【実施例】
【0028】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はここに説明される実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実験方法>
硬化させる対象として、粘性土と砂質土を使用した。粘性土は、土木用微粉末粘土(関東化成株式会社製、商品名「トチクレー」)を含水比40%にしたものを使用し、砂質土は、標準砂として用いられているシリカサンド(豊浦珪砂鉱業株式会社製、商品名:豊浦珪砂)を含水比10%にしたものを使用した。
【0030】
固化材は、パイプライン輸送が可能であり、ノズルで孔づまりを起こさない流動性を得るために、高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの混合物に水分を添加してスラリーとした。調整したスラリーの粘性を測定後、撹拌により粘性土又は砂質土と混合して、型に流し込み、経時的に強度を測定した。作製した固化材の材料の特徴は以下の通りである。
【0031】
1.固化材の材料
(1)高炉スラグ微粉末
石膏を添加していない高炉スラグを使用した。その密度2.91g/cm
3、ガラス化率99%以上、比表面積4440cm
2/gである。
【0032】
(2)珪酸ナトリウム
珪酸ナトリウム(珪酸ソーダ)は高炉スラグの固化促進材である。珪酸ナトリウムにおけるSiO
2/Na
2Oのモル比が2.5の水ガラス(1級試薬)に水酸化ナトリウム(1級試薬)を混合し、SiO
2/Na
2Oのモル比を2.00、1.75、1.50、1.25及び1.00に調整したものを始め、モル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウム、加えてモル比が2.00を超える条件についても部分的に確認試験を行った。
【0033】
また、追加的に、珪酸ナトリウムとして、石炭灰等の無機系廃棄物であるフライアッシュを粉砕したフライアッシュ粉末と、フレーク状の水酸化ナトリウムとを粉砕・混合した(加熱融解なし)材料を用いた試験を行った。フライアッシュは、シリカSiO
2含有率50%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)9%のもの、及びシリカSiO
2含有率60%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)6%のものを使用した。
【0034】
(3)カルシウム成分(CaO)を含む添加材
後述の実験結果にて詳述するが、SiO
2/Na
2Oのモル比2.0以下のスラリーでは、硬化が現れ且つ必要な支持強度に到るまでに1週間程度の期間を要するものが多い。その強度発現を早めるために、添加材として水酸化カルシウム又は普通セメント(普通ポルトランドセメント)を添加して、その効果を検討した。実験データにおいては、添加材としての水酸化カルシウム及び普通セメントが添加される場合、高炉スラグ微粉末の一部を置換する形態で固化材Mに添加され、その添加材の添加量の置換割合(添加材の重量/(添加材の重量+高炉スラグの重量))と、添加量におけるCaOの重量に換算した値を示した。高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)において、高炉スラグ微粉末SLの重量は、高炉スラグ微粉末の重量SL及び高炉スラグ微粉末の一部を置換して添加されたカルシウム添加材の重量を含み、また、水比W/Pにおいて、固化材Mの固形分重量Pは、さらに添加材の重量を含む。
【0035】
(4)ガラス粉末
固化材Mに含まれる珪酸ナトリウムから一部を置換する形態でガラス粉末を添加する試料を作製し、その性能を試験した。添加したガラス粉末は、比表面積2000cm
3/g以上のものを使用した。ガラス粉末を一定量添加することで、長期材齢強度の向上または長期材齢での強度低下の抑制を期待することができ、本実験では、ガラス粉末20kg/m
3を珪酸ナトリウムに添加して、その効果を検討した。ガラス粉末を添加した場合、高炉スラグ微粉末SLと珪酸ナトリウムNSとの重量比(SL/NS)において、珪酸ナトリウムNSの重量は、珪酸ナトリウムの固形分からガラス粉末の重量を除いたものとする。また、水比W/Pにおいて、固化材Mの固形分重量Pは、さらにガラス粉末の重量を含む。
【0036】
2.スラリーの製造及びその流動性
高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの重量を調整し、さらに、カルシウム成分を含む添加材やガラス粉末が添加される場合は、それを添加し、総重量100%となるようにした。
【0037】
調整された重量の各材料を撹拌・混合し、高炉スラグ微粉末、珪酸ナトリウムの総重量に対して100%〜140%の重量の水を加えて撹拌してスラリーとした。また、高炉スラグ微粉末(SL)と珪酸ナトリウム(NS)の比率(SL/NS)は、重量比で5〜32の範囲で変化させた。
【0038】
