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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-50515(P2021-50515A)
(43)【公開日】2021年4月1日
(54)【発明の名称】被膜積層体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20210305BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20210305BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20210305BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210305BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210305BHJP
【FI】
   E04F13/02 A
   E04F13/08 A
   B32B7/02
   B32B27/00 101
   B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-173723(P2019-173723)
(22)【出願日】2019年9月25日
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理人
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA15
2E110AA65
2E110AB02
2E110AB04
2E110AB06
2E110AB22
2E110DC36
2E110GB16X
2E110GB23X
2E110GB26X
2E110GB29X
2E110GB42W
2E110GB44W
2E110GB45W
2E110GB46W
2E110GB62X
4F100AA01A
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK52B
4F100BA02
4F100CA02B
4F100DE01A
4F100EH61B
4F100GB07
4F100JA05B
4F100JB04B
4F100JB12A
4F100JB12B
4F100JD04
4F100JD04A
4F100JL06
4F100JN01B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透湿性、汚染防止性等を兼ね備えた被膜積層体を提供する。
【解決手段】1.透湿性材料の表面に透明被膜を有する被膜積層体であって、上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂を含み、被膜の水に対する接触角が60〜110°である組成物によって形成されてなることを特徴とする被膜積層体。2.上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂、及び架橋剤を含む組成物によって形成されてなることを特徴とする1.記載の被膜積層体。3.上記透明被膜における樹脂がアクリルシリコン樹脂を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被膜積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性材料の表面に透明被膜を有する被膜積層体であって、
上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂を含み、被膜の水に対する接触角が60〜110°である組成物によって形成されてなる
ことを特徴とする被膜積層体。
【請求項2】
上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂、及び架橋剤を含む組成物によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載の被膜積層体。
【請求項3】
上記透明被膜における樹脂がアクリルシリコン樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の被膜積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜積層体に関する。本発明被膜積層体は、建築物、土木構造物等の外皮(例えば外装面等)を構成するものとして好ましく適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の外皮(例えば外装面等)を構成する材料として、透湿性を有するものが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
このような材料によれば、その裏面(基材側)で生じた水蒸気を表面側(外側)に排出することができ、材料自身の膨れ、&#21085;れ等を抑制することができる。しかし、特許文献1記載の材料の表面には、汚染物質が付着しやすく、当初の美観性が損なわれるおそれがある。
【0004】
一方、特許文献2には、建材に汚染防止機能を付与するため、その表面に親水性透明被膜を設けることが記載されている。上記特許文献1の材料の表面に、このような親水性透明被膜を設けることにより、透湿性材料の外観を活かしつつ、汚染物質付着抑制の効果を付与することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−119272号公報
【特許文献2】特開2009−136727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のような透湿性材料は、その表面ないし内部に微細な孔が存在することによって、透湿性が付与されていることが多い。このような材料の表面に親水性透明被膜が存在すると、汚染の原因物質が微細な孔にしみ込みやすく、却って汚染の進行を助長してしまい、透湿性材料の美観性が損なわれるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、透湿性、汚染防止性等を兼ね備えた被膜積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、透湿性材料の表面に特定の透明被膜を有する被膜積層体に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.透湿性材料の表面に透明被膜を有する被膜積層体であって、
上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂を含み、被膜の水に対する接触角が60〜110°である組成物によって形成されてなる
