特開2021-55382(P2021-55382A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-55382(P2021-55382A)
(43)【公開日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】歩行者保護用の移動式防護塀
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20210312BHJP
【FI】
   E04G21/32 C
   E04G21/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-179124(P2019-179124)
(22)【出願日】2019年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】592021984
【氏名又は名称】明治商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】宮内 大介
(57)【要約】
【課題】建物の建設現場や大規模修繕等に於いて、主に建物に住む住民、建物内で働いている従業員、宅配業者の配達員等の歩行者の安全を確保すること。
【解決手段】左右の支柱にそれぞれキャスターを有する前後一対の門型支持体と、該前後の門型支持体の前後方向に対向する前記支柱に取付け端部がそれぞれ枢支されかつ揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構と、門型支持体の上端部に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状の屋根を備え、屋根は、各門型支持体の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位する歩行者保護用の移動式防護塀。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の支柱にそれぞれキャスターを有する前後一対の門型支持体と、該前後の門型支持体の前後方向に対向する前記支柱に取付け端部がそれぞれ枢支されかつ揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構と、前記門型支持体の上端部に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状の屋根を備え、前記屋根は、各門型支持体の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位する歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項2】
請求項1の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前記屋根の下方に位置するように、前後の門型支持体の左右方向の各横梁には採光シートが配設され、この採光シートの前後方向の端部は、前記横梁から外れないように支持されていることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項3】
左右の支柱にそれぞれキャスターを有する前後一対の門型支持体と、これら前後の門型支持体の前後方向に対向する前記支柱に取付け端部がそれぞれ枢支されかつ揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構と、前記門型支持体の上端部にそれぞれ一体的に設けられかつ上方の横框フレームが傾斜状である前後一対の窓部と、前記上方の横框フレームに揺動可能に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状の屋根を備え、前記屋根は、各門型支持体の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位する歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項4】
請求項3の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前後の門型支持体の前記窓部の上方の横框フレームには採光シートが配設され、この採光シートの前後方向の端部は、前記横框フレームら外れないように支持されていることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項5】
