【解決手段】水系プライマーインクと、水系カラーインクを凝集させる作用を有する水系コーティング液と、水系カラーインクとを含む吸収性基材用インクセットであって、前記水系プライマーインクが、少なくとも水、顔料、及び有機溶剤を含み、前記水系コーティング液が、少なくとも水、樹脂、及び有機溶剤を含み、該樹脂がカチオンを有する水溶性ポリマーを含み、該有機溶剤が1,2−アルカンジオールを含み、前記水系カラーインクが、少なくとも水、顔料、樹脂、及び有機溶剤を含むことを特徴とするインクセットである。
前記水系プライマーインクが、更に、少なくとも1種類のマクロマー変性アクリル系表面調整剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセット。
前記水系カラーインクにおける樹脂が自己分散性樹脂を含み、該自己分散性樹脂が、ウレタン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子及び塩化ビニルアクリル共重合樹脂粒子よりなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセット。
前記水系コーティング液の25℃での表面張力値は前記水系カラーインクの25℃での表面張力値よりも低いことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクセット。
請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクセットを用いる印刷方法であって、吸収性基材を準備する第1工程と、水系プライマーインク、水系コーティング液及び水系カラーインクの印刷をこの順番で行い、吸収性基材上に印刷層を形成させる第2工程とを含むことを特徴とする印刷方法。
前記インクセットの水系カラーインクが複数からなり、水系カラーインクの印刷において最初に印刷が行われる水系カラーインクは、25℃における表面張力値が水系カラーインクの中で最も低いことを特徴とする、請求項11に記載の印刷方法。
前記乾燥工程で乾燥させた吸収性基材の表面は、表面寿命100ms及び温度25℃での水の動的接触角が70°以下であることを特徴とする、請求項13に記載の印刷方法。
前記乾燥工程で乾燥させた吸収性基材の表面は、前記第1工程で準備された吸収性基材の表面と比較して、表面寿命100ms及び温度25℃での水の動的接触角の差が10°以上であることを特徴とする、請求項13又は14のいずれか一項に記載の印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明のインクセットを詳細に説明する。本発明のインクセットは、水系プライマーインクと、水系カラーインクを凝集させる作用を有する水系コーティング液と、水系カラーインクとを含むインクセットである。
ここで、水系カラーインクは、単独の水系カラーインクであってもよいが、異なる色を発する複数の水系カラーインクから構成されることが多く、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクの4種類のインクを少なくとも含む水系カラーインクを例示することができる。水系プライマーインクや水系コーティング液は、水系カラーインクと異なり、単独で使用されることも多いが、組成の異なる複数の水系プライマーインクや水系コーティング液を使用してもよい。
【0028】
本明細書において「水系プライマーインク」とは、印刷を行う際に、何らかの改善効果を目的として最初に基材上に印刷されるインクである。本発明においては、水系プライマーインクは、基材上でのコーティング液の広がりを改善する目的で使用される。これにより、コーティング液の凝集作用を発揮し、結果としてカラーインクを所定の位置に固定することができるため、コート紙、上質紙、アート紙等の吸収性基材に対しても良好な印刷を行うことができる。
本明細書において「水系コーティング液」とは、基材表面の処理に使用され、その後に印刷される水系カラーインクを凝集させるための液である。
本明細書において「水系カラーインク」とは、水系コーティング液で処理された基材表面に印刷され、基材に色付けを行い、文字や画像等を描くためのインクである。
なお、本明細書においては、着色剤を0.1質量%を超える量で含む組成物を「インク」とし、着色剤を含まない又は着色剤を0.1質量%以下含む組成物を単に「液」として表現している。また、本明細書において「水系」とは、インクやコーティング液の主溶媒が水であることを意味する。
【0029】
本発明のインクセットは、吸収性基材への印刷に用いるためのインクセットであり、吸収性基材用インクセットとも称される。本明細書において「吸収性基材」とは、水系コーティング液や水系インクに対して吸収性を有する基材であり、以下の簡易的な測定方法によって吸収性の有無を判断することができる。具体的には、基材に対して水10mgを落とし10秒経過した後にふき取りを行う。その際に、水が浸透した痕があるかどうかを確認し、水が浸透した痕が目視にて認識できれば、その基材を吸収性基材とする。
吸収性基材は、白色基材であってもよい。本明細書において「白色基材」とは、少なくとも印刷面が白色である基材であり、ここで「白色」は、無彩色の白を指すが、それに限らずベージュやグレーなど多少色味が入ったオフホワイトも含まれる。
吸収性基材の具体例としては、主として、コート紙(具体的には樹脂コート紙)、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材等が挙げられるが、これら紙基材は、特にコーティング液の浸透により縮みや撓みを起こし易いため、本発明のインクセットを用いて印刷を行うことが好ましい。
【0030】
本発明のインクセットにおいて、水系プライマーインクは、少なくとも水、顔料、及び有機溶剤を含む。顔料を含む水系プライマーインクで基材表面を処理することで、水系コーティング液の濡れ広がりを改善させることができる。この理由として、本発明者は、顔料を含む水系プライマーインクで基材表面を処理すると、基材表面上に顔料が点在した状態となり、擬似的に無機材料のような性状が得られることによるものと考えている。
【0031】
水系プライマーインクに用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。水系プライマーインク中において、水の含有量は、20〜90質量%の範囲であることを例示することができるが、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲内である。これによって、環境への負荷の少ない水系プライマーインクを提供することができる。
【0032】
水系プライマーインクに用いる顔料としては、インクに通常使用されている顔料を使用できるが、発色性の観点から、白色顔料を使用することが好ましい。白色顔料の具体例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。また、白色顔料等の着色顔料に加えて、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料や、亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料等も使用できる。なお、顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
なお、基材が発色性に優れる白色基材である場合は、白色基材の発色性を損なわずに顔料を選択することが好ましく、このような観点からも、白色顔料を使用することが好ましい。本発明において印刷対象が吸収性白色基材である場合においては、水系プライマーインクにより処理された基材表面と、処理を行う前の基材表面との色差(ΔE)が好ましくは10.0以内、より好ましくは5.0以内、更に好ましくは3.0以内となるように調整されている。
なお、本明細書において、色差(ΔE)とは、L*a*b*表色系の色差であり、色差計(例えばX−Rite社製、CH−8105)により求めることができる。また、色差(ΔE)の測定において、水系プライマーインクにより処理された基材表面とは、水系プライマーインクの100%ベタ印刷を行うことで処理される基材表面である。
【0034】
水系プライマーインク中における顔料の含有量は、0.5〜10.0質量%であることが好ましい。顔料の含有量がこの範囲にあると、水系プライマーインクにより処理された基材表面において、水系コーティング液の濡れ性が向上することに加え、水系コーティング液に対してプライマーインクに配合された顔料が浮き出る現象(白色顔料の場合は白ボケ現象という)を抑制することができる。これにより、カラーインクの固定や白ボケ現象などの防止を両立することができる。
【0035】
水系プライマーインクは、顔料を含むため、乾燥性に優れるが、更にインクの乾燥性の観点から、顔料の平均粒子径(D50)は100nm以上500nm以下であることが好ましく、150nm以上400nm以下であることが更に好ましい。なお、顔料の平均粒子径(D50)が500nm以下であれば、インクの乾燥性を向上できると共に、インク中において顔料が沈降することを抑制することができる。
本明細書において、平均粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本明細書における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0036】
