【解決手段】開閉可能な第1開閉部21及び第2開閉部22を有する部屋と、部屋に収容された密閉容器50及び60を互いに接続し、内部が無菌状態である接続経路30と、接続経路30を介して密閉容器50から密閉容器60へ細胞を移動させる駆動部40と、容器脱着装置14とを含む。容器脱着装置14は、細胞が密閉容器50から密閉容器60へと移動した後において、密閉容器60及び接続経路30の内部の無菌状態を維持しながら、密閉容器50を接続経路30から取り外すとともに、部屋に搬入された新しい密閉容器を、内部の無菌状態を維持しながら、接続経路30に接続する、内部が無菌状態に維持された密閉容器内で細胞を培養する細胞培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係る細胞培養装置1は、
図1に示すように、冷蔵保存部2と、加温保管部3と、培養部4と、制御部5とを含んでいる。細胞培養装置1は、制御部5に入力され保存されたデータに従い、細胞を培養する装置である。なお、以下の説明において、
図1の紙面に垂直な方向に沿って前後方向が定義される。
【0019】
冷蔵保存部2及び加温保管部3は、内部に培地又は試薬が収容された容器を配置する棚が形成された筐体である。また、図示は省略するが、冷蔵保存部2及び加温保管部3の前面には、筐体の前面に設けられた開口を開閉可能な扉が設けられている。冷蔵保存部2は、冷却機構(不図示)を備え、内部の温度は常温より低い任意の温度に保たれている。加温保管部3は、培養部4の内部に配置され、加温保管部3の内部の温度は、培養部4の内部の温度とほぼ等しい。また、冷蔵保存部2の内部に配置された容器及び加温保管部3の内部に配置された容器は、内部の液体が流出可能となるようにチューブが接続されており、後述のポンプ102によって流出可能である。冷蔵保存部2の内部に配置された容器は、例えば、タンクなど大型のものである。また、加温保管部3の内部に配置された容器としては、例えば、ボトル、バッグなどが挙げられる。
【0020】
培養部4は、
図1及び
図2に示すように、前面に第1開閉部21を有する第1部屋11と、前面に第2開閉部22を有する第2部屋12と、環境調整部13と、容器脱着装置14と、を含む。第1部屋11及び第2部屋12の壁面、並びに、第1開閉部21及び第2開閉部22は、それぞれ断熱材からなる。これにより、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度は、第1開閉部21及び第2開閉部22が閉じられている状態において、一定に維持される。また、
図2に示すように、第1部屋11の内部には密閉容器50が設置され、第2部屋12の内部には密閉容器60が設置されている。密閉容器50及び60は内部が無菌状態であり、容器としては、フラスコや多層容器、バッグなどが挙げられる。また、密閉容器60の容積は、密閉容器50の容積よりも大きい。これは、密閉容器50で培養され濃度が高くなった細胞を、密閉容器60に移してさらに培養する場合、密閉容器60に収容される培地の量は、密閉容器50に収容される培地の量より多くする必要があるためである。なお、
図2における点線部分は、第1部屋11及び第2部屋12の内部に配置されていることを意味する。
【0021】
また、
図3に示すように、密閉容器50には、外気と連通するガス抜き部51が取り付けられており、密閉容器60には、外気と連通するガス抜き部61が取り付けられている。密閉容器50とガス抜き部51との間にはバルブV18が配置されており、バルブV18が開状態のとき、密閉容器50の内部の気体は、ガス抜き部51を通って大気開放される。また、密閉容器60とガス抜き部61との間にはバルブV19が配置されており、バルブV19が開状態のとき、密閉容器60の内部の気体は、ガス抜き部61を通って大気開放される。バルブV18及びバルブV19としては、例えば、ピンチバルブが採用される。
【0022】
環境調整部13は、加温装置及びCO
2供給装置を内蔵しており、制御部5から送られた信号に従い、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度及びCO
2濃度を調整可能である。また、第1部屋11及び第2部屋12の内部には、温度及びCO
2濃度を検知するセンサ23が配置されている。センサ23が検知した情報は、制御部5へ出力される。なお、環境調整部13には、その他の内部環境を調整する装置が内蔵されていてもよい。この場合、センサ23は、その他の内部環境を併せて検知可能なセンサである。
【0023】
さらに、培養部4は、
