【解決手段】 本発明の目的は、セメント系基材からなる屋根材であって、該屋根材の表面側には表面側塗膜、裏面側には裏面側塗膜をそれぞれ有し、少なくとも該裏面側塗膜は無機系層状化合物を含有する、屋根材によって達成された。好ましくは、裏面側塗膜において、無機系層状化合物を5〜35質量%含み、前記表面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、前記裏面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、かつ裏面側塗膜の透水量は、表面側塗膜の透水量以下である屋根材である。
セメント系基材からなる屋根材であって、該屋根材の表面側には表面側塗膜、裏面側には裏面側塗膜をそれぞれ有し、少なくとも該裏面側塗膜は無機系層状化合物を含有する、屋根材。
前記表面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、前記裏面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、かつ裏面側塗膜の透水量は、表面側塗膜の透水量以下である請求項1又は2に記載の屋根材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<屋根材>
本発明の屋根材は、セメント系基材からなる屋根材であって、該屋根材の表面側には表面側塗膜、裏面側には裏面側塗膜をそれぞれ有し、少なくとも該裏面側塗膜は無機系層状化合物を含有することを特徴とする。
【0011】
≪裏面側塗膜≫
本発明の裏面側塗膜は、少なくともバインダー樹脂および無機系層状化合物を含有する。
【0012】
[バインダー樹脂]
本発明のバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、基材への付着性を向上させる観点から、アクリル樹脂又はアクリルシリコーン樹脂が好ましい。
【0013】
特に、アクリルシリコーン樹脂は、アクリル樹脂が持つ基材への付着性に加えて、シリコーン樹脂が持つ無機成分とセメント成分の親和性により付着性を発揮することができるため、好ましい。なお、これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら樹脂は、架橋剤や硬化剤を介して塗膜中で架橋されていてもよい。
【0014】
アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸並びにそのエステル、アミド及びニトリル等から選択されるアクリル成分およびスチレン、ビニルトルエンなどの共重合可能なエチレン性不飽和単量体の1種又は複数種を重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0015】
上記アクリル成分の具体例としては、下記(a)〜(h)に示されるような化合物が挙げられる。但し、下記(h)に示される化合物をアクリル成分として用いる場合、重合反応と競合してシロキサン縮合反応も起こるため、本発明においては、下記(h)に示される化合物を構成単位として含むアクリル樹脂は、アクリルシリコーン樹脂に分類される。
【0016】
このようなアクリルシリコーン樹脂において、下記(h)に示される化合物の含有量は、使用される単量体の合計中、0.2質量%以上15.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上12.0質量%以下が更に好ましく、0.5質量%〜3質量%が一層好ましい。
【0017】
また、上記アクリル樹脂には、アクリル成分と、例えば、スチレン、ビニル基含有エステル化合物(アクリル成分を除く)等の他のモノマーとを重合させて得られる重合体も含まれる。
【0018】
(a):(メタ)アクリル酸と炭素数1〜24のアルコールとのエステル
例えば、メチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
(b):多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物
例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
(c):カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
(d):エポキシ基含有重合性不飽和モノマー
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
(e):アミノアルキル(メタ)アクリレート
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
(f):(メタ)アクリルアミド又はその誘導体
例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
(g):(メタ)アクリロニトリル又はその誘導体
例えば、(メタ)アクリロニトリル、3−アミノ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
(h):アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体
例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
