【解決手段】ワークWの通過による検査領域Z中の磁界変動を検出し、磁界変動信号Sdのうち基準信号に対し同相側の第1の変動成分Rxと直交位相側の第2の変動成分Ryとを、直交する2つの検出位相で検波処理する検波部24と、検波後の両変動成分X、Yを基に混入金属の有無を判定する判定部36とを備えた金属検出装置で、判定部36は、複数種のうち各種の金属サンプルTp1、Tp2等の通過による磁界変動信号により予め得たサンプル信号位相データと、金属が混入したワークWの通過による磁界変動信号により得られる被検査物信号位相データとの差異を判定する第2判定部36bと、その位相判定結果に基づいてワークW中に混入した金属を磁性の相違する種別により異なる色調でスケール表示する表示器17とを有している。
前記種別表示手段は、前記複数種の金属サンプルについて前記2つの検出位相に対応する直交座標系中に生じる相互の位相差により生じる複数の位相領域を所定方向に整列させつつ異なる色調に表示するスケール表示と、該スケール表示上で現在検出中の金属の位相を識別可能に表示する識別表示とを実行することを特徴とする請求項1に記載の金属検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1〜
図10は本発明の第1実施形態に係る金属検出装置の概略構成を示す図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施形態の金属検出装置10には、被検査物であるワークWを搬送するコンベア12と、そのコンベア12の途中に位置する検査ヘッド14とが設けられている。
【0023】
ワークWは、例えば量産される食品を包装材で包装したものであり、箱入り製品のような定形のものでも、流動物等を封入した可撓性の袋入り製品のような不定形のものでよく、冷凍品でもよい。勿論、ワークWとなる物品は、食品に限定されるものではない。
【0024】
コンベア12は、例えば図示しないループ状のベルトおよびローラを有するベルトコンベアで構成されており、ワークWを検査ヘッド14内の開口14aを通して所定方向に搬送できるようになっている。
【0025】
検査ヘッド14は、コンベア12の所定長さのワーク搬送区間に対応する検査領域Z内に交流磁界を発生させることができるとともに、ワークWの通過に伴う検査領域Z内の磁界の変動を検出することができるようになっており、ワークW中の金属(混入異物でも予め封入された製品の一部でもよい)あるいは非金属の異物(金属または金属成分を含んだ異物、欠品検出の場合は異物でなく構成要素でもよい)を検出するようになっている。
【0026】
検査領域Zの入り口側(搬送方向上流側)には、ワークWの検査領域Zへの進入を検知する例えば光学式の物品検知センサ15が設置されている。また、金属検出装置10の上部側正面には、ユーザによる操作入力のための操作入力部16と、その操作用の表示や運転状態表示、異常の報知等を行なうための表示器17等が設けられている。
【0027】
金属検出装置10は、具体的には、検査ヘッド14に交流磁界を発生させる信号発生器21および送信コイル22と、検査ヘッド14に交流磁界の変動を検出させる一方および他方の受信コイル23a、23bと、検査ヘッド14の検出信号を直交検波処理する検波部24と、検波部24からの検波出力信号をA/D変換するA/D変換器27a、27bと、そのA/D変換後の検出データを基に金属検出が可能な所定の制御プログラムを実行する制御部30とを含んで構成されている。
【0028】
信号発生器21は、所定周波数の交流の送信信号を発生するもので、図示しない電流増幅器を介して送信コイル22を電流駆動する。また、送信コイル22は、コンベア12の搬送路近傍に配置され、信号発生器21からの電流駆動によって励磁されたとき、送信信号周波数に対応する所定強度の交流磁界(交番磁界)を検査領域Z内に発生させるようになっている。この送信コイル22は信号発生器21と共に磁界発生部を構成している。
【0029】
より具体的には、
図2に示すように、送信コイル22は、検査ヘッド14内に開口14aを取り囲むように配置されており、一方および他方の受信コイル23a、23bは、検査ヘッド14の開口14aを取り囲み、かつ、送信コイル22に対しワーク搬送方向の前後に略同一の中心軸を持つように配置されている。
【0030】
受信コイル23a、23bは、送信コイル22からの磁束が略等量に鎖交するよう配置されかつ互いに逆相に接続された少なくとも一対のコイルからなり、対向する一端側で接地されるとともに他端側で検波部24に接続されている。これら受信コイル23a、23bは、送信コイル22と協働して検査領域における磁界の変動を検出する差動検出器23(磁界検出部)を構成している。送信コイル22で発生する交流磁界の周波数は、後述する制御部30によって可変設定されるようになっており、差動検出器23は設定される各周波数の交流磁界についてその変動を検出可能である。
【0031】
具体的には、検査領域Z内に交流磁界が発生しているとき、受信コイル23a、23bには、それぞれ電圧が誘起されるが、送信コイル22からの交流磁界のみに対しては逆相接続された受信コイル23a、23bの電圧出力は等しく平衡し、両受信コイル23a、23bの誘起電圧の差(差動検出器23としての出力)がゼロとなるようになっている。そのため、例えば受信コイル23a、23bの他端側は例えば平衡調整用の可変抵抗器(図示していない)を介して結合され、その可変抵抗器の中点から検波部24に接続されている。
【0032】
検査領域Zの磁界中を通過する磁性金属には磁束密度の大きさに比例してより多くの磁束が引き寄せられる一方、その磁界中を通過する非磁性金属にはその移動による磁束密度の変化を打ち消すような向きでうず電流が生じ、ジュール熱が消費される。
【0033】
したがって、コンベア12上の製品に混入した何らかの磁性金属が検査領域Zの発生磁界中を通過する場合、例えば
図3(a)〜
図3(c)に示すように、磁束を引き寄せるその金属の位置に応じて受信コイル23a、23bの誘起電圧Va、Vbの大小関係が変化することになり、受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれる。また、主として非磁性体である製品のみが送信コイル22の発生磁界中を通過する場合にも、その含有成分や水分、包装材等の影響により、金属を含んでいるときほど顕著ではないが受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれる。
