特開2021-55213(P2021-55213A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021055213-抗菌性複合繊維 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55213(P2021-55213A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】抗菌性複合繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/12 20060101AFI20210312BHJP
【FI】
   D01F8/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-180068(P2019-180068)
(22)【出願日】2019年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小原 正之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅春
【テーマコード(参考)】
4L041
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041AA19
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BA22
4L041BC10
4L041BD20
4L041CA21
4L041CA33
4L041CB03
4L041CB25
4L041DD01
(57)【要約】
【課題】 優れた抗菌性を示し、アルカリ処理を行っても変色が抑制された抗菌性複合繊維を得る。
【解決手段】 抗菌性金属成分として、少なくとも銀が含まれている無機系抗菌剤を含有したポリアミド樹脂を鞘部に、ポリウレタン樹脂を芯部に配置された複合繊維であって、(a)及び(b)を満たす抗菌性複合繊維である。
(a)ポリアミド樹脂中に無機系抗菌剤の含有量が0.1質量%以上、1.2質量%以下
(b)ポリアミド樹脂中の銀成分含有率が20ppm以上、600ppm以下
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性金属成分として、少なくとも銀が含まれている無機系抗菌剤を含有したポリアミド樹脂を鞘部に、ポリウレタン樹脂を芯部に配置された複合繊維であって、(a)及び(b)を満たす抗菌性複合繊維である。
(a)ポリアミド樹脂中に無機系抗菌剤の含有量が0.1質量%以上、1.2質量%以下
(b)ポリアミド樹脂中の銀成分含有率が20ppm以上、600ppm以下
【請求項2】
無機系抗菌剤の平均粒子径(D50)が0.1μm以上、5.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性複合繊維。
【請求項3】
菌液吸収法による抗菌活性値が2.2以上であることを特徴とする請求項1に又は2記載の抗菌性複合繊維。
【請求項4】
アルカリ処理前後の色差(ΔE)が2.0以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の抗菌性複合繊維。
【請求項5】
繊維横断面において、芯部が偏芯的に配置されており、鞘部によって芯部の85%以上、99%以下が被覆された請求項1〜4いずれか1項に記載の抗菌性複合繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性を有したポリアミド系複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド繊維は衣料用途としてカーペットやタオル、下着、靴下、ストッキング等に幅広く使用されている。ストッキングに使用される場合は、芯糸のポリウレタン繊維にポリアミド繊維がカバリングされた糸や、ポリアミド成分とポリウレタン成分が同一フィラメント内に偏芯的に配置された複合繊維が使用されている。特に複合繊維は優れた捲縮性と透明感を示す。
また、これらの用途に抗菌性を付与した繊維に対する要望が高まってきており、後加工にて抗菌性を有する化合物を繊維に付着する方法が採用されてきた。
しかし、後加工で抗菌性を付与する方法では洗濯等で脱落しやすく、耐久性に問題があった。洗濯耐久性を向上させる方法として、銀や銅イオンを担持させた多孔質体などの無機系抗菌剤を繊維中に含有した繊維が提案されている。
特許文献1では、抗菌性金属成分として銀イオンをゼオライトに担持させ、平均粒子径が5μm以下の無機系抗菌剤を含有させた、異型ポリエステル繊維が提案されている。また、無機系抗菌剤の粒子径を小さくすることで、製糸安定性が向上し、糸切れや毛羽の発生を抑制した高品位の繊維が得られると示されている。特許文献2では、含窒素高分子で保護された銀微粒子が担持されたポリアミド樹脂組成物を用いたポリアミド繊維が提案されている。含窒素高分子で抗菌性金属微粒子が保護されていることで、酸性条件下の染色工程を経ても抗菌性が良好であると示されている。
しかしながら、抗菌性金属成分として銀イオンを用いた場合、後工程でアルカリ処理や空気中の酸素などの影響で銀イオンが酸化され、繊維が変色するという問題が生じる。
