【解決手段】環状の光放出部を有する光ガイド部材40と、炎が発する所定波長光を受光する複数の主検出受光素子50A、50Bと、光透過性保護カバー12と、複数の試験用光源13A、13Bとを備え、複数の主検出受光素子の受光量に基づき炎を検知する機能を有する炎感知器において、光ガイド部材の光放出部410には試験光の入射部416が設けられ、複数の試験用光源は、出射した試験光が光透過性保護カバーの複数の主検出受光素子の受光面に対向する部位を透過して入射部へ入射されるように配設される。入射部へ入射された試験光は、光ガイド部材を経由して出射部444へ誘導されて試験用受光素子14へ入射される。回路基板30は、試験用受光素子の受光量に基づき複数の主検出受光素子の受光量を補正し、補正した受光量に基づき炎を検知する。
前記光ガイド部材には、前記光放出部の前記入射部へ入射した光を前記試験用受光素子まで導く試験光誘導部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の炎感知器。
前記入射部は、前記光放出部の、前記複数の導光部のうち端部が前記主検出受光素子に対向する前記導光部よりも前記複数の導光部のうち端部が前記試験用受光素子に対向する前記導光部に近い部位に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の炎感知器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炎を検知する受光素子を備えその前方の受光窓に受光素子への埃の付着を防ぐ光透過性保護カバー(例えばサファイアガラス)を設けている炎感知器においては、光透過性保護カバーが汚損すると検知精度が低下するという問題がある。特許文献2に記載されている炎感知器においては、受光素子前方の光透過性保護カバーの汚損を検出するため、光透過性保護カバーに向けて光を照射する試験用光源を設けるとともに、試験用光源と対向する側の光ガイド部材の光放出部材に導光部材を配置し、導光部材の端部に対向するように試験用受光素子を設けて、試験用受光素子の受光量に基づいて光透過性保護カバーの汚損の程度を検出するようにしている。
【0005】
しかしながら、炎を検知する受光素子(赤外線センサ)の前方の光透過性保護カバーは均一に汚れるとは限らないにもかかわらず、特許文献2に記載されている炎感知器の汚れ検出機構は、
図11に示すように、2つの受光素子50A,50Bに対してその中間に1つの試験用光源13を配置し、光ガイド部材40の反対側に導光部440を設けた構成であるため、光透過性保護カバー12が不均一に汚損されると、2つの受光素子の受光量に差が生じてしまい、炎の検出精度が低下して誤報や失報を招くおそれがあると課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、受光素子の前方の受光窓を覆う光透過性保護カバーが不均一に汚れて複数の受光素子の受光量に差が生じてしまった場合にも、炎の検知精度が低下することのない炎感知器を提供することにある。
本発明の他の目的は、光透過性保護カバーが不均一に汚れていずれかの受光素子の受光量が所定以上低下しまった場合に、汚れ警報を発することができる炎感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
炎の検出機能を有する回路が形成された回路基板を内蔵した筐体と、
前記回路基板に実装された主光源と、
前記筐体の正面において発光する光放出部と透光素材からなり前記主光源からの光を前記光放出部まで導く導光部とを有する光ガイド部材と、
筐体の正面側に設けられた開口部から炎が発する所定波長光を受光する複数の主検出受光素子と、
前記開口部と前記複数の主検出受光素子との間に設けられた光透過性保護カバーと、
前記光透過性保護カバー試験光を投光する複数の試験用光源と、
前記回路基板に実装され前記光透過性保護カバーを透過した試験光を受光する試験用受光素子と、を備え、前記回路基板は、前記複数の主検出受光素子の受光量に基づいて炎を検知する機能を有する炎感知器であって、
前記光ガイド部材の光放出部は、前記筐体の正面側において前記主検出受光素子を取り囲む略環状に形成され、
前記光放出部には前記試験光の入射部が設けられ、
前記複数の試験用光源は、出射した試験光が前記光透過性保護カバーの前記複数の主検出受光素子の受光面に対向する部位を透過して前記入射部へ入射されるように配設され、
前記入射部へ入射された試験光は前記光ガイド部材を経由して出射部へ誘導されて前記試験用受光素子へ入射され、
前記回路基板は、前記試験用受光素子の受光量に基づいて前記複数の主検出受光素子の受光量を補正し、補正した受光量に基づいて炎を検知するように構成したものである。
