特開2021-54865(P2021-54865A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-54865ネココロナウイルス感染を処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-54865(P2021-54865A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】ネココロナウイルス感染を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20210312BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20210312BHJP
【FI】
   A61K31/706
   A61P31/12 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2021-2849(P2021-2849)
(22)【出願日】2021年1月12日
(62)【分割の表示】特願2019-550757(P2019-550757)の分割
【原出願日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】62/470,944
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ジョセフ ペロン
(72)【発明者】
【氏名】ニールス シー. ペダーセン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC61
(57)【要約】
【課題】ネココロナウイルス感染を処置する方法を提供すること
【解決手段】 ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の、アザ−糖含有ヌクレオシドアナログまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法が、提供される。いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、ネコ腸コロナウイルス(FECV)またはネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)である。ネコ伝染性腹膜炎(FIP)を処置する方法であって、治療上有効な量のアザ−糖含有ヌクレオシドアナログまたはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法もまた提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年3月14日に出願された米国仮出願第62/470,944号
の優先権を主張し、この仮出願は、あらゆる目的でその全体について本願明細書中に援用
される。
【0002】
分野
本願発明は概して、ネココロナウイルス感染を処置するための方法および化合物、特に
、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)を処置するための方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
背景
ネココロナウイルス(FCoV)は、コロナウイルス科(エンベロープを有する、ポジ
ティブ鎖RNAのウイルスのグループ)に属し、一般にネコにおいて見出される。自然に
おいて、FCoVは2つの異なるバイオタイプ:ネコ腸コロナウイルス(FECV)、お
よびFECVの変異型であるネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)として存在する。
【0004】
FECV感染はネコにおいて広まっており、世界中で、ネコの推定40〜80%がこの
ウイルスを排出している。FECVは、ネコの腸管上皮細胞に慢性的に感染し、典型的に
は糞口経路を介して伝染される。ネコにおけるFECV感染は主に無症状性であり、一部
のネコが下痢、嘔吐、食欲の喪失、および熱を体験する。
【0005】
FIPVバイオタイプは、FECV中のウイルス3cプロテアーゼ遺伝子を不活化する
一塩基多型または欠失の結果として生じるが、もっとも、ウイルスのスパイクタンパク質
中の変異も関与する。3cプロテアーゼの不活化は細胞のトロピズムを変え、ウイルスが
マクロファージ中で複製されることを可能にし、FIPVの全身播種およびネコ伝染性腹
膜炎(FIP)の発症を容易にする。
【0006】
FIPは、ネコにおける進行性の免疫関連疾患である。FIP疾患は、ウェットまたは
ドライなFIPの形態を取り得る。ウェットFIPは内臓の漿膜および網の炎症と関連し
、腹腔および/または胸腔への流体の滲出をもたらす。ドライFIPは、肝臓、中枢神経
系、または眼などの実質性器官(paracnchymatous organ)の肉芽
腫の関与により特徴づけられる。FIPのウェットまたはドライな形態のどちらの発達も
、決まって致死的である。
【0007】
FIPは、ネコ密度の高い環境(複数のネコのいる家庭、ネコ飼育所、収容所、および
ネコの救助施設)において、主要な問題である。この疾患はより若いネコ(<3歳)、特
に子猫においてもっとも流行し、これは、FECVを複製するレベルが高く、FIPVバ
イオタイプへの変異の可能性を増加させることと、これらの変異を有するウイルスに対す
る抵抗性が低いこととのためである。FIPは、2歳未満のネコの死の主要な原因であり
、世界中で、0.3から1%の間のネコを殺していると推定されている。
【0008】
現在、FIPを処置するために、承認されたワクチンもなく、有効な抗ウイルス治療も
ない。したがって、ネコにおけるFIPを処置するための化合物の開発が、非常に必要と
されている。拘束されるものではないが、FCoVまたはFIPVを処置することが、F
IPを予防または処置することと仮定した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
いくつかの実施形態において、本願発明は、ネココロナウイルス感染を処置する方法で
あって、治療上有効な量の化合物:
【化1】
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0010】
ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、化合物1を用いた、CRFK細胞におけるネココロナウイルスの阻害を示し、3、2、および1μMでほぼ100%阻害;0.75μMのEC50であった。
【0012】
図2図2は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物1の抗ウイルス活性を示す。
【0013】
図3図3は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物1の抗ウイルス活性を示す。
【0014】
図4図4は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物2の抗ウイルス活性を示す。
【0015】
図5図5は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物9の抗ウイルス活性を示す。
【0016】
図6図6は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物3の抗ウイルス活性を示す。
【0017】
図7図7は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物6の抗ウイルス活性を示す。
【0018】
図8図8は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物1の抗ウイルス活性を示す。
【0019】