アクリルシリコーン樹脂は、通常、アクリル樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックと、シリコーン樹脂を構成するような繰り返し単位からなるブロックとを有する樹脂であり、例えば、上述のアクリル樹脂の合成において上記(h)に示される化合物を用いて、アクリル重合反応とシロキサン縮合反応を競合させる方法や、ジクロロジメチルシラン等のシラン化合物を常法により重合させて、主骨格にシロキサン結合を有するポリマー(シリコーン樹脂)を合成し、次いで、該ポリマーに、上述のアクリル成分を常法によりグラフト重合させたり又はアクリル樹脂を常法により結合させたりすることによって製造できる。
【0025】
上記(h)に示される化合物を用いてアクリル重合反応とシロキサン縮合反応を競合させてアクリルシリコーン樹脂を合成する方法において、使用される単量体の合計中、上記(h)に示される化合物の含有量は0.2質量%以上15.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上12.0質量%以下が更に好ましく、0.5質量%〜3質量%が一層好ましい。
【0026】
なお、上記シリコーン樹脂には、特に限定されるものではないが、例えばアルキド変性シリコーン樹脂のように、分子構造中に不飽和二重結合を有するものを用いてもよいし、アクリル成分のグラフト重合には、該アクリル成分以外のモノマーを用いてもよい。
【0027】
また、アクリル成分又はアクリル樹脂とシリコーン樹脂の反応を促進させるために触媒を添加してもよい。ここで触媒は、特に限定されるものではないが、例えば、チタンやアルミニウム等からなる金属アルコキシド類(例えばチタンイソプロポキシド)、金属アシレート類および金属キレート類の他、スズ化合物や、塩酸、リン酸化合物、カルボキシル基含有化合物等の酸およびアンモニウム等の塩基やそれらの塩等が挙げられる。
【0028】
本発明のバインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30〜60℃であることが好ましい。Tgが30℃未満である場合には、塗装後の屋根材を積載した時に塗膜同士が融着しやすい。一方、Tgが60℃を超える場合には、塗膜が建材等の基材の膨張に追従できなくなり、塗膜の剥離が起こる場合がある。
【0029】
なお、本発明において、バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)とは、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wi/Tgi+・・・+Wn/Tgn
上記FOX式において、Tgは、n種類のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度(K)であり、Tg(1、2、i、n)は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W(1、2、i、n)は、各モノマーの質量分率であり、W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1である。
【0030】
上記バインダー樹脂は、酸価が15mgKOH/g以上であることが好ましく、15〜100mgKOH/gであることが更に好ましい。
なお、本発明において、バインダー樹脂の酸価は、樹脂1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量することによって求められる。
【0031】
[無機系層状化合物]
本発明の無機系層状化合物は、結晶層が互いに積み重なって層状構造をとる無機化合物であり、塗膜形成の際に塗料中の無機系層状化合物が互いに重なり合って積層し、塗膜の耐水蒸気透過性を向上させる効果が発揮され、耐湿性や耐水性を向上できる。また、層状構造は、基材の反りの発生に対して抵抗する。この抵抗力は、表面側塗膜に層状化合物を含有させた場合よりも強い。
【0032】
なお、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合し密に配列した面(層)が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって平行に積み重なった構造をいう。
本発明の無機系層状化合物は、シランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、及びチタン系カップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の表面処理剤又はその縮合体で表面処理されていてもよい。
【0033】
このような表面処理がされた無機系層状化合物は、分散性に優れるため、水蒸気透過度を大幅に低下させることができ、具体的には膜厚40〜100μmの難燃性塗膜であれば30g/(m
2・24h)未満に低下させることができ、これにより、優れた難燃性を発揮することができる。
【0034】
無機系層状化合物の表面処理方法としては、例えば、無機系層状化合物と表面処理剤を容器内に仕込み、撹拌しながら、60〜160℃で加熱処理する方法が挙げられるが、この方法に限定されない。
【0035】
なお、表面処理剤は予め溶剤で一旦希釈されていても構わないが、その溶剤は加熱処理後に揮発することが好ましい。表面処理剤の使用量については、通常、無機系層状化合物100質量部に対し0.3〜10質量部で使用され、好ましくは表面処理剤の種類によって若干異なるが0.5〜5質量部で使用される。
【0036】