図2に示すように、密閉容器50と密閉容器60とを互いに接続する接続経路30と、接続経路30を介して密閉容器50と密閉容器60との間で細胞を移動させる駆動部40とを備えている。接続経路30は、内部が無菌状態であるチューブ71及び72と、内部が無菌状態である攪拌部32及び攪拌部132とからなる。攪拌部32は、第1部屋11の内部に配置され、チューブ71を介して密閉容器50及び60と接続されている。攪拌部132は、第2部屋12の内部に配置され、チューブ72を介して容器50及び60と接続されている。また、駆動部40は、ポンプ101と、ポンプ101に接続され、内部に気体が収容されたガスタンク33とからなる。ガスタンク33は、チューブ73を介して攪拌部32、132、密閉容器50及び60と接続されている。なお、ガスタンク33の内部に収容された気体は、例えば、CO
2が挙げられるが、その他の気体でもよく、複数種類の気体からなる混合気体でもよい。なお、
図2では、ガスタンク33と攪拌部32及び132とを接続するチューブ73の記載を省略しており、詳細は
図3を参照されたい。
【0024】
図3に示すように、加温保管部3の内部に配置された培地容器34は、チューブ74を介して、攪拌部32、132、密閉容器50及び60と接続されている。また、ポンプ102が、培地容器34と、攪拌部32、132、密閉容器50及び60との間に配置されている。ポンプ102を駆動させることにより、培地容器34の内部に収容された培地を、攪拌部32、132、密閉容器50及び60へと供給することが可能である。なお、培地容器34は、チューブを介して冷蔵保存部2の内部に配置された培地タンク(不図示)と接続されており、冷蔵保存部2に保存されている培地が、適宜、加温保管部3に配置された培地容器34に供給される。
【0025】
また、廃液容器35が、チューブ75を介して、攪拌部32及び密閉容器50と接続されている。さらに、廃液用意135が、チューブ76を介して、攪拌部132及び密閉容器60と接続されている。また、ポンプ101を駆動させることにより、攪拌部32及び密閉容器50の内部の液体を廃液容器35に排出することが可能であり、攪拌部132及び密閉容器60の内部の液体を廃液容器135に排出することが可能である。廃液容器35には、外気と連通するガス抜き部36が形成されており、廃液容器35の内部の気体は、ガス抜き部36を通って大気開放される。廃液容器135には、外気と連通するガス抜き部136が形成されており、廃液容器135の内部の気体は、ガス抜き部136を通って大気開放される。なお、廃液容器35とガス抜き部36との間、及び、廃液容器135とガス抜き部136との間には、それぞれ逆止弁(不図示)が設けられており、外気の廃液容器35及び135への侵入を防いでいる。
【0026】
なお、以下において、攪拌部32及び132、ガスタンク33、培地容器34、廃液容器35及び135、密閉容器50及び60、並びに、これらを接続するチューブ71〜76に囲まれた内部空間を培養回路81と称する。液体又は気体は、培養回路81を流れる。
【0027】
チューブ73の、ガスタンク33と密閉容器50との間にはバルブV1が設けられ、ガスタンク33と密閉容器60との間にはバルブV2が設けられている。また、チューブ73の、ガスタンク33と攪拌部32との間にはバルブV12が設けられ、ガスタンク33と攪拌部132との間にはバルブV13が設けられている。チューブ71の、攪拌部32と密閉容器50との間にはバルブV3が設けられ、攪拌部32と密閉容器60との間にはバルブV4が設けられている。また、チューブ72の、攪拌部132と密閉容器60との間にはバルブV5が設けられ、攪拌部132と密閉容器50との間にはバルブV6が設けられている。チューブ74の、培地容器34とポンプ102との間にはバルブV7が設けられ、密閉容器50とポンプ102との間にはバルブV8が設けられ、攪拌部32とポンプ102との間にはバルブV9が設けられ、密閉容器60とポンプ102との間にはバルブV10が設けられ、攪拌部132とポンプ102との間にはバルブV11が設けられている。チューブ75の、密閉容器50と廃液容器35との間にはバルブV14が設けられ、攪拌部32と廃液容器35との間にはバルブV15が設けられている。チューブ76の、密閉容器60と廃液容器135との間にはバルブV16が設けられ、攪拌部132と廃液容器135との間にはバルブV17が設けられている。バルブV1〜V17の開閉によって、チューブ71〜76を流れる液体及び気体の流れを開閉することができる。バルブV1〜V17としては、例えば、ピンチバルブが採用される。
【0028】
容器脱着装置14は、