【0008】
上記のような構成を有する炎感知器によれば、回路基板は、試験用受光素子の受光量に基づいて主検出受光素子の受光量を補正し、補正した受光量に基づいて炎検知を行うため、光透過性保護カバーが不均一に汚れて複数の受光素子の受光量が設置当初の値から低下してしまった場合にも、炎の検知精度が低下するのを抑制することができる。
また、光透過性保護カバーに試験光を投光する複数の試験用光源と、回路基板に実装され光透過性保護カバーを透過し光ガイド部材を経由して出射部へ誘導された試験光を受光する試験用受光素子とを備えるため、光透過性保護カバーが不均一に汚れていずれかの受光素子の受光量が所定以上低下しまった場合に、汚れ警報を発することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記入射部は1つであり、前記複数の試験用光源はそれぞれの光軸が前記入射部を通るように配設されているようにする。
かかる構成によれば、入射部が1つであるため、試験用受光素子を、複数の試験用光源に対して共用することができ、部品点数の増加を抑制しつつ、誤報や失報を抑制することができる。
【0010】
また、望ましくは、前記光ガイド部材には、前記光放出部の前記入射部へ入射した光を前記試験用受光素子まで導く試験光誘導部が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、入射部から試験用受光素子までの距離が比較的長い場合にも、入射した試験光を確実に試験用受光素子へ導くことができ、炎の検知精度を向上させることができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記入射部は前記複数の試験用光源と同一の数だけ設けられ、前記複数の試験用光源はそれぞれの光軸が対応する前記入射部を通るように配設され、
前記光ガイド部材には、前記複数の入射部に入射した光を前記試験用受光素子まで導く導光部を有する複数の試験光誘導部が設けられ、
前記回路基板には、前記複数の試験光誘導部の導光部の端部に対応してそれぞれ試験用受光素子が実装されているようにする。
かかる構成によれば、入射部から試験用受光素子までの距離が比較的長い場合にも、試験光を確実に複数の試験用受光素子へそれぞれ入射させることができるとともに、複数の試験用光源を同時に発光させて、光透過性保護カバーの複数個所の透過率を算出することができるため、短時間に光透過性保護カバーの汚れ具合を検出することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記光ガイド部材には、前記光放出部から前記回路基板へ向かって延出された複数の導光部が設けられ、
前記複数の導光部のうちいずれか一つの導光部の端部は、前記回路基板に実装された前記主光源に対向され、前記複数の導光部のうち他の一つの導光部の端部は、前記回路基板に実装された前記試験用受光素子に対向されるように構成する。
かかる構成によれば、光ガイド部材に設ける導光部の数を少なくすることができ、それによって光ガイド部材の形状が複雑になるのを回避し、コストアップを抑制することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記入射部は、前記光放出部の、前記複数の導光部のうち端部が前記主検出受光素子に対向する前記導光部よりも前記複数の導光部のうち端部が前記試験用受光素子に対向する前記導光部に近い部位に設けられているようにする。
かかる構成によれば、試験用受光素子に入射する試験光の量を多くすることができ、光透過性保護カバーの汚れ具合を精度よく検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る炎感知器によれば、受光素子の前方の受光窓を覆う光透過性保護カバーが不均一に汚れて複数の受光素子の受光量に差が生じてしまった場合にも、炎の検知精度が低下することがないようにすることができる。また、光透過性保護カバーが不均一に汚れていずれかの受光素子の受光量が所定以上低下しまった場合に、汚れ警報を発することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る炎感知器の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の炎感知器10の斜視図、
図2はその内部構造を示す分解斜視図である。
炎感知器は、一般に背面側を上方に向けて固定設置され、正面側を下方に向けた状態で正面前方(設置状態における下方)の領域の炎を検出するためのものである。かかる炎感知器は、検知対象のエリア内の複数の炎感知器を集中的に管理する図示しない受信機に接続され、炎を検出すると、検出信号を受信機へ送信する。
