【解決手段】長下肢装具60の支柱63の形状を設定する支柱形状設定システム1であって、人の下肢80が撮影された画像データIを取り込む取込部10と、画像データIを表示する表示部20と、ユーザからの入力を受け付ける入力部30と、ユーザの入力部30を介する操作に応じた処理を行う処理部50と、を備え、処理部50は、画像データIを取込部10から取得し、表示部20に表示される画像データIの下肢80の輪郭に沿う輪郭線L3を入力部30から取得し、輪郭線L3の形状を長下肢装具60の支柱63の形状として設定する。
前記処理部は、前記画像データにおける下肢上の目印の位置を前記入力部から取得し、前記画像データ上で前記目印を設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の支柱形状設定システム。
前記処理部は、前記画像データにおける下肢の長手方向に延びる中心線を前記入力部から取得し、前記画像データ上で前記中心線を設定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の支柱形状設定システム。
前記処理部は、前記輪郭線の移動方向を前記入力部から取得し、前記画像データの下肢の関節部分に近づくにつれて移動量が大きくなるように、前記輪郭線を前記移動方向に移動させる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の支柱形状設定システム。
人の下肢が撮影された画像データを取り込む取込部と、前記画像データを表示する表示部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、前記ユーザの前記入力部を介した操作に応じた処理を行う処理部と、を備えるコンピュータを用いて、下肢装具の支柱の形状を設定する支柱形状設定方法であって、
前記画像データを前記取込部から取得する画像データ取得工程と、
前記表示部に表示される前記画像データの下肢の輪郭に沿う輪郭線を前記入力部から取得する輪郭線取得工程と、
前記輪郭線の形状を下肢装具の支柱の形状として設定する支柱形状設定工程と、を備える、ことを特徴とする支柱形状設定方法。
人の下肢が撮影された画像データを取り込む取込部と、前記画像データを表示する表示部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、前記ユーザの前記入力部を介した操作に応じた処理を行う処理部と、を備えるコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、
前記画像データを前記取込部から取得する画像データ取得工程と、
前記表示部に表示される前記画像データの下肢の輪郭に沿う輪郭線を前記入力部から取得する輪郭線取得工程と、
前記輪郭線の形状を下肢装具の支柱の形状として設定する支柱形状設定工程と、を実行する、ことを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、義肢装具士は、支柱を製作する際に、紙に描かれた輪郭線に対して支柱の形状を合わせるだけであるため、実際の下肢に対してどのように支柱が適合するかをイメージすることが難しかった。また、輪郭線を描く際に、紙に対するマーカーの角度が一定でないことがあるため、実際の下肢の形状に対する輪郭線の誤差が生じやすかった。その結果、下肢に支柱をフィットさせられないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、以上に示したかかる課題に鑑み、下肢にフィットする支柱の形状を設定できる支柱形状設定システム、支柱形状設定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明においては、下肢装具の支柱の形状を設定する支柱形状設定システムであって、
人の下肢が撮影された画像データを取り込む取込部と、
前記画像データを表示する表示部と、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
前記ユーザの前記入力部を介する操作に応じた処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、画像データを前記取込部から取得し、前記表示部に表示される前記画像データの下肢の輪郭に沿う輪郭線を前記入力部から取得し、前記輪郭線の形状を下肢装具の支柱の形状として設定するものである。
【0010】
また、本発明においては、前記処理部は、前記画像データにおける下肢上の目印の位置を前記入力部から取得し、前記画像データ上で前記目印を設定するものであってもよい。
【0011】