図2に示すように、第1部屋11及び第2部屋12の内部に、それぞれ配置されている。容器脱着装置14は、前述した培養回路81の内部の無菌状態を維持しながら、密閉容器50又は60を培養回路81から取り外すとともに、別の新しい密閉容器を、内部の無菌状態を維持しながら、培養回路81に接続する装置である。具体的には、例えば、密閉容器50を取り外す場合、密閉容器50が、チューブ72、73及び74から取り外され、攪拌部32が、チューブ73、74及び一端が密閉容器60と接続されているチューブ71から取り外される。これによって、密閉容器50と攪拌部32と廃液容器35とが一体的に、培養回路81から取り外される。同時に、新しい密閉容器が、チューブ72、73及び74に取り付けられ、新しい攪拌部が、チューブ73、74及び一端が密閉容器60と接続されているチューブ71に取り付けられる。これによって、新しい密閉容器と攪拌部と廃液容器とが一体的に、培養回路81に接続される。容器脱着装置14としては、BioWelder(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製)、OPTA無菌コネクタ―(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製)などが挙げられる。なお、容器脱着装置14は、培養部4の外部に配置されていてもよい。この場合、容器脱着装置14は、密閉容器の交換が行われるときに、第1部屋11又は第2部屋12の内部に搬入される。容器脱着装置14の搬入は、作業者によって行われてもよく、自動で行われてもよい。自動で行われる場合、例えば、ロボットアームなどが別途配置される。また、容器脱着装置14が培養部4の外部に配置される場合、容器脱着装置14は1つのみ配置されていてもよい。
【0029】
制御部5は、作業者によって予め入力された設定に基づいて、環境調整部13による第1部屋11及び第2部屋12の内部環境の制御、ポンプ101及び102の駆動制御、バルブV1〜V19の開閉制御、第1開閉部21及び第2開閉部22の開閉制御、などを行う。
【0030】
以下に、本実施形態に係る細胞培養装置1を用いた細胞培養方法について、
図4を参照しつつ説明する。細胞培養装置1を用いた細胞培養方法は、培養工程と、培地交換工程と、細胞懸濁液回収工程と、継代工程と、を含む。培養工程は、所定の温度及びCO
2濃度において、密閉容器50又は60の内部で細胞を培養する工程である。培地交換工程は、細胞が培養されている密閉容器50又は60の内部の培地を交換する工程である。細胞懸濁液回収工程とは、密閉容器50又は60の内部から細胞と培地とを含む細胞懸濁液を回収する工程である。継代工程は、密閉容器50から密閉容器60へと細胞懸濁液を移動させる工程である。
【0031】
細胞培養装置1には、予め培養回路81がセットされる。詳細には、
図3に示されるように、第1部屋11の内部に密閉容器50が設置され、第2部屋12の内部に密閉容器60が設置され、培地容器34が加温保管部3の内部に配置される。また、密閉容器50の内部には、細胞懸濁液が収容されている。加温保管部3に配置された培地容器34は、冷蔵保存部2に配置された培地タンクと不図示のチューブを介して接続される。また、チューブ71〜76が、攪拌部32及び132、ガスタンク33、培地容器34、廃液容器35及び135、密閉容器50及び60、バルブV1〜V17、ポンプ101〜102にセットされることで培養回路81が構成される(
図3を参照)。このとき、培養回路81の内部は無菌状態となっており、全てのバルブは閉状態となっている。
【0032】
なお、培養工程における培養時間や、培地交換工程における培地の交換量、継代工程における培地の供給量などの各種設定は、実験に応じて作業者が予め制御部5に入力する。制御部5は、入力された設定に基づき、各工程を自動で行う。
【0033】
上述の培養回路81がセットされ、第1部屋11の第1開閉部21及び第2部屋の第2開閉部22を閉じた状態において、培養開始の入力を受けると、細胞培養装置1の制御部5は、培養工程の前段階としての予備動作を行う。具体的には、
図4に示すように、センサ23によって第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度及びCO
2濃度が所定値であるか否か確認する(ステップS1)。第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度又はCO
2濃度が所定値でない場合(S1:NO)、環境調整部13によって温度及びCO
2濃度の調整が行われる(ステップS2)。なお、温度の所定値とは、例えば37℃であって、CO
2濃度の所定値とは、例えば5%である。
【0034】
第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度及びCO
2濃度が所定値である場合(S1:YES)、制御部5は、バルブV18を開状態とする。これにより、密閉容器50の内部に余計な気体(CO
