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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-48839(P2021-48839A)
(43)【公開日】2021年4月1日
(54)【発明の名称】凍結鯖の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20210305BHJP
【FI】
   A23L17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-156706(P2020-156706)
(22)【出願日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-172232(P2019-172232)
(32)【優先日】2019年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513052723
【氏名又は名称】株式会社バローホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 一彦
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC01
4B042AC02
(57)【要約】
【課題】消費者に品質のよい鯖を提供すること。
【解決手段】作業員は、海からあげられた鯖MLを船S内にある生簀Wから水揚げした後、船Sの上で鯖MLを活き〆する(ST1)。これにより鯖MLは死んだ鯖MDになる。作業員は、氷CIと海水SWが入れられた、船Sの上にあるタンクT内へ鯖MDを投入する(ST2)。作業員は、タンクTの中で鯖MDに対して血抜きをする(ST2)。作業員は、鯖MDをCAS凍結機FR1内でCAS凍結をする(ST7)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結鯖の生産方法において、
鯖の水揚げ後、前記鯖に対して活き〆をする活き〆ステップと、
前記活き〆をされた前記鯖に対して血抜きをする血抜きステップと、
前記血抜きをされた前記鯖に対してCAS凍結をするCAS凍結ステップと、
を含む凍結鯖の生産方法。
【請求項2】
前記血抜きをされた前記鯖をスラリーアイスにて冷やし込みをする冷やし込みステップをさらに含み、
前記CAS凍結ステップは、前記冷やし込みをされた前記鯖に対して前記CAS凍結をするステップである、
請求項1に記載の凍結鯖の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結鯖の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニサキスという寄生虫が起因となって、生食用の鯖を食した消費者が食中毒になる事例が増加してきている。このため、数年前より、生食用の鯖の販売が難しくなっている。
このため、アニサキスは冷凍処理をすることにより死滅をすることから、冷凍品の鯖の販売が近年検討されている。
しかしながら、冷凍品の鯖は、解凍時にすでに変色しており、見栄えが悪く、商品価値の低下が避けられない。
そこで、鯖の変色を防止するため、処理の段階で鯖に添加物を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−334035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術を含め従来技術が適用された鯖は、添加物が利用されていることから、消費者が違和感を覚えたり、その味が損なわれてしまう場合もあり、商品としての品質はよいものとはいい難い。
つまり、消費者に品質のよい鯖が提供できていない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、消費者に品質のよい鯖を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の凍結鯖の生産方法は、
鯖の水揚げ後、前記鯖を活き〆をする活き〆ステップと、
前記活き〆をされた前記鯖に対して血抜きをする血抜きステップと、
前記血抜きをされた前記鯖に対してCAS凍結をするCAS凍結ステップと、
を含む。
【0007】
また、本発明の一態様の凍結鯖の生産方法は、
前記血抜きをされた前記鯖をスラリーアイスにて冷やし込みをする冷やし込みステップをさらに含み、
前記CAS凍結ステップは、前記冷やし込みをした前記鯖に対して前記CAS凍結をするステップである、
ようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費者に品質のよい鯖を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】鯖が海からあげられてから凍結鯖が生産されて出荷されるまでの処理工程の概要を示す図である。
図2】鯖についての水揚げから冷蔵庫への一時的な保管までの工程を示すフローチャートである。
図3】鯖についての冷蔵庫からの搬出から出荷までの工程を示すフローチャートである。
