【解決手段】本開示に係るガス分析装置100は、分析対象ガスを分岐する分岐部20と、分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行う質量分析部80と、分岐された他方の分析対象ガスを保持するトラップ部60と、保持された他方の分析対象ガスを分析するガスクロマトグラフ70と、一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスの流路を制御する制御部50とを備え、分岐部20は、熱分析装置による熱分析が行われている間、供給される該分析対象ガスを常時分岐して一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスを排出し、熱分析が終了すると、保持された他方の分析対象ガスがガスクロマトグラフ70に供給されることを特徴とする。
前記制御部による、前記一方の分析対象ガス及び前記他方の分析対象ガスの流路制御は、前記制御部が10ポートバルブを制御することによって実行される、請求項1又は2に記載のガス分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1のダイレクトモード及び特許文献1のトラップモードをTGの場合について説明すると、従来、TG−MSとTG−GC/MSは、別測定として行う必要があり、双方を1回の測定で行うことはできなかった。また、TGとMSとの接続、及びTGとGC/MSとの接続は、測定モードが変わるごとに接続し直さなければならなかった。
【0008】
上述の問題に対して、例えば非特許文献2には、TG−MSによるダイレクトモードでの測定と、TG−GC/MSによるトラップモードでの測定をコックにより切り替えて行う構成が開示されている。しかし、ガスクロマトグラフはパックドカラム形式のものであり、近年主流となっているガス分離に優れたキャピラリーカラムを使用したガスクロマトグラフには対応できない。
【0009】
また、特許文献2には、TG−MSによるダイレクトモードと、TG−GC/MSによるトラップモードを1回の測定で行い、接続の切り替えをバルブで行うガス分析装置が開示されている。しかし、熱分析装置からの発生ガスの流路を、熱分析中に質量分析装置側とトラップ装置側との間で切り替えなければならず、改良の余地があった。
【0010】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、複雑な制御を行うことなく、ダイレクトモードとトラップモードでの測定が可能なガス分析装置、及びガス分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本開示に係るガス分析装置は、
熱分析装置から供給される分析対象ガスを分析するガス分析装置であって、
前記分析対象ガスを分岐する分岐部と、
分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行う質量分析部と、
分岐された他方の分析対象ガスを保持するトラップ部と、
保持された前記他方の分析対象ガスを分析するガスクロマトグラフと、
前記一方の分析対象ガス及び前記他方の分析対象ガスの流路を制御する制御部と
を備え、
前記分岐部は、前記熱分析装置による熱分析が行われている間、供給される該分析対象ガスを常時分岐して前記一方の分析対象ガス及び前記他方の分析対象ガスを排出し、
前記熱分析が終了すると、保持された前記他方の分析対象ガスが前記ガスクロマトグラフに供給されることを特徴とする。
【0012】
また、本開示に係るガス分析装置は、上記構成において、前記制御部は、前記熱分析が行われている間、前記分岐部を通過した前記一方の分析対象ガスが前記質量分析部に供給され、前記分岐部を通過した前記他方の分析対象ガスが前記トラップ部に供給され、キャリアガスが前記ガスクロマトグラフに供給されるように制御し、前記熱分析が終了すると、前記トラップ部内の前記他方の分析対象ガスが前記ガスクロマトグラフ及び前記質量分析部に供給されるように制御することが好ましい。
【0013】
また、本開示に係るガス分析装置は、上記構成において、前記制御部による、前記一方の分析対象ガス及び前記他方の分析対象ガスの流路制御は、前記制御部が10ポートバルブを制御することによって実行されることが好ましい。
【0014】