水系プライマーインクは、インク業界において通常使用されている樹脂を含んでもよいが、コーティング液の濡れ性の観点から、樹脂を含まないことが好ましい。また、水系プライマーインクが樹脂を含む場合であっても、水系プライマーインク中における樹脂の含有量は、0.1質量%以下であることが好ましい。
【0037】
水系プライマーインクに用いる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。水系プライマーインク中において、有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることを例示することができるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することもできる。これによって、より環境への負荷の少ない水系プライマーインクを提供することができるとともに、形成される膜内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。なお、有機溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
水系プライマーインクに用いる有機溶剤は、水溶性有機溶剤を含むことが好ましく、少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤、特には少なくとも2種類のアルカンジオール系溶剤を含むことが更に好ましい。アルカンジオール系溶剤を用いることで、インクジェットプリンタ等の印刷機器の吐出部分(特にプリントヘッド)でのインクの乾燥を防ぎ、結果としてインクの保存安定性、濡れ性及び吐出安定性を向上させることができる。水系プライマーインク中において、アルカンジオール系溶剤の含有量は、5.0〜40.0質量%であることが好ましい。
【0039】
水系プライマーインクにおいて、有機溶剤としては、アルカンジオール系溶剤の他、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性を良好にする観点から、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤が好適に挙げられる。
【0040】
アルカンジオール系溶剤は、2つの水酸基を有する非環系飽和炭化水素であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。
【0041】
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、並びにプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル及びトリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0042】
三〜五員環のラクトン系溶剤は、−C(=O)−O−を一部に含むラクトン環を有する化合物のうち、環を構成する原子数が3である三員環、原子数が4である四員環又は原子数が5である五員環の化合物である。具体例としては、α−アセトラクトン、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0043】
アミド系溶剤は、非環状のアミド化合物が好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルファニルアミド、トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミドが好ましい。
【0044】
水系プライマーインクは、表面張力値を調整する観点から、表面調整剤を含むことが好ましい。表面調整剤としては、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤等が挙げられるが、少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むことが好ましく、シリコーン系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含むことが更に好ましい。シリコーン系表面調整剤を用いたり、好ましくはシリコーン系表面調整剤とアセチレングリコール系表面調整剤を併用したりすることで、水系プライマーインクの濡れ性をより向上させることができ、結果として水系コーティング液が印刷された際のはじきを防ぐことができる。ここで、シリコーン系表面調整剤とアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含む場合、シリコーン系表面調整剤(A)とアセチレングリコール系表面調整剤(B)の質量比(A:B)は、5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることが更に好ましい。
【0045】
シリコーン系表面調整剤の具体例としては、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリエスエル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリシロキサン等が挙げられ、BYK−Chemie社、信越化学工業社等から市販される商品が容易に入手可能である。
【0046】
アセチレングリコール系表面調整剤は、アセチレン基と2つの水酸基を有する界面活性剤であり、例えば、下記式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立した炭化水素基を示す)で表されるような、アセチレン基を中心とした左右対称構造を有する非イオン性界面活性剤が好適である。また、本明細書においては、界面活性剤の水酸基にアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロ
ピレンオキシド等)を付加してなるアルキレンオキシド付加物もアセチレングリコール系表面調整剤に含まれる。アセチレングリコール系表面調整剤は、日信化学工業株式会社等から市販される商品が容易に入手可能である。
【0047】
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、アクリル系表面調整剤として、少なくとも1種類のマクロマー変性アクリル系表面調整剤を含むことが好ましい。水系コーティング液にマクロマー変性アクリル系表面調整剤を用いることで、乾燥膜の表面自由エネルギーを向上させ、結果として水系カラーインクが印刷された際のはじきを防ぐことができる。マクロマー変性アクリル系表面調整剤とは、アクリル系添加剤に対して単末端の反応性シリコーン(マクロマー)を反応させて生成される材料である。マクロマー変性アクリル系表面調整剤は、ビッグケミー・ジャパン株式会社から市販される商品が容易に入手可能である。
【0048】
水系プライマーインクは、所望の表面張力値となるように表面調整剤を用いることが好ましいものの、水系プライマーインク中における表面調整剤の含有量を0.1〜5.0質量%と例示することができる。
【0049】
水系プライマーインクには、更に必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0050】
水系プライマーインクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
【0051】
水系プライマーインクは、インクジェットプリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。
なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましく、沸点が70〜270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。沸点70〜270℃のアミン化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、水系プライマーインク中において、アミン化合物の含有量は、0.1〜2.0質量%が好ましい。
【0052】
水系プライマーインクは、25℃における粘度が3.0〜10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
本明細書において、インク及びコーティング液の粘度は、レオメーター(例えばTAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
【0053】
水系プライマーインクは、25℃での表面張力値が28.0mN/m以下であることが好ましく、27.0mN/m以下であることが更に好ましい。水系プライマーインクの表面張力を28mN/m以下とすることで、吸収性基材に対して発生するはじきを抑制することができる。
また、水系プライマーインクは、25℃での表面張力値が21.0mN/m以上であることが好ましく、24.0mN/m以上であることが更に好ましい。水系プライマーインクの表面張力を21mN/m以上とすることで、コーティング液が印刷されるまでの間にプライマーインクが基材に吸収され難くなり、結果としてプライマーインクによる効果を十分に発揮することができる。
本明細書において、インク及びコーティング液の「表面張力値」とは、平衡状態に達している表面張力値(いわゆる静的表面張力値)を指し、プレート法に基づき測定される。
【0054】
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、少なくとも水、樹脂、及び有機溶剤を含む。
