【解決手段】ガスシリンダ10Aのクッション機構では、第1圧力室のガスの圧力が所定圧以下である場合、弁体84は、バネ部材86の付勢力によって、排出流路82の上流側と下流側との連通を遮断する。また、ガスの圧力が所定圧を超える場合、弁体84は、付勢力に抗して排出流路82の下流側に変位することで、排出流路82の上流側と下流側とを連通させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同じ構造のガスシリンダが複数台設置される生産設備を取り扱う場合、それぞれのガスシリンダに対して絞り弁の手動調整を行う必要があるため、担当者の負担が大きくなる。
【0005】
また、絞り弁に対する手動調整は、担当者の手感に委ねられている。しかも、ねじ式の調整機構によって絞り弁の開度を手動調整するため、生産設備の振動等によるねじの緩みの有無の確認等、日々のメンテナンスが必要である。この結果、手動調整を繰り返し行う必要がある。
【0006】
さらに、カバー内の限られたスペースに絞り弁を内蔵させる必要があるため、ガスの流路断面積を大きくすることができない。
【0007】
さらにまた、シリンダ速度が高速仕様である場合、絞り弁の開度を手動調整してガスの排出量を絞ることで、ストローク端側でのシリンダ速度を減速させることができる。これにより、クッション室の圧力が加圧室側の圧力よりも高くなり、ピストンが進行方向とは逆方向に押し戻されるバウンド現象が発生する。この結果、タクトタイムが長くなって、生産設備のロスが発生する。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、手動調整を不要にすると共に、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストンのスムーズな到達とピストンに対する衝撃の緩和とを実現することができるガスシリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、内部にシリンダ室が形成されたシリンダチューブと、前記シリンダチューブの一端を閉塞する第1カバーと、前記シリンダチューブの他端を閉塞する第2カバーと、前記シリンダ室を前記第1カバー側の第1圧力室と前記第2カバー側の第2圧力室とに区画し、前記シリンダ室を摺動するピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドと、前記第1圧力室にガスを給排する第1ポートと、前記第2圧力室にガスを給排する第2ポートと、少なくとも前記第1カバー側のストローク端に前記ピストンが停止する際に該ピストンの動きを制動するクッション機構とを備えるガスシリンダに関する。
【0010】
前記クッション機構は、前記ピストンが前記ストローク端に近接する際に、前記第1圧力室と前記第1ポートとの連通状態を遮断する連通遮断部と、前記第1カバーに設けられ、前記第1圧力室のガスを排出するオリフィス部と、前記第1カバーに設けられ、前記第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、前記オリフィス部と共働して前記第1圧力室からガスを排出する排出流量調整部とを有する。
【0011】
前記排出流量調整部は、前記第1カバー内に形成され、前記第1圧力室のガスを排出するための排出流路と、前記排出流路の途中に配置されたスプール式の弁体と、前記弁体を前記排出流路の上流側に付勢する弾性体とを有する。
【0012】
そして、前記圧力が前記所定圧以下である場合、前記弁体は、前記弾性体の付勢力によって、前記排出流路の上流側と下流側との連通状態を遮断する。また、前記圧力が前記所定圧を超える場合、前記弁体は、前記圧力によって、前記付勢力に抗して前記排出流路の下流側に変位することで、前記排出流路の上流側と下流側とを連通させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1圧力室(クッション室)の圧力が所定圧以下である場合、弾性体からの付勢力によって、弁体が排出流路の上流側と下流側との連通状態を遮断するので、クッション室のガスは、オリフィス部のみを介して排出される。また、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、該圧力によって弁体が付勢力に抗して変位し、排出流路の上流側と下流側とを連通させるので、第1圧力室のガスは、オリフィス部を介して排出されると共に、排出流路を介して排出される。