図4】本発明が適用される生産方法により生産された凍結鯖を含む複数の凍結鯖を検体として、各検体を解凍させた際の解凍時間とドリップ量との関係について示す図である。
図5】分析試験に用いた各検体について説明する表である
図6】各検体を解凍させた際の分析試験の結果について示す図である。
図7図4において説明した検体を解凍させた際の身の変色度合について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態が適用される凍結鯖の生産方法を用いて、鯖が海からあげられてから凍結鯖として生産されて出荷されるまでの処理工程の概要を示す図である。
なお、以下、本発明の一実施形態としての図1に示す方法を「本生産方法」と呼ぶ。
【0012】
なお、以下の説明では、生きている状態の鯖に対しては符号MLを付し、死んでいる状態の鯖に対しては符号MDを付すものとする。
ステップST1において、作業員は、海からあげられた鯖MLを、船S内にある生簀W内に一時的に保管する。その後、作業員は、鯖MLを生簀Wから水揚げする。作業員は、その鯖MLを船Sの上で活き〆にする。このように、鯖MLは船Sの上で活き〆にされることで、鯖MDとなる。
ここでいう「活き〆」とは、鯖MLを即殺することで、鯖MDにすることをいう。
本実施形態では、鯖MLを、その神経を素早く破壊し仮死状態とした後に血抜きをして即殺することで、鯖MDにすることで、「活き〆」がなされるものとする。
【0013】
ステップST2において、作業員は、氷CIと海水SWが入れられた、船Sの上にあるタンクTに対して、鯖MDを投入する。そして、作業員は、タンクTの中で、その鯖MDに対して血抜きをする。
血抜きがされた鯖MDが陸揚げされると、処理はステップST3に進む。
【0014】
ステップST3において、作業員は、陸揚げされた鯖MDをスラリーアイスSIへ投入する。
ここで、スラリーアイスSIとは、極小の氷の粒と塩分が含まれた冷水とが混ざり合ったものをいう。スラリーアイスSIは、その塩分濃度、及び極小の氷の粒の量と塩水の量との割合によって、その温度の設定が任意に可能になる、という特徴を有する。
このようなスラリーアイスSIは細かくて表面積が大きいため、ステップST3の工程が行われた後の鯖MDの熱はすばやく奪われることになり、鮮度の低下を防止することできるようになる。また、ステップST3の工程が行われた後の鯖MDは、スラリーアイスSIの氷により、その魚体表面の傷や変形、身焼け、及び身割れが防止される。このようにして、ステップST3の工程が行われることで、鯖MDの商品価値を高めることができる。
【0015】
ステップST4において、作業員は、鯖MDのうち、うろこ、頭及び内臓を除去する。次に、作業員は、鯖MDの腹部を流水洗浄する。そして、作業員は、3枚下ろし専用工程にて、鯖MDを3枚下ろしにする。なお、以下、3枚下ろしの結果得られた鯖MDの切身Fを「原料フィレF」と呼ぶ。その後、作業員は、原料フィレFに対して、トリミング整形をする。ここでトリミング整形とは、原料フィレFの形を整えることをいう。以下、トリミング整形された原料フィレFを特に「フィレF」と呼ぶ。
【0016】
ステップST5において、作業員は、原料冷蔵庫RE内に一時的にフィレFを保管する。
このようにして原料冷蔵庫RE内にフィレFの一時的な保管がなされると、処理はステップST6へ進む。
【0017】
ステップST6において、作業員は、フィレFに対して、真空包装をする。以下、真空包装されたフィレFを「フィレP」と呼ぶ。
【0018】
ステップST7において、作業員は、CAS(登録商標)凍結用の冷凍庫FR1(以下、「CAS凍結機FR1」と呼ぶ)内でフィレPに対してCAS凍結をする。
ここでいうCAS凍結とは、特殊なCAS発生装置(株式会社アビー製)を備えた急速凍結機(CAS凍結機FR1)を用いて、素材(フィレ)の内部の水分子を過冷却の状態で維持し氷晶化を防ぎ、その素材の細胞組織を破壊せずに凍らせる技術をいう。
【0019】
ステップST8において、作業員は、CAS凍結されたフィレPを箱詰めする。そして、作業員は、箱詰めされたフィレPを梱包することで、製品Bを生産する。
ステップST9において、作業員は、製品Bを冷凍庫FR2で保管する。
ステップST10において、作業員は、製品Bを、工場から出荷する。
【0020】
このようにして、本生産方法では、作業員は、鯖MLを水揚げした後、船Sの上で素早く活き〆にすることで鯖MDを生成し、その鯖MDに対して冷やしこみながら血抜きをする。
そして、作業員は、鯖MDを陸揚げ後、スラリーアイスSIで冷やし込みをしてから、フィレ処理をすることで、フィレFを生成する。さらに、作業員は、そのフィレFをCAS凍結し、出荷まで低温で保管する。
このように、本生産方法では、活き〆の工程(ステップST1)、血抜きの工程(ステップST2)、流通及び製造のタイミングにおける低温維持、及びCAS凍結の工程(ステップST3、ステップST5、ステップST7及びステップST9)が組み合わされている。その結果、本生産方法が適用されて生産された製品B(鯖MDのフィレF)が解凍されると、その変色の度合は従来のものと比較して抑制されることになる。
【0021】
次に、図2を参照して、図1のステップST1乃至ステップST5に対応する、鯖MLの水揚げからフィレFの冷蔵庫への一時的なまでの工程の詳細な流れについて説明する。
