【課題】簡易な設備構成で、取扱物及び対象物の3次元の計測をリアルタイムで行うことを可能とすることによって、取扱物の大きさをクレーンの吊上時に把握し、その情報に応じて減速、停止を行うことで、作業者などの移動している対象物を含む対象物との衝突を防止する装置を提供すること。
【解決手段】クレーン01に搭載した3次元測域センサ23を用いてクレーン01が荷役する取扱物09の荷姿情報及び対象物17の情報をリアルタイムで取得し、取扱物09と対象物17の衝突を防止する速度を空荷時の速度に取扱物09の荷姿情報及び対象物17の情報を加えて算出し、該速度に基づいてクレーンの運転を行うようにする。
クレーンの運転時に、クレーンが荷役する取扱物とクレーンの周囲に存在する対象物との衝突事故を防止するクレーンにおける衝突防止装置において、クレーンに搭載した3次元測域センサを用いてクレーンが荷役する取扱物の荷姿情報及び対象物の情報をリアルタイムで取得し、取扱物と対象物の衝突を防止する速度を空荷時の速度に取扱物の荷姿情報及び対象物の情報を加えて算出し、該速度に基づいてクレーンの運転を行うようにしたことを特徴とするクレーンにおける衝突防止装置。
前記対象物との移動時の衝突を防止する速度を、走行及び横行の同時操作時においては、走行速度と横行速度の合成速度に基づいてクレーンの運転を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクレーンにおける衝突防止装置。
前記走行及び横行の同時操作時においては、走行と横行の速度比を変えずにクレーンの運転を行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載のクレーンにおける衝突防止装置。
前記取扱物の荷姿情報に基づいて、該取扱物を所定の高さまで吊り上げたときの死角に入る範囲を算出するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のクレーンにおける衝突防止装置。
前記取扱物の荷姿情報と、カメラを用いてリアルタイムで取得した作業者の情報とを、人・形状認識パソコンに取り込んで、取扱物と作業者の衝突防止を図るようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のクレーンにおける衝突防止装置。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンにおける衝突防止装置として、距離センサを用いて対象物までの距離を求め、距離の時間変化に基づいて物体の移動速度を演算するとともに、クレーンの相対速度を取得して衝突防止制御を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、特許文献1において開示された技術では、相対速度と対象物までの距離で衝突防止を図っていた。そして、衝突防止は、クレーンそのものと対象物の衝突を防ぐことを行うものであった。このためクレーンが吊っている取扱物については配慮されておらず、特に取扱物が大きいと対象物に衝突する問題を解消できないという課題があった。
【0004】
ところで、本件出願人は、先に、測域センサ、すなわち、空間の物理的な形状データを出力することができる走査型の光波距離計をいい、「光検出と測距」又は「レーザ画像検出と測距」とも呼ばれる「LIDAR」(Light Detection and Ranging 又は Laser Imaging Detection and Rangingの略語。光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザ照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象物までの距離やその対象物の形状や性質を分析する装置。)を使用して、以下の1〜3の装置を提案した。
1.クレーン作業エリアの3次元マップを作るときに、死角が発生しているか否か判断して、死角を補う位置で再度スキャニング動作を行い、死角のない3次元マップを作成する装置(特許文献2参照。)。
2.簡易な設備構成で、外乱光対策を実施し、クレーンの作業環境に影響されることなく、作業者を確実に抽出することによって、クレーン作業エリアの安全を確認できる装置(特許文献3参照。)。
3.簡易な設備構成で、クレーンの取扱物の大きさを吊上時に把握し、その情報に応じて減速距離を変えて、作業者などの対象物との衝突を防止する装置(特許文献4参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2〜4において開示した上記1〜3の装置、特に、上記3の装置は、特許文献1において開示された技術の問題を解消できるものであった。
【0007】
