特開2021-55022(P2021-55022A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 稲積 真哉の特許一覧 ▶ 土木地質株式会社の特許一覧 ▶ 三信建設工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社アマング.の特許一覧 ▶ 日鉄住金スラグ製品株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55022(P2021-55022A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】地盤改良用固化材及び地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/12 20060101AFI20210312BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20210312BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20210312BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20210312BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20210312BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20210312BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20210312BHJP
【FI】
   C09K17/12 P
   C09K17/02 P
   C09K17/06 P
   E02D3/12 102
   C04B28/26
   C04B18/08 Z
   C04B18/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-181690(P2019-181690)
(22)【出願日】2019年10月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成30年10月18日に第13回地盤改良シンポジウムにて発表。
(71)【出願人】
【識別番号】519355460
【氏名又は名称】稲積 真哉
(71)【出願人】
【識別番号】502404999
【氏名又は名称】土木地質株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515302598
【氏名又は名称】株式会社アマング.
(71)【出願人】
【識別番号】591146125
【氏名又は名称】日鉄スラグ製品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲積 真哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 岳祉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亮
(72)【発明者】
【氏名】相澤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】関 昌則
(72)【発明者】
【氏名】新坂 孝志
(72)【発明者】
【氏名】中岸 良裕
(72)【発明者】
【氏名】吉本 敦哉
(72)【発明者】
【氏名】水田 智幸
(72)【発明者】
【氏名】丹 郁人
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040AC02
2D040AC04
2D040BD05
2D040CA01
2D040CA02
2D040CA04
2D040CA05
2D040CA10
2D040CB03
2D040CC02
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB03
4H026CA02
4H026CA03
4H026CA05
4H026CB01
4H026CB03
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粘性土のような微細粒子から構成される、軟弱地盤を硬化させる地盤改良用固化材の提供。
【解決手段】地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良用固化材は、SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜2.0の珪酸ナトリウムNSを添加した高炉スラグSLを固化材Mとし、高炉スラグSLと珪酸ナトリウムNSの重量比SL/NSが5〜32であり、固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比である水比W/Pが100〜140%(重量比SL/NSが5であり、水比W/Pが100である場合を除く)である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良用固化材であって、
SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜2.0の珪酸ナトリウムNSと
高炉スラグ微粉末SLを混合した固化材Mを含み、
高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSの重量比SL/NSが5〜32であり、
固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比である水比W/Pが100〜140%(重量比SL/NSが5であり、水比W/Pが100である場合を除く)であることを特徴とする地盤改良用固化材。
【請求項2】
地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良用固化材であって、
SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜1.75の珪酸ナトリウムNSと
高炉スラグ微粉末SLを混合した固化材Mを含み、
高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSの重量比SL/NSが5〜32であり、
固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比である水比W/Pが100〜140%(重量比SL/NSが5であり、水比W/Pが100である場合を除く)であることを特徴とする地盤改良用固化材。
【請求項3】
固化材Mにカルシウムを含む添加材が高炉スラグ微粉末と置換されて添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良用固化材。
【請求項4】
固化材Mにガラス粉末が添加されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤改良用固化材。
【請求項5】
