特開2021-55019(P2021-55019A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エフコンサルタントの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55019(P2021-55019A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】補修材、及び補修方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/08 20060101AFI20210312BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20210312BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20210312BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20210312BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210312BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20210312BHJP
   C09D 5/34 20060101ALI20210312BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20210312BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210312BHJP
   E04B 1/94 20060101ALN20210312BHJP
【FI】
   C09D175/08
   C09D5/18
   B05D7/14 P
   B05D5/00 E
   B05D7/24 303A
   B05D7/24 302T
   E04G23/02 A
   C09D5/34
   C09D7/61
   C09D7/63
   E04B1/94 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-181558(P2019-181558)
(22)【出願日】2019年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【テーマコード(参考)】
2E001
2E176
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001GA06
2E001HD01
2E001HD11
2E176BB03
2E176BB14
4D075AC57
4D075AE03
4D075BB08X
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB60Z
4D075CA18
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA07
4D075DA27
4D075DB02
4D075DC01
4D075DC05
4D075EA05
4D075EA27
4D075EA29
4D075EA39
4D075EB07
4D075EB16
4D075EB32
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB52
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC11
4D075EC22
4D075EC30
4D075EC31
4D075EC35
4D075EC41
4J038DG131
4J038DG142
4J038DG261
4J038HA166
4J038HA426
4J038JA21
4J038JA61
4J038JB01
4J038JB36
4J038KA10
4J038NA14
4J038NA15
4J038PA01
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】
厚塗り性、仕上がり性に優れに優れ、火災等による温度上昇の際には、優れた発泡性を有し、基材の耐熱保護性能を維持することができる補修材を提供する
【解決手段】
本発明は、耐熱保護性を有する被膜用の補修材であって、前記補修材は、その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、前記補修材は、樹脂成分(A)、粉体成分(B)、及び高沸点化合物(C)を含み、加熱残分が90重量%以上であり、前記樹脂成分(A)が、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、前記ポリオール成分は、分子量が1000以上のポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱保護性を有する被膜用の補修材であって、
前記補修材は、その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、
前記補修材は、樹脂成分(A)、粉体成分(B)、及び高沸点化合物(C)を含み、加熱残分が90重量%以上であり、
前記樹脂成分(A)が、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、
前記ポリオール成分は、分子量が1000以上のポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする補修材。
【請求項2】
耐熱保護性を有する被膜の被補修部に、請求項1に記載の補修材を塗付することを特徴とする耐熱保護性を有する被膜の補修方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な補修材及び補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する目的として、火災時等の温度上昇によって発泡し、炭化断熱層を形成する被覆材が種々提案されている。このような被覆材としては、合成樹脂に耐熱性付与粉体等を配合したものが知られている。このような被覆材は、保護対象となる基材の表面に塗付され、耐熱保護性を有する被膜を形成する。さらに、このような被膜の表面には、美観性向上等の目的で、化粧被膜等が設けられる場合もある。
【0003】