【0034】
受信コイル23a、23bは、このようにコンベア12上の製品の移動により両受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれたとき、その磁界の変化に応じた差動検出信号Sd(磁界変動信号)を出力する。この差動検出信号Sdは、送信コイル22側からの交流磁界に対応して前記送信信号の周波数を有する高周波信号成分に、ワークWの移動に応じて振幅および位相が変化する低周波信号成分が重畳した変調信号形態となり、例えば
図4に示すような信号波形で表すことができる。
【0035】
検波部24は、
図1に示すように、各一対のミキサ24a、24b、バンドパスフィルタ25a、25bおよび移相器26a、26bからなる検出回路部を構成しており、ミキサ24a、24bには差動検出器23からの差動検出信号Sdがそれぞれに入力される。
【0036】
ミキサ24a、24bには、入力信号の位相を設定移相量だけシフトさせる移相器26a、26bがそれぞれ接続されており、移相器26aは、信号発生器21からの前記送信信号の位相を専ら検出感度を高めるよう可変設定される所定移相量だけ移相させて、ミキサ24aに供給する。また、移相器26bは、移相器26aで生成された信号の位相を更に90度移相させることで、差動検出器23から誘導出力される差動検出信号Sdの高周波信号成分に対して90度位相の異なる高周波信号を生成し、ミキサ24bに供給する。
【0037】
ミキサ24aは、移相器26aからの高周波信号と差動検出器23からの差動検出信号Sdとを合成してバンドパスフィルタ25aに出力する。同様に、ミキサ24bは、移相器26bからの高周波信号と差動検出器23からの差動検出信号Sdとを合成してバンドパスフィルタ25bに出力する。
【0038】
ここでのミキサ24a、24bによる入力の混合は、移相量により異なるが、移相器26a、26bからの入力信号に基づいて、磁束密度の変化が最大となる瞬間(位相0度)側において、磁束密度変化が大きいほどジュール熱を消費して外部磁界変化を引き起こす非磁性金属の影響が大きい第1の変動成分の検出信号Rxと、磁束密度自体がほぼ最大となる瞬間(磁界波形の振幅が最大となる瞬間;位相90度)側において、磁束密度が大きいほどより多くの磁束を引き付けて外部磁界変化を引き起こす磁性金属の影響の大きい第2の変動成分の検出信号Ryを生成することができる。
【0039】
バンドパスフィルタ25a、25bは、ミキサ24a、24bで合成された両検出信号Rx、RyのうちワークWの移動に対応して変化する低周波信号成分の検出信号を抽出し、併せて高周波成分のノイズを除去するフィルタ特性を有している。
【0040】
図4に示すように、バンドパスフィルタ25a、25bから出力される低周波成分の検出信号X、Yは、差動検出信号Sdの波形中で所定位相位置の瞬時値を結ぶ包絡線の波形、およびその所定位相位置から送信信号周期τの1/4周期分、つまり90度だけ位相がずれた瞬時値を結ぶ包絡線の波形を有するものとなる。
【0041】
両バンドパスフィルタ25a、25bから出力される検出信号X、Yは、A/D変換器27a、27bでそれぞれアナログ信号からディジタル信号である検出データDx、Dyに変換された後、物品検知センサ15からの物品検知信号に関連付けられた検出データDx、Dyとして、制御部30に取り込まれる。
【0042】
制御部30は、例えばCPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータ構成のもので、ROM内に格納された制御プログラムをRAMとの間でデータの授受を行ないながら実行し、I/Oインターフェースを介して取り込んだ検出データDx、Dy等の各種信号を処理するようになっている。制御部30は、ディジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を併有するものでもよい。
【0043】
この制御部30は、前述の制御プログラムを実行することで、
図1に機能ブロック図で示すように、設定部31、検査データ記憶用の第1メモリ部32、位相判定用の第2メモリ部33、検査条件記憶用の第3メモリ部34、位相補正部35、および判定部36の機能を発揮し得るものである。
【0044】
設定部31は、操作入力部16からの指示入力に応じて検査に必要な各種のパラメータを手動で初期設定する機能と、ワークWの良品サンプルやテストピース等の金属サンプルTp1、Tp2等を磁界に通過させることで、検査に必要なパラメータを半自動的に初期設定する機能(オート設定モード)とを有している。また、設定部31は、操作入力部16への選択操作入力に応じて後述する通常の金属検出モードと設定・確認モードとを切替え可能になっている。
【0045】
この設定部31は、例えば各品種のワークWのサイズ(例えば長さ)や搬送速度、信号発生器21の発生信号周波数、移相器26aによる位相補正量Δθ、バンドパスフィルタ25a、25bの通過帯域(周波数帯域)等、金属検出装置10の動作に関する各種設定パラメータを、ワークWの品種毎に一部手入力で、その他を自動で設定するための設定手段となっている。
【0046】
ワークWの長さや搬送速度は、検出データDx、Dyの取り込み時間やその間隔、バンドパスフィルタ25a、25bの通過帯域等を決定する条件となる。また、信号発生器21の発生信号周波数は、検出対象金属の種別や大きさ、ワークWの構成材料(内容物および包装材等)の素材等に応じて選択され得るパラメータである。さらに、検出データDxが移相器26aの移相量に対応する所定位相位置の瞬時値で特定されることから明らかなように、検出データDx、Dyの波形振幅は、移相器26aの位相補正量Δθによって相違することになる。すなわち、移相器26aの移相量は、ワークWに混入した金属の検出感度を決定するパラメータとなる。
【0047】
位相補正部35は、検査対象の各ワークWが検査領域Zを通過する度に、A/D変換器27a、27bから取り込まれる一連の低周波信号成分の検出データDx、Dyを所定サンプリング数だけ取得し、取得した信号データを基に、