前記珪酸ナトリウムとして、フライアッシュ粉末とナトリウム原料とを混合粉砕して生成された材料が用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良用固化材。
【請求項6】
地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良方法であって、
SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜2.0珪酸ナトリウムNSと高炉スラグ微粉末SLを混合した固化材Mとし、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比SL/NSが5〜32である固化材Mを作製し、
該固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比W/Pが100〜140%(重量比SL/NSが5であり、水比W/Pが100である場合を除く)となるように、該固化材Mと地盤の土とを混合して撹拌することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項7】
地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良方法であって、SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜1.75の珪酸ナトリウムNSと高炉スラグSLを混合した固化材Mとし、高炉スラグSLと珪酸ナトリウムNSとの重量比SL/NSが5〜32である固化材Mを作製し、
該固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比W/Pが100〜140%(重量比SL/NSが5であり、水比W/Pが100である場合を除く)となるように、該固化材Mと地盤の土とを混合して撹拌することを特徴とする地盤改良方法。
【請求項8】
固化材Mにカルシウムを含む添加材が高炉スラグと置換されて添加されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用固化材及びそれを用いた地盤改良方法に関し、特に、砂質土又は粘性土などからなる軟弱地盤と撹拌により混合することにより地盤を硬化させる地盤改良用固化材及び地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を改良するための手法として、固化材と軟弱地盤とを撹拌して混合、地盤を硬化させる撹拌法と、固化材と地盤の撹拌を伴わない非撹拌法とに分類することができる。非撹拌法としては、例えば、薬剤注入法や凍結法などが知られている。
【0003】
撹拌法には、主に2つの形式があり、一つは、固化材を地盤中に圧入しながら、攪拌翼などの攪拌装置を用いて機械的に撹拌する方法であり、他の一つは、固化材を地盤中に高圧で噴射することで地盤を切削し撹拌する方法である。撹拌法のいずれの手法においても、固化材を含む流体は、パイプライン輸送が可能であり、ノズルで孔づまりを起こさない程度の流動性を有する必要がある。
【0004】
ところで、攪拌法を用いた地盤改良手法において、ブロック状または壁状もしくは格子状の改良体を造成する場合、互いに隣接する改良杭がラップして重なり合うような杭配置が行われている。この配置は高圧で固化材を噴射する手法では容易に成されるが、機械的に攪拌する手法においては固化材の硬化の進行に従って攪拌不能となるため、硬化遅延性を有する固化材や添加剤を使用することで対処されている。
【0005】
撹拌法で用いる固化材としては、一般的には、水硬性を有するポルトランドセメントや、銑鉄を製造する際の副産物である高炉スラグを粉末にした高炉スラグ微粉末を普通ポルトランドセメントと混合させた高炉セメントなどが多く用いられている。
【0006】
高炉スラグ微粉末は潜在水硬性を有しており、その潜在水硬性を顕在化させるためのアルカリ刺激剤として、ポルトランドセメントが利用されている。ポルトランドセメントの水和反応によりアルカリ性である水酸化カルシウムが生成され、高炉セメントでは、このアルカリ性物質により高炉スラグの潜在水硬性が発現する。高炉セメントのさまざまな組成については、例えば、特許文献1乃至3において提案されている。
【0007】
一方、普通ポルトランドセメントを混合せずに、高炉スラグ微粉末の潜在水硬性を発現させる固化材についての提案もなされている。一例として、特許文献4は、高炉スラグ微粉末に石膏及び炭酸カルシウムを混合させた水硬性物質について提案する。また、特許文献5は、高炉スラグ微粉末に、消石灰と石膏とを配合する地盤改良材について開示し、特に粘性土の硬化に適した地盤改良用固化材について提案している。
【0008】
非特許文献1及び2は、廃ガラスやフライアッシュ等のシリカ成分を多量に含む無機系廃棄物にpHを高めるため水酸化ナトリウムを加え混合し、熱処理したものを乾燥、粉砕した混和材に、高炉スラグ微粉末を加え混合した混合固化材について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−137318号公報
【特許文献2】特開2006−057050号公報
【特許文献3】特開2015−025137号公報
【特許文献4】特開2012−091949号公報
【特許文献5】特開2009−209283号公報
【特許文献6】特許5698774号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】第11回地盤改良シンポジウム論文集、2014年11月6日、p151-p156 「無機系廃棄物を原料とした水硬性固化材の地盤改良への適用性に関する基礎的研究」
【非特許文献2】第12回地盤改良シンポジウム論文集、2016年10月27日、p381-p386「無機系廃棄物から製造したシリカ系混和材と高炉スラグ微粉末からなる混合固化材の開発と撹拌系地盤改良工法への適用性」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この粘性土の地盤改良について取り上げると、地盤を構成する土壌の粒度と固化材の反応において、土壌が砂や礫のように空隙が大きい場合には、撹拌により粒子間隙に固化材が絡みやすく、結晶などが析出して硬化しやすい。しかしながら、粘性土のような微細な粒子の場合、粒子間隔が狭くなるばかりでなく、粒子の表面積が大きくなるため、固化材の少量の添加では硬化しにくくなる。普通ポルトランドセメント(普通セメント)を主成分とする固化材においては、コンクリートの硬化作用と同様に、土壌を構成する粒子間隙に各種コンクリート鉱物が析出することで硬化が行われる。また、普通セメントは、溶解しやすい成分が少なく、イオンが拡散して微細な部分に新たな塩類を析出する確率が低いため、粒子間隔の狭い粘性土の硬化には比較的有効ではないと考えられる。従って粘性土の改良強度は砂質土のそれに比べて一般的に小さくなる。
【0012】
また、粘性土の地盤改良においては、固化材と原地盤土を攪拌混合した際に、微細な粘土粒子に固化材中のカルシウムイオンが吸着して凝集体を形成し、これらがネットワーク化することで土中の水分を拘束するため、流動性が低下して粘性が増大しやすい。流動性の低下は攪拌混合が不十分(もしくは不能)となることによる改良品質低下を招く。また高圧で固化材を噴射する手法においては、流動性の低下により切削屑の排出が阻害され、更なる改良品質の低下を招くだけでなく、地盤隆起や構造物変状も誘発する。流動性の低下(粘性の増大)を防止する方法としては一般に高流動性の固化材や流動化剤が使用されているが、これらを過剰に使用することは固化不良を招き改良品質低下の原因となる。