【0017】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、炎感知器を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。また、本実施形態の炎感知器10では、筐体20内に二つの赤外線センサ(例えば焦電素子)などからなる主検出受光素子50A,50Bが横並びで配設されており、場合によっては、炎感知器10の主検出受光素子50A,50Bが向く方向を正面側、反対側を背面側と呼ぶ。
【0018】
(炎感知器全体の構成)
本実施形態の炎感知器10は、
図1に示すように、円筒状をなすケース本体220とその正面側を覆うカバー体210とケース本体220と、背面側に接合されて設置箇所に固定されるベース体230とからなる筐体20を備える。
このうち、上記ベース体230は、円形の皿状に形成され、その背面側が設置場所(天井面)に固定され、背部から引き出された配線が伝送線を介して受信機に接続される。
【0019】
ケース本体220は、上記ベース体230よりも幾分外径が小さい有底円筒体であり、その底板の背面側をベース体230に対向させた状態で当該ベース体230の内側にはめ込まれるようにして装着される。本体220の底板の背面側には、図示しない接続端子が複数設けられ、当該各接続端子の先端部が鈎状に形成されている。つまり、各接続端子は、ベース体230側に設けられた被係合凹部に対して鈎状部が係合し、本体220をベース体230に固定する機能を有している。また、各接続端子は、ケース本体220内の回路基板と電気的に接続されており、ベース体230との係合により、ベース体230側からの電源供給や受信機との信号の送受信が可能となっている。
【0020】
カバー体210は、円筒形状部211と当該円筒形状部211の正面側の端部に連なる円錐台形状部212と当該円錐台形状部の正面側端部に連なる正面端面部213とを備え、全体としてドーム状をなすように、合成樹脂により一体的に成形されている。
円筒形状部211は、その外径がベース体230の外径と等しく設定されており、背面側端部は大きく開口され、当該開口端部の内側にケース本体220をはめ込み、ネジ止めにより連結されるようになっている。
正面端面部213は、その中央部に大きく長円形状の開口部214が形成されており、当該開口部214の内側であって後方奥側に、炎が発する所定波長光を検知する主検出受光素子50A,50Bが配置されている。
【0021】
また、炎感知器10の筐体20の内部には、
図2に示すように、主光源11が実装されるとともに炎を検出する回路が形成された回路基板30と、回路基板30を覆う基板カバー33,主検出受光素子50A,50Bを保持する素子サポート60,主検出受光素子50A,50Bの上方を覆う光透過性保護カバー(センサ保護用ガラス)12,ガイドサポート70,光ガイド部材40が収納されている。
主光源11は、正面前方に向けて発光を行うように回路基板30に実装されたLEDであり、本実施例では、2つ設けられている。主光源11は、複数の用途に用いられる。例えば、平時には消灯状態とされ、炎感知時には点灯状態となり、周囲に報知を行ったり、複数の炎感知器10が受信機に接続されている場合において、その一つを対象とする応答要求があった場合に、当該応答の対象となる炎感知器10の主光源が点滅状態に切り替わって応答を行ったりするのに使用される。
【0022】
また、火災時に炎から発せられる赤外線は、
図10に示すように、CO2共鳴放射と呼ばれる現象により4.4[μm]の赤外線域の波長で特徴的なピークを示す特性を有する。そこで、本実施例では、当該4.4[μm]の波長光を透過するフィルタを装備した赤外線センサからなる主検出受光素子50Aと、4.4[μm]の前後の波長光(例えば、4.0[μm])を参照波長として透過するフィルタを装備した赤外線センサからなる主検出受光素子50Bの2つを用いて赤外線を検出することにより炎の検出を行う。各主検出受光素子50A,50Bは、素子のリード端子が回路基板30にハンダ付けで固定される。
【0023】
光透過性保護カバー12は、赤外線光を透過する透明なサファイアガラスからなる長方形の平板であり、2つの主検出受光素子50A,50Bの受光面や光学フィルタが外部に直接露出して汚れたり破損したりしないように保護する。
素子サポート60は、正面視で長円形の台座61と、台座61の背面から下方に延出された四本の支柱62とを備えている。四本の支柱62は、台座61の四隅に設けられている。そして、各支柱62の先端面からは当該支柱62よりも小径のボス62aがさらに延出され、回路基板30には、各ボス62aの受け穴31が形成されている。