ところで、上記1〜3の装置で使用されているLIDAR(例えば、北陽電機社製の「UTM−30LX−EW」)は、2次元LIDAR(以下、「2D−LIDAR」という。)と呼ばれるもので、半円状に光を照射して反射光が戻ってくるまでの時間を測定し、2D−LIDARから対象物までの各角度における距離を測定するとともに、モータコントローラによって制御されるステッピングモータを用いて2D−LIDARを回転させ、スキャニングの角度を変えることによって、対象物に対して3次元の計測を行い、立体的な形状の検出を行うようにしていた。
【0008】
このため、この2D−LIDARは、対象物の3次元の計測をリアルタイムで行うことができないことから、2D−LIDARに対して相対的に移動している対象物に対する3次元の計測を行うのに数秒以上の時間を要し、実質的にリアルタイムで行うことができず、また、相対的に移動していない対象物に対しても、立体的な形状の検出に時間を要することから、特に、特許文献3において開示した上記3の装置において、クレーンの運転中の対象物の3次元の計測や2D−LIDARに対して相対的に移動している対象物の3次元の計測検出をリアルタイムで正確に行えないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記2D−LIDARを用いる従来のクレーンにおける衝突防止装置の有する課題に鑑み、簡易な設備構成で、取扱物及び対象物の3次元の計測をリアルタイムで行うことを可能とすることによって、取扱物の大きさをクレーンの吊上時に把握し、その情報に応じて減速、停止を行うことで、作業者などの移動している対象物を含む対象物との衝突を防止する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のクレーンにおける衝突防止装置は、クレーンの運転時に、クレーンが荷役する取扱物とクレーンの周囲に存在する対象物との衝突事故を防止するクレーンにおける衝突防止装置において、クレーンに搭載した3次元測域センサを用いてクレーンが荷役する取扱物の荷姿情報及び対象物の情報をリアルタイムで取得し、取扱物と対象物の衝突を防止する速度を空荷時の速度に取扱物の荷姿情報及び対象物の情報を加えて算出し、該速度に基づいてクレーンの運転を行うようにしたことを特徴とする。
ここで、「3次元測域センサ」(Laser Range Scanner 又は 3D Scanner)とは、空間の物理的な3次元の形状データを同時に出力することができる走査型の光波距離計をいう。
【0011】
この場合において、前記対象物との移動時の衝突を防止する速度を、走行及び横行の同時操作時においては、走行速度と横行速度の合成速度に基づいてクレーンの運転を行うようにすることができる。
【0012】
また、前記走行及び横行の同時操作時においては、走行と横行の速度比を変えずにクレーンの運転を行うようにすることができる。
【0013】
また、前記取扱物の荷姿情報に基づいて、該取扱物を所定の高さまで吊り上げたときの死角に入る範囲を算出するようにすることができる。
【0014】
前記取扱物の荷姿情報と、カメラを用いてリアルタイムで取得した作業者の情報とを、人・形状認識パソコンに取り込んで、取扱物と作業者の衝突防止を図るようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクレーンにおける衝突防止装置によれば、簡易な設備構成で、取扱物及び対象物の3次元の計測をリアルタイムで行うことを可能とすることによって、取扱物の大きさをクレーンの吊上時に把握し、その情報に応じて減速、停止を行うことで、作業者などの移動している対象物を含む対象物との衝突を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のクレーンにおける衝突防止装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜
図2に、本発明に係るクレーンにおける衝突防止装置を適用した天井クレーンの一実施例を示す。
【0019】
図1は、本発明に係るクレーンにおける衝突防止装置を天井クレーンに適用した概略構成図で、天井クレーン01下の作業者13は、取扱物09を他の場所に移動させるためフック05に玉掛け作業を行っている。この状態の安全確認を実施するためにクレーン01のクラブ02に設置したカメラ21(ここで、カメラは、死角をなくすために、クラブ02の横行方向の前後に2台のカメラ21a、21bを設けることもできる。)で監視している。また、取扱物09の形状を計測するために、天井クレーン01上のクラブ02に測域センサ23を設置するようにしている。
【0020】
図2に、このクレーンにおける衝突防止装置の制御構成を示す。