2)が残っているときには、密閉容器50に取り付けられたガス抜き部51から気体が排出される(ステップS3)。その後、制御部5が、バルブV18を閉状態とすることで、予備動作が終了する。
【0035】
なお、ステップS1とステップS3との間において、密閉容器50に細胞懸濁液を収容させてもよい。この場合、例えば、加温保管部3の内部に配置されており、チューブを介して密閉容器50と接続された容器に、予め細胞と培地とを含む細胞懸濁液を収容しておく。そして、ステップS1の後で、予め加温保管部3の内部に配置された容器に収容された細胞懸濁液が、前述のチューブを介して密閉容器50に送られる。
【0036】
(培養工程)
細胞培養装置1は、センサ23によって、第1部屋11の内部の温度及びCO
2濃度をモニタリングし、環境調整部13によって、第1部屋11の内部の温度及びCO
2濃度を所定値に保ちつつ、細胞の培養を行う(ステップS4)。予め設定した培養時間を経過すると、培養工程が終了する。
【0037】
ここで、培養工程の終了前において、培地交換工程の前段階として、培制御部5は、培地交換の際に必要な量の新鮮培地を、冷蔵保存部2の内部に配置されている培地タンク(不図示)から、チューブを介して加温保管部3の内部に配置されている培地容器34に供給する。培地容器34に供給された新鮮培地は、加温保管部3において、培養が行われている第1部屋11の内部の所定の温度と同様になるまで加温される。
【0038】
(培地交換工程)
培養工程の終了後、培地交換工程(ステップS5)が行われる。まず、制御部5は、バルブV1及び14を開状態として、ポンプ101を駆動し、ガスタンク33の内部のCO
2を密閉容器50に流し込む。これによって、密閉容器50の内部の培地は、チューブ75を通って、廃液容器35へと排出される。このとき、廃液容器35の内部の気体は、ガス抜き部36を通って大気開放される。その後、制御部5は、ポンプ101を停止し、バルブV1及びV14を閉状態とする。次に、制御部5は、バルブV7及びV8を開状態として、ポンプ102を駆動し、培地容器34から密閉容器50へとチューブ74を介して新鮮培地を供給する。新鮮培地の供給後、制御部5は、ポンプ102を停止し、バルブV7及びV8を閉状態とする。
【0039】
新鮮培地を密閉容器50に供給した後、制御部5は、バルブV18を開状態とする。これにより、密閉容器50の内部に気体が残っているときには、密閉容器50に取り付けられたガス抜き部51から気体が排出される。その後、制御部5が、バルブV18を閉状態とすることで、培地交換工程(ステップS5)は終了する。なお、密閉容器50からチューブ75を介して廃液容器35へ排出される培地の量及び培地容器34からチューブ74を介して密閉容器50へ供給される新鮮培地の量は、予め設定されている。
【0040】
培地交換工程(ステップS5)が終了すると、ステップS4と同様、培養工程(ステップS6)が行われる。培養工程(ステップS6)が終了した後、培地交換が予め設定した所定回数行われたか否か確認する(ステップS7)。培地交換が所定回数行われていなければ(S7:NO)、ステップS5に戻り、前述と同様に培地交換を行う。培地交換が所定回数行われている場合(S7:YES)、以下の細胞懸濁液回収工程及び継代工程が行われる。
【0041】
(細胞懸濁液回収工程)
まず、密閉容器50において培養された細胞を含む細胞懸濁液が回収される(ステップS8)。細胞懸濁液が回収されるとき、制御部5は、バルブV1及びV3を開状態として、ポンプ101を駆動し、ガスタンク33の内部のCO
2を密閉容器50に流し込む。これによって、密閉容器50の内部の細胞懸濁液は、チューブ71を通って、攪拌部32へと移動する。密閉容器50の内部の細胞懸濁液が攪拌部32へ移動した後、制御部5は、ポンプ101を停止し、バルブV1及びV3を閉状態とする。攪拌部32で攪拌されることにより濃度が均一となった細胞懸濁液のうちの微量が不図示の細胞カウント部へと運ばれ、細胞懸濁液の濃度が測定される。続いて、制御部5は、攪拌部32の内部に収容されている細胞懸濁液の濃度が、予め設定された濃度となるように、攪拌部32への培地の供給、及び/又は、攪拌部32からの過剰な細胞懸濁液の排出を行う。培地の供給を行う場合、制御部5は、バルブV7及びV9を開状態として、ポンプ102を駆動する。これによって、培地容器34から所定量の培地が、チューブ74を介して攪拌部32に供給される。過剰な細胞懸濁液の排出を行う場合、制御部5は、バルブV12及びV15を開状態として、ポンプ101を駆動し、ガスタンク33の内部のCO