但し、上述のような被膜において、被膜形成時ないし形成後の諸条件(施工条件、環境条件等)、あるいは物理的な損傷等により、膨れ、剥れ、割れ、欠け等の不具合が生じた場合には、被膜を補修する必要が生じる。例えば特許文献1(特開2011−136288号公報)には、下塗り塗料、熱発泡性塗料等を用いた特定の補修方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−136288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献のような補修方法では、補修をすべき被膜の凹部に、発泡性塗料を複数回塗り重ねる必要があり、補修完了までにある程度の手間と時間を要するとともに、仕上がり性も劣る場合があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、厚塗り性、仕上がり性に優れる補修材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者は、鋭意検討の結果、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含む樹脂成分(A)、粉体成分(B)、及び高沸点化合物(C)を含む補修材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.耐熱保護性を有する被膜用の補修材であって、
前記補修材は、その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成するものであり、
前記補修材は、樹脂成分(A)、粉体成分(B)、高沸点化合物(C)を含み、加熱残分が90重量%以上であり、
前記樹脂成分(A)が、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含み、
前記ポリオール成分は、分子量が1000以上のポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする補修材。
2. 耐熱保護性を有する被膜の被補修部に、1.に記載の補修材を塗付することを特徴とする耐熱保護性を有する被膜の補修方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補修材は、特定の樹脂成分(A)、粉体成分(B)、高沸点化合物(C)を含み、加熱残分が90重量%以上であることにより、厚塗り性、仕上がり性に優れる。また、形成被膜が、火災等による温度上昇に際し、優れた発泡性を有し、耐熱保護性能を有するものである。このような補修材は、耐熱保護性を有する被膜(以下「耐熱保護性被膜」ともいう)の補修に使用する補修材(充填材、パテ材、シーリング材等)として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
(補修材)
本発明の補修材は、樹脂成分(A)、粉体成分(B)及び高沸点化合物(C)を含み、その被膜が火災等の温度上昇(加熱)により炭化断熱層を形成するものである。本発明では、補修材の加熱残分が、90重量%以上(好ましく90〜100重量%、より好ましく92〜98重量%)であることを特徴とする。補修材の加熱残分が、上記範囲を満たす場合、厚塗り性、仕上がり性に優れ、耐熱保護性被膜の被補修部に効率的に塗付することができる。なお、上記下限値未満では、所望の膜厚を得るには過度の塗り重ね等が必要となり、手間がかかる。また、十分な膜厚が確保できないおそれがある。
なお、補修材の加熱残分は、JIS K 5601−1−2の方法にて測定された値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分)である。また、本発明において「α〜β」は「α以上β以下」と同義である。
【0012】
本発明では、上記加熱残分の範囲を満たす補修材を、耐熱保護性被膜の被補修部に塗付することにより、効率的に補修を行うことができる。また、補修材により形成した被膜は、火災等による温度上昇の際には、耐熱保護性被膜と同様に優れた発泡性を示し、炭化断熱層を形成することができる。これにより耐熱保護性被膜の性能を阻害することなく、基材の耐熱保護性能を維持することができる。
【0013】
さらに、補修材の粘度は、好ましくは30〜200Pa・s(より好ましくは40〜180Pa・s、さらに好ましくは50〜150Pa・s)である。補修材の粘度が、上記範囲を満たす場合、タレを抑制し、厚塗り性、仕上がり性に優れ、上記効果を高めることができる。なお、補修材の粘度は、補修材調製後(2液型の場合は、主剤と硬化剤を混合後)、直ちに温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(5回転目の指針値)である。
【0014】
本発明の樹脂成分(A)は、ポリオール成分(A1)及びポリイソシアネート成分(A2)を必須成分として含む。上記ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)は、反応して被膜を形成する成分である。
【0015】
本発明のポリオール成分(A1)は、ポリエーテルポリオール(a1)を含み、その分子量が1000以上(好ましくは3000以上20000以下、より好ましくは5000以上18000以下、さらに好ましくは6000以上15000以下、最も好ましくは6500以上12000以下)である。このようなポリオール成分(A1)を使用することにより、被膜の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を有し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。なお、本発明においてポリオール成分の分子量は、数平均分子量(Mn)であり、ポリスチレン重合体をリファレンスとして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた、いわゆるポリスチレン換算分子量である。
【0016】
上記ポリエーテルポリオール(a1)は、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール誘導体、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合により得られるものである。本発明では、上記多価アルコール類と、エチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドとの付加重合により得られる重合体が好適であり、末端にエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが付加されたものがより好適である。さらに、上記のポリエーテルポリオールとして、活性水素原子を有する官能基が3つ以上(官能基数3以上)のポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。この場合、硬化性に優れ、安定して被膜を形成することができるため本発明の効果が得られやすい。活性水素原子を有する官能基としては水酸基が好適である。
【0017】
