特開2021-55270(P2021-55270A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-55270基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55270(P2021-55270A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20210312BHJP
   E04G 15/06 20060101ALI20210312BHJP
【FI】
   E02D27/01 A
   E04G15/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-176545(P2019-176545)
(22)【出願日】2019年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】502424724
【氏名又は名称】小無田 利文
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小無田 利文
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
【Fターム(参考)】
2D046BA01
2E150HC00
2E150HF07
2E150HF14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベタ基礎のような底板部から立ち上がる壁部に包囲された内部領域に雨水が溜まった場合でも十分水抜きができる基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法を提供する。
【解決手段】耐圧版17用のコンクリートを打設した直後に、壁部が形成される予定領域のコンクリート上に押型部材1をその上部が露出した状態で埋め込み状に配置し、押型部材が一部露出するようにコンクリートCを打設して壁部を形成し、その後押型部材を取り除くことで壁部の内外に連通する水抜き通路を形成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、同底板部から立ち上がる壁部とを備えた基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法であって、
前記底板部のコンクリートを打設した直後に、前記壁部が形成される予定領域のコンクリート上に押型部材をその上部が露出した状態で埋め込み状に配置し、前記押型部材が一部露出するようにコンクリートを打設して前記壁部を形成し、その後前記押型部材を取り除くことで前記壁部の内外に連通する水抜き通路を形成するようにしたことを特徴とする基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法。
【請求項2】
前記押型部材は埋め込み時の上下方向が先端側ほど幅広となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法。
【請求項3】
前記押型部材は埋め込み時に先端が前記底板部の外縁位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法。
【請求項4】
前記押型部材は埋め込み時の左右方向が先端側ほど幅広となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法。
【請求項5】
前記押型部材は被叩打部を備えており、前記被叩打部を叩打することでコンクリートに埋め込まれた前記押型部材が先端側にスライド移動して脱型され水抜き通路を形成すること請求項1〜4のいずれかに記載の基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎コンクリート内に溜まる雨水を排出するための基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば木造建築物のベタ基礎では底板部から立ち上がる壁部に包囲された内部領域に雨水が溜まってしまうことを防止するために、壁部に水抜き通路を形成して溜まった雨水を排出するような構造を設ける場合がある。そのような水抜き通路を有する先行技術の一例として特許文献1を示す。特許文献1では例えばその図3に示すように水抜き通路としての排水通路4が基礎の立ち上がり部(壁部)2に形成されて、基礎内に溜まった雨水を配するできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−20323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ベタ基礎の底板部は必ずしも水平にきれいにならされているわけではなく、水抜き通路が特許文献1の立ち上がり部(壁部)2のように底板部上面よりも高い位置に形成されていると、十分水抜きができないという課題があった。そのため、壁部を跨いで底板部に水抜き通路を形成できることが望ましいが、壁部は底板部のコンクリートを打設してそのコンクリートが硬化した後に成形するものであるため、壁部を跨いで底板部に水抜き通路を形成するという施工は困難である。
本発明は、主として上記の課題等を解決した基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
手段1として、底板部と、同底板部から立ち上がる壁部とを備えた基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法であって、前記底板部のコンクリートを打設した直後に、前記壁部が形成される予定領域のコンクリート上に押型部材をその上部が露出した状態で埋め込み状に配置し、前記押型部材が一部露出するようにコンクリートを打設して前記壁部を形成し、その後前記押型部材を取り除くことで前記壁部の内外に連通する水抜き通路を形成するようにした