本発明で使用し得るシランカップリング剤としては、例えば、アルキル基含有シランカップリング剤(メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシランなど);フェニル基含有シランカップリング剤(n−デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなど);ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなど);(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなど);アミノ基含有シランカップリング剤(3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルメチルジエトキシシランなど);エポキシ基含有シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなど);メルカプト基含有シランカップリング剤(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど)等が挙げられる。
【0037】
発明で使用し得るアルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピネート等が挙げられる。本発明で使用し得るジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム等が挙げられる。本発明で使用し得るチタン系カップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート、チタンラクテート、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン等が挙げられる。
【0038】
なお、上記シランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤については、これらを縮合して得られる2量体、3量体などの縮合体の状態で用いることもできる。表面処理の作業性の観点から、縮合体の重量平均分子量は1500以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の無機系層状化合物は、劈開性を有しており、本発明に使用できる無機系層状化合物は、D50粒子径が1.0〜200μmであることが好ましく、また、アスペクト比(長径/厚み)は、5〜1500であることが好ましい。D50粒子径は、0.3〜45μmであることが更に好ましく、8〜45μmであることが特に好ましい。
【0040】
なお、無機系層状化合物のD50粒子径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。無機系層状化合物の粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0041】
無機系層状化合物のアスペクト比は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて求めることができる。具体的には、SEMで無機系層状化合物を観察し、任意に抽出した100個の無機系層状化合物の粒子に対して、それぞれの長径及び厚みを計測した後、それぞれの粒子のアスペクト比を求め、その平均値を求める。
【0042】
本発明の無機系層状化合物の具体例としては、層状珪酸塩、層状グラファイト、層状カルコゲン化物、層状ハイドロタルサイト化合物、層状リチウムアルミニウム複合水酸化物、層状リン酸ジルコニウム系化合物等を挙げることができ、層状珪酸塩が好ましい。
【0043】
ここで、「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX
2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
【0044】
層状珪酸塩は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプ(1:1型構造)と、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプ(2:1型構造)等に分類される。
【0045】
1:1型構造の層状珪酸塩としては、例えば、カオリナイトやハロイサイト等のカオリン鉱物が挙げられる。
2:1型構造の層状珪酸塩は、層電荷の違いによって分類される。例えば、層電荷をほとんど持たないものとしてタルクやパイロフィライトが挙げられ、層電荷を有するものとしては、スメクタイト族(サポナイト、ヘラクライト、モンモリロナイト等)、バーミキュライト、雲母族(金雲母、白雲母、絹雲母等)等が挙げられる。
【0046】
本発明の層状珪酸塩には、天然に産出される天然物の他に、人工的に合成されて得られる合成物がある。合成物としては、例えば、フッ素金雲母(KMg
3AlSi
3O
10F)、カリウム四ケイ素雲母(KMg
2.5Si4O
10F
2)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg
2.5Si
4O
10F
2)、ナトリウムテニオライト(NaMg
2LiSi
4O
10F
2)及びリチウムテニオライト(LiMg
2LiSi
4O
10F
2)等の合成雲母、ナトリウムヘクトライト(Na
0.33Mg
2.67Li
0.33Si
4.0O
10(OH又はF)
2)、リチウムヘクトライト(Li
0.33Mg
2.67Li
0.33Si
4.0O
10(OH又はF)
2)及びサポナイト(Na
0.33Mg
2.67AlSi
4.0O
10(OH)
2)等の合成スメクタイトが挙げられる。本発明では、天然物、合成物をそれぞれ単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0047】
上記層状珪酸塩には、水と接触すると結晶の層間に水分子を吸着して膨潤し、延いては劈開し、バラバラになって水中に分散する膨潤性層状珪酸塩と、水と接触しても変化のない非膨潤性層状珪酸塩とがある。無機系層状化合物として膨潤性層状珪酸塩を用いると、無機系層状化合物の分散性が良好で沈降し難く、塗装作業性が良好な傾向を示す。