図2は、鯖についての水揚げから冷蔵庫への一時的な保管までの工程を示すフローチャートである。
【0022】
ステップS1において、作業員は、海からあげられた鯖MLを、船S内にある生簀W内に一時的に保管する。その後、作業員は、鯖MLを生簀Wから水揚げする。
ステップS2において、作業員は、その鯖MLを船Sの上で活き〆にする。
以上のステップS1及びステップS2は、上述の図1のステップST1に該当する。
【0023】
本生産方法は、ステップS1及びステップS2の工程があることにより、次のような効果を奏することができる。
即ち、従来、水揚げされることにより自然死をさせられた鯖は、死後、腐敗が始まりそれに従い鮮度が落ちていた。また、水揚げされてから自然死をするまでの間に鯖が暴れることにより、その身に傷ができることがあった。また、暴れることにより鯖の体に疲労物質が溜まり、その味が劣化していた。
これに対して、本生産方法が適用されることで、鯖MLは、水揚げ後活き〆をされることで殺されて鯖MDになる。このため、鯖MDの身にできる傷や味の劣化を防止することができる。また、このように活き〆をされた後の鯖MDは、自然死をさせられた場合と比較して、腐敗の開始が遅くなるため、鮮度の低下を防止することができる。
このように、ステップS2において鯖MLが船Sの上で活き〆にされて鯖MDが生成されることで、その鯖MDの身にできる傷や味の劣化を防止することができると共に鮮度の低下を遅らせることができる、という効果を本生産方法は奏することができる。
【0024】
ここで、本生産方法では、ステップS2の前にステップS1において、海からあげられた鯖MLは、船Sの上の生簀Wに入れられる。その際、鯖MLは、長時間生簀Wの中に入れられていると、生簀Wの中で他の魚と接触し、その身に傷ができる。また、接触によるストレスで疲労物質がたまり、鯖MLの味が劣化する。
したがって、ステップS1において、鯖MLが生簀Wの中に一時的に保管された後、水揚げされるまでの時間が短い程、鯖MLの身にできる傷や味の劣化を防止することができるので、上述の効果がより顕著なものとなる。
【0025】
このような効果があるステップS2の後には、次のようなステップS3の工程が行われる。
即ち、ステップS3において、作業員は、氷CIと海水SWが入れられた、船Sの上にあるタンクTに対して、鯖MDを投入する。そして、作業員は、タンクTの中で、その鯖MDに対して、血抜きをする。
【0026】
本生産方法は、このようなステップS3の工程があることにより、次のような効果を奏することができる。
即ち、鯖MLが活き〆されて鯖MDになったとしても、その鯖MDが常温で放置されると、アレルギー様の食中毒の原因となるヒスタミンが生成されるため、ヒスタミン産生菌の発生のリスクが高くなる。このため、鯖MDは、低温で管理することが望ましい。そこで、本生産方法では、ステップS3において、活き〆がなされた鯖MDは、氷CIと海水SWが入れられたタンクT、即ち低温のタンクTに投入されるのである。
さらに、鯖MDは、活き〆されたとしても、血抜きが十分になされずに放置されると、その身に血が回り、鮮度の低下や生臭さを生じさせてしまう。そして、鯖MDは、残った血が酸化するため、凍結後に解凍されるとその身の変色が進んでしまう。そこで、本生産方法では、鯖MDの鮮度の低下や変色を防止するために、ステップS2において活き〆がされた結果得られる鯖MDに対して、ステップS3においてすぐに血抜きがなされる。
このようにステップS3の工程において、鯖MLが活き〆された結果得られる鯖MDに対して血抜きが船Sの上で行われることにより、その鯖MDの、鮮度の低下、臭み、その身の変色を防止することができるという効果、及び血抜きの際に氷CIが用いられて鯖MDが低温に保たれるため、鮮度の低下をさらに一段と防止できると共に、ヒスタミン起因の食中毒の発生リスクを抑制することができるという効果を、本生産方法は奏することができる。
【0027】
以上のステップS3は、上述の図1のステップST2に対応する。
【0028】
ステップS4において、作業員は、鯖MDを陸揚げする。
ステップS5において、作業員は、陸揚げされた鯖MDをスラリーアイスSIへ投入する。ここで、塩分濃度として1.5%のスラリーアイスSIが採用されると好適である。スラリーアイスSIの塩分濃度が1.5%になると、そのスラリーアイスSIに投入されている間の鯖MDの中心温度(以下「芯温」と呼ぶ)が−1.5℃乃至1.0℃の範囲内に保たれるからである。
ステップS6において、作業員は、スラリーアイスSIへ投入された状態の鯖MDを処理施設まで運搬する。この間の鯖MDの芯温は、例えば−1.5℃乃至1.0℃に保持される。
以上のステップS4乃至ステップS6は、上述の図1のステップST3に対応する。
【0029】
ステップS7において、作業員は、鯖MDのうち、うろこを除去する。
ステップS8において、作業員は、鯖MDのうち、頭と内臓を除去する。
ステップS9において、作業員は、鯖MDの腹部を流水洗浄する。
ステップS10において、作業員は、3枚下ろし専用工程にて、鯖MDを3枚下ろしにすることで、原料フィレFを生成する。
ステップS11において、作業員は、原料フィレFを流水洗浄する。
ステップS12において、作業員は、原料フィレFに対してトリミング整形をすることで、フィレFを生成する。
