格を有することから、芳香族化合物、多環式化合物、複素環式化合物などを用いることもできる。酸性基は、色素誘導体本体に直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、アルキルアミド基、アルキルウレタン基、アルキル尿素基、及びスルホアミド基等を挙げることができる。色素誘導体本体としては、アゾ系の色素誘導体、フタロシアニン系の色素誘導体、アントラキノン系の色素誘導体、トリアジン系の色素誘導体、アクリジン系の色素誘導体、ペリレン系の色素誘導体、ジケトピロロピロール系の色素誘導体、ジオキサジンバイオレット系の色素誘導体等を挙げることができる。
【0053】
CF用着色剤中、顔料100質量部に対する色素誘導体の含有量は、5〜30質量部であることが好ましく、7〜20質量部であることがさらに好ましい。色素誘導体の含有量が、顔料100質量部に対して5質量部未満であると、顔料の表面に導入される酸性基の量が少ないため、顔料に吸着する顔料分散剤の量が不足する場合があり、分散安定性が不十分になることがある。一方、色素誘導体の含有量が、顔料100質量部に対して30質量部超であると、色素誘導体自体の色が表出しやすくなる。このため、所望とする顔料の色相が発揮されにくくなり、発色性が不足しやすくなることがある。なお、色素誘導体は、顔料に吸着して顔料の表面に酸性基等の官能性基を導入するだけでなく、顔料に吸着することで、熱による顔料の結晶成長を抑制する。さらには、熱で顔料の結晶が壊れたり、溶解して溶け出したりすることを防止することもできる。
【0054】
顔料分散液を製造する際に、顔料とともに色素誘導体を配合して分散させることができる。但し、顔料を予め色素誘導体で処理して処理顔料を調製することが好ましい。さらに、顔料を微粒子化した後、微粒子化した顔料を色素誘導体で処理して処理顔料を調製することが好ましい。顔料を色素誘導体で処理する方法としては、例えば、色素誘導体の存在下で顔料を合成する方法;微粒子化した顔料を水で解膠した後、色素誘導体を添加して処理する方法;顔料を微粒子化する際に色素誘導体を添加しておき、顔料の微粒子化と色素誘導体による処理を同時に行う方法;等を挙げることができる。さらには、顔料を水で解膠するとともに、色素誘導体の酸性基をアンモニアなどの塩基性物質で中和して水に親和、分散、又は溶解させてから顔料と混合した後、塩酸や硫酸等の酸性物質を添加してpHを酸性にして、色素誘導体を水に不溶にして顔料の表面に色素誘導体を吸着させる方法もある。
【0055】
(有機溶剤)
CF用着色剤に含有させる有機溶剤としては、顔料分散液に用いることができる前述の有機溶剤と同様のものを用いることができる。なかでも、乾燥性、造膜性、及び平滑性等の観点から、沸点が100℃以上の有機溶剤が好ましい。さらには、環境面から、乳酸エステルやグリコール系溶媒が好ましく、有機溶剤の主成分がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
【0056】
CF用着色剤中、顔料100質量部に対する顔料分散剤(ポリマー)の含有量は、10〜100質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。顔料分散剤の含有量が、顔料100質量部に対して10質量部未満であると、分散安定性が低下しやすくなることがある。一方、顔料分散剤の含有量が、顔料100質量部に対して100質量部超であると、顔料の分散に寄与しない過剰のポリマーが存在することになる。過剰のポリマーが存在すると、CF用着色剤の粘度が過度に上昇したり、形成されるカラーフィルター(膜)にポリマーの物性が顕在化し、カラーフィルターの強度や耐久性が低下したりする場合がある。
【0057】
CF用着色剤は、例えば、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット印刷法に適用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0059】
<グラフトコポリマーの合成>
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管をセパラブルフラスコに取り付けた反応装置を用意した。この反応装置に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)313.5部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(商品名「V−601」、富士フィルム和光純薬社製)(V−601)1.5部、2−(ブロモメチル)アクリル酸エチル(EBMA)12部、メタクリル酸メチル(MMA)90部、メタクリル酸ブチル(BMA)90部、メタクリル酸2−エチルヘキシル60部、及びメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(商品名「ブレンマーPME−200」、日油社製、n=3〜5)(PME200)60部を入れ、窒素ガスをバブリングしながら撹拌し、75℃に加温して6時間重合し、マクロモノマーM−1を合成した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は49.9%であり、それに基づいて算出した重合率は約100%であった。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするGPCにより測定した、マクロモノマーM−1の数平均分子量(Mn)は4,000、ピークトップ分子量(PT)は6,300、分散度は1.65であった。Mnは、THFを展開溶媒とするGPCの示差屈折率検出器により測定した値である。