図5に示すように、検波時の位相0°(同相)側を横軸、位相90°(直交位相)側を縦軸とするX−Y平面上で、検出データDx、Dyの値を直交座標成分とする散布図として、リサージュ図形を作成できるようになっている。
【0048】
位相補正部35は、
図5に示すリサージュ図形中でワークWの製品影響による磁界変動成分の検出データが分布する中心の位相θdを基準位相とし、検波部24での検波時の位相に対する基準位相の位相差(散布図中の回帰直線の傾き角の差に相当)を補正可能な位相補正量Δθを算出し、検波位相を補正することができるようになっている。
【0049】
この場合、ワークWに金属(金属異物または製品中の金属成分)が含まれていると、
図5および
図6に示すように、検波時の位相に対し同相(In−phase)側とみなした基準位相Iを横軸とし、その直交位相(Quadrature)を縦軸QとするI−Q平面上においては、ワークW(良品)のみを磁界通過させた場合の検出データDx、Dy(以下、製品影響信号という)は、基準位相Iの近傍に分布するものとなり、金属を通過させた場合の検出データDx、Dy(以下、金属影響信号という)は、直交位相Q側に分布するものとなる。なお、本発明にいう同相側および直交位相側は、2つの検出信号X、Yの相対的な位相関係であり、
図4に示すように磁界変動成分の位相0の開始点に対し位相遅れ側(同図中の右側)で特定位相位置を繋ぐ包絡線状の検出信号X、Yとなる場合、開始点に対し検出信号Yの方が検出信号Xよりの位相差が大きいことを意味する。また、基準信号に対応する交流磁界の位相0°または180°に近い低振幅側では、交流磁界の磁束密度の変化量が大きくなり、位相90°または270°に近い高振幅側では、交流磁界の磁束密度が大きくなる。
【0050】
位相補正部35は、金属有無の判定位相となる直交位相Qでは製品影響の大きい同相I側での振幅レベルが最小レベルとなり、金属影響の大きい直交位相Q側では振幅レベルが大きく現れるよう、感度設定を行うようになっている。
【0051】
判定部36は、前述のI−Q平面上での金属有無判定位相(直交位相Q)における製品影響と金属影響の検出データの振幅Lg、Lnを比較し、その振幅の比(Ln/Lg)が所定のリミット値を超えるか否かによって、ワークW中における金属有無の判定処理を実行する第1判定部36a(金属有無判定手段)を有している。
【0052】
ところで、
図5中では、金属影響信号の散布図(リサージュ図形Hn)の形状は、ワークWの製品影響信号の散布図(リサージュ図形Hg)の形状に対して相対的に細くなっており、その検出位相(同図中θn)が製品影響信号の検出位相(同図中θd)に対して略直交位相となっているが、ワークWに入る金属やそのテストピース等の影響信号の散布図形状(リサージュ図形の形状)は、その金属またはテストピースの材質や大きさによって変化し、その図形の傾きは、差動検出信号Sdから包絡線Xをとる前述の所定位相位置(前述の位相補正量Δθ)によって変化する。
【0053】
図5中に示す金属影響信号のリサージュ図形Hnは、材質が非磁性金属の場合を模式的に例示するものであるが、ステンレス鋼の鋼種(マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系等)によるフェライト量の相違や他の種別の金属(例えばアルミニウム(Al)、真鍮(Brass)等)、あるいは、非金属や金属含有の複合材等の別により、位相角は変化し、その金属の大きさ(例えば径)に応じて振幅が変化する傾向がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、制御部30の第1判定部36aにおいて、第1判定部36aで製品影響に対し金属影響による磁界変動成分の振幅の比(
図5中のLn/Lg)が最大となる位相θd、θnを算出する感度優先の処理を実行する一方で、第2判定部36bおよび第3判定部36cにおいて、感度優先の処理とは別に、金属の種別判定のための処理を実行するようになっている。
【0055】
図6に示すのは、ノイズや振動による検出信号のばらつきレベルの範囲内に入るように位相調整された基準位相Iを横軸とし、それと直交する直交位相軸Qを縦軸とするI−Q平面上に、複数の金属(検出対象物)の種別およびサイズについて、その金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnを算出した結果をプロットした場合に、検出位相角θnが互いに相違する複数の種別群をそれらの位相角の分布範囲で区分する判定マップ(種別判定条件)の説明図である。
【0056】
図6において、「Fe」は、金属が鉄その他の磁性金属からなる場合の分布範囲を例示しており、磁性金属の種別および大きさ(直径Φ)に応じて、例えばI−Q平面の中心から離れるように金属径が大きくなるほど位相角も大きくなるというように位相角増大側に湾曲する境界線B1がその種別群の金属の位相角の上限となっている。
【0057】
また、
図6において、「SUS」は、例えば境界線B1に近いフェライト系のステンレス鋼や、境界線B2に近いオーステナイト系のステンレス鋼をはじめ、他の多くのステンレス鋼(マルテンサイト系等)を材質とする金属の種別判定に寄与し得るものである。この場合も、I−Q平面の中心から離れるように金属径が大きくなるほど位相角も大きくなり、境界線B2も位相角増大側に湾曲している。すなわち、境界線B2は、境界線B1と同様に、隣接する種別群の検出位相が金属の大きさ(直径Φ)に比例しない傾向を示している。
【0058】
図6において、Non−Feは、アルミニウムや真鍮その他の非鉄金属や高耐食性の特殊金属、複合材等からなる他の種別群の場合の分布範囲を例示しており、金属の種別または大きさ(直径Φ)によって位相角が相違するとともに、基準位相Iに対し反転(180°相違)する位相角近傍のノイズや振動による検出信号のばらつきレベルの範囲がその種別群の金属の位相角の上限となっている。
【0059】
以後、差動検出信号Sdから検出信号X、Yを取り出す際の所定位相位置がより高位相角側になると、同様にFe、SUS、Non−Feの順に、境界線B1、B2を挟んで、種別群ごとの分布が分かれる。
【0060】
位相判定用の第2メモリ部33には、
図6に示すような種別判定マップが種別判定条件データとして記憶されており、判定部36の第2判定部36bは、その種別判定条件データに基づいて、金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnが、