また、本開示に係るガス分析装置は、上記構成において、前記分析対象ガスは、前記熱分析装置内で分岐されていることが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本開示に係るガス分析方法は、
熱分析装置から供給される分析対象ガスを分析するガス分析方法であって、
前記熱分析装置による熱分析が行われている間、該熱分析装置から供給される該分析対象ガスを常時分岐するステップと、
前記熱分析が行われている間、分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行うステップと、
前記熱分析が行われている間、分岐された他方の分析対象ガスを保持するステップと、
前記熱分析が終了した後、保持された前記他方の分析対象ガスに対してガスクロマトグラフィ及び質量分析を行うステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、複雑な制御を行うことなく、ダイレクトモードとトラップモードでの測定が可能なガス分析装置、及びガス分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス分析装置100の構成を示す図である。本実施形態に係るガス分析装置100は、TG装置10等の熱分析装置において熱分析によって発生した分析対象ガスを分岐する分岐部20と、分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行う質量分析部80と、分岐された他方の分析対象ガスを保持するトラップ部60と、トラップ部60で保持された他方の分析対象ガスを分離/分析するガスクロマトグラフ70と、一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスの流路を制御する10ポートバルブ30と、10ポートバルブ30、トラップ部60、ガスクロマトグラフ70及び質量分析部80等の制御を行う制御部50とを備えている。ここでいう制御とは、例えばガスクロマトグラフ70及び質量分析部80に測定トリガを送信する場合を含むものとする。
【0020】
なお、
図1において制御部50から他の機能部に延びる破線は、各種制御信号の流れを示している。各制御信号は、有線で送受信されてもよいし、無線で送受信されるようにしてもよい。
【0021】
TG装置10は、試料の温度を変化させながら、重量変化を定量化する熱重量測定を行う装置である。TG装置10は、
図2に示すように、試料容器11に載せられた試料と、試料容器12に載せられた参照物質とを加熱炉14内でヒータ15により加熱し、試料と参照物質の重量差を電磁式電子天秤で測定することで試料温度と試料の重量変化を測定する。加熱炉14の上端部には、排気口16が設けられており、加熱によって試料から発生した分析対象ガスは、この排気口16からガス分析装置100に供給される。
【0022】
なお、本実施形態では、ガス分析装置100にはTG装置10を含めないものとして記載しているが、ガス分析装置100はTG装置10を含めたシステムとして構成してもよい。
【0023】
TG装置10において熱分析中に発生した分析対象ガスは、
図1及び
図2に示すように、ガス分析装置100に備えられた分岐部20に供給される。分岐部20は、TG装置10からの分析対象ガスを一方の分析対象ガス(
図4に太い実線で示す)と、他方の分析対象ガス(
図4に太い破線で示す)とに分岐する。
【0024】
図2に、分岐部20の構成の一例を示す。分岐部20は、TG装置10から供給された分析対象ガスを受け入れると共に所定の温度で加熱する加熱アダプタ21と、分析対象ガスを質量分析部80等に送るSUS細管23を加熱する加熱トランスファーチューブ24と、分析対象ガスを質量分析部80側とトラップ部60側とに分岐する三方ジョイント25とを備えている。三方ジョイント25で分岐された分析対象ガスは、キャピラリーチューブ27経由で質量分析部80側に送られると共に、更なるSUS細管26経由でトラップ部60側に送られる。
【0025】
加熱アダプタ21は、TG装置10からの分析対象ガスを所定温度で加熱する。加熱アダプタ21における分析対象ガスの流入口21bと対向する側には、分析対象ガスを三方ジョイント25に送るSUS細管23がフェラル22によって取り付けられている。SUS細管23は加熱トランスファーチューブ24によって覆われており、これによって、SUS細管23内を通る分析対象ガスを加熱することができる。加熱アダプタ21には、