図9図9は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物4の抗ウイルス活性を示す。
【0020】
図10図10は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物5の抗ウイルス活性を示す。
【0021】
図11図11は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物3の抗ウイルス活性を示す。
【0022】
図12図12は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物2の抗ウイルス活性を示す。
【0023】
図13図13は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物7の抗ウイルス活性を示す。
【0024】
図14図14は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物8の抗ウイルス活性を示す。
【0025】
図15図15は、CRFK細胞における、FIPVに対する化合物9の抗ウイルス活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
I.定義
別途述べない限り、本願明細書中で用いられる場合、以下の用語および句は、以下の意
味を有することが意図される。
【0027】
用語「処置する」または「処置」は、本願明細書中で用いられる場合、別途示さない限
り、このような用語が適用される疾患もしくは状態、もしくはこのような疾患もしくは状
態の1つもしくはそれより多くの症状の進行を、逆行させる、緩和する、または阻害する
こと、あるいは、このような用語が適用される疾患もしくは状態、もしくはこのような疾
患もしくは状態の1つもしくはそれより多くの症状を予防することを意味する。
【0028】
用語「治療上有効な量」は、本願明細書中で用いられる場合、本願明細書中に記載の組
成物中に存在する化合物1またはその薬学的に許容される塩の量であって、処置される被
験体の、気道および肺の分泌物および組織中または血液中で所望の薬物レベルを提供し、
このような組成物が選択された投与経路で投与されたときに、予想される生理応答または
所望の生物学的効果を与えるために必要な量である。その正確な量は、例えば、組成物の
比活性、用いられる送達デバイス、組成物の物理特性、その意図される使用と、ならびに
疾患状態の重症度などの動物の考慮事項、獣医の協力などの多数の因子に依存し、本願明
細書中で提供される情報に基づき、当業者により容易に決定され得る。
【0029】
本願明細書中に記載の、化合物1または化合物2から9への言及は、これらの薬学的に
許容される塩への言及も含むことがある。薬学的に許容される塩の例として、アルカリ金
属またはアルカリ土類(例えば、Na、Li、K、Ca+2、およびMg+2)、
アンモニウム、およびNR(ここで、Rは本願明細書中で定義される)などの適切な
塩基に由来する塩が挙げられる。窒素原子またはアミノ基の薬学的に許容される塩として
、(a)例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸など無機酸と
形成される酸付加塩;(b)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、
フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、イセチオン酸
、ラクトビオン酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタ
レンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナ
フタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸、マロン酸、スルホサリチル酸、グリコール
酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエート、パモエート、サリチル酸、ステアリン酸、フタ
ル酸、マンデル酸、乳酸、エタンスルホン酸、リシン、アルギニン、グルタミン酸、グリ
シン、セリン、スレオニン、アラニン、イソロイシン、ロイシンなどの有機酸と形成され
る塩;および(c)例えば、塩素、臭素、およびヨウ素といったアニオン元素から形成さ
れる塩が挙げられる。化合物のヒドロキシル基の薬学的に許容される塩として、Na
よびNRなどの適切なカチオンと組み合わされた前記化合物のアニオンが挙げられる
【0030】
化合物1および化合物2から9、またはこれらの薬学的に許容される塩は、様々な多形
または擬似多形として存在してよい。本願明細書中で用いられる場合、結晶多形とは、結
晶質の化合物が様々な結晶構造で存在する能力を意味する。結晶多形は、結晶充填の違い
(充填多形)、または同一分子の異なるコンフォマー間での充填の違い(配座多形)から
生じ得る。本願明細書中で用いられる場合、結晶擬似多形とは、化合物の水和物または溶
媒和物が様々な結晶構造で存在する能力を意味する。本願発明の擬似多形は、結晶充填の
違い(充填擬似多形)により、または同一分子の異なるコンフォマー間での充填の違い(
配座擬似多形)により存在し得る。本願発明は、化合物1またはその薬学的に許容される
塩についての、すべての多形および擬似多形を包含する。
【0031】
化合物1および化合物2から9、ならびにこれらの薬学的に許容される塩は、アモルフ
ァス固体としても存在してよい。本願明細書中で用いられる場合、アモルファス固体とは
、その固体中に原子の位置についての長距離秩序がない固体である。この定義は、結晶サ
イズが2ナノメートルまたはそれ未満である場合にも適用される。溶媒を含む添加剤を、
本願発明のアモルファス形態を作るために用いてもよい。いくつかの実施形態において、
本願発明は、化合物1またはその薬学的に許容される塩のすべてのアモルファス形態を包
含する。
【0032】
いくつかの実施形態において、化合物1および化合物2から9、またはこれらの薬学的
に許容される塩は、化合物の非標識形態および同位体標識形態を表すことも意図される。
同位体標識化合物は本願明細書中に与えられる式により記載される構造を有するが、ただ
し、1つまたはそれより多くの原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子に
より置き換えられている。本開示の化合物に組み込まれ得る同位体の例として、水素、炭
素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体(限定されないが、H(重水素,
D),H(トリチウム),11C,13C,14C,15N,18F,31P,32
35S,36Cl,および125Iなど)が挙げられる。本開示の種々の同位体標識化
合物、例えば、放射性同位体(H,13C,および14Cなど)が組み込まれた同位体
標識化合物。このような同位体標識化合物は、薬物または基質の組織内分布アッセイを含
む、代謝の研究、反応動態の研究、検出またはイメージングの技術(陽電子放出断層法(
PET)もしくは単一光子放出コンピューター断層法(SPECT))に、あるいは放射
性処置の領域(radioactive treatmentarean)に有用であり
得る。
【0033】
本開示は、化合物1および化合物2から9であって、炭素原子に結合している1からn
個までの水素が重水素に置き換えられている化合物も含み、ここで、nはその分子中の水
素数である。このような化合物は、哺乳動物に投与された場合、代謝に対する抵抗性の増
大を示し、そのため、化合物1の半減期を延長するのに有用である。例えば、Foste
r, “Deuterium Isotope Effects in Studies
of Drug Metabolism”, Trends Pharmacol.