このようなポリエーテルポリオール(a1)としては、水酸基価が好ましくは3〜150mgKOH/g(より好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは7〜40mgKOH/g、最も好ましくは10〜30mgKOH/g)である。このようなポリオール成分(a1)を使用することにより、いっそう優れた発泡性を発揮し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
【0018】
また、上記ポリエーテルポリオール(a1)の含有量は、ポリオール成分(A1)の全量に対して、50重量%以上(より好ましくは60〜99重量%、さらに好ましくは70〜98重量%)であることが好ましい。
【0019】
本発明では、上記ポリオール成分(A1)として、フッ素含有ポリオール(a2)を含むことが好ましい。これにより、被膜の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【0020】
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、特に限定されないが、例えば、フルオロオレフィンモノマー、フルオロアルキル基含有アクリル系モノマー等の含フッ素モノマーと、水酸基含有ビニル系モノマーと、必要に応じて他の重合性モノマーとを共重合することにより得られるものである。フルオロオレフィンモノマーしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。フルオロアルキル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、好ましくはテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる1種以上、より好ましくはクロロトリフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0021】
水酸基含有ビニル系単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0022】
その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
【0023】
このようなフッ素含有ポリオール(a2)としては、フッ素含有ポリオール(a2)固形分中のフッ素含有率が、10〜50重量%(より好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜35重量%)であることが好ましい。また、水酸基価が、5〜100mgKOH/g(より好ましくは10〜80mgKOH/g)であることが好ましい。さらに、分子量[数平均分子量(Mn)]が、5000〜100000(より好ましくは8000〜60000)であることが好ましい。このようなフッ素含有ポリオール(a2)を含むことにより、火災等による温度上昇の際には、被膜が優れた発泡性を発揮し炭化断熱層を形成し、高温雰囲気下でも灰化・収縮を抑制することができ、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
【0024】
フッ素含有ポリオール(a2)の含有量は、ポリオール成分(A1)の全量に対して、固形分換算で好ましくは0.1〜30重量%(より好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%)である。この範囲を満たすことにより、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0025】
さらに、本発明では、ポリオール成分(A1)としてイソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)を含むことが好ましい。イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)としては、イソシアヌレート環(式1)と2以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、
【化1】
(式1)
例えば、イソシアヌル酸トリス(ヒドロキシアルキル)エステル等が使用できる。イソシアヌル酸トリス(ヒドロキシアルキル)エステルとしては、例えば、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシプロピル)、イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシブチル)、イソシアヌル酸トリス(2,3ジヒドロキシプロピル)等のイソシアヌレート環と水酸基を有するアルキルエステルが挙げられる。
【0026】
また、イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)としては、例えば、イソシアヌレート環を有するアクリルポリオール等も使用できる。このような化合物としては、例えば、アクリルポリオール製造時に、ビニル基、アクリロイル基、チオール基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、及びグリシジル基等から選ばれる反応性官能基を有するイソシアヌル酸誘導体を反応させることにより得ることができる。ここでの反応は、例えば、重合性不飽和二重結合とビニル基、アクリロイル基、またはチオール基、アルコキシシリル基どうし、グリシジル基とカルボキシル基、アミノ基とグリシジル基等の組み合わせを用いればよい。
【0027】
イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)は、ポリオール成分(A1)中に、好ましくは0.01〜20重量%(より好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%)である。これにより樹脂成分(A)の硬化被膜の耐熱性をよりいっそう高めることができるとともに、火災等による温度上昇に際し、安定した炭化断熱層を形成することが可能である。特に高温時において、耐熱性保護被膜や基材との密着性に優れ、炭化断熱層の脱落等を抑制することができる。
【0028】
本発明のポリオール成分(A1)としては、上記(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分の他に、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシ含有ポリオール、シリコーン含有ポリオール、ひまし油、ひまし油変性ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