図2に示すように排出口21aが設けられており、SUS細管23によって吸引されなかった分析対象ガスが排出口21aから排出される。
【0026】
SUS細管23の他端は、
図2に示すように、三方ジョイント25に連結されている。三方ジョイント25に流入した分析対象ガスの一部は、キャピラリーチューブ27を経由して10ポートバルブ30のポートaに供給される(
図1参照)。また、三方ジョイント25に流入した分析対象ガスの他の一部は、更なるSUS細管26を経由して10ポートバルブ30のポートeに供給される。10ポートバルブ30のポートe−f、トラップ部60及び10ポートバルブ30のポートi−jを接続し、その先に更にダイヤフラムポンプやロータリーポンプ等の吸引ポンプ(図示せず)を接続すると、分岐部20からトラップ部60への吸引がより積極的に行われるため望ましい。更には前記吸引ポンプと10ポートバルブ30のポートjとの間にニードルバルブ又はマスフローコントローラ(図示せず)を配置すると、トラップ部60への吸引ガス量を制御でき、分析対象ガスのトラップ部60への適切な量の導入が制御できるため更に望ましい。三方ジョイント25はオーブン28内に配置されており、分析対象ガスが分岐される際に凝縮しないような温度に設定されている。
【0027】
本実施形態では、上述のように、他方の分析対象ガスは更なるSUS細管26を通してトラップ部60に供給されている。他方の分析対象ガスは、吸引ポンプ、マスフローコントローラにより積極的に吸引制御されてトラップ部60に供給されている。なお、SUS細管26に内径が大きい配管を用いると共に、吸引ポンプ及びマスフローコントローラを設けない構成としてもよい。また、質量分析部80にキャピラリーチューブ27経由で供給される一方の分析対象ガスは、上述のトラップ吸引経路とは独立に質量分析部80により吸引される。そして、質量分析部80及びトラップ部60に吸引されなかった残りの分析対象ガス及びTG装置10からのキャリアガスは排出口21aから外部に排出される。このように、TG装置10から排出される分析対象ガスは、質量分析経路、トラップ経路及び外部排出経路へと自然に分岐されるように構成されている。
【0028】
従って、TG装置10内に導入されるキャリアガスは、種類、流量、ガス圧等を、分析対象ガスとは全く独立に設定することができる。従って、TG装置10における熱分析は、ガス分析装置100との接続を行わない場合と同じ条件で測定することが可能となる。
【0029】
更に、トラップ吸引経路に取り込まれる分析対象ガスは、マスフローコントローラ等によって流量制御することにより、分析対象ガスの希釈や増量を制御することができる。
【0030】
キャピラリーチューブ27は、例えば内径0.2mmから0.5mm程度の毛細管であり、端部の圧力差によって、一方の分析対象ガスを移送可能である。本実施形態では、TG装置10の加熱炉14内が大気圧に近い圧力であるのに対し、質量分析部80のイオン化装置は高真空とされているので、その圧力差によって、加熱炉14からの一方の分析対象ガスを質量分析部80に供給することができる。キャピラリーチューブ27には、例えば、溶融石英キャピラリーチューブや内面不活性処理済みのSUSキャピラリーチューブを用いることができる。なお、一方の分析対象ガスは、必ずしもキャピラリーチューブ27のみによって質量分析部80に送られる必要はなく、例えば
図1に示すようにバルブ等を介して質量分析部80と連結されていてもよい。
【0031】
SUS細管23及び更なるSUS細管26は、例えば、外径が約1/16インチ又は1/8インチのSUS製の配管である。しかし、この態様には限定されず、分析対象ガスの流量、成分等に応じて他の外径及び材質を適宜選択可能である。また、SUS細管23及び更なるSUS細管26は、異なる外径又は内径を備えていてもよい。
【0032】
10ポートバルブ30は、
図1に示すように10個の入出力ポートaからjを備えるバルブであり、制御部50によって制御されて各ポートaからjの間の連通/非連通の切り替えを行う。