以上のステップS7乃至ステップS12は、上述の図1のステップST4に対応する。
【0030】
ステップS13において、作業員は、フィレFを、冷蔵庫RE内へ搬入し一時保管する。この時の冷蔵庫内の温度は10℃以下が好適である。冷蔵庫R内の温度を10℃以下にすることで、フィレFについて、鮮度の低下の防止や、ヒスタミン発生の原因となるヒスタミン産生菌の発生の防止が可能になるからである。
以上のステップS13は、上述の図1のステップST5に対応する。
【0031】
以上、図2を参照して、図1のステップST1乃至ステップST5に対応する、水揚げから冷蔵庫に保管するまでの工程の詳細な流れについて説明した。
次に、図3を参照して、図1のステップST6乃至ステップST10に対応する、鯖につい冷蔵庫からの搬出から出荷までの工程の詳細な流れについて説明する。
【0032】
図3は、鯖について冷蔵庫からの搬出から出荷までの処理工程を示すフローチャートである。
ステップS21において、作業員は、フィレFを、冷蔵庫より搬出する。
ステップS22において、作業員は、フィレFをチラー殺菌水で洗浄する。ここでチラー殺菌水とは、チラー水に対し次亜塩素酸ナトリウムを混合させたものをいう。この時のチラー水の温度は10℃以下、また、チラー水に混合された次亜塩素酸ナトリウムの濃度は200ppmが好適である。
ステップS23において、作業員は、フィレFの水分を拭き取る。
ステップS24において、作業員は、フィレFに対して真空包装をすることで、フィレPを生成する。
以上のステップS21乃至ステップS24は、上述の図1のステップST6に対応する。
ステップS25において、作業員は、包装されたフィレPに対して、CAS凍結をする。
以上のステップS25は、上述の図1のステップST7に対応する。
【0033】
本生産方法は、ステップS25の工程があることにより、次のような効果を奏することができる。
即ち、通常の冷凍では、素材の中の水分子が集まってできた結晶によりその細胞組織が破壊されてその素材に傷がつき、その素材の解凍時に、この傷からいわゆるドリップと呼ばれる細胞内の栄養や水分が流れ出す。ドリップには、素材のうまみ成分、例えば、素材が鯖である場合にはそのうまみ成分として知られるIMP(イノシン−リン酸)等が多く含まれており、これらが流出することで、味の低下を招くことになる。また、素材の水分もあわせて流出することで、食感の低下も避けられない。
また、通常の冷凍装置で緩慢に冷凍させた場合、空気中の酸素の影響で、素材中の脂質の酸化が起こる。特に素材が鯖である場合には、その脂質は特に酸化しやすく、この酸化の影響により味や食感の低下が起こる。
そこで、ステップS25において、上述したように、包装されたフィレPに対して、CAS凍結がなされることにより、フィレF(鯖MD)を、その組織を生かしたまま中心部まで瞬時に凍らせることができる。このため、解凍時に、IMP等のうまみ成分及び水分等の流出、また、鯖の酸化を抑制ことができる、という効果を本生産方法は奏することができる。
さらに、CAS凍結の温度を−30℃以下にすることで、フィレF(鯖MD)の身に付着した寄生虫のアニサキスが死滅するため、アニサキス起因の食中毒のリスクを低減することができる、という効果も本生産方法は奏することができる。
【0034】
ステップS26において、作業員は、包装されたフィレPに対して、金属検査をする。
ステップS27において、作業員は、包装されたフィレPを箱詰めする。
ステップS28において、作業員は、箱詰めされたフィレPを梱包する。
以上のステップS26乃至ステップS28は、上述の図1のステップST8に対応する。
【0035】
ステップS29において、作業員は、製品Bを冷凍庫FR2で保管する。この時の冷凍庫の庫内温度は−30℃以下が好適である。
以上のステップS29は、上述の図1のステップST9に対応する。
【0036】
ステップS30において、作業員は、製品Bを、工場から出荷する。
以上のステップS30は、上述の図1のステップST10に対応する。
【0037】
このように、本生産方法は、船上での活き〆(図1のステップST1や図2のステップS2)と血抜き(図1のステップST2や図2のステップS3)、流通及び製造工程内の低温での芯温管理(図1のステップST3、ステップST5、ステップST9、図2のステップS3、ステップS5、ステップS13、ステップS22やステップS29)、及びCAS凍結の工程(図1のステップST7や図2のステップS25)が組み合わされた方法である。
これにより、本生産方法は、身の変色がなく、安全性も高く、かつ本来の味と食感が維持された鯖を消費者に提供することができる、という効果を奏する。
【0038】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0039】
鯖の流通及び製造工程は、従来から分断されており、鯖の温度管理はそれぞれの工程に委ねられている。例えば、ある工程の作業員は、その前の工程の鯖の管理状況を知ることはなく、また、自身の作業における鯖の管理状況を次の工程の作業員に知らせることもない。そしてまた、自身の作業における鯖の管理状況が、製品としての鯖に対して与える影響についても知ることはない。