スラリーの粘性すなわち流動性は、スラリー全量がPロート(プレパクトフローコーン)を通過する時間を評価した。経験的にスラリーがパイプライン及びノズル中で閉塞を起こさない条件はロート通過時間(流下時間)が11秒未満である。ロート通過時間が11秒以上ものは測定対象から除外した。また、3時間保持後、スラリーのロート通過時間の測定も行い、スラリーの実用性も評価した。よって、スラリーの流動性条件を満たす基準を、3時間後の流下時間が11秒未満とした。
【0039】
3.固化材の強度測定
ロート通過後のスラリーは、撹拌により粘性土又は砂質土と混合して、直径50mm、長さ100mmの円筒容器に流し込み、20℃、湿度100%の恒温槽中で養生した。必要期間の養生後、一軸圧試験装置で破壊して圧縮強度を測定した。なお、固化材として使用可能な圧縮強度の基準を材齢28日にて2N/mm
2とする。
【0040】
<実験結果>
(A)粘性土に固化材を混合させた試料の実験結果
粘性土に本発明の固化材を混合させた試料(粘性土試料)の実験結果を
図1A、
図1B、
図1C、
図1D及び
図1Eに示す。
【0041】
図1A及び
図1Bは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とを混合した材料、又は、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータであり、
図1Cは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とガラス粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。
図1D及び
図1Eは、固化材の材料として、それぞれモル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材(一部添加)及びガラス粉末(一部添加)とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。
図1D及び
図1Eでは、水ガラスと水酸化ナトリウムの混合による珪酸ナトリウムに代わり、それぞれモル比が1.00の5水塩及び無水のメタ珪酸ナトリウムが用いられる。
【0042】
砂質土に本発明の固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果については後述する(
図2A、
図2B、
図2C、
図2D及び
図2E)。また、比較対象として、普通ポルトランドセメント(普通セメント)を用いた固化材の圧縮強度の経時変化を
図3に示す。
【0043】
図3に示されるように、普通セメントを用いた従来のセメント系固化材の圧縮強度は、材齢28日経過時にて2N/mm
2程度となり、その後において、砂質土に対しては概ね3N/mm
2程度(材齢56日時点)、粘性土に対しては概ね2N/mm
2程度(材齢56日時点)であり、砂質土に対する圧縮強度が粘性土よりも大きい。また、材齢7日経過時においては、その圧縮強度は、粘性土、砂質土ともに1N/mm
2程度であり、その後材齢28日頃までは圧縮強度は増していき、砂質土については、最終的に4N/mm
2程度まで増加することが知られているが、粘性土については、材齢28日後の圧縮強度の増加はほとんどない。
【0044】
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1E、
図2A、
図2B、
図2C、
図2D及び
図2Eに示す実験結果において、試料の配合条件として、珪酸ナトリウムのモル比(以下、単に「モル比」と称する)(S/N)、固化材を構成する高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムの重量比(以下、単に「重量比」と称する)(SL/NS)、固化材に混合される水の量(W)の固化材の重量(P)に対する重量比(以下、「水比」と称する)(W/P)を示し、各試料における流下時間、材齢圧縮強度の測定結果を示す。
【0045】
粘性土試料の実験結果において、
図1A、
図1B及び
図1Cの測定結果に示されるように、流下時間(混練後、3時間後ともに)が11秒未満の試料のうち、モル比(S/N)1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢7日で圧縮強度が1N/mm
2を超える試料が現れ、モル比(S/N)1.75の試料においても、図示されないが、材齢14日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えて強度発現を示すものが現れた。そして、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢28日の圧縮強度が普通セメントを用いたセメント系固化材同等以上の概ね2N/mm
2を超える値となる測定結果が得られた。一方、モル比2.30、2.00の試料は、粘性土試料としては、粘性(流下時間)及び圧縮強度の基準を満たすものはなかった。