【0055】
水系コーティング液に用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。水系コーティング液中において、水の含有量は、20〜90質量%の範囲であることを例示することができるが、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲内である。これによって、環境への負荷の少ない水系コーティング液を提供することができる。
【0056】
水系コーティング液に用いる樹脂は、カチオンを有する水溶性ポリマーを含む。上記水溶性ポリマーは、カチオンを有するため、カラーインクを凝集する能力を発揮することができる。これにより、印刷層の滲みの発生を抑えつつ、基材への印刷層の付着性を向上でき、高速印刷が可能になる。また、カチオンであれば、pHが塩基性領域にある水系コーティング液中に存在していても、カラーインクを凝集する能力を発揮することができる。また、カチオンを有する水溶性ポリマーを用いて調製した水系コーティング液は、長期保存をした際にも粘度やpHが保たれ、優れた保存安定性が得られる。
なお、本明細書において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
【0057】
カチオンを有する水溶性ポリマーは、第四級アンモニウムカチオン(カチオン化された窒素原子)を有する水溶性ポリマーであることが好ましい。第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを用いることで、印刷層の滲みの発生がより一層抑えられるとともに、印刷層の耐擦過性、水系コーティング液の保存安定性が向上する。
【0058】
カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、2,500〜45,000であることがより好ましく、5,000〜40,000であることが更に好ましい。上記水溶性ポリマーの重量平均分子量を1,000以上とすることで、カチオンを有する水溶性ポリマーがカラーインクを凝集させる力が高くなり、印刷層の滲みの抑制効果及び付着性の改善効果が向上できる。一方、重量平均分子量が50,000を超えると、吐出安定性を低下させる場合がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0059】
カチオンを有する水溶性ポリマーは、主鎖にカチオンを有することが好ましい。このような構造を有する水溶性ポリマーを用いると、水系カラーインクが水系コーティング液層上に印刷された際に、水系カラーインクの界面のみが瞬時に凝集し、水系カラーインク同士が混合することなく印刷された位置で定着するため、高速印刷を行う場合において、より好ましい。
【0060】
カチオンを有する水溶性ポリマーは、カチオン度の異なる2種類以上の水溶性ポリマーであることが好ましい。カチオン度が異なる複数の水溶性ポリマーを用いることで、ドット径の大きさ、滲みの調整が容易となる。
具体的に、カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5〜7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0〜5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0〜7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5〜4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。上記した2種類のカチオン度の範囲を有する水溶性ポリマーの割合は、カチオン度の範囲が高い水溶性ポリマー:カチオン度の範囲が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1〜20:1の範囲内であることが好ましく、7:3〜10:1の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
【0061】
カチオンを有する水溶性ポリマーは市販品を使用することができる。なかでも、第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーが好ましいが、塩基性でも安定に存在できる観点から、例えば、DK6810、DK6851、DK6864、WS4030、WS4027、WS4052、CA6018(以上星光PMC社製)、ハーサイズCP−300、CP−800(以上ハリマ化成社製)、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−2401、PAS−A−1(以上ニットボーメディカル社製)、カチオマスターPDT−2、PD−7、PD−30(以上四日市合成社製)という名で市販されているエピクロロヒドリンとアルキルアミンの反応物、ポリアミン樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。なお、カチオンを有する水溶性ポリマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
水系コーティング液中に含まれる樹脂に占めるカチオンを有する水溶性ポリマーの割合は、50質量%以上であることが好ましいが、特に、凝集作用を適切に制御する点から、水系コーティング液中に含まれる樹脂に占める第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの割合が50質量%以上であることが好ましい。
【0063】
なお、水系コーティング液に使用できる他の樹脂としては、上記カチオンを有する水溶性ポリマー以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
水系コーティング液中において、樹脂の含有量は、0.005〜15質量%であることを例示することができるが、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5.0質量%であることがより好ましく、0.05〜3.0質量%であることが更に好ましく、0.05〜2.0質量%であることが特に好ましい。樹脂量が上記特定した好適な範囲内にあると、着弾した水系カラーインクのドット径を大きい状態で保つことができ、結果として鮮明性の高い印刷物を作製することができる。
【0065】
水系コーティング液に用いる有機溶剤は、1,2−アルカンジオールを含む。水系コーティング液の溶媒として1,2−アルカンジオールを用いると、顔料を含むプライマーで処理された吸収性基材の表面であっても、コーティング液の基材への浸透を十分に防止することができる。この理由として、本発明者は、1,2−アルカンジオールは、それ自体が該吸収性基材に対して浸透し難い特性を有することに加えて、表面調整剤を溶解させる能力が高く、表面調整剤による効果が十分に発揮されることによるものと考えている。
【0066】
アルカンジオール系溶剤は、2つの水酸基を有する非環系飽和炭化水素であり、1,2−アルカンジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。なお、1,2−アルカンジオールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、水系コーティング液中において、1,2−アルカンジオールの含有量は、1.0〜20.0質量%であることが好ましく、5.0〜15.0質量%であることが更に好ましい。
【0067】
水系コーティング液に用いる有機溶剤は、1,2−アルカンジオール以外のアルカンジオール系溶剤を更に含んでいてもよい。例えば、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0068】
水系コーティング液に用いる有機溶剤としては、アルカンジオール系溶剤に加えて、インク業界において通常使用されている有機溶剤、好ましくは水溶性有機溶剤を用いることができ、コーティング液の吐出安定性、濡れ性及び保存安定性を良好にする観点から、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤が好適に挙げられる。グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤及びアミド系溶剤の具体例については、水系プライマーインクに用いる有機溶剤の説明において記載したものが同様に挙げられる。
【0069】
水系コーティング液中において、有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることを例示することができるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することもできる。これによって、より環境への負荷の少ない水系コーティング液を提供することができるとともに、印刷層内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。
【0070】
また、水系コーティング液の動的表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類(好ましくは少なくとも2種類)を含むことが好ましく、特にコーティング液の表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の両方を含むことが好ましい。ここで、アルカンジオール系溶剤とグリコールエーテル系溶剤の両方を含む場合、アルカンジオール系溶剤(E)とグリコールエーテル系溶剤(F)の質量比(E:F)は8:1〜1:8の範囲内であることが好ましく、5:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