【0013】
粘性土地盤において高強度化を図るために固化材の添加量を多くした場合固化材と原地盤土の混合物の粘性がさらに増加するため、更に撹拌混合が不十分(もしくは不能)となり、改良品質の低下や施工不能といったトラブルに発展する。このため、実質的には混合可能な範囲での添加量しか増加することができないため、高強度化にも限界がある。
【0014】
さらに、ブロック状または壁状もしくは格子状の改良体を造成する目的で、互いに隣接する改良杭をラップさせた配置を行う場合について取り上げると、改良体を造成する際に使用される硬化遅延性を有する固化材や添加剤は、接合させる隣接杭の施工日が順延した場合、効力が消失し攪拌不能となってしまう。またこれらの硬化遅延性材料を過剰に使用した場合は固化不良によって改良品質が低下することがある。
【0015】
本発明者は、従来より、普通セメントを用いない水硬性物質として、高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムとを混合した物質についての研究・開発を続けており、特許文献6において、高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムとを混合したコンクリートにおいて、劣化速度が遅く、耐用年数の長いコンクリートを開発するに到った。
【0016】
そして、本発明者は、引き続き、高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムとを含有する組成の水硬性物質において、粘性土の地盤改良に適し且つ攪拌混合物の適度な流動性と硬化遅延性を有する固化材の研究・開発に取り組んできた。
【0017】
そこで、本発明の目的は、固化材と軟弱地盤を構成する土壌とを撹拌・混合して地盤を硬化させる撹拌法に適用できる固化材において、高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムとを含有する地盤改良用固化材、特に、粘性土のような微細粒子から構成される軟弱地盤を硬化させ且つ攪拌混合物が適度な流動性と硬化遅延性を有する地盤改良用固化材及びそれを用いた地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nを2.0以下に抑えた珪酸ナトリウムNSと高炉スラグ微粉末SLとの配合割合と、固化材を流動性のあるスラリーにするために加えられる水の量とを調整することで、粘性土での硬化に優れ且つ攪拌混合物が適度な流動性と硬化遅延性を有する地盤改良用固化材を完成させた。
【0019】
すなわち、本発明の地盤改良用固化材は、地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良用固化材であって、SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜2.0である珪酸ナトリウムNSと高炉スラグ微粉末SLを混合した固化材Mを含み、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSの重量比SL/NSが5〜32であり、固化材Mの総重量Pと水Wとの重量比である水比W/Pが100〜140%であることを特徴とする。ただし、固化材Mの重量比SL/NSが5であり且つ水比W/Pが100%である場合は、固化材Mと水Wを混合したスラリーとしての流動性が不十分であり除かれる。
【0020】
また、本発明の地盤改良方法は、地盤の粘性土又は砂質土を含む土と撹拌により混合されて該地盤を硬化するための地盤改良方法であって、SiO2成分とNa2O成分とのモル比S/Nが1.0〜2.0である珪酸ナトリウムとNS高炉スラグ微粉末SLを混合した固化材Mとし、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比SL/NSが5〜32である固化材Mを作製し、該固化材Mの固形分重量Pと水Wとの重量比W/Pが100〜140%となるように、該固化材Mと軟弱地盤の土とを撹拌することを特徴とする。ただし、固化材Mの重量比SL/NSが5であり且つ水比W/Pが100%である場合は、固化材Mと水Wを混合したスラリーとしての流動性が不十分であり除かれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粘性土の硬化が可能となり、セメント系固化材を用いた砂質土の改良強度よりも高い圧縮強度を得ることができる。特に、従来の固化材では不可能であった高強度化を図りながら地盤と固化材の混合物の粘性増加を防ぐことができ、改良品質の向上が図ることが可能となる。このため、改良厚みなどの設計仕様の見直し(縮小化)が可能となり、経済性の向上や工期短縮が可能となる。また、撹拌法に適用できる流動性の高い地盤改良用固化材及び地盤改良方法を提供でき、周辺への影響を抑制し、固化不良による品質低下を防止することができる。また、適度な硬化遅延性を有することで、機械的に攪拌する手法においても、隣接杭とのラップ配置が可能になり、ブロック状または壁状もしくは格子状の改良体を造成することができる。さらに、砂質土から構成される軟弱地盤の硬化についても、より高い圧縮強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】粘性土と固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を示す図である。
図1B】粘性土と固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を示す図である。
図1C】粘性土と固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を示す図である。
図1D】粘性土と固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を示す図である。
図1E】粘性土と固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を示す図である。
図2A】砂質土と固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を示す図である。
図2B】砂質土と固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を示す図である。
図2C】砂質土と固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を示す図である。
図2D】砂質土と固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を示す図である。
図2E】砂質土と固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を示す図である。