請求項3の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前記採光シートは、前後の門型支持体の前後の窓部の上方の横框フレームの間の空間を覆う天井部分のみならず、前後の門型支持体の上端部側の側壁空間を覆う垂れ下がり状の左右端部分を有することを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項6】
請求項5の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前記採光シートの垂れ下がり状の左右端部の高低差の低い方の一端部には、下端から上方向に向かってスリットが設けられていることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項7】
請求項3の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前後一対の窓部は、窓枠と、この窓枠内に設けられた光透過性の材料で形成された採光板で構成されていることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項8】
請求項1又は請求項3の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前後の門型支持体の間隔を広げた場合に、前記間隔を保持するための保持手段が前記前後の門型支持体の前後方向に対向する支柱に取り付けられていることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項9】
請求項1又は請求項3の歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、歩行者保護用の移動式防護塀は、建物の出入り口に対して一列状に少なくとも3個以上配設されて歩行者用の通路を形成していることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【請求項10】
請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6のいずれかの歩行者保護用の移動式防護塀に於いて、前記採光シートは、防音効果のある採光シートであることを特徴とする歩行者保護用の移動式防護塀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物等の建設現場、建物の大規模修繕等の作業場及び作業現場に隣接した歩道に於いて、主に、建設現場の入口付近や建物の出入り口付近に仮設される歩行者保護用の移動式防護塀に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高層建築の建設現場に於いて、作業者が安全に通行するために仮設する仮設通路に関するもので、その発明の課題は、組立が簡単で、安全性、並びに雨等に対する遮蔽性の高い通路ユニット及び仮設通路を提供することである。
【0003】
その解決手段は、奥行方向に伸縮可能な中心部に位置する棟材14と、この棟材を基準として両側(左右)に該棟材と平行に配置される伸縮可能な左右一対の梁15、16と、前記棟材の前後端と一対の梁の前後端とをそれぞれ一対の梁の相互間隔を広狭調節可能にヒンジ結合する複数の傾斜梁22、22と、前記棟材14と一方の梁15及び傾斜梁17とで構成する第1のフレーム体、並びに、前記棟材14と他方の梁16及び傾斜梁20とで構成する第2のフレーム体にそれぞれ取付けた奥行方向に伸縮可能な天井部材22とからなる切妻形状の屋根12と、前記屋根の一対の梁の前後端を支える複数の支柱13、13とで通路ユニットを構成するもので、前記通路ユニットを多数連結させて任意の仮設通路を構成する(符号は特許文献1のもの)。
【0004】
この特許文献1の「通路ユニット」は、本発明の歩行者保護用の移動式防護塀と同様に落下物及び雨が歩行者に当たらないようにすることができる、屋根12を奥行方向に伸縮可能な棟材14及び左右一対の梁15、16を用いてコンパクトに収縮することができる、屋根12を中心部に位置する棟材14を基準にして開閉することができる等の利点を有する。
【0005】
しかしながら、(a)発明の課題の一つとして、「主に建物に住む住民、建物内で働いている従業員、宅配業者の配達員等の歩行者の安全を確保することを目的としていない点、(b) 通路ユニットの構成自体が複数のバー部材のみを骨組みした簡易式である点、(c) 第1のフレーム体及び第2のフレーム体から成る妻形状の屋根12が奥行方向に伸縮する構成は、長い管状のパイプ材を入れ子状に組み合わせている点、(d) 屋根自体に防水性カバーを設けている点等から、色々と改良すべき点があった。
【0006】