【0014】
このように、圧力が所定圧を超える場合、2つのルートで第1圧力室のガスが排出される。これにより、第1圧力室のガスが短時間で排出されるので、ピストンをストローク端に速やか且つスムーズに到達させることができる。この結果、バウンド現象の発生を回避しつつ、ガスシリンダの応答性を向上させることができる。
【0015】
また、弾性体の付勢力と第1圧力室の圧力とのバランスで弁体が変位することで、排出流路の上流側と下流側とが、連通状態又は遮断状態に切り替わる。これにより、弁体に対する手動調整が不要になる。すなわち、スプール式の弁体であるため、排出流路の上流側と下流側とが連通状態である場合、第1圧力室の圧力の大きさに応じて、弁体の開度を徐々に変化させることができる。
【0016】
従って、本発明では、弁体に対する手動調整が不要になると共に、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストンのスムーズな到達とピストンに対する衝撃の緩和とを実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るガスシリンダについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
[1.第1実施形態]
<1.1 第1実施形態の構成>
図1に示すように、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aは、円筒のシリンダチューブ12と、シリンダチューブ12の一端を封止(閉塞)するヘッドカバー14と、シリンダチューブ12の他端を封止(閉塞)するロッドカバー16とを備える。シリンダチューブ12、ヘッドカバー14及びロッドカバー16は、複数の連結ロッド18及び連結ボルト20によって、ガスシリンダ10Aの軸方向に連結されている。ヘッドカバー14の上面(一面)には、ヘッド側ポート22が形成されている。ロッドカバー16の上面(他面)には、ロッド側ポート24が形成されている。ロッドカバー16からは、ピストンロッド26が突出して延出している。なお、ガスシリンダ10Aの軸方向とは、ピストンロッド26の延出方向をいう。
【0020】
図2に示すように、シリンダチューブ12の内部には、シリンダ室28が形成されている。シリンダ室28には、ヘッドカバー14側のストローク始端(ストローク端)と、ロッドカバー16側のストローク終端(ストローク端)との間を軸方向に摺動するピストン30が配置されている。ピストン30は、シリンダ室28をヘッドカバー14側のヘッド側圧力室32とロッドカバー16側のロッド側圧力室34とに区画する(
図2及び
図5A参照)。
【0021】
ピストン30には、ピストンロッド26が連結されている。ピストンロッド26の一端は、ピストン30に連結されている。ピストンロッド26の他端は、ロッドカバー16を貫通して外部に突出している。ピストン30のヘッドカバー14側には、ヘッド側クッションピン36が連結されている。ピストン30のロッドカバー16側には、ロッド側クッションピン38がピストンロッド26の外周面に取り付けられている。
【0022】
ヘッドカバー14には、ピストン30がストローク始端に近接した際に、ヘッド側クッションピン36が挿入される凹部状のヘッドカバー室40が形成されている。ヘッドカバー室40の奥側には、ヘッドカバー14内を上方に貫通する貫通孔42が形成されている。貫通孔42によって、ヘッド側ポート22が形成される。従って、ヘッド側ポート22は、ヘッドカバー室40を介して、ヘッド側圧力室32に対するガスの給排を行う。ヘッドカバー室40のピストン30側には、ヘッドカバー室40に挿入されるヘッド側クッションピン36に摺接するOリング等のクッションパッキン44が設けられている。
【0023】
ロッドカバー16には、ピストン30がストローク終端に近接した際に、ロッド側クッションピン38が挿入される凹部状のロッドカバー室46が形成されている。ロッドカバー室46の奥側には、ロッドカバー16内を上方に貫通する貫通孔48が形成されている。貫通孔48によって、ロッド側ポート24が形成される。従って、ロッド側ポート24は、ロッドカバー室46を介して、ロッド側圧力室34に対するガスの給排を行う。ロッドカバー室46のピストン30側には、ロッドカバー室46に挿入されるロッド側クッションピン38に摺接するOリング等のクッションパッキン50が設けられている。