Sci. 5(12):524−527 (1984)を参照のこと。このような化合物
は、本分野で周知の方法、例えば、1つまたはそれより多くの水素が重水素により置き換
えられた出発物質を用いることにより合成される。
【0034】
重水素により標識または置換された本開示の治療化合物は、改善されたDMPK(薬物
代謝および薬物動態)特性を有し得、このDMPK特性は、分布、代謝、および排出(A
DME)に関連する。重水素などのより重い同位体との置換は、より大きな代謝安定性か
ら生じるある特定の治療上の利点(例えば、in vivo半減期の延長、必要用量の低
減、および/または治療指数の改善)を提供し得る。18F標識化合物は、PETまたは
SPECTの研究に有用かもしれない。本開示の同位体標識化合物およびこれらのプロド
ラッグは概して、下記のスキームまたは実施例および調製において開示される手順を行う
ことで、容易に入手可能な同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いることによ
り調製され得る。
【0035】
このような、より重たい同位体の濃度、特に重水素の濃度は、同位体富化係数により定
められ得る。本開示の化合物中で特定の同位体として特に指定されないいずれの原子も、
その原子の任意の安定な同位体を表すことが意図されている。別途述べない限り、ある位
置が「H」または「水素」として特に指定される場合、その位置は、天然の存在比の同位
体組成で水素を有すると理解される。
【0036】
II.ネココロナウイルスの処置
これから、特定の実施形態について詳細に言及し、その特定の実施形態の例を、付属の
説明、構造、および式において示す。本願発明は列挙した実施形態と合わせて記載される
が、これらは、本願発明をこれらの実施形態に限定するよう意図されているものではない
ことが理解される。対して本願発明は、すべての代替物、改変物、および均等物に及ぶこ
とが意図されており、これらは、本願発明の特許請求の範囲に含まれ得る。
【0037】
A.化合物
本願の方法に有用な化合物として、以下が挙げられる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0038】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は:
(2R,3R,4S,5R)−2−(4−アミノピロロ[2,1−f][1,2,4]ト
リアジン−7−イル)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ
フラン−2−カルボニトリル
である。
【0039】
上記で提供された化合物名称は、ChemBioDraw Ultraを用いて命名さ
れ、当業者は、一般的に認識される他の命名システムおよび記号を用いて、化合物の構造
が命名されても同定されてもよいことを理解する。例として、化合物は、一般的な名称、
系統名、または非系統名により命名されても同定されてもよい。化学の分野において一般
的に認識される命名システムおよびシンボルとして、Chemical Abstrac
t Service(CAS)およびInternational Union of
Pure and Applied Chemistry(IUPAC)が挙げられるが
、これらに限定されない。したがって、化合物1は:
【化4】
IUPACのもと(2R,3R,4S,5R)−2−(4−アミノピロロ[2,1−f]
[1,2,4]トリアジン−7−イル)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチ
ル)テトラヒドロフラン−2−カルボニトリルと命名されても同定されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物2:
【化5】
である。化合物2は、((((2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノピロロ[2
,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−5−シアノ−3,4−ジヒドロキシ
テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(S,S’−(((ヒドロキシホスホリル)
ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(2,2−ジメチルプロパンチ
オエート))と命名されても同定されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物3:
【化6】
である。化合物3は、IUPACのもと2−エチルブチル((((2R,3S,4R,5
R)−5−(4−アミノピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−
5−シアノ−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノ
キシ)ホスホリル)−L−アラニナートと命名されても同定されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物4:
【化7】
である。化合物4は、IUPACのもと(2R,3R,4R,5S)−5−(4−アミノ
ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−4−フルオロ−3−ヒド
ロキシ−2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−カルボニトリルと命名され
ても同定されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物5:
【化8】
である。化合物5は、IUPACのもと(2R,3S,4R,5S)−5−(4−アミノ
ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−3,4−ジヒドロキシ−
2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−カルボニトリルと命名されても同定
されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物6:
【化9】
である。化合物6は、((((2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノピロロ[2
,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−2−シアノ−3,4−ジヒドロキシ
テトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(S,S’−(((ヒドロキシホスホリル)
ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(2,2−ジメチルプロパンチ
オエート))と命名されても同定されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物7:
【化10】
である。化合物7は、IUPACのもと2−エチルブチル((((2R,3S,4R,5
S)−5−(4−アミノピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−
2−シアノ−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノ
キシ)ホスホリル)−L−アラニナートと命名されても同定されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物8:
【化11】
である。化合物8は、((2R,3S,4R,5R)−5−(4−アミノピロロ[2,1
−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−5−シアノ−3,4−ジヒドロキシテト
ラヒドロフラン−2−イル)メチルホスホロジアミダートビス(2−エチルブチル−L−
アラニナート)と命名されても同定されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、本願発明の方法に有用な化合物は、化合物9:
【化12】
である。化合物9は、IUPACのもと2−エチルブチル((((2R,3S,4R,5
R)−5−(4−アミノピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル)−
5−シアノ−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メトキシ)(フェノ