カメラ21と赤外線投光器22が、演算装置としての人・形状認識パソコン26に接続されている。クレーンコントローラ30から人・形状認識パソコン26にクレーン作業エリアの作業者13を検出するように指示が来ると、人・形状認識パソコン26は赤外線投光器22のON/OFFを行い、それに同期してカメラ21の撮影を行う。
【0021】
このクレーンにおける衝突防止装置は、汎用の天井クレーンに適用することができ、天井クレーン01には、汎用の天井クレーンが備える、例えば、天井クレーン01の走行位置を把握するための走行レーザ距離計24、横行位置を把握するための横行レーザ距離計25等の機器を備えるようにしている。
天井クレーン01は3方向の動作が可能となっており、巻上下動作を行う巻上モータ32、巻上モータの速度制御を行う巻上インバータ31、横行動作を行う横行モータ34、横行モータの速度制御を行う横行インバータ33、走行動作を行う走行モータ36、走行モータの速度制御を行う走行インバータ35からなる。
【0022】
測域センサ23は、演算手段としての人・形状認識パソコン26に接続されている。
ここで、測域センサ23は、空間の物理的な形状データを出力することができる走査型の光波距離計をいい、ここでは、「光検出と測距」又は「レーザ画像検出と測距」とも呼ばれる「LIDAR」(Light Detection and Ranging 又は Laser Imaging Detection and Rangingの略語。光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザ照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の形状や性質を分析する装置。)、より具体的には、3次元LIDAR(以下、「3D−LIDAR」という。)、例えば、Velodyne Lidar, Inc.製の「Puck」や「Puck-Hi-Res」を使用するようにしている。
この測域センサ23としての3D−LIDARは、2次元(平面)状に光を照射して反射光が戻ってくるまでの時間を測定することで、取扱物09のように床面より高い物体について計測を行いその座標を求める。
測域センサ23の視野内にあるすべての高さを持つ物体、すなわち、取扱物09や対象物の計測を行い、その座標を算出する。
これにより、取扱物09や対象物に対して3次元の計測をリアルタイムで行い、立体的な形状の検出を行うようにする。
【0023】
以下、本発明に係るクレーンにおける衝突防止装置を、この天井クレーン01の動作に基づいて説明する。
天井クレーン01は、クラブ02が図面の矢印方向に動作し、横行と直角方向に走行車輪06を備えた天井クレーン01が走行レール07上を走行して目的位置に移動する。
【0024】
天井クレーン01が目的位置へ移動完了後、フック05下の取扱物09の検知を行う。
人・形状認識パソコン26は、取扱物09の形状を測域センサ23を使用して計測する。
測域センサ23は、2次元(平面)状に光を照射して反射光が戻ってくるまでの時間を測定し、測域センサ23から対象までの距離を測定する。
図7は、そのイメージ図で2次元(平面)状に光をスキャンし、取扱物09からの距離を測定する。
これにより、取扱物09に対して3次元の計測をリアルタイムで行い、人・形状認識パソコン26はその立体的な形状を求める。
【0025】
天井クレーン01の移動路上に居る作業者13の検知は、測域センサ23によって行うこともできるが、本実施例においては、作業者13と他の物体とを区別して識別するために、作業者13のヘルメット11に、
図3に示す再帰性反射材からなるマーク12を取り付け、カメラ21の近くに投光器22を設けて、
図4に示す投光器22のON/OFFに同期してクレーン周辺を撮像する。撮像した投光器のON時の映像とOFF時の映像の差分を取って、
図5に示すヘルメット11に取り付けた再帰性反射材のマーク映像を抽出し、作業者13の認識を行う。
なお、作業者13の検知は、このカメラ21を用いて行う方法と、測域センサ23を用いて行う方法とを併用して行うこともできる。
図5(a)は、赤外線投光器22がOFF時の画像例で、
図5(b)は、赤外線投光器22がON時の画像例である。人・形状認識パソコン26はヘルメット11に付けられた再回帰性反射材からなるマーク12の映像をON/OFF時に分けてカメラ21から画像を取り込んで、ON時の画像からOFF時の画像の差を取ることにより
図5(c)に示すようなマークを抽出した画像例を得ることができる。
ここで、再回帰性反射材には、従来公知のガラスビーズ等を用いたあらゆる方向から入射した光に対して常に入射した方向に光を反射させる、具体的には、入射した光が光源に向けて反射する特性を備えた素材を用いることができる。
【0026】