【0046】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えた試料は、番号37-38、41-46、48-50、53--55、57-61、63-65、69-70、72-83、86、201-202、205-206、209-210の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm
2を超えた試料は、番号26、30-31、34、37-38、40-51、53-55、57-65、67-70、72-83、85-86、202、205-206、209-210の試料である。
【0047】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、モル比(S/N)1.75の試料の一部、モル比(S/N)1.50、1.25、1.00の試料の多くにおいて、圧縮強度が8N/mm
2を超え、特に、一部の試料においては、10 N/mm
2を超える試料(材齢91日における試料番号27、29-30、32、34、38、40-49、53、55、57-64、67-68、72-82、85-86、201、205、209-210、212)も得られた。
【0048】
実験結果を詳細に検討すると、モル比(S/N)1.00、1.25及び1.50の試料においては、重量比(SL/NS)が5である一部の試料を除いて、材齢28日の圧縮強度が8N/mm
2を超え、28日経過後も、圧縮強度が増していき、材齢91日においては、圧縮強度が10N/mm
2を超える結果となった。
【0049】
また、モル比(S/N)1.75である番号26、29-30、34の試料においても、材齢28日の圧縮強度が8N/mm
2を超え、材齢28日経過後も圧縮強度が増していき、材齢91日においては、圧縮強度が10N/mm
2を超える結果となった。
【0050】
重量比(SL/NS)と水比(W/P)の関係において、重量比(SL/NS)5であって、水比(W/P)100の試料(番号27、39,56、71)は、粘性土試料として、流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさずに強度測定対象外となる試料となった。
【0051】
また、カルシウム成分を含む添加物(水酸化カルシウム又は普通セメント)の添加による測定結果を見ると、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。一方で、時間の経過とともに、無添加試料の圧縮強度は、カルシウム添加試料を超える結果となった。材齢91日以降も、無添加試料の圧縮強度は増加する傾向が見られたが、カルシウム添加試料の圧縮強度の増加は見られなかった。すなわち、カルシウム添加試料は、無添加試料と比較して、圧縮強度の発現は早いが、圧縮強度の伸びは小さい結果となった。なお、同量のカルシウム添加の場合、普通セメントよりも水酸化カルシウムを添加した試料の方が、初期強度の発現が短くなる傾向が見られた。水酸化カルシウムのCaO含有率は76%であり、普通セメントのCaO含有率は64%であり、同量である場合に、水酸化カルシウムの方がCaO含有量が多いことに起因すると推定される。
【0052】
カルシウム成分を含む添加物を添加した試料の一部(番号49-52、64-67、82-85、201-212)については、材齢91日を超えて材齢圧縮強度を測定した(流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさないものを除く)。いずれの試料も、材齢91日を超えて182日経過した段階においても、ほぼすべてが圧縮強度が8N/mm
2を超える値を維持し、特に、ガラス粉末を添加した固化材(番号201-212)については、材齢91日以降、半年経過時点においても圧縮強度が増大していく結果となり、ガラス粉末を添加することにより、長期間にわたる圧縮強度を高める効果を確認することができた。
【0053】
また、
図1D及び
図1Eの測定結果に示されるように、モル比1.00の5水塩メタ珪酸ナトリウム(
図1D)及び無水メタ珪酸ナトリウム(
図1E)を使用し、重量比(SL/NS)が16、24、32、水比(W/P)130の条件において、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えた試料は、番号504-505、507-509、513-518、706-707、709-720の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm
2を超えた試料は、番号501、504-510、513-518、701、703-720の試料である。
【0054】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、ほぼすべての試料において、圧縮強度が8N/mm
2を超え、一部の試料においては、10 N/mm
2を超える試料(材齢91日における試料番号501-502、504-505、510、513-514、701-704、706-707)も得られた。