つまり、作業員が、それぞれの工程において独自に管理温度を定めたとしても、その温度が製品としての鯖にとって、必ずしも最良の温度であるとは限らないのである。
以上より、鯖の流通及び製造工程においては、鯖の温度は、一連の管理がなされることが望ましい。
そこで例えば、流通及び製造工程おける鯖の管理温度の記録をデータ管理し、鯖にとって最も適した温度管理基準を流通及び製造工程に導入してもよい。
【0040】
また、上述の温度管理基準と、鯖の鮮度を紐づけてもよい。
ここで、鯖の鮮度を示す指標としてk値が用いられるが、k値は外気温等の環境により変動する。そこで、k値と、鯖の管理温度の関係に基づき、鯖の管理温度を微調整することができる。つまり、k値に応じて鯖の管理温度を調整することにより、一定の鮮度の鯖を得ることが出来る。
即ち、流通及び製造工程内において鯖の芯温管理を徹底することにより、安定した品質の鯖を提供することができる、という効果を奏する。
【0041】
さらに例えば流通及び製造工程において、上述の温度管理基準に対し、k値のみならず、IMP量及び鯖の脂質の酸化度合を示すTBAの数値を紐づけてもよい。k値、IMP量及びTBAの値の相関関係に基づき、鯖が高鮮度であることの根拠を、数字で示すことが出来る。
このようにして鯖の品質が数字で示されることにより、鯖を購入する者にとっても、安定して高い品質の鯖を求めることができる、という効果を奏する。
【0042】
なお、本生産方法は鯖に限らず、他の種類の魚に適用してもよい。
【0043】
以上をまとめると本発明が適用される凍結鯖の生産方法は、次のような構成を取れば足り、上述の実施形態の他、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、凍結鯖の生産方法は、鯖(例えば図1の鯖ML)の水揚げ後、前記鯖を活き〆をする活き〆ステップ(例えば図1のステップST1や図2のステップS2)と、
前記活き〆をされた前記鯖(例えば図1の鯖MD)に対して血抜きをする血抜きステップ(図1のステップST2や図2のステップS3)と、
前記血抜きをされた前記鯖に対してCAS凍結をするCAS凍結ステップ(ステップ図1のステップST7や図2のステップS25)と、
を含む。
【0044】
これにより、消費者に品質のよい鯖を提供することができる、という効果を奏することができる。
以下、この効果について具体的に説明する。
【0045】
本発明者らは、次のような第1の実験を行った。
A.作業員が、鯖を水揚げ後、船上で活き〆と血抜きをせず、そして、鯖を陸揚げ後、冷やし込みをせずにフィレにする処理をし、さらにそのフィレをCAS凍結した。その結果、解凍された鯖は変色した。
B.作業員が、鯖を水揚げ後、船上で活き〆と血抜きをせず、そして、鯖を陸揚げ後、冷やし込みをしてからフィレにする処理をし、さらにそのフィレをCAS凍結した。その結果、解凍された鯖は変色した。
C.作業員が、鯖を水揚げ後、船上で活き〆と血抜きし、そして、鯖を陸揚げ後、冷やし込みをせずにフィレにする処理をし、さらにそのフィレをCAS凍結した。その結果、解凍された鯖の色合いが格段によくなることがわかった。
D.作業員が、鯖を水揚げ後、船上で活き〆と血抜きし、そして、鯖を陸揚げ後、冷やし込みをしてからフィレにする処理をし、さらにそのフィレをCAS凍結した。その結果、解凍された鯖にほぼ変色は見られなくなった。
【0046】
実験A及び実験Bの結果から、CAS凍結のみでは、解凍する際に鯖が変色することがわかった。
実験Cの結果から、CAS凍結に対して、鯖の活き〆と血抜きをすることにより、解凍する際の鯖の色合いが格段によくなることがわかった。
つまり、本発明が適用される凍結鯖の生産方法は、CAS凍結、活き〆、及び血抜きという、3つのステップを有している。このような3つのステップが実行されて凍結鯖が生産されるので、解凍する際の身の変色がなくなるという効果が得られる。
【0047】
また、鯖をCAS凍結することにより、アニサキスが死滅する。そして、鯖にCAS凍結という低温処理がなされることにより、鮮度の低下やヒスタミンの発生リスクが低減される。これにより、安全性の高い鯖が得られるという効果が得られる。
なお、CAS凍結のみならず、活き〆や血抜きのステップにおいても上述の実施形態のように低温処理がなされることにより、鮮度の低下やヒスタミン発生のリスクがより一段と低減される。
さらにまた、CAS凍結すると、鯖本来の味と食感が得られる、という効果も得られる。
【0048】
以上まとめると、身の変色がなく、安全性が高く、また、本来の味と食感が維持された鯖を提供することができる、という効果を本発明が適用される凍結鯖の生産方法は奏する。
【0049】
また、前記血抜きをされた前記鯖をスラリーアイスにて冷やし込みをする冷やし込みステップ(図1のステップST3、図2のステップS5)をさらに含み、
前記CAS凍結ステップは、前記冷やし込みをされた前記鯖に対して前記CAS凍結をするステップである、
ようにすることができる。
これにより、身の変色のない、安全性の高い、また、本来の味と食感が維持された、つまり品質のよい鯖を提供することができる、という上述の効果はより顕著なものとなる。
【0050】
発明者らは、上述の効果を実証すべく、以下に示す第2の実験を行った。