台座61は、その中央部には凹部が形成され、凹部のさらに中央には2つの素子格納凹部63が形成されている。各素子格納凹部63は、正面側が開放され、素子形状に対応して円柱体が嵌合可能な形状に形成されている。また、その底部には主検出受光素子50A,50Bのリード端子を挿通させる4つの貫通穴が形成されている。
【0024】
また、台座61の背面側には、2つの素子格納凹部63に隣接して、光透過性保護カバー12の汚損を検出するための試験用光源13A,13Bを保持する光源保持部65が2つ形成されている。各光源保持部65は、
図3に示すように、回路基板30に近接して斜め上方を向いて開口しており、回路基板30に実装された試験用光源13A,13Bは、そのリード端子を曲げるようにした状態で光源保持部65の開口から挿入され、内部に嵌合して向きを固定された状態で保持される。2つの試験用光源13A,13Bは、試験光が環状の光ガイド部材40の反対側の中央部の入射部LIを照射するように斜めに配設されている。
【0025】
光源保持部65は、その開口部から素子格納凹部63の内側(背面側)となる空間内まで貫通しており、試験用光源13A,13Bは光透過性保護カバー12を透過させて投光可能としている。試験用光源13A,13Bから出射され光透過性保護カバー12を透過した試験光は、光ガイド部材40内を通過し、反対側の中央部に設けられている試験光誘導部440を介して回路基板30上に実装されている試験用受光素子14により受光される。試験用受光素子14の数は本実施例では1つである。
【0026】
なお、試験用光源13A,13BはLED、試験用受光素子14はフォトダイオードであり、試験用光源13の発する波長光を受光帯域としている。
さらに、上記台座61には、下方へ向かって突出する一対の係止片66が設けられており、係止片66の先端の爪66aが回路基板30に形成されている一対の係合穴32に係合されることで、台座61と回路基板30とが結合される。
【0027】
回路基板30には、前述した主光源11及び試験用受光素子14が上面に直接実装され、主検出受光素子50A,50B及び試験用光源13A,13Bは素子サポート60を介して実装されている。
さらに、回路基板30には、炎感知器10に所定の作動を実行させるための各種の電子部品及びマイコン(CPU)やメモリからなる制御手段が実装されており、炎検出の処理および光透過性保護カバー12の汚れ検出のための透過性試験処理を実行する。炎検出処理では、各主検出受光素子50A,50Bにより二波長の赤外線検出を周期的に行い、各受光素子50A,50Bの検出強度(受光レベル)が求められる。そして、各波長の検出強度が炎の燃焼に固有の強度である設定値の範囲内と判定した場合に、受信機に対して検出信号を出力する。また、回路基板30は、それまで消灯させていた二つの主光源11を点灯状態に切り替え、炎感知器10の周囲に炎の検出を報知する。
【0028】
また、回路基板30は、光透過性保護カバー12の透過性試験処理では、例えば、定期的に、試験用光源13を発光させ、試験用受光素子14による試験光の検出強度が、汚れ判定のために設定された閾値以上であるか判定を行う。そして、閾値未満の場合には、光透過性保護カバー12の汚れの検出信号を受信機に出力する。
さらに、回路基板30は、例えば主検出受光素子50A,50Bに内蔵された発熱素子を定期的に加熱させて、各主検出受光素子50A,50Bが正常か否かの自己診断の処理を実行する。そして、いずれかの主検出受光素子について閾値未満となった場合には、主検出受光素子の異常発生信号を受信機に出力する。
【0029】
ガイドサポート70は、
図2及び
図3に示すように、筐体20の内部において水平面に沿って配置される略円板状の台座71と、台座71の外周縁部から背面側に向かって立ち上げられた周壁部72とを備えている。そして、周壁部72は筒状をなすと共にその内径は素子サポート60の台座61の外径よりも若干大きく設定されており、ガイドサポート70は素子サポート60を内部に収容した状態で連結することが可能となっている。
【0030】
また、台座71の上面中央部には、長円状の凹部711が形成されており、凹部711の中央部には主検出受光素子50A,50Bの頭部が臨むための長円状の開口部712が形成されている。
さらに、台座71の上面外縁部には、光ガイド部材40の嵌合部713が形成されている。この嵌合部713は、台座71の正面上に立設された突条により形成されており、当該突条の嵌合部713で囲まれた領域に光ガイド部材40を嵌合させることで固定することができる。
【0031】
また、嵌合部713に光ガイド部材40が固定された状態において、凹部711は、光ガイド部材40の二つの内側斜面411,412と共に全体的に略すり鉢形状を形成する内側斜面711a,711bを備えており、光ガイド部材40の内側斜面により規定される視野角に干渉しないようになっている。