【0024】
なお、ヘッド側圧力室32及びロッド側圧力室34に給排されるガスは、例えば、エアである。従って、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aは、例えば、エアシリンダに適用される。
【0025】
ガスシリンダ10Aのヘッドカバー14側には、ピストン30がストローク始端で停止する際に該ピストン30の動きを制動するヘッド側クッション機構52が設けられている。また、ガスシリンダ10Aのロッドカバー16側には、ピストン30がストローク終端で停止する際に該ピストン30の動きを制動するロッド側クッション機構54が設けられている。
【0026】
なお、ガスシリンダ10Aでは、クッション機構は、ヘッドカバー14側及びロッドカバー16側のうち、少なくとも一方に設けられていればよい。また、ストローク端(ストローク始端又はストローク終端)にピストン30が停止する際、該ピストン30とストローク端との間の空間(ヘッド側圧力室32又はロッド側圧力室34)がクッション室となる。
【0027】
ヘッド側クッション機構52は、ピストン30がストローク始端に近接する際に、ヘッド側圧力室32とヘッド側ポート22との連通状態を遮断する連通遮断部56と、ヘッドカバー14に設けられ、ヘッド側圧力室32のガスを排出するオリフィス部58と、ヘッドカバー14に設けられ、ヘッド側圧力室32の圧力が所定圧を超える場合、オリフィス部58と共働してヘッド側圧力室32からガスを排出する排出流量調整部60(
図1、
図3A及び
図3B参照)とを有する。
図1〜
図3Bのように、オリフィス部58及び排出流量調整部60は、ヘッドカバー14内において、ピストンロッド26に対して上側(一方の側部)に、且つ、平面視で、軸方向に直交する方向に並ぶように設けられている。
【0028】
ヘッド側クッション機構52において、連通遮断部56は、ヘッド側クッションピン36及びクッションパッキン44である。ヘッド側クッションピン36とクッションパッキン44とが摺接することにより、ヘッド側圧力室32とヘッド側ポート22との連通状態が遮断される。また、ヘッド側クッション機構52において、オリフィス部58は、ヘッド側圧力室32に連通し、ヘッドカバー14内を軸方向に延在する上流側の流路62と、該流路62の下流側に連結され、ヘッドカバー14内を上下方向に延在する下流側の流路64と、該流路64の下側とヘッドカバー室40とを連通させ、流路よりも小径のオリフィス66とから構成される。上下方向に延在する流路64の上端は、鋼球68によって封止されている。従って、ヘッド側圧力室32とヘッド側ポート22との連通状態が遮断された場合、ヘッド側圧力室32のガスは、各流路62、64及びオリフィス66からヘッドカバー室40及びヘッド側ポート22を介して排出される。
【0029】
ロッド側クッション機構54は、ピストン30がストローク終端に近接する際に、ロッド側圧力室34とロッド側ポート24との連通状態を遮断する連通遮断部70と、ロッドカバー16に設けられ、ロッド側圧力室34のガスを排出するオリフィス部72と、ロッドカバー16に設けられ、ロッド側圧力室34の圧力が所定圧を超える場合、オリフィス部72と共働してロッド側圧力室34からガスを排出する排出流量調整部74(
図1、
図3A及び
図3B参照)とを有する。
図1〜
図3Bのように、オリフィス部72及び排出流量調整部74は、ロッドカバー16内において、ピストンロッド26に対して上側(一方の側部)に、且つ、平面視で、軸方向に直交する方向に並ぶように設けられている。
【0030】
ロッド側クッション機構54において、連通遮断部70は、ロッド側クッションピン38とクッションパッキン50とである。ロッド側クッションピン38とクッションパッキン50とが摺接することにより、ロッド側圧力室34とロッド側ポート24との連通状態が遮断される。また、ロッド側クッション機構54において、オリフィス部72は、ロッド側圧力室34に連通し、ロッドカバー16内を軸方向に延在する上流側の流路76と、該流路76の下流側に連結され、ロッドカバー16内を上下方向に延在する下流側の流路78と、該流路78の下側とロッドカバー室46とを連通させ、流路78よりも小径のオリフィス80とから構成される。上下方向に延在する流路78の上端は、鋼球81によって封止されている。従って、ロッド側圧力室34とロッド側ポート24との連通状態が遮断された場合、ロッド側圧力室34のガスは、各流路76、78及びオリフィス80からロッドカバー室46及びロッド側ポート24を介して外部に排出される。