【0071】
水系コーティング液には、更に必要に応じて、pH調整剤、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0072】
水系コーティング液は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
なお、水系コーティング液は、水を50質量%〜90質量%、有機溶剤を5質量%〜35質量%、樹脂を0.005質量%〜5質量%の範囲内で含むことが好ましい。このように樹脂量が少ない水系コーティング液は、乾燥が早いため、凝集後の印刷スジの発生を抑える観点から好ましい。
【0073】
水系コーティング液は、インクジェットプリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。
なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましく、沸点が70〜270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。沸点70〜270℃のアミン化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、水系コーティング液中において、アミン化合物の含有量は、0.1〜2.0質量%が好ましい。
【0074】
水系コーティング液は、25℃における粘度が3.0〜10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0075】
水系コーティング液は、水系プライマーインクで処理された基材表面上で印刷が行われるため、25℃における表面張力値が20.0mN/m以上25.0mN/m以下であることが好ましい。水系コーティング液は、水系プライマーインクと同様に、表面張力値は一般に高い傾向にあるため、有機溶剤の種類や含有量、及び/又は表面調整剤(好ましくはシリコーン系表面調整剤、より好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン)を含む添加剤の種類や含有量を適宜調整することで、表面張力値を調整することが重要である。
また、本発明のインクセットにおいては、水系コーティング液の25℃での表面張力値が水系カラーインクの25℃での表面張力値よりも低いことが好ましい。これにより、水系コーティング液の持つ凝集効果を十分に発揮することができ、結果として滲みのない印刷物を作製することができる。
【0076】
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、少なくとも水、顔料、樹脂、及び有機溶剤を含む。
【0077】
水系カラーインクに用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。水系カラーインク中において、水の含有量は、20〜90質量%の範囲であることを例示することができるが、好ましくは50〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%の範囲内である。これによって、環境への負荷の少ない水系カラーインクを提供することができる。
【0078】
水系カラーインクに用いる顔料は、特に限定されず、インク業界において着色剤として通常使用されている有機顔料、無機顔料等の顔料を用いることができ、自己分散性顔料を含むこともできる。自己分散性顔料とは、顔料分散剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる顔料であり、通常、親水性に優れた官能基を表面に付与することで得られる。
【0079】
自己分散性顔料としては、カルボキシルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン等のアニオンが表面に直接結合している顔料が好ましい。このようなアニオン型の自己分散性顔料を用いることにより分散剤を添加せずに顔料をインク中で安定に分散させることができ、より鮮明な画像を印刷することができる。これらアニオン型の自己分散性顔料は市販品を好適に使用できる。
【0080】
顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213;ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;及びピグメントブラック1、7、26、27、28、ピグメントホワイト6等が挙げられる。なお、これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアンインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80等が挙げられ、
マゼンタインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254等が挙げられ、
イエローインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213等が挙げられ、
ブラックインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブラック1、7、26、27、28等が挙げられる。
その他、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;ピグメントホワイト6等の顔料も、上記基本色インクに用いることができるとともに、オレンジインク、バイオレットインク、グリーンインク、レッドインク等の特殊色インクとして用いることもできる。
【0081】
水系カラーインク中において、顔料の含有量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、0.5〜10.0質量%であることが好ましい。
【0082】
水系カラーインクに用いる樹脂は、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
水系カラーインクに使用できる樹脂は、自己分散性樹脂を含むことができる。自己分散性樹脂とは、界面活性剤や乳化剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる樹脂であり、通常、スルホン酸又はその塩やカルボン酸又はその塩等の親水性基を末端又は側鎖に有するポリマーや、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリエーテル基等の親水性基を主鎖に有するポリマー等が好適に使用される。これら自己分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、自己分散性樹脂は、市販品を使用してもよい。
【0084】
自己分散性樹脂は、耐擦過性、耐水性等の印刷層の性能を向上させる観点から、自己分散性ウレタン系樹脂、自己分散性アクリル系樹脂及び自己分散性塩化ビニルアクリル共重合樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。なお、自己分散性樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、これら自己分散性樹脂をウレタン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、塩化ビニルアクリル共重合樹脂粒子とも称する。更に各種基材への高い付着性を付与する観点から、自己分散性樹脂は、ポリエステル基又はポリエーテル基含有自己分散性ウレタン系樹脂を含むことが更に好ましい。
【0085】
自己分散性樹脂は、重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜750,000であることがより好ましく、200,000〜500,000であることが更に好ましい。自己分散性樹脂の重量平均分子量が上記特定した範囲内にあれば、耐擦過性をより向上でき、強固な印刷層を形成することができる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0086】
自己分散性ウレタン系樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、任意に鎖伸長剤とを反応させて得ることができる。
【0087】
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール及びポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いることで、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン系樹脂を得ることができる。本明細書においては、このような樹脂をポリエステルウレタン系樹脂粒子とも称する。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン系樹脂を得ることができる。本明細書においては、このような樹脂をポリエーテルウレタン系樹脂粒子とも称する。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを用いることで、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン系樹脂を得ることができる。本明細書においては、このような樹脂をポリカーボネートウレタン系樹脂粒子とも称する。