例えば前記(a)の発明の課題として、主に建物に住む住民、建物内で働いている従業員、宅配業者の配達員等の歩行者の安全を確保することを目的とする場合には、多数の通路ユニットを連続的に接続することが望ましいが、特許文献1は連続的に接続いる手段や構成が記載されていない。また前記(b)の通路ユニットの構成自体が簡易式であるため、強風によって容易に変形する可能性がある。また前記(c)の伸縮構成は、複数本のパイプ材を入れ子式に組み合わせているので、屋根を奥行方向に十分に収縮されることができない。さらに、前記(d)の屋根自体に防水性カバーを単に被せているに過ぎないことから、防水性カバーが風に煽られて剥がれる、と言う問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5409491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる課題は、特許文献1の問題点に鑑み、建物の建設現場や大規模修繕等の作業場及び作業現場に隣接した歩道に於いて、主に建物に住む住民、建物内で働いている従業員、宅配業者の配達員等の歩行者の安全を確保することを目的とする歩行者保護用の移動式防護塀を提供することである。次に本発明の第2の課題は、前記建物のエントランス又は開閉扉(出入口)の付近の所望する箇所に多数の移動式防護塀を一列に配設することができると共に、屋根を奥行方向に十分に収縮することができることである。次に本発明の第3の課題は、通路内部に光を可能な限り取り入れることである。次に本発明の第4の課題は、特許文献1の利点(例えば雨が当たらない)を新規な構成により取り入れると共に、採光シートが風に煽られて剥がれないようにすることである。
【0009】
さらに、雨水が採光シートの上面に貯まらないようにすることである。本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の歩行者保護用の移動式防護塀は、左右の支柱にそれぞれキャスターを有する前後一対の門型支持体と、該前後の門型支持体の前後方向に対向する前記支柱に取付け端部がそれぞれ枢支されかつ揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構と、前記門型支持体の上端部に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状の屋根を備え、前記屋根は、各門型支持体の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位することを特徴とする。
【0011】
また本発明の歩行者保護用の移動式防護塀は、左右の支柱にそれぞれキャスターを有する前後一対の門型支持体と、これら前後の門型支持体の前後方向に対向する前記支柱に取付け端部がそれぞれ枢支されかつ揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構と、前記門型支持体の上端部にそれぞれ一体的に設けられかつ上方の横框フレームが傾斜状である前後一対の窓部と、前記上方の横框フレームに揺動可能に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状の屋根を備え、前記屋根は、各門型支持体の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位することを特徴とする。
【0012】
上記構成に於いて、前後の門型支持体の横梁又は前記窓部の上方の横框フレームには採光シートが配設され、この採光シートの前後方向の端部は、前記横梁又は横框フレームら外れないように支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、建物の建設現場や大規模修繕等の作業場及び作業現場に隣接した歩道に於いて、主に建物に住む住民、建物内で働いている従業員、宅配業者の配達員等の歩行者の安全を確保することができる、多数の移動式防護塀を一列に配設することができる、屋根を奥行方向に十分に収縮することができる等の優れた効果がある。また、実施形態によっては、通路内部に光を可能な限り取り入れることができる、各門型支持体2の結合を強化することができる。網状の屋根部材と採光シートにより強度を増すことができる。採光シートによる防音等の実用的な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1乃至図12は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図13図15は本発明の第2実施形態を示す各説明図。
図1】複数の移動式防護塀を建物の出入り口に一列に並べた平面視からの概略説明図。
図2】一個の移動式防護塀の正面視からの概略説明図。
図3】一個の移動式防護塀の左側面視からの概略説明図。
図4】一個の移動式防護塀の平面視からの概略説明図。
図5】屋根が上下方向に位置変位する説明図。
図6】前後一対の門型支持体の伸縮機構の伸縮状態を示す説明図。