図3】普通ポルトランドセメント(普通セメント)を用いた固化材の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図4】試料番号41-44及び47の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図5】試料番号45-47の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図6】試料番号58-59及び62の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図7】試料番号60-62の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図8】試料番号72-75及び80の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図9】試料番号76-80の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図10】試料番号201-202、204の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号49-50、52の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図11】試料番号205-206、208の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号64-65、67の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図12】試料番号209-210、212の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号82-83、85の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図13】追加的な実験に関する測定結果を示す図である。
図14】試料番号141-142及び145の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図15】試料番号143-145の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図16】試料番号156-157及び160の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図17】試料番号158-160の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図18】試料番号170-173及び178の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図19】試料番号174-178の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図20】試料番号301-302、304の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号147-148、150の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図21】試料番号305-306、308の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号162-163、165の圧縮強度の経時変化を示す図である。
図22】試料番号309-310、312の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号180-181、183の圧縮強度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる地盤改良用固化材の実施の形態について説明する。本実施の形態における地盤改良用固化材は、高炉スラグ微粉末に混和材としてSiO2成分とNa2O成分とのモル比(S/N)を1.0以上2.0以下とした珪酸ナトリウムが添加された固化材Mを含み、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)を5〜32とし、固化材Mの固形分の重量Pと水Wとの重量比である水比W/Pが100〜140%としたものである。
【0024】
珪酸ナトリウムは、例えば、水ガラス(工業試薬)に水酸化ナトリウム(工業試薬)を混合してSiO2成分とNa2O成分とのモル比(S/N)を調整したもの、無水メタ珪酸ナトリウム(工業試薬)の固形物や粒状物、5水塩メタ珪酸ナトリウム(工業試薬)の固形物や粒状物、フライアッシュに水酸化ナトリウムを加えて粉砕・混合したものを用いることができる。
【0025】
高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)において、珪酸ナトリウムNSの重量は、珪酸ナトリウムの固形分の重量とする。また、水比W/Pにおいて、固化材Mの固形分の重量Pのうちの珪酸ナトリウムNSの重量は、珪酸ナトリウムNSの固形分の重量であり、水Wの重量は、加えた水の重量と珪酸ナトリウムNSの水分の重量を含む。
【0026】
高炉スラグは、高炉から生成される溶融スラグに多量の圧力水を噴射することにより急冷したスラグであり、高炉スラグを粉砕して製造される高炉スラグ微粉末が用いられる。後述する実施例で用いられた高炉スラグ微粉末は、比表面積4440cm2/g であるが、異なる粉末度のものが用いられてもよい。
【0027】
高炉スラグ微粉末に珪酸ナトリウムが添加された固化材と混合・撹拌される土は、軟弱地盤の砂質土又は粘性土である。土は、その粒径に応じて、小さい方から粘土、シルト、砂(細砂、中砂、粗砂)、礫(細礫、中礫、粗礫)と区分され、後述の実施例で用いられる地盤材料として、粘性土には、粒径において粘土〜シルトに相当する土からなる土木用微粉末粘土(例えば、商品名:トチクレー)を使用し、砂質土は、粒径において細砂に相当する土からなる標準砂(例えば、商品名:豊浦珪砂)を用いることができる。トチクレーと豊浦珪砂の粒径加積曲線を表1に示す。
(表1)
【実施例】
【0028】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はここに説明される実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実験方法>
硬化させる対象として、粘性土と砂質土を使用した。粘性土は、土木用微粉末粘土(関東化成株式会社製、商品名「トチクレー」)を含水比40%にしたものを使用し、砂質土は、標準砂として用いられているシリカサンド(豊浦珪砂鉱業株式会社製、商品名:豊浦珪砂)を含水比10%にしたものを使用した。
【0030】
固化材は、パイプライン輸送が可能であり、ノズルで孔づまりを起こさない流動性を得るために、高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの混合物に水分を添加してスラリーとした。調整したスラリーの粘性を測定後、撹拌により粘性土又は砂質土と混合して、型に流し込み、経時的に強度を測定した。作製した固化材の材料の特徴は以下の通りである。