なお、ポリオール成分としては、アクリルポリオール等を用いてもよい。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0088】
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分の中でも、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0089】
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0090】
自己分散性アクリル系樹脂は、通常、モノマー単位としてアクリレート成分を主成分として含むポリマーから構成される自己分散性樹脂であり、アクリレート成分と、必要に応じて使用し得る他のモノマー成分とを任意に反応させることによって得ることができるが、自己分散性を付与するため、メタクリル酸やアクリル酸などをモノマー単位として使用できる。本明細書において、「アクリレート成分」は、メタクリレート又はアクリレートを指し、「主成分」とは、物質を占める割合が最も高い成分を指す。
【0091】
自己分散性アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プチル(メタ)アクリレート、イソプチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレインアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、及びジアルキルフマレート等が挙げられる。
【0092】
自己分散性塩化ビニルアクリル共重合樹脂は、通常、アクリレート成分と塩化ビニルの総モノマーが主成分となるポリマーから構成される自己分散性樹脂であり、例えば、スチレン・アクリル酸エステルオリゴマー又はアクリル酸エステルオリゴマーと塩化ビニル化合物との共重合体であるが、自己分散性を付与するため、メタクリル酸やアクリル酸などを構成単位として含むことにより得ることができる。
自己分散性塩化ビニルアクリル共重合樹脂は市販品を使用することができるが、例えば、ビニブラン700、ビニブラン701、ビニブラン735、ビニブラン745(以上日信化学工業社製)等が挙げられる。なお、増粘剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
自己分散性樹脂は、インク中で分散しており、粒子の形態にある。ここで、自己分散性樹脂は、平均粒子径(D50)が10nm〜90nmであることが好ましく、20nm〜70nmであることがより好ましく、30nm〜60nmであることが更に好ましい。上記特定した範囲内の平均粒子径であれば、自己分散性樹脂の分散状態が良く保存安定性に優れるインクを調製できる。
本明細書において、平均粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本明細書における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0094】
自己分散性樹脂は、その酸価が5.0〜60.0であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、分散性を向上させることができる。本明細書において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0095】
本発明のインクセットにおいては、水系カラーインクに含まれる自己分散性樹脂の酸価と、水系コーティング液に含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーのカチオン度を調整することで、水系カラーインクのドット径を大きくし、かつ、滲みが発生しない、光沢に優れた印刷層を形成させることができる。ここで、自己分散性樹脂の酸価(C)とカチオンを有する水溶性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)(D)の比(C:D)は、10:1〜1:2の範囲内であることが好ましく、6:1〜1.2:3の範囲内であることがより好ましく、3:1〜1:1の範囲内であることが更に好ましい。
【0096】
水系カラーインク中において、樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。また、水系カラーインクにおいて、樹脂に占める自己分散性樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
【0097】
水系カラーインクに用いる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。水系カラーインク中において、有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることを例示することができるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%、特に好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することもできる。これによって、より環境への負荷の少ない水系カラーインクを提供することができるとともに、印刷層内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。
【0098】
水系カラーインクに用いる有機溶剤は、水溶性有機溶剤が好ましく、該水溶性有機溶剤は、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三〜五員環のラクトン系溶剤及びアミド系溶剤の具体例については、水系プライマーインクに用いる有機溶剤の説明において記載したものが同様に挙げられる。
【0099】
また、水系カラーインクの動的表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類(好ましくは少なくとも2種類)を含むことが好ましく、特にコーティング液の表面張力値を調整する観点から、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤の両方を含むことが好ましい。ここで、アルカンジオール系溶剤とグリコールエーテル系溶剤の両方を含む場合、アルカンジオール系溶剤(E)とグリコールエーテル系溶剤(F)の質量比(E:F)は8:1〜1:8の範囲内であることが好ましく、5:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
【0100】
水系カラーインクには、更に必要に応じて、pH調整剤、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0101】
水系カラーインクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
【0102】
水系カラーインクは、水系プライマーインクや水系コーティング液と同様の理由から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。なお、水系カラーインクのpHの調整については、水系プライマーインクや水系コーティング液の説明において記載した通りである。
【0103】
水系カラーインクは、25℃における粘度が3.0〜10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0104】
水系カラーインクは、通常、水系コーティング液層上で印刷が行われるため、水系カラーインクは、25℃における表面張力値が20.0mN/m以上50.0mN/m以下であることが好ましい。水系カラーインクは、水系プライマーインクや水系コーティング液と同様に、表面張力値は一般に高い傾向にあるため、有機溶剤の種類や含有量、及び/又は表面調整剤(好ましくはシリコーン系表面調整剤、より好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン)を含む添加剤の種類や含有量を適宜調整することで、表面張力値を調整することが重要である。
【0105】
次に、本発明の印刷方法を詳細に説明する。本発明の印刷方法は、上述した本発明のインクセットを用いて印刷を行う印刷方法であり、以下の第1工程及び第2工程を含む。
第1工程:吸収性基材を準備する
第2工程:水系プライマーインク、水系コーティング液及び水系カラーインクの印刷をこの順番で行い、吸収性基材上に印刷層を形成させる
【0106】
本発明の印刷方法の第1工程は、印刷を行う対象である基材として吸収性基材を準備する工程である。ここで、吸収性基材には、本発明のインクセットの説明において記載した吸収性基材を使用することができる。
【0107】
本発明の印刷方法において、基材の温度は30〜45℃であることが好ましい。これにより、インクやコーティング液が基材上に均一に濡れ広がることができる。なお、基材の温度とは、インクやコーティング液の印刷が行われる基材表面の温度である。
【0108】