図7】支柱の下部及びキャスターの説明図。
図8】採光シートの斜視図。
図9】移動式防護塀を構成する門型支持体が一列に多数(例えば6個)接続した左側面図(採光シートは仮想線)。
図10図9の平面図(採光シートは仮想線)。
図11】門型支持体の間隔が狭まった状態の説明図。
図12】斜視から複数の屋根、複数の採光シート等を示す概略説明図。
図13】第2実施形態の一個の移動式防護塀の正面視からの概略説明図。
図14】一個の移動式防護塀の左側面視からの概略説明図。
図15】要部の(門型支持体の横梁、窓部、採光シート、屋根)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図12は、本発明の第1実施形態の移動式防護塀1の各説明図である。なお、図1図9乃至図12は、複数の移動式防護塀1を建物の出入り口に一列に並べて歩行者用の通路を形成した場合の各説明図である。
【0016】
まず、図1は複数の移動式防護塀を建物60の出入り口に一例に並べた平面視からの概略説明図である。図1に於いて、Xは移動式防護塀1がマンション又は高層ビルディング等の建物60のエントランス61に門型支持体2が一列に多数(例えば6個)並べられ又は接続され、歩行者用の通路を形成した状態を示す。
【0017】
複数の移動式防護塀1を含む歩行者用の通路Xは、建物60の正面壁60aに略直交するように施工され、その中を人が通ることができる(図2参照)。なお、符号62はエントランス61に設けた開閉扉(出入口)、63は歩行者の専用通路である。また、図1では「符号1」が5個あるが、これは説明の便宜上入れたたものであり、図1の矢印Aから見て、一番前(図1では下方)にある「移動式防護塀1」の後方の支柱と次に接続する「移動式防護塀1」の前方の門型支持体2は、部品点数を少なくするために「兼用(実施形態)」している。付言すると、「移動式防護塀1」がそれぞれ個別的に前後の支柱を一対備え、前の「移動式防護塀1」と後の「移動式防護塀1」を分離可能に隣合わせているものではない(もちろん、このような実施形態も可能である)。
【0018】
以下、本発明は、1個の「移動式防護塀1」に特徴があるので、主に、図2乃至図8を参照にして移動式防護塀1の構成を説明する。
【0019】
次に、図2図3及び図4は、一個の移動式防護塀1の正面視、左側面視、平面視からの各概略説明図である。図2は、説明の便宜上、図1の矢印Aから見て、一番前(図1では下方)の門型支持体2を示している。そして、この門型支持体2内の各仮想線は、エントランスの向う側に存在する開閉扉(出入口)62に向かって又は開閉扉62から人(歩行者)Pが通路Xの中を歩くことができる旨を示している。
【0020】
今仮に、前記人(歩行者)Pが通路Xの中に入り、前記開閉扉(出入口)62に向かうものとする。この場合、歩行者Pの進行方向から見て、門型支持体2は、左右一対の略垂直の支柱2a、2aと、これらの上端部に水平状態に横架された横梁2bと、前記支柱2a、2aの下端部に設けられた左右一対のストッパ付のキャスター3、3とから成り、前記左右一対の支柱2a、2aの略中央部の外面には、左右一対の把手4、4が設けられている。
【0021】
さらに、実施形態では、図3で示すように、前後の門型支持体2、2の間隔を広げた場合に、前記間隔を保持するための左右一対の保持手段5、5が、前後の門型支持体2、2の前後方向に対向する支柱2a、2aの把手付近に取り付けられている。
【0022】
なお、図3では、前後の支柱2aの符号が同じであるものの、図面右側を「前」の支柱2a、図面左側を「後」の支柱2aとする。また各支柱2a及びキャスター3の構造は、図7で示す通りであり、キャスター3を備えた水平ベースと、この水平ベースに垂設された2本の支持脚本体とを有する(周知技術なので、詳細な説明は割愛する:特許第5409491号の図3図4と同じ構造)。
【0023】
図3は前後の支柱2a、2aに伸縮リンク機構6が取り付けられていることを示す。図3は移動式防護塀1の左側面視からの概略説明図なので、左側の伸縮リンク機構6のみを示しているが、図示しない右側の伸縮リンク機構も左側の伸縮リンク機構6と同一構成である。
【0024】
実施形態では、移動式防護塀1は、前後の門型支持体2、2の前後方向に対向する支柱2a、2aに取付け端部がそれぞれ枢支され、かつ、鋏揺動可能な複数(例えば4本)のリンク6aを有する左右一対の伸縮リンク機構6を備えている。
【0025】
ところで、複数のリンク6aの取付け端部は、特許第5409491号の図3図4と同様に2本の支持脚本体の間に挟まれた状態で、各支持脚本体に直接軸支されているが、図示しない複数の突片状枢支板を介して支柱2a、2aに枢支しても良い。また伸縮リンク機構6は、鋏揺動可能な複数のリンク6aを有しているが、いわゆる一つの大きな菱形形状の透孔を形成するパンタグラフ式の2本組の揺動アームを、複数個(例えば3個)前後方向に一連に接続する構造であっても良い。要は、前後に位置する一対の門型支持体2、2の一方を建物の入り口側に押すと左右一対の伸縮リンク機構6の間隔は収縮し(間隔は狭まり)、一方、逆に建物の入り口から遠ざける方向へ引くと、左右一対の伸縮リンク機構6は伸長する(間隔は広がる)。