このような方法によれば、壁部よりもより低い位置となる底板部上部に水抜き通路を形成する形成することができるため、底板部上の壁部に囲まれた領域に溜まった雨水を排出させやすくなる。
【0006】
「基礎コンクリート構造」は、一般的にはベタ基礎のような建物の底面全体に鉄筋を入れた底板部となる版を形成し、土台を載せるための底板部から立ち上がる壁部を有する構造であるが、建物全体でなくとも一部に先に底板部を打設し、その後で土台を載せるための底板部から立ち上がる壁部を設けるような構造で水抜き通路が必要な構造であればベタ基礎でなくとも含まれる。例えば床スラブや土間コンクリートのような構造にも適用可能である。
「押型部材」は水抜き通路を形成する雄型となるものである。材質は問わないが、繰り返し使用に耐えられ、コンクリートの比重に近いことがよい。あまり軽すぎると埋め込んでも持ち上がってしまい、重すぎると沈んでしまうからである。例えば金属製、プラスチック製、石材製等がよい。「底板部のコンクリートを打設した直後」とは、押型部材がコンクリートに十分沈むことができる程度に打設後のコンクリートに塑性が残っている状態である。乾いていない状態での生コンクリートの比重は2.0〜2.5程度であるためこれよりも重い素材であることがよい。「押型部材」は上部が露出した状態で打設したコンクリートに埋め込み状に配置される。埋め込むことで押型部材の型押しによる型取りがされてコンクリート面に水抜き通路が形成される。「上部が露出した状態」は上部以外の部分が一部露出してもよい。
以上の語句の説明は以下の手段においても同様である。
【0007】
また、手段2として、前記押型部材は埋め込み時の上下方向が先端側ほど幅広となるように構成されるようにした。
これによって、形成される水抜き通路は外方に向かって下がるように構成されるため、底板部に溜まった雨水が排出されやすくなる。
また、手段3として、前記押型部材は埋め込み時に先端が前記底板部の外縁位置に配置されるようにした。
これによって押型部材を取り外して水抜き通路を形成する際に埋め込まれた位置から先端方向に押し出すことで容易に移動することができることとなる。
また、手段4として、前記押型部材は埋め込み時の左右方向が先端側ほど幅広となるように構成されているようにした。
これによって、押型部材を先端方向に押し出して取り外す際に、押し出し側前方の幅が後方より広いため、押し出しやすくなる。
また、手段5として、前記押型部材は被叩打部を備えており、前記被叩打部を叩打することでコンクリートに埋め込まれた前記押型部材が先端側にスライド移動して脱型され水抜き通路を形成するようにした。
これによって埋め込まれた押型部材を叩き出すようにしてスライド移動させることができるため、押型部材をコンクリートで埋められた位置にしっかり保持されている押型部材を確実に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、壁部よりも低い位置となる底板部上部に水抜き通路を形成する形成することができるため、底板部上の壁部に囲まれた領域に溜まった雨水を排出させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態のベタ基礎構造の施工において、割り栗石、捨てコンクリート層、鉄筋等を配設した状態の斜視断面図。
図2】同じ実施の形態のベタ基礎構造の施工において、図1の状態から耐圧版のコンクリートを打設した状態の斜視断面図。
図3】同じ実施の形態のベタ基礎構造の施工において、図2の状態から押型部材を埋設した状態の斜視断面図。
図4】同じ実施の形態のベタ基礎構造の施工において、図3の状態から壁部用型枠を組んで壁部用のコンクリートを打設した状態の斜視断面図。
図5】同じ実施の形態のベタ基礎構造の施工において、図4の状態からベース用型枠板や壁部用型枠を取り外した状態の斜視断面図。
図6】実施の形態の押型部材であって(a)は前方側からの斜視図、(b)は(c)のA−A線における側断面図、(c)は平面図。
図7】(a)は耐圧版のコンクリートに押型部材を埋設した状態の平面図、(b)は(a)の状態から壁部を構築した状態の平面図、(c)は(b)の状態から押型部材を外して前方に移動させた状態の平面図。
図8】水抜き通路が形成されたベタ基礎構造の一部破断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態である基礎コンクリート構造における水抜き通路の形成方法について図面に基づいて説明する。
まず、図6(a)〜(c)に基づいて本実施の形態の水抜き通路の形成方法に使用される押型部材1の構成について説明する。
押型部材1は先端からの正面視において外郭形状が二等辺三角形となる棒状部材である。押型部材1は合金製の3枚の板材が長尺側の縁で溶接されており、3枚の板材はコンクリートに埋め込まれて雄型となって三角形の溝を構成する下部に配置される2枚の斜板1Aとコンクリート上面に露出される上板1Bとされてる。押型部材1は中空体として構成されている。押型部材1の前端は三角形形状の前蓋2によって塞がれている。押型部材1の先端となる前蓋2の面方向は押型部材1の長手方向に直交する。押型部材1の後方寄りは上板1Bが切り欠かれて斜板1Aのみで構成されることによって横断面V字形状となる案内通路3が形成されている。案内部3の前端の三角形形状の開口部は被叩打部としての後蓋4によって塞がれている。
図6(b)に示すように、上板1Bを水平に配置した際に、斜板1Aは前方側の上下幅が後方側の上下幅に対して直線的に徐々に幅広となるように構成されている。本実施の形態では一例として前端の上下幅25mm、後端の上下幅18mmとされている。図6(c)に示すように、押型部材1の上板1Bは前方側の左右幅が後方側の左右幅に対して直線的に徐々に幅広となるように構成されている。つまり、平面視において押型部材1全体として立体的に幅広となるように構成されている。本実施の形態では一例として前端の横幅40mm、後端の横幅28mmとされている。