【0031】
ヘッド側クッション機構52及びロッド側クッション機構54において、排出流量調整部60、74の構成は、概ね同じ構成である。そのため、以下の説明では、主として、ロッド側クッション機構54の排出流量調整部74について、
図3A〜
図4Bを参照しながら説明する。
【0032】
排出流量調整部74は、ロッドカバー16内に形成され、ロッド側圧力室34のガスを外部に排出するための排出流路82と、排出流路82の途中に配置されたスプール式の弁体84と、弁体84を排出流路82の上流側に付勢するバネ部材86(弾性体)とを有する。
【0033】
排出流路82は、ロッド側圧力室34に連通し、ロッドカバー16内を軸方向に延在する第1流路82aと、第1流路82aの下流側から上方向に延びる第2流路82bと、第2流路82bの下流側から上方向に延び、第2流路82bよりも大径の第3流路82cと、第3流路82cに接続され、軸方向に延びる第4流路82dとから構成される。従って、第2流路82bと第3流路82cとの連結部分は、段差状に形成されている。
【0034】
なお、ロッドカバー16内には、第4流路82dと略同軸に、ロッド側圧力室34から第3流路82cに向かって延びる通路83が形成されている。通路83は、ドリル等で第4流路82dを形成するための捨て穴であり、鋼球85で封止されている。
【0035】
ロッドカバー16の内周面のうち、第2流路82bと第3流路82cとの連結部分の箇所には、第3流路82cから第2流路82bに向かって縮径するテーパ88が形成されている。
【0036】
第3流路82cは、蓋部90によって封止されている。蓋部90は、抜け止めクリップ92によってロッドカバー16に固定されている。なお、蓋部90の外周面には、雄ネジ部94が形成されてもよい。この場合、ロッドカバー16の内周面のうち、第3流路82cの箇所には、雄ネジ部94に螺合する雌ネジ部96が形成される。
【0037】
弁体84は、第2流路82bから第3流路82cにかけて配置され、段差を有する円柱状のスプール弁である。弁体84は、第2流路82bに挿入可能な小径部84aと、小径部84aに連接し、第3流路82cに配置され、小径部84aよりも大径の大径部84bとから構成されている。小径部84aの外周面には、ロッドカバー16の内周面のうち、第2流路82bを形成する箇所に摺接するOリング等のシール部材84cが設けられている。また、大径部84bは、ロッドカバー16の内周面のうち、第3流路82cを形成する箇所に摺接している。大径部84bの外周面には、弁体84の変位方向である上下方向に沿って、スリット84dが形成されている。
図3B、
図4A及び
図4Bには、一例として、2つのスリット84dを設ける場合を図示している。なお、小径部84aの先端部分は、
図3B及び
図4Aのように、平坦な形状であってもよいし、又は、ニードル状に形成されてもよい。
【0038】
バネ部材86は、第3流路82cにおいて、蓋部90と弁体84との間に介挿される。バネ部材86は、大径部84bを下方向(第2流路82b側)に付勢する。
【0039】
第4流路82dは、第3流路82cの大径部84b側から軸方向に延び、ロッドカバー室46から上方に延びる流路98(
図2及び
図3B参照)に連通している。流路98の上端は、鋼球100によって封止されている。第4流路82dは、流路98及びロッドカバー室46を介して、ロッド側ポート24に連通している。
【0040】
以上、ロッド側クッション機構54の排出流量調整部74について説明した。ヘッド側クッション機構52の排出流量調整部60については、「ロッド」の文言を「ヘッド」に変更することで、該排出流量調整部60に対する説明となる。
【0041】
<1.2 第1実施形態の動作>
以上のように構成される第1実施形態に係るガスシリンダ10Aの動作について説明する。ここでは、ロッドカバー16(第1カバー)側のストローク終端(ストローク端)にピストン30が到達する場合のロッド側クッション機構54(クッション機構)の動作について説明する。
【0042】
先ず、
図7の時点t1において、ヘッド側ポート22(第2ポート)からヘッドカバー室40を介してヘッド側圧力室32(第2圧力室)へのガスの供給を開始すると共に、ロッド側圧力室34(第1圧力室)からロッドカバー室46及びロッド側ポート24(第1ポート)を介したガスの排出を開始する。なお、