【0031】
1.固化材の材料
(1)高炉スラグ微粉末
石膏を添加していない高炉スラグを使用した。その密度2.91g/cm3、ガラス化率99%以上、比表面積4440cm2/gである。
【0032】
(2)珪酸ナトリウム
珪酸ナトリウム(珪酸ソーダ)は高炉スラグの固化促進材である。珪酸ナトリウムにおけるSiO2/Na2Oのモル比が2.5の水ガラス(1級試薬)に水酸化ナトリウム(1級試薬)を混合し、SiO2/Na2Oのモル比を2.00、1.75、1.50、1.25及び1.00に調整したものを始め、モル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウム、加えてモル比が2.00を超える条件についても部分的に確認試験を行った。
【0033】
また、追加的に、珪酸ナトリウムとして、石炭灰等の無機系廃棄物であるフライアッシュを粉砕したフライアッシュ粉末と、フレーク状の水酸化ナトリウムとを粉砕・混合した(加熱融解なし)材料を用いた試験を行った。フライアッシュは、シリカSiO2含有率50%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)9%のもの、及びシリカSiO2含有率60%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)6%のものを使用した。
【0034】
(3)カルシウム成分(CaO)を含む添加材
後述の実験結果にて詳述するが、SiO2/Na2Oのモル比2.0以下のスラリーでは、硬化が現れ且つ必要な支持強度に到るまでに1週間程度の期間を要するものが多い。その強度発現を早めるために、添加材として水酸化カルシウム又は普通セメント(普通ポルトランドセメント)を添加して、その効果を検討した。実験データにおいては、添加材としての水酸化カルシウム及び普通セメントが添加される場合、高炉スラグ微粉末の一部を置換する形態で固化材Mに添加され、その添加材の添加量の置換割合(添加材の重量/(添加材の重量+高炉スラグの重量))と、添加量におけるCaOの重量に換算した値を示した。高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)において、高炉スラグ微粉末SLの重量は、高炉スラグ微粉末の重量SL及び高炉スラグ微粉末の一部を置換して添加されたカルシウム添加材の重量を含み、また、水比W/Pにおいて、固化材Mの固形分重量Pは、さらに添加材の重量を含む。
【0035】
(4)ガラス粉末
固化材Mに含まれる珪酸ナトリウムから一部を置換する形態でガラス粉末を添加する試料を作製し、その性能を試験した。添加したガラス粉末は、比表面積2000cm3/g以上のものを使用した。ガラス粉末を一定量添加することで、長期材齢強度の向上または長期材齢での強度低下の抑制を期待することができ、本実験では、ガラス粉末20kg/m3を珪酸ナトリウムに添加して、その効果を検討した。ガラス粉末を添加した場合、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)において、珪酸ナトリウムNSの重量は、珪酸ナトリウムの固形分からガラス粉末の重量を除いたものとする。また、水比W/Pにおいて、固化材Mの固形分重量Pは、さらにガラス粉末の重量を含む。
【0036】
2.スラリーの製造及びその流動性
高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの重量を調整し、さらに、カルシウム成分を含む添加材やガラス粉末が添加される場合は、それを添加し、総重量100%となるようにした。
【0037】
調整された重量の各材料を撹拌・混合し、高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの総重量に対して100%〜140%の重量の水を加えて撹拌してスラリーとした。また、高炉スラグ微粉末(SL)と珪酸ナトリウム(NS)の比率(SL/NS)は、重量比で5〜32の範囲で変化させた。
【0038】
スラリーの粘性すなわち流動性は、スラリー全量がPロート(プレパクトフローコーン)を通過する時間を評価した。経験的にスラリーがパイプライン及びノズル中で閉塞を起こさない条件はロート通過時間(流下時間)が11秒未満である。ロート通過時間が11秒以上ものは測定対象から除外した。また、3時間保持後、スラリーのロート通過時間の測定も行い、スラリーの実用性も評価した。よって、スラリーの流動性条件を満たす基準を、3時間後の流下時間が11秒未満とした。
【0039】
3.固化材の強度測定
ロート通過後のスラリーは、撹拌により粘性土又は砂質土と混合して、直径50mm、長さ100mmの円筒容器に流し込み、20℃、湿度100%の恒温槽中で養生した。必要期間の養生後、一軸圧試験装置で破壊して圧縮強度を測定した。なお、固化材として使用可能な圧縮強度の基準を材齢28日にて2N/mm2とする。
【0040】
<実験結果>
(A)粘性土に固化材を混合させた試料の実験結果
粘性土に本発明の固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を図1A図1B図1C図1D及び図1Eに示す。
【0041】
図1A及び図1Bは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とを混合した材料、又は、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータであり、図1Cは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とガラス粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。図1D及び図1Eは、固化材の材料として、それぞれモル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材(一部添加)及びガラス粉末(一部添加)とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。図1D及び図1Eでは、水ガラスと水酸化ナトリウムの混合による珪酸ナトリウムに代わり、それぞれモル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウムが用いられる。
【0042】
砂質土に本発明の固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果については後述する(図2A図2B図2C図2D及び図2E)。また、比較対象として、普通ポルトランドセメント(普通セメント)を用いた固化材の圧縮強度の経時変化を図3に示す。
【0043】
図3に示されるように、普通セメントを用いた従来のセメント系固化材の圧縮強度は、材齢28日経過時にて2N/mm2程度となり、その後において、砂質土に対しては概ね3N/mm2程度(材齢56日時点)、粘性土に対しては概ね2N/mm2程度(材齢56日時点)であり、砂質土に対する圧縮強度が粘性土よりも大きい。また、材齢7日経過時においては、その圧縮強度は、粘性土、砂質土ともに1N/mm2程度であり、その後材齢28日頃までは圧縮強度は増していき、砂質土については、最終的に4N/mm2程度まで増加することが知られているが、粘性土については、材齢28日後の圧縮強度の増加はほとんどない。