巻上動作を行ったときに、取扱物09の大きさ情報(Wm、Ws)を人・形状認識パソコン26は、クレーンコントローラ30に送る。
【0027】
ここでは、
図8に示すように、クレーンコントローラ30は、天井クレーン01が取扱物09を持った場合の減速距離Lm、Lsは、空荷のときの減速距離に取扱物09の大きさの1/2の長さを加えたものとして算出する。
【0028】
天井クレーン01は、取扱物09を巻き上げた後に、移動(走行及び/又は横行)動作に移る。
【0029】
人・形状認識パソコン26は、移動(走行及び/又は横行)動作時にカメラ21を用いて進行方向に作業者13が居ないかチェックしながら走行する。
作業者13の検出は、カメラ21、投光器22及び人・形状認識パソコン26を用いて行う。
【0030】
人・形状認識パソコン26が、作業者13を発見したときは、「空荷時の減速距離+取扱物09の大きさの1/2の長さ」の距離で減速処理を行うようにクレーンコントローラ30に送信する。同時に作業者13に対して音声ガイダンス装置63から警告を発報するようにクレーンコントローラ30に送信する。
【0031】
警告を発報しても作業者13が居続けた場合は、「空荷時の停止距離+取扱物09の大きさの1/2の長さ」の距離で停止処理を行うように人・形状認識パソコン26はクレーンコントローラ30に送信する。
【0032】
このようにして人・形状認識パソコン26はクレーンコントローラ30と連動して衝突防止を実現する。
【0033】
ここで、上記説明は、対象物を作業者13として説明したが、対象物が床面に置かれた物体の場合にも同様に衝突防止の機能を持たせるようにすることができる。
具体的には、操業に入って、
図9に示すように、天井クレーン01が、ワイヤロープ04に取り付けたフック05で取扱物09を吊って目的地まで移動する場合は、測域センサ23によって床面に置かれた物体17を検知するようにする。
【0034】
移動(走行及び/又は横行)を開始して点線のような位置で測域センサ23は物体17を検知する。
移動を続けて、2点鎖線の位置で取扱物09の搬送位置より背の高い物体との判断を人・形状認識パソコン26は行い、クレーンコントローラ30に減速を指示する。
このとき、
図8に示した場合と同様に、「空荷時の減速距離+取扱物09の大きさの1/2の長さ」の距離、すなわち、減速距離Lm、Lsで減速処理を行うようにする。
【0035】
クレーンコントローラ30は走行インバータ35に減速を指示する。同時に衝突警報ランプ61を点灯させる。
【0036】
さらに移動が継続された場合は、人・形状認識パソコン26は、クレーンコントローラ30に停止指示を行う。
このとき、「空荷時の停止距離+取扱物09の大きさの1/2の長さ」の距離で停止処理を行うようにする。
【0037】
クレーンコントローラ30は走行インバータ35に停止を指示する。同時に停止ランプ62を点灯させる。
【0038】
ところで、本実施例の装置においては、
図10に示すように、取扱物09を巻上時の運搬高さがクレーン協会出典(2003年9月)クレーン誌に掲載の安全のすすめ「玉掛け作業者の再教育について」の荷の巻上時の留意点に記載されている、取扱物09を床面から原則として人に当たらない2mの高さまで巻き上げた段階で、無線機子機38を操作している作業者13(以下、「オペレータ」という。)に音声ガイダンス装置63からアナウンスを行うとともに、巻上停止を行うようにしている。
【0039】
さらに、本実施例の装置においては、作業者13に対する安全性を高めるため、取扱物09の荷姿情報に基づいて、取扱物09を所定の高さまで吊り上げたときの死角に入る範囲を人・形状認識パソコン26を用いて算出するようにしている。
具体的には、測域センサ23としての3D−LIDARにより計測した取扱物09の高さ方向の情報と水平方向の情報から、取扱物09を作業者13(オペレータを含む取扱物09の周囲に居る作業者)に当たらない2m巻き上げた場合に、カメラ21(21a、21b)から死角とならない範囲の算出を人・形状認識パソコン26を用いて行う。
以下、カメラ21の視野における取扱物09が床にある場合と2m巻き上げた場合の人検知範囲の具体的な事例について、
図11〜
図13を用いて説明する。
【0040】
[
図11]
1.カメラ視野(床面) 20000mm×高さ10000mm
2.取扱物サイズ 高さ2000mm×幅4000mm
3.人高さ 1700mm
4.クレーン走行定格速度 1m/s
5.クレーン走行減速時間 6s
6.クレーン停止距離 1/2×1×6=3m=3000mm
7.床に取扱物がある場合の死角とならない視野端(X1:取扱物の中心からの距離)は、相似の関係から、
2000:8000=X1:10000
X1=2500mm
となる。