図7において、Phは、ヘッド側ポート22からヘッド側圧力室32に供給されるガスの圧力(ヘッド側圧力)である。Prは、ロッド側ポート24から排出されるガスの圧力(ロッド側圧力)である。Pcは、ロッド側圧力室34の圧力(クッション圧力)である。
【0043】
この場合、時点t1から時間経過に伴ってPhが上昇する一方で、Prは減少する。一方、Pcは、一時的に減少するが、概ね所定の圧力を維持する。これにより、ピストン30は、ロッドカバー16側に向けて軸方向に変位し、ピストンロッド26は、ロッドカバー16から軸方向に突出する。
【0044】
次に、ロッド側クッションピン38がロッドカバー室46に進入し、ロッド側クッションピン38とロッドカバー室46のクッションパッキン50とが摺接すると、ロッドカバー室46を介したロッド側ポート24とロッド側圧力室34との連通状態が遮断される。これにより、ロッド側圧力室34の圧力が上昇する。この場合、ロッド側圧力室34のガスは、
図5Aのように、オリフィス部72(2つの流路76、78及びオリフィス80)及びロッドカバー室46を介して、ロッド側ポート24から排出される。ロッド側圧力室34の圧力が所定圧(
図7では0.5MPa)以下であれば、弁体84は、バネ部材86の付勢力によって第2流路82b側に変位し、大径部84bは、第2流路82bと第3流路82cとの連結部分を閉塞して、第2流路82bと第3流路82cとの連通状態を遮断する。
【0045】
次に、時点t2で、ロッド側圧力室34の圧力が所定圧を超える場合、弁体84は、該圧力によって、バネ部材86の付勢力に抗して上方向(第3流路82c側)に変位する。この場合、大径部84bにはスリット84dが形成されているので、弁体84が上方向に変位した際、蓋部90と弁体84との間の空間に存在するガスは、スリット84dを介して第4流路82d側に抜ける。これにより、弁体84を上方向に容易に変位させることができる。
【0046】
また、弁体84は、スプール式の弁体であり、ロッド側圧力室34の圧力の大きさに応じて、上方向に変位する。この場合、
図5Bのように、大径部84bが第2流路82bと第3流路82cとの連結部分から離間し、弁体84(小径部84a)とテーパ88との間に僅かな隙間が形成される。これにより、第2流路82bと第3流路82cとが連通し、ロッド側圧力室34のガスは、
図5Aのように、オリフィス部72及びロッドカバー室46を介してロッド側ポート24から外部に排出されると共に、
図5Bのように、第1流路82a、第2流路82b、僅かな隙間、第3流路82c、第4流路82d、流路98及びロッドカバー室46を介して、ロッド側ポート24から排出される。つまり、ロッド側圧力室34の圧力が所定圧を超える場合、2つのルートを介して、ロッド側圧力室34のガスが排出される。なお、弁体84が上方向に変位することで、バネ部材86は収縮する。
【0047】
そして、ロッド側圧力室34の圧力がさらに上昇すると、弁体84が上方向にさらに変位し、弁体84とテーパ88との隙間が大きくなる。すなわち、弁体84の開度が大きくなる。この結果、ロッド側圧力室34のガスは、
図5Aのように、オリフィス部72及びロッドカバー室46を介してロッド側ポート24から外部に排出されると共に、
図6のように、第1流路82a、第2流路82b、より大きな隙間、第3流路82c、第4流路82d、流路98及びロッドカバー室46を介して、ロッド側ポート24から排出される。この場合も、上記の2つのルートを介して、ロッド側圧力室34のガスが排出される。なお、弁体84が上方向にさらに変位することで、バネ部材86は一層収縮する。
【0048】
このように、時点t2から時点t3までの時間帯では、ロッド側圧力室34の圧力の大きさに応じて弁体84の開度が変化することにより、該圧力を所定圧以下に抑えつつ、ピストン30をストローク終端側に近づけることができる。この結果、時点t3で、ピストン30がストローク終端に到達した際、ピストン30に作用する衝撃力を低下させることができる。
【0049】
<1.3 第1実施形態の効果>