第2の実験における結果を図4乃至図7を用いて説明する。
【0051】
図4は、本発明が適用される生産方法により生産された凍結鯖を含む複数の凍結鯖を検体として、各検体を解凍させた際の解凍時間とドリップ量との関係について示す図である。
上述して説明したように、素材から流出するドリップは、解凍時にその素材の細胞組織が破壊され、そしてそれにより素材中の水分やうまみ成分等が流出してできたものである。したがって、ドリップ量が少ない検体程、素材中の水分やうまみ成分等が保持され品質がよいことを意味している。
【0052】
先ず、各検体について説明する。
製品Zは、本発明の生産方法により生産された検体(凍結鯖)であって、次の処理工程により生産されたものである。まず鯖MLは、水揚げされた後、作業員により船上で活き〆と血抜きをされて、鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、スラリーアイスSIへ投入され冷やしこみをされる。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態でCAS凍結される。
【0053】
これに対して、検体1及び検体2は、従来の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。
検体1は、次の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。まず鯖MLは、水揚げされた後、作業員により船上で活き〆と血抜きがともにされず(自然死させられ)、鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、氷CIと海水SWの入った容器に投入され冷やしこみをされる。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態でCAS凍結される。
検体2は、次の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。まず鯖MLは、水揚げされた後、作業員により船上で活き〆と血抜きがともにされず(自然死させられ)、鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、海水SWの入った容器に投入される。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態でCAS凍結される。
【0054】
そして、発明者らは、製品Z、検体1、検体2の夫々を、5℃の冷蔵庫の中に24時間以上放置することにより解凍させた。次に、発明者らは、放置する時間毎に各検体において発生するドリップ量を計測した。図4の表中の数値は、各検体の重量を示し、括弧内の数値は、解凍前の検体と比べた場合の重量の変化量(検体から発生したドリップ量)を示している。
またここで、本発明の生産方法により生産された製品Zとの比較を明確にすべく、何らかの従来の生産方法により生産されたであろう他社製品の凍結鯖(以下、「他社製品」と略記する)についても、発明者らは、製品Zと同じ条件(5℃の冷蔵庫の中に放置)で解凍させ、発生するドリップ量を計測し、その結果を図4の表中の最右列に示した。
【0055】
図4の解凍24時間後の結果より、製品Zにおいて、解凍時に発生するドリップ量が4gと最も少なかった。一方で、検体2において、解凍時に発生するドリップ量が10gと最も多かった。
即ち、解凍24時間後においては、製品Zの品質が最もよく、検体2の品質が最もよくないことが確認された。
【0056】
上述して説明したように、検体2とは、自然死させられた鯖MLが、冷やしこみをされない状態(海水SWに投入されたのみ)でCAS凍結がなされている。これに対して、製品Zは、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結がなされたものである。
上述して説明したように、CAS凍結自体は、通常の凍結方法と比較してドリップの発生を抑制させるための凍結方法の1つとして従来から用いられていた。しかしながら、図4の結果が示すように、このCAS凍結が単にされただけの検体2の品質はよくない。
これに対して、CAS凍結が単にされだけではなく、このCAS凍結に対して、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみの処理が組み合わせられた処理がなされたものである製品Zの品質は最もよい。
したがって、CAS凍結に組み合わせて、さらに、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみの処理をすることで、解凍時に発生するドリップを大幅に抑制できるため、品質がよくなることが示された。
【0057】
次に、図5及び図6を用いて、本発明が適用される生産方法により生産された凍結鯖を含む複数の凍結鯖を検体として、各検体を解凍させた際の分析試験について説明する。
【0058】
まず図5を用いて、各検体について説明する。
図5は、分析試験に用いた各検体について説明する表である。
【0059】
製品Zは、図4で示したものと同一である。
これに対して、検体3乃至検体5の夫々は、従来の幾つかの生産方法の夫々により生産された検体(凍結鯖)である。