2を攪拌部32に流し込む。これによって、攪拌部32の内部の細胞懸濁液の一部が、チューブ75を介して廃液容器35に排出される。なお、このとき、廃液容器35の内部の気体はガス抜き部36を通って大気開放される。これらにより、攪拌部32の内部に収容されている細胞懸濁液の濃度が、予め設定された濃度となる。その後、制御部5は、ポンプ102を停止し、バルブV7及びV9を閉状態とする、及び/又は、ポンプ101を停止し、バルブV12及びV15を閉状態とする。これにより、細胞懸濁液回収工程(ステップS8)が終了する。
【0042】
(継代工程)
次に、制御部5は、継代工程を行うか否か確認する(ステップS9)。継代工程を行う場合(S9:YES)、まず、制御部5は、センサ23によって第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度を及びCO
2濃度が、ともに所定値か否か確認する(ステップS10)。第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度又はCO
2濃度が所定値ではない場合(S10:NO)、環境調整部13によって温度及びCO
2濃度の調整が行われる(ステップS11)。その後、再度、ステップS10が行われる。
【0043】
第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度又はCO
2濃度がともに所定値であるとき(S10:YES)、攪拌部32の内部の細胞懸濁液を密閉容器60へ移動させる(ステップS12)。具体的には、制御部5が、バルブV12及びV4を開状態として、ポンプ101を駆動し、ガスタンク33の内部のCO
2を密閉容器50を経由して攪拌部32に流し込む。これによって、攪拌部32の内部の細胞懸濁液は、チューブ71を通って、密閉容器60へと移動する。細胞懸濁液が密閉容器60へ移動した後、制御部5は、ポンプ101を停止し、バルブV12及びV4を閉状態とする。続いて、制御部5は、バルブV19を開状態とする。これにより、密閉容器60の内部に気体が残っているときには、密閉容器60に取り付けられたガス抜き部61から気体が排出される。その後、制御部5が、バルブV19を閉状態とすることで、ステップS12が終了する。
【0044】
細胞懸濁液が密閉容器60へ移動した後(ステップS12)、容器脱着装置14によって、細胞懸濁液が空になった密閉容器50と他の密閉容器との交換が行われる(ステップS13)。具体的には、まず、制御部5は、第1部屋11の第1開閉部21を開く。続いて、内部が無菌状態であり、新しい攪拌部と廃液容器とを含む新しい密閉容器が、細胞培養装置1の外部から、第1部屋11の内部に搬入される。なお、予め、新しい密閉容器と新しい攪拌部とはチューブを介して接続されており、新しい密閉容器と新しい廃液容器とはチューブを介して接続されており、さらに、新しい攪拌部と新しい廃液容器とはチューブを介して接続されている。そして、容器脱着装置14は、接続経路30を含む培養回路81の内部の無菌状態を維持しながら、密閉容器50をチューブ72、73、及び74から取り外し、攪拌部32をチューブ73、74及び一端が密閉容器60と接続されているチューブ71から取り外す。さらに、容器脱着装置14は、新しい攪拌部と廃液容器とを含む新しい密閉容器の内部の無菌状態を維持しながら、新しい密閉容器をチューブ72、73、及び74に接続し、新しい攪拌部をチューブ73、74及び一端が密閉容器60と接続されているチューブ71に接続する。これによって、密閉容器50と攪拌部32と廃液容器35とが一体的に培養回路81から取り外されるとともに、新しい密閉容器と攪拌部と廃液容器とが一体的に培養回路81に接続される。その後、培養回路81から取り外された、攪拌部32と廃液容器35とを含む密閉容器50は、第1部屋11から細胞培養装置1の外部へと搬出され、第1部屋11の第1開閉部21が閉じられる。これにより、密閉容器の交換(ステップS13)が終了する。なお、密閉容器の搬入及び搬出は、作業者によって行われてもよく、自動で行われてもよい。自動で行われる場合、例えば、ロボットアームなどが別途配置される。また、外部から搬入する新しい容器の容積は、密閉容器60よりも大きい。これは、前述した、密閉容器60の容積が密閉容器50の容積より大きい理由と同様である。さらに、継代が複数回行われる場合、新たに外部から搬入される密閉容器の容積は、第1部屋11又は第2部屋12の内部に収容されている密閉容器のいずれの容積よりも大きい。
【0045】
細胞懸濁液が密閉容器60に収容された後、ステップS3に戻る。すなわち、制御部5によってバルブV19が開状態となり、密閉容器60の内部に余計な気体が残っているときには、密閉容器60に取り付けられたガス抜き部61から気体が排出される。その後、密閉容器60の内部に収容された細胞懸濁液は、第2部屋12の内部において、培養工程、培地交換工程及び細胞懸濁液回収工程が行われる(ステップS4〜S8)。