【0048】
膨潤性層状珪酸塩の例としては、天然物ではハロイサイトやスメクタイトが挙げられ、合成物では、上述の合成雲母、又は上述の合成スメクタイトが挙げられる。
【0049】
本発明の裏面側塗膜において、無機系層状化合物を5〜35質量%含むことが好ましく、10〜30質量%含むことがより好ましい。無機系層状化合物は、1種以上を混合して使用することもできる。無機系層状化合物を5〜35質量%含むことにより、優れた耐水性が得られ、且つ基材の反りの発生を十分に抑制することができる。
【0050】
≪添加剤≫
本発明の裏面側塗膜には、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、難燃剤、顔料、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、防腐剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0051】
≪セメント系基材≫
本発明の屋根材としては、例えば、コンクリート瓦、無石綿化粧スレート、繊維補強セメント板など、セメント系素材で構成される屋根材が挙げられる。
【0052】
基材の表面性状は、特に制限はなく、表面が平滑なものであっても、凹凸形状を有するものであってもよいが、好ましくは微細な凹凸があるものが、塗膜の接着性を良くする点で好ましい。また、基材の表面側や裏面側は、シーラーやプライマー等によって下地処理が施されていてもよい。
【0053】
≪表面側塗膜≫
本発明の表面側塗膜は、公知の表面側塗膜をそのまま使用することができる。また、本発明の裏面側塗膜をそのまま使用することもできる。
【0054】
本発明の表面側塗膜は、耐候性を向上させる観点から、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂及びフッ素樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。上記表面側塗膜中において、樹脂の含有量は、50〜100質量%であることが好ましい。
【0055】
また、本発明の表面側塗膜は、透明性を失わない程度に顔料を含んでいてもよく、所望の意匠によっては顔料等により着色されたカラークリアー層であってもよい。顔料としては、艶消し剤を含む体質顔料や、着色顔料、カラーマイカ、ウレタン系、アクリル系等の着色又は透明ビーズ、鱗片状黒鉛、鱗片状酸化鉄、メッキ処理ガラスフレーク等の各種顔料が挙げられる。
≪添加剤≫
【0056】
本発明の表面側塗膜には、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、難燃剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、防腐剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0057】
≪屋根材の特性≫
本発明の屋根材では、裏面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、1.0mL/day以下であることが好ましい。また、表面側塗膜の透水量が2.0mL/day以下であり、1.0mL/day以下であることが好ましい。裏面側塗膜の透水量は、表面側塗膜の透水量以下であることが好ましい。本発明の塗膜の透水量は、無機系層状化合物の含有量によってほぼ調整することができる。
【0058】
≪裏面側塗膜および表面側塗膜の製造方法≫
本発明の表面側塗膜および裏面側塗膜を形成するための塗料は、バインダー樹脂及び無機系層状化合物と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合することによって調製できるが、使用される成分を主剤と硬化剤に分け、使用の直前に主剤と硬化剤を混合して調製する混合タイプであってもよい。
【0059】
なお、バインダー樹脂は、溶液、エマルジョン又はディスパージョンの形態で配合されるのが好ましい。また、上記塗膜を形成するための塗料は、水系や、有機溶剤系等の各種塗料形態が利用可能である。
【0060】
本発明の塗膜を形成するための塗料を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法を特に制限無く使用することができる。具体的には、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。このうち、膜厚の制御を容易に行うことができることから、スプレーコート法、及びロールコート法が好ましく、ロールコート法は基材への塗料の押し込み効果を期待できることからより好ましい。
【0061】
これら塗布方法では、通常、1回の塗装で4〜40μmの塗膜が形成できるため、所望の膜厚が得られるまで塗装が繰り返し行われる。裏面側塗膜は、1回または2回の塗布で形成することが好ましく、表面側塗膜は、2回以上の塗布で形成することが好ましい。
【0062】
本発明の表面側塗膜の膜厚は、15〜70μmであり、25〜60μmであることが好ましい。裏面側塗膜の膜厚は、10〜120μmであり、25〜80μmであることが好ましい。表面側塗膜の膜厚および裏面側塗膜の膜厚がそれぞれ上記範囲内であれば、耐水性に優れる塗膜を形成でき、セメント系屋根材の変形を抑制することができる。
【実施例】
【0063】
以下に示す実施例により、本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の記載について「部」及び「%」は質量基準に基づくものである。