キシ)ホスホリル)−D−アラニナートと命名されても同定されてもよい。
【0048】
B.方法
本願発明は、ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の、化
合物1から化合物9の化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含す
る方法を提供する。
【0049】
薬物動態の証拠から、イヌまたはヒトなどの他の種と比べて、ネコが異なる薬物代謝プ
ロファイルを有することが実証されている。例えば、ネコは、より遅い薬物排除速度を有
し、これは、多くの薬物コンジュゲート酵素(グルクロン酸化(CYP)、メチル化(T
PMT)、およびアセチル化(NAT1およびNAT2)に関与する酵素を含む)が存在
しないこと、またはその発現の低減に起因する。結果として、ヒトの薬物代謝および薬物
排除は、ネコにおいて観察されるものとほとんど相関しない(Vet Clin Sma
ll Anim 2013, 43, 1039−1054)。
【0050】
いくつかの実施形態において、本願発明は、ネココロナウイルス感染を処置する方法で
あって、治療上有効な量の化合物:
【化13】
【化14】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0051】
ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化15】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法が、提供される。
【0052】
いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、ネコ腸コロナウイルス(FECV)
またはネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)である。
【0053】
ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化16】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法が、提供される。
【0054】
いくつかの実施形態において、コロナウイルスは、ネコ腸コロナウイルス(FECV)
またはネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)である。
【0055】
いくつかの実施形態において、本願発明は、ネコ腸コロナウイルス(FECV)感染を
処置する方法であって、治療上有効な量の化合物:
【化17】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、ネコ腸コロナウイルス(FECV)感染を処置する方法
であって、治療上有効な量の
【化18】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
【0057】
いくつかの実施形態において、本願発明は、伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)感染を
処置する方法であって、治療上有効な量の化合物:
【化19】
【化20】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態において、伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)感染を処置する方法
であって、治療上有効な量の
【化21】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
【0059】
いくつかの実施形態において、本願発明は、ネコ伝染性腹膜炎(FIP)を処置する方
法であって、治療上有効な量の化合物:
【化22】
【化23】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する方法を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態において、ネコ伝染性腹膜炎(FIP)を処置する方法であって、
治療上有効な量の
【化24】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
【0061】
本願発明の化合物は、当業者に公知の方法により調製され得る。例えば、本願発明の化
合物は、米国特許第8,008,264号、および同第7,973,013号、ならびに
PCT公開第WO2012/012776号、および同第WO2015/069939号
に記載の方法にしたがって調製され得る。
【0062】
III.医薬製剤
本願発明の化合物は、従来のキャリアおよび賦形剤と製剤され、このキャリアおよび賦
形剤は、通常の実施に合わせて選択される。錠剤は、賦形剤、流動化剤、フィラー、結合
剤などを含有する。水性製剤は、無菌形態で調製され、経口投与以外の投与により送達さ
れることが意図される場合、一般に水性製剤は等張である。すべての製剤は、必要に応じ
て賦形剤(“Handbook of Pharmaceutical Excipie
nts” (1986)に記載される賦形剤など)を含有する。賦形剤として、アスコル
ビン酸および他の抗酸化物質、EDTAなどのキレート剤、デキストラン、ヒドロキシア
ルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などの炭水化物
などが挙げられる。製剤のpHは約3から約11までの範囲であるが、通常、約7から1
0である。いくつかの実施形態において、製剤のpHは約2から約5までの範囲であるが
、通常、約3から4である。
【0063】
有効成分は単独で投与され得るが、医薬製剤として有効成分を与えることが好ましい場
合がある。獣医のための製剤は、少なくとも1種の有効成分を、上記で定めたように、そ
の有効成分のための1種またはそれより多種の許容されるキャリア、および必要に応じて
他の治療成分、特に本願明細書中で議論されるような追加の治療成分と合わせて含有して
もよい。キャリア(複数可)は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ、そのキャリアの
受容者に生理学的に無害であるという意味で「許容され」なければならない。
【0064】
製剤は、前記の投与経路に適した製剤を含む。製剤は、単位剤形で便利よく与えられて
よく、薬学の分野において周知の方法のいずれかにより調製されてよい。技術および製剤
は概して、Remington’s Pharmaceutical Sciences
(Mack Publishing Co., Easton, PA)において見出
される。そのような方法は、1種またはそれより多種の副成分を構成するキャリアと有効
成分を会合させる工程を含む。一般に、製剤は、液体キャリアもしくは微粉固体キャリア
、またはその両方と有効成分を均一かつ密接に会合させる工程と、その後に、必要があれ
ば製品を形作る工程とにより調製される。
【0065】
経口投与に適した、本願発明の製剤は、それぞれが所定の量の有効成分を含有する別個
の単位(カプセル剤、カシェ剤、または錠剤など)として;散剤または顆粒剤として;水
性または非水性の液体中の溶液または懸濁剤として;あるいは、水中油型液体乳剤または
油中水型液体乳剤として与えられてよい。有効成分は、ボーラス剤、舐剤、またはパスタ
剤として投与されてもよい。
【0066】
錠剤は、圧縮または成型により、必要に応じて1種またはそれより多種の副成分を用い
て作られる。圧縮された錠剤は、粉剤または顆粒剤などの自由流動性形態の有効成分であ
って、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤、または分散剤
と混合された有効成分を、適した機械で圧縮することにより調製されてよい。成型された
錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化有効成分の混合物を、適した機械で成型する
ことにより作られてよい。錠剤は必要に応じて、コートされても割線をつけられてもよく
、そして必要に応じて、錠剤からの有効成分の徐放または制御放出を提供するように製剤
される。
【0067】
眼または他の外部組織(例えば、口および皮膚)の感染症に対して、製剤は、好ましく
は局所軟膏剤またはクリーム剤として塗布され、この局所軟膏剤またはクリーム剤は、有
効成分(複数可)を、例えば、0.075から20%w/w(有効成分(複数可)を、0
.1%w/w刻みの0.1%と20%との間の範囲内で、例えば、0.6%w/w、0.