また、本発明においては、前記処理部は、前記画像データにおける下肢の長手方向に延びる中心線を前記入力部から取得し、前記画像データ上で前記中心線を設定するものであってもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記処理部は、前記輪郭線の移動方向を前記入力部から取得し、前記画像データの下肢の関節部分に近づくにつれて移動量が大きくなるように、前記輪郭線を前記移動方向に移動させるものであってもよい。
【0013】
また、本発明においては、前記取込部は、人の下肢とともにスケールが撮影された画像データを取り込み、
前記表示部は、前記画像データにおける前記スケール上に位置する複数の点同士の相対距離を表示可能であり、
前記処理部は、前記複数の点の位置、及び前記複数の点同士の相対距離を前記入力部から取得し、当該複数の点同士の相対距離の比率に合わせて前記画像データの歪を補正するものであってもよい。
【0014】
また、本発明においては、人の下肢が撮影された画像データを取り込む取込部と、前記画像データを表示する表示部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、前記ユーザの前記入力部を介した操作に応じた処理を行う処理部と、を備えるコンピュータを用いて、下肢装具の支柱の形状を設定する支柱形状設定方法であって、
前記画像データを前記取込部から取得する画像データ取得工程と、
前記表示部に表示される前記画像データの下肢の輪郭に沿う輪郭線を前記入力部から取得する輪郭線取得工程と、
前記輪郭線の形状を下肢装具の支柱の形状として設定する支柱形状設定工程と、を備えるものであってもよい。
【0015】
また、本発明においては、人の下肢が撮影された画像データを取り込む取込部と、前記画像データを表示する表示部と、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、前記ユーザの前記入力部を介した操作に応じた処理を行う処理部と、を備えるコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、
前記画像データを前記取込部から取得する画像データ取得工程と、
前記表示部に表示される前記画像データの下肢の輪郭に沿う輪郭線を前記入力部から取得する輪郭線取得工程と、
前記輪郭線の形状を下肢装具の支柱の形状として設定する支柱形状設定工程と、を実行するものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、下肢にフィットする支柱の形状を設定できる。また、目印の位置を支柱の形状の設定における基準位置として用いることによって、正確に支柱の形状を設定できる。また、中心線を支柱の形状の設定における基準線として用いることによって、正確に支柱の形状を設定できる。また、下肢装具を使用する際の下肢の関節部分の湾曲を見越して、当該下肢の湾曲にフィットするように支柱の形状を設定できる。また、画像データの歪みが補正されるため、正確に支柱の形状を設定できる。また、支柱の形状がデータとして保存されるため、オーダーメイドで製作されるにもかかわらず、支柱の複製が簡単にできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る支柱形状設定システム1について説明する。
支柱形状設定システム1は、下肢装具の支柱の形状を設定するシステムである。支柱形状設定システム1は、下肢装具の支柱の形状を設定するためのアプリケーションソフトウェア(以下、「支柱形状設定ソフトウェア」と記す)を実行可能に構成され、取込部10、表示部20、入力部30、記憶部40、処理部50を備える。支柱形状設定ソフトウェアは、プログラム、及び多数の画像データ等から構成される。
【0021】
例えば、支柱形状設定システム1は、取込部10、表示部20、入力部30、記憶部40、処理部50を有するパーソナルコンピュータ2から構成されるが、これに限定するものではなく、取込部10、表示部20、入力部30、記憶部40、処理部50を有するタブレット型コンピュータ等で構成されてもよい。また、支柱形状設定システム1は、記憶部40、処理部50がクラウド上に設けられるクラウドシステムで構成されてもよい。
また、本実施形態では、下肢装具は、長下肢装具60(
図2参照)であるが、これに限定するものではなく、下肢の形状に合わせて支柱の形状が設定される短下肢装具等であってもよい。更に、本発明の技術的思想は、身体の形状に合わせて支柱の形状が設定される装具に適用できる。例えば、身体の形状に合わせて支柱の形状が設定される装具は、体幹装具、上肢装具、指装具等である。
【0022】