このように、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aは、内部にシリンダ室28が形成されたシリンダチューブ12と、シリンダチューブ12の一端を閉塞する第1カバー(ヘッドカバー14及びロッドカバー16のうち、一方のカバー)と、シリンダチューブ12の他端を閉塞する第2カバー(ヘッドカバー14及びロッドカバー16のうち、他方のカバー)と、シリンダ室28を第1カバー側の第1圧力室(ヘッド側圧力室32及びロッド側圧力室34のうち、一方の圧力室)と第2カバー側の第2圧力室(ヘッド側圧力室32及びロッド側圧力室34のうち、他方の圧力室)とに区画し、シリンダ室28を摺動するピストン30と、ピストン30に連結されたピストンロッド26と、第1圧力室にガスを給排する第1ポート(ヘッド側ポート22及びロッド側ポート24のうち、一方のポート)と、第2圧力室にガスを給排する第2ポート(ヘッド側ポート22及びロッド側ポート24のうち、他方のポート)と、少なくとも第1カバー側のストローク端(ストローク始端又はストローク終端)にピストン30が停止する際に該ピストン30の動きを制動するクッション機構(ヘッド側クッション機構52、ロッド側クッション機構54)とを備える。
【0050】
クッション機構は、ピストン30がストローク端に近接する際に、第1圧力室と第1ポートとの連通状態を遮断する連通遮断部56、70と、第1カバーに設けられ、第1圧力室のガスを排出するオリフィス部58、72と、第1カバーに設けられ、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、オリフィス部58、72と共働して第1圧力室からガスを排出する排出流量調整部60、74とを有する。
【0051】
排出流量調整部60、74は、第1カバー内に形成され、第1圧力室のガスを排出するための排出流路82と、排出流路82の途中に配置されたスプール式の弁体84と、弁体84を排出流路82の上流側に付勢するバネ部材86(弾性体)とを有する。
【0052】
そして、圧力が所定圧以下である場合、弁体84は、バネ部材86の付勢力によって、排出流路82の上流側(第2流路82b)と下流側(第3流路82c)との連通状態を遮断する。一方、圧力が所定圧を超える場合、弁体84は、圧力によって、付勢力に抗して排出流路82の下流側に変位することで、排出流路82の上流側と下流側とを連通させる。
【0053】
第1圧力室(クッション室)の圧力が所定圧以下である場合、バネ部材86からの付勢力によって、弁体84が排出流路82の上流側と下流側との連通状態を遮断するので、第1圧力室のガスは、オリフィス部58、72のみを介して排出される。また、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、該圧力によって弁体84が付勢力に抗して変位し、排出流路82の上流側と下流側とを連通させるので、第1圧力室のガスは、オリフィス部58、72を介して排出されると共に、排出流路82を介して排出される。
【0054】
このように、圧力が所定圧を超える場合、2つのルートで第1圧力室のガスが排出される。これにより、第1圧力室のガスが短時間で排出されるので、ピストン30をストローク端に速やか且つスムーズに到達させることができる。この結果、バウンド現象の発生を回避しつつ、ガスシリンダ10Aの応答性を向上させることができる。
【0055】
また、バネ部材86の付勢力と第1圧力室の圧力とのバランスで弁体84が変位することで、排出流路82の上流側と下流側とが、連通状態又は遮断状態に切り替わる。これにより、弁体84に対する手動調整が不要になる。すなわち、スプール式の弁体であるため、排出流路82の上流側と下流側とが連通状態である場合、第1圧力室の圧力の大きさに応じて、弁体84の開度を徐々に変化させることができる。
【0056】
従って、ガスシリンダ10Aでは、弁体84に対する手動調整が不要になると共に、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストン30のスムーズな到達とピストン30に対する衝撃の緩和とを実現することが可能となる。
【0057】
ここで、排出流路82は、第1圧力室に連通する第1流路82aと、第1流路82aの下流側に接続される第2流路82bと、第2流路82bの下流側に接続され、第2流路82bよりも大径の第3流路82cと、第3流路82cの下流側に接続され、外部に連通する第4流路82dとから構成される。弁体84は、第2流路82bに挿入可能な小径部84aと、小径部84aに連接し、第3流路82cに配置され、小径部84aよりも大径の大径部84bとから構成される。バネ部材86は、第3流路82cに配置され、大径部84bを第2流路82b側に付勢する。