上記ポリオール成分(A1)としては、例えば、20℃において液体であるものが使用でき、その場合、それぞれの粘度は、0.05〜10Pa・s(より好ましくは0.1〜5.0Pa・s)であることが好ましい。これにより、本発明の効果が得られやすい。なお、ポリオール成分の粘度は、温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(5回転目の針指値)である。
【0030】
上記ポリオール組成物と反応して被膜を形成するポリイソシアネート成分(A2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレトジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化した誘導体等;及び、これらをアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等でブロックした、ブロックイソシアネート等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。なお、前述の(a3)成分は、上記(A2)成分とは別異の成分である。
【0031】
本発明では、ポリイソシアネート成分(A2)として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及び/またはその誘導体(以下「HMDI類」ともいう。)を含むことが好ましい。上記HMDI類の含有量は、ポリイソシアネート成分(A2)の全量に対して、90重量%以上(より好ましくは95重量%以上)であることが好ましい。また、ポリイソシアネート成分(A2)が、HMDI類のみからなる態様も好適である。また、誘導体としては、ビウレット体、及び/またはイソシアヌレート体が好適である。このような場合、形成被膜の硬化性に優れ、温度上昇時には、より優れた発泡性を発揮し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【0032】
ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の混合は、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)のNCO/OH当量比で好ましくは0.6〜3.5(より好ましくは1〜3.0、さらに好ましくは1.1〜2.5)となるような比率で行う。このような場合、硬化性に優れ、所望の厚さで均一な被膜が形成可能であり、火災等による温度上昇等には、より優れた発泡性を有し、安定した炭化断熱層を形成して基材の耐熱保護性能を高めることができる。さらに、形成被膜は、耐久性(例えば、防水性、耐透水性、耐割れ性、下地追従性等)に優れ、初期の外観(美観性)を長期にわたり維持することができるとともに、火災等による温度上昇等には、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0033】
本発明では、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の反応を促進する硬化触媒を併用することができる。硬化触媒とはイソシアネート基が反応して硬化するのを促進させる作用を有する物質である。硬化触媒としては、例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒、及び無機系触媒等各種が挙げられる。例えば、アミン系触媒としては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及び、ヘキサメチレンジアミンもしくはこれらの誘導体または溶剤との混合物等が挙げられる。有機金属系触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機金属化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、オクチル酸錫等の有機金属塩等が挙げられる。無機系触媒としては、塩化スズ等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用でき、溶剤と混合して使用することもできる。本発明では、特に、有機金属系触媒を含むことが好適である。この場合、硬化を促進するとともに、樹脂成分(A)の硬化性を高めることができ、本発明の効果を高めることができる。
【0034】
さらに本発明の補修材には、上記樹脂成分(A)とは別異の成分として、粉体成分(B)を含むことを特徴とする。粉体成分(B)としては、例えば、発泡剤(b1)、炭化剤(b2)、難燃剤(b3)、及び充填剤(b4)等を含むことが好ましい。これによって、火災等による温度上昇に際し、優れた発泡性を示し、良好な炭化断熱層を形成して耐熱保護性能を発揮し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【0035】
発泡剤(b1)は、火災時等の温度上昇によって被膜に発泡作用を付与するものであり、具体的には、被膜表面の温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。このような発泡剤(b1)としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素、膨張性黒鉛等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤(b1)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜150重量部)である。
【0036】
本発明の炭化剤(b2)は、火災時等の温度上昇によって、上記樹脂成分(A)の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。このような炭化剤(b3)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤(b2)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜120重量部)である。
【0037】
難燃剤(b3)としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、難燃剤(b4)として、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、またはポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩とピロ硫酸ジメラムとの複合化合物等から選ばれる少なくとも1種以上のリン化合物を含むことが好ましく、さらには、ポリリン酸アンモニウムとこれらを併用して含むことも好ましい。難燃剤(b3)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは100〜1000重量部(より好ましくは200〜800重量部)である。