さらに、台座71の開口部712を挟んだ対角位置には、素子サポート60の3つの突出片67の先端部が挿入されるスリット状の係合穴714が穿設されており、各突出片67を係合穴714に挿入し係止させることで、素子サポート60とガイドサポート70とを結合させることが可能にされている。
【0032】
台座71の背面には、
図3に示すように、光ガイド部材40の試験光誘導部440の垂直導光部443が挿通される筒状部716が回路基板30側に向かって延設されている。そして、この垂直導光部443の延出先端部は、試験用受光素子14の光軸と直交する平坦面に形成されており、この平坦面が試験光の出射部444となっている。図示しないが、台座71の背面には、光ガイド部材40の垂直方向導光部430が挿通される筒状部も設けられている。
周壁部72の背面側端部には、
図2に示すように、半径方向外側に向かって四方に延出された張り出し部721が形成されており、各張り出し部721は、筐体20のカバー体210の背面側に形成された図示しない凹部に嵌合するようになっている。
【0033】
光ガイド部材40は、光放出部410と2つの水平方向導光部420と2つの垂直方向導光部430と、試験用光源13から出射された試験光を試験用受光素子14へ導くための試験光誘導部440とを備えており、ガイドサポート70により筐体20の内部に固定保持されている。
図4には、光ガイド部材40の詳細な構成例が示されている。
図4に示すように、光ガイド部材40は、上面視で略円環状であって筐体20の正面において発光する発光面として機能する内側斜面411,412を有する光放出部410と、当該光放出部410からその外側に向かって延出された2つの水平方向導光部420と、各水平方向導光部420から下方の回路基板30へ向かって垂下された2つの垂直方向導光部430と、前記試験用光源13から出射された試験光を試験用受光素子14に導くための試験光誘導部440とを備えており、これらは透光性のある樹脂により一体的に成形されている。
【0034】
光放出部410は、その正面視形状が、前述した筐体20のカバー体211の開口部214と相似形の長円状に形成されており、当該開口部214からは光放出部410の内側斜面411,412が外部に臨むように配置される。
また、水平方向導光部420は、均一な厚さの板状に形成されており、その背面側には円柱状の垂直方向導光部430が形成されている。
垂直方向導光部430は、その端面が平滑な面であり、
図2に示すように、回路基板30上に実装された主光源11に近接対向した状態で配設される。つまり、この端面が主光源11からの出射光の入射面となる。試験光を誘導する試験光誘導部440を構成する垂直導光部443も同様に、その端面が平滑な面であり、回路基板30上に実装された試験用受光素子14に近接対向した状態で配設される。つまり、その端面が、試験光の試験用受光素子14への出射面となる。
【0035】
さらに、水平方向導光部420は、正面視において、切り欠き部421により二方向に反射される光をそれぞれ光放出部410の長円形の接線方向に沿うように反射させる2つの反射面422,423を備えている。かかる反射面422,423により、反射光は正面視で光放出部410の長円形に沿って進行し、より遠方まで光が届くこととなり、光放出部410全体を効果的に発光させることが可能となっている。
【0036】
光放出部410は、中央部が大きく開口してなる円環状であり、円環の断面形状は、正面前方に凸となる山型となっている。つまり、光放出部410は、当該山型の尾根に相当する部分413が長円に沿って連なっている。そして、尾根部413のすぐ内側に、内側斜面411が全周に渡って形成され、さらにその内側に内側斜面412が全周に渡って形成されている。また、尾根部413の外側には、全周に渡って外側斜面414が形成されている。また、試験光誘導部440が設けられている光放出部410の部位は、試験光の入射部416として機能する。
【0037】
上記のように、光放出部410は、その尾根部413がカバー体210の開口部214の内縁部と一致するように配置されるので、内側斜面411,412のみが開口部214から外部に発光を行うこととなる。また、内側斜面411,412は、その表面に反射を抑止するための加工としてシボ加工が施されている。
一方、試験光の入射部416については、その部分だけシボ加工を施さずに透明な状態を維持して、試験の検出精度を確保している。
【0038】