【0011】
次に基礎コンクリート構造としてベタ基礎構造を施工する場合におけるこのような押型部材1を用いた水抜き通路の形成方法を説明する。
図1に示すように、常法に従って建物の間取りに合わせて根切りが行われた地面に割り栗石11を敷き、その上に切り込み砂利とともにコンクリートを数十mmの厚さで打設して捨てコンクリート層12を形成する。そして、ベース用型枠板13を配置し底板部としての耐圧版用のコンクリートを打設するための領域を画定する。また、捨てコンクリート層12の上には縦横に組み合わせた耐圧版用鉄筋14を敷設し、将来的に立ち上がって壁部となる位置に壁部用鉄筋15を配置する。壁部用鉄筋15は耐圧版用鉄筋14に連結されている。
図1の状態でベース用型枠板13内で包囲された領域16内にベース用型枠板13の上縁まで達するようにまず耐圧版となるコンクリートCを打設する。すると図2に示すように、耐圧版用鉄筋14は打設されたコンクリートCに埋まり、コンクリートCはベース用型枠板13の上縁まで達する。
この状態で打設したコンクリートCが固化する前に、図3に示すように水抜き通路を形成したい所望の箇所に壁部用鉄筋15と交差するように押型部材1を埋め込む。図7(a)に示すように、押型部材1をその先端面がベース用型枠板13の内側に当接させてコンクリートCに埋め込んで配置する。押型部材1の先端面、つまり前蓋2をベース用型枠板13に当接させることで押型部材1の位置決めができ、また、ちょうど押型部材1の前端がベタ基礎の縁に配置されることとなるからである。この時、コンクリートC内に上板1Bが沈んでしまわないように埋め込み量を調整する。押型部材1の埋め込み完了状態で上板1Bの上面は若干コンクリートCの上面よりもわずかに高い位置に配置される。これによってコンクリートC上面に押型部材1の2枚の斜板1Aによって型取りがされることとなる。
【0012】
コンクリートC上に押型部材1を配置させた後、所定の時間養生させることで耐圧版17が構築される。そして、図4に示すように、改めて壁部用鉄筋15が配置された領域に壁部用型枠18を組んで埋設した押型部材1もろとも壁部用のコンクリートCを打設する。その後、所定の時間養生させることでコンクリートCが固化して壁部19が構築される。図5及び図7(b)はベース用型枠板13や壁部用型枠18を取り外した状態である。この状態で、図示しない突き棒を押型部材1の後方から、つまり壁部19の内側から案内部3の溝を案内として後蓋4にあてがい、図示しないハンマーで叩く。すると、図7(c)に示すように押型部材1は埋設位置から外れ、前方(外方)に移動し、耐圧版17上に壁部19の下側を直交するように内外に連通する横断面V字状の水抜き通路20が型取りされて形成される。図8はこのような水抜き通路20が形成されたベタ基礎構造の概要である。図8では水抜き通路20は若干誇張して大きめに図示されている。
【0013】
以上のような実施の形態によって次のような効果が奏される。
(1)耐圧版17の上面の壁部19と交差する位置に壁部19よりも低くに水抜き通路20が形成されることになり、耐圧版17上面に雨水が溜まった際に排出しやすくなる。
(2)押型部材1を取り外す際に、前方にスライドさせて取り出すための叩く位置となる後蓋4が耐圧版17上面よりも低い位置に露出するため、押型部材1に前方に向かって強い加重をかけやすくなっている。
(3)押型部材1は左右方向が前方側ほど広く構成されているため、後蓋4を叩いて押型部材1に前方にスライドさせるように加重することで押型部材1が固定されている埋め込み位置から簡単に離型させることができる。
(4)押型部材1は外側に配置される先端側の方が上下幅が広く構成されているため、押型部材1によって形成された水抜き通路20は外に向かって下がった通路となり、溜まった雨水を速やかに排水させることができる。
(5)押型部材1は金属製であるため適度な重量があってコンクリートCに浮かばないため、しっかりと水抜き通路20を形成させることができる。一方で押型部材1は中空に製造されているため重すぎず、上板1BがコンクリートC内に沈んでしまうこともない。
(6)押型部材1の先端面が押型部材1の長手方向に対して直交する面であり、ベース用型枠板13は壁部用型枠18と面方向が同じであるため、、先端面をベース用型枠板13の内側に当接させることで簡単かつ確実に押型部材1の長手方向が壁部19と直交する水抜き通路20を形成することができる。
【0014】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記押型部材1の形状は一例であり、他の形状やサイズで耐圧版に水抜き通路を形成するようにしてもよい。例えば、上記押型部材1を雄型とした場合にはV字形状の水抜き通路が形成されるが、例えばU字形であったり、台形形状であってもよい。要は型押しされて通路が形成されればよい、
・基礎コンクリート構造としてベタ基礎構造を施工する場合において押型部材で耐圧版17上に水抜き通路を形成する例で説明したが、ベタ基礎構造ではなく、例えば床スラブや土間コンクリートを底板部として、これらの上の壁部を形成する際に適用するようにしてもよい。
・上記ではベース用型枠板13の上に壁部用型枠18を配置するような手順であったが、ベース用型枠板13を先に取り外してから壁部用型枠18を配置してもよく、要は押型部材を底板部に埋設するような工程を含んで壁部形成後に押型部を取り除くような方法であれば基礎コンクリート構造の若干の施工の違いは構わない。
・水抜き通路20は複数設けるようにしてもよい。
【0015】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0016】
1…押型部材、17…底板部としての耐圧版、19…壁部、20…水抜き通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8