そこで特許文献3では、抗菌性金属成分として銀イオンを担持したリン酸塩と二酸化チタンで構成された無機系抗菌剤を含有させた、ポリエステル繊維が提案されている。二酸化チタンにより、銀の変色を隠蔽することで、アルカリ処理等による布帛の変色を抑制することができると示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−360091号公報
【特許文献2】特開2016−065195号公報
【特許文献3】特開2002−309445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3のような銀系抗菌剤を含有する方法ではポリアミドの複合繊維に抗菌性を付与することは可能であるが、変色が起こりやすく、抑制することは困難である。
すなわち、特許文献1ではアルカリに晒されると抗菌剤の変色が発生する。特許文献2ではポリアミド樹脂の表面に担持された段階でポリアミド樹脂が黄色に変色している。特許文献3では二酸化チタンを含有させることで無機系抗菌剤の変色を隠蔽されるが、ポリアミド樹脂の変色を隠蔽することは困難である。
したがって、本発明は、抗菌性に優れ、かつアルカリ処理において変色が抑制された抗菌性複合繊維を得ることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は、抗菌性金属成分として、少なくとも銀が含まれている無機系抗菌剤を含有したポリアミド樹脂を鞘部に、ポリウレタン樹脂を芯部に配置された複合繊維であって、(a)及び(b)を満たす抗菌性複合繊維である。
(a)ポリアミド樹脂中に無機系抗菌剤の含有量が0.1質量%以上、1.2質量%以下
(b)ポリアミド樹脂中の銀成分含有率が20ppm以上、600ppm以下
また、無機系抗菌剤の平均粒子径(D50)が0.1μm以上、5.0μm以下が好ましい。さらに、菌液吸収法による抗菌活性値が2.2以上であることが好ましい。また、アルカリ処理前後の色差(ΔE)が2.0以下であることが好ましい。さらに、繊維横断面において、芯部が偏芯的に配置されており、鞘部によって芯部の85%以上、99%以下が被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抗菌性複合繊維によれば、抗菌性や製糸安定性に優れ、かつアルカリ処理において変色を抑制することができるため、下着や靴下、ストッキングなどの衣料用途で好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の複合繊維の横断面形状の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の抗菌性複合繊維において、鞘部はポリアミド樹脂、芯部はポリウレタン樹脂から構成される。
【0009】
本発明におけるポリアミド樹脂は特に制限がなく、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12などの単独または共重合体が挙げられる。
【0010】
本発明におけるポリウレタン樹脂は特に制限がなく、例えばポリエステル系ポリウレタン、ポリカプロラクタン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタンなどの単独または共重合体が挙げられる。
【0011】
上述のポリアミド樹脂、及びポリウレタン樹脂には、抗菌性を阻害しないものであれば、例えば、紫外線吸収剤、静電剤、顔料、酸化チタン等を添加してもよいし、防臭剤や防カビ剤等を付与させてもよい。
【0012】
本発明の抗菌性複合繊維は無機系抗菌剤を含有する。本発明における無機系抗菌剤は、抗菌性金属成分として少なくとも銀を含み、ポリアミド樹脂中の無機系抗菌剤の含有量は0.1質量%以上、1.2質量%以下である。無機系抗菌剤の含有量が0.1質量%未満であると十分な抗菌性を得ることが困難になる。1.2質量%を超えると糸切れや毛羽等を発生しやすくなり、安定的に糸を生産しにくくなる。好ましくは、0.3質量%以上、1.1質量%以下である。より好ましくは、0.6質量%以上、1.1質量%以下である。
【0013】
本発明の抗菌性複合繊維は、ポリアミド樹脂中の銀成分含有率が20ppm以上、600ppmである。銀成分含有率が20ppm未満であると十分な抗菌性を得ることが困難になる。600ppmを超えると抗菌性能は向上するものの、アルカリ処理後の変色が大きくなる。好ましくは100ppm以上、600ppm以下、より好ましくは300ppm以上、550ppm以下である。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂中の銀成分含有率は、アメテック製ICP発光分析装置CIROS CCDを用いて測定した値を言う。
【0015】
本発明の無機系抗菌剤の平均粒子径(D50)は0.1μm以上、5.0μm以下が好ましい。平均粒子径(D50)が0.1μm未満であるとポリアミド樹脂中に添加した時に凝集を起こして粗大化し、糸切れや毛羽等を発生しやすくなり、安定的に糸を生産しにくくなる。また、平均粒子径(D50)が5.0μmを超えた場合も同様の問題が生じる。好ましくは0.5μm以上、3.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上、2.0μm以下である。