7%w/wで含有する)、好ましくは0.2から15%w/w、もっとも好ましくは0.
5から10%w/wの量で含有する。軟膏剤として製剤される場合、有効成分は、パラフ
ィン性または水混和性の軟膏基剤のいずれかと用いられてもよい。あるいは、有効成分は
、水中油型クリーム基剤を有するクリーム剤に製剤されてもよい。
【0068】
所望があれば、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコ
ール、すなわち、2つまたはそれより多くのヒドロキシル基を有するアルコール(プロピ
レングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール
、およびポリエチレングリコール(PEG400を含む)、ならびにこれらの混合物など
)を含有してもよい。局所製剤は、望ましくは、肌または他の病変部を通じての有効成分
の吸収または浸透を増強する化合物を含有する。このような真皮浸透増強剤の例として、
ジメチルスルホキシドおよび関連するアナログが挙げられる。
【0069】
本願発明の乳剤の油相は、公知の成分から公知の方法で構成されてもよい。油相は、単
に乳化剤(もしそうでなければ、エマルジェントとしても知られる)を含有しているにす
ぎない可能性があるが、それは、望ましくは、少なくとも1種の乳化剤と、脂肪もしくは
油、または脂肪および油の両方との混合物を含有する。親水性乳化剤は、好ましくは、安
定化剤として作用する親油性乳化剤と合わせて含有される。油と脂肪の両方を含有するこ
とも好ましい。合わせて、安定化剤(複数可)の有無にかかわらず、乳化剤(複数可)は
、いわゆる乳化ワックスを構成し、この乳化ワックスは、油および脂肪と合わせてクリー
ム製剤の油分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0070】
本願発明の製剤における使用に適したエマルジェントおよび乳剤安定化剤として、Tw
een(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベン
ジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート、およびラウリル
硫酸ナトリウムが挙げられる。本願発明の製剤における使用に適したさらなるエマルジェ
ントおよび乳剤安定化剤として、Tween(登録商標)80が挙げられる。
【0071】
製剤に適した油または脂肪の選択は、所望のコスメティック特性の達成に基づく。クリ
ーム剤は、好ましくは、油っぽくなく、シミにならず、かつ洗浄できる製品であって、チ
ューブまたは他の容器からの漏れを避けるのに適した粘度の製品であるべきである。直鎖
または分枝鎖の、一塩基性または二塩基性のアルキルエステル(ジイソアジペート、イソ
セチルステアレート、ヤシ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリ
ステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2−エ
チルヘキシルパルミテート、またはCrodamol CAPとして知られる分枝鎖エス
テルのブレンドなど)が用いられてよく、最後の3つが好ましいエステルである。これら
は、必要とされる特性により、単独で用いられても組み合わせて用いられてもよい。ある
いは、融点の高い脂質(白色軟パラフィン、および/もしくは流動パラフィン、または他
の鉱油など)が用いられる。
【0072】
本願発明による医薬製剤は、本願発明と、1種もしくはそれより多種の薬学的に許容さ
れるキャリアまたは賦形剤と、必要に応じて他の治療剤とによる組み合わせを含む。有効
成分を含有する医薬製剤は、意図される投与方法に適した任意の形態であってよい。経口
使用に用いられる場合、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性または油性の懸濁
剤、分散性の散剤または顆粒剤、乳剤、硬カプセル剤または軟カプセル剤、シロップ剤、
またはエリクシル剤が調製されてよい。経口使用を意図される組成物は、医薬組成物の製
造のための分野で公知の任意の方法により調製されてよく、このような組成物は、味の良
い調製物を提供するために、1種またはそれより多種の薬剤(甘味剤、矯味矯臭剤、着色
剤、および保存剤を含む)を含有してよい。有効成分を、錠剤の製造に適した非毒性の薬
学的に許容される賦形剤との混合物で含有する錠剤が、許容される。これらの賦形剤は、
例えば、不活性希釈剤(炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カル
シウムまたはリン酸ナトリウムなど);造粒剤および崩壊剤(トウモロコシデンプンまた
はアルギン酸など);結合剤(デンプン、ゼラチン、またはアカシアなど);および滑沢
剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなど)であり得る。錠剤は
コートされてなくてもよく、また、消化器官中での崩壊および吸収を遅らせ、これにより
、より長い期間に渡り持続性の活性を提供するために、マイクロカプセル化を含む公知の
技術によりコートされてもよい。例えば、グリセリルモノステアレート、もしくはグリセ
リルジステアレートなどの時間遅延物質が、単独でまたはワックスと共に用いられてもよ
い。
【0073】
経口使用の製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤(例えば、リン酸カルシウム、もしく
はカオリン)と混合される硬ゼラチンカプセル剤として提供されてもよく、また、有効成
分が水もしくは油媒体(ピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油など)と混
合される軟ゼラチンカプセル剤として提供されてもよい。
【0074】
本願発明の水性懸濁剤は、有効物質を、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物と
して含有する。このような賦形剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニ
ルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムなどの懸濁化剤、ならびに天然に
存在するリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例
えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの
縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸およびヘキシトー
ル無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキ
シエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散剤または湿潤剤が挙げられる。水性懸
濁剤は、1種またはそれより多種の保存剤(エチルp−ヒドロキシベンゾエート、または
n−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートなど)、1種またはそれより多種の着色剤、1
種またはそれより多種の矯味矯臭剤、および1種またはそれより多種の甘味剤(スクロー
スまたはサッカリンなど)を含有してもよい。さらに、懸濁化剤の非限定的な例として、
シクロデキストリンおよびカプチゾール(=スルホブチルエーテルベータ−シクロデキス
トリン;SEB−ベータ−CD)が挙げられる。
【0075】
油性懸濁剤は、落花生油、オリーブ油、ごま油、またはヤシ油などの植物油中、または
流動パラフィンなどの鉱油中で有効成分を懸濁させることにより製剤されてもよい。経口
懸濁剤は、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含有してもよ
い。上記のような甘味剤、および矯味矯臭剤は、味の良い経口調製物を提供するために添
加されてもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化物質の添加により保存
されてもよい。
【0076】
本願発明の、水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性の粉末または顆粒は、有
効成分を、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および1種またはそれより多種の保存剤との
混合物で提供する。適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、上で開示されたものに
より例示される。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤剤、および着色剤が、存在
してもよい。
【0077】
本願発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、オリーブ油も
しくは落花生油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混合物であっ
てよい。適した乳化剤として、アラビアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然に存在す
るゴム、ダイズレシチンなどの天然由来のリン脂質、脂肪酸およびヘキシトール無水物に
由来するエステルまたは部分エステル(ソルビタンモノオレエートなど)、ならびにこれ
らの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(ポリオキシエチレンソルビタンモ
ノオレエートなど)が挙げられる。乳剤は、甘味剤および矯味矯臭剤を含有してもよい。
シロップ剤またはエリキシル剤は、グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど
の甘味剤と製剤されてもよい。このような製剤は、さらに粘滑剤、保存剤、矯味矯臭剤、
または着色剤を含有してもよい。
【0078】
本願発明の医薬組成物は、注射可能な無菌調製物の形態(注射可能な無菌の、水性また
は油性の懸濁剤など)であってよい。この懸濁剤は、公知の技術により、上で言及された
適切な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤とを用いて製剤されてよい。注射可能な無菌調製物
は、1,3−ブタンジオールの溶液など、非経口投与に許容される非毒性の希釈剤または
溶媒の注射可能な無菌溶液または懸濁剤であってもよく、凍結乾燥粉末として調製されて
もよい。用いられてもよい許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、および
等張の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油も、溶媒または懸濁媒質と
して慣習的に用いられる場合がある。この目的上、合成モノグリセリドまたは合成ジグリ
セリドを含む任意の無刺激の不揮発性油が用いられてもよい。さらに、同様に、オレイン
酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に用いられてもよい。用いられてもよい許容されるビヒ
クルおよび溶媒には、水、リンゲル液、等張塩化カリウム溶液、および高張塩化ナトリウ
ム溶液がある。
【0079】
単一剤形を生成するためにキャリア物質と組み合わせられ得る有効成分の量は、処置さ
れるホストと投与の特定の様式とによって変わる。例えば、ネコへの経口投与を意図され
る時限放出製剤は、全組成物の約5から約95%(重量:重量)までで変わり得る、適切
かつ便利の良い量のキャリア物質と配合された、およそ1から1000mgの活性物質を
含有してもよい。医薬組成物は、投与のために簡単に測定できる量を提供するように調製
され得る。例えば、静脈注入を意図される水性溶液は、約30mL/hrの速度で適した
容積の注入が起き得るように、溶液1ミリリットル当たり約3から500μgまでの有効
成分を含有する場合がある。
【0080】
眼への局所的な投与に適した製剤は点眼剤も含み、ここで、有効成分は、適したキャリ
ア中に、特にその有効成分用の水性溶媒中に溶解または懸濁している。有効成分は、好ま
しくは、そのような製剤中で、0.5から20%の、有利には0.5から10%の、特に
は約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0081】
口での局所的な投与に適した製剤として、矯味矯臭された基剤(通常、スクロース、お
よびアカシアまたはトラガカント)中に有効成分を含有するロゼンジ剤と;不活性基剤(
ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなど)中に有効成分を含有