本発明の印刷方法の第2工程は、本発明のインクセットを用いて吸収性基材上で印刷を行う工程である。本発明の印刷方法においては、印刷により基材上に形成された層を印刷層と称する。なお、第2工程において水系プライマーインクや水系コーティング液は、水系カラーインクと異なり、基材の表面処理を行うことを目的とするものであって、色付けや、文字や画像等を描くことを目的とするものではないが、各種印刷手段によって基材上に適用されることから、本明細書においては「水系プライマーインクの印刷」や「水系コーティング液の印刷」と表現する。
【0109】
第2工程においては、水系プライマーインク、水系コーティング液及び水系カラーインクの順番で印刷が行われるが、具体的に、水系プライマーインクの印刷は、吸収性基材の表面を水系プライマーインクで処理する工程であり、水系コーティング液の印刷は、水系プライマーインクで処理された吸収性基材の表面を水系コーティング液で処理する工程であり、水系カラーインクの印刷は、水系コーティング液で処理された吸収性基材の表面に水系カラーインクで印刷を行う工程である。
【0110】
本発明の印刷方法において、水系プライマーインクの印刷、水系コーティング液の印刷及び水系カラーインクの印刷は、インクジェット印刷方式にて行われることが好適であるものの、これに限定されず、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、スクリーン印刷方式、コーター方式等の各種印刷方法によって行うことも可能である。
【0111】
第2工程は、インクやコーティング液の乾燥を待たずに(即ち、インクやコーティング液の乾燥を行わずに)次のインクやコーティング液の印刷を行うことができる。なお、第2工程において印刷完了直後(即ち、水や有機溶剤が蒸発する前)の水系プライマーインク、水系コーティング液及び水系カラーインクの総吐出液の厚みは、合計して、1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。
【0112】
本発明の印刷方法は、水系プライマーインクの印刷と水系コーティング液の印刷の間に乾燥工程(以下、第1乾燥工程ともいう)を更に含むことが好ましい。第1乾燥工程は、水系プライマーインクで処理された吸収性基材の表面を乾燥させる工程である。これにより、吸収性基材の表面に水系コーティング液が濡れ広がりやすい環境を作ることができ、結果として水系カラーインクの着弾精度が向上し、発色性の良い印刷物を作製することができる。
【0113】
第1乾燥工程において、乾燥は、熱風によって行われることが好ましい。この場合、水系プライマーインクで処理された吸収性基材の表面に熱風(通常、空気を利用)を当てて乾燥が行われる。第1乾燥工程において、乾燥は、70〜130℃で行われることが好ましく、80〜110℃で行われることが更に好ましい。また、第1乾燥工程において、乾燥は、2秒以上120秒未満の間行われることが好ましく、5秒以上60秒以内の間行われることが更に好ましい。乾燥手段は、特に限定されるものではないが、送風機能を備えた乾燥機が好ましい。風量は、1.0m
3/min以上であることが好ましく、1.5〜5.0m
3/minであることが更に好ましい。
【0114】
本発明の印刷方法において、第1乾燥工程で乾燥させた吸収性基材の表面は、表面寿命100ms及び温度25℃での水の動的接触角が70°以下であることが好ましく、25°〜60°であることが更に好ましい。水系プライマーインクで処理された吸収性基材の表面を乾燥させた後の吸収性基材に対する水の動的接触角を上記特定の範囲内とすることで、水系コーティング液が印刷された際に、はじきにくく濡れ広がりやすい基材環境を作り出すことができ、結果としてカラーインク印刷時に完成度の高い印刷物を作製することができる。
【0115】
本発明の印刷方法において、第1乾燥工程で乾燥させた吸収性基材の表面は、上記第1工程で準備された吸収性基材の表面と比較して、表面寿命100ms及び温度25℃での水の動的接触角が低く、その差が10°以上であることが好ましく、15°〜60°であることが更に好ましい。水系プライマーインクで処理された吸収性基材の表面を乾燥させた後の吸収性基材が、水系プライマーインクで処理されていない第1工程で準備された吸収性基材と比較して、水の動的接触角差を上記特定の範囲内とすることで、後に印刷される水系コーティング液をはじきにくく濡れ広がりやすい基材環境を作り出すことができ、結果として水系カラーインクの印刷時に完成度の高い印刷物を作製することができる。
【0116】
本明細書において、水の動的接触角は、一般的な接触角計(例えば協和界面化学社製DM700)を用いて動的接触角測定をすることにより測定できる。本明細書では、25℃の基材に対して表面寿命100msにおける接触角測定を行う。
動的接触角測定は、注射器中に挿入した液体を基材に接触させ、液体が基材に着弾した時の接触角を時間単位で計測することで求められる。この測定により、瞬時の濡れ広がる液滴の接触角、吸液量の経時変化を測定することができる。
【0117】
表面寿命を100msに設定した理由は、インクの着弾から濡れ広がりの挙動を制御するための最も適したタイミングと考えられるからである。インクジェットプリンターによる高速印刷では一つのドットが着弾してから濡れ広がりが完結するまでに、おおよそ10〜100msかかり、着弾直後の広がりの挙動自体がとても短いスケールで展開される。100msは、基材に着弾したインクがちょうど濡れ広がり終わるタイミングであることから、この時の動的接触角値を適切な値に制御することで、基材に対する水系コーティング液の接触による濡れの制御を最も適した状態で行うことができると考えられる。
【0118】
本発明の印刷方法において、水系カラーインクが複数の水系カラーインクからなる場合、水系カラーインクの印刷において最初に印刷が行われる水系カラーインクは、水系カラーインクの中で25℃での表面張力値が最も低いことが好ましい。コーティング液層上に最初に印刷を行う水系カラーインクは、コーティング液によるカラーインクの凝集作用の影響を最も強く受ける。このため、表面張力値の最も低い水系カラーインクをコーティング液層上に最初に印刷することで、水系コーティング液の凝集作用を受けてもドット径を大きい状態で保つことができ、結果として鮮明性の高い印刷物を作製することができる。
【0119】
また、本発明の印刷方法においては、水系カラーインクの印刷の後に乾燥工程(以下、第2乾燥工程ともいう)を更に含むことが好ましい。印刷完了後に基材上に形成される印刷層を乾燥させることで、印刷層中に含まれる樹脂を基材上に融着させ、強固な膜を形成することができ、結果として、堅牢性に優れる印刷物を提供することが可能である。第2乾燥工程において、乾燥は、70〜130℃で行われることが好ましく、80〜110℃で行われることが更に好ましい。また、第2乾燥工程において、乾燥は、2秒以上20秒以内の間行われることが好ましく、5秒以上15秒以内の間行われることが更に好ましい。乾燥手段は、特に限定されるものではないが、送風機能を備えた乾燥機が好ましい。風量は、1.0m
3/min以上であることが好ましく、1.5〜5.0m
3/minであることが更に好ましい。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0121】
<水系プライマーインク>
表1〜4に示す配合処方に従い、顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系分散液に、必要に応じて樹脂ならびに表面調整剤を加え、水系プライマーインク1〜34を調製した。なお、各水系プライマーインクについて、表面張力値(25℃)、顔料の平均粒子径(D50)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1〜4に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
上記表1〜4に記載される配合剤は、下記の通りである。
*1 白色顔料としては、以下を用いた。
・JR−600A(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製)
・A−220(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、石原産業社製)
・JR−301(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製)
・TTO−55(A)(Al処理ルチル型酸化チタン顔料、石原産業社製)
・B−34(硫酸バリウム顔料、堺化学工業社製)
・Hydrite TS90(カオリン顔料、林化成社製)
*2 SNデフォーマー1312(消泡剤、消泡剤含有量100質量%、サンノプコ社製)
*3 BYK190(湿潤分散剤、分散剤含有量40質量%、BYK社製)
*4 樹脂分散液Aとしては以下を用いた。
NEOREZ R−9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*5 樹脂分散液Bとしては以下を用いた。
NEOREZ R−967(DSM Coating Resins製、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径60nm、酸価15、樹脂含有量40質量%)
*6 樹脂分散液Cとしては以下を用いた。
ネオステッカー HA−560(日華化学製、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径30nm、酸価14、樹脂含有量35質量%)