ことを特徴とする被膜積層体。
2.上記透明被膜は、ガラス転移温度が30〜80℃である樹脂、及び架橋剤を含む組成物によって形成されてなることを特徴とする1.記載の被膜積層体。
3.上記透明被膜における樹脂がアクリルシリコン樹脂を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被膜積層体。
【0010】
本発明の被膜積層体は、透湿性、汚染防止性等において優れた性能を発揮することができ、当初の美観性を長期にわたり保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
本発明被膜積層体は、透湿性材料の表面に、特定の透明被膜を有するものである。このような被膜積層体は、建築物、土木構造物等の外皮を構成するものであることが望ましい。ここに言う外皮は、例えば、建築物、土木構造物等の外装面であり、屋外環境に晒され、降雨、日射、外気等の影響を受ける部位(例えば、壁面、屋根、軒、屋上、扉、柱、基礎梁等)である。
【0013】
透湿性材料としては、水蒸気が通過可能な性質を有する材料を使用することができる。具体的に、透湿性材料としては、例えば、コンクリート、モルタル、木材等の透湿性基材、軽量気泡コンクリート板、石膏ボード、スレート板、ケイカル板、木毛セメント板、窯業系サイディング板、合板、発泡フォーム板等の透湿性ボード、あるいは、各種透湿性シート、透湿性塗膜等が挙げられる。透湿性シートや透湿性塗膜としては、例えば、漆喰状、土壁状、石材状、砂岩状、木材状等の外観を呈する透湿性材料等が使用できる。これらは、1種または2種以上で使用でき、例えば、透湿性基材及び/または透湿性ボードの上に、透湿性シート及び/または透湿性塗膜が積層されたもの等であってもよい。
【0014】
本発明における透明被膜は、上記透湿性材料の表面側を覆うものである。透明被膜は、ガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)が30〜80℃である樹脂を含み、被膜の水に対する接触角が60〜110°である組成物(以下「透明被膜用組成物」ともいう)によって形成できる。このような組成物によって形成される透明被膜は、透湿性材料の美観性を活かすとともに、汚染防止性等の向上化に寄与するものである。
【0015】
透明被膜用組成物は、ガラス転移温度が30〜80℃(好ましくは35〜75℃、より好ましくは40〜70℃)である樹脂を含む。Tgが上記下限値以上であることにより、汚染防止性を高めることができる。また、Tgが上記上限値以下であることにより、汚染防止性を高めつつ、透明被膜の割れ等を防止することができ、透湿性材料の美観性を長期にわたり保つことが可能となる。
【0016】
そして、透明被膜用組成物は、水に対する接触角が60〜110°(好ましくは70〜105°、より好ましくは75〜100°)である被膜を形成するものである。この接触角が、上記下限値以上であることにより、汚染物質のしみ込みを抑制し、汚染防止性を高めることができる。接触角が上記上限値以下であることにより、降雨等による筋状汚染を抑制することができる。なお、接触角は、透明被膜用組成物によって形成された被膜の表面に水滴を滴下したとき、その水滴と被膜表面とのなす角度のことであり、接触角計により測定される値である。
【0017】
透明被膜用組成物における樹脂としては、その被膜が透明性を有するものが使用できる。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられ、この中でも水分散型樹脂(樹脂エマルション)が好適である。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0018】
水分散型樹脂の平均粒子径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは30〜130nm、さらに好ましくは40〜100nmである。このような平均粒子径を有する水分散型樹脂は、汚染防止性、透湿性の向上化等の点で好適である。なお、水分散型樹脂の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される値である。
【0019】
透明被膜用組成物は、上述のような樹脂に加え、架橋剤を含むことが望ましい。このような態様では、反応性官能基を有する樹脂と、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を含む透明被膜用組成物を使用することができる。この場合、樹脂と架橋剤との反応によって、3次元架橋構造を有する被膜が形成され、汚染防止性、透湿性等の物性を高めることが可能となる。架橋剤としては、水分散型樹脂に適用できるものが好ましく、例えば、水溶性架橋剤、水分散型架橋剤、自己乳化型架橋剤等が好適である。
【0020】
反応性官能基を有する樹脂としては、例えば、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、ヒドラジド基、エポキシ基、アミノ基、及びアルコキシシリル基等から選ばれる1種以上の反応性官能基を有するものが使用できる。架橋剤としては、このような樹脂の反応性官能基と反応可能なものを組み合わせて使用すればよい。反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とアジリジン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0021】
透明被膜用組成物における樹脂がカルボキシル基を有する場合、架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等から選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物が使用できる。このうち、カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば、特開平10−60272号公報、特開平10−316930号公報、特開平11−60667号公報、特開2000−7642号公報、特開2000−119539号公報、特開2000−319351号公報、特開2013−112755号公報、特開2016−196612号公報、特開2016−196613号公報、WO2017/6950号公報等に記載のもの等が挙げられる。エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物を、当該化合物と共重合可能な単量体と共重合した樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0022】