【0046】
ここで、第2部屋12に収容された密閉容器60に対して、培地交換工程(ステップS5)を行う場合、まず、制御部5は、バルブV2及びV16を開状態として、ポンプ101を駆動する。これによって、密閉容器60の内部の培地は、チューブ76を通って、廃棄容器135へと排出される。このとき、廃液容器135の内部の気体は、ガス抜き部136を通って大気開放される。その後、制御部5は、ポンプ101を停止し、バルブV2及びV16を閉状態とする。次に、制御部5は、バルブV7及びV10を開状態とし、ポンプ102を駆動することで、培地容器34から密閉容器60へとチューブ74を介して新鮮培地を供給する。その後、制御部5は、ポンプ102を停止し、バルブV7及びV10を閉状態とする。
【0047】
また、第2部屋12に収容された密閉容器60に対して、細胞懸濁液回収工程(ステップS8)を行う場合、まず、制御部5は、バルブV2及びV5を開状態として、ポンプ101を駆動する。これによって、密閉容器60の内部の細胞懸濁液は、チューブ72を通って、攪拌部132へと移動する。その後、制御部5は、ポンプ101を停止し、バルブV2及びV5を閉状態とする。続いて、制御部5は、攪拌部132の内部に収容されている細胞懸濁液の濃度が、予め設定された濃度となるように、攪拌部132への培地の供給、及び/又は、攪拌部132からの過剰な細胞懸濁液の排出を行う。培地の供給を行う場合、制御部5は、バルブV7及びV11を開状態として、ポンプ102を駆動する。これによって、培地容器34から所定量の培地が、チューブ74を介して攪拌部132に供給される。過剰な細胞懸濁液の排出を行う場合、制御部5は、バルブV13及びV17を開状態として、ポンプ101を駆動し、ガスタンク33の内部のCO
2を攪拌部132に流し込む。これによって、攪拌部132の内部の細胞懸濁液の一部が、チューブ76を介して廃液容器135に排出される。なお、このとき、廃液容器135の内部の気体は、ガス抜き部136を通って大気開放される。これらにより、攪拌部32の内部に収容されている細胞懸濁液の濃度が、予め設定された濃度となる。
【0048】
なお、ステップS13と、密閉容器60の内部の細胞の培養を行うステップS4とは、並行して行われてもよい。また、予め設定された継代回数と、現実に行われた継代回数とが同じである場合、ステップS13は行われない。すなわち、例えば、予め設定された継代回数が2回である場合、2回目の継代工程(S10〜S12)の終了後、ステップS13は行われない。
【0049】
複数回継代が行われる場合において、奇数回目の継代工程(ステップS10〜S12)の後の培養工程(ステップS4、S6)及び培地交換工程(ステップS5)では、第2部屋12の内部に配置された密閉容器に細胞懸濁液が収容されている。偶数回目の継代工程の後の培養工程及び培地交換工程では、第1部屋11の内部に配置された密閉容器に細胞懸濁液が収容されている。また、奇数回目の継代工程の後、密閉容器を交換する工程(ステップS13)では、第1部屋11の内部に配置された密閉容器が新しい密閉容器と交換される。偶数回目の継代工程の後、密閉容器を交換する工程では、第2部屋12の内部に配置された密閉容器が新しい密閉容器と交換される。
【0050】
前述の細胞懸濁液回収工程(ステップS8)の後、予め設定された継代回数が既に行われており、これ以上継代が行なわれない場合(S9:NO)、細胞懸濁液の収穫(ステップS14)が行われて、細胞培養が終了する。
【0051】
本実施形態の細胞培養装置1は、培養部4に形成された部屋と、部屋の内部に収容された密閉容器50及び60を互いに接続する接続経路30と、密閉容器50と密閉容器60との間で接続経路30を介して細胞を移動させる駆動部40と、駆動部40によって細胞が移された密閉容器60及び接続経路30を含む培養回路81の無菌状態を維持しながら、細胞の移動元である密閉容器50をチューブ72、73及び74から取り外すとともに、新しい密閉容器を、内部の無菌状態を維持しながら培養回路81のチューブ72、73及び74に接続する容器脱着装置14とを含む。このような構成によれば、何れかの密閉容器において細胞の培養が終了すると、駆動部40を駆動させることで、密閉容器50から密閉容器60に接続経路30を介して細胞を移動させることができ、こうして継代を行うことができる。継代が終われば、細胞の移動元である密閉容器50を開閉部を介して部屋の外部に搬出できるとともに、新しい密閉容器を開閉部を介して部屋に搬入できる。新しい密閉容器は、容器脱着装置14を用いることで、無菌状態を維持しながらチューブ72、73及び74に接続することができる。したがって、継代が複数回行われる場合でも、2回目以降の継代に用いられる密閉容器を予め部屋に用意しておく必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。また、密閉容器の交換を繰り返すことで、継代回数の増加にも対応できるので、実質的に継代回数の制限がなくなる。