【0060】
得られたマクロモノマーM−1の溶液を75℃に保持し、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル(DMAEA)128.7部、及びV−601 3部を添加した。75℃で4.5時間重合して主鎖を形成し、グラフトコポリマーGB−1を含有するポリマー溶液を得た。配合比から算出した主鎖のアミン価は391.8mgKOH/gであった。
【0061】
主鎖のアミン価は、以下のようにして算出した。上記の場合、主鎖はすべてDMAEAで形成されているので、DMAEAの分子量を「143.2」、KOHの分子量を「56.1」とすると、下記式によって主鎖のアミン価を算出することができる。以下、同様の方法によりアミン価を算出した。
(1/143.2)×56.1×1,000=391.8mgKOH/g
【0062】
得られたポリマー溶液の固形分は58.6%であり、重合率は約100%であった。グラフトコポリマーGB−1のMnは6,000、PTは10,100、分散度は1.70であった。マクロモノマーM−1のMnよりも増加したことから、グラフトコポリマーが形成されたと考えられる。ポリマー溶液の一部をサンプリングし、トルエン及び2−プロパノールで希釈してアミン価測定用の試料を調製した。そして、電位差自動滴定装置を使用し、0.1M 2−プロパノール性塩酸溶液を用いて測定したグラフトコポリマーGB−1のアミン価は、116.1mgKOH/gであった。以下、同様の方法によりアミン価を測定した。
【0063】
(合成例2〜6)
表1−1及び1−2に示す原材料の種類及び量(単位:部)としたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、グラフトコポリマーGB−2〜6を得た。表1−1及び1−2中の略号の意味は以下に示す通りである。
・MAA:メタクリル酸
・DEAEA:アクリル酸2−ジエチルアミノエチル
・2−VP:2−ビニルピリジン
・4−VP:4−ビニルピリジン
・1−VI:1−ビニルイミダゾール
・St:スチレン
・UMA:2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート
【0064】
マクロモノマーM−3の酸価は、以下のようにして算出した。まず、下記式によりマクロモノマー1部あたりのMAA量を算出する。
45/(75+60+60+60+45+18)=0.1415
【0065】
次いで、MAAの分子量を「86.1」、KOHの分子量を「56.1」とすると、下記式によってマクロモノマーM−3の酸価を算出することができる。以下、同様の方法により酸価を算出した。
(0.1415/86.1)×56.1×1,000=92.2mgKOH/g
【0066】
また、グラフトコポリマーGB−3の酸価は、以下のようにして測定した。ポリマー溶液の一部をサンプリングし、トルエン及びエタノールで希釈して酸価測定用の試料を調製した。そして、フェノールフタレイン溶液を指示薬とし、0.1%エタノール性水酸化カリウム溶液を用いて酸塩基滴定することで、グラフトコポリマーGB−3の酸価を測定した。以下、同様の方法により酸価を測定した。
【0067】
【0068】
【0069】
(合成例7)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管をセパラブルフラスコに取り付けた反応装置を用意した。この反応装置に、合成例1で得たグラフトコポリマーGB−1 252.9部を入れた。内容物を室温で撹拌しながら、塩化ベンジル(BzCl)31部及びPGMAc31部の混合溶液を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃に加温して5時間反応させて、グラフトコポリマーGB−7を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は57.9%であった。グラフトコポリマーGB−7のアミン価(実測値)は26.4mgKOH/gであり、ほぼ理論通りにアミンが第4級塩化したことを確認した。
【0070】
(合成例8)
BzClを15.2部、及びPGMAcを15.2部としたこと以外は、合成例7と同様にして、グラフトコポリマーGB−8を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は58.3%であった。グラフトコポリマーGB−8のアミン価(実測値)は62.1mgKOH/gであり、ほぼ理論通りにアミンが第4級塩化したことを確認した。
【0071】
合成例7及び8で得たグラフトコポリマーの詳細を表2に示す。また、表2中の略号の意味は以下に示す通りである。
・DAQ:2−ベンジルジメチルアンモニウムクロライドエチルアクリレート
【0072】
【0073】