図1において、ポートaとポートb、ポートcとポートd、ポートeとポートf、ポートgとポートh、ポートiとポートjを接続する実線は、三方ジョイント25から送出される一方の分析対象ガスを質量分析部80に供給して質量分析を行わせると共に、三方ジョイント25から送出される他方の分析対象ガスをトラップ部60に供給して保持させる、ダイレクトモードにおける10ポートバルブ30内の接続状態を示している。また、ポートbとポートc、ポートdとポートe、ポートfとポートg、ポートhとポートi、ポートjとポートaを接続する破線は、TG装置10による熱分析が終了した後に、トラップ部60内に保持された他方の分析対象ガスをガスクロマトグラフ70に供給してガスクロマトグラフィを行い、更にその後質量分析部80において質量分析を行う、トラップモードにおける10ポートバルブ30内の接続状態を示している。制御部50は、TG装置10から情報を取得し、TG装置10が熱分析をおこなっているか否かに応じて10ポートバルブ30の接続を切り替え制御する。
【0033】
制御部50は、10ポートバルブ30、トラップ部60、ガスクロマトグラフ70及び質量分析部80等の制御を行う。制御部50は、マイクロコンピュータを有しており、入出力インターフェイス、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random-Access Memory)およびROM(Read-Only Memory)等を備えている。CPUは、制御プログラムを実行することができる。RAMは、例えばプログラムの実行に必要な変数や演算結果を一時的に記憶することができる。ROMは、例えば制御プログラムを記憶することができる。
【0034】
トラップ部60は、TG装置10が熱分析を行っている間、三方ジョイント25から更なるSUS細管26を経由して送られてきた他方の分析対象ガスを保持する。三方ジョイント25からの分析対象ガスは、マスフローコントローラ及びダイヤフラムポンプにより流量制御されてトラップ部60に供給される。トラップ部60は、供給された他方の分析対象ガスを液化窒素等により冷却して保持する。トラップ部60は、また、TG装置10が熱分析を終了したとき、保持したガスを瞬時に加熱してガスクロマトグラフ70に送出するためのヒータを備えている。
【0035】
ガスクロマトグラフ70は、トラップ部60からキャリアガス(He)によって運ばれてきた他方の分析対象ガスを気化させるオーブンと、分析対象ガスを各化合物に分離するためのキャピラリーカラムと、分離された各化合物を検出する検出器を備えている。オーブンは、ガスクロマトグラフィを行う際、キャピラリーカラムを40℃から300℃まで概ね一定速度で温度上昇させる。
【0036】
質量分析部80は、ダイレクトモードにおいて三方ジョイント25から直接供給された一方の分析対象ガス、又はガスクロマトグラフィを行った後の他方の分析対象ガスの質量分析を行う。質量分析部80は、供給された分析対象ガスをイオン化するイオン化装置と、電場を形成する電極と、イオン検知器とを備えている。
【0037】
次に、
図1に示すガス分析装置100を用いて、本実施形態に係るガス分析方法を実行する手順について
図3から
図5等を用いて説明する。
【0038】
まず、ガス分析装置100の制御部50は、TG装置10と通信を行い、TG装置10が熱分析(熱重量測定)を実行中であるか否かを判定する(ステップS101)。この判定は、例えば制御部50がTG装置10とシリアル通信を行い、TG装置10の現在の状態を取得することによって行う。制御部50は、ステップS101において、TG装置10から熱分析終了のトリガ信号を受け取るまでは、熱分析を実行中であると判断(ステップS101で「Yes」と判断)して、ダイレクトモードを継続させるようにしてもよい。
【0039】
制御部50は、ステップS101においてTG装置10が熱分析を実行中であると判定すると(ステップS101で「Yes」の場合)、ダイレクトモードの状態を継続する制御を行う。制御部50は、例えば、TG装置10から熱分析終了のトリガ信号を受け取っていないとき、熱分析を実行中である(ステップS101で「Yes」)と判断する。制御部50は、TG装置10の加熱炉14から排出された分析対象ガスを分岐部20において分岐させる(ステップS103)。この分析対象ガスの分岐は、例えば、制御部50がTG装置10にキャリアガスを供給して、TG装置10からの分析対象ガスがガス分析装置100側に流れるように制御することによって行うことができる。
【0040】
この分岐部20における分析対象ガスの分岐は、