【0058】
そして、圧力が所定圧以下である場合、バネ部材86の付勢力によって弁体84が第2流路82b側に変位し、第2流路82bと第3流路82cとの連結部分を大径部84bが閉塞することにより、第2流路82bと第3流路82cとの連通状態が遮断される。また、圧力が所定圧を超える場合、弁体84が圧力によって付勢力に抗して第3流路82c側に変位することで、大径部84bが連結部分から離間し、第2流路82bと第3流路82cとが連通する。
【0059】
これにより、バウンド現象の発生を効果的に抑制することができると共に、ストローク端へのピストン30のスムーズな到達を容易に実現することができる。また、第1圧力室からのガスを小径部84aで受圧し、バネ部材86からの付勢力を大径部84bで受けるため、ガスの圧力に打ち克つような付勢力(バネ力)を確保することが可能となる。すなわち、小径部84aでガスの受圧面積が小さくなるため、該ガスから弁体84に作用する推力が低下する。これにより、バネ部材86を小型化しても、バネ力を確保することができる。
【0060】
また、小径部84aの外周面には、第1カバーの内周面における第2流路82bの箇所に摺接するシール部材84cが設けられている。該第1カバーの内周面における連結部分の箇所には、第3流路82cから第2流路82bに向かって縮径するテーパ88が形成されている。これにより、弁体84が変位方向に移動する際、連結部分との接触によるシール部材84cの摩耗や損傷等の発生が回避されるので、弁体84を含むガスシリンダ10Aの長寿命化を図ることができる。また、テーパ88が形成されることで、ガスの圧力に応じて弁体84が変位する際、弁体84の開度を徐々に変化させることができる。
【0061】
また、大径部84bの外周面には、弁体84の変位方向に沿って、スリット84dが形成されている。これにより、弁体84が第3流路82c側に変位する際(弁体84を開く際)には、蓋部90と弁体84との間の空間に存在するガスがスリット84dを介して抜けるので、該弁体84を第3流路82c側に容易に変位させることができる。
【0062】
また、スリット84dを設けることにより、第1圧力室のガスに対する大径部84bの受圧面積が小さくなる。これにより、弁体84が第2流路82b側に変位する際(弁体84を閉じる際)には、大径部84bが該ガスから受ける力(抵抗)が小さくなるので、弁体84を第2流路82b側にスムーズに摺動させることができる。
【0063】
さらに、スリット84dを設けることにより、大径部84b、又は、第3流路82cを形成する第1カバーの内周面にガタツキがあっても、弁体84の移動に対する該ガタツキの影響を小さくすることができる。
【0064】
また、第3流路82cは、外部に連通すると共に、蓋部90によって閉塞され、蓋部90と大径部84bとの間にバネ部材86が介挿されている。これにより、バネ部材86の交換が容易になる。
【0065】
この場合、蓋部90の外周面に雄ネジ部94が形成され、第3流路82cを形成する第1カバーの内周面における蓋部90の箇所には、雄ネジ部94に螺合する雌ネジ部96が形成されている。これにより、蓋部90を回すことにより、バネ部材86の付勢力(バネ力)を容易に調整することが可能となる。
【0066】
また、オリフィス部58、72及び排出流量調整部60、74が第1カバー内で、ピストンロッド26に対する一方の側部にまとめて配置されているので、第1カバーの4つの面のうち、3つの面をガスシリンダ10Aの取り付け面とすることができる。この結果、限られたスペースに複数台のガスシリンダ10Aを集約して配置することが可能となる。また、ガスシリンダ10Aの製造が容易になる。さらに、現行製品との間で、外観寸法の互換性を保つガスシリンダ10Aを実現することができる。
【0067】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るガスシリンダ10Bについて、
図8〜
図10を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に係るガスシリンダ10A(
図1〜
図7参照)と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0068】