【0052】
本実施形態では、部屋は、第1開閉部21を有し、内部に密閉容器50が収容されている第1部屋11と、第2開閉部22を有し、内部に密閉容器60が収容されている第2部屋21とを含み、第1部屋11及び第2部屋12の内部環境を調整する環境調整部13が設けられている。一般に、細胞は培養環境の影響を受ける。このため、適切に細胞培養を行うには、細胞培養装置1の内部の環境を一定に保つことが求められる。ここで、細胞培養装置1では、密閉容器を交換する際には部屋の開閉部が開かれるため、細胞培養装置1の部屋の内部環境を一定に保つことは困難となる。そこで、上記の構成とすることで、例えば第1部屋11に収容されている密閉容器50から第2部屋12に収容されている密閉容器60への継代が行われた場合、第1部屋11の第1開閉部21のみを開いて、密閉容器50を交換することができる。このとき、第2部屋12の第2開閉部22を閉じた状態としておけば、継代後の細胞培養が行われている密閉容器60が設置された第2部屋12の内部環境は、細胞培養装置1の外部からの影響を受けることなく、一定に保つことができる。
【0053】
本実施形態では、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度を検知するセンサ23を備え、環境調整部13は、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度を調整するように構成され、接続経路30を介した細胞の移動が行われるときに、環境調整部13は、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度をともに所定値に調整する。この構成によれば、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度がともに所定の温度となっているときに、それぞれの部屋に設置された密閉容器間で細胞を移動させることにより、継代前後において細胞の培養温度を一定に保つことができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、培養部4は、第1開閉部21を有する第1部屋11と第2開閉部22を有する第2部屋12とを含んでいたが、1つの開閉部を有する1つの部屋が配置されていてよい。但し、この場合、密閉容器を交換する際に、開閉部を開いたとき、密閉容器50及び60が配置されている部屋の内部の温度が、細胞培養装置1の外部からの影響を受けてしまう。このため、細胞培養装置1は、密閉容器50が配置された第1部屋11と、密閉容器60が配置された第2部屋12とを備えていることが好ましい。
【0056】
また、培養部4が2つの部屋を含んでいる場合、それぞれの部屋は互いに離れた位置に配置されていてもよく、1つの部屋を断熱板などで区切っているだけでもよい。また、培養部4に配置される部屋は3つ以上でもよいが、装置の大型化を抑制するためには、2つであることが好ましい。
【0057】
また、第1部屋11及び第2部屋12の内部に配置する密閉容器は、各部屋につき1つずつである必要はなく、2つの部屋のうち少なくとも一方に複数の密閉容器が配置されていてもよい。例えば、第1部屋11に1つ密閉容器が配置され、第2部屋12に2つの密閉容器が配置されていてもよい。この場合、継代工程において、細胞懸濁液は、第1部屋11に配置された密閉容器から、接続経路30を介して、第2部屋12の2つの密閉容器へと移動する。
【0058】
また、上記実施形態において、密閉容器60の容積の方が密閉容器50の容積よりも大きいとした。しかしながら、密閉容器として多層式容器を用いる場合、密閉容器60の層の数が、密閉容器50の層の数より多い、としてもよい。また、密閉容器60の容積は、必ずしも密閉容器50の容積よりも大きい必要はなく、密閉容器50の容積と密閉容器60の容積とは同じでもよく、密閉容器50の方が大きくてもよい。但し、前述した理由から、一般には、密閉容器60の容積は、密閉容器50の容積よりも大きい。
【0059】
上記実施形態では、環境調整部13は、センサ23が検知した情報に基づいて、第1部屋11及び第2部屋12の内部のCO
2濃度を調整することが可能である。しかしながら、密閉容器50及び60がCO
2を透過しない材質からなる場合、環境調整部13は、第1部屋11及び第2部屋12の内部のCO