図2に示すように、SUS細管23内を通って供給された分析対象ガスが、三方ジョイント25によって、質量分析部80に供給される流路と、トラップ部60に供給される流路に分けられることによって実現されている。つまり、本実施形態では、供給される分析対象ガスは分岐部20で常時分岐されて一方の分析対象ガスと他方の分析対象ガスとに分けられて排出されている。従って、TG装置10からの発生ガスの流路を、熱分析中に質量分析部80側とトラップ部60側との間で切り替える必要がない。これらの点において、本実施形態に係るガス分析装置100は、熱分析中に質量分析装置側とガストラップ装置側に交互に切り替えられてガスが不連続に供給される特許文献2とは構成が大きく異なっている。
【0041】
ダイレクトモードでは、10ポートバルブ30が
図4に示す状態に設定されており、分岐部20と質量分析部80は、キャピラリーチューブ27並びに10ポートバルブ30のポートa及びポートbを介して直結されるため、分岐された一方の分析対象ガスがダイレクトに質量分析部80に導入され、質量分析が行われる(ステップS105)。
図4には、一方の分析対象ガスの流れを太い実線で示す。なお、TG装置10における熱分析と質量分析部80における質量分析との同期は、装置同士で直接行わせるようにしてもよい。
【0042】
ダイレクトモードでは同時に、分岐部20において分岐した分析対象ガスのうちの他方の分析対象ガスは、10ポートバルブ30のポートe,fを介してトラップ部60で保持される(ステップS107)。また、制御部50は、トラップ部60に供給された他方の分析対象ガスを液化窒素で冷却する。
図4には、他方の分析対象ガスの流れを太い破線で示している。
【0043】
なお、
図3に示すフローチャートでは、ステップS105の次にステップS107を実行するように記載されているが、ステップS103からステップS107は並行して実行させることが好ましい。特に、10ポートバルブ30の制御は、ステップS105とステップS107に必要な切り替えを同時に行うことが好ましい。
【0044】
更にダイレクトモードでは同時に、
図4に示すように、ポートgとポートhを流体連結させ、ポートhに流入させたHeガスをポートgから流出させて、SUS細管及びガスクロマトグラフ70のインジェクションポート経由でキャピラリーカラムに導入する。
【0045】
ダイレクトモードでは、TG装置10の熱分析測定が終了するまでは、ポートcとポートd、並びにポートiとポートjをそれぞれ流体連結させる。これによって、トラップ部60及びガスクロマトグラフ70の一端が大気開放される。
【0046】
他方、制御部50は、ステップS101においてTG装置10が熱分析を実行中ではないと判定すると(ステップS101で「No」の場合)、トラップモードにおける制御を行う。制御部50は、例えば、TG装置10から測定終了のトリガ信号を受け取ると、ステップS101において、TG装置10が熱分析を実行中ではない(ステップS101で「No」)と判定する。制御部50は、保持された他方の分析対象ガスに対してガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)を実施する(ステップS109)。このステップS109の実行は、
図5に示すように、制御部50が10ポートバルブ30を制御し、ポートfとポートg、ポートhとポートiを流体連結することにより行われる。このとき、制御部50は、トラップ部60内の保持されている他方の分析対象ガスをヒータで加熱する。これによって、ポートhに流入したHeガスがポートiから流出してトラップ部60に供給されるため、トラップ部60内の他方の分析対象ガスは、ヒータによって加熱されると共にHeガスによって移送され、ポートf及びポートgを経由してガスクロマトグラフ70のインジェクションポートに供給される。制御部50は、同時にガスクロマトグラフ70に測定開始のトリガ信号を出力して、GC/MSを開始させる。
【0047】
また、GC/MSを行うトラップモードでは、
図5に示すように、10ポートバルブ30によって、ポートbとポートcが流体連結されるため、ガスクロマトグラフ70と質量分析部80が直結してGC/MSが実施される。
図5には、他方の分析対象ガスの流れを太い破線で示している。
【0048】
GC/MSを行うトラップモードでは、更にポートdとポートe、並びにポートjとポートaがそれぞれ流体連結される。これによって、分岐部20からのキャピラリーチューブ27及び更なるSUS細管26の一端が大気開放される。
【0049】