【0016】
本発明の無機系抗菌剤はP、Mg、Al、Siを含有していることが好ましい。P、Mg、Al、Siを含有していることでポリアミド樹脂の変色を抑制しやすくなる。各元素の好ましい含有率は、Pは20質量%以上、30質量%以下、Mgは5質量%以上、15質量%以下、Alは1質量%以上、5質量%以下、Siは1質量%以上、5質量%以下である。
【0017】
本発明の抗菌性複合繊維は、ポリウレタン樹脂中にも無機系抗菌剤を添加してもよいが、芯部の表面露出度が低く、効果が好適に得られにくい。
【0018】
本発明の抗菌性複合繊維は上記の無機系抗菌剤を含有することで、18時間培養後の生菌数から算出した抗菌活性値が2.2以上であることが好ましい。この指標は、抗菌性を評価するための指標であり、抗菌活性値が2.2未満であると目的の抗菌性を得にくい。
【0019】
本発明の抗菌活性値の算出方法はJIS L1902に準拠した菌液吸収法で行った。試験菌としては、黄色ぶどう球菌(NBRC12732)を用い、下記の方法で抗菌活性値を算出した。
抗菌活性値 :log(Ct/Co)−log(Tt/To)
Ct :標準布の18時間培養後の3検体の生菌数(平均値)
Co :標準布の試験菌接種直後の3検体の生菌数(平均値)
Tt :試験試料の18時間培養後の3検体の生菌数(平均値)
To :試験試料の試験菌接種直後の3検体の生菌数(平均値)
但し、試験成立条件(Ct/Co≧1.0、Tt/To≧1.0)は満たすものとする。
【0020】
本発明の抗菌性複合繊維は上記のように無機系抗菌剤を含有することで、アルカリ処理前後の変色を防止することができるものであり、処理前後の色差(ΔE)が2.0以下であることが好ましい。ΔEが2.0を超えると、くすんで見えるようになる。また染色加工で発色不良が生じやすくなる。より好ましくは1.5以下である。
【0021】
上記のアルカリ処理とは、精練工程であり、ソーピング剤(第一工業製「トライポール」(0.2g/L)、炭酸ナトリウム(2g/L)を添加した80℃のアルカリ溶液で、抗菌性複合繊維の筒編みに30分間の浸漬処理を施すことである。
【0022】
本発明の抗菌性複合繊維の断面形状は、特に制限がなく、要求特性や用途に応じて、適宜設定することが可能であるが、変色を抑制する観点から丸断面が好ましい。異型断面であると表面積の増加に伴い、変色しやすくなる傾向があり、効果が好適に得られにくい。
【0023】
本発明の抗菌性複合繊維の繊維横断面を図1に示す。繊維横断面において芯部aは偏芯的に配置された芯鞘構造で、芯部aの最外周の85%以上、99%以下が鞘部bに被覆されていることが好ましい。芯部の被覆率が85%未満であると、芯部と鞘部の接着性が不十分となり、摩耗等により芯部と鞘部の剥離が生じやすくなる。芯部の被覆率が99%を超えると、捲縮発現性が低下する。より好ましくは被覆率が90%以上、97%以下である。このような繊維横断面であれば捲縮発現性を備え、変色を抑制しつつ、十分な抗菌性を有することができる。
【0024】
本発明の抗菌性複合繊維において、総繊度は、特に制限がなく、要求特性や用途に応じて、適宜設定することが可能である。またフィラメントカウントについても、特に制限はない。製糸安定性の点から、総繊度は、10dtex以上、50dtex以下が好ましい。より好ましくは15dtex以上、45dtex以下、さらに好ましくは18dtex以上、40dtex以下である。
【0025】
本発明の抗菌性複合繊維において、強度は、特に制限がなく、要求特性や用途に応じて、適宜設定することが可能であるが、製編織工程の点から、2.0cN/dtex以上、7.0cN/dtex以下が好ましい。さらに好ましくは2.5cN/dtex以上、7.0cN/dtex以下である。
【0026】
本発明の抗菌性複合繊維において、伸度は、特に制限がなく、要求特性や用途に応じて、適宜設定することが可能であるが、後加工の点から、30%以上、80%以下が好ましい。さらに好ましくは40%以上、70%以下である。
【0027】
本発明の抗菌性複合繊維は、単独使いは勿論、他のポリアミド伸縮性捲縮糸やポリウレタン系カバリング糸などと合糸、交編、交織など他の繊維と組みあわせて用いることができる。
【0028】
次に、本発明の抗菌性複合繊維を製造する方法の好適な例について説明する。
【0029】
本発明の抗菌性複合繊維は、上記ポリアミド樹脂に上記無機系抗菌剤を混合した混合樹脂と、上記ポリウレタン樹脂を用意する。
【0030】
ポリアミドに無機系抗菌剤を混合する方法としては、ポリアミド樹脂の重合時に無機系抗菌剤を混合する方法や、二軸押出機を用いてポリアミド樹脂に無機系抗菌剤を予め混練し、マスターチップ化することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マスターチップを用いる場合には、ポリアミド樹脂とマスターチップの混合樹脂と、ポリウレタン樹脂を別々に溶融して、上記繊維横断面形状となるように、紡糸口金より吐出し、冷却した後、延伸して、本発明の抗菌性複合繊維を得ることができる。
【0031】