(比較合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管をセパラブルフラスコに取り付けた反応装置を用意し、PGMAc443.7部を入れて75℃に加温した。内容物を撹拌しながら、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)15部を溶解させた、MMA90部、BMA90部、EHMA60部、PME200 60部、及びDMAEA 128.7部を含有するモノマー溶液を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で5時間反応させて、ランダムコポリマーRGB−1を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は50.0%であった。得られたランダムコポリマーRGB−1の詳細を表3に示す。
【0074】
【0075】
(比較合成例2〜5)
表4−1及び4−2に示す原材料の種類及び量(単位:部)としたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、ポリマーRGB−2〜5を得た。
【0076】
【0077】
【0078】
<顔料分散液の製造>
(実施例1〜9、比較例1〜4)
(a)顔料の微細化処理
カラーフィルター用の顔料として、PR254、PR177、PG58、PY138、PY150、PB15−6、及びPV23を用意した。加圧時に使用する密閉用の蓋(加圧蓋)を装着した加圧ニーダー(モリヤマ社製)に、各顔料100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を入れた。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した後、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら7時間混練及び摩砕処理して摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌した。ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した。十分水洗した後、乾燥及び粉砕して顔料粉末を得た。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して測定した顔料粉末の数平均粒子径は、いずれも約30nmであった。
【0079】
(b)顔料分散液の製造
表5に示す種類及び量(単位:部)の各成分を配合し、ディゾルバーを使用して2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、顔料分散液を得た。表5中、「シナジスト1」は下記式(I)(n=1.2)で表される化合物であり、「シナジスト2」は下記式(II)(n=1.1)で表される化合物であり、「シナジスト3」は下記式(III)(n=1.1)で表される化合物である。また、表5中、「アクリル樹脂」としては、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、Mnが5,500、分散度が2.02のもの(固形分30%のPGMAc溶液で測定)を用いた。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
(c)顔料分散液の評価
得られた顔料分散液について、顔料の数平均粒子径、初期の粘度、及び保存後の粘度(45℃で3日間放置した後の粘度)を測定した。結果を表6に示す。顔料の数平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径分布測定装置を使用して測定した。粘度は、E型粘度計を使用し、60rpm、25℃の条件で測定した。
【0085】
【0086】
<CF用着色剤(カラーフィルター(CF)用レジストインク)の調製>
(実施例10〜12、比較例5)
(a)CF用レジストインクの調製
表7に示す種類及び量(単位:部)の各成分を配合し、混合機を使用して十分に混合して、CF用着色剤である各色のCF用レジストインク(顔料インク(実施例10〜12))を得た。表7中、「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得たアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6,100、PTが14,400、分散度が2.39、酸価が111mgKOH/gであった。表7中の略号の意味は以下に示す通りである。
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
・HEMPA:2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸
・DEAP:2,2−ジエトキシアセトフェノン
【0087】
【0088】
また、グラフトコポリマーGB−1に代えて、塩基性のポリエステル系分散剤(12−ヒドロキシステアリン酸を開始化合物とする、ポリε−カプロラクトンとポリエチレンイミンとの縮合物、Mn:12,000、アミン価:12mgKOH/g)を顔料分散剤として用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして、赤色顔料分散液−4を調製した。そして、調製した赤色顔料分散液−4を用いたこと以外は、前述の実施例10の場合と同様にして、赤色のCF用レジストインク(顔料インク(比較例5))を得た。