透明被膜用組成物における樹脂がカルボニル基を有する場合、架橋剤としては、例えば、ヒドラジド基を有する化合物等が使用できる。ヒドラジド基を有する架橋剤としては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0023】
架橋剤の比率は、透明被膜用組成物に含まれる樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは0.05〜50重量部、より好ましくは0.1〜20重量部である。このような比率であれば、透湿性と汚染防止性の両性能を十分に高めることができる。
【0024】
透明被膜用組成物における樹脂としては、透湿性、汚染防止性等の点から、アクリルシリコン樹脂を含むものが好適である。アクリルシリコン樹脂としては、例えば、
(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び反応性シリル基含有モノマーを含むモノマー群を共重合して得られる合成樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びに、反応性シリル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを含むモノマー群を共重合した樹脂に、シリコン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
(3)アクリル樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させて得られる合成樹脂、
(4)アクリル樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させ、さらにシリコン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
等が挙げられる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物である。アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群を重合して得られる合成樹脂である。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t−ペンチル、(メタ)アクリル酸1−エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸3−メチルブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0026】
反応性シリル基は、珪素原子に、例えばアルコキシル基、水酸基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等から選ばれる1種以上が結合したものである。この中でも、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基、珪素原子に水酸基が結合したシラノール基から選ばれる1種以上が好適である。
【0027】
上記(1)、(2)における反応性シリル基含有モノマーは、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0028】
上記(2)における水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0029】
上記(2)におけるカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0030】
上記(2)、(4)におけるシリコン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に1個以上有するもの(重合性二重結合を有するものを除く)が用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、シリコン化合物として、シロキサン化合物を使用することもできる。シロキサン化合物としては、例えば、環状シロキサン化合物、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物等、及びこれらの誘導体が挙げられる。このうち環状シロキサン化合物としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0031】
上記(3)、(4)における官能基の組み合わせとしては、例えば、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シラン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0032】
上記(1)〜(4)においては、上記以外の成分、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0033】
透明被膜用組成物は、このようなアクリルシリコン樹脂に加え、架橋剤を含む態様とすることもできる。この場合、樹脂としては、反応性官能基を有するアクリルシリコン樹脂を使用し、架橋剤としては、当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を使用すればよい。好適な反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0034】
本発明における透明被膜用組成物は、界面活性剤を含むことができる。このような態様では、透湿性と汚染防止性の両性能を、よりいっそう高めることができる。その作用機構は明らかではないが、透湿性材料の微細な孔が、透明被膜用組成物によって充填されやすくなり、汚染物質のしみ込み抑制に有効にはたらくこと、そして、このように充填された微細な孔では、界面活性剤の適度な親水性によって透湿性が付与されること、等が寄与しているものと推定される。
【0035】
このような界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを併せ持つ構造を有する化合物等を用いることができ、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。このような界面活性剤としては、例えば、分子内にシリコン及び/またはフッ素を有する化合物等を使用することもできる。
【0036】
界面活性剤の比率は、透明被膜用組成物に含まれる樹脂の樹脂固形分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.02〜2重量部である。このような比率であれば、透湿性と汚染防止性の両性能を十分に高めることができる。
【0037】