図6中の複数の種別群ごとの分布領域Fe、SUS、Non−Feのいずれに入るかを判定するようになっている。ここで、第2メモリ部33に記憶され、第2判定部36bに使用される種別判定条件データは、検査ヘッド14に複数種の金属サンプルのうち各種の金属サンプルを通過させたときに検出された磁界変動信号を用いて、あらかじめ得られた種別ごとのサンプル信号位相データである。
【0061】
判定部36の第2判定部36bは、複数種の金属のテストピースその他の金属サンプルのうち各種の金属サンプルTp1、Tp2等が検査領域Z中を通過するとき、その通過による検査領域Z中の交流磁界の変動に伴って直交検波位相に対応する直交座標系(X−Y座標系)中に生じる低周波成分の金属影響信号のリサージュ図形Hnの位相θnを判定するようになっている。また、第2判定部36bは、金属が混入したワークWが検査ヘッド14を通過するとき、検出される磁界変動信号を基に得られる位相データ(被検査物信号位相データ)を前述のサンプル信号位相データと比較し、両データの差異を判定することでワークWの位相および同ワークWに混入した金属の位相を判定する位相判定手段となっている。
【0062】
判定部36の第3判定部36cは、第2判定部36bで金属サンプルごとに判定される金属影響信号の検出位相角θnの分布領域に基づき、金属として、鉄等の磁性金属群(
図6中でFeと表示)のいずれか、ステンレス鋼群等の非磁性金属群(
図6中でSUSと表示)のいずれか、あるいは、アルミニウムや真鍮その他の種別群(
図6中でNon−Feと表示)のいずれかが検出されたか否かを判定し、その結果を判定種別と共に表示器17に出力する機能を有している。この第3判定部36cは、位相判定手段である第2判定部36bの判定結果に基づいて、検査領域Z中を通過する金属の種別を判定する金属種別判定手段となっている。
【0063】
図6は、各種別群の金属の検出位相角θnの分布が、それぞれの種別群の分布確度θa、θb、θcの範囲内で、概ねI−Q直交座標面の中心点から離れるほど大きくなる傾向を意味している。しかし、種別判定のための条件は、
図6に示すようなものに限定されるものではなく、生産ラインの装置構成等から想定される金属の材質を特定し、予めその検出特性を記憶しておくようにする場合、境界線による分布範囲の区分でなく、特定種別の分布範囲に特定された複数の独立した分布エリアを設定しておき、そのいずれかに属するかを判定するようにしてもよい。
【0064】
図7は、
図6に示すような金属の種別ごとの判定を各ワークWへの混入時を想定して実行するための検査条件とその条件での送信出力レベルを記憶する検査条件記憶用の第3メモリ部34の機能説明図である。
【0065】
図7に示すように、第3メモリ部34には、所定の送信周波数1および送信出力(レベル)1から、その少なくとも一方の値を順次変化させた送信周波数nおよび送信出力nまでの各送信周波数および送信出力について、ワークWの搬送・通過に伴う検査領域Z内の磁界変動信号Sdを検波部24で検波し、バンドパスフィルタ処理する際の通過帯域である周波数帯域、位相および振幅を、周波数帯域1、位相1および振幅1から周波数帯域n、位相nおよび振幅nまで設定したデータが、記憶保存されている。このように設定したデータは、各送信周波数および送信出力について検査ヘッド14に複数種の金属サンプルのうち各種の金属サンプルを通過させ、その通過時に検出された磁界変動信号によりあらかじめ種別ごとに得られたものであり、本発明にいうサンプル信号位相データおよびサンプル信号振幅データを含んだものとなる。
【0066】
これら送信周波数1および送信出力1から送信周波数nおよび送信出力nまでの各送信条件や、検波信号Rx、Ryをフィルタ処理する際の周波数帯域、位相および振幅の段階的な設定は、例えば複数種の金属サンプルの種別ごとに、大きさの異なる複数の同種別金属サンプルを準備し、それぞれに好適な検査条件を設定するのに有効である。
【0067】
判定部36の第3判定部36cは、第3メモリ部34に記憶された検査条件を基に、複数種の金属サンプルの種別ごとに、大きさの異なる複数の同種別金属サンプルについて、検査領域Z中を通過する金属の種別に加えてその金属影響信号の振幅をも判定可能となる。したがって、第3判定部36cは、第3メモリ部34と協働して、複数種の金属サンプルの種別ごとに大きさの異なる複数の同種別金属サンプルについてその金属影響信号の振幅をも判定する振幅判定手段として機能し得るものとなっている。
【0068】
このように、本実施形態の金属検出装置10は、ワークWが通過する検査領域Zに基準信号を基に交流磁界を発生させる磁界発生部としての信号発生器21および送信コイル22と、ワークWの通過による検査領域Z中の交流磁界の変動を検出して磁界変動信号Sdを出力する差動検出器23と、磁界変動信号Sdのうち基準信号に対し同相側の第1の変動成分の信号Xと基準信号に対し直交位相側の第2の変動成分の信号Yとを、互いに直交する2つの検出位相で検出する処理を実行する検波部24と、検波部24からの検出信号X、Yを基に、ワークW中に混入した金属を検出するための金属有無判定処理を実行する第1判定部36aを有する判定部36と、を備えている。
【0069】
さらに、判定部36は、ワークW中に混入した金属を高感度に検出するための第1判定部36aとは別に、その混入金属を含むワークWあるいは複数種のうち各種の金属サンプルの通過による検査領域Z中の交流磁界が変動するとき、その変動に伴って直交検波位相に対応する直交座標系中に生じる金属影響の検出データの位相θnを種別ごとのサンプル信号位相データと比較して差異を判定する位相判定手段としての第2判定部36bと、その判定結果に基づいて検査領域Z中を通過する金属の種別を判定する金属種別判定手段としての第3判定部36cとを有している。
【0070】
また、判定部36の第3判定部36cは、複数種の金属サンプルの種別ごとに、大きさの異なる複数の同種別金属サンプルについて、金属影響信号の振幅の差異を判定する振幅判定手段の機能を併有しており、その振幅判定結果に基づいて、検査領域Z中を通過する金属の種別および大きさを判定可能になっている。
【0071】