検体3は、次の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。ます鯖MLは、水揚げされた後、作業員により船上で自然死させられ鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、スラリーアイスSIへ投入され冷やしこみをされる。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態でCAS凍結される。
検体4は、次の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。まず鯖MLは、水揚げされた後、作業員により、船上で自然死させられ鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、氷CIと海水SWの入った容器に投入され冷やしこみをされる。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態で通常の冷凍装置にて凍結される。
検体5は、次の生産方法により生産された検体(凍結鯖)である。まず鯖MLは、水揚げされた後、作業員により船上で自然死させられ鯖MDにされる。その後、鯖MDは、陸揚げされた後、海水SWの入った容器に投入される。その後、鯖MDは、作業員により、フィレFにする処理をされ、そのフィレFの状態で通常の冷凍装置にて凍結される。
【0060】
そして、発明者らは、製品Z、検体3乃至検体5の夫々を、5℃の冷蔵庫の中に放置することにより解凍させた。次に、発明者らは、解凍させた検体の夫々について、図6に示す分析試験を行った。
図6は、各検体を解凍させた際の分析試験の結果について示す図である。
【0061】
1つめの試験として、発明者らは、各検体の夫々に含まれる、単位重量あたりのIMP含有量を測定した。
上述して説明したように、IMPとは、うまみ成分として知られ、その素材の解凍時に発生するドリップの一部として流出すると言われている。したがって、解凍後の検体に含まれるうまみ成分の量が多い程、品質がよいことを意味する。
【0062】
測定結果より、製品Zにおいて、IMP含有量が、0.23g/100gと最も多かった。一方で、検体3において、IMP含有量が、0.17g/100gと最も少なかった。
このことから、製品Zの品質が最もよく、検体3の品質が最もよくないことが確認された。
【0063】
検体3とは、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされている。これに対して、製品Zは、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結がなされたものである。
即ち、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされただけの検体3は、IMP(うまみ成分)の流出を抑制することができない。つまり、検体3の品質はよくない。
これに対して、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結のみではなく、この冷やしこみとCAS凍結に対して活き〆、血抜きの処理を組み合わせたものが、製品Zである。
したがって、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結に対して、さらに、活き〆、血抜きの処理を組み合わせることによって、解凍時のIMP(うまみ成分)の流出を大幅に抑制できるため、品質のよい鯖を得ることができるということが示された。
【0064】
2つめの試験として、発明者らは、各検体の夫々のTBA価を測定した。
上述して説明したように、TBA価とは、素材の脂質の酸化度合を示す指標である。したがって、TBA価が小さいほど素材の脂質の酸化度合が小さく、品質がよいことを意味する。
【0065】
測定結果より、製品Zにおいて、TBA価が、15nmol/gと最も小さかった。一方で、検体3において、TBA価が、74nmol/gと最も大きかった。
このことから、製品Zの品質が最もよく、検体3の品質が最もよくないことが確認された。
【0066】
検体3とは、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされている。これに対して、製品Zは、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結がなされたものである。
即ち、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされただけの検体3は、脂質の酸化を抑制することができていない。つまり、検体3の品質はよくない。
これに対して、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結のみではなく、この冷やしこみとCAS凍結に対して活き〆、血抜きの処理を組み合わせたものが、製品Zである。
したがって、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結に対して、さらに、活き〆、血抜きの処理を組み合わせることによって、解凍時の脂質の酸化を抑制することができるため、品質のよい鯖を得ることができるということが示された。