【0038】
充填剤(b4)としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、粘土、クレー、シラス、ゼオライト、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン、アルミナバルーン、シラスバルーン、樹脂バルーン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。充填剤(b4)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは3〜200重量部(より好ましくは5〜150重量部)である。
【0039】
さらに、本発明では、上記粉体成分(B)として金属水和物(b5)、繊維(b6)を含むこともできる。
金属水和物(b5)は、温度上昇時に、脱水反応等による吸熱性を示すものであり、上記充填剤(b4)とは異なるものである。このような金属水和物(b5)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、金属水和物(b5)の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm(より好ましくは0.2〜15μm、さらに好ましくは0.3〜8μm、最も好ましくは0.4〜3μm)である。金属水和物(b5)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部(より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは8〜80重量部)である。
【0040】
本発明では、充填剤(b4)と金属水和物(b5)を併用することが好ましく、この場合、充填剤(b4)と金属水和物(b5)は重量比1:9〜9:1(より好ましくは2:8〜8:2)とすることが好ましい。この場合、発泡性、特に高温下における炭化断熱層の収縮等を抑制し、安定した炭化断熱層を形成することができるため、本発明の効果を高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
【0041】
繊維(b6)は、厚塗り性を高め(肉やせを抑制)、被膜のひび割れを抑制することができる。また、繊維(b6)は、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性を高めることができる。その結果、優れた発泡性を示し、均一な炭化断熱層を形成して、耐熱保護性能を高めることができる。このような繊維(b6)としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維等の有機質繊維、炭素繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維、スラグウール繊維、セラミックファイバー、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0042】
本発明では、繊維(b6)として、無機繊維を含むことが好適であり、中でも、ロックウール繊維、スラグウール繊維、ガラス繊維セラミックファイバー等の人造鉱物繊維が好適である。これにより、被膜のひび割れをよりいっそう抑制することができとともに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性をいっそう高めることができる。その結果、被膜内部(芯部)まで均一に優れた発泡性を示し、より均一な炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性能をよりいっそう高めることができる。
【0043】
また、繊維(b6)の大きさ(繊維長及び繊維径)は、補修材の性能、適用基材、塗付具等の仕様に応じて設定すればよく、平均繊維長は、好ましくは10〜1000μm(より好ましくは15〜800μm、さらに好ましくは20〜600μm)、平均繊維径は、好ましくは0.5〜10μm(より好ましくは1〜8μm)の範囲内であることが好適である。また、そのアスペクト比(繊維長/繊維径)は、好ましくは3〜300(より好ましくは5〜200)である。上記範囲を満たす場合、厚塗り性が高まり、形成被膜の割れが生じ難くなるとともに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができ、安定した炭化断熱層を形成することができる。繊維(b6)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5〜30重量部(より好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部)である。
【0044】
本発明の補修材は、さらに高沸点化合物(C)を含むことを特徴とする。高沸点化合物(C)は、20℃において液体であり、沸点が100℃以上(より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上)の高沸点液状化合物である。このような高沸点化合物(C)を含むことにより、補修材の加熱残分、及び粘度を適正化することができるとともに、粉体成分(B)の分散安定性を高めることができる。また、ポリイソシアネート成分との混合、反応により、密着性に優れた良好な被膜を形成、特に被膜の弾性が向上し被膜の割れ等を防止することができる。さらに、その被膜が火災等によって高温に曝された場合には、被膜の適度な軟化に寄与し発泡性をよりいっそう高め、形成した炭化断熱層の脱落(剥離)等を抑制し、基材の耐熱保護性能を高めることができる。
【0045】
高沸点化合物(C)としては、上記を満たすものであれば特に限定されず、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(ブチルジグリコール)、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル化合物;アジピン酸−1,3ブチレングリコール系ポリエステル、アジピン酸−1,2プロピレングリコール系ポリエステル等のアジピン酸系ポリエステル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジイソデシル等のマレイン酸エステル化合物;リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸−2エチルヘキシルジフェニル等のリン酸エステル化合物;
【0046】