【0044】
図1A図1B図1C図1D図1E図2A図2B図2C図2D及び図2Eに示す実験結果において、試料の配合条件として、珪酸ナトリウムのモル比(以下、単に「モル比」と称する)(S/N)、固化材を構成する高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムの重量比(以下、単に「重量比」と称する)(SL/NS)、固化材に混合される水の量(W)の固化材の重量(P)に対する重量比(以下、「水比」と称する)(W/P)を示し、各試料における流下時間、材齢圧縮強度の測定結果を示す。
【0045】
粘性土試料の実験結果において、図1A図1B及び図1Cの測定結果に示されるように、流下時間(混練後、3時間後ともに)が11秒未満の試料のうち、モル比(S/N)1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢7日で圧縮強度が1N/mm2を超える試料が現れ、モル比(S/N)1.75の試料においても、図示されないが、材齢14日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えて強度発現を示すものが現れた。そして、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢28日の圧縮強度が普通セメントを用いたセメント系固化材同等以上の概ね2N/mm2を超える値となる測定結果が得られた。一方、モル比2.30、2.00の試料は、粘性土試料としては、粘性(流下時間)及び圧縮強度の基準を満たすものはなかった。
【0046】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えた試料は、番号37-38、41-46、48-50、53--55、57-61、63-65、69-70、72-83、86、201-202、205-206、209-210の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm2を超えた試料は、番号26、30-31、34、37-38、40-51、53-55、57-65、67-70、72-83、85-86、202、205-206、209-210の試料である。
【0047】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、モル比(S/N)1.75の試料の一部、モル比(S/N)1.50、1.25、1.00の試料の多くにおいて、圧縮強度が8N/mm2を超え、特に、一部の試料においては、10 N/mm2を超える試料(材齢91日における試料番号27、29-30、32、34、38、40-49、53、55、57-64、67-68、72-82、85-86、201、205、209-210、212)も得られた。
【0048】
実験結果を詳細に検討すると、モル比(S/N)1.00、1.25及び1.50の試料においては、重量比(SL/NS)が5である一部の試料を除いて、材齢28日の圧縮強度が8N/mm2を超え、28日経過後も、圧縮強度が増していき、材齢91日においては、圧縮強度が10N/mm2を超える結果となった。
【0049】
また、モル比(S/N)1.75である番号26、29-30、34の試料においても、材齢28日の圧縮強度が8N/mm2を超え、材齢28日経過後も圧縮強度が増していき、材齢91日においては、圧縮強度が10N/mm2を超える結果となった。
【0050】
重量比(SL/NS)と水比(W/P)の関係において、重量比(SL/NS)5であって、水比(W/P)100の試料(番号27、39,56、71)は、粘性土試料として、流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさずに強度測定対象外となる試料となった。
【0051】
また、カルシウム成分を含む添加物(水酸化カルシウム又は普通セメント)の添加による測定結果を見ると、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。一方で、時間の経過とともに、無添加試料の圧縮強度は、カルシウム添加試料を超える結果となった。材齢91日以降も、無添加試料の圧縮強度は増加する傾向が見られたが、カルシウム添加試料の圧縮強度の増加は見られなかった。すなわち、カルシウム添加試料は、無添加試料と比較して、圧縮強度の発現は早いが、圧縮強度の伸びは小さい結果となった。なお、同量のカルシウム添加の場合、普通セメントよりも水酸化カルシウムを添加した試料の方が、初期強度の発現が短くなる傾向が見られた。水酸化カルシウムのCaO含有率は76%であり、普通セメントのCaO含有率は64%であり、同量である場合に、水酸化カルシウムの方がCaO含有量が多いことに起因すると推定される。
【0052】
カルシウム成分を含む添加物を添加した試料の一部(番号49-52、64-67、82-85、201-212)については、材齢91日を超えて材齢圧縮強度を測定した(流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさないものを除く)。いずれの試料も、材齢91日を超えて182日経過した段階においても、ほぼすべてが圧縮強度が8N/mm2を超える値を維持し、特に、ガラス粉末を添加した固化材(番号201-212)については、材齢91日以降、半年経過時点においても圧縮強度が増大していく結果となり、ガラス粉末を添加することにより、長期間にわたる圧縮強度を高める効果を確認することができた。
【0053】
また、図1D及び図1Eの測定結果に示されるように、モル比1.00の5水塩メタ珪酸ナトリウム(図1D)及び無水メタ珪酸ナトリウム(図1E)を使用し、重量比(SL/NS)が16、24、32、水比(W/P)130の条件において、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えた試料は、番号504-505、507-509、513-518、706-707、709-720の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm2を超えた試料は、番号501、504-510、513-518、701、703-720の試料である。
【0054】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、ほぼすべての試料において、圧縮強度が8N/mm2を超え、一部の試料においては、10 N/mm2を超える試料(材齢91日における試料番号501-502、504-505、510、513-514、701-704、706-707)も得られた。
【0055】
このように、粘性土試料における実験結果では、粘性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が8N/mm2を超えるものを得ることができ、その一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、半年経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0056】