第2実施形態に係るガスシリンダ10Bは、オリフィス66、80と第2流路82bとが略同軸に連通し、第4流路82dが第1ポート(ヘッド側ポート22又はロッド側ポート24)に連通している点で、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aとは異なる。従って、第2実施形態に係るガスシリンダ10Bでは、オリフィス66、80、第2流路82b及び第3流路82cが略同軸に形成され、且つ、第1流路82a及び第2流路82bをオリフィス部58、72の流路として利用している。これにより、ガスシリンダ10Aと比較して、第1カバー(ヘッドカバー14又はロッドカバー16)内の流路の数が少なくなり、該第1カバーの加工が容易になる。
【0069】
第2実施形態に係るガスシリンダ10Bの動作は、基本的には、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aの動作と略同様であるが、ピストン30がストローク端(ストローク始端又はストローク終端)に近接する際、第1圧力室(ヘッド側圧力室32又はロッド側圧力室34)の圧力が所定圧以下である場合には、第1流路82a、第2流路82b、オリフィス66、80、第1カバー室(ヘッドカバー室40又はロッドカバー室46)及び第1ポートを介して、該第1圧力室のガスが排出される。一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合には、弁体84が上方に変位し、第2流路82bと第3流路82cとが連通状態となるため、上記のルートに加え、第1〜第4流路82a〜82d及び第1ポートを介して、第1圧力室のガスが外部に排出される。
【0070】
従って、第2実施形態に係るガスシリンダ10Bにおいても、第1実施形態に係るガスシリンダ10Aと同様の効果が得られる。また、第2実施形態の場合、第1実施形態と比較して、第1カバー内の流路の数が少なくなるので、第1カバーに対する穴加工の工数が削減され、ガスシリンダ10Bの製造が容易になる。さらに、第2実施形態では、第4流路82dが第1ポートに連通しているので、第1圧力室のガスを速やかに排出して、第1圧力室の圧力を低下させることができる。この結果、ガスシリンダ10Bの応答性を向上させることができる。
【0071】
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るガスシリンダ10Cについて、
図11A及び
図11Bを参照しながら説明する。
【0072】
第3実施形態に係るガスシリンダ10Cは、外観上、第2実施形態に係るガスシリンダ10B(
図8〜
図10参照)と略同様である。但し、第3実施形態に係るガスシリンダ10Cでは、蓋部90に外部と連通する流路102が形成されている。この流路は、第3流路82cと外部とを連通させる第4流路82dとして形成される。つまり、第3実施形態では、第3流路82cと第1ポート(ヘッド側ポート22又はロッド側ポート24)との間にガスを排出するための流路は形成されていない。なお、
図11A及び
図11Bでは、2つの第4流路82dが蓋部90に形成されている場合を図示している。
【0073】
第3実施形態に係るガスシリンダ10Cの動作は、基本的には、第2実施形態に係るガスシリンダ10Bの動作と略同様であるが、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合には、弁体84が上方に変位し、第2流路82bと第3流路82cとが連通状態となる。この場合、蓋部90に第4流路82dが形成されているので、第3流路82cに流入したガスは、スリット84d及び第4流路82dを介して外部(大気)に排出される。
【0074】
従って、第3実施形態に係るガスシリンダ10Cにおいても、第1及び第2実施形態に係るガスシリンダ10A、10Bと同様の効果が得られる。また、第3流路82cに流入したガスを、スリット84d及び第4流路82dを介して外部(大気)に排出する構成であるため、弁体84をより低い圧力で第3流路82c側に変位させると共に、第1圧力室のガスをスムーズに排出して、第1圧力室の圧力を速やかに低下させる。この結果、ガスシリンダ10Cの応答性が向上する。また、第3流路82cと第1ポートとの間にガスを排出するための流路を形成する必要がないため、第1カバーに対する穴加工の工数が削減され、ガスシリンダ10Cの製造が容易になる。
【0075】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。