トリス−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメット酸エステル化合物;メチルアセチルリシノレート等のリシノール酸エステル化合物;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ系エステル化合物;安息香酸グリコールエステル等の安息香酸系エステル化合物;1−フェニル−1−キシリルエタン、1−フェニル−1−エチルフェニルエタン等の芳香族炭化水素化合物、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、石油樹脂(炭素原子数が8〜10である芳香族炭化水素留分重合物)とスチリルキシレン等の混合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0047】
本発明では、高沸点化合物(C)として、フタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、さらには、アルキル基の炭素数が4〜11(より好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜9)のフタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。その具体例としては、例えば、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソノニル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が好適である。
【0048】
高沸点化合物(C)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部(より好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは15〜100重量部)である。このような範囲を満たす場合、厚塗り性に優れ、火災等による温度上昇の際には、優れた発泡性を有し、基材の耐熱保護性能を維持する効果を十分に発揮することができる。さらに、このような範囲の場合、耐熱性保護被膜と補修材との密着性だけではなく、補修材を塗り重ねる場合や、種々の上塗材を塗付した場合においても十分な密着性(接着性)を確保することができるため、仕上がり性に優れた被膜を形成することができる。
【0049】
その他、添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、吸水剤、脱水剤、架橋剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0050】
このうち酸化防止剤としては、例えば、リン系、硫黄系又はヒンダード型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような酸化防止剤を含むことにより、平常時だけでなく、火災等による温度上昇に際しても被膜の劣化を抑制することができ、温度上昇によって形成される炭化断熱層の性状を高めることができる。
【0051】
本発明は、上記ポリオール成分(A1)、及び粉体成分(B)を含むポリオール組成物を主剤、上記ポリイソシアネート成分(A2)を硬化剤とする2液型の補修材として用いることが好ましい。すなわち、流通時には主剤と、硬化剤とを、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時(塗付時、すなわち被膜形成時)にこれらを混合すればよい。なお、粉体成分(B)は、ポリイソシアネート成分(A2)(硬化剤側)に混合することもできる。
【0052】
(補修方法)
本発明の補修材は、耐熱保護性被膜の補修や表面仕上げ等に使用する補修材(充填材、パテ材、シーリング材等)として好適なものであり、耐熱保護性被膜の被補修部に、補修材を塗付することを特徴とするものである。
【0053】
本発明において、耐熱保護性被膜とは、具体的には、火災等の高熱から基材を保護する性能を有するものである。このような耐熱保護性被膜は、火災時等の温度上昇によって(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上となった場合)発泡して炭化断熱層を形成し、基材を高熱から保護する。
【0054】
基材としては、例えば、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種部位を構成する各種基材が挙げられる。このような基材を構成する材料としては、例えば、鋼材、金属、コンクリート、モルタル、サイディングボード、タイル、煉瓦、ガラス、木材、合成樹脂、プラスチック、ゴム等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜(防錆被膜、下塗被膜、上塗被膜等)が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの等であってもよい。
【0055】
耐熱保護性被膜としては、例えば、樹脂、並びに、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤等の耐熱性付与粉体を含む被覆材(熱発泡性塗料、熱発泡性シート等)によって形成されたもの等が挙げられる。
【0056】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル−アクリル共重合樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用することができる。また、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤としては、上述の本発明補修材と同様のものを使用することができる。
【0057】
耐熱保護性被膜を形成する被覆材は、上記成分の他、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、希釈溶媒等を含むものであってもよい。
【0058】
このような被覆材によって形成される耐熱保護性被膜の厚さは、所望の機能性、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.4〜5mm程度である。
【0059】
また、耐熱保護性被膜は、その表面に、美観性向上、耐久性向上等の目的で化粧被膜等を備えたものであってもよい。このような化粧被膜は、公知の上塗材を塗付することによって形成することができる。上塗材としては、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の被覆材が挙げられる。
【0060】
上記耐熱保護性被膜の被補修部としては、例えば、
(1)耐熱保護性被膜の不具合部、
(2)基材と耐熱保護性被膜との取り合い部や、耐熱保護性被膜どうしの継ぎ目、
(3)耐熱性保護被膜の表面凹凸部(ゆず肌等)、