【0055】
このように、粘性土試料における実験結果では、粘性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が8N/mm
2を超えるものを得ることができ、その一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm
2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、半年経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0056】
粘性土に本発明の固化材を混合させた試料(粘性土試料)の圧縮強度は、従来のセメント系固化材の圧縮強度と比較して4倍以上の強度を有するものであり、従来困難であった粘性土の硬化が可能となる。また、その強度は後述する砂質土に対する圧縮強度の2倍程度であり、粘性土に対する圧縮強度の方が砂質土のそれよりも高く、粘性土の硬化に適した固化材となる。また、材齢7日程度で初期強度が発現し、カルシウム添加材を添加することで、強度発現時期を短縮することができる。
【0057】
図4−9は、
図1A及び
図1Bに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、
図4は試料番号41-44及び47の圧縮強度の経時変化、
図5は試料番号45-47の圧縮強度の経時変化、
図6は試料番号58-59及び62の圧縮強度の経時変化、
図7は試料番号60-62の圧縮強度の経時変化、
図8は試料番号72-75及び80の圧縮強度の経時変化、
図9は試料番号76-80の圧縮強度の経時変化を示す図である。
【0058】
また、
図10−12は、
図1Cに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、
図10は、試料番号201-202、204の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号49-50、52の圧縮強度の経時変化、
図11は、試料番号205-206、208の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号64-65、67の圧縮強度の経時変化、
図12は、試料番号209-210、212の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号82-83、85の圧縮強度の経時変化を示す図である。ガラス粉末を添加することにより、半年に亘って圧縮強度が増大していくことが確認された。
【0059】
このように、粘性土試料における実験結果では、粘性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が8N/mm
2を超えるものを得ることができ、その一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm
2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、1年を経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0060】
図13は、追加的な実験に関する測定結果のデータであり、珪酸ナトリウムとして、フライアッシュ粉末とフレーク状の水酸化ナトリウムとを粉砕・混合して(加熱融解なしに)生成された材料を用いた場合の実験にかかる測定データを示す。フライアッシュは、シリカSiO
2含有率50%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)9%のもの(フライアッシュA)、及びシリカSiO
2含有率60%且つ強熱減量(1000℃±50℃熱焼却)6%のもの(フライアッシュB)を使用し、水酸化ナトリウムとの混合により珪酸ナトリウムのモル比(S/N)を1.5に調整し、固化材に混合される水の量(W)の固化材の重量(P)に対する重量比(「水比」)(W/P)を130%とした。また、固化材を構成する高炉スラグ微粉末と珪酸ナトリウムの重量比(SL/NS)は5、10、15の範囲で試験し、高炉スラグの一部(20%)を普通セメントに置換したものについても確認試験を行った。
【0061】
粘性土試料の実験結果において、
図13の測定結果に示されるように、珪酸ナトリウムのモル比(S/N)1.50の試料において、材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えて強度発現を示すものが現れ、材齢28日の圧縮強度が普通セメントを用いたセメント系固化材同等以上の概ね2N/mm
2を超える値となる測定結果が得られた。
【0062】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えた試料は、番号401-406、408-410の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm
2を超えた試料は、番号401-402、403-410の試料である。
【0063】
また、カルシウム成分を含む添加物(普通セメント)の添加による測定結果を見ると、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、特にフライアッシュBを用いたものに関して、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。
【0064】
(B)砂質土に固化材を混合させた試料の実験結果
砂質土に本発明の固化材を混合させた試料(砂質土試料)の実験結果を
図2A、
図2B及び
図2Cに示す。
【0065】
図2A及び
図2Bは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とを混合した材料、又は、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータであり、
図2Cは、固化材の材料として、珪酸ナトリウムと高炉スラグ微粉末とガラス粉末とカルシウムを含む添加材とを混合した材料を用いた実験結果のデータである。粘性土試料の場合と同様に、試料の配合条件として、モル比(S/N)、重量比(SL/NS)、水比(W/P)を示し、各試料における流下時間、材齢圧縮強度の測定結果を示す。
【0066】
砂質土試料の実験結果において、
図2A、
図2B及び
図2Cの測定結果に示されるように、流下時間(混練後、3時間後ともに)が11秒未満の試料のうち、モル比(S/N)1.75、 1.50、1.25及び1.00の試料において、材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超える試料が現れ、モル比(S/N)2.00の試料においても、図示されない材齢14日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超える強度発現を示すものが現れた。そして、材齢28日以降において、多くの試料の圧縮強度が少なくとも2N/mm
2を超え、その半数以上の圧縮強度が4N/mm
2を超える測定結果が得られた。一方、モル比2.30の試料は、砂質土試料としては、流動性(流下時間)及び圧縮強度の基準を満たすものはなかった。
【0067】
具体的には、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えた試料は、番号134、141、143、147-148、153、156-158、162-163、168、170-175、179-181、301-302、305-306、309-310の試料であり、材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm
2を超えた試料は、番号117、122、125-126、129-130,132、134、137-138、141-148、151-153、156-163、166-168、170-182、184、301-302、305-306、309-310の試料である。材齢28日以降については、さらに多くの試料の圧縮強度が2N/mm
2を超え、いずれの試料も時間の経過ともに圧縮強度は増し、材齢28日以降の測定結果を見ると、モル比(S/N)2.00及び1.75の試料の一部、モル比(S/N)1.50、1.25、1.00の試料の多くにおいて、圧縮強度が4N/mm
2を超え、特に、一部の試料においては、8N/mm
2を超える試料(材齢91日における試料番号120、122、125-126、134、138、146-147、160-161、180、301、305、309、312)も得られた。
【0068】
実験結果を詳細に検討すると、モル比(S/N)1.00、1.25及び1.50の試料においては、大多数の試料が、材齢28日の圧縮強度が優に1N/mm
2(多数が4N/mm
2)を超え、28日経過後も、圧縮強度が増していき、材齢91日経過において、多くの試料が圧縮強度5N/mm
2を超える結果となった。
【0069】
また、モル比(S/N)1.75及び2.00である番号117、122、125-126、129-130、132、134の試料においても、材齢28日の圧縮強度が2N/mm
2を超え、材齢28日経過後も圧縮強度が増していき、これらの試料はいずれも材齢91日において、圧縮強度が7N/mm
2を超える結果となった。
【0070】
重量比(SL/NS)と水比(W/P)の関係において、モル比(S/N)2.00、1.75、1.50、1.25及び1.00の試料において、重量比(SL/NS)5であって、水比(W/P)100%の試料(番号115、127、139、151、163)は、砂質土試料として、流動性の基準(3時間語流下時間11秒未満)を満たさずに強度測定対象外となる試料となった。
【0071】