*7 樹脂分散液Dとしては以下を用いた。
AE986B(イーテック社製、自己分散性アクリル樹脂、粒子径60nm、酸価15、樹脂含有量35質量%)
*8 樹脂分散液Eとしては以下を用いた。
ビニブラン700(日信化学社製、自己分散性塩化ビニルアクリル共重合樹脂、粒子径25nm、酸価57、樹脂含有量30質量%)
*9 SAG008(日信化学工業社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
*10 WET280(EVONIK社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
*11 SAG503A(日信化学工業社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
*12 オルフィンD−10PG(日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤、界面活性剤含有量50質量%、表面調整剤)
*13 サーフィノール107L(日信化学工業社製、アセチレングリコール系界面活性剤、界面活性剤含有量50質量%、表面調整剤)
*14 BYK3550(BYK社製、シリコンマクロマー変性アクリル界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
*15 BYK3566(BYK社製、シリコンマクロマー変性アクリル界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
*16 S−242(AGCセイミケミカル社製、フッ素系界面活性剤、界面活性剤含有量100質量%、表面調整剤)
【0127】
<水系コーティング液の調製例>
表5〜6に示す配合処方に従い、樹脂、アミン化合物、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系コーティング液1〜14を調製した。なお、各水系コーティング液のpH、表面張力値(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表5〜6に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
上記表5〜6に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*17 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Fとしては以下を用いた。
カチオマスター PE−30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*18 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Gとしては以下を用いた。
DK6851(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.8meq/g)
*19 第一級カチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Hとしては以下を用いた。
PAA−SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、Mw:12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*20 カチオン性を有する樹脂の分散液Iとしては以下を用いた。
スーパーフレックス650(第一工業製薬製、カチオン性ポリカーボネートウレタン樹脂分散体、樹脂含有量28質量%、pH7.1でのカチオン度0.8meq/g)
*21 樹脂水溶液Jとしては以下を用いた。
ハイロスX AW−36H(星光PMC社製、水溶性アクリル樹脂、粒子径なし、酸価60、樹脂含有量25質量%)
*22 Twin 4100(EVONIK社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル含有量100質量%、表面調整剤)
【0131】
<自己分散性顔料を含む水系カラーインクの調製例>
表7〜8に示す配合処方に従い、自己分散性顔料、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、自己分散性顔料を含む水系カラーインクを調製し、カラーインクセット1〜6を用意した。なお、各水系カラーインクの表面張力値(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表7〜8に示す。
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
上記表7〜8に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*23 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
・CAB−O―JET 250C
(キャボット社製、シアンの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB−O―JET―465M
(キャボット社製、マゼンタの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
・CAB−O―JET 270Y
(キャボット社製、イエローの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB−O―JET 300K
(キャボット社製、ブラックの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
【0135】
<非自己分散型顔料を含む水系カラーインク>
表9〜10に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、必要に応じて樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系カラーインクを調製し、カラーインクセット7〜12を用意した。なお、各水系カラーインクの表面張力値(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表9〜10に示す。
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
上記表9〜10に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*24 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
・FASTOGEN Blue FA5380(フタロシアニンブルー、DIC社製シアン色顔料)
・シンカシャマゼンタRT(ジクロロキナクリドン、BASF社製マゼンタ色顔料)
・Hostaperm Yellow H5G(キノキサリンジオン、クラリアント社製イエロー色顔料)
・Nerox−1000(カーボンブラック、オリオンエンジニアリドカーボン社製、ブラック色顔料)
*25 ノイゲン E−157(第一工業製薬社製、湿潤分散剤、成分含有量100質量%)
【0139】
<印刷性>
表11〜26に示されるインクセットを用意して印刷性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系プライマーインクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、100%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m
2)、多色フォームグロス(王子製紙社製、坪量157.0g/m
2)、及びSword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m
2)の基材表面に印刷した。水系プライマーインクの印刷後、温度が変更可能な乾燥炉を用いて、表11〜26に示される温度にて20秒間乾燥させた。その後、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、50%のベタ画像を乾燥した基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表11〜26のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、シアンインク・マゼンタインク・イエローインクの各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行うと共に、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクのそれぞれについて100%のベタ印刷も行った。その後、100℃の温度で5分間乾燥を行った。印刷部分を目視により下記の評価基準で評価した。なお、水系プライマーインク、水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表11〜26に示す。
○:各色ベタ印刷及び3色のベタ印刷に滲みやスジ感が見られない。
△:各色ベタ印刷及び3色のベタ印刷に滲み又はスジ感が見られる。
×:各色ベタ印刷及び3色のベタ印刷に滲み及びスジ感が見られる。
【0140】
<耐擦過性>