取込部10は、人の下肢が撮影された画像データを取り込み可能に構成されている。取込部10は、処理部50と電気的に接続されており、取り込んだ画像データが処理部50によって画像処理される。なお、取込部10は、USBインターフェース、有線LANインターフェース、無線LANインターフェース等によって実現可能である。
例えば、USBインターフェースが用いられる場合、取込部10は、下肢を撮影したデジタルカメラに接続して、当該デジタルカメラから画像データを取り込む。
また、有線LANインターフェース又は無線LANインターフェースが用いられる場合、取込部10は、有線又は無線で通信ネットワークに接続して、当該通信ネットワークを介して画像データを取り込む。
【0023】
表示部20は、画像データ、文字、図形等の種々の情報を表示可能に構成されている。表示部20は、処理部50と電気的に接続されており、処理部50の出力結果を表示する。なお、表示部20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等によって実現可能である。
【0024】
入力部30は、ユーザからの入力を受け付け可能に構成されている。入力部30は、処理部50と電気的に接続されており、ユーザから入力部30に入力された情報に基づいて、処理部50が所定の処理を行うこととなる。なお、入力部30は、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現可能である。
【0025】
記憶部40は、種々のデータを記憶可能に構成されている。記憶部40には、支柱形状設定ソフトウェアのプログラムが格納されている。記憶部40は、処理部50と電気的に接続されており、記憶部40に格納されたプログラムに基づいて、処理部50が所定の処理を行うこととなる。なお、記憶部40は、ハードディスクドライブ(HDD)、半導体メモリ等によって実現可能である。
【0026】
処理部50は、記憶部40に格納された支柱形状設定ソフトウェアのプログラムに基づいて、ユーザの入力部30を介する操作に応じた処理を実行可能に構成されている。
【0027】
以上のように構成された支柱形状設定システム1において、支柱形状設定ソフトウェアのプログラムが実行されると、表示部20に支柱形状設定システム1のグラフィカルユーザインタフェース(以下、「GUI」と記す)が表示される。支柱形状設定システム1のGUI上には、複数のボタンやチェックボックス等が配置されており、当該GUIをユーザが入力部30を介して操作し、支柱の形状を設定する。
なお、本発明において、GUIの「操作」とは、マウスによるクリック、及びタッチパネルへのタッチ等を意味する。
【0028】
次に、
図2を用いて、長下肢装具60の構成について説明する。
【0029】
長下肢装具60は、大腿支持部61、下腿支持部62、支柱63、膝部連結部材64、足部連結部材65を有する。
【0030】
大腿支持部61は、大腿を支持する部材である。例えば、大腿支持部61は、大腿に巻かれて固定される大腿カフである。なお、大腿支持部61には、必要に応じて大腿の前面又は後面を半周する半月66aが設けられる。
【0031】
下腿支持部62は、下腿を支持する部材である。例えば、下腿支持部62は、下腿に巻かれて固定される下腿カフである。なお、下腿支持部62には、必要に応じて下腿の前面又は後面を半周する半月66bが設けられる。
【0032】
支柱63は、大腿支持部61及び下腿支持部62を支持する部材である。支柱63は、柱状部材からなり、長下肢装具60の使用者の体重を支持するとともに、下肢の変形を矯正又は予防する。例えば、支柱63は、金属製部材、樹脂製部材、カーボン製部材等が用いられる。支柱63は、足外側及び足内側の両方に設けられる両側支柱であるが、足外側又は足内側のいずれか一方に設けられる片側支柱としてもよい。
支柱63は、上側支柱63aと下側支柱63bを有する。上側支柱63aは、大腿支持部61を支持する。また、下側支柱63bは、下腿支持部62を支持する。
上側支柱63a及び下側支柱63bは、大腿及び下腿に沿うような形状でオーダーメイドされる。
【0033】
膝部連結部材64は、上側支柱63aと下側支柱63bを連結する部材である。例えば、膝部連結部材64は、膝継手である。膝部連結部材64は、上側支柱63aと下側支柱63bを保持し、膝関節の回転、即ち膝関節の屈曲及び伸展を可能にする。
【0034】
足部連結部材65は、下側支柱63bと靴型装具67等の足部を連結する部材である。例えば、足部連結部材65は、あぶみである。足部連結部材65は、下側支柱63bと靴型装具67等の足部を保持し、足関節の回転、即ち足関節の底屈及び背屈を可能にする。
【0035】
次に、
図3から