このように、10ポートバルブ30を採用することによって、制御部50は、10ポートバルブ30を1回切り替えるだけの簡単な制御によって、ダイレクトモードによる質量分析(MS)と、保持された分析対象ガスのGC/MSとを切り替えることができる。また、ダイレクトモードによる質量分析を行っている間に、ガスクロマトグラフ70のキャピラリーカラムにキャリアガスとしてのHeガスを連続して供給することができる。従って、キャピラリーカラムの劣化を防ぐと共に、ダイレクトモードの後に行われるGC/MSの際にキャピラリーカラムの状態が安定しているので、すぐにGC/MSを開始することができる。
【0050】
本実施形態では、10ポートバルブ30を使用しているが、複数の4ポート,6ポート,又は8ポートバルブ等を組み合わせて、各ポートバルブを同時に切り替えることで同様なシステムが得られるのは明らかである。また、12ポート以上のポートバルブにおける10ポートのみを使用しても、同様のシステムが得られるのは言うまでもない。
【0051】
また、ダイレクトモードの終了(つまり、TG装置10の熱分析測定の終了)をトリガとして、10ポートバルブ30の切り替え、トラップ部60のヒータ制御、GC/MSの開始、GC/MSの終了、10ポートバルブ30の再切り替え(トラップモードからダイレクトモードへの再切り替え)、等を制御部50によりシーケンシャルに制御することができる。従って、熱分析/MS/トラップ(ダイレクトモード)、及びGC/MS(トラップモード)を一連の連続した自動測定として実現することができる。
【0052】
また、TG装置10においてオートサンプラを採用することによって、複数の試料に対して上述の自動測定を実現することができる。
【0053】
制御部50は、ステップS109の後、ガス分析を終了するか否かを判定し(ステップS111)、ガス分析を終了すべきであれば(ステップS111で「Yes」の場合)制御を終了する。他方、ガス分析を継続すべきであると判定すると(ステップS111で「No」の場合)、ステップS101に戻って制御を継続する。
【0054】
なお、
図2に示す分岐部20の構成はこの態様には限定されず、例えば
図6又は
図7に示す構成を採用することもできる。
【0055】
図6は、分岐部20の第1変形例である分岐部20Aを示している。第1変形例では、
図2に示す分岐部20と比較して、キャピラリーチューブ27AのTG装置10側が、三方ジョイント25内、SUS細管23内及び加熱アダプタ21内を通り、更に加熱アダプタ21の流入口21bを越えてTG装置10の加熱炉14内にまで延在している点において異なっている。すなわち、分岐部20の第1変形例では、ダイレクトモードにおいて、質量分析部80に供給される一方の分析対象ガスの流路と、トラップ部60に供給される他方の分析対象ガスの流路とが、実質的にTG装置10の加熱炉14内で分岐されている。このような構成によって、ダイレクトモードにおいて、TG装置10から質量分析部80への分析対象ガスの供給をより安定的に行うことができる。
【0056】
図7は、分岐部20の第2変形例である分岐部20Bを示している。第2変形例では、第1変形例と比較して、まず三方ジョイント25を用いていない点において異なっている。そして、第1変形例と同様に一端が加熱炉14内に配置されているキャピラリーチューブ27Bは、SUS細管23とは異なる第2のフェラル22によって加熱アダプタ21に固定され、加熱トランスファーチューブ24内におけるSUS細管23とは異なる経路を通って質量分析部80に直接分析対象ガスを供給している。すなわち、分岐部20の第2変形例においても、ダイレクトモードにおいて、質量分析部80に供給される一方の分析対象ガスの流路と、トラップ部60に供給される他方の分析対象ガスの流路とが、実質的にTG装置10の加熱炉14内で分岐されている。このような構成によって、他方の分析対象ガスの流れを妨げることなく、一方の分析対象ガスを直接質量分析部80に安定的に供給することができる。
【0057】
なお、ここでいう「分析対象ガスを直接質量分析部80に供給」とは、キャピラリーチューブの一端が質量分析部80まで延びていることを意味するものではなく、一方の分析対象ガスがトラップ部60で保持されたり、ガスクロマトグラフ70において分析されることなく質量分析部80に供給されることを意味するものである。
【0058】