試験光誘導部440は、前述した試験光の入射部416から入射した試験光を回路基板30上の試験用受光素子14まで案内するためのものであり、光放出部410から外側に延出された水平導光部441と、水平導光部441内を水平方向へ進行する光を垂直方向へ反射する反射面442と、反射面442で反射された試験光を基板方向へ誘導するように回路基板30側に延出された垂直導光部443とを備えている。反射面442は、水平導光部441と垂直導光部443との交差位置において、45°に傾斜した平滑面により形成されている。
【0039】
(試験用光源及び試験用受光素子)
図5には、本実施形態の炎感知器10を正面側から見た場合における試験用光源13A,13Bと試験用受光素子14の配置関係が示されている。
図5に示すように、本実施形態においては、2つの試験用光源13A,13Bが環状の光ガイド部材40の内側に並設されているとともに、光源13Aと13Bの光軸が、それぞれ上面視で主検出受光素子50A,50Bのほぼ中心を通り、光ガイド部材40の反対側の中央部にて交差するように斜めに配設されている。
【0040】
そして、光源13Aと13Bの光軸が交差する光ガイド部材40の中央部が試験光入射部LIとなり、入射部LIに接するように、試験用受光素子14へ入射した試験光を誘導する試験光誘導部440が設けられている。
なお、試験用光源13A,13Bは、紙面に対しても斜めに配設されており、試験用光源13A,13Bと光ガイド部材40の試験光入射部LIとの間に、紙面と平行に保護ガラス12が介在されている。つまり、試験用光源13A,13Bは保護ガラス12の背部にある。また、試験用光源13A,13B(光源1,2)は、回路基板30上の制御手段(CPU)によって、
図6(A),(B)に示すように、同一周期かつ異なるタイミングで発光駆動される。試験用光源13A,13Bの発光波長には、主検出受光素子(赤外線センサ)50Aと50Bの検出波長帯またはその近傍の波長帯を使用するのが良い。試験用光源13A,13Bが発光される際、主光源11は消灯状態にされる。
【0041】
図5に示す構成においては、センサ保護ガラス(光透過性保護カバー12)が不均一に汚損されていると、試験用光源13Aから出射された試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量と、試験用光源13Bから出射された試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量は、設置当初は
図6(C)に示すように、レベルが高かったものが、汚損された後は
図6(D)に示すように、レベルが低くなる。なお、
図6(D)においては、主検出受光素子50Aの配置側の方が主検出受光素子50Bの配置側より光透過率が低いつまり汚損度が高い場合を示しているが、逆の場合もあるし、両方のレベルが低下する場合もある。
【0042】
本実施形態の炎感知器10の回路基板30は、試験用光源13Aからの試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量と試験用光源13Bからの試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量の低下量から保護ガラスの透過率を算出し、メモリに記憶する。そして、主検出受光素子50Aの受光量と主検出受光素子50Bの受光量に基づいて炎検出を行う場合に、各透過率に基づいて、主検出受光素子50Aの受光量や主検出受光素子50Bの受光量を補正し、補正値により判定を行うように構成されている。
また、回路基板30は、試験用受光素子14の受光レベルが所定のしきい値以下になると、受信機へ汚れ検出情報(汚れ側を示す情報を含んでも良い)を出力して知らせるように構成されている。なお、汚れ検出信号を生成して光ガイド部材40を点灯もしくは点滅させたりするように構成しても良い。また、汚れ警報は、試験用受光素子14の受光量の低下が所定時間以上経過した場合に発するようにしても良い。
【0043】
上記のような構成を有する炎感知器10では、保護ガラス(光透過性保護カバー12)が不均一に汚れた場合に、保護ガラスの各センサ(50A,50B)に対応する部分の光透過率に応じて、センサの受光量を補正するので、炎検出判定の際の誤報や失報を抑制することができる。また、保護ガラスの汚れ警報も的確に行える。
なお、回路基板30は、主検出受光素子50Aの受光量と主検出受光素子50Bの受光量との比を算出し、受光量の比に基づいて炎検出を行うように構成することも可能であり、その場合には、試験用光源13Aからの試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量と試験用光源13Bからの試験光を試験用受光素子14が受けた時の受光量との比を算出し、その受光量の比に基づいて炎検出のための受光量比の演算の際に、補正を行うように構成しても良い。
【0044】
次に、試験用光源13と試験用受光素子14の配置の変形例を、
図7〜
図9を用いて説明する。