また、カルシウム成分添加物(水酸化カルシウム又は普通セメント)の添加による測定結果を見ると、粘性土試料の実験結果と同様に、カルシウム成分添加物を添加した試料(カルシウム添加試料)は、それが添加されていない無添加試料と比較して、硬化速度が速く、圧縮強度の発現が早い傾向が見られた。カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。一方で、時間の経過とともに、無添加試料の圧縮強度は、カルシウム添加試料を超える結果となった。粘性土の場合と同様に、同量のカルシウム添加の場合、普通セメントよりも水酸化カルシウムを添加した試料の方が、初期強度の発現が短くなる傾向が見られた。水酸化カルシウムのCaO含有率は76%であり、普通セメントのCaO含有率は64%であり、同量である場合に、水酸化カルシウムの方がCaO含有量が多いことに起因すると推定される。
【0072】
カルシウム成分を含む添加物を添加した試料の一部(番号147-150、162-165、180-183、301-312)については、材齢91日を超えて圧縮強度を測定した(流動性の基準(3時間後流下時間11秒未満)を満たさないものを除く)。いずれの試料も、材齢91日を超えて182日経過した段階においても、多くは圧縮強度が8N/mm
2を超える値を維持し、特に、ガラス粉末を添加した固化材(番号301-312)については、材齢91日以降、半年経過時点においても圧縮強度が増大していく結果となり、ガラス粉末を添加することにより、長期間にわたる圧縮強度を高める効果を確認することができた。
【0073】
また、
図2D及び
図2Eの測定結果に示されるように、モル比1.00の5水塩メタ珪酸ナトリウム(
図2D)及び無水メタ珪酸ナトリウム(
図2E)を使用し、重量比(SL/NS)が16、24、32、水比(W/P)130の条件において、早期の強度発現の目安として材齢7日で圧縮強度が0.5N/mm
2を超えた試料は、番号604-609、613-618、806-820の試料である。材齢28日で圧縮強度が基準となる2N/mm
2を超えた試料は、番号604-607、609、613-616、618、803-804、806-810、812-816、818-820の試料である。
【0074】
いずれの試料も時間の経過ともに強度は増し、材齢28日以降の結果を見ると、多くの試料において、圧縮強度が4N/mm
2を超え、一部の試料においては、8N/mm
2を超える試料(材齢91日における試料番号604、613、806-807)も得られた。
【0075】
このように、砂質土試料における実験結果では、流動性の基準を満たす試料のうち、モル比(S/N)2.00、1.75、1.50、1.25,1.00であって、重量比(SL/NS)5、10、15、もしくは16、24、32、さらに水比(W/P)100、130、140の試料において、材齢28日以降の圧縮強度が優に2N/mm
2を超えるものを得ることができ、特に、モル比(S/N)が1.50、1.25,1.00の試料では、圧縮強度が概ね4N/mm
2を超え、最大で8-9N/mm
2となり、従来のセメント系固化材の圧縮強度の2倍程度の強度を有するものである。そして、一部(特に、カルシウム成分を含む添加物を添加したもの)は、材齢7日で圧縮強度0.5N/mm
2を超えるものであって、強度発現も比較的早いものであり、粘性土の場合と同様に、砂質土に本発明の固化材を混合させる場合においても、カルシウム成分添加物を添加することにより、硬化速度(硬化時間)が調整自在となりうる。また、一部の試料(特に、ガラス粉末を添加したもの)は、半年経過時点においても圧縮強度が増大していくものであった。
【0076】
図14−19は、
図2A及び
図2Bに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、
図14は試料番号141-142及び145の圧縮強度の経時変化、
図15は試料番号143-145の圧縮強度の経時変化、
図16は試料番号156-157及び160の圧縮強度の経時変化、
図17は試料番号158-160の圧縮強度の経時変化、
図18は試料番号170-173及び178の圧縮強度の経時変化、そして、
図19は試料番号174-178の圧縮強度の経時変化を示す図である。
【0077】
また、
図20−22は、
図2Cに示される実験結果の一部をグラフ表示したものであり、
図20は、試料番号301-302、304の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号147-148、150の圧縮強度の経時変化、
図21は、試料番号305-306、308の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号162-163、165の圧縮強度の経時変化、
図22は、試料番号309-310、312の圧縮強度の経時変化及びそれらの比較対象としての試料番号180-181、183の圧縮強度の経時変化を示す図である。ガラス粉末を添加することにより、半年に亘って圧縮強度が増大していくことが確認された。
【0078】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。