等が挙げられる。このような被補修部に、上述の補修材を塗付することにより、効率的に補修することができるとともに、美観性に優れた仕上がりを得ることができる。上記(1)〜(3)の被補修部の具体的な補修方法について、以下に示す。
【0061】
上記(1)の耐熱保護性被膜の不具合部の補修方法としては、耐熱保護性被膜に不具合部(例えば、膨れ、浮き、&#21085;れ、割れ、欠け等)が生じた場合に、その耐熱保護性被膜の補修を行うものである。膨れ、浮き等の不具合箇所については、補修に先立ち、不具合箇所及びその近傍の被膜を部分的に除去しておくことが望ましい。これにより、補修をすべき凹部(被補修部)が形成される。&#21085;れ、割れ、欠け等の不具合箇所については、多くの場合、不具合発生時点でその箇所に凹部が形成されるが、不具合箇所近傍の被膜を部分的に除去することにより、補修をすべき凹部の形状を整えることもできる。
【0062】
補修をすべき凹部の形状(被膜を正面から見たときの形状)は、特に限定されず、不定形であってもよいが、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、短冊状等の形状、あるいはこれらに近似する形状に整えておけば、作業効率を高めることができる。このような凹部の大きさ(被膜を正面から見たときの短手方向の長さ)は、好ましくは5〜300mm、より好ましくは10〜100mmである。凹部の深さは、好ましくは0.3〜10mm、より好ましくは0.5〜6mmである。
【0063】
上記(2)の基材と耐熱保護性被膜との取り合い部や、耐熱保護性被膜どうしの継ぎ目の補修方法としては、当該取り合い部や継ぎ目に補修材を塗付(充填)し、基材と耐熱保護性被膜の境界部、あるいは耐熱保護性被膜どうしの境界部を均一に仕上げるものである。これにより、耐熱保護性を十分に高めることができる。
【0064】
上記(3)の耐熱性保護被膜の表面凹凸部の補修方法としては、耐熱性保護被膜を平滑に仕上げる(例えば、鏡面仕上げ等)場合に行うものである。耐熱性保護被膜がゆず肌等の微細な凹凸を有する場合、その表面に補修材を塗付、必要に応じて研磨することにより、平滑な被膜を形成することができる。
【0065】
上記(1)〜(3)の被補修部に補修材を塗付する方法としては、特に限定されないが、例えば、ローラー、刷毛、ヘラ、こて、コーキングガン等の塗付具を使用することが好ましい。本発明では、補修材が上記加熱残分の条件を満たすことにより、厚膜化が可能となり、均一な被膜を形成することができる。なお、本発明の補修材は、塗装時に希釈することも可能であるが、この場合、補修材の粘度が20〜180Pa・s(好ましくは30〜150Pa・s)を満たすことが好ましい。
【0066】
また、補修材を塗付後、被膜を乾燥させることにより、補修材被膜を形成することができる。乾燥温度は、好ましくは0℃以上40℃以下(常温)であり、必要に応じ加温することもできる。乾燥時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは24時間以上である。
【0067】
本発明では、上記補修材により形成される被膜を保護するために、必要に応じてさらに上塗材を塗付することもできる。このような上塗材は、公知の被覆材を塗付することによって形成することができる。上塗材としては、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系等の被覆材を用いることができる。これらは1種または2種以上で使用することができ、2種以上の上塗材を積層して塗付することもできる。上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明はこの範囲には限定されない。
【0069】
各原料としては以下のものを使用した。
・樹脂成分(A)
・ポリエーテルポリオール(a1)
(a1−1):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加重合体、数平均分子量10000、官能基数3、水酸基価17mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−2):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドとの付加重合体、数平均分子量7000、官能基数3、水酸基価24mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−3)ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加重合体、数平均分子量6000、官能基数3、水酸基価28mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−4):ポリエーテルポリオール(プロピレングリコールを開始剤としたエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加重合体、数平均分子量5100、官能基数3、水酸基価33mgKOH/g、末端エチレンオキサイド付加)
(a1−5):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレンオキサイドとの付加重合体、数平均分子量4000、官能基数3、水酸基価43mgKOH/g、末端プロピレンオキサイド付加)
(a1−6):ポリエーテルポリオール(グリセリンを開始剤としたプロピレンオキサイドとの付加重合体、数平均分子量700、官能基数3、水酸基価225mgKOH/g、末端プロピレンオキサイド付加)
【0070】
・フッ素含有ポリオール(a2)
(a2−1):3フッ化エチレン共重合体(クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル−ヒドロキシアルキルビニルエーテル共重合体、フッ素含有率27重量%、水酸基価52mgKOH/g、固形分60重量%、芳香族炭化水素溶媒含有)
・イソシアヌレート環を有するポリオール化合物(a3)
(a3−1)イソシアヌル酸トリス(2ヒドロキシエチル)(水酸基価645mgKOH/g)
【0071】
・ポリイソシアネート成分(A2)
(A2)ビウレット型ヘキサメチレンジイソシアネート(NCO含有量23.5%)
【0072】
<粉体成分(B)>
・発泡剤(b1):メラミン
・炭化剤(b2):ペンタエリスリトール
・難燃剤(b3):ポリリン酸アンモニウム
・充填剤(b4):酸化チタン
・金属水和物(b5):水酸化アルミニウム(平均粒子径1μm)
・繊維(b6):ロックウール繊維(平均繊維長125μm、平均繊維径4.5μm)
【0073】
<高沸点化合物(C)>
・高沸点化合物(c1):フタル酸ジイソノニル(沸点420℃)
・高沸点化合物(c2):アジピン酸ジイソノニル(沸点227℃)
・高沸点化合物(c3):フタル酸ジ-2−エチルヘキシル(沸点386℃)