加えて、金属種別判定手段としての第3判定部36cは、直交座標系中に生じる金属影響信号の位相θnのみならず振幅を含むデータに基づいて複数種のうちいずれの種別の金属サンプルに近似し他と相違するのかと、複数の同種別金属サンプルのうちいずれの大きさの金属サンプルに近似し他と相違するのかを、それぞれ直交座標上の複数の種別群(Fe、SUS、Non−Fe)の分布領域の境界線B1、B2の情報を基に判別する。
【0072】
そして、判定部36の第2判定部36bは、基準信号の周波数または差動検出器23の検出信号について設定された複数の周波数帯域ごとに、各種の金属サンプルが検査領域Z中を通過するときに直交座標系中に生じる金属影響信号の位相θnを判定するための判定条件(例:
図6に示す判定マップまたは判定用の境界線B1、B2の計算式等)をサンプル信号位相データおよびサンプル信号振幅データ等として第2メモリ部33および第3メモリ部34に記憶しており、その判定条件を基に、検査領域Z中を通過する金属の種別を判定する。
【0073】
本実施形態の金属検出装置10において、制御部30は、さらに、判定部36の判定結果の蓄積により、検査領域Z中を通過したワークWの検査結果の統計や検査および金属検出結果の来歴を公知の手法で取得しつつ、その来歴情報に対応する種別情報を関連付けて記録することができる統計・来歴処理部37を併有している。
【0074】
次に、上記構成の金属検出装置10の動作と共に、作用について説明する。
【0075】
[設定・動作確認時]
金属検出装置10の設定・動作確認時には、ユーザが操作入力部16のメニューキーを押す等して、オート設定、検出感度(レベル)変更、物品影響表示、統計メニューなどの選択項目を有するメニュー画面(詳細は図示していない)が表示される。そして、まず、例えばオート設定が選択され、実際に金属検出を実行する前に、ワークWの良品サンプルや複数種の異物の金属サンプルTp1、Tp2等について、検査ヘッド14に通す試験的な検査・測定(以下、サンプル検査ともいう)を行うことで、金属検出装置10を構成する各部の動作に必要な初期設定がなされる。なお、サンプル検査は、検査対象製品の品種登録時だけでなく、その登録情報に基づく動作の確認時等にも実行される。このようなサンプル検査は、例えば特開2018−200197号公報に記載されるテストピース影響信号相当のテスト変動成分を部分的にあるいは全部に用いるものとしてもよい。
【0076】
図7および
図8に示すように、検査条件記憶用の第3メモリ部34に記憶させる送信条件(送信周波数および送信出力)1〜nのそれぞれについて、「周波数帯域、位相、振幅」の情報を設定する際に、まず、最初の検査条件・出力1について、送信条件を読取り(ステップS11、S12)、対応する一種別のテストピースでの試験的な検査を実行するために、送信周波数設定および送信出力を設定する(ステップS13、S14)。
【0077】
次いで、金属検出装置10の検査領域Z内に交流磁界を発生させるとともに(ステップS15)、ワークWを検査領域Z中を通過させるようにコンベア搬送させ(ステップS16)、その際に差動検出器23から出力される磁界変動信号Sdを基に検波部24から制御部30までの信号処理系に受信信号処理を実行させる(ステップS17)。そして、直交座標系中の金属影響信号のリサージュ図形Hnから、その磁界変動成分の振幅Lnおよび位相θnを算出して、検査条件記憶用の第3メモリ部34に記憶させる(ステップS18)。
【0078】
次いで、送信条件(送信周波数および送信出力レベル)nに達している(k=n)か否かが判定され(ステップS18)、その判定結果に応じて、送信条件番号を順次繰り下げながら(ステップS20)、送信条件nに達するまで、一連の処理ステップS11〜S19を伴う試験的な検査・測定が繰り返され、検査条件記憶用の第3メモリ部34に対する記憶情報の設定作業が実行される。
【0079】
このような設定作業の間、制御部30により品種登録の状況が逐次判定され、未だオート設定が完了していないときには、例えば動作モード表示記号として設定未完了の記号表示がされ、品種登録が完了すると、異なるモード表示記号に変更するといった具合に、所要の設定作業を促す表示がなされる。
【0080】
本実施形態では、使用される金属サンプルが、磁性金属である鉄系(Fe)のテストピースと、非磁性金属であるステンレス鋼(SUS)のテストピースと、非鉄系(Non−Fe)のテストピースといった複数種の金属サンプルTp1、Tp2等である場合に、任意の順序でそれらのテストピースを用いて検査条件の設定を行うことができる。
【0081】
また、金属検出装置10の動作確認において所定の複数種のテストピースを用いるサンプル検査が要求される場合に、判定部36は、サンプル検査に用いられる複数種の金属種別についてそれぞれの金属サンプルの種別判定が可能であるので、同種の金属サンプル、例えば磁性金属の金属サンプルのみを検査ヘッド14に通しただけで、非磁性金属等の異種別の金属サンプルを用いたサンプル検査を未実施のまま動作確認作業を終了してしまうといった作業漏れやミスを未然に防止することができる。
【0082】
さらに、オート設定の際に、例えば複数種のテストピースのうち磁性金属のテストピースを先に用いて粗い検出条件設定を行った後、非磁性金属のテストピースを用いて、磁性の有無に関係なく金属を確実に検出可能な検出条件設定を行うといった手順があらかじめ定められている場合に、その手順を間違ってしまったとしても、制御部30では、種別ごとの検査データを基に、好適な検出条件設定を行うことが可能となる。
【0083】
[通常運転モード]
金属検出装置10の通常運転時には、詳細を図示しないが、表示器17に運転時画面の表示がなされる。この通常運転時には、例えば品種番号、品名、判定結果であるOK(良品・合格)/NG(不良品・不合格)等の文字、ワークWのトータル検査数、カウントしたNG品の数、運転又は停止状態である旨の文字等が表示され、金属のワークWへの混入が検出されたときにはNGの文字と共に、検出された金属の種別が例えば磁性の有無を判断できる表示、例えばFe、SUSまたはNon−Fe等の表示出力がなされる。
【0084】
金属種やサイズの判断処理は、
図9に示すような処理手順で実行される。
【0085】
まず、複数種別のテストピースを用いるサンプル検査の結果情報を検査条件記憶用の第3メモリ部34から読み出して入力した後(ステップS21)、それぞれの検査条件に対応する振幅(i)(振幅1から振幅nまで)および位相(i)(位相1から位相nまで)を読み取る(ステップS22)。