2濃度を調整する必要がない。この場合、環境調整部13は、第1部屋11及び第2部屋12の内部の温度のみ、又は、CO
2濃度を除く所定の内部環境と内部の温度とを調整する。
【0060】
また、環境調整部13は、第1部屋11の内部と第2部屋12の内部とを、互いに異なる内部環境となるように調整することが可能であってもよい。これによって、例えば、継代の前後で培養環境を変化させることが可能となる。
【0061】
また、上記実施形態において、廃液容器35とガス抜き部36との間、及び、廃液容器135とガス抜き部136との間には、それぞれ逆止弁が設けられていたが、逆止弁の代わりにエアフィルタが設けられていてもよい。この場合、装置外部から雑菌等が廃液容器35又は廃液容器135に侵入することを防ぐことができ、培養回路81に雑菌が混入するリスクを抑制できる。
【0062】
また、密閉容器50とガス抜き部51との間、及び、密閉容器60とガス抜き部61との間には、さらにエアフィルタが設けられていてもよい。これにより、密閉容器50又は60の内部の気体を装置の外部に排気する際、バルブV18又はバルブV19を開状態としたときに、外気から培養回路81に雑菌が混入するリスクを抑制できる。
【0063】
また、上記実施形態では、攪拌部32、密閉容器50及び密閉容器60は、チューブ73を介して、培地容器34と接続されていたが、さらに別の試薬が収容された容器と接続されていてもよい。例えば、培養工程や継代工程において、密閉容器に試薬を添加する場合、当該試薬が収容された試薬容器と接続される。この場合、試薬容器とポンプ102との間にはバルブがさらに設けられる。
【0064】
上記実施形態では、容器脱着装置14は、密閉容器50と攪拌部32と廃液容器35とを一体的に、培養回路81から取り外している。しかしながら、容器脱着装置14は、密閉容器50のみを培養回路81から取り外してもよい。この場合、容器脱着装置14は、密閉容器50を、チューブ71〜75から取り外すとともに、外部から搬入された新しい密閉容器をチューブ71〜75に接続する。また、容器脱着装置14は、密閉容器50と攪拌部32とを一体的に、培養回路81から取外し、廃液容器35は、培養回路81に接続したままでもよい。この場合、容器脱着装置14は、密閉容器50をチューブ72〜75から取り外し、攪拌部32をチューブ73〜75から取り外す。そして、外部から搬入した新しい密閉容器をチューブ72〜75に接続し、新しい攪拌部をチューブ73〜75に接続する。
【0065】
上記実施形態では、制御部5によって、第1開閉部21及び第2開閉部22の開閉制御が行われている。しかしながら、作業者によって第1開閉部21及び第2開閉部22の開閉が行われてもよい。
【0066】
また、チューブ74の内部に培地が残存することを防ぐために、培地交換工程の後、洗浄工程が行われてもよい。この場合、バルブV7とポンプ102との間には、外気と連通する気体連通部が設けられている。また、気体連通部はバルブを有しており、バルブが開状態のときに、気体連通部は外気と連通する。例えば、バルブV7及びV8が開状態のときにおいて、培地容器34から密閉容器50にチューブ74を介して新鮮培地が送られた後、細胞培養装置1は、チューブ74の内部に残存している培地を除去する洗浄工程を行う。具体的には、制御部5は、ポンプ102を停止し、バルブV7を閉状態とし、バルブV8を開状態のままとする。そして、制御部5は、バルブV7とポンプ102との間に設けられた気体連通部のバルブを開状態とし、再びポンプ102を駆動する。これにより、気体連通部からチューブ74に気体が流入し、チューブ74の内部の残存培地を密閉容器50に押し出す。これによって、チューブ74の内部の残存培地を除去することができる。なお、攪拌部32、密閉容器60又は攪拌部132に新鮮培地を供給した後も、上述の洗浄工程が行われてもよい。この場合、制御部5は、バルブV7とポンプ102との間に設けられた気体連通部のバルブを開状態とし、ポンプ102と新鮮培地が送られた容器との間のバルブを開状態として、ポンプ102を駆動することで、チューブ74の内部を洗浄する。なお、バルブV7とポンプ102との間に設けられた気体連通部のバルブの先には、エアフィルタが設けられており、外気から培養回路81に雑菌が混入するリスクを抑制している。
【0067】
また、ガス抜き部51、61、36及び136は、上述した気体連通部のように、排気だけでなく外気を取り込むことが可能でもよい。この場合、密閉容器50とガス抜き部51との間、密閉容器60とガス抜き部61との間、廃液容器35とガス抜き部36との間、及び、廃液容器135とガス抜き部136との間、のそれぞれには開閉式バルブとエアフィルタとが配置されている。