図12を用いて、処理部50による処理を説明する。なお、下肢の寸法(下肢の長さや周径値等)は、測定済みであるものとする。
【0036】
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る支柱形状設定方法は、画像データ取得工程K1、輪郭線取得工程K2、支柱形状設定工程K3を備える。支柱形状設定ソフトウェアのプログラムは、画像データ取得工程K1、輪郭線取得工程K2、支柱形状設定工程K3を実行する。
【0037】
なお、
図6及び
図7に示すように、画像データIには、長座位又は背臥位の状態の人(例えば患者)の下肢80とともに、スケール70が撮影されている。
【0038】
スケール70は、当該スケール70上に位置する複数の点同士の相対距離を示すものである。例えば、スケール70は、下肢80の長手方向と平行な直線定規70a・70bと、直線定規70a・70bに対して直交する直線定規70cにより構成される。直線定規70a・70bは、下肢80の足外側及び足内側に隣接して各々配置されている。直線定規70cは、下肢80の踵の下側に隣接して配置されている。
直線定規70cによって、直線定規70a・70b間の相対距離が測定可能である。また、直線定規70cから所定の距離だけ離間して位置する直線定規70a上の点と、直線定規70cから当該所定の距離だけ離間して位置する直線定規70b上の点の2点間の相対距離は、全て同一となる。
【0039】
表示部20は、スケール70が撮影された画像データIを表示する。即ち、表示部20は、画像データIにおけるスケール70上に位置する複数の点同士の相対距離を表示可能である。
【0040】
(画像データ取得工程K1)
図4に示すように、処理部50は、支柱形状設定ソフトウェアを起動するための操作がユーザによって入力部30に入力されると、表示部20にメインフォーム100を表示させる。
例えば、メインフォーム100には、「イメージ」ボタン101、「トレース」ボタン102、「支柱」ボタン103が配置されている。
【0041】
「イメージ」ボタン101は、機能を「画像データIの取り込み、及び調整」に切り替えるためのボタンである。「トレース」ボタン102は、機能を「輪郭線L3(
図9参照)の設定、及び調整」に切り替えるためのボタンである。「支柱」ボタン103は、機能を「支柱63の設計、及び印刷」に切り替えるためのボタンである。
【0042】
図5に示すように、処理部50は、メインフォーム100(
図4参照)の「イメージ」ボタン101を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、表示部20においてイメージフォーム110を表示する。
例えば、イメージフォーム110には「インポート」メニュー111、「画像データ」表示領域112、「回転」タブ113、「ライン回転」タブ114、「ボックス」チェックボックス115、「垂直ピッチ」テキストボックス116、「水平距離」テキストボックス117、「画像出力」ボタン118が配置されている。「回転」タブ113には、「スライダー」バー113a、「+」ボタン113b、「−」ボタン113c、「角度」テキストボックス113d、「リセット」テキストボックス113eが配置されている。「ライン回転」タブ114には、「垂直」ボタン114a、「水平」ボタン114bが配置されている。
【0043】
「インポート」メニュー111は、取込部10から取り込まれた画像データIを選択するためのメニューである。
【0044】
「回転」タブ113は、「スライダー」バー113a、「+」ボタン113b、「−」ボタン113c、「角度」テキストボックス113d、「リセット」テキストボックス113eを表示するためのタブである。「スライダー」バー113aは、画像データIを回転させるためのバーである。「+」ボタン113b及び「−」ボタン113cは、画像データIを回転させるためのボタンである。「角度」テキストボックス113dは、「+」ボタン113b及び「−」ボタン113cが1回選択される毎の画像データIの回転角度を表示するためのテキストボックスである。
【0045】
「ライン回転」タブ114は、「垂直」ボタン114a及び「水平」ボタン114bを表示させるためのタブである。「垂直」ボタン114aは、画像データI上で指定される2個の点(図示しない)を結ぶ線が垂直になるように画像データIを回転させるためのボタンである。「水平」ボタン114bは、画像データI上で指定される2個の点を結ぶ線が水平になるように画像データIを回転させるためのボタンである。
【0046】
「ボックス」チェックボックス115は、後述する簡易の方法を用いる際にチェックされるチェックボックスである。「垂直ピッチ」テキストボックス116は、垂直方向の点P1(
図6及び