【0086】
次いで、位相判定用の第2メモリ部33より、磁性、非磁性その他金属の種類およびサイズの判断情報、すなわち、複数の金属種別群の検出位相角θnの分布を判定可能なマップ(種別判定条件)のデータまたは複数の境界線B1、B2の算出式を読み出して入力し(ステップS23)、その入力情報に基づいて、金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnがどの種別の分布範囲に属し、かつ、ピークPsの振幅Lsがどのサイズの振幅領域に位置するかを判定して、検査データ記憶用の第1メモリ部32および統計・来歴処理部37に記憶させる(ステップS24)。
【0087】
次いで、振分機構43への選別指令要求、検査の来歴表示要求、検査結果の統計表示要求、あるいは、検出金属の種別およびサイズの表示出力要求等の有無をチェックし(ステップS25)、必要な出力処理(ステップS26、S27、S28、S29)を実行した後、今回の処理を終了する。
【0088】
図10に、制御部での出力処理に伴う表示器17での一表示例を示している。
【0089】
同図に示すように、表示器17の表示画面171中には、上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、搬送中のテストピースまたはNGサンプルについての磁性の異なる金属種別を表示する種別表示スケール領域174と、金属検査の結果表示領域175とが配置されている。
【0090】
運転モード表示領域172には、本装置が「運転中」であること、動作モード、例えば「確認モード」であること、日時、記憶種別等が表示される。動作状態表示領域173には、現在の動作状態、例えばテストピースを用いる「確認モード」での成分分析中であることが表示される。
【0091】
種別表示スケール領域174は、検出金属の種別、例えば現在検査中のテストピースの種別の表示を行う種別表示手段となっており、複数種の金属サンプルについての複数の種別表示領域174a、174b、174cおよび174dが、複数種の金属サンプルについて検波位相に対応する直交座標系中に生じる相互の位相差により生じる複数の位相領域を所定方向に整列させつつ異なる色調に表示するスケール表示をなしている。
【0092】
具体的には、複数の種別表示領域174aないし174dが、例えば「Noise」領域174a、「磁性体」領域174b、「非磁性体」領域174c、および、「OVF(オーバーフロー)」領域174dのいずれかに対応付けて表示されるようになっている。
【0093】
ここで、「Noise」領域174aは、
図6中のノイズ、ワークまたは振動の影響による位相角の分布領域、例えばワークW自体のリサージュ図形HgのピークPwの位相角θdの分布領域に対応している。また、「磁性体」領域174bは、鉄(Fe)等の磁性体金属の影響によるリサージュ図形のピークの位相角の分布領域に対応している。
【0094】
また、「非磁性体」領域174cは、ステンレス鋼(SUS)等の非磁性体金属の影響によるリサージュ図形HnのピークPnの位相角θnの分布領域に対応しており、ここでは、鋼(鉄および鉄を主成分とする合金)以外の金属である非鉄金属(Non Ferrous metal)、例えばアルミニウム(Al)等といった非鉄金属の影響によるリサージュ図形のピークの位相角の分布領域をも包含している。
【0095】
「OVF」領域174dは、金属影響の大小を検出データDx、Dyから評価可能な180度毎の位相角範囲内において、検査領域Zの磁界に対する金属影響の検出に有効でない程度に位相角が過大なオーバーフロー領域を示している。
【0096】
同図中の「非磁性体」領域174cには、ポインタ174fが、各種別表示領域174a−174dとは異なる色調で表示されている(ここでは図示の便宜上、色調の違いを網掛けの違いとしている)。このポインタ174fは、前記位相角θnの大きさに応じて種別表示スケール領域174の延在方向である同図中の左右に移動可能に表示されるものであり、種別表示スケール領域174上におけるその表示位置が種別表示領域174a、174b、174cまたは174dのいずれに入るかおよび色調の相違によって、検出された金属やテストピースの種別と、磁性の有無およびその磁性の程度とを識別可能に表示できるようになっている。すなわち、ポインタ174fは、現在検出中の金属の位相を、種別表示スケール領域174の種別表示領域174a−174dに対して識別表示することができる。
【0097】
金属検査の結果表示領域175は、例えば磁性金属の影響による磁界変動の振幅レベルをその判定リミット値と対して表示するML1表示部分175aと、非磁性金属の影響による磁界変動の振幅レベルをその判定リミット値と対比して表示するML2表示部分175bと、今回算出した算出値およびその判定リミットに基づく判定の結果を表示色および点灯数で視認可能に表示する複数の表示素子列175c、175d、175eとを含んでいる。
【0098】
このように、本実施形態においては、複数種の金属サンプル(Fe、SUS、Non−Fe等)のそれぞれの磁界通過に由来する磁界変動信号Sdを直交検波して磁性金属および非磁性金属の影響の大きい検出データDx、Dyを取得した上で、それら検出データDx、Dyを基に検波位相に対応する直交座標系中のリサージュ図形Hnの傾き角θnが位相データとして算出され、算出された位相データが、記憶済みのサンプル信号位相データと比較される。
【0099】
そして、その比較結果に基づき、複数種の金属サンプル(Fe、SUS、Non−Fe等)について、それぞれ直交座標系中に生じる各金属種別の位相の分布領域を、所定方向に延びるバー状の種別表示スケール領域174中にそれぞれの金属種別の位相θnの違いに応じた配置順で、各金属種別のサンプルの磁性の相違による位相のばらつき幅に応じた長さ(所定方向)に配置した上で、その種別表示スケール領域174上に、ポインタ174fによって現在検査中の物品や金属の位相を識別可能に表示するポインタ表示が実行される。
【0100】
したがって、検波位相に対応する直交座標系中に生じる金属影響信号の位相判定結果に基づいて、検査領域Z中を通過する金属が、ポインタ174fおよび複数の種別表示領域174a〜174dにより、磁性の相違する金属種別のいずれであるかが異なる色調のいずれか1つとして識別可能に表示できることとなる。