粘性土に本発明の固化材を混合させた試料(粘性土試料)の圧縮強度は、従来のセメント系固化材の圧縮強度と比較して4倍以上の強度を有するものであり、従来困難であった粘性土の硬化が可能となる。また、その強度は後述する砂質土に対する圧縮強度の2倍程度であり、粘性土に対する圧縮強度の方が砂質土のそれよりも高く、粘性土の硬化に適した固化材となる。また、材齢7日程度で初期強度が発現し、カルシウム添加材を添加することで、強度発現時期を短縮することができる。
【0057】
図4−9は、図1A及び図1Bに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、図4は試料番号41-44及び47の圧縮強度の経時変化、図5は試料番号45-47の圧縮強度の経時変化、図6は試料番号58-59及び62の圧縮強度の経時変化、図7は試料番号60-62の圧縮強度の経時変化、図8は試料番号72-75及び80の圧縮強度の経時変化、図9は試料番号76-80の圧縮強度の経時変化を示す図である。
【0058】
また、図10−12は、図1Cに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、図10は、試料番号201-202、204の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号49-50、52の圧縮強度の経時変化、図11は、試料番号205-206、208の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号64-65、67の圧縮強度の経時変化、図12は、試料番号209-210、212の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号82-83、85の圧縮強度の経時変化を示す図である。ガラス粉末を添加することにより、半年に亘って圧縮強度が増大していくことが確認された。
【0059】
このように、粘性土試料における実験結果では、粘性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が8N/mm2を超えるものを得ることができ、その一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、1年を経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0060】
図13は、追加的な実験に関する測定結果のデータであり、珪酸ナトリウムとして、フライアッシュ粉末とフレーク状の水酸化ナトリウムとを粉砕・混合して(加熱融解なしに)生成された材料を用いた場合の実験にかかる測定データを示す。フライアッシュは、シリカSiO2含有率50%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)9%のもの(フライアッシュA)、及びシリカSiO2含有率60%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)6%のもの(フライアッシュB)を使用し、水酸化ナトリウムとの混合により珪酸ナトリウムのモル比(S/N)を1.5に調整し、固化材に混合される水の量(W)の固化材の重量(P)に対する重量比(「水比」)(W/P)を130%とした。また、固化材を構成する高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムの重量比(SL/NS)は5、10、15の範囲で試験し、高炉スラグの一部(20%)を普通セメントに置換したものについても確認試験を行った。
【0061】
粘性土試料の実験結果において、図13の測定結果に示されるように、珪酸ナトリウムのモル比(S/N)1.50の試料において、材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えて強度発現を示すものが現れ、材齢28日の圧縮強度が普通セメントを用いたセメント系固化材同等以上の概ね2N/mm2を超える値となる測定結果が得られた。
【0062】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えた試料は、番号401-406、408-410の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm2を超えた試料は、番号401-402、403-410の試料である。
【0063】
また、カルシウム成分を含む添加物(普通セメント)の添加による測定結果を見ると、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、特にフライアッシュBを用いたものに関して、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。
【0064】
(B)砂質土に固化材を混合させた試料の実験結果
砂質土に本発明の固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を図2A図2B及び図2Cに示す。
【0065】
図2A及び図2Bは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とを混合した材料、又は、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータであり、図2Cは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とガラス粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。粘性土試料の場合と同様に、試料の配合条件として、モル比(S/N)、重量比(SL/NS)、水比(W/P)を示し、各試料における流下時間、材齢圧縮強度の測定結果を示す。
【0066】
砂質土試料の実験結果において、図2A図2B及び図2Cの測定結果に示されるように、流下時間(混練後、3時間後ともに)が11秒未満の試料のうち、モル比(S/N)1.75、 1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超える試料が現れ、モル比(S/N)2.00の試料においても、図示されない材齢14日で圧縮強度が0.5N/mm2を超える強度発現を示すものが現れた。そして、材齢28日以降において、多くの試料の圧縮強度が少なくとも2N/mm2を超え、その半数以上の圧縮強度が4N/mm2を超える測定結果が得られた。一方、モル比2.30の試料は、砂質土試料としては、流動性(流下時間)及び圧縮強度の基準を満たすものはなかった。