図7参照)の間隔を入力するためのテキストボックスである。「水平距離」テキストボックス117は、水平方向の点P1の間隔を入力するためのテキストボックスである。「画像出力」ボタン118は、「輪郭線L3(
図9参照)の設定、及び調整」機能で用いる画像データIを出力するためのボタンである。
【0047】
画像データ取得工程K1は、簡易の方法と通常の方法を有する。
【0048】
まず、
図5及び
図6を用いて、簡易の方法について説明する。なお、以下では、処理部50が表示部20に表示フォーム160を表示させているものとして説明する。表示フォーム160には、画像データI等が表示される。
【0049】
簡易な方法では、まず、処理部50は、「インポート」メニュー111を選択し、画像データIを選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、選択された画像データIを読み込む。
【0050】
次に、処理部50は、「スライダー」バー113a、「+」ボタン113b、「−」ボタン113cによって画像データIを回転する操作がユーザによって入力部30に入力されると、操作に合わせて画像データIを回転させる。
また、処理部50は、画像データI上で2個の点(図示しない)が指定され、「垂直」ボタン114a及び「水平」ボタン114bによって画像データIを回転する操作がユーザによって入力部30に入力されると、2点を結ぶ線が垂直又は水平になるように画像データIを回転させる。
【0051】
次に、「ボックス」チェックボックス115のチェックを入れる操作がユーザによって入力部30に入力される。そして、処理部50は、画像データI上で4個の点P1が指定される操作がユーザによって入力部30に入力されると、当該4個の点P1の位置を入力部30から取得する。4個の点P1を指定する操作において、当該4個の点P1は、直線定規70a・70b上で各々2個ずつ指定される。また、指定される4個の点P1のうち下肢80を介して互いに対向する2個の点P1は、直線定規70cからの距離が各々同一となるように指定される。
【0052】
次に、処理部50は、画像データIにおける下肢80上の目印Mの位置を指定する操作がユーザによって入力部30に入力されると、当該目印Mの位置を入力部30から取得し、画像データI上で目印Mを設定する。
目印Mは、長下肢装具60の製作において基準となる位置に設けられる。例えば、目印Mの位置は、下肢80の骨や長下肢装具60の製作に必要な位置であり、大転子、膝蓋骨、腓骨頭、外果等に設定される。
【0053】
次に、同一のスケール70(直線定規70a又は直線定規70b)上に位置する2個の点P1の間隔(相対距離)を、「垂直ピッチ」テキストボックス116より指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。また、下肢80を介して互いに対向する2個の点P1の間隔(相対距離)を、「水平距離」テキストボックス117より指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。そして、処理部50は、指定された点P1の間隔、即ち4個の点P1同士の相対距離を入力部30から取得する。
処理部50は、「画像出力」ボタン118を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、4個の点P1同士の相対距離の比率に合わせて画像データIの歪を補正し、4個の点P1を結んで形成される矩形状の領域を出力する。
【0054】
次に、
図5及び
図7を用いて、通常の方法について説明する。なお、簡易な方法と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0055】
通常の方法は、画像データIの読み込み、及び画像データIの回転について、簡易の方法と同様である。画像データIの読み込み、及び画像データIの回転が行われた後に、「ボックス」チェックボックス115のチェックを外す操作がユーザによって入力部30に入力される。次に、処理部50は、画像データI上で複数の点P1が指定される操作がユーザによって入力部30に入力されると、当該複数の点P1の位置を入力部30から取得する。複数の点P1を指定する操作において、当該複数の点P1は、直線定規70a・70b上で各々所定のピッチ(相対距離)で指定される。また、下肢80を介して互いに対向する2個の点P1は、直線定規70cからの距離が各々同一となるように指定される。
【0056】