【0026】
次に、一対の門型支持体2、2の上方に接続する屋根10を説明する。屋根10は、一対の門型支持体2、2の横梁2b、2bに直接又は間接的(実施形態)に設けられている。付言すると、屋根10は、図3及び図4で示すように、門型支持体2、2の上端部に接続されていると共に、側面視が切妻形状でかつ平面視が網状(網状のパンチング部材等)である。そして、前述した前後の門型支持体2,2の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位する(図5参照)。
【0027】
好ましい実施形態では、歩行者Pに雨が当たらないようにするため及び内部空間を明るくするために採光シート8を前記屋根10の下方に位置付ける。例えば図8で示すように、左右一対のスリット8a、8aを有する1枚の大きな長方形状の採光シート8は、その前後の両端部の一部分を前後の門型支持体2,2の各横梁2b、2bの上面に面接触状態に当てがい、かつ、長尺状の支持板9の下面に押さ付けられた状態で、前記横梁2b、2bから外れないように支持されている。
【0028】
なお、前記長尺状の支持板9を各横梁2b、2bに固定する場合には、特に図示しないが、複数個の固着具、接着剤等の固定手段が用いられている。また固着具、接着剤等の固定手段を用いない場合、又は固定手段としての支持板9を用いない場合には、図示しない採光シート8の端部に設けたハトメ穴と連結紐、適当な形状のフックと係止リングの組み合わせ等が用いられる。また前記採光シート8は透明又は半透明であり、例えば塩化ビニールシート、オレフィン系シート、塩化ビニール及びオレフィン系の複合シート、布製シート等の光を透過と防音効果を有する材料で所定長の矩形状に形成されている。なお、採光シートには、好ましくは採光防音シートを用いるのが良い。
【0029】
ここで、平面視の図4を参照にして屋根10の構成を説明する。図4に於いて、屋根10は、歩行者の進行方向(例えば建物の出入り口62に向かう方向)に折り畳み可能な前後一対の分割型の可動屋根10a、10aを有し、前側の可動屋根10a(図面下方)の前側の端部は、前の門型支持体2の横梁2bの上面に重なるように固定された前の支持片9に複数個(例えば3個)の蝶番11を介して枢着されている。
【0030】
一方、後側の可動屋根10a(図面上方)の後側の端部は、後の支持片9に複数個(例えば3個)の蝶番12を介して枢着されている。そして、前側の可動屋根10a(図面下方)と後側の可動屋根10a(図面上方)の対向端部は、略中心部の位置する複数個(例えば3個)の蝶番13を介して枢着されている。したがって、前記屋根10は、各門型支持体2、2の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位可能である(図5図6参照)。
【0031】
ここで、図2及び図3を参照にして採光シート8について説明すると、好ましくは、歩行者Pが真上乃至斜め上方から雨が当たらないようにするため、採光シート8は、前後の門型支持体2、2の前後の横梁2b、2bの間の空間を覆う天井部分のみならず、前後の門型支持体2、2の上端部側の側壁空間を覆う垂れ下がり状の左右端部分を有し、前記垂れ下がり状の左右端部分の略中央部には、それぞれ下端から上方向に向かって左右一対のスリット8aが設けられている。なお、前記スリット8aは、実施形態如何によっては左右端部分の一端部のみに形成しても良い。
【0032】
ところで、前述した保持手段5は、前後方向に対向する支柱2a、2aにそれぞれ取り付けられた開閉可能なクランプ部5aと、これらのクランプ部をそれぞれ閉じた状態にロックするロック部材5b、前記各クランプ部に保持されかつ前記支柱2a、2aの間隔を、前記クランプ部を介して保持する長い管型の棒体5cとから成り、前記ロック部材5bは、一端部が前記クランプ部に軸支されたロック螺杆と、このロック螺杆に螺合するロックナットが含まれている。
【0033】
次に図9は、移動式防護塀1を構成する門型支持体2が一列に多数(例えば6個)接続した左側面図(採光シートは仮想線)、図10図9の平面図(採光シートは仮想線)からの説明図、図11は門型支持体2の間隔が狭まった状態の説明図、図12は斜視から複数の屋根10と複数の採光シート8と複数支柱2aの上端部を示す概略説明図である。
【0034】
