【解決手段】複数の第1パイル2が立設状態で備えられ、且つ、導電性を有する第2パイル3が第1パイル2の間において立設状態で備えられた基部を有する立毛層6が備えられ、立毛層6の裏面側には、立毛層6を設置対象面に接着させる帯電防止性を有する接着剤7を塗布した接着剤層8が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の人工芝では、人工芝の表面側にて放電しているだけであるので、人工芝や人体等に静電気が蓄積されるのを十分に防止することができず、この点で改善の余地があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、人体や人工芝等に静電気が蓄積されるのを効率よく防止することができる人工芝を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、複数の第1パイルが立設状態で備えられ、且つ、導電性を有する第2パイルが前記第1パイルの間において立設状態で備えられた基部を有する立毛層が備えられ、
前記立毛層の裏面側には、前記立毛層を設置対象面に接着させる帯電防止性を有する接着剤を塗布した接着剤層が設けられている点にある。
【0008】
本構成によれば、基部には、第1パイルの間に立設状態で導電性を有する第2パイルが備えられているので、人体等と人工芝との接触等により生じる静電気を第2パイルによって立毛層の裏面側に導くことができる。しかも、立毛層の裏側には、帯電防止性を有する接着剤層が設けられているので、静電気が接着剤層を通過して設置対象面に導かれる。このように、人体等と人工芝との接触等により静電気が発生しても、その静電気を立毛層及び接着剤層を介して設置対象面に流すことができるので、人体や人工芝等に静電気が蓄積するのを効率よく防止することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記接着剤は、表面抵抗率が10
9〜10
14Ω/sqの範囲で帯電防止性を有するものである点にある。
【0010】
本構成によれば、接着剤は、帯電防止性を有するので、例えば、導電性のみを有する接着剤に比べて、立毛層の裏面側に導かれた静電気を設置対象面に緩やかに流すことができる。これにより、接着剤層を介して静電気を設置対象面に流す際に、静電気放電が生じ難くなり、静電気放電による悪影響の発生を適切に防止することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記接着剤は、無溶剤型の接着剤である点にある。
【0012】
本構成によれば、接着剤は、無溶剤型の接着剤であるので、溶剤を必要とせずに、環境にも優しい。しかも、室内使用の制限が少なく、管理も行い易い。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記接着剤は、粘度が10000〜130000mPa・sの範囲であり、チクソ性が1.8以上の範囲である点にある。
【0014】
本構成によれば、接着剤の粘度が10000〜130000mPa・sの範囲であり、チクソ性が1.8以上の範囲であるので、立毛層の裏面側に接着剤を塗布するに当たり、接着剤の塗布作業を容易に行うことができ、施工性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る人工芝の実施形態について、図面に基づいて説明する。
この人工芝1は、第1パイル2、第2パイル3、基布4(基部に相当する)、及び、バッキング材5を有する立毛層6が備えられている。立毛層6の裏面側には、帯電防止性を有する接着剤7を塗布した接着剤層8が設けられ、この接着剤層8にて地面やコンクリート面等の設置対象面9に対して立毛層6が接着されている。
【0017】
第1パイル2は、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂材料からなるフィラメント糸にて構成されている。複数の第1パイル2は、植設部分が基布4の裏側へ貫通し、表出部分が基布4の表側(
図1中、上側)に突出するように植設されている。複数の第1パイル2は、人工芝1の裏面側から表面側に延びる立設状態で基布4に植設されている。
【0018】
第2パイル3は、導電性を有するものであり、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の疎水性合成繊維にアルミ、銅、カーボン、導電性セラミック等を配合した材料からなるフィラメント糸によって構成されている。複数の第2パイル3は、第1パイル2と同様に、植設部分が基布4の裏側へ貫通し、表出部分が基布4の表側(
図1中、上側)に突出するように植設されている。第2パイル3は、第1パイル2の間において人工芝1の裏面側から表面側に延びる立設状態で基布4に植設されている。
【0019】
第1パイル2と第2パイル3との配設数については、例えば、所定数(例えば、4本又は5本)の第1パイル2に対して1本の第2パイル3が植設されており、複数の第1パイル2に対して所定の間隔で第2パイル3が存在するように、第1パイル2及び第2パイル3が植設されている。このように、第1パイル2に対して第2パイル3が所定の割合(25%又は20%)にて備えられており、第2パイル3は第1パイル2よりも少数となっている。