【0089】
(b)CF用レジストインクの評価(1)
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。このガラス基板上に300rpm、5秒間の条件で各色の顔料インクをスピンコートした。80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光し、各色のガラス基板を製造した。
【0090】
実施例10〜12のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、実施例10〜12のいずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
【0091】
(c)CF用レジストインクの評価(2)
実施例10〜12及び比較例5のカラーガラス基板に、0.1Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を5秒ごとにスポットし、塗膜の露光部が溶解するまでの時間(溶解時間(秒))を測定する現像性試験を行った。結果を表8に示す。
【0092】
【0093】
実施例10〜12のカラーガラス基板では、25〜35秒後に塗膜の露光部が溶解した。また、実施例10〜12のガラス基板では、膜状のカスが出ず、良好な現像性を示した。さらに、溶解せずに残存した露光部の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認された。なかでも、実施例11のカラーガラス基板は、グラフトコポリマーGB−3(メタクリル酸単位を有するマクロモノマー(a)に由来する構成単位を含むポリマー)を顔料分散剤として用いて調製したものであるため、溶解時間が最も短かった。以上より、実施例10〜12の顔料インクを用いれば、溶解時間を短縮することができ、現像性及び生産性の向上が可能であることが分かる。
【0094】
これに対し、比較例5のカラーガラス基板については、塗膜の露光部が溶解するのに60秒以上を要した。比較例5の顔料インクを調製するのに用いた顔料分散剤は、疎水性が高く、アルカリ現像できないものであるために、溶解時間が長くなったものと考えられる。また、比較例5のガラス基板は、塗膜の露光部が膜状に脱離し、カスが発生していた。これは、比較例5の顔料インクを調製するのに用いた顔料分散剤が、アルカリ溶解性を有しないためであると考えられる。
【0095】
<顔料分散液(紫外線硬化型インクジェットインク用着色剤)の製造>
(実施例13〜17)
(a)顔料分散液の調製
表9に示す種類及び量(単位:部)の各成分を配合し、ディゾルバーを使用して2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、各色(エロー色(Y)、マゼンタ色(M)、シアン色(C)、ブラック色(Bk)、白色(W))の顔料分散液を得た。表9中、「シナジスト4」は下記式(IV)で表される化合物であり、n=1.3である。表9中、「PY−150」としては、商品名「レバスクリンエロー」(ランクセス社製)を用いた。また、「PR−122」及び「PB−15:4」は、いずれも大日精化工業社製のものを用いた。さらに、「カーボンブラック」としては、商品名「MB−1000」(三菱化学社製)を用い、「酸化チタン」としては、商品名「JR−405」(テイカ社製)を用いた。
【0096】
【0097】
【0098】
(b)顔料分散液の評価
得られた顔料分散液について、初期の顔料の数平均粒子径、保存後の顔料の数平均粒子径(70℃1週間放置した後の顔料の数平均粒子径)、初期の粘度、及び保存後の粘度(70℃1週間放置した後の粘度)を測定した。結果を表10に示す。顔料の数平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径分布測定装置を使用して測定した。粘度は、E型粘度計を使用し、60rpm、25℃の条件で測定した。
【0099】
【0100】
実施例17のW色顔料分散液を遮光したガラス瓶に入れ、60℃の恒温槽中に1ヶ月間保存し、粘度の変化、顔料の粒子径の変化、上澄みの発生、沈降物の発生、振とうして沈降物がなくなるか否かについて確認した。その結果、保存前後の顔料の数平均粒子径は230nmであり、粘度は27.3mPa・sであった。すなわち、保存による物性の変化は認められず、高度な分散安定性を保持していることが確認できた。また、保存により上澄みは生じなかった。スパチュラで掻いてみたところ、若干粘稠な沈降物が観察されたが、振とうしたところ沈降物はなくなり、元の分散状態に戻った。元の分散状態に戻った分散液中の顔料の数平均粒子径は238nmであった。すなわち、沈降物の発生により顔料の粒子径が若干大きくなったが、再分散により良好な分散状態に戻ることが確認できた。
【0101】
実施例13〜17の各色の顔料分散液は、高度に分散されているとともに、顔料の分散安定性も高いことから、紫外線硬化型のインクとして好適である。なかでも、酸化チタンは沈降しても再分散が容易であることから、吐出安定性及び高速印字性が要求される紫外線硬化型のインクジェットインクとして好適であると考えられる。