【0067】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えた試料は、番号134、141、143、147-148、153、156-158、162-163、168、170-175、179-181、301-302、305-306、309-310の試料であり、材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm2を超えた試料は、番号117、122、125-126、129-130,132、134、137-138、141-148、151-153、156-163、166-168、170-182、184、301-302、305-306、309-310の試料である。材齢28日以降については、さらに多くの試料の圧縮強度が2N/mm2を超え、いずれの試料も時間の経過ともに圧縮強度は増し、材齢28日以降の測定結果を見ると、モル比(S/N)2.00及び1.75の試料の一部、モル比(S/N)1.50、1.25、1.00の試料の多くにおいて、圧縮強度が4N/mm2を超え、特に、一部の試料においては、8N/mm2を超える試料(材齢91日における試料番号120、122、125-126、134、138、146-147、160-161、180、301、305、309、312)も得られた。
【0068】
実験結果を詳細に検討すると、モル比(S/N)1.00、1.25及び1.50の試料においては、大多数の試料が、材齢28日の圧縮強度が優に1N/mm2(多数が4N/mm2)を超え、28日経過後も、圧縮強度が増していき、材齢91日経過において、多くの試料が圧縮強度5N/mm2を超える結果となった。
【0069】
また、モル比(S/N)1.75及び2.00である番号117、122、125-126、129-130、132、134の試料においても、材齢28日の圧縮強度が2N/mm2を超え、材齢28日経過後も圧縮強度が増していき、これらの試料はいずれも材齢91日において、圧縮強度が7N/mm2を超える結果となった。
【0070】
重量比(SL/NS)と水比(W/P)の関係において、モル比(S/N)2.00、1.75、1.50、1.25及び1.00の試料において、重量比(SL/NS)5であって、水比(W/P)100%の試料(番号115、127、139、151、163)は、砂質土試料として、流動性の基準(3時間語流下時間11秒未満)を満たさずに強度測定対象外となる試料となった。
【0071】
また、カルシウム成分添加物(水酸化カルシウム又は普通セメント)の添加による測定結果を見ると、粘性土試料の実験結果と同様に、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。一方で、時間の経過とともに、無添加試料の圧縮強度は、カルシウム添加試料を超える結果となった。粘性土の場合と同様に、同量のカルシウム添加の場合、普通セメントよりも水酸化カルシウムを添加した試料の方が、初期強度の発現が短くなる傾向が見られた。水酸化カルシウムのCaO含有率は76%であり、普通セメントのCaO含有率は64%であり、同量である場合に、水酸化カルシウムの方がCaO含有量が多いことに起因すると推定される。
【0072】
カルシウム成分を含む添加物を添加した試料の一部(番号147-150、162-165、180-183、301-312)については、材齢91日を超えて圧縮強度を測定した(流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさないものを除く)。いずれの試料も、材齢91日を超えて182日経過した段階においても、多くは圧縮強度が8N/mm2を超える値を維持し、特に、ガラス粉末を添加した固化材(番号301-312)については、材齢91日以降、半年経過時点においても圧縮強度が増大していく結果となり、ガラス粉末を添加することにより、長期間にわたる圧縮強度を高める効果を確認することができた。
【0073】
また、図2D及び図2Eの測定結果に示されるように、モル比1.00の5水塩メタ珪酸ナトリウム(図2D)及び無水メタ珪酸ナトリウム(図2E)を使用し、重量比(SL/NS)が16、24、32、水比(W/P)130の条件において、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm2を超えた試料は、番号604-609、613-618、806-820の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm2を超えた試料は、番号604-607、609、613-616、618、803-804、806-810、812-816、818-820の試料である。
【0074】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、多くの試料において、圧縮強度が4N/mm2を超え、一部の試料においては、8N/mm2を超える試料(材齢91日における試料番号604、613、806-807)も得られた。
【0075】
このように、砂質土試料における実験結果では、流動性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)2.00、1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が優に2N/mm2を超えるものを得ることができ、特に、モル比(S/N)が1.50、1.25,1.00の試料では、圧縮強度が概ね4N/mm2を超え、最大で8-9N/mm2となり、従来のセメント系固化材の圧縮強度の2倍程度の強度を有するものである。そして、一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、粘性土の場合と同様に、砂質土に本発明の固化材を混合させる場合においても、カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、半年経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0076】
図14−19は、図2A及び図2Bに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、図14は試料番号141-142及び145の圧縮強度の経時変化、図15は試料番号143-145の圧縮強度の経時変化、図16は試料番号156-157及び160の圧縮強度の経時変化、図17は試料番号158-160の圧縮強度の経時変化、図18は試料番号170-173及び178の圧縮強度の経時変化、そして、図19は試料番号174-178の圧縮強度の経時変化を示す図である。
【0077】
また、図20−22は、図2Cに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、図20は、試料番号301-302、304の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号147-148、150の圧縮強度の経時変化、図21は、試料番号305-306、308の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号162-163、165の圧縮強度の経時変化、図22は、試料番号309-310、312の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号180-181、183の圧縮強度の経時変化を示す図である。ガラス粉末を添加することにより、半年に亘って圧縮強度が増大していくことが確認された。
【0078】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22