上記の各図から明らかなように、本実施形態の移動式防護塀1は、例えば図1で示すように、マンション又は高層ビルディング等の建物60のエントランス61に門型支持体2を一列に多数並べ、前記各門型支持体2は互いに前後方向に伸縮可能に伸縮リンク機構及び折り畳み可能な屋根10を介して一体的に接続し、歩行者P用の通路Xを形成する。好ましい実施形態では、門型支持体2を少なくとも3個以上直列状態に接続して建物60のエントランス61又は開閉扉(出入口)62の付近に配設される。
【実施例】
【0035】
この欄では、本発明の第2実施形態を説明する。なお、この実施形態を説明するにあたって、第1実施形態と同一の部分については、同一又は同様の符号を付し、重複する説明を省略する。また作用も同一なので、重複する説明を省略する。
【0036】
図13乃至図15に示す第2実施形態の移動式防護塀1Aは、「窓部20」を加味したことである。すなわち、この移動式防護塀1Aは、歩行者の進行方向から見て左右の支柱2a、2aにそれぞれキャスターを有する少なくとも前後一対の門型支持体2、2と、これら前後の門型支持体の前後方向に対向する支柱2a、2aに取付け端部がそれぞれ枢支され、かつ、揺動可能な複数のリンクを有する左右一対の伸縮リンク機構6と、前記門型支持体の上端部にそれぞれ一体的に設けられ、かつ、上方の横框フレーム20aが傾斜状である前後一対の窓部20と、前記上方の横框フレームに揺動可能に接続されていると共に、側面視が切妻形状で、かつ平面視が網状の屋根10Aを備え、前記屋根10Aは、各門型支持体2、2の前後方向の間隔が狭く又は広くなったりすると、それに対応して上下方向に位置変位する。
【0037】
しかして、前記屋根10Aの下方に位置するように、前後の門型支持体2、2の前後の窓部20、20の上方の横框フレーム20a、20aには採光シート8Aが配設され、この採光シート8Aの前後方向の端部は、前記横框フレーム20a、20aから外れないように、第1実施形態と同様の固定手段9により支持されている。
【0038】
上記構成にあっては、前後一対の窓部20の上方の横框フレーム20aが傾斜状なので、採光シート8Aの傾斜状上面に落ちた雨水は、低い方の端部側へと容易に流れ落ちるという利点がある。
【0039】
なお、この第2実施形態の移動式防護塀1Aの採光シート8Aも、前後の門型支持体の前後の窓部20、20の上方の横框フレーム20a、20aの間の空間を覆う天井部分のみならず、前後の門型支持体2、2の上端部側の側壁空間を覆う垂れ下がり状の左右端部分を有している。そして、前記採光シート8Aの垂れ下がり状の左右端部の高低差の低い方の端部の略中央部には、下端から上方向に向かってスリット8aが設けられている。さらに、前後一対の窓部20、20は、窓枠21と、この窓枠内に設けられた光透過性の材料で形成された採光板22で構成されている。
【0040】
<付記>
門型支持体2を少なくとも3個以上直列状態に接続して建物60のエントランス61又は開閉扉(出入口)62の付近に配設した場合には、強風対策として、各門型支持体2の間隔を保持するための保持手段5を、前後の門型支持体の前後方向に対向する各支柱2a、2a…2aに取り付け、ユニット化した移動式防護塀(1、1A)が容易に移動しないようにする。その場合、特に図示しないが、保持手段5を、各門型支持体2の支柱2aの下端部寄りの部位及び上端部寄りの部位の二か所に保持手段5をそれぞれ設け、各門型支持体2の結合を強化することもできる。
【0041】
また、特に図示しないが、前後の門型支持体2のいずれか一方の横梁2b又は支持板9に長板状の庇を固定的又は回転可能に取り付けることも可能である。さらに、窓部20の採光板22は、防音性及び防水性の樹脂製又はガラス製のパネルカバーが好ましく、例えばフッ素樹脂、テトラフルオロエチレンの重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の強化プラスチック用材料などが適宜に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、建物の建設現場や大規模修繕等に於いて、建物のエントランス又は開閉扉(出入口)の付近に配設されるので、建築や土木技術の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
X…歩行者用の通路、
1、1A…移動式防護塀、
2…門型支持体、2a…支柱、2b…横梁、
3…キャスター、
4…把手、
5…支持体、
6…伸縮リンク機構、6a…揺動リンク、
8、8A…採光シート、8a…スリット、
9…固定手段、
10…屋根、10a…可動屋根、
11、12、13…蝶番、
20…窓部、20a…上方の横框フレーム、
21…窓枠、
22…採光板、
60…建物、
61…エントランス、
62…開閉扉(出入口)、
P…歩行者。
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