【0067】
3つめの試験として、発明者らは、各検体の夫々のk値を測定した。
上述して説明したように、k値とは、素材の鮮度を示す指標である。したがって、k値が小さいほど、その検体の鮮度が維持されており、品質がよいことを意味する。また一般的に、k値が20%以下であれば刺身として利用することができるとも言われている。
【0068】
測定結果より、製品Zにおいて、k値は1%以下と最も小さかった。一方で、検体3において、のk値は22%と、圧倒的に高かった。
このことから、製品Zは刺身として利用できるほど最も品質がよく、一方、検体3は刺身として利用するのは不適なほど最も品質がよくないことが確認された。
【0069】
検体3とは、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされている。これに対して、製品Zは、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結がなされたものである。
即ち、自然死させられた鯖MLが、スラリーアイスSIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされただけの検体3は、その解凍後に、鮮度を維持することができていない。つまり、検体3の品質はよくない。
これに対して、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結のみではなく、この冷やしこみとCAS凍結に対して活き〆、血抜きの処理を組み合わせたものが、製品Zである。S
したがって、スラリーアイスSIによる冷やしこみとCAS凍結に対して、さらに、活き〆、血抜きの処理を組み合わせることによって、解凍後にも、その鮮度を維持することができるため、品質のよい鯖を得ることできるということが示された。
【0070】
図5及び図6を用いて説明した各検体の夫々のIMPの含有量、TBA価、及びk値の分析結果より、従来の生産方法により生産された検体は品質がよくなく、一方で、本生産方法により生産された鯖は品質がよいということが実証された。
【0071】
最後に、解凍後の鯖の身の変色について説明する。
図7は、各検体を解凍させた際の身の変色度合について示す図である。即ち、図7は、図4において説明した検体を解凍させた際の身の変色度合について示す図である。
上述して説明したように、身の変色とは、素材の身に残った血が酸化するために発生すると言われている。したがって、残った血による生臭さの防止、及び見栄えの点からも、その身の変色がないものほど品質がよいことを意味している。
【0072】
発明者らは、製品Z、検体1及び検体2の夫々を、5℃の冷蔵庫の中に24時間以上放置することにより解凍させた。次に、発明者らは、放置する時間毎に各検体の身の変色度合を観察した。
またここで、本発明の生産方法により生産された製品Zとの比較を明確にすべく、他社製品についても、発明者らは、製品Zと同じ条件(5℃の冷蔵庫の中に放置)で解凍させ、身の変色度合を観察した。
【0073】
図7の結果より、製品Zにおいては、解凍後24時間経過しても、その身に変色は見られなかった。一方で、製品Z以外の全ての検体の夫々において、解凍4時間からその身に変色が見られた。
即ち、解凍後において、製品Zの品質が最もよく、それ以外の検体の夫々の品質は、よくないことが確認された。
【0074】
検体1とは、自然死させられた鯖MLが、氷CIで冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がなされたものである。
また検体2とは、自然死させられた鯖MLが、冷やしこみをされない状態(海水SWに投入されたのみ)でCAS凍結がなされたものである。
これに対して、製品Zは、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結がなされたものである。
即ち、自然死させられた鯖に対して、スラリーアイスSIによる冷やしこみがなされた状態でCAS凍結がされた検体1であっても、自然死させられた鯖に対して、CAS凍結のみが単になされた検体2であっても、解凍時の身の変色が避けられないことが確認された。つまり、検体1及び検体2の夫々の品質は、よくない。
一方でこの冷やしこみとCAS凍結に対して、活き〆、血抜きの処理を組み合わせたものが、製品Zである。
即ち、活き〆、血抜き、スラリーアイスSIによる冷やしこみ、及びCAS凍結を組み合わせることによって、解凍時の身の変色を抑制できるため、品質のよい鯖を得ることができるということが示された。
【0075】
以上の結果より、本発明の生産方法により生産された凍結鯖は、従来の生産方法で生産された凍結鯖と比較して品質がよいことが示された。
即ち、本発明の生産方法を用いることにより、消費者に対して品質のよい鯖を提供することができるようになる。
【符号の説明】
【0076】
ML・・・鯖、MD・・・鯖、W・・・生簀、S・・・船、CI・・・氷、T・・・タンク、SI・・・スラリーアイス、RE・・・冷蔵庫、FR1・・・CAS凍結機、FR2・・・冷凍庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7