するパステル剤と;適した液体キャリア中に有効成分を含有する口腔洗浄剤とが挙げられ
る。
【0082】
直腸投与用の製剤は、適した基剤(例えば、ココアバターまたはサリチラートを含む)
を有する坐薬として与えられてもよい。
【0083】
肺内投与または鼻腔投与に適した製剤は、例えば、0.1から500ミクロンの範囲内
(0.5、1、30、35など)の粒径を有し、この製剤は、鼻孔を通した急速吸入によ
り、または口を通した吸入により投与され、肺胞嚢に到達する。適した製剤として、有効
成分の水性または油性の溶液が挙げられる。エアロゾール剤または乾燥粉末剤の投与に適
した製剤は、従来の方法により調製されてよく、下記のような、今までにコロナウイルス
感染の処置または予防に用いられてきた化合物などの他の治療剤と共に送達されてもよい
【0084】
膣内投与に適した製剤は、有効成分に加えて、本分野で適切であることが公知であるキ
ャリアなどを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル、パスタ剤、フォーム
、または噴霧製剤として与えられてもよい。
【0085】
非経口投与に適した製剤として、水性および非水性の無菌注射溶液(これは、抗酸化物
質、緩衝液、静菌剤、および意図される受容者の血液と製剤を等張にする溶質を含有して
もよい)と;水性および非水性の無菌懸濁剤(これは、懸濁化剤および増粘剤を含有して
もよい)とが挙げられる。
【0086】
製剤は、単位服用量または複数回服用量の容器中で、例えば密閉されたアンプルおよび
バイアル中で提供され、そして、使用の直前にただ無菌液体キャリア(例えば注射用の水
)の添加のみを要する、フリーズドライ(凍結乾燥された)条件で保存されてよい。即時
型の注射の溶液および懸濁液は、上記に類する無菌の粉剤、顆粒剤、および錠剤から調製
される。好ましい単位投薬量製剤は、本願明細書中で上述した、一日量もしくは単位一日
分割用量(unit daily sub−dose)、またはこれらの適切な一部分の
有効成分を含有する製剤である。
【0087】
上で特に言及した成分に加えて、本願発明の製剤は、当該製剤のタイプを考慮して、本
分野で慣例の他の剤を含有してもよい(例えば、経口投与に適した製剤は、矯味矯臭剤を
含有してもよい)と理解されるべきである。
【0088】
本願発明はさらに、少なくとも1種の上で定められた有効成分を、それらの獣医用のキ
ャリアと共に含有する、獣医用の組成物を提供する。
【0089】
獣医用のキャリアは、組成物を投与するという目的に有用な物質であり、固体、液体、
またはガス状の物質であってよく、この固体、液体、またはガス状の物質は、他の点では
、不活性または獣医学の分野において許容され、有効成分と適合する物質である。これら
の獣医用の組成剤は、経口で、非経口で、または任意の他の所望される経路で投与されて
よい。
【0090】
本願発明の化合物は、制御された放出の医薬製剤であって、有効成分として1種または
それより多種の本願発明の化合物を含有する医薬製剤(「放出制御製剤」)を提供するた
めに用いられ、この医薬製剤において、有効成分の放出が制御および調節され、服用頻度
の減少を可能にするか、または所定の有効成分の薬物動態もしくは毒性プロファイルを改
善する。
【0091】
IV.投与経路
1種またはそれより多種の本願発明の化合物(本願明細書中では、有効成分として呼ぶ
)は、処置される状態に適した任意の経路で投与される。適切な経路として、経口、直腸
、鼻腔、肺内、局所(頬側および舌下を含む)、膣内、および非経口(皮下、筋肉内、静
脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外を含む)などが挙げられる。好ましい経路は、例えば
受容者の状態により様々であり得ると理解される。
【0092】
コロナウイルス感染の処置のための本願発明の方法において、本願発明の化合物は任意
の時点で、コロナウイルス感染症に罹患している他のネコと接触するかもしれないネコ、
または既にコロナウイルス感染症に罹患しているネコに投与されてよい。いくつかの実施
形態において、本願発明の化合物は、予防的に、コロナウイルス感染症に罹患している他
のネコと接触することになるネコに投与され得る。いくつかの実施形態において、本願発
明の化合物の投与は、コロナウイルス感染の試験で陽性であるがコロナウイルス感染症の
症状をまだ示さないネコへの投与であり得る。いくつかの実施形態において、本願発明の
化合物の投与は、コロナウイルス感染症の症状が出始めたときのネコへの投与であり得る
【0093】
有効成分の有効量は、少なくとも、処置される状態の性質、毒性、化合物が予防的(よ
り低用量)に用いられているか、または活動性のウイルス感染に対して用いられているか
どうか、送達の方法、および医薬製剤に依存し、そして従来の用量漸増研究を用いて臨床
医により決定される。有効量は、一日当たり約0.0001から約100mg/kg体重
まで;典型的には、一日当たり約0.01から約10mg/kg体重まで;さらに典型的
には、一日当たり約0.01から約5mg/kg体重まで;もっとも典型的には、一日当
たり約0.05から約0.5mg/kg体重まで、と予想され得る。
【0094】
コロナウイルス感染を処置するための本願発明の化合物の有効量は、その有効量が予防
的に用いられるか、または既にコロナウイルス感染症に罹患しているネコを処置するため
に用いられるかに依存し得る。さらに、その有効量は、コロナウイルス感染症に罹患して
いるネコが、まだコロナウイルス感染症の症状を示していないか、または既にその症状を
示しているかに依存し得る。コロナウイルス感染の試験で陽性のネコ、およびコロナウイ
ルス感染の症状を示しているネコを処置するためには、予防的処置を受けるネコと比較し
てより多くの服用量が必要であり得る。
【0095】
本願発明の化合物の投与についての任意の適した期間が企図される。投与は、例えば、
1日から100日まで(2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25,3
0,40,50,60,70,80,または90日を含む)にわたり得る。投与は、1週
間から15週間まで(2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,また
は14週間を含む)にもわたり得る。さらに長い投与期間も企図される。投与期間は、化
合物が予防的に投与されているか、またはコロナウイルス感染症に罹患しているネコを処