第1の変形例は、
図7に示すように、2つの試験用光源13A,13Bを、互いの光軸が平行であって、主検出受光素子50Aと50Bの並び方向と直交し主検出受光素子50Aと50Bの中心を通るように配置するとともに、光ガイド部材40の試験用光源13A,13Bに対向する試験光入射部LI1,LI2にそれぞれ試験光誘導部440A,440Bを設けたものである。また、図示しないが、試験光誘導部440Aと440Bを構成する垂直導光部443の下端面に対向するように、回路基板30上に試験用受光素子(14A,14B)が実装される。
【0045】
この変形例においては、試験用光源13Aから出射された試験光は保護ガラス(12)の主検出受光素子50A上方部位を通過して試験光入射部LI1に入射し、試験光誘導部440Aによって誘導されて試験用受光素子(14A)へ照射され、受光される。また、試験用光源13Bから出射された試験光は保護ガラス(12)の主検出受光素子50B上方部位を通過して試験光入射部LI2に入射し、試験光誘導部440Bによって誘導されて試験用受光素子(14B)へ照射され、受光される。2つの試験用光源13A,13Bは同時に発光させることができる。
保護ガラス12が汚損されている場合の回路基板30による主検出受光素子50Aと50Bの受光量に基づく炎検出判定時の補正処理および保護ガラスの汚れ警報処理は、前記実施形態の場合と同じである。
【0046】
第2の変形例は、
図8に示すように、第1の変形例と同様に、2つの試験用光源13A,13Bを、互いの光軸が平行であって、主検出受光素子50Aと50Bの並び方向と直交し主検出受光素子50Aと50Bの中心を通るように配置している。ただし、光ガイド部材40の試験用光源13A,13Bに対向する試験光入射部LI1,LI2には、試験光誘導部440A,440Bが設けられていない。また、光ガイド部材40を構成する一対の垂直方向導光部430A,430Bのうち一方(430A)の端部に対応して主光源11が回路基板30上に配設され、他方(430Bの下端面に対向するように、回路基板30上に試験用受光素子14が実装される。
【0047】
この変形例においては、試験用光源13Aから出射された試験光は保護ガラス(12)の主検出受光素子50A上方部位を通過して試験光入射部LI1に入射し、光ガイド部材40の水平方向導光部420内を進んで垂直方向導光部430Bによって誘導されて試験用受光素子(14)へ照射され、受光される。また、試験用光源13Bから出射された試験光は保護ガラス(12)の主検出受光素子50B上方部位を通過して試験光入射部LI2に入射し、水平方向導光部420内を進んで垂直方向導光部430Bによって誘導されて試験用受光素子(14)へ照射され、受光される。2つの試験用光源13A,13Bは、第1の変形例と同様に、異なるタイミングで発光させる必要がある。炎検出判定時の補正処理および保護ガラスの汚れ警報処理は、第1の変形例と同じである。
【0048】
第3の変形例の構成は、
図9に示すように、第2の変形例とほぼ同じ構成であり、試験光入射部LI1,LI2に試験光誘導部440A,440Bを設けずに、2つの試験用光源13A,13Bを、互いの光軸が平行であって主検出受光素子50Aと50Bの中心を通るように配置している。第2の変形例との差異は、試験用光源13A,13Bを、それぞれの光軸が主検出受光素子50Aと50Bの並び方向に対して斜めになるように配置している点のみである。
【0049】
この変形例においても、光ガイド部材40を構成する一対の垂直方向導光部430A,430Bのうち一方(430A)の端部に対応して主光源11が回路基板30上に配設され、他方(430B)の下端面に対向するように、回路基板30上に試験用受光素子14が実装される。2つの試験用光源13A,13Bは、異なるタイミングで発光される。炎検出判定時の補正処理および保護ガラスの汚れ警報処理は、第2の変形例と同じである。
また、第3の変形例においては、試験光入射部LI1,LI2の位置が、試験用受光素子へ試験を誘導する垂直方向導光部430Bに近くなるとともに、LI1,LI2への入射角度も大きくなり、入射時の反射ロス分と入射後の導光効率向上分が最適化され、第2の変形例に比べて、受光素子への入射光量を多くして検出精度を高めることができる。
【0050】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、主検出受光素子を回路基板30上に2個実装したものを示したが、主検出受光素子の数は2個に限定されず、3個以上であっても良い。
また、上記実施形態では、光透過性保護カバー12としてサファイアガラスを使用しているが、サファイアガラスに限定されるものではなく、使用する受光素子の波長帯の光を透過し易い素材であれば良い。