・高沸点化合物(c4):フタル酸ジイソデシル(沸点420℃)
・高沸点化合物(c5):フタル酸ジウンデシル(沸点523℃)
・高沸点化合物(c6):フタル酸ジブチル(沸点340℃)
【0074】
<その他>
・硬化触媒:有機金属系触媒
・添加剤1:分散剤、消泡剤等
・添加剤2:希釈溶剤(芳香族炭化水素)
【0075】
(補修材1〜15)
表1に示す配合に従い、補修材1〜15を作製した。樹脂成分(A)は、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の混合比率が、NCO/OH当量比1.2となるように混合したものである。
なお、補修材の調製方法としては、(A1)成分、(B)成分、(C)成分、触媒、及び添加剤を常法により混合しポリオール組成物(主剤)を調製し、次いで(A2)成分を混合し補修材を調製した。
【0076】
(実施例1〜13、比較例1〜2)
各補修材1〜15について、以下の評価を実施した。結果は、表1に示す。
【0077】
<厚膜化評価1>
予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の全面に補修材を鏝にてwet膜厚2mmで塗付し、常温(25℃)で24時間、その後50℃で24時間養生させて、乾燥膜厚を測定し、膜厚の変化を確認した。評価基準は以下の通りである。また、結果は表1に示す。
A:膜厚減少率が15%未満
B:膜厚減少率が15%以上30%未満
C:膜厚減少率が30%以上45%未満
D:膜厚減少率が45%以上
【0078】
次いで、予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の全面に補修材を鏝で塗付(乾燥膜厚1.5mm)し、常温(25℃)で7日間養生させたものを試験体[I]とし、以下の評価を実施した。
【0079】
<耐熱性評価1>
ISO 5660−1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体[I]表面に50kW/mの輻射熱を15分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表1に示す。
(発泡性)
AA:発泡倍率35倍超
A:発泡倍率25倍超35倍以下
B:発泡倍率20倍超25倍以下
C:発泡倍率15倍超20倍以下
D:発泡倍率15倍以下
(裏面温度)
AA:430℃未満
A:430℃以上470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃以上
(緻密性)
発泡倍率を測定した試験体を切断し、その断面における炭化断熱層の緻密性を目視にて確認した。評価基準は、緻密性が高いものを「A」、緻密性が低いものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
【0080】
さらに、試験体[II]として、鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)にエポキシ樹脂系防錆下塗材、ウレタン樹脂系熱発泡性塗料、アクリル系エマルションペイント(白色)が塗付積層されたものを用意し、この試験体の被膜の一部を切削し、円形の凹部(直径40mm、深さ3mm)を形成した。次いで、試験体の凹部に、各補修材1〜15を充填し、常温(25℃)で7日間養生した。さらに、凹部及びその近傍に、アクリル系エマルションペイント(白色)を塗付し凹部の補修を実施した。
【0081】
<仕上がり性評価>
試験体[II]の補修箇所の仕上がり性を評価した。評価基準は、補修部が目立たず美観性に優れるものを「A」とし、補修部が目立つものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。また、結果は表1に示す。
【0082】
<補修後の耐熱性評価>
補修後の試験体[II]表面をバーナーで加熱し、補修個所を含む被膜全体の発泡性を評価した。評価基準は、補修個所を含む被膜全体が発泡して均一な炭化断熱層を形成したものを「A」、補修個所で発泡が不均一なものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。また、結果は表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1〜13は、厚膜化(厚塗り性)に優れるとともに、優れた耐熱保護性を発揮するものであった。また、耐熱性被膜の被補修部も効率的に補修可能であり、美観性に優れた仕上がりであった。これに対して、比較例1では、厚膜化が困難であり、耐熱性被膜の補修においては手間がかかり、さらに仕上がりにも劣るものであった。また、比較例1、2は、十分な耐熱保護性が得られなかった。
【0085】
(補修材16〜27)
表2に示す配合に従い、補修材16〜27を作製した。樹脂成分(A)は、ポリオール成分(A1)とポリイソシアネート成分(A2)の混合比率が、NCO/OH当量比1.2となるように混合したものである。
なお、補修材の調製方法としては、(A1)成分、(B)成分、(C)成分、触媒、及び添加剤を常法により混合しポリオール組成物(主剤)を調製し、次いで(A2)成分を混合し補修材を調製した。
【0086】
(実施例14〜26)
さらに、補修材2、補修材16〜27について、上記厚膜化評価1、耐熱性評価1、仕上がり性評価、及び補修後の耐熱性評価に加えて、以下の評価を実施した。
<厚膜化評価2>
厚膜化評価1において、被覆材をwet膜厚3mmで塗付した以外は、同様の方法で評価を行った。結果は表2に示す。
<厚膜化評価3>
厚膜化評価2において、形成した被膜の状態を目視にて確認した。評価基準は、均一な被膜を形成したものを「A」、被膜にひび割れが生じたものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。結果は表2に示す。
【0087】
<耐熱性評価2>
ISO 5660−1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体[I]表面に50kW/mの輻射熱を30分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定し、さらに緻密性、灰化性を評価した。発泡倍率、鋼板裏面温度、緻密性の評価基準は上記耐熱性評価1と同様である。灰化性評価基準は以下の通りである。また、結果は表2に示す。
【0088】
(灰化性評価)
上記耐熱性評価2において、輻射熱を30分間放射後に形成された炭化断熱層の断面を確認し、灰化(白色)部分の割合を算出した。評価基準は、灰化の少ないものを「A」、灰化が進行したものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。また、結果は表2に示す。
【0089】
【表2】