【0064】
1.表面側塗料の調製
表1の配合を仕込み、公知の方法により、表面側塗料(A1、A2)を調製した。樹脂固形分を30質量%とした。
1)ボンコートYG651(DIC社製、樹脂成分 47質量%、MFT55〜60℃)
2)アクリセットEX−109SI(日本触媒製、樹脂成分 40質量%、MFT50℃)
3)ダイヤ珪砂8号(オクムラセラム社製)
4)SNデフォーマー1316(サンノプコ社製)
5)ASE−60(ロームアンドハース社製)
6)Proxel AM(アーチケミカルズ社製)
7)TINUVIN1130(BASF社製)
8)TINUVIN292(BASF社製)
【0065】
【表1】
【0066】
2.裏面側塗料の調製
2−1.アクリルシリコーン樹脂系エマルションEM1の調製例
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水22質量部、ラテムルPD−104(商品名、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩:花王株式会社製、固形分20質量%)0.8質量部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温し、その後、過硫酸カリウム(重合開始剤)0.1質量部を加え、続いて、表1に示す処方に従い別容器で予め攪拌混合して調製した原料エマルションa1を、表3に示す合計質量部で、3時間かけて連続滴下した。滴下終了後、これをさらに2時間80℃に保持した後、40℃に降温した。次いで25質量%アンモニア水0.26質量部でpH9.0に調整し、消泡剤0.02質量部、防腐剤0.02質量部を加えて、加熱残分48質量%のアクリル樹脂系エマルションEM1を得た。なお、EM1中に含まれる樹脂は、アクリルシリコーン樹脂である。
【0067】
2−2.塗料の調製
表2に示す配合処方に従い、各原料を混合した後、公知の手法によって分散させて、裏面側塗料(B1、B2)を調製した。
【0068】
なお、表中に記載される原料の詳細を以下に示す。
9)R5N(酸化チタン、堺化学社製)
10)沈降性硫酸バリウム#100(硫酸バリウム、堺化学社製、ビックケミー社製)
11)BYK−181(分散剤、不揮発成分50質量%、ビックケミー社製)
12)VG2(増粘剤、不揮発成分25質量%、ローム&ハース社製)
13)SN617(増粘剤、不揮発成分30質量%、サンノプコ社製)
14)BYK−018(消泡剤、不揮発成分100質量%、ビックケミー社製)
15)NTS−5(無機系層状化合物(ナトリウム四ケイ素雲母、合成マイカ、平均粒子径10〜15μm、表面処理なし)、トピー工業社製)
16)KBM−403(シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越シリコーン社製)
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
3.塗膜形成
3−1 表面側塗膜の形成
縦10cm×横10cm×厚さ16mmの大きさのセメント系建材(セメント質と繊維質とを主成分とする成型木片セメント板)を用意し、これらを基材試験片とした。
上述のA1、A2の表面側塗料組成物を、基材試験片の表面側にフローコーターにて、乾燥時の膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で5分乾燥させた。この工程をもう1回行い、乾燥時の合計膜厚が30μmの表面側塗膜を形成した。
【0073】
3−2 裏面側塗膜形成
表面側塗膜を形成させた基材試験片の裏面側に上述のB1、B2の裏面側塗料組成物を、基材試験片の表面側にロールコーターにて、乾燥時の膜厚が35μmとなるように塗装し、80℃で5分乾燥させた。この工程をもう1回行い、乾燥時の合計膜厚が70μmの裏面側塗膜を形成した。
得られた試験片に対して、下記の評価を行った。結果を表5に示す。
【0074】
4.塗膜評価
<透水性評価>
透水試験法は、JIS A6909建築用仕上塗材に準じた。
試験体を水平に保持し、
図2に示すように透水試験器具をシリコーン系シーリング材などによって止め付け、48時間以上放置した後,試験室に24時間放置した23±2℃の上水道水を試験体の表面から高さ約250mmまで入れ、そのときの水頭の高さと24時間後の水頭の高さとの差を透水量とする。
透水量は,3個の平均値を小数点以下1桁に丸めて示す。透水試験器具は水頭250mmを保持できるもので、口径約75mmの漏斗と1目盛0.05mlのメスピペット(容量5ml)を連結したものとする。
【0075】
<基材の反り>
試験方法は、JIS A5423 住宅屋根用化粧スレートに準じた。
吸水による反り試験は、試験片の裏面に、
図3に示すように、裏面側その中心点(0)から2つの対角線の方向に160mm離れた位置に基点(A、A‘、B、B’)を設ける。次に
図4に示す反りの測定器の支点を対角線上の基点に当て、両基点を結ぶ面と中心点との距離を、目量0.01mmのダイヤルゲージを用いて測定し、これを1回目の測定とする。次に、試験片を水面下約3cmに浸漬し、3時間放置する。所定時間が経過した後、試験片を80±5℃に調節した乾燥機に、こば立てして入れ、1.5時間乾燥させる。その後試験片を取り出し、
図4に示す測定器を用い、再び両基点を結ぶ面と中心点との距離を測定し、これを2回目の測定とする。吸水による反りは、2回目の測定値から1回目の測定値を減じた値のうち、2つの対角線方向の計算結果のいずれか大きい方の値で示す。反りは、表面が凸になるものを正で表示する。
【0076】
【表5】
【0077】
表5に示すように、本発明の試料では、裏面側塗膜の透水量が少なく、基材の反りが改善されていることが分かる。