表11〜26に示されるインクセットを用意して擦過性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系プライマーインクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、100%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m
2)、多色フォームグロス(王子製紙社製、坪量157.0g/m
2)、及びSword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m
2)の基材表面に印刷した。水系プライマーインクの印刷後、温度が変更可能な乾燥炉を用いて、表11〜26に示される温度にて20秒間乾燥させた。その後、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、50%のベタ画像を乾燥した基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表11〜26のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、シアンインク・マゼンタインク・イエローインクの各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、100℃の温度で5分間乾燥を行った。印刷部分に綿棒(商標登録、白十字社製)で5往復擦過を行い、目視により下記の評価基準で評価した。なお、水系プライマーインク、水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表11〜26に示す。
○:綿棒にインクが付かない。
△:綿棒にインクが付くが、基材からインクが剥れない。
×:綿棒にインクが付き、かつ基材からインクが剥れる。
【0141】
<発色性>
表11〜26に示されるインクセットを用意して発色性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系プライマーインクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、100%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m
2)、多色フォームグロス(王子製紙社製、坪量157.0g/m
2)、及びSword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m
2)の基材表面に印刷した。水系プライマーインクの印刷後、温度が変更可能な乾燥炉を用いて、表11〜26に示される温度にて20秒間乾燥させた。その後、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、50%のベタ画像を乾燥した基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表11〜26のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、シアンインク・マゼンタインク・イエローインクの各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、100℃の温度で5分間乾燥を行い、印刷画像を作製した。
また、水系プライマーインクの印刷を行わないこと以外は上記した手順と同様に印刷を行い、その後、100℃の温度で5分間乾燥を行うことで比較用画像の作製を行った。
上記印刷画像及び比較用画像の印刷部分を目視により下記の評価基準で評価した。なお、水系プライマーインク、水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表11〜26に示す。
○:印刷画像が比較用画像に対して発色が鮮明な状態。
△:印刷画像が比較用画像に対して同等程度の発色状態。
×:印刷画像が比較用画像に対して発色が劣る、または異なる色が形成している状態。
【0142】
<動的接触角1>
表11〜26に示されるインクセットを用意して動的接触角の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、水系プライマーインクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、100%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m
2)、多色フォームグロス(王子製紙社製、坪量157.0g/m
2)、及びSword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m
2)の基材表面に印刷した。水系プライマーインクの印刷後、温度が変更可能な乾燥炉を用いて、表11〜26に示される温度にて20秒間乾燥させた。次いで、協和界面化学社製DM700を用いて、乾燥した基材に対して、表面寿命100ms及び温度25℃でのイオン交換水の動的接触角を測定した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表11〜26に示す。
◎:動的接触角が60°以下
○:動的接触角が60°より大きく、70°以下
△:動的接触角が70°より大きく、80°以下
×:動的接触角が80°より大きい
【0143】
<動的接触角2>
表11〜26に示されるインクセットを用意して動的接触角の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、水系プライマーインクを12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、100%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m
2)、多色フォームグロス(王子製紙社製、坪量157.0g/m
2)、及びSword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m
2)の基材表面に印刷した。水系プライマーインクの印刷後、温度が変更可能な乾燥炉を用いて、表11〜26に示される温度にて20秒間乾燥させた。次いで、協和界面化学社製DM700を用いて、乾燥した基材に対して、表面寿命100ms及び温度25℃でのイオン交換水の動的接触角を測定した。また、水系コーティング液を印刷していない基材(基材それ自体)についても比較として同様の測定を行った。評価基準は以下の通りである。評価結果を表11〜26に示す。
◎:水系プライマーインクで表面処理した基材の動的接触角が、処理を行っていない基材よりも20°以上小さい
○:水系プライマーインクで表面処理した基材の動的接触角が、処理を行っていない基材よりも10°以上20°より小さい
△:水系プライマーインクで表面処理した基材の動的接触角が、処理を行っていない基材よりも5°以上10°より小さい
×:水系プライマーインクで表面処理した基材の動的接触角が、処理を行っていない基材よりも動的接触角が5°より小さい
【0144】
<保存安定性>
水系プライマーインク、水系コーティング液、水系カラーインクのそれぞれを110ccのガラス瓶に100gとり、−20℃及び60℃で6週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行った。評価基準は以下の通りである。なお、評価結果を表11〜26に示す。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
【0145】
<吐出性>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系プライマーインクをプリンターに充填した後、透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれているチェックパターンを印刷した(工程A)。次いで、水系プライマーインクを吐出し、25m
2相当の12pL100%ベタ印刷を行った。その後、水系プライマーインク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれている工程Aと同一のチェックパターンを印刷した(工程B)。工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを目視で確認し、チェックパターンから抜けているピンの割合を評価した。評価基準は以下の通りである。なお、評価結果を表11〜26に示す。
○:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%未満である。
△:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%以上〜30%未満である。
×:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が30%以上である。
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
【表13】
【0149】
【表14】
【0150】
【表15】
【0151】
【表16】
【0152】
【表17】
【0153】
【表18】
【0154】
【表19】
【0155】
【表20】
【0156】
【表21】
【0157】
【表22】
【0158】
【表23】
【0159】
【表24】
【0160】
【表25】
【0161】
【表26】