8.取扱物を2m巻き上げた場合の死角とならない視野端(X2:取扱物の中心からの距離)は、相似の関係から、
2000:6000=X2:10000
X2=3333mm
となる。
9.人高さを1700mmとすると、カメラ視野端における人検知可能位置は、
10000−1700=8300mm
10.取扱物を運ぶ高さとして、2mまで巻き上げるとすると、取扱物の死角とならない位置とクレーンの走行定格速度から停止した場合、カメラ視野端の人を検知してから停止するまでの距離は、
8300−1/2×1000×6−3333
=1967mm>0
となる。
11.この場合、カメラ視野端で人を検知した場合、1967mm手前で取扱物が人にぶつからずに停止することが可能となる。
【0041】
[
図12]
上記関係を一般的な数値とすると、3D−LIDARで取扱物の形状を検出した場合の取扱物の移動方向に対する幅の半分をW[mm]、取扱物の高さをH2[mm]、フック中心から床面までの距離をH1[mm]、フック中心からカメラ視野端までの距離の半分をL1[mm]、人高さを1700[mm]、取扱物を2m巻き上げた位置における取扱物から死角とならない人の位置をL2[mm]、クレーンの移動速度をV[m/s]、インバータの減速時間をt[s]、取扱物の振れに対する人までの距離の余裕をL3[mm]とすると、
(L1−1700)−L2−(1/2×V×t×1000)−L3>0
L1−L2−L3−1700>1/2×V×t×1000
(L1−L2−L3−1700)/500>V×t ・・・(1)
となる。
取扱物を2m巻き上げた場合に人が死角とならない位置L2は、フック位置H1との相似の関係から、
W:(H1−H2−2000)=L2:H1
(H1−H2−2000)×L2=(W×H1)
L2=(W×H1)/(H1−H2−2000) ・・・(2)
となる。
(2)を(1)に代入して、
(L1−{(W×H1)/(H1−H2−2000)}―L3−1700)/500>V×t
となる。
上記関係を満たすようにクレーンの移動速度と減速時間を制御することで、人と取扱物がぶつからない速度に制御可能となる。
【0042】
[
図13]
1.床に取扱物がある場合の死角とならない視野端(X1:取扱物の中心からの距離)は、相似の関係から、
2000:8000=X1:10000
X1=2500mm
となる。
2.取扱物を4m巻き上げた場合の死角とならない視野端(X2:取扱物の中心からの距離)は、相似の関係から、
2000:4000=X2:10000
X2=5000mm
となる。
3.クレーン走行定格速度1m/s、減速時間6sの場合、停止距離が1/2×1×6=3m=3000mmのため、カメラ視野端から取扱物を4m巻き上げて死角とならない視野端は、3300mmしかなく、人を検知してから停止するまでの距離3000mmを引くと、300mmしかないため、巻き上げ過ぎた場合も安全を確保できない。
【0043】
そして、取扱物09の荷姿情報に基づいて、取扱物09を所定の高さまで吊り上げたときの死角に入る範囲(及びその周囲)に作業者13(オペレータを含む取扱物09の周囲に居る作業者)が存在する場合は、自動的に巻き上げを停止し、オペレータに音声ガイダンス装置63から音声アナウンスにより注意喚起を行うようにする。
【0044】
ところで、天井クレーン01が、ワイヤロープ04に取り付けたフック05で取扱物09を吊って目的地まで移動する場合、走行及び横行の同時操作をする場合がある。
この走行及び横行の同時操作時において、本実施例の装置においては、走行速度と横行速度の合成速度に基づいて、さらに、走行と横行の速度比を変えずに天井クレーン01の運転を行うようにする。
【0045】
具体的には、
図6に示すように、例えば、走行速度60[m/min]、横行速度40[m/min]で移動する場合、合成速度は、
(60
2+40
2)
1/2≒72[m/min]
となり、走行若しくは横行の単独操作時よりも速度が上がってしまい、カメラ視野との関係で、取扱物と対象物との衝突事故を防止できないおそれがあった。
これに対処するために、走行速度と横行速度の合成速度に基づいて、さらに、走行と横行の速度比を変えずに天井クレーン01の運転を行うようにすることで、取扱物と対象物との衝突事故を防止するとともに、取扱物の軌跡を定格速度で移動した軌跡と合わせることが可能となる。
具体的には、取扱物と対象物とが衝突しないように、例えば、速度を60%に制限する場合は、走行速度を60×0.6=36[m/min]、横行速度を40×0.6=24[m/min]とすることで、合成速度は、
(36
2+24
2)
1/2≒43[m/min]
となる。
【0046】
以上、本発明のクレーンにおける衝突防止装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。