【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1の止め具の全体説明図であり、
図1Aは保持位置の一例としてのロック位置の説明図、
図1Bは可動位置の一例としてのアンロック位置の説明図である。
図2は実施例1の止め具の正面図であり、
図2Aはロック位置の説明図、
図2Bはアンロック位置の説明図である。
図3は実施例1の挿入部の説明図であり、
図3Aは斜視図、
図3Bは正面図、
図3Cは側面図、
図3Dは底面図である。
図4は実施例1の受け部の説明図であり、
図4Aは斜視図、
図4Bは上方から見た図、
図4Cは部分正面図および
図4BのIVC−IVC線の部分断面図、
図4Dは
図4BのIVD−IVD線断面図である。
【0013】
なお、理解の容易のために、
図1−
図4において、Z方向(上下方向)を連結方向、Z方向に交差するY方向(左右方向)を幅方向、Z方向およびY方向に交差するX方向(前後方向)を着脱方向として説明する場合もある。
図1−
図4において、本発明の止め具の一例としてのバックル1は、挿入部の一例としてのフック2と、受け部の一例としてのホルダ3と、を有する。
【0014】
図1−
図3において、フック2は、挿入側連結部の一例としてのリング部6と、リング部6の下端から連結方向に延びる本体部の一例としてのロッド部7と、ロッド部7の下端に形成された被停止部の一例としての肩部8とを有する。
図3A、
図3Bにおいて、リング部6は、中央部に着脱方向に貫通する貫通口6aが形成されている。したがって、貫通孔6aに紐状や縄状の連結対象物を貫通させて縛って固定したり、リング状の連結具を介して連結対象物を連結可能である。
図3Cにおいて、ロッド部7の側面には、左右一対の側面凹部7aが形成されている。実施例1の側面凹部7aは、半球状の窪みにより構成されている。
図3Dにおいて、肩部8の底面には、幅方向の中央部に、底凹部8aが形成されている。実施例1の底凹部8aは、半球状の窪みにより構成されている。
図3A、
図3Bにおいて、肩部8は、ロッド部7の下端から幅方向(Y方向)の外側に行くにつれて連結方向(Z方向)の長さが短くなる曲面状に形成されている。すなわち、肩部8は、いわゆる「なで肩」状に形成されている。
【0015】
図1、
図2、
図4において、ホルダ3は、連結方向の下部に切欠き部11が形成されている。切欠き部11は、左右方向の中央部且つ下端から上方に延びる凹部状に切り欠かれている。切欠き部11の左右両側には、幅方向に延びるシャフト貫通孔12が形成されている。シャフト貫通孔12には、受け部側連結部の一例としてのシャフト13が支持されている。シャフト13には、紐状や縄状の連結対象物を巻き付けて固定したり、リング状の連結具を介して連結対象物を連結可能である。なお、シャフト貫通孔12の左端部には、シャフト13の抜け止め用のピン14を挿入するためのピン挿入口15が形成されている。
【0016】
ホルダ3の連結方向の中央部から上部にかけて、収容部の一例としてのフック収容部21が形成されている。フック収容部21は、本体通過部の一例としてのロッド通過溝22と、停止通過部の一例としての着脱口23と、停止収容部の一例としてのフックスライド室24と、を有する。
ロッド通過溝22は、上端から下方に延びる溝状に形成されている。ロッド通過溝22には、フック2のロッド部7が通過、収容可能に構成されている。
着脱口23は、後述するフック2の肩部8の外形に対応する形状に形成されている。すなわち、着脱口23は、ロッド通過溝22の下端から幅方向外側に行くにつれて連結方向の長さが短くなる曲面状の開口により構成されている。
【0017】
フックスライド室24は、着脱口23よりも、装着方向の後方向(−X方向)、すなわち、奥側(後側)に形成されている。フックスライド室24は、着脱口23よりも連結方向(Z方向)の上側(+Z側)の長さが長く形成されており、上端はロッド通過溝22に接続されている。フックスライド室24の上端には、停止部の一例としての停止面26が形成されている。停止面26は、後述するフック2の肩部8の外形に対応して、幅方向外側に行くにつれて連結方向の長さが短くなる曲面状に形成されている。
【0018】
ホルダ3の連結方向の中央部には、幅方向に貫通するロック軸貫通孔31が形成されている。
図1、
図2において、ロック軸貫通孔31には、保持部の支持体の一例としてのロック軸32が支持されている。ロック軸32には、保持部の一例としてのロック33が回転可能に支持されている。ロック33は、
図1A、
図2Aに示す保持位置の一例としてのロック位置と、
図1B、
図2Bに示す解除位置の一例としてのアンロック位置との間で回転可能に支持されている。実施例1では、アンロック位置では、ロック33はロック位置に対して先端部が後方に移動するように設定されている。
前記ロック軸32に、トーションバネ等を設置して、ロック33がロック位置に向かう方向の力を作用させることも可能である。このようにすることで、ロック33がロック位置に保持されることとなり、フック2がホルダ3に装着された状態で保持されて外れにくくなる。
【0019】