更に、処理部50は、指定された点P1に隣接するベクトル点P2を設定する。ベクトル点P2は、下肢80から離間する側に各々配置される。また、下肢80を介して互いに対向する点P1を結ぶ線である水平線L1が各々設定される。処理部50は、ベクトル点P2を移動させる操作がユーザによって入力部30に入力されると、水平線L1の曲がり方を変更させる。例えば、ベクトル点P2が下方に移動されることによって、水平線L1は、点P1を支点として当該水平線L1の中央部が上方に移動するように曲げられる(
図7における二点鎖線参照)。水平線L1の曲がり方は、下肢80を撮影したカメラのレンズ収差に合わせて指定される。
【0057】
次に行われる目印Mの設定は、簡易の方法と同様である。目印Mの設定が行われた後に、直線定規70a・70b上の点P1のピッチ(相対距離)を、「垂直ピッチ」テキストボックス116より指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。また、下肢80を介して互いに対向する2個の点P1の間隔(相対距離)を、「水平距離」テキストボックス117より指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。そして、処理部50は、指定された点P1の間隔、即ち複数の点P1同士の相対距離を入力部30から取得する。
処理部50は、「画像出力」ボタン118を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、複数の点P1同士の相対距離の比率に合わせて画像データIの歪を補正する。更に、処理部50は、水平線L1が直線になるように画像データIを補正して、指定された複数の点P1における、上端の2個の点P1と下端の2個の点P1を結んで形成される矩形状の領域を出力する。
【0058】
このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、パースペクティブやレンズ収差に起因して生じる画像データIの歪みが補正される。従って、歪みが補正された画像データIの下肢80の輪郭に沿う輪郭線L3(
図9参照)の形状を、支柱63の形状として用いることによって、正確に支柱63の形状を設定できる。
【0059】
(輪郭線取得工程K2)
図8に示すように、処理部50は、メインフォーム100(
図4参照)の「トレース」ボタン102を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、表示部20においてトレースフォーム120を表示する。
例えば、トレースフォーム120には、「中心線」ボタン121、「トレース」ボタン131、「調整」ボタン141、「中心線計算」ボタン122が配置されている。
【0060】
「中心線」ボタン121は、画像データI上で中心線L2を設定可能な状態とするためのボタンである。「トレース」ボタン131は、画像データI上で輪郭線L3(
図9参照)を設定可能な状態とするためのボタンである。「調整」ボタン141は、輪郭線L3を調整可能な状態とするためのボタンである。「中心線計算」ボタン122は、中心線L2が垂直になるように画像データIを回転させるためのボタンである。
【0061】
輪郭線取得工程K2では、まず、中心線L2の設定が行われる。
中心線L2の設定では、「中心線」ボタン121を選択する操作がユーザによって入力部30に入力される。次に、処理部50は、画像データI上で2個の点P3が指定される操作がユーザによって入力部30に入力されると、当該2個の点P3を結ぶ線を中心線L2として設定する。2個の点P3は、中心線L2が下肢80の長手方向に延びるように指定される。
ここで、処理部50は、画像データIにおける2個の点P3を入力部30から取得している。即ち、処理部50は、中心線L2を入力部30から取得している。
【0062】
中心線L2は、下肢80が採寸される際の寸法(上述の下肢80の長さや周径値等)の基準線と一致するように設定される。例えば、大腿部の中央部と、外踝と内踝の中央部を結ぶ線を寸法の基準線として下肢80が採寸される場合、大腿部の中央部に位置する点P3と、外踝と内踝の中央部に位置する点P3が指定される。
【0063】
なお、処理部50は、「中心線計算」ボタン122を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、中心線L2が垂直になるように画像データIを回転させる。また、処理部50は、「スライダー」バー123、「+」ボタン124、「−」ボタン125を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、操作に合わせて画像データIを回転させる。
【0064】
このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、中心線L2が支柱63の形状の設定における基準線となる。従って、採寸した下肢80の寸法の基準線と、支柱63の形状の設定における基準線を一致させることによって、採寸した下肢80の寸法を、輪郭線L3(
図9参照)の寸法に反映させることができる。これにより、正確に支柱63の形状を設定できる。
【0065】
図9に示すように、処理部50は、トレースフォーム120の「トレース」ボタン131を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、画像データI上で下肢80の輪郭線L3を入力可能な状態とする。
例えば、トレースフォーム120には、「保存」チェックボックス132、「設定」ボタン133、「リセット」ボタン134、「オフセット」チェックボックス135が配置されている。
【0066】
「保存」チェックボックス132は、輪郭線L3を保存可能な状態とするためのチェックボックスである。「設定」ボタン133は、輪郭線L3を保存するためのボタンである。「リセット」ボタン134は、直前に保存された輪郭線L3に戻すためのボタンである。「オフセット」チェックボックス135は、トレースオフセット可能な状態とするためのチェックボックスである。トレースオフセットとは、指定された2点間の範囲で、当該範囲の指定部分に近づくにつれて移動量が大きくなるように、輪郭線L3を任意の移動方向に移動させることである。
【0067】
輪郭線L3の設定では、まず、下肢80の輪郭に沿う輪郭線L3を指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。処理部50は、入力された輪郭線L3を入力部30から取得する。例えば、下肢80の輪郭に沿って点(図示しない)が指定され、当該点を結ぶ線が輪郭線L3となる。
処理部50は、「保存」チェックボックス132のチェックを入れる操作がユーザによって入力部30に入力されると、輪郭線L3を保存可能な状態とする。そして、処理部50は、「設定」ボタン133を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、記憶部40に輪郭線L3を保存する。
処理部50は、保存された輪郭線L3が調整等で修正される場合、表示部20に修正前の輪郭線L3を破線L4(
図10参照)として表示可能である。これにより、修正前の輪郭線L3と比較して、どれぐらい修正したかをユーザが確認しながら輪郭線L3を設定できる。
【0068】
このような本発明における支柱形状設定システム1、支柱形状設定方法及びプログラムによれば、画像データIの下肢80の輪郭に沿う輪郭線L3の形状が支柱63の形状に用いられる。従って、患者の下肢80にフィットする支柱63の形状を設定できる。
【0069】
図10に示すように、処理部50は、「オフセット」チェックボックス135(
図9参照)のチェックを入れる操作がユーザによって入力部30に入力されると、トレースオフセット可能な状態とする。
【0070】
次に、処理部50は、トレースオフセットの移動方向と、トレースオフセットする範囲の上端と下端の点P4と、点P4の間の点P5を指定する操作がユーザによって入力部30に入力されると、当該移動方向と点P4の位置と点P5の位置を入力部30から取得し、トレースオフセットする。
例えば、処理部50は、大転子の位置と外踝の位置に点P4が指定され、膝関節部分の位置に点P5が指定されると、画像データIの下肢80の膝関節部分に近づくにつれて移動量が大きくなるように、輪郭線L3を移動方向に移動させることができる。なお、処理部50は、トレースオフセットする前の輪郭線L3を破線L4として表示可能である。
【0071】
このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、患者が立位となった時の下肢80の湾曲を見越して、当該下肢80の湾曲にフィットするように輪郭線L3がトレースオフセットされる。従って、例えばX脚やO脚の患者の下肢80にフィットするように支柱63の形状を設定できる。また、下肢80の湾曲を矯正するように輪郭線L3をトレースオフセットすることもできる。例えばX脚やO脚の患者の下肢80の湾曲を矯正するように支柱63の形状を設定することができる。
また、紙に描かれた輪郭線を描き直すよりも容易に、画像データI上でトレースオフセットができる。
【0072】
図11に示すように、処理部50は、トレースフォーム120の「調整」ボタン141を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、輪郭線L3を調整可能な状態とする。
例えば、トレースフォーム120には、「調整箇所」リスト142、「計算」ボタン143、「セット」ボタン144が配置されている。