【0020】
基布4は、例えば、可撓性を有するものであり、樹脂材料からなる織布、又は不織布として構成されている。基布4は、第1パイル2及び第2パイル3を植設させる基部となるものであり、各種の基布を適用することができる。
【0021】
バッキング材5は、例えば、可撓性を有するものであり、可撓性を有するブタジエンースチレンゴム等の弾性材料にて構成されている。バッキング材5は、第1パイル2及び第2パイル3が基布4から抜けるのを防止する抜け止め防止機能を有している。
【0022】
この人工芝1では、基布4において、第1パイル2の間に立設状態で導電性を有する第2パイル3が備えられているので、人体等と人工芝1(第1パイル2)との接触等により生じる静電気を第2パイル3によって立毛層6の裏面側に導くことができる。しかも、立毛層6の裏側には、帯電防止性を有する接着剤層8が設けられているので、静電気が接着剤層8を通過して設置対象面9に導かれる。このように、人体等と人工芝1(第1パイル2)との接触等により静電気が発生しても、その静電気を立毛層6及び接着剤層8を介して設置対象面9に流すことができるので、人体や人工芝1等に静電気が蓄積するのを効率よく防止することができる。
【0023】
立設状態の第1パイル2及び第2パイル3において、基布4から第2パイル3の上端部までの高さが、基布4から第1パイル2の上端部までの高さと同じ又は略同じ高さに設定されている。これにより、第2パイル3の上端部を人工芝1の表面に位置させて、人体等と第2パイル3とが接触し易くしている。よって、第2パイル3にて静電気を立毛層6の裏面側まで適切に導くことができる。
【0024】
バッキング材5には、人工芝1の表面側と裏面側とを連通する連通部10が備えられている。連通部10は、人工芝1の複数の所定箇所の夫々に設けられており、複数備えられている。この連通部10によって、雨水等を人工芝1の表面側から裏面側に導くことができ、人工芝1の表面側に雨水等が滞留するのを防止することができる。このように、バッキング材5は、人工芝1の表面側と裏面側とを完全に遮断するものではないので、人工芝1の表面側で発生する静電気を、連通部10等を通して立毛層6の裏側に導くこともできる。
【0025】
このようにして、立毛層6の裏面側に導かれた静電気は、導電性を有する接着剤7の接着剤層8によって設置対象面9に流すことができる。接着剤7は、導電性を有するだけでなく、表面抵抗率が10
9〜10
14Ω/sqの範囲で帯電防止性を有するものである。接着剤7は、帯電防止性を有するので、例えば、導電性のみを有する接着剤に比べて、立毛層6の裏面側に導かれた静電気を設置対象面9に緩やかに流すことができるので、接着剤層8を介して静電気を設置対象面9に流す際に、静電気放電が生じ難くなる。
【0026】
接着剤7の表面抵抗率については、帯電防止性を有するために、10
9〜10
14Ω/sqの範囲が好適な範囲であり、最適な範囲は、10
9〜10
11Ω/sqとなっている。また、接着剤7の表面抵抗率を、10
11Ω/sqとすることで、有用な帯電防止性を有することになる。
【0027】
図2に示すように、帯電防止性能について試験実験を行い、帯電防止性能の有無を確認している。試験実験は、JISA1455に基づくものであり、第1パイル2及び第2パイル3を備えた人工芝1において、接着剤7の表面抵抗率を10
11Ω/sqとした本発明に係る人工芝(
図2中、(1)の試験結果)について帯電防止性能の有無を確認している。また、比較のために、第1パイル2及び第2パイル3を備えた人工芝1において、接着剤7の表面抵抗率を10
15Ω/sq以上とした比較対象の人工芝(
図2中、(2)の試験結果)についても、帯電防止性能の有無を確認している。
【0028】
図2中、(1)に示すように、本発明に係る人工芝は、(2)の人工芝よりも、最大帯電電位が小さく、半減時間も小さく、U値が大きくなっている。最大帯電電位が小さい程、帯電防止性能が高く、半減時間が小さい程、静電気の拡散が速く、U値が大きい程、帯電防止性能が高くなる。よって、本発明に係る人工芝は、接着剤の表面抵抗率が10
9〜10
14Ω/sqの範囲外の接着剤である比較対象の人工芝よりも、帯電防止性能が高く、静電気の拡散が速いことを確認することができた。また、U値については、3.2以上であれば、比較的帯電防止性能が高いとの評価値の目安がある。本発明に係る人工芝のU値が3.6であることを試験結果により得られたので、本発明に係る人工芝は、比較的高い帯電性能を有するものであることを確認できた。
【0029】
接着剤7は、無溶剤型の接着剤である。これにより、溶剤を必要とせずに、環境にも優しい。しかも、室内使用の制限が少なく、管理も行い易い。
【0030】
接着剤7は、粘度が10000〜130000mPa・sの範囲であり、チクソ性が1.8以上の範囲である。立毛層6の裏面側に接着剤7を塗布するに当たり、接着剤7の塗布作業を容易に行うことができる粘度及びチクソ性を有するので、施工性の向上を図ることができる。粘度については、施工性の観点から、20000〜100000mPa・sの範囲がより好ましく、30000〜80000mPa・sの範囲が最適な範囲となっている。また、チクソ性については、施工性の観点から、2.0以上がより好ましく、2.5以上が最適な範囲となっている。