前記ロック位置では、ロック33がフックスライド室24に収容された肩部8を停止面26に向けて押した状態となり、フック2とホルダ3との連結状態が保持される。また、前記アンロック位置では、ロック33は、フック2を停止面26に向けて押すことが解除され、フック2の肩部8が連結方向に移動可能になり、肩部8を着脱口23の位置までスライドさせると、前方にフック2が移動可能となり、フック2を取り外すことが可能となる。
【0020】
図2において、ロック33には、ロック位置において、幅方向の中央部から上方に突出する突起部33aが形成されている。突起部33aは、ロック位置に移動した場合に、底凹部8aに嵌まって、ロック33がロック位置からアンロック位置に向けて移動することが規制される(すなわち、ロック位置で保持される)と共に、フック2の幅方向の位置決めも行われる。なお、突起部33aと底凹部8aとの嵌め合いの力は、軽い外力が作用した場合は外れず、利用者がロック33を押して回転させようとした場合には外れる程度の力となるように、ロック部33や突起部33a、底凹部8aの寸法精度で実現される。
【0021】
図4において、ホルダ3の連結方向の上端には、幅方向に延びる左右一対のプランジャ貫通孔36が形成されている。プランジャ貫通孔36には、プランジャ37が幅方向に移動可能に支持されている。プランジャ37は、フック2がロック位置に移動した状態において、幅方向の内側に移動させることで、プランジャ37の先端が側面凹部7aに嵌まって、フック2の位置決めがされると共に、フック2の連結方向への移動も規制される。実施例1のプランジャ37は、摩擦でプランジャ貫通孔36に停止しており、フック2の移動を規制する力は限定的であり、人がフック2を移動させる力や大きな外力が作用した場合には、プランジャ37は側面凹部7aから外れる。
なお、プランジャ37を、バネ等で内側に押して、フック2の側面凹部7aに嵌まって停止させる力を強くすることも可能である。
【0022】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のバックル1では、フック2とホルダ3とが取り外された状態で、それぞれに連結対象物を連結することが可能である。そして、フック2をホルダ3に装着する場合、フック2の肩部8を着脱口23に対して、連結方向(Z方向)とは異なる着脱方向(X方向)から挿入する。この時、ロック33がロック位置に移動していても、フック2に押されてロック位置からアンロック位置に移動する。そして、フック2を連結方向(Z方向)の上方に移動させて、ロック33をアンロック位置からロック位置に移動させると、フック2が連結状態で保持される。
【0023】
フック2が連結された状態では、フック2が着脱方向に移動しようとしても、肩部8が、フックスライド室24の後側の面24aや、フックスライド室24の前側の着脱口23との段差部分24bで接触して、移動できない。また、連結方向の上側に移動する力が作用しても、肩部8と停止面26との接触で移動できず、下側に移動しようとしてもロック33がフック2の移動を規制する。さらに、幅方向に移動しようとしても、肩部8と停止面26やロッド部7とロッド通過溝22との接触で移動が規制される。
なお、フック2が連結された状態では、各凹部7a,8aに突起部33aやプランジャ37が嵌まって位置決めされる。よって、フック2のがたつき等が抑制され、強固にフック2とホルダ3が連結された状態となる。各凹部7a,8aに突起部33aやプランジャ37が嵌まった状態では、フック2やロック33が移動しにくくなり、連結状態が意図せずに解除されにくくなっている。仮に、ロック軸32にトーションバネを設けた場合において、トーションバネが破損しても、各凹部7a,8aと突起部33aやプランジャ37との嵌め合いが設けられない構成に比べて、フック2やロック33の意図しない移動が抑制される。
【0024】
フック2をホルダ3から取り外す場合は、ロック33をアンロック位置に移動させた後、フック2を下方にスライドさせ、着脱口23から前方に取り出すことで取り外すことが可能である。
したがって、実施例1のバックル1は、フック2がホルダ3に対して着脱される場合には、フックを回転させる操作、着脱方向の移動、連結方向の移動の3段階での移動が必要となる。したがって、意図せずに、3段階の力が作用することは現実問題としては非常に少なく、従来の一方向(着脱方向)で着脱を行う場合に比べて、フック2とホルダ3とが外れにくくなっている。特に、実施例1では、ロック33がアンロック位置に移動するのは、着脱方向に対して後方に押す力が作用した場合であるのに対して、フック2を取り外すのは着脱方向に対して前方である。すなわち、意図せずにフック2が外れるためには、着脱方向に対して逆方向の力が作用する必要があり、現実問題としてはほとんど起こらない。したがって、実施例1のバックル1は、フック2とホルダ3とが意図せずに外れにくくなっている。
さらに、トーションバネでロック33がロック位置に向かう力を作用させる場合には、トーションバネの力よりも弱い外力ではロック33がロック位置から移動しない。したがって、フック2がホルダ3から意図せずに外れることがさらに抑制される。
【0025】
(変形例1)
図5は本発明の変形例1の説明図である。
図5において、実施例1のシャフト13に、連結具41を装着することも可能である。変形例1の連結具41は、切欠き部11に嵌まる被連結部41aと、被連結部41aの下端から幅方向に広がるベルト連結部41bとを有する。ベルト連結部41bには、幅方向に広がる開口41cが形成されている。したがって、開口41cに、ベルト状の連結対象物を装着することも可能である。