【0073】
「調整箇所」リスト142は、調整箇所の寸法の現在値を表示するとともに、寸法の調整後の指示値を入力するためのリストである。「計算」ボタン143は、指示値が反映された輪郭線L3を表示するためのボタンである。「セット」ボタン144は、指示値が反映された輪郭線L3を保存するためのボタンである。
【0074】
輪郭線L3の調整では、まず、調整箇所を調整線L5として指定する操作がユーザによって入力部30に入力される。調整線L5は、水平又は斜めの線であり、例えば目印Mの位置を通過するように指定される。次に、処理部50は、指定された調整箇所の現在値の表示列142a、及び指示値の入力列142bを「調整箇所」リスト142に表示する。そして、処理部50は、入力列142bより指示値を指定し、「計算」ボタン143を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、表示部20に指示値が反映された輪郭線L3を表示させる。処理部50は、「セット」ボタン144を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、記憶部40に輪郭線L3を保存する。
【0075】
例えば、「調整箇所」リスト142において調整される寸法は、調整線L5の位置における高さ、幅(調整線L5の長さ)、周径値(調整線L5の長さに対する円周の長さ)である。幅及び周径値は、一方が指定されると、処理部50が自動的に他方を計算するように構成される。
また、指定される指示値は、上述の測定された寸法(下肢80の長さや周径値等)である。例えば、大腿支持部61及び下腿支持部62に支持された状態の下肢80の寸法となるように調整線L5を調整するため、メジャー等で縛られた状態の下肢80の寸法が測定され、当該寸法が指示値として指定される。
また、下肢80の腫れ等により寸法が大きくなることが予測される場合、寸法の予測値が指示値として指定される。
【0076】
このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、目印Mの位置が支柱63の形状の設定における基準位置となる。従って、目印Mの位置を基準位置として用いることによって、正確に支柱63の形状を設定できる。
【0077】
なお、処理部50は、トレースフォーム120の「パス」ボタン150を選択し、画像データI上で2個の点(図示しない)を指定する操作がユーザによって入力部30に入力されると、指定された2点間の距離を表示可能である。
【0078】
(支柱形状設定工程K3)
処理部50は、メインフォーム100(
図4参照)の「支柱」ボタン103を選択する操作がユーザによって入力部30に入力されると、支柱設計フォーム(図示しない)を表示する。
図12に示すように、処理部50は、支柱設計フォームにおいて支柱設計を行う操作、及び印刷を指示する操作がユーザによって入力部30に入力されると、プリンタ等の出力部(図示しない)より支柱63の最終イメージを印刷する。
支柱設計では、支柱63の下肢80からの離間距離が設定される。そして、処理部50は、離間距離だけ輪郭線L3を移動させて、最終イメージにおける支柱63を示すイメージ線M63(上側支柱63aを示すイメージ線M63a、及び下側支柱63bを示すイメージ線M63b)として寸法とともに印刷する。即ち、処理部50は、輪郭線L3の形状を支柱63の形状として設定している。
なお、支柱設計では、大腿支持部61、下腿支持部62、膝部連結部材64、足部連結部材65の位置に関する設定値が設定され、設定された設定値は、最終イメージに反映される。
【0079】
このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、輪郭線L3の修正が必要な場合、紙に描かれた輪郭線L3を描き直すよりも容易に、表示部20上で輪郭線L3を修正できる。従って、効率よく支柱63の形状を設定できる。
【0080】
また、このような本発明における支柱形状設定システム1によれば、複数のパーソナルコンピュータ2及びタブレット型コンピュータで同じ情報を表示させた場合、複数のユーザが意見を交換しながら、支柱63の形状を設計できる。例えば、支柱63の設計現場と、患者がいる現場で、同じ情報を表示させて、各現場にいるユーザが意見を交換しながら支柱63の形状を設計できる。従って、複数のユーザの意見を反映させて、患者の下肢80にフィットする形状の支柱63を設定できる。
【0081】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。更に種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。