置するために投与されているかに依存し得る。例えば、予防的投与は、そのネコがコロナ
ウイルス感染症に罹患している他のネコと定期的に接触する期間にわたり得、コロナウイ
ルス感染症に罹患しているネコとの最後の接触後の適切な期間にわたり得る。すでにコロ
ナウイルス感染症に罹患しているネコについて、投与期間は、その動物を処置するために
必要な任意の長さの時間、およびコロナウイルス感染についての試験が陰性になった後に
、コロナウイルス感染が再発しないことを確実にする適切な期間にわたり得る。
【実施例】
【0096】
V.実施例
実施例1.ネココロナウイルスの処置
化合物1を、ネココロナウイルスに対する活性について、in vitroアッセイに
おいてスクリーニングした。化合物1の段階希釈物を2.5×10コピーのネココロナ
ウイルスと混合し、CRFK細胞を事前播種した96ウェルプレートに6連で加えた。こ
のプレートを72時間にわたってインキュベートし、続いて、クリスタルバイオレットを
用いて細胞培養単層を染色した。ウイルスに誘導される細胞変性効果のレベルを、視覚的
に、そしてプレートリーダーを用いて定量化した。陽性対照のウェルは、化合物1を伴わ
ずにウイルスを含んだ。陰性対照のウェルは、ウイルスおよび化合物1の両方を欠いた。
EC50を、回帰分析により計算した。化合物1のEC50を表1に示す。
【表1】
【0097】
化合物1を、非感染CRFK細胞での細胞毒性について、市販されているCellTo
x Green Cytotoxicity Assay(Promega)を用いてス
クリーニングした。このアッセイを、96ウェルプレートの形態(place form
ate)で、化合物1の段階希釈物を用いて6連で行った。72時間のインキュベーショ
ン後に、50%細胞毒性(CC50)と関連する化合物濃度を、回帰分析により計算した
。化合物1のCC50を表2に示す。図1を参照のこと。
【表2】
【0098】
実施例2.処置アッセイ
Crandell Rees Feline Kidney(CRFK)細胞における
ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に対する抗ウイルス活性について、化合物を試験
した。化合物の段階希釈物を、10から100TCID50のFIPVに混合し、事前播
種したCRFK細胞を含む96ウェルプレートに加えた。プレートを37℃で48時間に
わたってインキュベートした。インキュベート後に、CRFK細胞単層をクリスタルバイ
オレットを用いて染色し、FIPVに誘導される細胞変性効果のレベルを吸光プレートリ
ーダーを用いて定量化した。EC50の値を、非線形回帰分析を用いて定めた。図1から
図15を参照のこと。
【0099】
参考として個別に援用されたかのように、本願明細書中の上文で引用されるすべての刊
行物、特許、および特許文献が、参考として本願明細書中に援用される。
【0100】
本願発明は、様々な、特定のおよび好ましい実施形態および技術を参照して記載された
。しかし、当業者は、本願発明の趣旨および範囲内にとどまりながらも、多くの変更およ
び改変がなされ得ると理解する。
【0101】
前記の発明は、理解の明確さのために、例証および例示によりいくぶん詳細に記載され
たが、当業者は、特定の変化および改変が、添付の特許請求の範囲内で実施される可能性
があると考える。さらに、本願明細書中で提供される各引用文献は、各引用文献が個別に
参考として援用された場合と同じ程度まで、その全体が参考として援用される。本願と本
願明細書中で提供される引用文献との間に矛盾がある場合、本願が優位となるものとする。
【0102】
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の化合物:
【化25】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記コロナウイルスが、ネコ腸コロナウイルス(FECV)またはネコ伝染性腹膜炎ウ
イルス(FIPV)である、項目1に記載の方法。
(項目3)
ネココロナウイルス感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化26】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目4)
前記コロナウイルスが、ネコ腸コロナウイルス(FECV)またはネコ伝染性腹膜炎ウ
イルス(FIPV)である、項目3に記載の方法。
(項目5)
ネコ腸コロナウイルス(FECV)感染を処置する方法であって、治療上有効な量の化
合物:
【化27】
【化28】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目6)
ネコ腸コロナウイルス(FECV)感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化29】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目7)
伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)感染を処置する方法であって、治療上有効な量の化
合物:
【化30】
【化31】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目8)
伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)感染を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化32】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目9)
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)を処置する方法であって、治療上有効な量の化合物:
【化33】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
(項目10)
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)を処置する方法であって、治療上有効な量の
【化34】
またはその薬学的に許容される塩を投与する工程を包含する、方法。
図1
図2
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図15