【0026】
(変形例2)
図6は変形例2の説明図である。
図6に示すように、実施例1の切欠き部11やシャフト13等に替えて、受け部側連結部の一例として、着脱方向に貫通する丸穴状の連結口46が形成された形態とすることも可能である。
(変形例3)
図7は変形例3の説明図である。
図7に示すように、実施例1の切欠き部11やシャフト13等に替えて、受け部側連結部の一例として、着脱方向に貫通し且つ幅方向に広がる開口により構成された連結口47が形成された形態とすることも可能である。
【0027】
(変形例4)
図8は変形例4の説明図であり、
図8Aはロック位置において前側から見た図、
図8Bはロック位置において後側から見た図、
図8Cはアンロック位置において前側から見た図、
図8Dはアンロック位置において後側から見た図である。
図8において、ロック33に替えて、保持部の一例としての板バネ51を使用することも可能である。すなわち、
図8C、
図8Cに示すアンロック位置では、板バネ51を後側に押し込んで、フック2が取り外せる状態にすると共に、ロック位置では板バネ51を前側に押し込むことで、フック2の肩部8が停止面26に接触するように保持可能である。
【0028】
(変形例5)
図9は変形例5の説明図であり、
図9Aはロック位置の説明図、
図9Bはアンロック位置の説明図である。
なお、
図9において、ロック33または板バネ51等の図示は省略している。
着脱口23の形状は、肩部8の外形の形状と相似な形状とすることが好ましいが、
図9に示すように、肩部8が通過可能な形状であれば、停止通過部の一例として、四角形状の着脱口23′とすることも可能である。
【0029】
(変形例6)
図10は変形例6の説明図であり、
図10Aはロック位置の説明図、
図10Bはアンロック位置の説明図である。
なお、
図10でも、
図9と同様に、ロック33または板バネ51等の図示は省略している。
肩部8の形状は、なで肩形状に限定されず、
図10に示すように、被停止部の一例としての肩部56が角柱状とすることも可能である。このとき、停止部の一例としての停止面57も肩部56の外形形状に合わせた形とすることが可能である。
なお、肩部56を角柱状にした場合、肩部56とロッド部7との境界の角部分56aで応力集中が発生しやすく、連結方向に大きな力が作用すると、肩部56が破損する恐れがある。したがって、肩部56の形状は、なで肩状とすることが好ましい。
【0030】
(変形例7)
図11は変形例7の説明図であり、
図11Aはホルダの分解図、
図11Bはホルダを構成する各部の説明図である。
実施例1のホルダ3では、着脱口23やフックスライド室24等が切り出される形で形成されていたがこれに限定されない。
図11に示すように、ホルダ61を、連結口47が形成された板状のベース部62と、フックスライド室24が形成された板状のスライド形成部63と、着脱口23が形成された開口部64と、が積層された形態とすることも可能である。
変形例7のように構成することで、切り出す場合に比べて、容易に製造することが可能である。
なお、ベース部62とスライド形成部63と開口部64との固定は、任意の固定方法を採用可能である。例えば、接着剤を使用したり、ネジ止めしたり、カシメ止めしたり、溶接する等、材料や必要とされる強度等の仕様に応じて任意の固定方法を採用可能である。
【0031】
(そのほかの変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、ロッド部7の長さやリング部6の大きさ等のバランスは、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
(H02)前記実施例において、ロック33をロック位置に保持するために突起部33aと底凹部8aを設ける構成を例示したがこれに限定されない。例えば、フック2が金属で構成されている場合には、突起部33aおよび底凹部8aに替えて磁石を設置して、磁力で保持する構成とすることも可能である。なお、突起部33aと底凹部8aのようにロック33をロック位置に保持する構成を設けることが望ましいが、設けない構成とすることも可能である。
【0032】
(H03)前記実施例において、プランジャ37と側面凹部7aとでフック2を固定する構成を例示したが、この構成は設けないようにすることも可能である。また、例えば、フック2が金属で構成されている場合には、プランジャ37および側面凹部7aに替えて磁石を設置して、磁力で保持する構成とすることも可能である。
(H04)前記実施例において、リング部6とロッド部7との厚さ(X方向の長さ)は、同一の場合を例示したが、これに限定されない。例えば、リング部6に固定される紐やロープ等が、リング部6で擦れて摩耗する恐れがあるため、リング部6の厚さを厚くすることも可能である。この時、ロッド部7の厚さは変えず、軽量化することも可能である。また、リング部6の摩耗の軽減や、紐の切断抑制のために、リング部6の角を面取りした形状(いわゆるR形状)とすることも可能である。
(H05)前記実施例において、リング部6は紐等を固定しやすいようにリング状としたが、これに限定されない。例えば、リング部6に替えて、変形例1のようなベルト状の連結対象物を固定可能な形状とすることも可能である。