紡糸温度は、ポリアミド樹脂とポリウレタン樹脂の耐熱性や紡糸性の点から225℃以上、260℃以下が好ましく、230℃以上、250℃以下がより好ましい。紡糸速度は400m/min以上、1000m/min以下が好ましく、500m/min以上、800m/min以下がより好ましい。
【0032】
延伸温度は、製糸安定性の点から20℃以上、60℃以下が好ましく、25℃以上、50℃以下がより好ましい。延伸倍率は、安定的な生産の観点から3.2倍以上、3.7倍以下程度が好ましい。
【0033】
このようにして、抗菌性と製糸安定性が良好な本発明の抗菌性複合繊維を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、下記実施例は本発明を例示するものであって、本発明を限定するものではない。なお、各種物性の測定及び評価の方法は下記のように行った。
【0035】
(1)製糸安定性評価
繊維を生産した際の24時間当たりの平均糸切れ回数により、下記の基準で評価した。
○:糸切れ回数が1回未満の場合
×:糸切れ回数が1回以上の場合
【0036】
(2)繊維の強度・伸度測定
JIS L1013に準じて、島津製作所製オートグラフAGSを用いた引張試験を行い、測定長:200mm、引張り速度:200mm/minの条件下にて、繊維が破断したときの破断強度、及び破断伸度をそれぞれ5回測定し、その平均値を求め、繊維の強度・伸度とした。
【0037】
(3)抗菌性評価
JIS L1902に準じて、上記抗菌活性値を算出した。算出した抗菌活性値を下記基準により評価した。
◎:抗菌活性値が5.0以上
○:抗菌活性値が2.2以上、5.0未満
×:抗菌活性値が2.2未満
【0038】
(4)変色評価
得られた抗菌性複合繊維で作製した筒編み生地の上記アルカリ処理前後で測色色差計(Datacolor製「Datacolor 800」)を用いて、色差(ΔE)を測定した。測定したΔEを下記の基準により評価した。
○:ΔEが2.0以下の場合
×:ΔEが2.0を超える場合
【0039】
〔実施例1〕
ナイロン6に、平均粒子径(D50)が2.0μmの無機系抗菌剤を20質量%混合したマスターバッチを準備し、鞘部中の無機系抗菌剤の含有量が0.4質量%、銀成分含有率が200ppmとなるようにナイロン6とマスターバッチを混合した。鞘部にナイロン6マスターバッチの混合樹脂を用い、芯部にポリカーボネート系ポリウレタンを用いて、図1のような偏芯芯鞘となるように口金から233℃で紡出し、600m/minで芯鞘比率1:1未延伸糸を巻き取った。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度が室温、延伸倍率が3.5倍で延伸し、450m/minの速度で巻取り、芯部最外周の89%が鞘部に被覆された、19dtex/2fの抗菌性複合繊維を得た。製糸安定性は良好であり、得られた抗菌性複合繊維の抗菌活性値は4.9、ΔEは0.66と良好な値を示した。得られた結果を表1に示す。
【0040】
〔実施例2〕
鞘部中の無機系抗菌剤の含有量を0.7質量%、銀成分含有率を350ppmとする以外は実施例1と同様の方法で抗菌性複合繊維を作製した。製糸安定性は良好であり、得られた抗菌性複合繊維の抗菌活性値は5.9、ΔEは0.65と良好な値を示した。得られた結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例3〕
鞘部中の無機系抗菌剤の含有量を1.0質量%、銀成分含有率を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で抗菌性複合繊維を作製した。製糸安定性は良好であり、得られた抗菌性複合繊維の抗菌活性値は5.9、ΔEは0.71と良好な値を示した。得られた結果を表1に示す。
【0042】
〔比較例1〕
鞘部中の無機系抗菌剤の含有量を1.5質量%、銀成分含有率を750ppmとする以外は実施例1と同様の方法で抗菌性複合繊維を作製した。製糸安定性は糸切れが頻発し、抗菌性複合繊維を採取することは出来なかった。得られた結果を表1に示す。
〔比較例2〕
鞘部中の銀成分含有率を700ppmとする以外は実施例2と同様の方法で抗菌性複合繊維を作製した。製糸安定性は良好であり、得られた抗菌性複合繊維の抗菌活性値は5.9であったが、ΔEが11.53と大きく変色していた。得られた結果を表1に示す。
【0043】
〔比較例3〕
鞘部中に無機系抗菌剤を混合しなかった以外は実施例1と同様の方法で作製した。製糸安定性は良好であり、ΔEも0.23と良好であったが、抗菌活性値は1.3と抗菌性は良好でなかった。得られた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜3で得られた抗菌性複合繊維は、捲縮発現性に優れ、製糸安定性が良好で、優れた抗菌性を示し、アルカリ処理においても変色が抑制されたものであった。一方、比較例1〜3は、製糸安定性、抗菌性のいずれかが不良であったか、もしくはアルカリ処理後に変色が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の抗菌性複合繊維は、製糸安定性や抗菌性、が良好で、かつアルカリ処理後の変色が抑制されているため、下着やストッキングなどの衣料用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
a 芯部
b 鞘部
図1