透明被膜用組成物は、上述の成分の他に、例えば、艶消し剤、着色顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料、骨材、繊維、可塑剤、造膜助剤、防藻剤、抗菌剤、消臭剤、吸着剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、触媒、溶剤、水等を含むものであってもよい。透明被膜用組成物が着色顔料を含む場合は、着色透明被膜が形成できる。光触媒酸化チタン、コロイダルシリカ等については、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で使用するよう留意する必要があり、これらを使用しない態様も好適である。
【0038】
本発明の被膜積層体は、透湿性材料に対し、このような透明被膜用組成物を塗装することにより得ることができる。このような塗装工程は、現場塗装、あるいは工場塗装等にて行うことができる。
【0039】
現場塗装を行う場合は、建築物、土木構造物等の現場に設置された透湿性材料に対し、透明被膜用組成物の塗装を公知の器具(例えば、スプレー、ローラー、刷毛等)を用いて行い、常温にて(必要に応じ加熱して)乾燥することによって、被膜積層体を得ることができる。
【0040】
工場塗装を行う場合は、透湿性材料に対する透明被膜用組成物の塗装を工場内にて行うことによって、被膜積層体が得られる。工場内での透明被膜用組成物の塗装は、公知の器具(例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コーター等)を用いて行い、その乾燥は、常温ないし加熱環境下で行えばよい。このような方法で得られた被膜積層体は、建築物、土木構造物等の現場に搬入し、その外皮を構成するように設置することができる。
【0041】
本発明において、透明被膜用組成物によって形成される透明被膜は、透湿性材料の表面全体に設けることが望ましい。透明被膜の単位面積当たりの重量(固形分換算)は、好ましくは5〜200g/m、より好ましくは10〜100g/mである。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0043】
(透明被膜用組成物1)
樹脂1(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg66℃、平均粒子径90nm、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(含フッ素両性界面活性剤、固形分30重量%)0.2重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物1を得た。この透明被膜用組成物1の水に対する接触角は82°であった。なお、水に対する接触角は、透明被膜用組成物をアルミニウム板の上に150μmの厚みで塗付け、気温23℃、相対湿度50%の雰囲気下(以下「標準状態」ともいう)にて14日間乾燥養生して得られた試験体について、接触角計を用いて測定した値である(以下同様)。
【0044】
(透明被膜用組成物2)
樹脂1(同上)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、架橋剤(カルボジイミド基含有架橋剤、固形分40重量%)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物2を得た。この透明被膜用組成物2の水に対する接触角は84°であった。
【0045】
(透明被膜用組成物3)
樹脂1(同上)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物3を得た。この透明被膜用組成物3の水に対する接触角は81°であった。
【0046】
(透明被膜用組成物4)
樹脂2(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg57℃、平均粒子径90nm、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物4を得た。この透明被膜用組成物4の水に対する接触角は82°であった。
【0047】
(透明被膜用組成物5)
樹脂3(カルボキシル基含有アクリルシリコン樹脂エマルション、Tg48℃、平均粒子径90nm、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、界面活性剤(同上)0.2重量部、架橋剤(同上)10重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物5を得た。この透明被膜用組成物5の水に対する接触角は84°であった。
【0048】
(透明被膜用組成物6)
樹脂4(アクリル樹脂エマルション、Tg28℃、平均粒子径90nm、固形分50重量%)200重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物6を得た。この透明被膜用組成物6の水に対する接触角は86°であった。
【0049】
(透明被膜用組成物7)
樹脂5(コロイダルシリカ複合エマルション、平均粒子径120nm、固形分40重量%)250重量部、造膜助剤18重量部、界面活性剤(同上)4重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物7を得た。この透明被膜用組成物7の水に対する接触角は38°であった。
【0050】
(透明被膜用組成物8)
樹脂6(アクリル樹脂エマルション、Tg48℃、平均粒子径90nm、固形分50重量%)200重量部、撥水剤(ジメチルシロキサン化合物、固形分50重量%)50重量部、造膜助剤18重量部、水20重量部、その他添加剤(紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤等)4重量部を常法により均一に混合して、透明被膜用組成物8を得た。この透明被膜用組成物8の水に対する接触角は116°であった。
【0051】
(実施例1)
透湿性シート(無機質粒子、樹脂等を主成分とする砂岩状の硬化物。厚み2mm。)の表面全体に、透明被膜用組成物として透明被膜用組成物1をスプレー塗装し、常温(23℃)で硬化させて透明被膜(単位面積当たりの固形分重量40g/m)を設け、試験体を作製した。
【0052】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
透明被膜用組成物として、透明被覆用組成物1に替えてそれぞれ表1に示すものを使用した以外は、実施例1と同様の方法で試験体を作製した。
【0053】
(試験1)
上記方法によって得られた各試験体について、JIS Z0208による透湿度を測定した。試験結果を表1に示す。
【0054】
(試験2)
上記方法によって得られた各試験体について、6か月間屋外曝露を行い、試験体表面の外観変化を観察し、汚れの程度が軽微であったものを「A」とする4段階(優;A>B>C>D;劣)で評価した。試験結果を表1に示す。
【0055】
【表1】