【0031】
粘度、及び、チクソ性については、JISK7117に準拠して測定している。
【0032】
図3に示すように、粘度及びチクソ性(TI値)について試験実験を行い、流動性及びクシ目性を評価している。ちなみに、接着剤の塗布時にクシ目コテで形成される接着剤の山と谷において、谷の部分から水分や溶剤、空気等を逃がして、接着剤を均等に被着材に馴染ませる効果があることから、流動性に加えて、クシ目を保持できるかのクシ目性を評価している。
人工芝の施工方法としては、地面やコンクリート面等の設置対象面9上に接着剤7を塗布し、予め工場等で製造しておいた立毛層6の裏面が接着剤7を介して設置対象面9に接着される。この施工方法において、接着剤7の流動性及びクシ目性が良好であることで、接着剤7の塗布作業を容易に行うことができ、施工性の向上を図ることができる。
【0033】
この実施形態では、接着剤7として、好適な範囲を、粘度が10000〜130000mPa・sの範囲であり、チクソ性が1.8以上の範囲としている。そこで、実施例1〜3、及び、比較例1、2は、粘度及びチクソ性(TI値)の値を変更させて、流動性及びクシ目性を評価している。
【0034】
実施例1では、粘度を12200mPa・sとして好適な範囲(10000〜130000mPa・s)の下限側の値とし、チクソ性を2.0として、流動性及びクシ目性を評価している。実施例3では、粘度を107600mPa・sとして好適な範囲(10000〜130000mPa・s)の上限側の値とし、チクソ性を3.0として、流動性及びクシ目性を評価している。実施例2では、粘度を53600Pa・sとして好適な範囲(10000〜130000mPa・s)の中間側の値とし、チクソ性を4.1として、流動性及びクシ目性を評価している。
【0035】
それに対して、比較例1では、粘度を8680Pa・sとして好適な範囲(10000〜130000mPa・s)よりも小さくし、チクソ性を1.6として、流動性及びクシ目性を評価している。また、比較例2では、粘度を136900Pa・sとして好適な範囲(10000〜130000mPa・s)よりも大きくし、チクソ性を5.0として、流動性及びクシ目性を評価している。
【0036】
流動性については、徳利缶に接着剤を充填して、23℃の条件下で、徳利缶から接着剤がどのように出てくるかに応じて、下記のように、〇、△、×の3段階で評価している。
〇:流動性が良好である。
△:缶から出るのに5秒以上要するが流動性はある。
×:流動性が無く、缶から出てこない。
【0037】
クシ目性については、モルタル試験片に、クシ目間隔8mm、クシ目の高さ4mmのクシ目コテで接着剤を塗布し、23℃の条件下で、クシ目を保持できるか否かに応じて、下記のように、〇、△、×の3段階で評価している。
〇:クシ目が良好に保持できる。
△:多少のダレはあるがクシ目を保持できる。
×:ダレが発生して隣のクシ目と接触する。
【0038】
図3に示すように、粘度について、好適な範囲(10000〜130000mPa・s)の下限側である実施例1では、クシ目性が△の評価であるものの、好適な範囲よりも小さい値の比較例1では、クシ目性が×の評価となっている。また、好適な範囲(10000〜130000mPa・s)の上限側である実施例3では、流動性が△の評価であるものの、好適な範囲よりも大きい値の比較例2では、流動性が×の評価となっている。これにより、粘度及びチクソ性(TI値)について、粘度が10000〜130000mPa・sの範囲であり、チクソ性が1.8以上の範囲とすることで、良好な流動性及びクシ目性を得られることが確認できた。
【0039】
接着剤7は、基材の樹脂にイオン導電性材料、充填剤、硬化促進剤、必要に応じて希釈剤、添加剤を添加して生成されている。基材としては、例えば、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを用いており、他に、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩ビ樹脂、UV硬化樹脂等の硬化性樹脂組成物を適用することができる。イオン導電性材料は、例えば、リチウム塩を用いており、他に、4級アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等を適用することができる。
【0040】
接着剤7は、基材に対するイオン導電性材料の重量部数割合を、1〜10重量部の範囲とすることができる。これにより、接着剤7は、有用な帯電防止性を有する。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、
図1に示すように、バッキング材5を有する立毛層6を例示したが、バッキング材5を備えずに立毛層6を構成することもできる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。