以上述べたように、本実施形態は、熱分析装置(TG装置10)から供給される分析対象ガスを分析するガス分析装置100であって、分析対象ガスを分岐する分岐部20と、分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行う質量分析部80と、分岐された他方の分析対象ガスを保持するトラップ部60と、保持された他方の分析対象ガスを分析するガスクロマトグラフ70と、一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスの流路を制御する制御部50とを備え、分岐部20は、熱分析装置による熱分析が行われている間、供給される該分析対象ガスを常時分岐して一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスを排出し、熱分析が終了すると、保持された他方の分析対象ガスがガスクロマトグラフ70に供給されるように構成した。このような構成の採用によって、熱分析を行う間TG装置10から供給される分析対象ガスは分岐部20で常時連続的に分岐されて質量分析部80側とトラップ部60側に排出されるので、熱分析中に質量分析部80側とトラップ部60側との間で流路を切り替える必要がない。また、分析対象ガスが供給されている間は常に質量分析部80側とトラップ部60側に排出されるので、ダイレクトモードにおいて分析対象ガスが質量分析部80に不連続に供給されることがない。従って、ダイレクトモードにおける質量分析の精度を高めることができる。
【0059】
また、本実施形態では、制御部50は、熱分析が行われている間、分岐部20を通過した一方の分析対象ガスが質量分析部80に供給され、分岐部20を通過した他方の分析対象ガスがトラップ部60に供給され、キャリアガスがガスクロマトグラフ70に供給されるように制御し、熱分析が終了すると、トラップ部60内の他方の分析対象ガスがガスクロマトグラフ70及び質量分析部80に供給されるように制御するように構成した。このような構成の採用によって、ダイレクトモードによる質量分析を行っている間に、ガスクロマトグラフ70のキャピラリーカラムにキャリアガスとしてのHeガスを連続して供給することができる。従って、キャピラリーカラムの劣化を防ぐと共に、ダイレクトモードの後に行われるGC/MSの際にキャピラリーカラムの状態が安定しているので、すぐにGC/MSを開始することができる。
【0060】
また、本実施形態では、制御部50による、一方の分析対象ガス及び他方の分析対象ガスの流路制御は、制御部50が10ポートバルブ30を制御することによって実行されるように構成した。このような構成の採用によって、制御部50は、10ポートバルブ30を1回切り替えるだけの簡単な制御によって、ダイレクトモードによる質量分析と、保持された分析対象ガスのGC/MS(トラップモード)とを切り替えることができる。
【0061】
また、本実施形態では、分析対象ガスは、熱分析装置(TG装置10)内で分岐されるように構成した。このような構成の採用によって、ダイレクトモードにおいて、TG装置10から質量分析部80への分析対象ガスの供給をより安定的に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態に係るガス分析方法は、熱分析装置(TG装置10)から供給される分析対象ガスを分析するガス分析方法であって、熱分析装置による熱分析が行われている間、熱分析装置から供給される分析対象ガスを常時分岐するステップと、熱分析が行われている間、分岐された一方の分析対象ガスの質量分析を行うステップと、熱分析が行われている間、分岐された他方の分析対象ガスを保持するステップと、熱分析が終了した後、保持された他方の分析対象ガスに対してガスクロマトグラフィ及び質量分析を行うステップとを含むように構成した。このような構成の採用によって、TG装置10から供給される分析対象ガスは分岐部20で常時連続的に分岐されて質量分析部80側とトラップ部60側に排出されるので、熱分析中に質量分析部80側とトラップ部60側との間で流路を切り替える必要がない。また、分析対象ガスが供給されている間は常に質量分析部80側とトラップ部60側に排出されるので、ダイレクトモードにおいて分析対象ガスが質量分析部80に不連続に供給されることがない。従って、ダイレクトモードにおける質量分析の精度を高めることができる。
【0063】
本開示を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0064】
例えば、本実施形態では、熱分析装置としてTGを用いるように構成したが、この態様には限定されない。熱分析装置として、DSC,DTA,及び各種STAを用いるようにしてもよい。