【0101】
また、本実施形態では、種別表示スケール領域174において磁性の相違する金属種別ごとに異なる色調でスケール表示がなされるのみならず、同一種別内においても、前記位相の相違がスケール上のポインタ174fの表示位置として把握可能となる。したがって、被検査物に混入した金属による金属影響信号の位相θnが間接的ながら定量的に表示されることになり、金属の磁性の有無やより細かい種別の相違が明確に識別表示可能となる。
【0102】
しかも、本実施形態では、種別表示手段である種別表示スケール領域174が前記位相の相違する方向に延びるバー状となっているので、金属種別やその磁性の相違がより明確に識別表示可能となる。加えて、本実施形態では、磁性の相違する種別が、少なくとも磁性金属の種別と非磁性金属の種別とを含むことから、金属が磁性金属か非磁性金属かを的確に表示できるものとなる。
【0103】
(第2の実施の形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る金属検出装置における表示器での金属種別表示の一例を示している。なお、以下に説明する各実施形態は、前述の第1実施形態と略同一の装置構成を有しており、以下に述べる画面表示に関する記憶情報および制御の相違がある以外は、第1実施形態と同様であるので、以下、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0104】
図11に示すように、表示器17の表示画面171中には、上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、搬送中のテストピースまたはNGサンプルについての磁性の異なる金属種別を表示する種別表示スケール領域274と、金属検査の結果表示領域175とが配置されている。
【0105】
すなわち、表示画面171中において、運転モード表示領域172、動作状態表示領域173および金属検査の結果表示領域175は、第1実施形態の場合と同様の表示態様であり、種別表示スケール領域274については、その金属種別の表示態様が第1実施形態とは相違する。
【0106】
具体的には、種別表示スケール領域274は、検査領域Zを通過する物品やテストピースの種別を表示できる種別表示手段となっているが、第1実施形態における同手段のように真直なバー状の表示でなく、略円弧状に湾曲した帯状のスケール形状を有している。
【0107】
また、複数種の金属サンプルについての複数の種別表示領域274a、274b、274c、274dおよび274eが、略扇形でそれぞれの角度範囲を有する「Noise」領域274a、「Fe」領域274b、「SUS」領域274c、「Non−Fe」領域274d、および「OVF」領域274eとして構成されている。
【0108】
さらに、種別表示スケール領域274上には、種別表示スケール領域274の湾曲半径方向に延びるポインタ表示274fが、各種別表示領域274a−274eとは異なる色調で重畳表示されている(ここでは図示の便宜上、色調の違いを網掛けの違いとしている)。
【0109】
「Noise」領域274aは、
図6中のノイズ、ワークまたは振動の影響による位相角、例えばリサージュ図形HgのピークPwの位相角θdの分布領域に対応しており、「Fe」領域274bは、鉄(Fe)および鉄を主成分とし磁性を有する金属の影響によるリサージュ図形のピークの位相角の分布領域に対応している。
【0110】
また、「SUS」領域274cは、ステンレス鋼(SUS)を主とする非磁性体金属の影響によるリサージュ図形HnのピークPnの位相角θnの分布領域に対応しており、「Non−Fe」領域274dは、鋼(鉄および鉄を主成分とする合金)以外の金属である非鉄金属、例えばアルミニウム(Al)や真鍮(Brass)等といった非鉄金属の影響によるリサージュ図形のピークの位相角の分布領域に対応している。
【0111】
「OVF(オーバーフロー)」領域274eは、金属影響の大小を検出データDx、Dyから評価可能な180度毎の位相角範囲内において、検査領域Zの磁界に対する金属影響の検出に有効でない程度に位相角が過大なオーバーフロー領域を示している。
【0112】
ポインタ表示274fは、位相角θn等の大きさに応じて種別表示スケール領域274の延在方向に移動するよう角度位置を変化させることができるものであり、種別表示スケール領域274上におけるその表示位置が種別表示領域274a、274b、274c、274dまたは274eのいずれの領域内に入るかと、その背景領域に対する色調の相違とによって、検出された金属やテストピースの種別と、磁性の有無およびその磁性の程度とを容易に識別可能に表示できるようになっている。
【0113】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に検出データDx、Dyを基に検波位相に対応する直交座標系中のリサージュ図形の傾き角(θn)を金属影響信号の位相として算出し、直交座標系中に生じる各金属種別の位相の分布領域を、所定方向に延びるスケール表示領域274中にそれぞれの金属種別の位相の違いに応じた配置順で、各金属種別のサンプルの磁性の相違による位相のばらつき幅に応じた角度範囲で配置し、そのスケール表示上に現在検査中の物品や金属の位相を識別可能に表示するポインタ表示を実行する。
【0114】
したがって、ポインタ表示274fおよび複数の種別表示領域274a〜274eにより、検査領域Z中を通過する金属が磁性の相違する複数の金属種別のうちいずれであるかが異なる色調のいずれか1つとして識別されるように表示可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、種別表示スケール領域274において磁性の相違する金属種別ごとに異なる色調でスケール表示がなされるのみならず、同一種別内においても、前記位相の相違がスケール上のポインタ表示274fの表示位置として把握可能となる。したがって、検出された金属の前記位相が間接的ながら定量的に表示されることになり、金属の磁性の有無やより細かい種別の相違が明確に識別表示可能となる。
【0116】
しかも、本実施形態では、種別表示手段である種別表示スケール領域274が前記位相の相違する方向に延びているので、金属種別やその磁性の相違がより明確に識別表示可能となる。加えて、本実施形態では、磁性の相違する種別が、少なくとも磁性金属の種別Feと非磁性金属の種別SUS、Non−Feとを含むことから、金属が磁性金属か非磁性金属かを的確に有効に表示できるものとなる。
【0117】
(第3の実施の形態)
図12(a)に第3実施形態における制御部での出力処理に伴う表示器17の一表示例を示している。
【0118】
同図に示すように、表示器17の表示画面171中には、上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、搬送中のテストピースまたはNGサンプルについての磁性の異なる金属種別を表示する種別表示スケール領域374と、金属検査の結果表示領域175とが配置されている。
【0119】
そして、表示画面171中において、運転モード表示領域172、動作状態表示領域173および金属検査の結果表示領域175は、第1実施形態の場合と同様の表示態様であり、種別表示スケール領域374については、その金属種別の表示態様が第1実施形態とは相違する。
【0120】
具体的には、種別表示スケール領域374は、検査領域Zを通過する物品やテストピースの種別を表示できるモノクロ階調表現、例えばグレースケールの種別表示手段となっている。また、種別表示スケール領域374は、複数種の金属サンプルについての複数の種別表示領域374a、374b、374c、374dおよび374eが、「Noise」領域374a、「Fe」領域374b、「SUS」領域374c、「Non−Fe」領域374d、および「OVF」領域374eとして構成されている。各領域374a〜374eは、第2実施形態の対応する領域と同様の位相分布領域となっている。
【0121】
ここで、
図12(a)中の「Non−Fe」領域374dは、他の各種別表示領域374a−374cおよび374eが互いに同一の階調(例えば白)であるのに対し、異なる特定の階調で表示されており、この他領域と異なる特定階調での領域表示が位相領域を特定するポインタ表示として機能するようになっている。
【0122】
この特定階調での領域表示は、前記位相角θnの大きさに応じて種別表示スケール領域374の延在方向である同図中の左右に移動可能であり、種別表示スケール領域374上におけるその表示位置が種別表示領域374a〜374eのいずれに入るかによって、検出された金属やテストピースの種別を識別可能に表示できるようになっている。
【0123】
本実施形態においても、複数種の金属サンプルについて、それぞれ直交座標系中に生じる各金属種別の位相の分布領域を、所定方向に延びるバー状のスケール表示領域中にそれぞれの金属種別の位相(θn)の違いに応じた配置順で配置し、そのスケール表示上に現在検査中の物品や金属の位相を識別可能に表示する特定階調表示を実行する。したがって、検査領域Z中を通過する金属が、磁性の相違する金属種別のいずれであるかが識別可能に表示できることとなる。
【0124】
(第4の実施の形態)
図12(b)に、第4の実施の形態における制御部での出力処理に伴う表示器17の一表示例を示している。本実施形態は、第3実施形態に類似するものである。
【0125】
同図に示すように、本実施形態においては、表示器17の表示画面171中において、運転モード表示領域172、動作状態表示領域173および金属検査の結果表示領域175が第1実施形態の場合と同様の表示態様であるのに対し、種別表示スケール領域474については、その金属種別の表示態様が第1実施形態とは相違する。
【0126】
具体的には、種別表示スケール領域474は、検査領域Zを通過する物品やテストピースの種別を多色にカラー表現できる種別表示手段となっている。また、種別表示スケール領域474は、複数種の金属サンプルについての複数の種別表示領域474a、474b、474c、474dおよび474eが、「Noise」領域474a、「Fe」領域474b、「SUS」領域474c、「Non−Fe」領域474d、および「OVF」領域474eとして構成されている。各領域474a〜474eは、第2実施形態の対応する領域と同様の位相分布領域となっている。
【0127】
図12(b)中の「Fe」領域474bは、他の各種別表示領域474aおよび474c−474eが互いに同一の輝度、あるいは陰影その他の3D効果等であるのに対し、異なる輝度または3D効果等を含む強調表示態様で表示されており、この他領域と異なる強調表示態様での領域表示が位相領域を特定するポインタ表示として機能するようになっている。この強調表示態様での領域表示は、前記位相角θnの大きさに応じて種別表示スケール領域474の延在方向である同図中の左右に移動可能であり、種別表示スケール領域474上におけるその表示位置が種別表示領域474a〜474eのいずれに入るかによって、検出された金属やテストピースの種別を識別可能に表示できるようになっている。
【0128】
本実施形態においても、複数種の金属サンプルについて、それぞれ直交座標系中に生じる各金属種別の位相の分布領域を、所定方向に延びるバー状のスケール表示領域中にそれぞれの金属種別の位相(θn)の違いに応じた配置順で配置し、そのスケール表示上に現在検査中の物品や金属の位相を識別可能に表示する特定階調表示を実行する。したがって、検査領域Z中を通過する金属が、磁性の相違する金属種別のいずれであるかが識別可能に表示できることとなる。
【0129】
なお、上述の第1実施形態においては、直交座標上の分布領域の境界線B1、B2等の境界情報は、磁界変動信号Sdの特定検出位相での全変動領域を直交座標に対応させたマップ領域とするとき、そのマップ領域上の特定物品の検出信号の低振幅側より高振幅側(直交座標の二成分が大きくなる側)で位相角が大きくなるよう湾曲した曲線形状をなしていた。しかし、直交座標上の分布領域の境界情報は、磁界変動信号Sdの特定検出位相での全変動領域を直交座標に対応させたマップ領域とするとき、そのマップ領域上の特定物品の検出信号の低振幅側より高振幅側で位相角が大きくなるよう湾曲した境界線上の変動点を特定する境界計算式で特定されてもよい。
【0130】
以上説明したように、本発明は、検査領域を通過する金属が磁性金属か非磁性金属かを的確に自動判別し識別表示することができる金属検出装置を提供することができるものであり、被検査物が交流磁界中を通過するときの磁界変動を基に被検査物中の金属または金属成分を検出する金属検出装置全般に有用である。